【文献】
秋山雪治,出井正彦,八木芳雄,岩崎英治,堀江俊晴,白井淳一,西澤明美,中村篤,島本晴夫,DPI法によるLSI導電性イミュニティ評価技術の開発,エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集,一般社団法人エレクトロニクス実装学会,2009年
【文献】
市川浩司,櫻井礼彦,稲垣正史,松井武,馬淵雄一,中村篤,林亨,基板解析への応用に向けたLSIイミュニティ評価法の検討,電子情報通信学会技術研究報告.EMJ,環境電磁工学,一般社団法人電子情報通信学会,2004年,77〜82頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内部ノイズ到達周波数特性は、前記第1電気回路の実測ノイズ特性、前記第1電気回路の等価回路、及び、前記デバイス全体の等価回路に基づいて求められることを特徴とする請求項1に記載のデバイスの評価方法。
前記第1電気回路と前記第2電気回路は、複数のプリント配線基板にそれぞれ配置されており、前記複数のプリント配線基板間がケーブルで結合されていることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載のデバイスセット。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<DPIテスト(第1構成例)>
図1は、DPIテストの第1構成例を示すブロック図である。DPIテストは、国際電気標準会議(IEC[international electrotechnical commission])で標準化された半導体集積回路用EMS[electromagnetic susceptibility]検証法の一つ(IEC62132−4)であり、被試験デバイス10(以下、DUT[device under test]10と呼ぶ)のほか、ノイズ源部20、検知部30、コントローラ40、バッテリ50、及び、電源フィルタ60などを用いて実施される。
【0013】
DUT10は、対象電気回路11(以下、LSI11と呼ぶ)とこれを搭載したプリント配線基板(PCB[printed circuit board])を含む。もちろん、DUT10としてLSI11単体を用いることも可能である。なお、DUT10は、必ずしも実機デバイスである必要はなく、一般的には試験用の模擬デバイスを用いることが多い。
【0014】
特に、複数LSIの相互比較(例えば、新モデルLSIと旧モデルLSIとの相互比較や、自社LSIと他社コンパチブルLSIとの相互比較)を行う場合には、評価対象となるLSI以外の構成要素(PCBのサイズや配線パターン、ないしは、PCBに搭載されるディスクリート部品の種類や特性など)が共通化された試験用の模擬デバイスを用いることが望ましい。
【0015】
ノイズ源部20は、DUT10の端子(
図1では電源端子VCCを例示)に高周波ノイズ信号(妨害波電力)を注入する主体であり、シグナルジェネレータ21と、RFアンプ22と、双方向性結合器23と、進行波側パワーセンサ24と、反射波側パワーセンサ25と、パワーメータ26と、カップリングコンデンサ27と、を含む。
【0016】
シグナルジェネレータ(SG[signal generator])21は、正弦波状の高周波ノイズ信号を発生する。高周波ノイズ信号の発振周波数と振幅は、いずれもコントローラ40によって制御することができる。なお、妨害波がパルスの場合、パルスジェネレータ(PG[pulse generator])、妨害波がインパルスの場合、インパルスジェネレータ(IG[impulse generator]を用いても良い。
【0017】
RF[radio frequency]アンプ22は、シグナルジェネレータ21で生成された高周波ノイズ信号を所定の利得で増幅する。
【0018】
双方向性結合器(BDC[bi-directional coupler])23は、RFアンプ22で増幅された高周波ノイズ信号をDUT10に向かう進行波成分とDUT10から戻ってくる反射波成分に分離する。
【0019】
進行波側パワーセンサ24は、双方向性結合器23で分離された進行波成分の電力測定を行う。一方、反射波側パワーセンサ25は、双方向性結合器23で分離された反射波成分の電力測定を行う。なお、進行波側パワーセンサ24及び反射波側パワーセンサ25への各伝送線路は、いずれも疑似遮断状態(例えば、インピーダンス:50Ω以上、電力通過特性:−20dBm以下)としておくことが望ましい。
【0020】
パワーメータ26は、進行波側パワーセンサ24で測定された進行波電力と反射波側パワーセンサ25で測定された反射波電力をコントローラ40に送出する。コントローラ40により差分演算することにより、DUT10に対して実際に注入された電力を算出し、その算出結果をコントローラ40に記録する。このように、DUT10への注入電力は、DUT10からかけ離れたパワーメータ26で測定される。従って、DUT10への注入電力を高精度に測定するためには、高周波ノイズ信号伝送時のケーブルロスを極力小さい値(例えば1dB以下)に低減することが望ましい。
【0021】
カップリングコンデンサ27は、双方向結合器23の出力端とDUT10との間に接続されて、直流成分をカットして交流成分(高周波ノイズ信号)のみを通過させる。なお、
図1では、カップリングコンデンサ27をノイズ源部20の構成要素として描写したが、LSI11を搭載したPCB上にセラミックコンデンサを配置して代用する場合も多い。
【0022】
検知部30は、DUT10の出力波形を監視してその監視結果をコントローラ40に送出する。検知部30としてはオシロスコープなどを好適に用いることができる。なお、検知部30の存在がDPIテストに影響を及ぼさないように、高入力インピーダンス(1MΩ)の差動プローブを使用して、DUT10から検知部30への伝送線路を疑似遮断状態とすることが望ましい。
【0023】
コントローラ40は、DPIテストを統括制御する主体である。DPIテストの実施に際して、コントローラ40は、例えば、DUT10に注入される高周波ノイズ信号の発振周波数を固定したまま、高周波ノイズ信号の振幅(注入電力)を徐々に大きくしていくように、シグナルジェネレータ21を制御する。また、コントローラ40は、上記の振幅制御と並行して、検知部30の監視結果に応じたLSI11の誤動作判定(クロック信号のパルス抜けや周波数乱れ、出力電圧の規格外れ、または、通信エラーなどを起こしたか否かの判定)を行う。そして、コントローラ40は、LSI11の誤動作発生時点におけるパワーメータ26の測定値の演算結果(DUT10への注入電力)を取得し、これを現在設定中の発振周波数と関連付けて記憶する。以降も、コントローラ40は、高周波ノイズ信号の発振周波数をスイープしながら上記測定を繰り返すことにより、高周波ノイズ信号の発振周波数と誤動作発生時の注入電力とを関連付けた誤動作電力周波数特性を求める。なお、コントローラ40としては、上記測定をシーケンシャルに実施し得るパーソナルコンピュータなどを好適に用いることができる。
【0024】
バッテリ50は、DUT10に電力供給を行う直流電源である。例えば、車載用LSIをDPIテストの評価対象とする場合には、バッテリ50として車載バッテリを用いればよい。ただし、DUT10への直流電源としては、バッテリに限らず、商用交流電力から所望の直流電力を生成するAC/DCコンバータなどを用いることも可能である。
【0025】
電源フィルタ60は、ノイズ源部20からバッテリ50への伝送線路を疑似遮断状態とするための回路部であり、電源インピーダンス安定回路網61及び62(以下、LISN[line impedance stabilization network]61及び62と呼ぶ)を含む。LISN61及び62は、いずれもバッテリ50の見かけ上のインピーダンスを安定化させる。なお、LISN61は、バッテリ50の正極端子(+)とDUT10の電源端子(VCC)との間を結ぶ電源ラインに挿入されており、LISN62は、バッテリ50の負極端子(−)とDUT10のGND端子(VEE)との間を結ぶGNDラインに挿入されている。
【0026】
<DPIテスト結果(誤動作電力周波数特性)>
図2は、DPIテスト結果(誤動作電力周波数特性)の一例を示す図である。なお、本図の横軸は高周波ノイズ信号の発振周波数[Hz]を示しており、縦軸は高周波ノイズ信号の注入電力[dBm]を示している。本図では、DPIテストの結果として高周波ノイズ信号の発振周波数毎にLSI11が誤動作を起こす限界の注入電力がプロットされている(図中の実線を参照)。すなわち、図中の実線は誤動作境界となるので、これより上側の領域(I)は誤動作領域となり、これより下側の領域(II)は正常動作領域となる。
【0027】
ただし、所定の最大電力(例えば38〜40dBm)を注入しても誤動作を生じなかった発振周波数では、暫定的に上記最大電力がプロットされている(図中の破線を参照)。すなわち、図中の破線は正常動作保証境界となるので、これより上側の領域(III)は保証外領域となり、これより下側の領域(II)は正常動作領域となる。
【0028】
このように、DPIテストでは、DUT10が誤動作を起こす限界の高周波ノイズ信号の大きさをDUT10に注入される電力で表した誤動作電力周波数特性が求められる。ただし、背景技術の項でも述べたように、誤動作電力周波数特性は取得しやすい情報ではある反面、実際のLSI11で生じる事象を改善するための情報としては扱いにくかった。
【0029】
そこで、以下では、DPIテストにより上記の誤動作電力周波数特性を求めるステップに加えて、さらに、誤動作電力周波数特性からLSI11が誤動作を起こす限界の高周波ノイズ信号の大きさをLSI11の所定部分に流れる端子電流I_LSIで表した誤動作電流周波数特性及びLSI11が誤動作を起こす限界の高周波ノイズ信号の大きさをLSI11の所定点間に現れる端子電圧V_LSIで表した誤動作電圧周波数特性をそれぞれ求めるステップを有する電気回路の評価方法を提案する。
【0030】
なお、当該評価方法の実施に際しては、DUT10とLSI11のS[scattering]パラメータを測定してLSI11の等価回路化とそのAC解析を行い、さらに、その解析結果に基づいて端子電流I_LSIと端子電流V_LSIのIB[immunity behavior]モデル化(誤動作電流周波数特性と誤動作電圧周波数特性の取得)を行う。以下では、これらの要素ステップについて順次詳細に説明する。
【0031】
<Sパラメータ測定>
図3は、Sパラメータ測定の一例を示す図である。Sパラメータとは、DUT10やLSI11の周波数特性を表すパラメータであり、回路網の電力通過特性や電力反射特性を示すものである。例えば、
図3で例示したSパラメータ|S11|は、2端子対回路(4端子回路網)において、第1端子から信号を入力したときに同第1端子に反射する信号の割合(反射損失)を示している。2端子対回路では、第1端子の反射損失(|S11|)以外にも、第1端子から第2端子への挿入損失(|S21|)、第2端子から第1端子への挿入損失(|S12|)、及び、第2端子の反射損失(|S22|)が測定される。なお、LSI11については単体のSパラメータを測定すればよく、DUT10についてはLSI実装時のSパラメータを測定すればよい。
【0032】
<等価回路化>
図4は、等価回路化の一例を示す図である。DUT10とLSI11のSパラメータから、LSI11とこれを搭載するPCBの等価回路化を行う。等価回路化に際しては、例えば、本図で示したように、LSI11を抵抗R、インダクタL、コンデンサCの直列回路とみなしたり、PCBを配線パターンのインダクタLと搭載部品(コンデンサCなど)で表したりすればよい。
【0033】
<AC解析>
図5は、AC解析の一例を示す図である。LSI11及びこれを搭載するPCBの等価回路に対してAC解析を行う。なお、交流電圧Vs[Vrms]を生成するAC信号源としては、50Ω系の交流電圧源を用いればよい。このとき、LSI11の所定部分に流れる端子電流I_LSI、及び、LSI11の所定点間に現れる端子電圧V_LSIは、それぞれ、次の(1a)式及び(1b)式で示すように、交流電圧Vsの関数として表すことができる。
【0034】
I_LSI=fI(Vs) …(1a)
V_LSI=fV(Vs) …(1b)
【0035】
また、AC信号源で生成される交流電圧VsとLSI11への注入電力Piとの間には次の(2)式が成立する。
【0037】
従って、(2)式を(1a)式及び(1b)式に各々代入すると、端子電流I_LSI及び端子電圧V_LSIは、それぞれ、次の(3a)式及び(3b)式で示すように、注入電力Piの関数として表すことができる。
【0038】
I_LSI=fI(Vs)=fI(√(Pi×200))=gI(Pi) …(3a)
V_LSI=fV(Vs)=fv(√(Pi×200))=gV(Pi) …(3b)
【0039】
なお、端子電流I_LSIが流れる所定部分としては、LSI11の信号入力端子、信号出力端子、信号入出力端子、電源端子、GND端子、放熱フィン板などを挙げることができる。特に、LSI11の信号入力端子に対して高周波ノイズ信号が入力されると、LSI11に誤動作を生じやすいので、信号入力端子の誤動作電流周波数特性や誤動作電圧周波数特性を求めることは非常に重要である。
【0040】
<IBモデル化(誤動作電流/電圧周波数特性)>
図6は、誤動作電流周波数特性と誤動作電圧周波数特性の一例を示す図である。先出の(3a)式及び(3b)式にDPIテストの結果(LSI11が誤動作を起こす限界の注入電力Pi)を代入すると、高周波ノイズ信号の発振周波数毎に、LSI11が誤動作を起こす限界の端子電流I_LSIと端子電圧V_LSIが得られる。
【0041】
このように、本発明に係る電気回路の評価方法において、誤動作電力周波数特性は、DUT10についてのものであるとともに、誤動作電流周波数特性及び誤動作電圧周波数特性は、誤動作電力周波数特性からLSI11についての周波数特性を抽出したものとなっている。その際、上記の誤動作電流周波数特性及び誤動作電圧周波数特性は、DUT10の誤動作電力周波数特性、DUT10の等価回路、及び、LSI11の等価回路に基づいて抽出される。
【0042】
なお、上記の誤動作電流周波数特性及び誤動作電圧周波数特性に関するデータは、LSI11と共にユーザへ提供するとよい。このようなデータ提供を行うことにより、ユーザは、LSI11の誤動作を容易に回避することが可能となる。
【0043】
<到達電流/電圧周波数特性との比較>
図7は、
図6で示した誤動作電流周波数特性及び誤動作電圧周波数特性(実線)と、到達電流周波数特性及び到達電圧周波数特性(破線)との比較例を示す図である。到達電流周波数特性とは、LSI11を含む測定対象回路ユニットまたはその模擬ユニットに対して所定のイミュニティテスト(詳細は後述)を行なったときにLSI11の所定部分に到達して流れる到達電流I_arrの周波数特性である。一方、到達電圧周波数特性とは、上記のイミュニティテストを行ったときにLSI11の所定点間に到達して現れる到達電圧V_arrの周波数特性である。
【0044】
このように、本発明に係る電気回路の評価方法は、先に求めたLSI11の誤動作電流周波数特性及び誤動作電圧周波数特性をEMS評価に活用すべく、各々をLSI11の到達電流周波数特性及び到達電圧周波数特性と比較するステップを有する。このような比較を行うことにより、例えば、
図7において破線が実線を上回っている発振周波数では、LSI11が誤動作を生じ得ると判断することができる。また、LSI11の各端子毎に上記と同様の比較を行えば、誤動作を生じ得る端子を特定することができるので、速やかに回路設計を改善することが可能となる。
【0045】
以上により、同一のLSI11を使用している条件であれば、PCBの構造やノイズ注入方法(テスト方法)が変わったとしても、端子電流I_LSIと端子電圧V_LSIを算出することにより、LSI11が誤動作を起こすか否かを推測することが可能となる。
【0046】
なお、LSI11の到達電流周波数特性及び到達電圧周波数特性は、LSI11を搭載する測定対象回路ユニットの等価回路または模擬ユニットの等価回路に基づいてシミュレーションで求められる。このようなシミュレーションを行う際には、測定対象回路ユニットまたはその模擬ユニットに対して、所定のイミュニティテストを行う必要がある。
【0047】
例えば、車載用LSIを評価対象とする場合には、上記のイミュニティテストとして、ISO11452に準拠したテストを行うことが望ましい。なお、ISO11452に準拠したテストとしては、ISO11452−2に準拠した放射イミュニティテスト、ISO11452−3に準拠したTEMCELL[transverse electromagnetic cell]テスト、及び、ISO11452−4に準拠したBCI[bulk current injection]テストなどを挙げることができる。また、イミュニティテストとしては、ISO7637やIEC61000−4シリーズに代表される製品のイミュニティ試験に準拠したテストを採用してもよい。以下では、BCIテストを例に挙げて詳細な説明を行う。
【0048】
<BCIテスト>
図8は、BCIテストの一構成例を示すブロック図である。BCIテストは、国際標準化機構(ISO[international organization for standardization])で標準化された車載電子機器向けの狭帯域電磁放射エネルギーによる電気的妨害のためのコンポーネント試験方法の一つ(製品用EMS規格:ISO11452−4)である。
【0049】
BCIテストは、LSI11を含む測定対象回路ユニット100(またはその模擬ユニット)に対して実施されるテストであり、先のDPIテスト(
図1を参照)と同様、DUT10のほか、ノイズ源部20、検知部30、コントローラ40、バッテリ50、及び、電源フィルタ60などを用いて実施される。
【0050】
測定対象回路ユニット100は、LSI11が搭載される実際の製品(実機)に相当するものであり、先出のDUT10やバッテリ50のほかに、DUT10と電源フィルタ部60との間を電気的に接続する1.5〜2.0m程度のワイヤーハーネス70を含む。なお、ワイヤーハーネス70にはインジェクションプローブ80が挿入されており、ノイズ源部20の50Ω伝送線路28を介してバルク電流が注入される。
【0051】
なお、測定対象回路ユニット100に対してBCIテストを行った場合、LSI11の到達電流周波数特性及び到達電圧周波数特性は、測定対象回路ユニット100の等価回路に基づいてシミュレーションで求められる。
【0052】
一方、測定対象回路ユニット100を簡略化した模擬ユニットに対してBCIテストを行った場合、LSI11の到達電流周波数特性及び到達電圧周波数特性は、測定対象回路ユニット100の等価回路と模擬ユニットの等価回路の双方に基づいてシミュレーションで求められる。
【0053】
なお、上記の等価回路は、測定対象回路ユニット100のSパラメータとLSI11のSパラメータに基づくものである。
【0054】
このように、本発明に係る電気回路の評価方法は、LSI11を含む測定対象回路ユニット100に対して所定のイミュニティテスト(例えばBCIテスト)を行なったときにLSI11の所定部分に到達して流れる到達電流I_arrを表わす到達電流周波数特性をLSI11の等価回路及び測定対象回路ユニット100の等価回路に基づいてシミュレーションで求めるステップと、同イミュニティテストを行なったときにLSI11の所定点間に到達して現れる到達電圧V_arrを表わす到達電圧周波数特性をLSI11の等価回路及び測定対象回路ユニット100の等価回路に基づいてシミュレーションで求めるステップと、を有する。
【0055】
<DPIテスト(第2構成例)>
図9は、DPIテストの第2構成例を示すブロック図である。第2構成例は、先の第1構成例と基本的に同一であるが、高周波ノイズ信号をDUT10の端子にグラウンド基準で入力するのではなく、高周波ノイズ信号をDUT10のグラウンド端子VEE自体に入力し、LSI11が誤動作を起こす電力の大きさの周波数特性(誤動作電力周波数特性)を求める点に特徴を有する。そこで、第1構成例と同様の構成要素については、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2構成例の特徴部分について重点的に説明する。
【0056】
DPIテストの第2構成例における一つ目の特徴は、LSI11が誤動作を起こすかどうかを検知する検知部30の検知基準グラウンド30aがDUT10のグラウンド端子VEEに対して高インピーダンス部品31で接続されている点である。この高インピーダンス部品31は、抵抗器(例えば10kΩ)、コイル、フェライトビーズ等で構成する。
【0057】
DUT10のグランド端子VEEに高周波ノイズ信号を注入する場合、検知部30の基準電位を得るために検知基準グラウンド30aをDUT10のグラウンド端子VEEに低インピーダンスで接続してしまうと、高周波ノイズ信号が検知部30のグラウンドに分散してしまうので、検知部30の存在がDPIテスト結果に影響を及ぼしてしまう。一方、検知部30のグラウンドをDUT10のグラウンド端子VEEから完全に絶縁してしまうと、DUT10と検知部30のグラウンド電位が不一致となるので、出力波形の検出を正しく行うことができなくなる。
【0058】
そこで、検知部30の検知基準グラウンドとDUT10のグラウンド端子VEEとの間を高インピーダンス部品31で接続した状態(疑似遮断状態)とすることにより、検知部30に向けた高周波ノイズ信号のリークを低減することができるので、上記の問題を解消することが可能となる。
【0059】
DPIテストの第2構成例における二つ目の特徴は、DUT10に誤動作テスト用の高周波ノイズ信号を入力するノイズ源部20のグラウンド20aがDUT10のグラウンドVEEから直流的に遮断されている点である。つまり、グラウンド20aは、グラウンドVEEとは別ノードとなっている。このような構成を採用することにより、ノイズ源部20のグラウンドVEEに向けた高周波ノイズ信号のリークを防止することが可能となる。
【0060】
DPIテストの第2構成例における三つ目の特徴は、DUT10に誤動作テスト用の高周波ノイズ信号を入力するノイズ源部20のグラウンド20aが、DUT10に電力供給を行うバッテリ50等の直流電源系のグラウンド50aと別ノードとなっていて遮断されている点である。
【0061】
図9に示すように、ノイズ源部20のグラウンド20aは、共通グラウンドとなっていて、コントローラ40および検知部30のシステムグラウンドと共通電位に置かれる。
【0062】
なお、上記の誤動作電力周波数特性に関するデータは、LSI11と共にユーザへ提供するとよい。このようなデータ提供を行うことにより、ユーザは、当該データをLSI11の誤動作回避に活用することが可能となる。
【0063】
図10は、
図9の第2構成例と他の構成例とを比較するための模式図である。(X)欄には、第1構成例と同様、グラウンド基準でLSIの出力端子OUT1に高周波ノイズ信号を注入する構成が描写されている。(Y)欄には、アンテナからシャーシに向けて妨害電波を放出することでLSIのグラウンド端子VEEに高周波ノイズ信号を注入する構成が描写されている。(Z)欄には、第2構成例と同様、LSIのグラウンド端子VEE自体に高周波ノイズ信号を注入する構成が描写されている。
【0064】
(X)欄で示した構成では、LSIのグラウンド端子VEE以外の端子に高周波ノイズ信号を注入した場合の誤動作しか評価することができない。
【0065】
(Y)欄で示した構成であれば、LSIのグラウンド端子VEEに高周波ノイズ信号を注入した場合の誤動作を評価することができる。ただし、このような構成では、シャーシの存在がDPIテストの結果に影響を及ぼしてしまう。
【0066】
(Z)欄で示した構成であれば、シャーシの影響を受けることなく、LSIのグラウンド端子VEEに高周波ノイズ信号を注入した場合の誤動作を評価することができる。
【0067】
<DPIテスト(第3構成例)>
図11は、DPIテストの第3構成例を示すブロック図である。第3構成例も第2構成例と同様にして、高周波ノイズ信号をDUT10のグラウンド端子VEE自体に入力し、LSI11が誤動作を起こす電力の大きさの周波数特性(誤動作電力周波数特性)を求めるものである。第2構成例と同様の構成要素については、
図9と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第3構成例の特徴部分について重点的に説明する。
【0068】
DPIテストの第3構成例では、検知部30が高入力インピーダンス(例えば1MΩ)の差動入力部30bを有し、その一方の入力である第1差動入力30b1にDUT10の検知対象部が接続される。一方、差動入力部30bの他方の入力である第2差動入力30b2にはDUT10のGND端子(VEE)が接続される。これによって、DUT10から検知部30への結合が疑似遮断状態となり、検知部30の存在がDPIテストに影響を及ぼさないようにすることができる。なお、第3構成例の検知部30においては、DUT10と検知部30の検知基準グラウンド電位を一致させる必要がないので、検知部30のグラウンドをDUT10のグラウンド端子VEEから完全に絶縁してよく、検知基準グラウンド30aは適宜の電位に接続される。
【0069】
<DPIテスト(第4構成例)>
図12は、DPIテストの第4構成例を示す模式図である。第4構成例は、先の第1構成例〜第3構成例と基本的に同一であるが、DUT10がシールド構造110の内部に配置されている点に特徴を有する。そこで、第1構成例〜第3構成例と同様の構成要素については、
図1、
図9、ないし、
図11と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第4構成例の特徴部分について重点的に説明する。
【0070】
DPIテストの第4構成例では、DUT10がシールド構造110の内部に配置されている。シールド構造110は、導体で形成された閉空間であり、例えば、電界シールドとして一般に用いられているシールドルームやシールドボックスがこれに相当する。
【0071】
誤動作テスト用の高周波ノイズ信号は、ノイズ源部20から同軸ケーブル120を介してDUT10に入力される。なお、高周波ノイズ信号を入力したときにDUT10が誤動作を起こす電力の大きさの周波数特性を求める点については、第1構成例〜第3構成例のDPIテストと同様である。
【0072】
ここで、シールド構造110のグラウンド(シールドルーム壁)とノイズ源部20のグラウンド(GNDA)とは、DC的ないしAC的(RF的)に良好な導通度を持って互いにショートされている。一方、DUT10のグラウンド(GND)とシールド構造110のグラウンド(GNDA)とは、互いに遮断されている。
【0073】
図12の例に即して具体的に述べると、ノイズ源部20からDUT10に至る同軸ケーブル120は、貫通型Nコネクタなどを介してシールド構造110を貫通している。同軸ケーブル120の外部導体(グラウンド線)121は、シールド構造110とショートされる一方、DUT10とは遮断されている。従って、DUT10に設けられた任意の端子(特にグラウンド端子)に対して高周波ノイズ信号を注入するための条件が満たされる。
【0074】
一方、同軸ケーブル120の内部導体122は、高周波ノイズ信号の伝送線路としてDUT10に接続されている。このとき、高周波ノイズ信号の注入を受けたPCBの配線パターン(特にGNDパターン)は、放射アンテナの役割を果たす。
【0075】
このように、第4構成例のDPIテストを実施するための評価装置は、DUT10を配置するためのシールド構造110と、シールド構造110を貫通する同軸ケーブル120と、同軸ケーブル120により誤動作テスト用の高周波ノイズ信号をDUT10に入力するノイズ源部20とを有する。そして、同軸ケーブル120は、シールド構造110とショートするとともにDUT10とは遮断される外部導体121と、DUT10に接続して高周波ノイズ信号を入力するための内部導体122とを持つ。
【0076】
<高周波ノイズ信号のリターンパス>
図13は、高周波ノイズ信号のリターンパスを示す模式図である。なお、DUT10の内部における大破線矢印は、高周波ノイズ信号が注入される任意の端子(ここではグラウンド端子とする)から一番通りやすい経路を通じてDUT10を通過するノイズ伝搬経路を示している。また、DUT10からシールド構造110に向かう小破線矢印は、電波を介したノイズ伝搬経路を示している。また、シールド構造110に沿った実線矢印は、シールド構造110を経由してノイズ源部20に戻る伝導性妨害ノイズを示している。
【0077】
DUT10のグラウンドに注入された高周波ノイズ信号は、その発振周波数に応じて一番通りやすい経路を通じてノイズ源部20に戻る。DUT10のグラウンド(GND)とシールド構造110のグラウンド(GNDA)は遮断されているので、相互間は電波によって結合する(図中の小破線を参照)。この電波を介した一番通りやすい経路を通じて形成されるリターンパスが、第3構成例のDPIテストにおける重要な要件となる。
【0078】
DUT10をシールド構造110で囲まずに実施するDPIテストの場合、DUT10のグラウンド(GND)から放射された電波がノイズ源部20のグラウンド(GNDA)に戻る経路は、テスト環境(建造物の構造や電波の伝搬特性など)によって千差万別であり、これがテスト結果に影響を及ぼす。これに対して、DUT10をシールド構造110で囲んで実施するDPIテストであれば、上記リターンパスがシールド構造100を介した経路に固定されるので、テスト環境に依存しないテスト結果を得ることが可能となり、延いては、DUT10の実使用状態を反映した誤動作評価を行うことが可能となる。
【0079】
なお、上記の誤動作電力周波数特性に関するデータは、LSI11と共にユーザへ提供するとよい。このようなデータ提供を行うことにより、ユーザは、当該データをLSI11の誤動作回避に活用することが可能となる。
【0080】
<アタッチメント>
図14は、DUT10と同軸ケーブル120との間に挿入されるアタッチメントの一構成例を示す模式図である。(A)欄では、同軸ケーブル120、アタッチメント130、及び、DUT10側に設けられたコネクタ140が互いに分離された状態で描写されている。(B)欄では、アタッチメント130を用いて同軸ケーブル120とコネクタ140とを接続した状態が描写されている。(C)欄では、アタッチメント130を用いることなく同軸ケーブル120とコネクタ140とを直接接続した状態が描写されている。
【0081】
本構成例のアタッチメント130は、外部導体131と内部導体132を含む。(B)欄で示したように、アタッチメント130を用いて同軸ケーブル120とコネクタ140とを接続した状態において、アタッチメント130の外部導体131は、同軸ケーブル120の外部導体121(GNDA)に導通されることなく、コネクタ140の外部導体141(GND)に導通される。なお、同軸ケーブル120の外部導体121とアタッチメント130の外部導体131とは、フランジ固定用SMA[sub miniature type A]コネクタの対向面間(4mm)で分離すればよい。
【0082】
一方、アタッチメント130の内部導体132は、一端が外部導体131にショートされており、コネクタ140の内部導体142(信号ライン)に導通されることなく、同軸ケーブル120の内部導体122(ノイズライン)に導通される。なお、外部導体131は、内部導体132とのショート点から開放端までが24mmのオープンスタブとなる。
【0083】
当該構成のアタッチメント130を用いることにより、極めて容易に、同軸ケーブル120の外部導体121をDUT10と遮断しながら内部導体122をDUT10に接続することが可能となる。
【0084】
また、(C)欄で示したように、アタッチメント130を用いることなく同軸ケーブル120とコネクタ140とを直接接続すれば、当然のことながら、同軸ケーブル120の外部導体121及び内部導体122と、コネクタ140の外部導体141及び内部導体142との間を相互に接続することが可能となる。
【0085】
<複数の電気回路を含むデバイス全体の評価方法>
図15は、複数の電気回路を含むデバイスの一構成例を示す模式図である。本構成例のシステムボード210は、複数の半導体集積回路装置211〜214(以下では、LSI211〜214と呼ぶ)をプリント配線基板215(以下では、PCB215と呼ぶ)上に搭載したデバイスである。LSI211〜214は、それぞれ、PCB215上のプリント配線216に接続されている。
【0086】
LSI211とLSI212とは同一の機種であり、LSI211(及び212)と、LSI213と、LSI214とは、互いに異なる機種である。なお、PCB215上におけるLSI211〜214の搭載位置は、当然のことながら互いに異なっている。
【0087】
システムボード210全体の誤動作評価を行う場合、一般的には、システムボード210全体を被試験デバイス(DUT)として、DPIテストなどを行うことが考えられる。しかしながら、このような評価方法では、システムボード210の配線レイアウトやLSI211〜214の搭載位置などを変更する度に、DPIテストをやり直す必要があるので、必ずしも効率的ではない。
【0088】
そこで、以下では、複数の電気回路を含むデバイスが誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさをシミュレーションで求めることのできる電気回路の評価方法を提案する。
【0089】
まず、第1のステップでは、システムボード210に搭載されるLSI211〜214毎に、各々が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第1誤動作周波数特性をそれぞれ求める。なお、第1誤動作周波数特性は、先に説明したDPIテストの結果として求められる。すなわち、第1のステップでは、LSI211〜214毎に、各LSIが誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを各LSIの所定部分に流れる電流で表した誤動作電流周波数特性、及び、各LSIが誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを各LSIの所定点間に現れる電圧で表した誤動作電圧周波数特性をそれぞれ求めればよい。
【0090】
次に、第2のステップでは、LSI211〜214毎に求められた第1誤動作周波数特性、システムボード210全体の等価回路、及び、LSI211〜214毎の等価回路に基づいて、システムボード210全体が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第2誤動作周波数特性を求める。
【0091】
なお、システムボード210全体の等価回路、及び、LSI211〜214毎の等価回路は、それぞれSパラメータ(先出の
図3を参照)に基づくものである。
【0092】
上記の評価方法によれば、LSI211〜214を含むシステムボード210の誤動作周波数特性をシミュレーションで求めることができるので、システムボード210の配線レイアウトやLSI211〜214の搭載位置などを変更する度に、DPIテストをやり直す必要がなくなる。
【0093】
なお、
図15では、複数の電気回路がLSI211〜214であり、これらを含むデバイスがシステムボード210である構成を例に挙げたが、上記の評価方法を適用し得る対象は、何らこれに限定されるものではなく、種々のバリエーションを取ることができる。
【0094】
図16は、複数の電気回路を含むデバイスのバリエーションを示す模式図である。
【0095】
図16の(1)欄には、先の
図15と同様、LSI211〜214をPCB215上に搭載したシステムボード210が描写されている。本構成例において、LSI211〜214は、複数の電気回路に相当し、システムボード210は、複数の電気回路を含むデバイスに相当する。なお、本構成例において、システムボード210全体の誤動作評価を行う場合、まず、システムボード210に搭載されるLSI211〜214毎に、各々が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第1誤動作周波数特性をそれぞれ求めた上で、当該第1誤動作周波数特性、システムボード210全体の等価回路、及び、LSI211〜214毎の等価回路に基づいて、システムボード210全体が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第2誤動作周波数特性を求めればよい。
【0096】
図16の(2)欄には、回路ブロック221〜224をウェハ225上に集積化したベアチップ220が描写されている。本構成例において、回路ブロック221〜224は、複数の電気回路に相当し、ベアチップ220は、複数の電気回路を含むデバイスに相当する。なお、本構成例において、ベアチップ220全体の誤動作評価を行う場合、まず、ベアチップ220に集積化される回路ブロック221〜224毎に、各々が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第1誤動作周波数特性をそれぞれ求めた上で、当該第1誤動作周波数特性、ベアチップ220全体の等価回路、及び、回路ブロック221〜224毎の等価回路に基づいて、ベアチップ220全体が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第2誤動作周波数特性を求めればよい。
【0097】
図16の(3)欄には、ベアチップ231〜234をリードフレーム235上の互いに絶縁された部分に各々搭載したマルチチップ型の半導体集積回路装置230(以下では、LSI230と呼ぶ)が描写されている。本構成例において、ベアチップ231〜234は、複数の電気回路に相当し、LSI230は、複数の電気回路を含むデバイスに相当する。本構成例において、LSI230全体の誤動作評価を行う場合、まず、LSI230にパッケージングされるベアチップ231〜234毎に、各々が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第1誤動作周波数特性をそれぞれ求めた上で、当該第1誤動作周波数特性、LSI230全体の等価回路、及び、ベアチップ231〜234毎の等価回路に基づいて、LSI230全体が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第2誤動作周波数特性を求めればよい。
【0098】
図16の(4)欄には、ベアチップ241〜244をモジュール基板245上の互いに絶縁された部分に各々搭載したマルチチップ型のモジュール240が描写されている。本構成例において、ベアチップ241〜244は、複数の電気回路に相当し、モジュール240は、複数の電気回路を含むデバイスに相当する。なお、モジュール240は、LSI230の一構成要素として他のベアチップと共にリードフレーム235上に搭載される。本構成例において、モジュール240全体の誤動作評価を行う場合、まず、モジュール240に内蔵されるベアチップ241〜244毎に、各々が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第1誤動作周波数特性をそれぞれ求めた上で、当該第1誤動作周波数特性、モジュール240全体の等価回路、及び、ベアチップ241〜244毎の等価回路に基づいて、モジュール240全体が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第2誤動作周波数特性を求めればよい。
【0099】
図16の(5)欄には、(1)欄のシステムボード210と、システムボード210から分離されたパワー素子251及び252と、システムボード210並びにパワー素子251及び252を封止するケース253とを含むパワーモジュール250(電源モジュールなど)が描写されている。なお、パワー素子251及び252は、互いに絶縁されてケース253に搭載されている。本構成例において、LSI211〜214は、複数の電気回路に相当し、パワーモジュール250は、複数の電気回路を含むデバイスに相当する。なお、本構成例において、パワーモジュール250全体の誤動作評価を行う場合、まず、パワーモジュール250に含まれるLSI251〜254毎に、各々が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第1誤動作周波数特性をそれぞれ求めた上で、当該第1誤動作周波数特性、パワーモジュール250全体の等価回路、及び、LSI251〜254毎の等価回路に基づいて、パワーモジュール250全体が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した第2誤動作周波数特性を求めればよい。
【0100】
<ノイズ源を含むデバイスの評価方法>
図17は、外部ノイズと内部ノイズの流入経路を示す模式図である。これまでに説明してきたEMC[electro-magnetic compatibility]モデルでは、本図(A)欄で示すように、外部ノイズ源310から電気回路320に外部ノイズ信号を注入することによって、被試験デバイス300(ないしは電気回路320)の評価が行われる。
【0101】
一方、本図(B)欄で示すように、ノイズ源となる第1電気回路410と、ノイズ信号によって誤動作する可能性のある第2電気回路420(いわゆるvictim)とを含む被試験デバイス400では、外部ノイズ信号の影響を評価するだけでなく、第1電気回路410から第2電気回路420に到達する内部ノイズ信号の影響についても評価することが重要となる。
【0102】
例えば、ノイズ源からの出力時点で内部ノイズ信号が外部ノイズ信号より小さくても、被試験デバイス400の構成(配線パターン、各種電子部品の配置レイアウト、及び、第1電気回路410と第2電気回路420との位置関係など)によっては、第2電気回路420への到達時点で外部ノイズ信号と内部ノイズ信号の大小関係が逆転している場合がある。この場合、外部ノイズ信号に起因する誤動作評価だけでは不十分であり、内部ノイズ信号に起因する誤動作についても十分に把握しておく必要がある。
【0103】
図18は、伝導性ノイズと放射性ノイズの流入経路を示す模式図である。本図(A)欄で示すように、第1電気回路410は、その通常動作時における過渡的な消費電流の増減により、被試験デバイス400内の電源系やGND系に伝導性ノイズN1をまき散らす。これが電源変動やGND変動となり、第2電気回路420の誤動作を招く。
【0104】
また、本図(B)欄で示すように、第1電気回路410から第2電気回路420には、両者の直接結合を介して放射性ノイズN2が伝搬する。例えば、第1電気回路410とプリント配線基板との組み合わせ(C(容量)結合やM(相互インダクタンス)結合)により、第1電気回路410から電界や磁界の放射が行われ、さらに、第2電気回路420とプリント配線基板との組み合わせにより、第2電気回路420が電界や磁界の受信に至る場合がある。
【0105】
このように、第1電気回路410から第2電気回路420への内部ノイズ信号は、伝導性ノイズN1と放射性ノイズN2を含む。特に、第1電気回路410のグラウンドから第2電気回路420のグラウンドに伝播する伝導性ノイズN1は、第2電気回路420の誤動作を招きやすい。従って、これに起因する誤動作評価を行う意義は大きいと言える。
【0106】
図19は、静電気放電(以下、ESD[electro-static discharge]と呼ぶ)に伴う副次的なノイズ源の一例を示す模式図である。被試験デバイス400に含まれるノイズ源としては、先に述べた第1電気回路410の過渡的な消費電力増加のほかにも、負荷の高電圧駆動に伴う電源低下及びGND上昇や、ESDに起因するインパルス性の異常電流などを挙げることができる。特に、被試験デバイス400の外部から加えられたESDストレスであっても、被試験デバイス400の内部で2次的ないし3次的なESDが生じると、その放電部分が新たなノイズ源(第1電気回路410a及び410bに相当)となる。
【0107】
図20は、ノイズ源と電気回路との位置関係を示す模式図である。本図(A)欄のデバイス500では、ノイズ源となる第1電気回路501a及び501b(例えばパワーデバイス)と、ノイズ信号によって誤動作する可能性のある第2電気回路502a〜502d(例えばコントロールチップ)がモジュール構造を成している。より具体的に述べると、本構成例のデバイス500は、プリント配線基板503に第2電気回路502a〜502dを搭載して成るシステムボード504と、システムボード504から分離された第1電気回路501a及び501bと、システムボード504並びに第1電気回路501a及び501bを封止するケース505と、を含むモジュール(電源モジュールなどのパワーモジュール)として描写されている。
【0108】
本図(B)欄のデバイス510では、ノイズ源となる第1電気回路511と、ノイズ信号によって誤動作する可能性のある第2電気回路512とが単一のプリント配線基板513に配置されている。
【0109】
本図(C)欄のデバイス520では、ノイズ源となる第1電気回路521と、ノイズ信号によって誤動作する可能性のある第2電気回路522が複数のプリント配線基板523a及び523bにそれぞれ配置されており、プリント配線基板523aとプリント配線基板523bとの間がケーブル524で結合されている。
【0110】
本図(D)欄のデバイス530では、ノイズ源となる第1電気回路531と、ノイズ信号によって誤動作する可能性のある第2電気回路522が積層LSI内の異なる層にそれぞれ配置されている。
【0111】
図21は、積層LSIのバリエーションを示す模式図である。本図(A)欄のデバイス540は、W/B[wire bonding]タイプの積層LSIであり、ノイズ源となる第1電気回路541と、ノイズ信号によって誤動作する可能性のある第2電気回路542とがプリント配線基板543上に積層されている。第1電気回路541と第2電気回路542は、いずれもボンディングワイヤ544を介してプリント配線基板543に接続されている。
【0112】
本図(B)欄のデバイス550は、スルービアタイプの積層LSIであり、ノイズ源となる第1電気回路551と、ノイズ信号によって誤動作する可能性のある第2電気回路552とがプリント配線基板553上に積層されている。なお、第1電気回路551と第2電気回路552とは、ビア554を介して電気的に接続されている。
【0113】
上記したように、第1電気回路(ノイズ源)と第2電気回路(victim)との位置関係は、デバイスによって千差万別である。そのため、各デバイスに組み込まれた第1電気回路と第2電気回路が各々同一のものであったとしても、第1電気回路から第2電気回路に到達する内部ノイズの大きさはデバイス毎に異なる結果となり、延いては、デバイス毎に必要な耐ノイズ設計も異なったものとなる。また、内部ノイズ信号に対する耐ノイズ設計が異なっていれば、第2電気回路に到達する外部ノイズ信号の大きさも必然的に変わってくる。従って、デバイス毎の適切な耐ノイズ設計を行うためには、外部ノイズ信号に対する特性評価だけでなく、内部ノイズ信号に対する特性評価を行うことが重要となる。
【0114】
以下では、内部ノイズ信号に対する特性評価手法について詳述する。先の
図18で示したように、ノイズ源となる第1電気回路410と、ノイズ信号によって誤動作する可能性のある第2電気回路420とを含む被試験デバイス400の評価に際して、まず第1のステップでは、第2電気回路420が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを表した誤動作周波数特性が求められる。この誤動作周波数特性は、先に説明したDPI試験結果である。すなわち、第1のステップで求められる誤動作周波数特性は、第2電気回路420が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを第2電気回路420の所定部分に流れる電流で表した誤動作電流周波数特性、及び、第2電気回路420が誤動作を起こす限界のノイズ信号の大きさを第2電気回路420の所定点間に現れる電圧で表した誤動作電圧周波数特性である(
図22の実線、ないしは、
図6及び
図7の実線を参照)。
【0115】
次に、第2のステップでは、第1電気回路410から第2電気回路420に到達する内部ノイズ信号の大きさを表した内部ノイズ到達周波数特性が求められる。この内部ノイズ到達周波数特性は、内部ノイズ信号が第2電気回路420の所定部分に到達して流れる電流を表した到達電流周波数特性、及び、内部ノイズ信号が第2電気回路420の所定点間に到達して現れる電圧を表した到達電圧周波数特性である(
図22の破線を参照)。内部ノイズ到達周波数特性は、第1電気回路410の実測ノイズ特性(例えばIEC61967−4(1Ω/150Ω法(VDE法))に基づくテスト結果)、第1電気回路410の等価回路(実測ノイズ特性と整合が取られたもの)、及び、被試験デバイス400全体の等価回路に基づいて求めればよい。なお、第1電気回路410の等価回路、及び、被試験デバイス400全体の等価回路は、それぞれSパラメータによって実測値と照合された結果に基づくものである。
【0116】
次に、第3のステップでは、先述の誤動作周波数特性と内部ノイズ到達周波数特性とが比較される。このような比較を行うことにより、例えば、
図22において破線が実線を上回っている発振周波数では、第2電気回路420が第1電気回路410からの内部ノイズ信号によって誤動作を生じ得ると判断することができるので、速やかに回路設計(耐ノイズ設計)を改善することが可能となる。
【0117】
なお、耐ノイズ設計の一例としては、(1)第1電気回路410のグラウンドに現れる内部ノイズ信号自体を抑制する、(2)第1電気回路410から第2電気回路420に向けた内部ノイズ信号の伝搬を抑制する、(3)第2電気回路420のグラウンドを第1電気回路410のグラウンドから分離する、(4)第1電気回路410と第2電気回路420を別々のプリント配線基板上に配置した上で各基板間をケーブルで接続する、(5)第2電気回路420の誤動作耐性を強化する、及び、(6)第1電気回路410のグラウンド変動に対して第2電気回路420のグラウンドを安定させる抑制手段を設ける、といった手法を挙げることができる。
【0118】
また、被試験デバイス400の特性評価に際しては、さらに、被試験デバイス400の外部から第2電気回路420に到達する外部ノイズ信号の大きさを表した外部ノイズ到達周波数特性を求めるステップと、先述の誤動作周波数特性と外部ノイズ到達周波数特性を比較するステップを実施することが望ましい。この外部ノイズ到達周波数特性は、外部ノイズ信号が第2電気回路420の所定部分に到達して流れる電流を表した到達電流周波数特性、及び、外部ノイズ信号が第2電気回路420の所定点間に到達して現れる電圧を表した到達電圧周波数特性である(
図22の一点鎖線、ないしは、
図7の破線を参照)。
【0119】
このような比較を行うことにより、例えば、
図22において一点鎖線が実線を上回っている発振周波数では、第2電気回路420が外部ノイズ信号によって誤動作を生じ得ると判断することができるので、速やかに回路設計(耐ノイズ設計)を改善することが可能となる。また、先にも述べたように、内部ノイズ信号に対する耐ノイズ設計が異なれば、第2電気回路420に到達する外部ノイズ信号の大きさも変わってくる。従って、内部ノイズ到達周波数特性と外部ノイズ到達周波数特性との相関関係を把握することにより、被試験デバイス400の耐ノイズ設計をより効率的に行うことが可能となる。
【0120】
なお、第2電気回路420の誤動作周波数特性(
図22の実線を参照)と内部ノイズ到達周波数特性(
図22の破線を参照)は、第1電気回路410から第2電気回路420に到達する内部ノイズ信号の大きさと第2電気回路420の誤動作との関係を示すデータとして、デバイス400と共にユーザへ提供するとよい。このようなデータ提供を行うことにより、ユーザに対してデバイス400の品質保証(第1電気回路410の通常動作が第2電気回路420の誤動作を招くことのない旨の確認)を行うことが可能となる。
【0121】
さらには、外部ノイズ到達周波数特性(
図22の一点鎖線を参照)をデバイス400と共にユーザに提供するとよい。このようなデータ提供を行うことにより、ユーザは、当該データをデバイス400の誤動作回避に活用することが可能となる。特に、上記3データを全て添付することにより、ユーザは、第2電気回路420の誤動作周波数特性、内部ノイズ到達周波数特性、及び、外部ノイズ到達周波数特性を相互に関連付けて把握することができるので、デバイス400の耐ノイズ設計をより効率的に行うことが可能となる。
【0122】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。