(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5または6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第一は、下記化学式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩と、熱可塑性樹脂と、を含む、熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「組成物」とも称することがある)である。
【0020】
前記化学式(1)および(2)中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素数7〜31のアリールアルキル基であり、
Aは炭素数2〜4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、
nは0〜50の整数であり、
Q1およびQ2は、ヒンダードアミン構造を有するカチオンである。
【0021】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記のようなヒンダードアミン構造を有するカチオンの硫酸エステル塩またはスルホン酸塩であるイオン結合性塩を含むことにより、耐候剤と帯電防止剤とを併用することなく、コスト上昇を抑制しながら耐候性および帯電防止性がともに向上した組成物となる。また、添加剤の添加量低減につながることから、熱可塑性樹脂が本来有する性質を維持させやすいと考えられる。
【0022】
また、本発明の第二は、上記イオン結合性塩を含む、帯電防止剤である。
【0023】
さらに、本発明の第三は、上記イオン結合性塩を含む、耐候剤である。
【0024】
以下、本発明の組成物に含まれるイオン結合性塩(帯電防止剤、耐候剤)および熱可塑性樹脂について、具体的に説明する。
【0025】
[イオン結合性塩]
本発明者らは、上記式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩が、熱可塑性樹脂に添加されることにより、帯電防止剤および/または耐候剤としての効果を発揮することを見出した。
【0026】
本発明の帯電防止剤は、上記式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩を必須に含み、上記式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩からなる(のみから構成される)ことが好ましい。前者の場合、上記式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩に加えて含みうる他の成分としては、特に制限されず、通常、帯電防止剤に使用される成分が同様にして使用できる。他の成分を含む場合の、他の成分の含有量もまた、特に制限されず、通常、帯電防止剤に使用される成分量と同様の量が使用できる。
【0027】
同様にして、本発明の耐候剤は、上記式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩を必須に含み、上記式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩からなる(のみから構成される)ことが好ましい。前者の場合、上記式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩に加えて含みうる他の成分としては、特に制限されず、通常、耐候剤に使用される成分が同様にして使用できる。他の成分を含む場合の、他の成分の含有量もまた、特に制限されず、通常、耐候剤に使用される成分量と同様の量が使用できる。
【0028】
以下、イオン結合性塩について説明する。
【0029】
上記化学式(1)および(2)中のR
1およびR
2としてそれぞれ用いられる、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、4−メチルペンチル基、4−メチルペンタン−2−イル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブタン−2−イル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、1−(n−プロピル)ブチル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1−エチル−2,2−ジメチルプロピル基、n−オクチル基、2−メチルヘキサン−2−イル基、2,4−ジメチルペンタン−3−イル基、1,1−ジメチルペンタン−1−イル基、2,2−ジメチルヘキサン−3−イル基、2,3−ジメチルヘキサン−2−イル基、2,5−ジメチルヘキサン−2−イル基、2,5−ジメチルヘキサン−3−イル基、3,4−ジメチルヘキサン−3−イル基、3,5−ジメチルヘキサン−3−イル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、2−メチルヘプタン−2−イル基、3−メチルヘプタン−3−イル基、4−メチルヘプタン−3−イル基、4−メチルヘプタン−4−イル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、1−エチル−1−メチルペンチル基、1−エチル−4−メチルペンチル基、1,1,4−トリメチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1−イソプロピル−1,2−ジメチルプロピル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、n−ノニル基、1−メチルオクチル基、6−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−(n−ブチル)ペンチル基、4−メチル−1−(n−プロピル)ペンチル基、1,5,5−トリメチルヘキシル基、1,1,5−トリメチルヘキシル基、2−メチルオクタン−3−イル基、n−デシル基、1−メチルノニル基、1−エチルオクチル基、1−(n−ブチル)ヘキシル基、1,1−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、1−エチルノニル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、1−メチルトリデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。入手容易性の観点から、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜15のものがより好ましく、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基が好ましく、2−エチルヘキシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基がより好ましい。
【0030】
上記化学式(1)および(2)中のR
1およびR
2としてそれぞれ用いられる、置換されているかもしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基の例としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基などが挙げられる。入手容易性の観点から、置換されているかもしくは非置換の炭素数8〜18のアリール基が好ましく、ジメチルフェニル基(2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基等)、イソプロピルフェニル基(2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基)、ドデシルフェニル基(2−ドデシルフェニル基、3−ドデシルフェニル基、4−ドデシルフェニル基)が特に好ましい。
【0031】
上記化学式(1)および(2)中のR
1およびR
2としてそれぞれ用いられる、置換されているかもしくは非置換の炭素数7〜31のアリールアルキル基の例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基、3−(1−ナフチル)プロピル基、または3−(2−ナフチル)プロピル基などが挙げられる。
【0032】
上記化学式(1)中のAとして用いられる、炭素数2〜4の直鎖状または分枝状のアルキレン基の例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。入手容易性の観点から、エチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
【0033】
前述した「置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基」等の記載に含まれる「置換されている」とは、当該置換基中の水素原子が、さらに他の置換基で置換されていてもよい態様を示す。また、本明細書中、他の置換基について使用される「置換されている」の用語も同様である。
【0034】
上記の「他の置換基」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基などのアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリル基、メタクリル基、メトキサリル基などのアシル基、メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基などのアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基などのアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基などのジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基などの他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基などが挙げられる。
【0035】
上記化学式(1)中のnは、0〜50の整数である。粘度の低下などによる取扱い易さ、あるいは界面特性の観点から、nは、それぞれ独立して、1〜50の整数が好ましく、2〜40の整数がより好ましく、2〜20の整数が特に好ましい。
【0036】
上記化学式(1)および(2)中のQ1およびQ2で表されるカチオンは、ヒンダードアミン構造を有するカチオンである。なお、本明細書中、「ヒンダードアミン構造を有するカチオン」とは、ヒンダードアミン化合物中の窒素原子をカチオン性としたものを意味する。さらに、「ヒンダードアミン化合物」とは、塩基性窒素原子に対し、立体障害となる構造を有するアミン化合物を意味する。ヒンダードアミン構造を有するカチオンは、その分子量が150〜1000であると好ましく、200〜800であるとより好ましく、230〜600であると特に好ましい。
【0037】
上記化学式(1)および(2)中のQ1およびQ2で表わされるヒンダードアミン構造を有するカチオンは、下記化学式(3)で表される構造であると好ましい。
【0039】
前記化学式(3)中、
X
1は水素原子、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6〜10のアリール基、置換されているかもしくは非置換の炭素数7〜11のアリールアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8のアルコキシ基、または置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8のアシル基であり、
R
5〜R
8は、それぞれ独立して、水素原子、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6〜10のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素数7〜11のアリールアルキル基であり、
Lは水素原子、ヒドロキシ基、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8のアルコキシ基、シアノ基、または下記化学式(4)で表される置換基(以下、単に「置換基(a)」とも称することがある)である。
【0041】
前記化学式(4)中、
X
2は酸素原子(−O−)または−NH−であり、
R
9、R
10およびR
11は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基を表す。
【0042】
前記化学式(3)中のX
1、R
5〜R
8およびLとしてそれぞれ用いられる、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6〜10のアリール基、および置換されているかもしくは非置換の炭素数7〜11のアリールアルキル基としては、上記で例示したそれぞれの置換基中の、対応する炭素数のものが例示されるため、ここではその説明を省略する。
【0043】
前記化学式(3)中のX
1として用いられる、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
前記化学式(3)中のX
1として用いられる、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、アクリル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基などが挙げられる。
【0045】
前記化学式(3)中のX
1は、上記例示の中でも、水素原子、炭素数1〜3の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜5のアシル基が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシ基、アクリル基、メタクリル基がより好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0046】
前記化学式(3)中のR
5〜R
8は、上記例示の中でも、炭素数1〜3の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0047】
前記化学式(3)中のLとして用いられる、置換されているかもしくは非置換の炭素数1〜8のアルコキシ基は、上記X
1のものと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0048】
前記化学式(3)中のLは、上記例示の中でも、ヒドロキシ基、置換されているかもしくは非置換の炭素数3〜8の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、シアノ基、または置換基(a)であると好ましい。
【0049】
置換基(a)を示す化学式(4)中のX
2は、酸素原子(−O−)または−NH−であるが、酸素原子であると好ましい。
【0050】
置換基(a)を示す化学式(4)中のR
9、R
10およびR
11は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基であるが、該アルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。入手容易性の観点から、R
9、R
10およびR
11は、それぞれ独立して、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
【0051】
したがって、ヒンダードアミン構造を有するカチオンとしては、以下のピペリジン化合物のカチオンが挙げられる。
【0052】
すなわち、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(例えば、日本乳化剤株式会社製「ニューコールLS−3410」)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン。
【0053】
上記イオン結合性塩について、前記化学式(1)または(2)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、置換されているかもしくは非置換の炭素数6〜15の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、または置換されているかもしくは非置換の炭素数8〜18のアリール基であり、Aは炭素数2〜3の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、nは2〜20の整数であり、Q1およびQ2は、それぞれ独立して、前記化学式(3)で示されるヒンダードアミン構造を有するカチオンであると好ましい。
【0054】
前記化学式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩のより好ましい化合物としては、下記化学式(101)〜(108)で表されるイオン結合性塩が挙げられる。
【0057】
<イオン結合性塩の製造方法>
上記イオン結合性塩の製造方法は、特に制限されず、例えば、アニオン交換法、中和法、酸エステル法などが挙げられる。また、硫酸エステルのアンモニウム塩またはスルホン酸エステルのアンモニウム塩と、窒素含有化合物とを反応させアンモニアを留去してイオン結合性塩を得る脱アンモニア法なども好適に用いられる。
【0058】
なお、イオン結合性塩は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0059】
[熱可塑性樹脂]
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂(環状オレフィン樹脂を含む)、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂など)、ポリスルホン樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびこれらの誘導体樹脂、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
【0060】
(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの炭素数1〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなど]、(メタ)アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル単量体の単独重合体または共重合体;(メタ)アクリル単量体と他の単量体との共重合体などが挙げられる。
【0061】
前記(メタ)アクリル単量体の単独重合体または共重合体の具体例としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリル単量体と他の単量体との共重合体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。
【0062】
スチレン樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル共重合体、ゴム強化ポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)等が挙げられる。
【0063】
オレフィン樹脂としては、オレフィン単量体の単独重合体の他、オレフィン単量体の共重合体、オレフィン単量体と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。オレフィン単量体の具体例としては、例えば、鎖状オレフィン[エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンなど]、環状オレフィン[例えば、シクロペンテンなどの炭素数4〜10のシクロアルケン;シクロペンタジエンなどの炭素数4〜10のシクロアルカジエン;ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの炭素数7〜20のビシクロアルケンまたは炭素数7〜20のビシクロアルカジエン;ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの炭素数10〜25のトリシクロアルケンまたはトリシクロアルカジエンなど]などが挙げられる。これらのオレフィン単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。上記オレフィン単量体のうち、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜4のα−オレフィンなどの鎖状オレフィンが好ましい。
【0064】
前記オレフィン単量体と共重合可能な他の共重合性単量体の具体例としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)など];ノルボルネン、シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;およびブタジエン、イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
【0065】
前記オレフィン樹脂のさらに具体的な例としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、または線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなど)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1などの三元共重合体などの鎖状オレフィン(特に炭素数2〜4のα−オレフィン)の(共)重合体などが挙げられる。また、オレフィン単量体と他の共重合性単量体との共重合体の具体例としては、例えば、鎖状オレフィン(特に、エチレン、プロピレンなどの炭素数2〜4のα−オレフィン)と脂肪酸ビニルエステル単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体など);鎖状オレフィンと(メタ)アクリル単量体との共重合体[鎖状オレフィン(特に炭素数2〜4のα−オレフィン)と(メタ)アクリル酸との共重合体(例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなど);鎖状オレフィン(特に炭素数2〜4のα−オレフィン)とアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(例えば、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体など);など];鎖状オレフィン(特に炭素数2〜4のα−オレフィン)とジエンとの共重合体(例えば、エチレン−ブタジエン共重合体など);エポキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体)、カルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−無水マレイン酸共重合体)、エポキシおよびカルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−無水マレイン酸−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体)などの変性ポリオレフィン;オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレンゴムなど)などが挙げられる。
【0066】
ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、(イ)ジカルボン酸またはその誘導体およびジオールまたはその誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体、ならびに(ハ)ラクトンからなる群より選択される少なくとも1種を重縮合してなる重合体または共重合体が挙げられる。
【0067】
上記ジカルボン酸またはその誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。上記ジオールまたは誘導体としては、例えば、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物、すなわち4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなど、およびこれらの誘導体などが挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらの誘導体などが挙げられる。上記ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられる。また、前記ポリエステル樹脂には、ポリエステルエラストマーも含まれる。
【0068】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、2価以上のフェノール化合物と、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートのような炭酸ジエステル化合物とを反応させて得られる熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0069】
前記2価以上のフェノール化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−ナフチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−エチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのジヒドロキシジアリールアルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシアリールフルオレン類などが挙げられる。また、上記2価フェノール化合物以外に、ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類などが2価のフェノール化合物として使用できる。
【0070】
これら2価以上のフェノール化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。また、共重合成分として、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの直鎖状脂肪族2価カルボン酸を用いてもよい。
【0071】
ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、ポリアミド46、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11などの脂肪族ポリアミド;ポリ−1,4−ノルボルネンテレフタルアミド、ポリ−1,4−シクロヘキサンテレフタルアミドポリ−1,4−シクロヘキサン−1,4−シクロヘキサンアミドなどの脂環式ポリアミド;ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド;これらのポリアミドのうち少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミドなどが挙げられる。なお、前記ポリアミド樹脂には、ポリアミドエラストマーも含まれる。
【0072】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレンエーテル)などの単独重合体、これらの単独重合体をベースとして構成された変性ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリフェニレンエーテル単独重合体またはその共重合体にスチレン重合体がグラフトしている変性グラフト共重合体などが挙げられる。
【0073】
ポリフェニレンスルフィド樹脂の具体例としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどが挙げられる。
【0074】
なお、上記熱可塑性樹脂が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
【0075】
上記熱可塑性樹脂は、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。これらの熱可塑性樹脂を合成するための重合方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、高圧ラジカル重合法、中低圧重合法、溶液重合法、スラリー重合法、塊状重合法、乳化重合法、気相重合法等を挙げることができる。また、重合に使用する触媒も特に制限はなく、例えば、過酸化物触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。
【0076】
上記熱可塑性樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0077】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のイオン結合性塩の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部として、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜8質量部であることがより好ましく、0.1〜7質量部であることがさらに好ましく、1〜5質量部であることが特に好ましい。この範囲であれば、耐候性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られやすくなる。
【0078】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、充填剤、滑剤、染料、有機顔料、無機顔料、可塑剤、加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、ワックス、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、ラジカル捕捉剤、防曇剤、防徽剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤等の他の添加成分を、適宜配合することができる。
【0079】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の形態は、特に制限されず、例えば、固形状、エマルジョン、半透明溶液、透明溶液などいずれの形態でもよいが、環境負荷低減の観点から、エマルジョンであることが好ましい。
【0080】
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、特に制限されず、例えば、上記イオン結合性塩、熱可塑性樹脂、および必要に応じて添加される他の添加剤を混合または溶融混練する方法が挙げられる。混合または溶融混練の方法は特に制限がなく、例えば、攪拌機による混合、単軸押出機、二軸押出機、熱ロール、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、または各種ニーダー等の装置を使用する方法を採用することができる。
【0081】
また、乳化剤として本発明に係るイオン結合性塩を用い、重合開始剤の存在下、水性溶媒中で熱可塑性樹脂の原料となる単量体を乳化重合させ、本発明の熱可塑性樹脂組成物を得る方法や、有機溶媒中で本発明に係るイオン結合性塩、および熱可塑性樹脂の原料となる単量体を、重合開始剤の存在下、溶液重合または紫外線重合させ本発明の熱可塑性樹脂組成物を得る方法も、優れた生産性を有することから好適に用いられる。この際、乳化剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の他の界面活性剤を、上記イオン結合性塩と共に使用してもよい。乳化重合においては原料(水性媒体、乳化剤および単量体成分)を単に混合したものから重合を始めてもよいし、原料を機械攪拌により乳化させ、プレエマルジョンとしておいて重合を始めても良いし、原料のうちの一部(水性媒体、単量体成分のうちの1種または2種以上等)を単に混合したものを準備し、残りをプレエマルジョンとして添加しながら重合を始めてもよい。多段乳化重合による多層構造エマルジョンでもよい。
【0082】
[熱可塑性樹脂組成物の用途]
本発明の熱可塑性樹脂組成物の用途としては、例えば、塗料、接着剤、粘着剤、繊維助剤、製紙用途(表面コート剤など)、土木用途(コンクリート混和剤など)等が挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
【0084】
(合成例1:[LS−3410][EHDG−S]の合成;イオン結合性塩の合成)
従来公知の方法で合成したジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:EHDG−SF)のトルエン溶液(濃度:50質量%)630質量部に、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−メタクリレート(日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコールLS−3410、略称N−LS−3410)240質量部を添加した後、50℃で1時間反応させた。反応後、目的とするイオン結合性塩(略称:[LS−3410][EHDG−S];上記化学式(105)で表される化合物)の50質量%トルエン溶液を1110質量部得た。
【0085】
(合成例2:[PMHP][EHDG−S]の合成;イオン結合性塩の合成)
N−LS−3410の代わりに、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール(略称:HATT−MW)171質量部を用い、90℃で3時間反応させたこと以外は、上記合成例1と同様にして、目的とするイオン結合性塩(略称:[PMHP][EHDG−S];上記化学式(106)で表される化合物)の50質量%トルエン溶液を972質量部得た。
【0086】
(合成例3:[PMHP][1305−S]の合成;イオン結合性塩の合成)
EHDG−SFの代わりに、従来公知の方法により合成したポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:1305−SF)517.4質量部を用いたこと以外は、上記合成例2と同様にして、目的とするイオン結合性塩(略称:[PMHP][1305−S]:上記(107)で表される化合物)の50質量%トルエン溶液を1347.0質量部得た。
【0087】
(合成例4:[PMHP][DOSS]の合成;イオン結合性塩の合成)
EHDG−SFの代わりに、従来公知の方法により合成したジオクチルスルフォサクシネートアンモニウム塩(略称:DOSS−NH
4)439.6質量部を用い、50℃で反応させたこと以外は、上記合成例2と同様にして、目的とするイオン結合性塩(略称:[PMHP][DOSS]:上記(108)で表される化合物)の50質量%トルエン溶液を1191.0質量部得た。
【0088】
(合成例5:アクリル樹脂(P1)の合成)
冷却管、窒素導入管、温度計、およびテフロン(登録商標)半月攪拌翼を備えたフラスコに、トルエン 300.0質量部、アクリル酸n−ブチル 105.0質量部、およびメタクリル酸メチル 195.0質量部を仕込み、重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを3.0質量部添加し、90℃で3時間重合を行い、固形分50%トルエン溶液のアクリル樹脂(P1)を得た。
【0089】
(合成例6:(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体樹脂(P2)の合成)
メタクリル酸メチルの代わりに、スチレン 195.0質量部を用いたことを除いては、上記合成例3と同様にして、アクリル酸n−ブチル−スチレン共重合体樹脂(P2)を得た。
【0090】
(ポリエステル樹脂(P3)の準備)
東洋紡株式会社製のバイロン(登録商標)20SS(P3)を準備した。
【0091】
(実施例1)
上記の熱可塑性樹脂(樹脂(P1)、樹脂(P2))20.0質量部に対して、合成例1で得られたイオン結合性塩([LS−3410][EHDG−S])を純分で0.4質量部(樹脂固形分に対し2質量%)を加え、攪拌混合した。得られた混合液を、ガラス板上に膜厚75μmで塗布し、110℃の乾燥機にて10分間乾燥し、膜厚約15μmである試験片を得た。
【0092】
(実施例2)
合成例1で得られたイオン結合性塩([LS−3410][EHDG−S])の代わりに、合成例2で得られたイオン結合性塩([PMHP][EHDG−S])を用いたことを除いては、実施例1と同様にして試験片を得た。また、樹脂(P3)に対しても、実施例1と同様にして、合成例2で得られたイオン結合性塩([PMHP][EHDG−S])を混合し、試験片を得た。
【0093】
(実施例3)
合成例1で得られたイオン結合性塩([LS−3410][EHDG−S])の代わりに、合成例3で得られたイオン結合性塩([PMHP][1305−S])を用いたことを除いては、実施例1と同様にして試験片を得た。また、樹脂(P3)に対しても、実施例1と同様にして、合成例3で得られたイオン結合性塩([PMHP][1305−S])を混合し、試験片を得た。
【0094】
(比較例1)
合成例1で得られたイオン結合性塩([LS−3410][EHDG−S])の代わりに、下記化学式(5)で表されるビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(LS−292)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして試験片を得た。
【0095】
【化9】
【0096】
(評価)
[光沢度試験(耐候性試験)]
上記で得られた試験片について、株式会社堀場製作所製 光沢度測定器(製品名:GLOSS CHECKER IG−331)を使用して光沢度を測定し、これを「初期光沢度」とした。次に、Q−PANEL社製紫外線ランプ(製品名:QUV、紫外線ランプ:UVA−340)を用いて、照射強度を0.68W/m
2、照射時間を4時間(温度60℃)として上記試験片に光照射し、シャワー1分、結露4時間(温度40℃)、シャワー1分を1サイクルとして50時間繰り返し、耐候性試験を行った。この耐候性試験を行った後、上記と同様に光沢度を測定し、これを「試験後の光沢度」とした。上記のようにして得られた「初期光沢度」と「試験後の光沢度」とを用いて算出した、「試験後の光沢度/初期光沢度」の百分率を光沢保持率とした。測定結果を下記表1に示す。
【0097】
[帯電防止性試験(表面固有抵抗率)]
・耐候試験前(試験片作製直後)の試験片の表面固有抵抗率(R1)
耐候試験前(試験片作製直後)の試験片の表面固有抵抗率(単位:Ω/□(square))を、株式会社三菱化学アナリテック製、高抵抗率計ハイレスタUPおよびURSプローブを用い、印加電圧250Vにて測定した。
【0098】
・耐候試験後の試験片の表面固有抵抗率(R2)
上記の[光沢度試験(耐候性試験)]の欄に記載の耐候性試験を行った後の試験片の表面固有抵抗率を、上記R1の測定方法と同様の方法で測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
(実施例4)
上記の熱可塑性樹脂(樹脂(P1)、樹脂(P2)、樹脂(P3))20.0質量部に対して、合成例2で得られたイオン結合性塩([PMHP][EHDG−S])を純分で1質量部(樹脂固形分に対し5質量%)を加え、攪拌混合した。得られた混合液を、ガラス板上に膜厚75μmで塗布し、110℃の乾燥機にて10分間乾燥し、膜厚約15μmである試験片を得た。
【0101】
(実施例5)
合成例2で得られたイオン結合性塩([PMHP][EHDG−S])の代わりに、合成例3で得られたイオン結合性塩([PMHP][1305−S])を用いたことを除いては、実施例4と同様にして試験片を得た。
【0102】
(実施例6)
合成例2で得られたイオン結合性塩([PMHP][EHDG−S])の代わりに、合成例4で得られたイオン結合性塩([PMHP][DOSS])を用いたことを除いては、実施例4と同様にして試験片を得た。
【0103】
(比較例2)
合成例2で得られたイオン結合性塩([PMHP][EHDG−S])の代わりに、上記化学式(5)で表されるビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(LS−292)を用いたことを除いては、実施例4と同様にして試験片を得た。
【0104】
実施例4〜6、および比較例2で得られた試験片を用い、上記と同様の方法で、光沢度試験(耐候性試験)および帯電防止性試験(表面固有抵抗率)を行った。測定結果を下記表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
上記表1および表2から明らかなように、上記化学式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩を含む実施例1〜6の本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐候試験前の帯電防止性、耐候試験後の帯電防止性、および光沢保持率に優れ、耐候性および帯電防止性がともに向上することが分かった。したがって、上記化学式(1)または(2)で表されるイオン結合性塩は、帯電防止剤および耐候剤として有意に作用することが確認された。