(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の発音機能を有するドラグ装置では、音出しリング及び発音部材が駆動ギアの背面側に配置される。このため、発音位置が両軸受リールの外側面から遠くなり、ドラグが作動しても、こもった不明瞭な音が発生するとともに、大きな音を発生しにくい。
【0006】
本発明の課題は、両軸受リールドラグ装置において、ドラグ作動時に明瞭かつ大きな音を発生できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る両軸受リールのドラグ装置は、スプールに連動する駆動ギアと駆動軸との相対回転を規制する装置である。両軸受リールのドラグ装置は、ドラグ部材と、ドラグ調整部材と、発音部材と、を備える。ドラグ部材は、駆動軸と一体的に回転可能であり、駆動ギアに対して押圧され、駆動ギアに対する押圧側面に形成された音出し部を有する。ドラグ調整部材は、ドラグ部材の押圧力を調整する。発音部材は、駆動ギアと連動し、音出し部に対向可能に設けられ、駆動ギアと駆動軸との相対回転により音出し部と干渉して音を発生する。
【0008】
この両軸受リールのドラグ装置では、ドラグ調整部材によって調整された規制力よりも強い力が釣り糸に作用すると、スプールが糸繰り出し方向に回転し、ドラグ装置が作動する。ドラグ装置が作動すると、駆動軸と駆動ギアとが相対回転し、発音部材が音出し部と干渉して音を発生する。ここでは、音出し部は、駆動ギアを押圧するドラグ部材の押圧側面に配置されるので、発音部材と音出し部との干渉による発音位置は、駆動ギアよりも両軸受リールの外側面に近い位置である。このため、ドラグ装置が作動すると、大きくかつ明瞭な音を発生できるようになる。
【0009】
発音部材は、駆動ギアの被押圧側面に、音出し部に対して進退自在に装着され、音出し部に衝突可能な打撃ピンと、打撃ピンを音出し部に向けて弾性的に付勢する付勢部材と、を有してもよい。この場合には、音出し部に向けて弾性的に付勢された打撃ピンによって音が発生するので、歯切れがよい明瞭な音を発生できる。
【0010】
音出し部は、少なくとも1つの被衝突部を有してもよい。この場合には、駆動軸と駆動ギアとの相対回転によって打撃ピンが被衝突部に衝突して音が発生する。
【0011】
音出し部は、周方向に間隔を隔てて設けられた複数の被衝突部を有してもよい。この場合には、駆動軸と駆動ギアの相対回転において、1回転で複数回の音が発生する。このため、さらにクリック感がある明瞭な音を発生できる。
【0012】
ドラグ部材は、駆動軸に一体的に回転可能に装着され、駆動ギアを押圧可能なドラグ板と、音出し部を有する音出しリングと、を有してもよい。この場合には、ドラグ部材が駆動ギアを押圧するためのドラグ板と、ドラグ作動時に発音するための音出しリングと、の2つの部材で構成されるため、音出しリングが発音時に振動しやすくなる。このため、ドラグ作動時にさらに大きくかつ明瞭な音を発生できる。
【0013】
ドラグ板は、音出しリングと係合する係合部を有し、音出しリングは、ドラグ板と係合する被係合部を有してもよい。この場合には、係合部と被係合部とを係合させることによって、ドラグ板と音出しリングとを一体回転可能に連結できる。
【0014】
係合部と被係合部との間に、所定の隙間が設けられていてもよい。この場合には、係合部と
被係合部との間に所定の隙間が設けられるので、発音時に音出しリングがさらに振動しやすくなり、さらに大きくかつ明瞭な音を発生できる。
【0015】
係合部は、押圧方向に係合する第1係合部と、周方向に係合する第2係合部と、を有し、被係合部は、第1係合部と係合する第1被係合部と、第2係合部と係合する第2被係合部と、を有してもよい。この場合には、第1係合部と第1被係合部との係合によって、音出しリングを抜け止めでき、第2係合部と第2被係合部との係合によって、音出しリングをドラグ板に対して一体的に回転可能に連結できる。
【0016】
第1係合部は、押圧方向に突出する押圧部と、押圧部から径方向に延出されるフランジ部と、を有し、第1被係合部は、押圧部が挿通可能で、フランジ部よりも小径の貫通孔を有してもよい。この場合には、ドラグ板の押圧部が貫通孔を挿通して駆動ギアを押圧可能になるとともに、フランジ部が貫通孔の周囲で音出しリングを抜け止めできる。
【0017】
押圧部の押圧方向の長さは、貫通孔の押圧方向の長さよりも長くてもよい。この場合には、押圧部の押圧方向の長さが貫通孔の長さよりも長いので、音出しリングの押圧方向において、ドラグ板との間に隙間が形成できる。これによって、発音時に音出しリングが振動しやすくなり、ドラグ作動時にさらに大きくかつ明瞭な音を発生できる。
【0018】
押圧部の押圧方向の長さは、貫通孔の押圧方向の長さより少なくとも0.1mm長くてもよい。この場合には、押圧部の長さが貫通孔の長さに対して僅かに長いだけであるので、押圧部の長さを貫通孔よりも長くしても、両軸受リールの大型化を招かない。
【0019】
第2係合部は、ドラグ板の周方向に設けられた少なくとも1つの係合凹部であり、第2被係合部は、係合凹部に係合可能な係合凸部であってもよい。この場合には、凹凸係合によって、音出しリングをドラグ板に一体的に回転可能に連結できる。
【0020】
第2係合部は、ドラグ板の周方向に間隔を隔てて設けられた複数の係合凹部であり、第2被係合部は、複数の係合凹部に係合可能な複数の係合凸部であってもよい。この場合には、複数の凹凸係合によって、音出しリングをドラグ板に一体的に回転可能に確実に連結できる。
【0021】
係合凸部の周方向の長さは、係合凹部の周方向の長さよりも短くてもよい。この場合には、係合凸部と係合凹部との間に周方向の隙間が形成されるため、発音時に音出しリングがさらに振動しやすくなり、さらに大きくかつ明瞭な音を発生できる。
【0022】
係合凸部の周方向
の長さは、係合凹部の周方向の長さよりも少なくとも0.1mm短い。この場合には、係合凸部と係合凹部との周方向の隙間が小さいので、ドラグ装置が作動すると、音出しリングと、発音部材が連動する駆動ギアと、が瞬時に相対回転する。これによって、ドラグ装置が作動すると、瞬時に発音する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、音出し部は、駆動ギアを押圧するドラグ部材の押圧側面に配置されるので、発音部材と音出し部との干渉による発音位置は、駆動ギアよりも両軸受リールの外側面に近い位置である。このため、ドラグ装置が作動すると、大きくかつ明瞭な音を発生できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1及び
図2において、本発明の一実施形態を採用した両軸受リール100は、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル2と、スプール12と、ドラグ装置23と、を備える。
【0026】
<両軸受リールの概略構成>
リール本体1は、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6及び第2側カバー7と、機構装着板13と、を有する。フレーム5は、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された第1側板8及び第2側板9と、これらの第1側板8及び第2側板9を連結する前連結部10a及び下連結部10bとを有する。下連結部10bには、釣り竿装着用の竿装着脚部4が一体形成される。
【0027】
第1側カバー6は、スプール軸方向外側から見て略円形であり、第2側カバー7は、外径が異なる偏芯した2つの外周円で構成される。第1側カバー6は、
図2に示すように、第1側板8と一体的に形成される。第2側カバー7は、たとえば3本のねじにより第2側板9に固定される。第2側カバー7は、後述するスプール軸16を支持するための第1ボス部7aと、後述する駆動軸30を支持するための第2ボス部7bと、を有する。第1ボス部7aは、第2ボス部7bよりも後方かつ上方に設けられる。機構装着板13は、ハンドル2が一体的に回転可能に連結される駆動軸30及びスプール軸16を支持するために設けられる。機構装着板13は、第2側カバー7に着脱可能に装着される。
【0028】
ハンドル2は、
図1に示すように、駆動軸30(
図2参照)に一体的に回転可能に装着されるハンドルアーム2aと、ハンドルアーム2aの先端に回転自在に装着されたハンドル把手2bと、を有する。ハンドルアーム2aは、後述するスタードラグ3の軸方向外側に配置される。
【0029】
図2に示すように、フレーム5内には、スプール12と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチレバー17と、スプール12内に均一に釣り糸を巻くためのレベルワインド機構18と、が配置される。フレーム5と第2側カバー7との間には、回転伝達機構19と、クラッチ機構21と、クラッチ制御機構22と、ドラグ装置23と、キャスティングコントロール機構24と、が配置される。また、フレーム5と第1側カバー6との間には、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための遠心ブレーキ機構25が配置される。
【0030】
回転伝達機構19は、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構18に伝える。クラッチ機構21は、回転伝達機構19の途中に設けられ、駆動軸30とスプール12とを連結及び遮断する。クラッチ制御機構22は、クラッチレバー17の操作に応じてクラッチ機構21の連結及び遮断を制御する。キャスティングコントロール機構24は、スプール12の回転時の抵抗力を調整する。
【0031】
スプール12は、その中心を貫通するスプール軸16に一体的に回転可能に連結される。スプール12は、釣り糸が巻き付けられる糸巻き胴部12aと、糸巻き胴部12aの両側に大径に一体的に形成された一対のフランジ部12bと、を有する。スプール軸16は、3つの軸受29a,29b,29cによってリール本体1に回転自在に支持される。
【0032】
クラッチレバー17は、一対の第1側板8及び第2側板9の間の後部でスプール12の後方に配置される。クラッチレバー17は第1側板8及び第2側板9の間で上下方向にスライドする。
【0033】
レベルワインド機構18は、スプール12の前方で第1側板8及び第2側板9の間に配置される。レベルワインド機構18は、外周面に交差する螺旋状溝46aが形成された螺軸46と、螺軸によりスプール軸方向に往復移動する釣り糸案内部47と、を有する。螺軸46は、両端が第1側板8及び第2側板9に回転自在に支持される。
【0034】
<回転伝達機構の構成>
回転伝達機構19は、
図2に示すように、駆動軸30と、駆動軸30に固定された駆動ギア31と、駆動ギア31に噛み合う筒状のピニオンギア32と、駆動軸30の基端部に一体的に回転可能に装着された第1ギア部材50と、螺軸46の
図2右端に回転不能に装着された第2ギア部材51と、を有する。
【0035】
駆動軸30は、
図4に示すように、逆転防止機構55によって糸繰り出し方向の回転(逆転)が禁止される。これによって、ドラグ装置23が作動可能になる。逆転防止機構55は、ローラ型の第1ワンウェイクラッチ86と、爪式の第2ワンウェイクラッチ88と、を有する。第1ワンウェイクラッチ86は、駆動軸30の中間部に配置され、リール本体1の第2側カバー7の第2ボス部7bと駆動軸30との隙間に装着される。第1ワンウェイクラッチ86は、内輪遊転型のローラクラッチである。第1ワンウェイクラッチ86は、第2ボス部7bに回転不能に装着される外輪86aと、駆動軸30に一体的に回転可能に連結される内輪86bと、外輪86aと内輪86bとの間に配置されるローラ86cとを有する。内輪86bには、
図3に示すように、一対の係合突起86dが設けられている。一対の係合突起86dは、内輪86bの駆動ギア31側の端面から軸方向に突出して形成され、後述する第1ドラグ部材61のドラグ板66に一体的に回転可能に連結される。この実施形態では、内輪86bは、ドラグ板66を介して駆動軸30と一体的に回転可能に連結される。
【0036】
第2ワンウェイクラッチ88は、
図3に示すように、外周にラチェット歯90aを有するラチェットホイール90と、リール本体1の機構装着板13の外側面に揺動自在に装着されたラチェット爪92と、を有する。ラチェットホイール90は、駆動軸30の第1係止部30dに鍔部30cに接触して配置され、駆動軸30に一体的に回転可能である。そして、ラチェット歯90aにラチェット爪92が噛み込むことによって、駆動軸30の糸繰り出し方向の回転が禁止される。ラチェットホイール90と駆動ギア31との間には、ドラグ装置23のドラグディスク65dが配置される。ラチェットホイール90は、駆動軸30と一体的に回転可能なドラグ部材としても機能する。
【0037】
駆動軸30は、
図4に示すように、軸受28及び第1ワンウェイクラッチ86によって第2側カバー7及びフレーム5に回転自在に支持される。駆動軸30には、
図3及び
図4に示すように、基端側から先端側に向かって被支持部30a、トルク規制部30b、鍔部30c、第1係止部30d、第1雄ネジ部30e、第2雄ネジ部30f(
図3参照)、及び第2係止部30g(
図3参照)がそれぞれ形成される。
【0038】
被支持部30aには、駆動軸30を回転自在に支持するための軸受28(
図4参照)が装着される。トルク規制部30bは、被支持部30aよりも大径である。トルク規制部30bは、径方向外方に付勢された一対の規制ピン33によって許容トルク内で第1ギア部材50を駆動軸30に一体回転可能に連結する。鍔部30cは、
トルク規制部30bよりも大径である。鍔部30cは、ドラグ装置23によって生じる押圧力を受けるために設けられる。第1係止部30dは、ドラグ装置23を構成する第1ドラグ部材61、第2ドラグ部材62、及びラチェットホイール90(それぞれ後述)を、駆動軸30に一体的に回転可能に連結するために設けられる。第1係止部30dは、鍔部30cよりも小径であり、互いに平行な2組の面取り部で構成される。第1雄ネジ部30eは、ドラグ装置23のスタードラグ3を螺合させるために設けられる。第1雄ネジ部30eは、第1係止部30dの先端側に第1係止部30dを除く外周面に形成される。第2雄ネジ部30fは、駆動軸30の先端部に第1雄ネジ部30eよりも小径に形成される。第2係止部30gは、第1係止部30dよりも小径であり、互いに平行な1組の面取り部によって構成される。第2係止部30gは、第2雄ネジ部30fが形成された駆動軸30の外周面に形成される。第2係止部30gは、ハンドル2を一体的に回転可能に連結するために設けられる。ハンドル2は、第2雄ネジ部30fにねじ込まれたナット53(
図2参照)によって駆動軸30に一体的に回転可能に固定される。
【0039】
駆動ギア31は、駆動軸30に回転自在に装着されており、駆動軸30とドラグ装置23を介して連結される。駆動ギア31は、筒状のギア部31aと、ギア部31aよりも薄肉の円板部31bと、ギア部31aの内周面に形成された少なくとも一つの第1係合凹部31cと、を有する。この実施形態では、第1係合凹部31cは、ギア部31aの内周部に円弧状に凹んで複数(例えば、2から6つ、この実施形態では4つ)形成される。ギア部31aは、駆動ギア31の外周側に形成されるギア歯31dを有する。円板部31bは、ギア部31aの内周側に一体形成され、駆動軸30に回転自在に装着される。円板部31bは、ギア部31aよりも薄肉である。円板部31bの中心に駆動軸30に支持される支持孔31eが形成される。また円板部31bは、ハンドル2側にドラグ装置23によって押圧される被押圧側面31fを有する。第1係合凹部31cは、第2ドラグ部材62を駆動ギア31に一体回転可能に連結するために設けられる。第1係合凹部31cは、駆動ギア31の第2側カバー7から遠い面に貫通して形成され、貫通部分には、円形の装着孔31gが形成される。
【0040】
駆動ギア31は、ドラグ装置23の後述する発音部材64が収容される収容部35をさらに有する。収容部35は、有底筒状の収容部本体35aと、収容部本体35aの外周面に円弧状に突出する位置決め突起35bと、を有する。収容部本体35aは、装着孔31g及び第1係合凹部31cに係合可能であり、かつ軸方向に移動自在である。収容部本体35aには、発音部材64が収容される。位置決め突起35bは、装着孔31gに収容部本体35aが装着されると、軸方向に配置された背面(ハンドル2から離れた面)が装着孔31gの周囲の円板部31bの壁面に接触し、かつ周方向の両面がギア部31aの内周面に接触する。これによって、収容部本体35aの軸方向の位置決め及び回り止めが行われる。なお、収容部35は、4つの装着孔31gのいずれにも装着可能である。
【0041】
ピニオンギア32は、
図2に示すように、第2側板9の外方から内方に延び、中心にスプール軸16が貫通する筒状部材である。ピニオンギア32は、軸受34a及び軸受34bによって軸方向移動自在かつ回転自在にリール本体1に支持される。軸受34aは、機構装着板13に装着される。軸受34bは、第2側カバー7の第1ボス部7aに装着される。
図4に示すように、ピニオンギア32の
図4左端部には、クラッチ機構21の後述する係合ピン21aに噛み合う噛み合い溝32aが形成される。この噛み合い溝32aと、スプール軸16に装着された係合ピン21aと、によってクラッチ機構21が構成される。また、ピニオンギア32の中間部にはくびれ部32bが、右端部には軸受34bに支持される支持部分32cがそれぞれ形成される。くびれ部32bと支持部分3
2cとの間に、駆動ギア31に噛み合うギア部32dが形成される。
【0042】
第1ギア部材50は、前述したように駆動軸30のトルク規制部30bに装着される。第1ギア部材50は、
螺軸46又は第2ギア部材51が何らかの原因によって回転不能になって、許容トルク以上のトルクが第1ギア部材50に作用すると空転する。第1ギア部材50は、鍔部30cに駆動軸30の基端部側から当接している。螺軸46に装着された第2ギア部材51は、第1ギア部材50に噛み合っている。このような構成により、レベルワインド機構18の螺軸46は、駆動軸30の糸巻取方向の回転に連動して回転する。
【0043】
<ドラグ装置の構成>
ドラグ装置23は、スプール12に連動する駆動ギア31と駆動軸30との相対回転を所定のトルク量を超えるまで規制する。また、ドラグ装置23は、所定のトルク量を超えて駆動ギア31と駆動軸30とが相対回転すると、スプール12の糸繰り出し方向の回転を制動する。ドラグ装置23は、主として、
図2に示すスタードラグ3と、
図3及び
図4に示す第1ドラグ部材61、第2ドラグ部材62、第3ドラグ部材63、及び発音部材64と、複数枚(例えば、4枚)のドラグディスク65aからドラグディスク65dと、を備える。第1ドラグ部材61は、ドラグ部材の一例である。
【0044】
図2に示すように、スタードラグ3は、駆動軸30の第1雄ネジ部30eに螺合するナット部材3aと、ナット部材3aを一体回転可能かつ軸方向移動自在に支持する本体部材3bと、を有する。スタードラグ3は、ドラグ調整部材の一例である。スタードラグ3は、スタードラグ3よりも駆動軸30の基端側に装着された部材(例えば、第1ワンウェイクラッチ86の内輪86b、第1ドラグ部材61、第2ドラグ部材62,及び第3ドラグ部材63などの部材)を押圧して所定のトルク量を調整するための部材である。スタードラグ3と第1ワンウェイクラッチ86との間には複数枚(例えば2枚から6枚であり、この実施形態では、2枚)の皿バネ57が装着される。皿バネ57は、スタードラグ3の締め付け力を第1ドラグ部材61に緩やかに伝えるために設けられる。皿バネ57は、スタードラグ3と
第1ワンウェイクラッチ86の内輪86bとにそれぞれワッシャを介して接触する。
【0045】
スタードラグ3は、その締め具合を調節することにより、皿バネ57を介して第2側カバー7に装着された
第1ワンウェイクラッチ86の内輪86
bを軸方向に移動させることができる。すなわち、スタードラグ3の調節によって、皿バネ57の押圧力が調整される。これによって、スタードラグ3によりドラグ装置23のドラグ力を細かく調整できる。
【0046】
第1ドラグ部材61は、
図3及び
図4に示すように、駆動軸30と一体的に回転可能であり、第1ワンウェイクラッチ86の内輪86bによって駆動ギア31に対して押圧される。第1ドラグ部材61は、駆動ギア31に対する押圧側面に形成された音出し部67aを有する。第1ドラグ部材61は、駆動軸30に一体的に回転可能に装着される。第1ドラグ部材61は、駆動ギア31を押圧可能なドラグ板66と、音出し部67aを有する音出しリング67と、を有する。ドラグ板66は駆動軸30の第1係止部30dに一体的に回転可能に装着されている。音出しリング67はドラグ板66の外周側にドラグ板66と一体的に回転可能に装着されている。
【0047】
ドラグ板66は、
図3及び
図5に示すように、円板状の部材である。ドラグ板66は、外周部に形成され音出しリング67に係合する係合部68と、内周部に形成された非円形孔66aと、を有する。非円形孔66aは、駆動軸30の第1係止部30d及び第
1ワンウェイクラッチ86の内輪86bの一対の係合突起86dに一体的に回転可能に係合する。非円形孔66aは、内輪86bの一対の係合突起86dに係合する一対の矩形凹部66bと、駆動軸30の第1係止部30dに係合する一対の直線部66cと、を有する。
【0048】
係合部68は、駆動ギア31を押圧する押圧方向(駆動軸の
図3左方向)に音出しリング67と係合する第1係合部68aと、周方向に音出しリング67と係合する第2係合部68bと、を有する。第1係合部68aは、押圧方向に突出する押圧部68cと、押圧部68cの外周側から径方向に延出されるフランジ部68dと、を有する。第2係合部68bは、ドラグ板6
6のフランジ部68dの周方向に間隔を隔てて配置された少なくとも一つの第2係合凹部68eを有する。第2係合凹部68eは、第2係合部の係合凹部の一例である。
【0049】
音出しリング67は、ガラス繊維又は炭素繊維などのフィラーによって強化されたポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂等の合成樹脂製の部材である。この実施形態では、ポリフェニレンスルファイド樹脂が選ばれる。音出しリング67は、
図3、
図6、
図7、及び
図8に示すように、駆動ギア31に対向可能な面に音出し部67aと、ドラグ板66の係合部68に係合する被係合部69と、を有する。音出し部67aは、周方向に間隔を隔てて形成された複数の音出し凹部67bを有する。音出し凹部67bは、被衝突部の一例である。この実施形態では、音出し凹部67bは、
図7に示すように、波状に凹んで等間隔に形成される。
【0050】
被係合部69と係合部68との間には、所定の隙間が設けられる。被係合部69は、第1係合部68aと係合する第1被係合部69aと、第2係合部68bと係合する第2被係合部69bと、を有する。第1被係合部69aは、押圧部68cが挿通可能であり、かつ、フランジ部68dよりも小径の貫通孔69cを有する。第2被係合部69bは、ドラグ板66の第2係合凹部68eに係合する第2係合凸部69dを有する。第2係合凸部69dは、第2被係合部の係合凸部の一例である。
【0051】
図8に示すように、押圧部68cの押圧方向の長さL1は、貫通孔69cの押圧方向の長さL2よりも長い。具体的には、押圧部68cの長さL1は、貫通孔69cの長さL2よりも、少なくとも0.1mm長い。なお、
図8では、隙間をわかりやすくするために、貫通孔69cの長さL2を実際の長さよりも短く描いている。これによって、音出しリング67は、軸方向に長さL1−L2の差である両者の隙間分だけ、ドラグ板66に対して移動可能になる。
【0052】
図9に示すように、音出しリング67の第2係合凸部69dの周方向の長さL4は、ドラグ板66の第2係合凹部68eの周方向の長さL3よりも短い。具体的には、第2係合凸部69dの周方向の長さL4は、第2係合凹部68eの周方向の長さL3よりも、少なくとも0.1mm短い。なお、
図9では、隙間をわかりやすくするために、第2係合凸部69dの長さL4を実際の長さよりも短く描いている。これによって、音出しリング67は、周方向に長さL3−L4の差である両者の周方向の隙間分だけ、ドラグ板66に対して移動可能になる。
【0053】
第2ドラグ部材62は、
図3及び
図4に示すように、第1ドラグ部材61と第3ドラグ部材63との間に配置される。第2ドラグ部材62は、駆動ギア31のギア部31aの内周側に配置され、駆動ギア31と一体的に回転可能に設けられる。第2ドラグ部材62は、ドラグディスク65aを介して第1ドラグ部材61のドラグ板66の押圧部68cによって押圧される。第2ドラグ部材62は、外周部に駆動ギア31の複数の第1係合凹部31cに係合する少なくとも1つの第1係合凸部62aを有する。第1係合凸部62aは、第1係合凹部31cの数よりも少ないのが好ましい。この実施形態では、第1係合凹部31cの数は4つであり、第1係合凸部62aの数は3つである。また、第
2ドラグ部材62は、発音部材64が通過可能な通過凹部62bを外周部に有する。通過凹部62bは、第1係合凸部62aが第1係合凹部31cに係合した状態で、余った第1係合凹部31cに対向可能な位置に配置される。したがって、第1係合凹部31cが等間隔で配置される場合、複数の第1係合凸部62aと少なくとも1つの通過凹部62bが等間隔に配置される。通過凹部62bは、収容部35に収容された発音部材64が通過可能に凹んで形成される。
【0054】
第3ドラグ部材63は、第2ドラグ部材62と駆動ギア31の間に配置される。第3ドラグ部材63は、ドラグ座金65bを介して第2ドラグ部材62によって押圧される。第3ドラグ部材63は、駆動ギア31のギア部31aの内周側に配置され、ドラグディスク65を介して内周側に駆動軸30の第1係止部30dに一体的に回転可能に係合する非円形孔63aを有する。第3ドラグ部材63は、ドラグディスク65cを介して駆動ギア31の円板部31bを押圧する。
【0055】
発音部材64は、
図7及び
図8に示すように、打撃ピン70と、打撃ピン70を付勢する付勢部材72と、を有する。打撃ピン70は、駆動ギア31のドラグ装置23によって押圧される被押圧側面31fに装着された収容部35に、第1ドラグ部材61の音出し部67aに対して進退自在に装着される。付勢部材72は、打撃ピンを音出し部67aに向けて弾性的に付勢する。
【0056】
打撃ピン70は、金属製の部材であり、音出し部67aに繰り返して衝突可能である。打撃ピン70は、先端に大径に設けられた頭部70aと、頭部70aの基端に一体で形成された軸部70bと、を有する。頭部70aは、銃弾形状に形成され、先端部は例えば球状に丸められる。頭部70aは、音出し凹部67bに係合可能な大きさである。具体的には、音出し凹部67bに進入可能な大きさである。頭部70aは、収容部35から突出して配置される。軸部70bは、頭部70aよりも小径であり、付勢部材72に係合して設けられる。
【0057】
付勢部材72は、打撃ピン70の軸部70bの外周側に配置されるコイルばねである。付勢部材72は、収容部35の底面35cと、打撃ピン70の頭部70aと軸部70bと、の段差70cの間に圧縮状態で配置される。
【0058】
この発音部材64と音出し部67aとによって発音機構74が構成される。付勢部材72によって音出し部67aに向けて付勢された打撃ピン70は、組み立てられた状態で第1ドラグ部材61をハンドル2側に付勢する。
【0059】
ドラグディスク65a〜ドラグディスク65dは、例えば、フェルト、カーボン等の部材で構成される。
【0060】
このような構成では、打撃ピン
70は駆動ギア31に連動して回転し、駆動軸30及び第1ドラグ部材61は逆転防止機構55によって逆転が禁止されている。したがって、ドラグ装置23の作動により駆動軸30と駆動ギア31とが相対回転すると、打撃ピン70が第1ドラグ部材61の音出し部67aに対して衝突を繰り返して発音する。このとき、音出しリング67が配置された第2側カバー7に近い位置で発音するので、ドラグ装置23が作動すると、大きくかつ明瞭な音を発生できるようになる。
【0061】
次に、この両軸受リールの動作を説明する。
【0062】
釣り糸を巻き取るときには、ハンドル2を糸巻き取り方向に回す。ハンドル2の回転は駆動軸30からドラグ装置23を介して駆動軸30に連動する駆動ギア31及びピニオンギア32に伝達される。ピニオンギア32の回転は、クラッチ機構21によりピニオンギア32と嵌合しているスプール軸16に伝達され、スプール12が回転して釣り糸を巻き取る。この駆動軸30の回転は、第1ギア部材50及び第2ギア部材51を介して螺軸46にも伝達される。螺軸46の回転によって、
レベルワインド機構18の釣り糸案内部47がスプール軸16に沿って往復運動する。この往復運動によって、スプール12に釣り糸が略均一に巻き取られる。
【0063】
一方、釣り糸を繰り出すときには、クラッチレバー17を操作してクラッチ制御機構22によりクラッチ機構21を離脱状態(クラッチオフ状態)
にする。これにより、スプール軸16とピニオンギア32との嵌合が解除され、釣り糸の繰り出しによりスプール12が回転しても回転伝達機構19及び駆動軸30にはその回転は伝達されない。
【0064】
次に、ドラグ装置23の動作について説明する。
【0065】
魚を釣り上げる際には、釣り糸にテンションがかかる。これにより、スプール12には糸繰り出し方向に回転しようとするトルクが作用する。しかし、スタードラグ3の締め込みにより圧縮した皿バネ57によって、駆動ギア31がラチェットホイール90側に押圧されているために、スプール12に作用するトルクが小さい間は、駆動ギア31と駆動軸30が相対回転不能である。そして、駆動軸30は逆転防止機構55により糸繰り出し方向に回転しないように止められているので、駆動ギア31と連動するスプール12も糸繰り出し方向に回転しない。
【0066】
釣り糸にかかるテンションが高くなりスプール12にかかるトルクが大きくなると、駆動ギア31及び第2ドラグ部材62が、第1ドラグ部材61、第3ドラグ部材63及びラチェットホイール90に対してスリップしながら糸繰り出し方向に回転する。これにより、スプール12も糸繰り出し方向に回転する。このように、スプール12に作用するトルクが所定の値を超えると、言い換えれば釣り糸に過大な張力がかかると、ドラグ装置23が作動してスプール12が糸繰り出し方向に回転し、釣り糸を過大な張力から保護する。
【0067】
魚の釣り上げ時において上記のようにスプール12が糸繰り出し方向に回転する際に、発音機構74によって音を発生する。駆動軸30と駆動ギア31とが相対回転すると、駆動軸30に連動して回転する第1ドラグ部材61の音出し凹部67bと、駆動ギア31に連動して回転する打撃ピン70と、が干渉してクリック音を発生する。このクリック音は、等間隔に配置された音出し凹部67bに向けて付勢された
打撃ピン70の頭部70aが間欠的に当接することによって発生する。このため、クリック音は、リズミカルな音である。この音発生時には、音出し部67aを有する第1ドラグ部材61が第2側カバー7に近い位置に配置され、両軸受リール100の外側に近い位置で発音するため、大きな音を明瞭に発生することができる。しかも、第1ドラグ部材61において、ドラグ板66と音出しリング67とが、周方向及び軸方向に隙間をあけて配置されるため、音出しリング67が振動しやすくなり、さらに大きな音を発生できる。
【0068】
このように、魚を釣り上げる際にスプール12が糸繰り出し方向に回転すると、明瞭な音が発生するので、釣り人はスプールの回転を認識することができ、釣り人にとって便利である。さらに、ドラグ装置23が作動しても音出しリング67は押圧されないので、発生する音が良く響き、音量も大きい。
【0069】
なお、スプール12を回転させるトルクの大きさ、つまりドラグ力の調節は、スタードラグ3の締め具合によって皿バネ57の押圧力を調整することにより駆動ギア31の押圧の度合いを変えることによって行う。
【0070】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0071】
(a)上記実施形態では、金属製の丸形の両軸受リールを例に説明したが、本発明のドラグ装置は全ての両軸受リールの駆動軸に装着されたドラグ装置に採用できる。
【0072】
(b)上記実施形態では、被衝突部としての音出し凹部を例示したが、本発明の被衝突部はこれに限定されない。被衝突部としては、発音部材64が音出しリング67と駆動ギア31の相対回転によって繰り返し衝突を繰り返す構成であれば、どのような構成でもよい。例えば、被衝突部は、周方向に間隔を隔てて突出して形成された音出し凸部を有してもよい。また、音出し凹部67bの形状は、波状に限定されず、例えば球状、三角形状、又は矩形状に凹んで形成されてもよい。
【0073】
(c)上記実施形態では、発音部材64を、打撃ピン70と、付勢部材72と、によって構成したが、発音部材64の構成はこれに限定されない。発音部材は、駆動ギア31のハンドル側に配置される構成であれば、どのような構成でもよい。例えば、駆動ギア31と駆動軸30との相対回転によって音出し部67aと衝突を繰り返す、板状または棒状のばね部材であってもよい。また、上記相対回転によって衝突を繰り返す揺動する爪部材と爪部材を付勢する付勢部材とで構成してもよい。
【0074】
(d)上記実施形態では、第1ドラグ部材61を、押圧部68cを有するドラグ板6
6と、音出し部67aを有する音出しリング67との2つの部材で構成したが、本発明はこれに限定されない。一つの第2ドラグ部材に押圧部と音出し部とを設けてもよい。この場合には、音出し部が振動しにくくなるため、音量が上記実施形態のものよりも小さくなるおそれがある。
【0075】
(e)上記実施形態では、伝達トルクを大きくするために、ドラグ装置23に第2ドラグ部材62と第3ドラグ部材63とを設けたが、これらのドラグ部材を設けなくてもよい。
【0076】
(f)上記実施形態では、発音部材64を1つ設けたが、発音部材64を複数(例えば、2つ)設けてもよい。この場合、収容部35を複数設け、収容部35を装着孔31gに装着し、その収容部35に発音部材64を収容すればよい。この場合、それぞれの発音部材64を異なる回転位相で発音させてもよい。例えば、音出しリングの音出し凹部の数を発音部材の数で割り切れない数にしてもよい。また、第1係合凹部及び装着孔の位相を複数の発音部材が同時に発音しない位置に変更してもよい。これによって、発音部材の発音周期が短くなる。さらに、複数の発音部材を同時に発音させて音量を大きくしてもよい。上記実施形態では、収容部35を駆動ギア31と別体で設けたので、上記のように、複数の発音部材64を設けることが容易である。
【0077】
(g)上記実施形態では、発音部材64を収容する収容部35を駆動ギア31と別体としたが、駆動ギアと一体で収容部を設けてもよい。
【0078】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0079】
(A)両軸受リール100のドラグ装置23は、スプール12に連動する駆動ギア31と駆動軸30との相対回転を規制する装置である。ドラグ装置23は、第1ドラグ部材61と、スタードラグ3と、発音部材64と、を備える。第1ドラグ部材61は、駆動軸30と一体的に回転可能であり、駆動ギア31に対して押圧され、駆動ギア31に対する押圧側面に形成された音出し部67aを有する。スタードラグ3は、第1ドラグ部材61の押圧力を調整する。発音部材64は、駆動ギア31と連動し、音出し部67aに対向可能に設けられ、駆動ギア31と駆動軸30との相対回転により音出し部67aと干渉して音を発生する。
【0080】
この両軸受リール100のドラグ装置23では、スタードラグ3によって調整された規制力よりも強い力が釣り糸に作用すると、スプール12が糸繰り出し方向に回転し、ドラグ装置23が作動する。ドラグ装置23が作動すると、駆動軸30と駆動ギア31とが相対回転し、発音部材64が音出し部67aと干渉して音を発生する。ここでは、音出し部67aは、駆動ギア31を押圧する
第1ドラグ部材61の押圧側面に配置されるので、発音部材64と音出し部67aとの干渉による発音位置は、駆動ギア31よりも両軸受リール100の外側面である第2側カバー7に近い位置である。このため、ドラグ装置23が作動すると、大きくかつ明瞭な音を発生できるようになる。
【0081】
(B)発音部材64は、駆動ギア31の被押圧側面31fに、音出し部67aに対して進退自在に装着され、音出し部67aに衝突可能な打撃ピン70と、打撃ピン70を音出し部67aに向けて弾性的に付勢する付勢部材72と、を有してもよい。この場合には、音出し部67aに向けて弾性的に付勢された打撃ピン70によって音が発生するので、歯切れがよい明瞭な音を発生できる。
【0082】
(C)音出し部67aは、少なくとも1つの音出し凹部67bを有してもよい。この場合には、駆動軸30と駆動ギア31との相対回転によって打撃ピン70が音出し凹部67bに衝突して音が発生する。
【0083】
(D)音出し部67aは、周方向に間隔を隔てて設けられた複数の音出し凹部67bを有してもよい。この場合には、駆動軸30と駆動ギア31の相対回転において、1回転で複数回の音が発生する。このため、さらにクリック感がある明瞭な音を発生できる。
【0084】
(E)第1ドラグ部材61は、駆動軸30に一体的に回転可能に装着され、駆動ギア31を押圧可能なドラグ板66と、音出し部67aを有する音出しリング67と、を有してもよい。この場合には、第1ドラグ部材61が駆動ギア31を押圧するためのドラグ板66と、ドラグ作動時に発音するための音出しリング67との2つの部材で構成されるため、音出しリング67が発音時に振動しやすくなる。このため、ドラグ作動時にさらに大きくかつ明瞭な音を発生できる。
【0085】
(F)ドラグ板66は、音出しリング67と係合する係合部68を有し、音出しリング67は、ドラグ板66と係合する被係合部69を有してもよい。この場合には、係合部68と被係合部69とを係合させることによって、ドラグ板66と音出しリング67とを一体回転可能に連結できる。
【0086】
(G)係合部68と被係合部69との間に、所定の隙間が設けられている。この場合には、係合部68と
被係合部69との間に所定の隙間が設けられるので、発音時に音出しリング67がさらに振動しやすくなり、さらに大きくかつ明瞭な音を発生できる。
【0087】
(H)係合部68は、押圧方向に係合する第1係合部68aと、周方向に係合する第2係合部68bと、を有し、被係合部69は、第1係合部68aと係合する第1被係合部69aと、第2係合部68bと係合する第2被係合部69bと、を有してもよい。この場合には、第1係合部68aと第1被係合部69aとの係合によって、音出しリング67を抜け止めでき、第2係合部68bと第2被係合部69bとの係合によって、音出しリング67をドラグ板66に対して一体的に回転可能に連結できる。
【0088】
(I)第1係合部68aは、押圧方向に突出する押圧部68cと、押圧部68cから径方向に延出されるフランジ部68dと、を有し、第1被係合部69aは、押圧部68cが挿通可能で、フランジ部68dよりも小径の貫通孔69cを有してもよい。この場合には、ドラグ板66の押圧部68cが貫通孔69cを挿通して駆動ギア31を押圧可能になるとともに、フランジ部68dが貫通孔69cの周囲で音出しリング67を抜け止めできる。
【0089】
(J)押圧部68cの押圧方向の長さL1は、貫通孔69cの押圧方向の長さL2よりも長くてもよい。この場合には、押圧部68cの押圧方向の長さL1が貫通孔69cの長さL2よりも長いので、音出しリング67の押圧方向において、ドラグ板66との間に隙間が形成できる。これによって、発音時に音出しリング67が振動しやすくなり、ドラグ作動時にさらに大きくかつ明瞭な音を発生できる。
【0090】
(K)押圧部68cの押圧方向の長さL1は、貫通孔69cの押圧方向の長さL2よりも少なくとも0.1mm長くてもよい。この場合には、押圧部68cの長さL1が貫通孔69cの長さL2に対して僅かに長いだけであるので、押圧部68cの長さL1を貫通孔69cよりも長くしても、両軸受リールの大型化を招かない。
【0091】
(L)第2係合部68bは、ドラグ板66の周方向に設けられた少なくとも1つの第2係合凹部68eであり、第2被係合部69bは、第2係合凹部68eに係合可能な第2係合凸部69dであってもよい。この場合には、凹凸係合によって、音出しリング67をドラグ板66に一体的に回転可能に連結できる。
【0092】
(M)第2係合部68bは、ドラグ板66の周方向に間隔を隔てて設けられた複数の第2係合凹部68eであり、第2被係合部69bは、複数の第2係合凹部68eに係合可能な複数の第
2係合凸部69dであってもよい。この場合には、複数の凹凸係合によって、音出しリング67をドラグ板66に一体的に回転可能に確実に連結できる。
【0093】
(N)第2係合凸部69dの周方向の長さL4は、第2係合凹部68eの周方向の長さL3よりも短くてもよい。この場合には、第2係合凸部69dと第2係合凹部68eとの間に周方向の隙間が形成されるため、発音時に音出しリング67がさらに振動しやすくなり、さらに大きくかつ明瞭な音を発生できる。
【0094】
(O)第2係合凸部69dの周方向
の長さL4は、第2係合凹部68eの周方向の長さL3よりも少なくとも0.1mm短い。この場合には、第2係合凸部69dと第2係合凹部68eとの周方向の隙間が小さいので、ドラグ装置23が作動すると、瞬時に音出しリング67と、発音部材64が連動する駆動ギア31と、が瞬時に相対回転する。これによって、ドラグ装置23が作動すると、瞬時に発音する。