(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267872
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】分岐器
(51)【国際特許分類】
E01B 7/02 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
E01B7/02
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-94188(P2013-94188)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-214538(P2014-214538A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】597110995
【氏名又は名称】株式会社レールテック
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】松下 克徳
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭15−008761(JP,Y1)
【文献】
特開2006−152755(JP,A)
【文献】
実公昭40−001213(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の分岐器であって、
リードレール及びそのリードレールと連結されているトングレールと、前記リードレール及びトングレールに近接する基本レールと、前記リードレール及び基本レールをマクラギに固定している分岐タイプレートと、ポイント後端部に設けられた間隔材とを有し、
前記分岐タイプレートは、上面に前記リードレール及び基本レールの脚部と係合する突起部を有し、
前記間隔材は、前記リードレール及び基本レールとの間に設けられ、レール方向に延びて両端に達する凹部が、底部に形成されており、
前記凹部は、前記間隔材を前記リードレールと基本レールとの間で分岐器後方に移動させるときに前記リードレールをマクラギに固定している分岐タイプレート及び前記基本レールをマクラギに固定している分岐タイプレートの双方の前記突起部と干渉しない断面形状とされていることを特徴とする分岐器。
【請求項2】
前記凹部は、前記間隔材の底部を切削することによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の分岐器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の分岐器に設けられる間隔材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道において、線路の分岐箇所に分岐器が設けられている。
図7に示されるように、分岐器Tは、ポイント部、リード部、及びクロッシング部を有する。ポイント部とリード部の境界がポイント後端である。分岐器Tにおけるポイント後端の付近がポイント後端部である。ポイント後端部において、ポイント部のトングレール3とリード部のリードレール2が連結されている。
【0003】
図8に示されるように、ポイント後端部には、間隔材101が設けられている(例えば、特許文献1参照)。間隔材101は、リードレール2及びトングレール3と、基本レール4との間に設けられ、基本レール4とリードレール2との間隔を保っている。リードレール2及び基本レール4は、分岐タイプレート5によって、マクラギ6に固定されている。なお、
図8において、リードレール2及びトングレール3よりも軌道中心側(図の右側)、基本レール4よりも外側(図の左側)は、図示を省略している。
【0004】
間隔材101の交換や、分岐器の細密検査において、間隔材101が分岐器から抜き取られる。分岐器の細密検査等は、列車が作業箇所に進入しないように線路閉鎖で行われ、間隔材101を抜き取る作業に時間が掛かるため、線路閉鎖された限られた時間内に終わらせることが容易ではない。
【0005】
リードレール2と基本レール4との間隔は、分岐器後方(分岐器後端の方向)に向けて漸次広くなっている。間隔材101を抜き取るとき、間隔材101は、リードレール2と基本レール4との間で、分岐器後方(
図8の矢示方向)に移動する必要がある。
【0006】
本願発明者は、分岐器の細密検査における従来の作業手順と必要時間を調査した。その調査結果を時系列に示す。分岐タイプレート5を撤去するためにバラスト7をかき出す(3分)。分岐タイプレート5をマクラギ6に締結している犬釘を外し、座金の締結を解く(12分)。分岐タイプレート5を撤去する(5分)。間隔材101をレールに締結している各ボルトを外し、間隔材101を抜き取る(15分)。間隔材101のボルト孔等を目視点検し、大床板を清掃及び目視点検し、グリスを塗る(7分)。間隔材101を元の位置に戻し、各ボルトを締結する(15分)。分岐タイプレート5を元の位置に戻す(5分)。犬釘を打ち直し、座金を締結する(5分)。バラスト7を元に戻す(3分)。このように、分岐器の細密検査に合計70分掛かっている。
【0007】
次に、本願発明者は、上記の調査結果を分析し、分岐タイプレート5の撤去に伴って大変時間が掛かっていることを発見した。分岐タイプレート5を撤去するために、3分+12分+5分=20分、分岐タイプレート5を元の位置に戻すために、5分+5分+3分=13分、計33分掛かっている。分岐器の細密検査等において、このような多大な時間及び労力が掛かる分岐タイプレート5の撤去が、当然のこととして長年行われてきた。
【0008】
本願発明者は、分岐タイプレート5の撤去が必要な原因を検討した。
図9に示されるように、分岐タイプレート5は、レール底部と係合する突起部51を上面に有する。間隔材101は、分岐器後方に移動しても、分岐タイプレート5の突起部51に当たって移動が制限されるので、抜き出すことができない。分岐タイプレート5の撤去が必要な原因は、間隔材101を分岐器後方に移動するときに、分岐タイプレート5と干渉するためであることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−167001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を解決するものであり、分岐器から容易に取り出すことができる間隔材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の
分岐器は、鉄道の分岐
器であって、リードレール及びそのリードレールと連結されているトングレールと、前記リードレール及びトングレールに近接する基本レールと
、前記リードレール及び基本レールをマクラギに固定している分岐タイプレートと、ポイント後端部に設けられた間隔材とを有し、前記分岐タイプレートは、上面に前記リードレール及び基本レールの脚部と係合する突起部を有し、前記間隔材は、前記リードレール及び基本レールとの間に設けられ、レール方向に延びて両端に達する凹部が、底部に形成されており、前記凹部は、
前記間隔材を前記リードレールと基本レールとの間で分岐器後方に移動させるときに
前記リードレール
をマクラギに固定している分岐タイプレート及び
前記基本レールをマクラギに固定している分岐タイプレート
の双方の前記突起部と干渉しない
断面形状とされていることを特徴とする。
【0012】
この
分岐器において、前記凹部は、
前記間隔材の底部を切削することによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の
分岐器。
【発明の効果】
【0013】
本発明の間隔材によれば、凹部が底部に形成されているので、リードレールと基本レールとの間で分岐器後方に移動させるときに分岐タイプレートと干渉せず、分岐器から容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る間隔材が設けられたポイント後端部付近の平面構成図。
【
図6】同間隔材との位置関係を示す分岐タイプレートの断面図。
【
図8】従来の間隔材を分岐器後端を背にして見た斜視図。
【
図9】従来の間隔材との位置関係を示す分岐タイプレートの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る間隔材を
図1乃至
図6を参照して説明する。分岐器におけるポイント後端の付近、すなわちポイント後端部の平面構成を
図1に示す。分岐器Tは、ポイント後端より後方にリード部を有し、前方にポイント部を有する。リード部は、リードレール2を有する。ポイント部は、トングレール3を有する。トングレール3は、リードレール2と連結されている。基本レール4は、リード部とポイント部に跨っており、リードレール2及びトングレール3に近接している。なお、
図1では、マクラギ6を直線で示している。また、同図において、レールの継目を丸印で示している(
図7において同様)。
【0016】
間隔材1は、鉄道の分岐器Tに設けられる。この間隔材1は、使用状態において、リードレール2及びトングレール3と、基本レール4との間に設けられる。
図1では、間隔材1に斜線を付している。
【0017】
図2乃至
図5に示されるように、間隔材1は、凹部11が、この間隔材1の底部に形成されている。凹部11は、レール方向に延びて間隔材1の両端、すなわち前端1a及び後端1bに達している。
【0018】
分岐タイプレート5は、リードレール2及び基本レール4をマクラギ6に固定している。凹部11は、間隔材1をリードレール2と基本レール4との間で分岐器後方に移動させるときに(
図1のX方向)、
図6に示されるような、分岐タイプレート5と干渉しない形状とされている。なお、
図6は、
図1におけるA−A線断面の構造を示している。
【0019】
各構成をさらに詳述する。間隔材1は、金属製の部材である。間隔材1のリードレール2に接する側面12は、リードレール2の腹部に対応する形状を有する(
図4参照)。間隔材1の基本レール4に接する側面14は、基本レール4の腹部に対応する形状を有する。間隔材1のトングレール3に対向する側面13は、トングレール3の動作に支障しないように、トングレール3から離間している(
図5参照)。側面13と側面14との間隔、及び、側面12と側面14との間隔は、前端1aから後端1bに向けて漸次広くなっている。間隔材1の上部には、車輪の通過に支障しないように、溝部15が形成されている。間隔材1は、レールに締結するためのボルト孔16を有する(
図2参照)。ボルト孔16は、側面12と側面14との間、及び、側面13と側面14との間を貫通している(
図3参照)。
【0020】
分岐タイプレート5は、分岐器においてレールをマクラギ6に固定する板状部材であり、上面にレールの脚部と係合する突起部51を有する。
【0021】
間隔材1の凹部11は、ほぼ溝状であり、前端1aの近傍に、側面13まで拡幅された部分を有する(
図3参照)。間隔材1の前端1aの形状は、従来の間隔材と同様である(
図5参照)。凹部11の深さは、分岐タイプレート5の突起部51と干渉しないように設定される(
図6参照)。分岐タイプレート5は、2枚連続して用いられ(
図1参照)、それぞれの分岐タイプレート5を反転させて敷設しているため(
図6参照)、双方の突起部51と干渉しないように凹部11の断面形状が定められる。
【0022】
このような凹部11は、従来と同様の形状の間隔材の底部を切削することによって形成される。従来の間隔材101に凹部11を切削加工して、本実施形態の間隔材1にしてもよい。凹部11は、数ミリメートル程度の深さであり、間隔材1の強度にほとんど影響を及ぼさない。凹部11は、R加工がされる(
図4参照)。R加工によって、切削加工が容易になるととともに、間隔材1の応力集中が避けられる。
【0023】
上記のように構成された間隔材1は、凹部11が底部に形成されているので、リードレール2と基本レール4との間で分岐器後方に移動させるときに分岐タイプレート5と干渉せず、分岐器から容易に取り出すことができる。
【0024】
凹部11は、間隔材1の底部を切削することによって、容易に形成することができる。
【0025】
本実施形態の間隔材1が設けられた分岐器について、細密検査における作業手順と必要時間を試験を行って確認した。その試験結果を時系列に示す。分岐タイプレート5を撤去する作業は不要になった。間隔材1をレールに締結している各ボルトを外し、間隔材を抜き取る(15分)。間隔材1のボルト孔16等を目視点検し、大床板を清掃及び目視点検し、グリスを塗る(7分)。間隔材1を元の位置に戻し、各ボルトを締結する(15分)。分岐タイプレート5を元の位置に戻す作業は不要になった。このように、分岐器の細密検査の必要時間は、合計37分となり、従来の70分と比べて大幅に短縮された。
【0026】
したがって、この間隔材1が設けられた分岐器は、線路閉鎖された限られた時間内に細密検査等の作業を終わらせることが極めて容易になる。すなわち、本実施形態の間隔材1を導入することにより、分岐器の検査作業等が効率化されるだけでなく、作業の遅れによって列車の運転に支障するリスクが低減される。
【0027】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、間隔材1の凹部11の形成方法は、切削加工に限定されず、間隔材1が凹部11を有するように鋳造してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 間隔材
11 凹部
2 リードレール
3 トングレール
4 基本レール
5 分岐タイプレート
6 マクラギ
T 分岐器