【実施例】
【0047】
以下、実施の形態1によるポリウレタン水分散体を試験例に基づいて具体的に説明するが、実施の形態1によるポリウレタン水分散体は、これらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例中の「部」および「%」は、特に明示しない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
【0048】
以下に、ポリウレタン水分散体の製造原料、ポリウレタン水分散体の製造例、塩凝固法を用いたフィルム成形体の製造例、各種評価方法について説明する。
【0049】
<ポリウレタン水分散体の製造原料>
成分(A):ポリイソシアネート
・ジフェニルメタンジイソシアネート(成分(a1))
(商品名「ミリオネートMT」、日本ポリウレタン工業社製、4,4’-MDIが99.5%以上で残りが2,4’-MDI、以下本製品と他の成分(a1)の製品とを特に区別する必要のない場合は「MDI」と略記する。本製品と他の成分(a1)の製品とを区別する必要がある場合は、商品名をそのまま記載する。)
(商品名「ルプラネートMI」、BASF INOAC ポリウレタン社、4,4’-MDI:2,4’-MDI=50%:50%)
(商品名「ミリオネートNM100」、日本ポリウレタン工業社製、4,4’-MDI:2,4’-MDI=5〜15%:95〜85%)
・脂環式ジイソシアネート(成分(a2))
(4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(商品名「デスモジュールW」、住化バイエルウレタン社製、以下「H12MDI」と略記))
(イソホロンジイソシアネート(商品名「デスモジュールI」、住化バイエルウレタン社製、以下「IPDI」と略記))
【0050】
成分(B):エチレンオキシドとテトラヒドロフランのランダム共重合体(以下、「EO/THF」と略記)
・(商品名「ポリセリンDC3000E」、モル比(EO/THF)=50/50、数平均分子量3100、日油社製、以下「DC3000」と略記)
・(商品名「ポリセリンDC1800E」、モル比(EO/THF)=50/50、数平均分子量1800、日油社製、以下「DC1800」と略記)
・(商品名「ポリセリンDC1100E」、モル比(EO/THF)=65/35、数平均分子量1050、日油社製、以下「DC1100」と略記)
【0051】
成分(C):ポリオール
・ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「UH300」、数平均分子量3000、宇部興産社製、以下「UH300」と略記)
・ポリテトラメチレングリコール(商品名「PTG−2900」、数平均分子量2900、保土谷化学工業社製、以下「PTG2900」と略記)
・ポリエチレングリコール(商品名「PEG#2000」、数平均分子量2000、日油社製、以下「PEG2000」と略記)
・ポリエステルポリオール(商品名「HOKOKUOL HT−300」、1,4−ブタンジオールとアジピン酸を縮合重合して得られるポリエステルポリオール、数平均分子量3000、豊国製油社製、以下「HT300」と略記)
・ポリエステルポリオール(商品名「ニッポラン4042」、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールとアジピン酸を縮合重合して得られるポリエステルポリオール、数平均分子量2000、日本ポリウレタン社製、以下「ニッポラン4042」と略記)
【0052】
成分(D):多価アルコール系鎖延長剤
・1,4−ブタンジオール
【0053】
成分(E):カルボキシル基を有するジオール化合物
・2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と略記)
・2,2−ジメチロールブタン酸(以下、「DMBA」と略記)
【0054】
成分(F):アミン系鎖延長剤
・30% 6水和ピペラジン
【0055】
(その他の成分)
・水
・中和剤:トリエチルアミン
・溶剤:N−メチルピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン(MEK)
・触媒:ジオクチル錫ジラウレート
【0056】
<塩凝固法による加工性能の評価>
評価項目として、ゲル化性能、ゲル化強度および造膜性能がある。
(ゲル化性能)
10%濃度の硝酸カルシウム水溶液に、縦180mm×横70mmの陶器製の板(以下、「陶器板」と略記)を、該陶器板が縦方向に100mm浸漬するように、5mm/secの速度で浸漬し、次いで10mm/secの速度で陶器板を引上げた後、これを100℃のオーブン内で加熱乾燥させた。この工程により、硝酸カルシウム水溶液に浸漬された陶器板部分(縦100mm×横70mm)には、硝酸カルシウム層が形成される。続いて、55℃±5℃に冷ました陶器板を、該陶器板に形成された前記硝酸カルシウム層全体を浸漬させるため、縦方向の100mmが浸漬するまで、5mm/secの速度で、ポリウレタン水分散体に浸漬し、30秒間静止した後に10mm/secの速度で引き上げた。この一連の工程で、陶器板の表面には、塩凝固によってゲル化したポリウレタン水分散体のゲル皮膜が形成される。
【0057】
続いて、上記陶器板のうち、硝酸カルシウム水溶液、ポリウレタン水分散体のいずれにも浸漬された短手側部分を上向きにし、23±2℃の室内に1分間静置させ、ゲル皮膜の外観を目視で観察し、以下の基準でゲル化性能を評価した。
◎:皮膜に割れが生じない(良好)。
○:皮膜に1mm未満の割れが1〜2つ発生したが、1mm以上の割れは発生しない(やや良)。
×:ゲル皮膜に1mm未満の割れが3つ以上発生したか、または1mm以上の割れが1つ以上発生した(不良)。
【0058】
*上記基準のうち、◎と○は、実用性を有すると評価される。
【0059】
(ゲル化強度)
ゲル化性能の評価時に陶器板から皮膜を剥離し、指で皮膜を引張り、以下の基準でゲル化強度(ゲル皮膜の皮膜強度の状態)を評価した。
◎:皮膜を形成し、皮膜にゴム弾性(伸縮性)がある(良好)。
○:皮膜を形成し、皮膜に伸びがある(やや良)。
×:皮膜を形成するが、皮膜に伸びがない、又は、皮膜を形成しない(不良)。
【0060】
*上記基準のうち、◎と○は、実用性を有すると評価される。
【0061】
(造膜性能)
上記「(ゲル化性能)」の評価に用いた、ゲル皮膜が形成された陶器板を、120℃のオーブン内で30分間加熱乾燥させてフィルム成形体を形成し、その形成したフィルム成形体の状態を目視で観察し、以下の基準で造膜性能を評価した。
◎:皮膜に割れが生じない(良好)。
○:皮膜に1mm未満の割れが1〜2つ発生したが、1mm以上の割れは発生しない(やや良)。
×:皮膜に1mm未満の割れが3つ以上発生したか、または1mm以上の割れが1つ以上発生した(不良)。
【0062】
*上記基準のうち、◎と○は、実用性を有すると評価される。
【0063】
(柔軟性):100%モジュラスの測定
上記「(造膜性能)」の評価時に用いたフィルム成形体(厚み:100μm)から、JIS3号ダンベルを用いて試験片を切り出し、LLOYD社の引張試験機LR−5Kを用い、チャック間隔60mm、標線間隔20mm、引張速度500mm/分、温度23±2℃で、JIS K6251に準拠して評価した。
【0064】
試験片が100%伸びた時の引張荷重を測定し、下記式によって引張強度を求めた。
【0065】
100%モジュラス(MPa)=F
100%/A
【0066】
ただし、F
100%は、100%伸び時の引張荷重(N)、Aは、試験片の断面積(mm2)である。
【0067】
100%モジュラスの判断基準は、以下のとおりである。
◎:4.0MPa未満(良好)
○:4.0MPa以上、7.0MPa未満(やや良)
×:7.0MPa以上(不良)
*上記基準のうち、◎と○は、実用性を有すると評価される。
【0068】
(耐エタノール水性能):破断強度の測定
上記「(造膜性能)」の評価時に用いたフィルム成形体(厚み:100μm)から、JIS3号ダンベルを用いて試験片を切り出し、エチルアルコール70%水(23℃±2℃)に30分間浸漬させた後に取り出した。取り出した試験片を軽く拭いてから90秒後に、JIS K6301に従い、破断強度試験を行い、以下の基準で耐エタノール水性能を評価した。
◎:破断強度が10MPa以上(良好)
○:破断強度が4MPa以上、10MPa未満(やや良)
×:破断強度が4MPa未満(不良)
*上記基準のうち、◎と○は、実用性を有すると評価される。
【0069】
(透湿性):透湿度の測定
JIS L 1099A−1法(塩化カルシウム法)に準じ、上記「(造膜性能)」の評価時に用いたフィルム成形体(厚み:100μm)の透湿度を測定し、以下の基準で透湿性を評価した。
◎:800 g/m
2−24hrs 以上
○:450 g/m
2-24hrs 以上、800 g/m2-24hrs 未満
×:450 g/m
2-24hrs 未満
*上記基準のうち、◎と○は、実用性を有すると評価される。
【0070】
1.好適なポリオールの検討
(ポリウレタン水分散体No.1の製造)
反応器に、DC3000(成分(B)) 24.9部、UH300(成分(C))158.4部、ジオクチル錫ジラウレート0.01部を仕込み、十分撹拌溶解し、MDI(成分(A)) 25.2部、H12MDI(成分(A))26.4部を加えて85℃で3時間反応させた。次に、60℃まで冷却した後、DMPA(成分(E))5.0部、1,4−ブタンジオール(成分(D))5.2部、NMP 61.3部、MEK 188.7部を加え、十分撹拌溶解し、ジオクチル錫ジラウレート0.04部を加え、80℃で8時間反応させ、イソシアネート値(固形分に対する残存イソシアネート基の重量含有量)が0.8%のプレポリマーを得た。このプレポリマーを50℃まで冷却し、トリエチルアミン 3.8部を加えて中和し、次いで水470.8部を加えて転相乳化した。この乳化分散液に30% 6水和ピペラジン(成分(F))18.9部(残存イソシアネート基に対してアミン基として100当量%)を加えて乳化分散した。得られた乳化液を脱溶剤することにより、不揮発分25%、pH7.3のポリウレタン水分散体No.1を得た。
【0071】
(ポリウレタン水分散体No.2〜No.9の製造)
表1に示す原材料、配合処方を用いてポリウレタン水分散体No.1と同様の方法でポリウレタン水分散体No.2〜No.9を製造した。
【0072】
ポリウレタン水分散体No.1〜No.9について、上記<塩凝固法を用いた加工性能の評価>の項で説明した方法で加工性能を評価し、得られたフィルム成形体について、柔軟性と耐エタノール水性能を評価した。表2に結果を示す。なお、表2における仕込み原料の数値は、製造原料のうち、成分(A)〜(F)の合計重量を100%としたときの各成分の含有量(重量%)を示したものである。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
ポリオールとして成分(B)と成分(C)を併用したNo.1〜No.3では、ゲル化強度の評価が「やや良」で、かつ耐エタノール水性能も「やや良」となり、上記2項目とも実用性を有していた。一方、ポリオールとして1種類の成分(C)を用いたNo.4〜No.7では、耐エタノール水性能が「良好」と評価される試料もあったが(No.4、No.5)、ゲル化強度が「不良」と評価され、上記2項目ともに実用性を有すると評価される試料はなかった。また、ポリオールとして2種類の成分(C)を用いたNo.8、No.9についても、耐エタノール水性能が「やや良」と評価されたが、ゲル化強度が「不良」と評価され、上記2項目ともに実用性を有すると評価される試料はなかった。
【0076】
上記の結果から、ゲル化強度と耐エタノール水性能をともに実用性を有するものとするには、ポリオールとして成分(B)と成分(C)とを併用することが必要であると考えられる。
【0077】
2.MDIと脂環式ジイソシアネートを併用したポリウレタン水分散体の特徴
(ポリウレタン水分散体No.10の製造)
反応器に、DC3000(成分(B)) 12.8部、UH300(成分(C))170.9部、ジオクチル錫 ジラウレート0.01部を仕込み、十分撹拌溶解し、MDI(成分(A)) 33.6部、H12MDI(成分(A))17.6部を加えて85℃で3時間反応させた。次に、60℃まで冷却した後、DMPA(成分(E))5.0部、1,4−ブタンジオール(成分(D))5.3部、NMP 61.3部、MEK 188.7部を加え、十分撹拌溶解し、ジオクチル錫ジラウレート0.04部を加え、80℃で8時間反応させ、イソシアネート値(固形分に対する残存イソシアネート基の重量含有量)が0.8%のプレポリマーを得た。このプレポリマーを、50℃まで冷却し、トリエチルアミン 3.7部を加えて中和し、次いで水470.9部を加えて転相乳化した。この乳化分散液に30% 6水和ピペラジン(成分(F))19.1部(残存イソシアネート基に対してアミン基として100当量%)を加えて乳化分散した。得られた乳化液を脱溶剤することにより、不揮発分25%、pH7.3のポリウレタン水分散体No.10を得た。
【0078】
(ポリウレタン水分散体No.11〜No.18の製造)
表3に示す原材料、配合処方を用いてポリウレタン水分散体No.10と同様の方法でポリウレタン水分散体No.11〜No.18を製造した。
【0079】
ポリウレタン水分散体No.10〜No.18について、上記<塩凝固法を用いた加工性能の評価>の項で説明した方法で加工性能を評価し、得られたフィルム成形体について、柔軟性と耐エタノール水性能を評価した。表4に結果を示す。なお、表4における仕込み原料の数値は、製造原料のうち、成分(A)〜(F)の合計重量を100%としたときの各成分の含有量(重量%)を示したものである。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
本試験は、ポリオールとして成分(B)と成分(C)とを併用することを前提として、成分(A)の種類、組合せを種々変えて製造したポリウレタン水分散体から塩凝固法で製造した皮膜について、特にゲル化強度と耐エタノール水性能の関係を検討したものである。
【0083】
成分(A)としてMDIのみを用いたNo.15は、そもそもポリウレタン水分散体が製造できず、成分(A)としてH12MDIとIPDIのいずれか一方を用いたNo.16,No.18では、ゲル化強度は実用性を有すると評価されたが、耐エタノール水性能が実用性を有しないと評価された。
【0084】
一方、成分(A)としてMDIとH12MDIとを併用したNo.10〜14、成分(A)としてMDIとIPDIとを併用したNo.17では、ゲル化強度と耐エタノール性能がともに実用性を有すると評価された。
【0085】
3.耐エタノール水性能、透湿性に優れた処方の検討
(ポリウレタン水分散体No.19の製造)
反応器に、DC3000(成分(B)) 12.8部、UH300(成分(C))170.6部、ジオクチル錫ジラウレート0.01部を仕込み、十分撹拌溶解し、MDI(成分(A)) 25.2部、H12MDI(成分(A))26.4部を加えて85℃で3時間反応させた。次に、60℃まで冷却した後、DMPA(成分(E))5.0部、1,4−ブタンジオール(成分(D))5.2部、NMP 61.3部、MEK 188.7部を加え、十分撹拌溶解し、ジオクチル錫ジラウレート0.04部を加え、80℃で8時間反応させ、イソシアネート値(固形分に対する残存イソシアネート基の重量含有量)が0.8%のプレポリマーを得た。このプレポリマーを、50℃まで冷却し、トリエチルアミン 3.8部を加えて中和し、次いで水470.9部を加えて転相乳化した。この乳化分散液に30% 6水和ピペラジン(成分(F))19.5部(残存イソシアネート基に対してアミン基として100当量%)を加えて乳化分散した。得られた乳化液を脱溶剤することにより、不揮発分25%、pH7.3のポリウレタン水分散体No.19を得た。
【0086】
(ポリウレタン水分散体No.20〜No.27の製造)
表5に示す原材料、配合処方を用いてポリウレタン水分散体No.19と同様の方法でポリウレタン水分散体No.20〜No.27を製造した。
【0087】
ポリウレタン水分散体No.19〜No.27について、上記<塩凝固法を用いた加工性能の評価>の項で説明した方法で加工性能を評価し、得られたフィルム成形体について、柔軟性、耐エタノール水性能および透湿性を評価した。表6に結果を示す。なお、表6における仕込み原料の数値は、製造原料のうち、成分(A)〜(F)の合計重量を100%としたときの各成分の含有量(重量%)を示したものである。
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
本試験は、ポリウレタン水分散体中のポリウレタン(樹脂固形分)に対するエチレンオキシド単位(EO)の含有量(単位:重量%)(以下、単に「EO含有量」と略記)と、特に耐エタノール水性能、透湿性の関係を検討したものである。
【0091】
表6から、EO含有量がおよそ2.0重量%以上になると、透湿性が実用性を有すると評価され、さらにEO含有量が増加するほど透湿性が向上する傾向にあった。
【0092】
また、耐エタノール水性能は、通常は実用性を有すると評価されるが、EO含有量が増え過ぎて14重量%を超えると、実用性を有しなくなることが分かった。
【0093】
4.柔軟性、ゲル化強度に優れた処方の検討
(ポリウレタン水分散体No.28の製造)
反応器に、DC3000(成分(B)) 12.8部、UH300(成分(C))180.5部、ジオクチル錫ジラウレート0.01部を仕込み、十分撹拌溶解し、ルプラネートMI(成分(A)) 29.0部、H12MDI(成分(A))15.3部を加えて85℃で3時間反応させた。次に、60℃まで冷却した後、DMPA(成分(E))5.0部、1,4−ブタンジオール(成分(D))3.1部、NMP 61.4部、MEK 313.6部を加え、十分撹拌溶解し、ジオクチル錫ジラウレート0.04部を加え、80℃で8時間反応させ、イソシアネート値(固形分に対する残存イソシアネート基の重量含有量)が0.9%のプレポリマーを得た。このプレポリマーを、50℃まで冷却し、トリエチルアミン 3.7部を加えて中和し、次いで水474.7部を加えて転相乳化した。この乳化分散液に30% 6水和ピペラジン(成分(F))19.9部(残存イソシアネート基に対してアミン基として100当量%)を加えて乳化分散した。得られた乳化液を脱溶剤することにより、不揮発分25%、pH7.3のポリウレタン水分散体No.28を得た。
【0094】
(ポリウレタン水分散体No.29,No.30の製造)
表7に示す原材料、配合処方を用いてポリウレタン水分散体No.28と同様の方法でポリウレタン水分散体No.29とNo.30を製造した。
【0095】
ポリウレタン水分散体No.28〜No.30について、上記<塩凝固法を用いた加工性能の評価>の項で説明した方法で加工性能を評価し、得られたフィルム成形体について、柔軟性、耐エタノール水性能および透湿性を評価した。表8に結果を示す。なお、表8における仕込み原料の数値は、製造原料のうち、成分(A)〜(F)の合計重量を100%としたときの各成分の含有量(重量%)を示したものである。
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
本試験は、ポリウレタン水分散体中のEO含有量をNo.19と同程度(2.0%)にして、成分(a1)として、異性体成分として2,4’-MDIの含有量が多いMDIを用いた場合の効果を検討したものである。表8から、2,4’-MDIの含有量が約50%であるルプラネートMIを用いたNo.28は、2,4’-MDIをほとんど含まないミリオネートMTを用いたNo.19に場合に比べて、柔軟性について実用性が向上すると評価された。さらに、2,4’-MDIの含有量が約90%であるミリオネートNM100を用いたNo.29,30は、2,4’-MDIをほとんど含まないミリオネートMTを用いたNo.19に比べて、柔軟性について実用性が向上するととともに、ゲル化強度についても実用性が向上すると評価された。
【0099】
上述したように、成分(B)と成分(C)とを併用することにより、塩凝固法によりフィルム成形体を製造するときの加工適性の点で実用性を有するとともに、得られたフィルム成形体が耐エタノール水性能の点で実用性を有する。
【0100】
また、本発明によるポリウレタン水分散体は、ジイソシアネート、ポリオールおよびカルボキシル基を有するジオール化合物を重合して製造されるため、成分(A),(E)は、ポリウレタン水分散体を製造する上で必要な原料である。
【0101】
従って、塩凝固法によりフィルム成形体を製造するときの加工適性の点で実用性を有するとともに、得られたフィルム成形体が耐エタノール水性能の点で実用性を有するようにするには、成分(A)〜(C),(E)を少なくとも反応させてポリウレタン水分散体を製造すればよい。
【0102】
よって、実施の形態1によるポリウレタン水分散体は、成分(A)〜(C),(E)を少なくとも反応させて得られるものであればよい。
【0103】
[実施の形態2]
実施の形態2によるポリウレタン水分散体は、脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(a2)を少なくとも含むポリイソシアネート(A)と、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとのランダム共重合体(B)と、数平均分子量が500〜5000であるポリオール(C)と、カルボキシル基を有するジオール化合物(E)と、及び必要に応じて、数平均分子量が400以下である多価アルコール系鎖延長剤(D)と、その他の成分とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを中和し、得られた中和物を水中に乳化分散させて得られる。必要に応じて、乳化分散させた後、アミン系鎖延長剤(F)を用いて鎖延長反応させてもよい。
【0104】
そして、ポリイソシアネート(A)は、イソホロンジイソシアネートよりも反応速度が速い脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート (a2)のみからなっていてもよく、ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)と脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(a2)とからなっていてもよい。
【0105】
成分(a1)は、ミリオネートMT、ルプラネートMIおよびNM100のいずれかからなる。
【0106】
脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(a2)は、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「1,4−H6XDI」と略記する場合がある。)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「1,3−H6XDI」と略記する場合がある。)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「1,6−HDI」と略記する場合がある。)および1,5−ジイソシアナトペンタン(以下、「1,5−PDI」と略記する場合がある。)のいずれかからなる。
【0107】
成分(B)〜成分(F)については、実施の形態1において説明したとおりである。
【0108】
実施の形態2においては、成分(B)と成分(C)とを併用するとともに、ポリイソシアネート(A)を構成する脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(a2)として1,4−H6XDI、1,3−H6XDI、1,6−HDIおよび1,5−PDIのいずれかを少なくとも用いる点に特徴がある。
【0109】
成分(B)と成分(C)とを併用し、かつ、脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(a2)として1,4−H6XDI、1,3−H6XDI、1,6−HDIおよび1,5−PDIのいずれかを少なくとも用いることによって、塩凝固法によりフィルム成形体を製造するときの加工適性の点で実用性を有するとともに、得られたフィルム成形体が耐エタノール水性能の点で実用性を有し、更に、得られたフィルム成形体に横すじが形成されるのを防止できる。
【0110】
「塩凝固法によりフィルム成形体を製造するときの加工適性」および「フィルム成形体の耐エタノール水性能」についての評価方法および評価基準は、実施の形態1において説明したとおりである。
【0111】
実施の形態2においても、フィルム成形体は、実施の形態1において説明した塩凝固法を用いて製造されるが、塩凝固に用いる塩濃度を10%および25%で評価を行っている。そして、フィルム成形体の膜厚は、用途によって異なるため、特に制限はないが、10〜1000μmが好ましく、20〜1000μmがさらに好ましい。また、フィルム成形体は、手袋、指サック、コンドーム等に適用可能であり、特に、手袋に好適である。
【0112】
実施例
以下、実施の形態2によるポリウレタン水分散体を試験例に基づいて具体的に説明するが、実施の形態2によるポリウレタン水分散体は、これらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例中の「部」および「%」は、特に明示しない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
【0113】
以下に、ポリウレタン水分散体の製造原料、ポリウレタン水分散体の製造例、塩凝固法を用いたフィルム成形体の製造例、各種評価方法について説明する。
【0114】
<ポリウレタン水分散体の製造原料>
成分(A):ポリイソシアネート
・ジフェニルメタンジイソシアネート(成分(a1))
(商品名「ミリオネートMT」、日本ポリウレタン工業社製、4,4’-MDIが99.5%以上で残りが2,4’-MDI、以下本製品と他の成分(a1)の製品とを特に区別する必要のない場合は「MDI」と略記する。本製品と他の成分(a1)の製品とを区別する必要がある場合は、商品名をそのまま記載する。)
(商品名「ルプラネートMI」、BASF INOAC ポリウレタン社、4,4’-MDI:
2,4’-MDI=50%:50%)
(商品名「ミリオネートNM100」、日本ポリウレタン工業社製、4,4’-MDI:2,4’-MDI=5〜15%:95〜85%)
・脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(成分(a2))
(イソホロンジイソシアネート(商品名「デスモジュールI」、住化バイエルウレタン社製、以下「IPDI」と略記))
(4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(商品名「デスモジュールW」、住化バイエルウレタン社製、以下「H12MDI」と略記)
(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン (商品名「タケネート1000」、三井化学社製、以下「1,4−H6XDI」と略記))
(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン (商品名「タケネート600」、三井化学社製、以下「1,3−H6XDI」と略記))
(1,5−ジイソシアナトペンタン (商品名「タケネート300」、三井化学社製、以下「1,5−PDI」と略記))
(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート (商品名「HDI」、日本ポリウレタン工業社製、以下「1,6−HDI」と略記))
【0115】
成分(B):EO/THFランダム共重合体
・商品名「ポリセリンDC3000E」、モル比(EO/THF)=50/50、数平均分子量3100、日油社製、以下「DC3000」と略記)
【0116】
成分(C):ポリオール
・ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「UH−300」、数平均分子量3000、宇部興産社製、以下「UH300」と略記)
・ポリカーボネートポリオール(商品名「ニッポラン981」、数平均分子量1000、日本ポリウレタン社製)
・ポリヘキサメチレン/3−メチルペンタンカーボネートジオール(商品名「ニッポランPES−A1215」、モル比(1,6−ヘキサンジオール/3−メチル−1,5−ペンタンジオール)=90/10、数平均分子量3000、日本ポリウレタン工業社製、以下「PES−A1215」と略記)
【0117】
成分(D):多価アルコール系鎖延長剤
・1,4−ブタンジオール
【0118】
成分(E):カルボキシル基を有するジオール化合物
・2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と略記)
・2,2−ジメチロールブタン酸(以下、「DMBA」と略記)
【0119】
成分(F):アミン系鎖延長剤
・30% 6水和ピペラジン
【0120】
(その他の成分)
・水
・中和剤:トリエチルアミン
・溶剤:N−メチルピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン(MEK)
・触媒:ジオクチル錫ジラウレート
【0121】
塩凝固法による加工性能の評価項目、評価方法および評価基準については、実施の形態1における説明と同じである。
【0122】
(ポリウレタン水分散体No.32の製造)
反応器に、DC3000(成分(B)) 13.0部、UH300(成分(C))183.0部、ジオクチル錫ジラウレート0.01部を仕込み、十分撹拌溶解し、ミリオネートNM100(成分(A)) 29.4部、1,4−H6XDI(成分(A))11.5部を加えて85℃で3時間反応させた。次に、60℃まで冷却した後、DMBA(成分(E))5.6部、1,4−ブタンジオール(成分(D))3.2部、NMP 61.4部、MEK 313.6部を加え、十分撹拌溶解し、ジオクチル錫ジラウレート0.03部を加え、80℃で8時間反応させ、イソシアネート値(固形分に対する残存イソシアネート基の重量含有量)が0.9%のプレポリマーを得た。このプレポリマーを50℃まで冷却し、トリエチルアミン 3.8部を加えて中和し、次いで水474.4部を加えて転相乳化した。この乳化分散液に30% 6水和ピペラジン(成分(F))16.9部(残存イソシアネート基に対してアミン基として100当量%)を加えて乳化分散した。得られた乳化液を脱溶剤することにより、不揮発分25%、pH7.9のポリウレタン水分散体No.32を得た。
【0123】
(ポリウレタン水分散体No.38の製造)
反応器に、DC3000(成分(B)) 13.1部、UH300(成分(C))149.7部、ニッポラン981(成分(C))38.1部、ジオクチル錫ジラウレート0.01部を仕込み、十分撹拌溶解し、ミリオネートNM100(成分(A)) 28.1部、14H6XDI(成分(A))11.0部を加えて85℃で3時間反応させた。次に、60℃まで冷却した後、DMBA(成分(E))5.6部、MEK 313.6部を加え、十分撹拌溶解し、ジオクチル錫ジラウレート0.03部を加え、80℃で8時間反応させ、イソシアネート値(固形分に対する残存イソシアネート基の重量含有量)が0.9%のプレポリマーを得た。このプレポリマーを50℃まで冷却し、トリエチルアミン 3.8部を加えて中和し、次いで水474.1部を加えて転相乳化した。得られた乳化液を脱溶剤することにより、不揮発分25%、pH7.2のポリウレタン水分散体No.38を得た。
【0124】
(ポリウレタン水分散体No.31,No.33〜No.37,No.39〜No.44の製造)
表9に示す原材料、配合処方を用いてポリウレタン水分散体No.32,No.38と同じ方法でポリウレタン水分散体No.31,No.33〜No.37,No.39〜No.44を製造した。
【0125】
ポリウレタン水分散体No.31〜No.44について、実施の形態1における<塩凝固法を用いた加工性能の評価>の項で説明した方法で加工性能を評価し、得られたフィルム成形体について、柔軟性および耐エタノール水性能を評価した。表10に結果を示す。なお、表10における仕込み原料の数値は、製造原料のうち、成分(A)〜(F)の合計重量を100%としたときの各成分の含有量(重量%)を示したものである。また、表10では、25%濃度の硝酸カルシウム水溶液を用いた塩凝固法(以下、「25%塩凝固法」と略記)で得られたフィルム成形体(膜厚:約200μm)の評価結果と、10%濃度の硝酸カルシウム水溶液を用いた塩凝固法(以下、「10%塩凝固法」と略記)で得られたフィルム成形体(膜厚:約100μm)の評価結果とを示す。
【0126】
【表9】
【0127】
【表10】
【0128】
成分(B)と成分(C)とを併用し、かつ、成分(a1)と成分(a2)とからなる成分(A)を用いたNo.21,No.30,No.32〜No.38,No.40〜No.44のうち、No.32〜No.38,No.41,No.42,No.44では、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体において、ゲル化強度が「良好」であり、かつ、耐エタノール水性能が「やや良」または「良好」であり、更に、造膜性能が「やや良」または「良好」である。この造膜性能は、フィルム成形体において、横すじが形成されるか否かを示す指標である。従って、No.32〜No.38,No.41,No.42,No.44では、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体において、加工性能および耐エタノール水性能の2つの点で実用性を有し、横すじが形成されるのを防止する点でも実用性を有する。
【0129】
また、No.32〜No.38,No.41,No.42,No.44 では、10%塩凝固法で得られたフィルム成形体において、ゲル化強度が「良好」であり、かつ、耐エタノール水性能が「やや良」または「良好」であり、更に、造膜性能が「良好」である。従って、No.32〜No.38,No.41,No.42,No.44では、10%塩凝固法で得られたフィルム成形体においても、加工性能および耐エタノール水性能の2つの点で実用性を有し、横すじが形成されるのを防止する点でも実用性を有する。
【0130】
このうち、No.38では、成分(D),(F)を欠いているが、10%塩凝固法で得られたフィルム成形体および25%塩凝固法で得られたフィルム成形体のいずれにおいても、加工性能および耐エタノール水性能の2つの点で実用性を有し、横すじが形成されるのを防止する点でも実用性を有する。
【0131】
更に、成分(B)と成分(C)とを併用し、成分(A)として成分(a2)のみを用いたNo.39では、10%塩凝固法で得られたフィルム成形体および25%塩凝固法で得られたフィルム成形体のいずれにおいても、ゲル化強度が「良好」であり、かつ、耐エタノール水性能が「やや良」であり、更に、造膜性能が「良好」である。従って、成分(A)として、成分(a2)のみを用いた場合でも、10%塩凝固法で得られたフィルム成形体および25%塩凝固法で得られたフィルム成形体のいずれにおいても、加工性能および耐エタノール水性能の2つの点で実用性を有し、横すじが形成されるのを防止する点でも実用性を有する。
【0132】
その結果、横すじが形成されるのを防止する点で実用性を有するフィルム成形体を製造するには、成分(A)として、成分(a2)を少なくとも含むポリイソシアネートを用いてポリウレタン水分散体を製造すれば良い。
【0133】
一方、成分(B),(C)のうち、成分(C)のみを用いたNo.4,No.31では、10%塩凝固法で得られたフィルム成形体および25%塩凝固法で得られたフィルム成形体のいずれにおいても、造膜性能が「不良」であった。従って、横すじが形成されるのを防止する点で実用性を有するフィルム成形体を製造するには、成分(B)と成分(C)とを併用してポリウレタン水分散体を製造することが必要である。
【0134】
また、成分(B)と成分(C)とを併用し、かつ、成分(a2)として、IPDIまたはH12MDIを用いたNo.21,No.30,No.43では、10%塩凝固法で得られたフィルム成形体において、ゲル化強度が「良好」であり、耐エタノール水性能が「やや良」または「良好」であり、造膜性能が「良好」である。しかし、No.21,No.30,No.43では、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体においては、造膜性能が「不良」である。従って、10%塩凝固法で得られたフィルム成形体および25%塩凝固法で得られたフィルム成形体のいずれにおいても、横すじが形成されるのを防止する点で実用性を有するフィルム成形体を製造するためには、成分(a2)として、1,4−H6XDI、1,3−H6XDI、1,6−HDIおよび1,5−PDIのいずれかを用いてポリウレタン水分散体を製造する必要がある。
【0135】
1,4−H6XDI、1,3−H6XDI、1,6−HDIおよび1,5−PDIは、IPDIよりも反応速度が速い脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネートである。従って、10%塩凝固法で得られたフィルム成形体および25%塩凝固法で得られたフィルム成形体のいずれにおいても、横すじが形成されるのを防止する点で実用性を有するフィルム成形体を製造するためには、成分(a2)として、IPDIよりも反応速度が速い脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネートを用いてポリウレタン水分散体を製造すればよい。
【0136】
更に、表10から、EO含有量が1.0重量%以上になると、透湿性が実用性を有すると評価され、さらにEO含有量が増加するほど透湿性が向上する傾向にあった。
【0137】
また、耐エタノール水性能は、通常は実用性を有すると評価されるが、EO含有量が増え過ぎて11重量%を超えると、実用性を有しなくなることが分かった。
【0138】
従って、EO含有量は、実施の形態2においては、1.0重量以上11重量%以下が好ましく、1.0重量%以上2重量%以下がより好ましい。
【0139】
<ポリウレタン水分散体と他の素材との混合>
ポリウレタン水分散体と、ポリウレタン水分散体よりも柔軟性の高い他の素材の水分散体(素材単体のフィルム成形体で比較した時にポリウレタン水分散体のフィルム成形体よりも低モジュラスである)を混合することで加工適性やフィルム成形体の耐エタノール水性能を維持しつつ、柔軟性を向上させることができる。他の素材としては、例えば、ニトリルブタジエンゴムやアクリル樹脂が挙げられ、それらは、ニトリルブタジエンゴムラテックスやアクリルエマルジョンとして供給される。
【0140】
表9および表10におけるNo.33のポリウレタン水分散体にニトリルブタジエンゴムラテックス(以下「NBRラテックス」と略記)またはアクリルエマルジョンとしてnBA−AN−AA共重合体エマルジョンを混合して25%塩凝固法で得られたフィルム成形体の評価結果を表11および表12に示す。
【0141】
なお、表11および表12において、100%モジュラスの評価基準は、4.0MPa未満を◎(「良好」)とし、4.0MPa以上7.0MPa未満を○(「やや良」)とし、7.0MPa以上を×(「不良」)とした。そして、「良好」および「やや良」を100%モジュラスにおいて実用性を有するとした。
【0142】
また、表11および表12において、耐エタノール強度の評価基準は、破断強度が10MPa以上を◎(「良好」)とし、破断強度が4MPa以上10MPa未満を○(「やや良」)とし、破断強度が4MPa未満を×(「不良」)とした。そして、「良好」および「やや良」を耐エタノール水性能において、実用性を有するとした。
【0143】
更に、表11においては、NBRラテックスを「X−3011」と表記している。
【0144】
No.45〜No.52の不揮発分は、表11,12中の不揮発分(%)に調整され、混合比率は、表11,12中の混合比率になるように、ポリウレタン水分散体とNBRラテックスまたはアクリルエマルジョンとの不揮発分の重量比を調整している。従って、No.50,No.52は、ポリウレタン水分散体を混合していない。
【0145】
NBRラテックスは、Synthomer製のNBRラテックス(X3011)であり、不揮発分が45重量%である。また、アクリルエマルジョン(nBA−AN−AA共重合体エマルジョン)は、n−ブチルアクリレート:94モル%と、アクリロニトリル:5モル%と、アクリル酸:1モル%との共重合体であり、分子量が約25万であり、不揮発分が45%である。
【0146】
【表11】
【0147】
【表12】
【0148】
NBRラテックスを混合していないNo.33では、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体の100%モジュラスが4.1MPaであるが、NBRラテックスを混合したNo.45〜No.49では、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体の100%モジュラスは、4MPa未満であり、NBRラテックスの混合量が増加するに従って、2.7MPa、2.7MPa、2.5MPa、2.2MPaおよび2.1MPaと小さくなる。そして、NBRラテックスが100重量%であるNo.50では、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体の100%モジュラスが1.3MPaまで小さくなる。
【0149】
その結果、No.33では、柔軟性は、「やや良」であるが、No.45〜No.50では、柔軟性は、「良好」である。
【0150】
従って、No.33のポリウレタン水分散体にNBRラテックスを混合することにより、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体の柔軟性を向上できる。
【0151】
また、No.33,No.45〜No.47では、耐エタノール強度は、「良好」または「やや良」であるが、No.48〜No.50では、耐エタノール強度は、「不良」である。
【0152】
従って、不揮発分中のニトリルブタジエンゴム分が60重量%以下の範囲でNBRラテックスをポリウレタン水分散体に混合することにより、耐エタノール強度の点で実用性を有するとともに、柔軟性の点でも実用性を有するフィルム成形体を得ることができる。
【0153】
また、No.33のポリウレタン水分散体にアクリルエマルジョンを混合したNo.51では、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体の100%モジュラスが3.6MPaであり、アクリルエマルジョンが100重量%であるNo.52では、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体の100%モジュラスが0.4MPaである。
【0154】
その結果、No.33では、柔軟性は、「やや良」であるが、No.51,No.52では、柔軟性は、「良好」である。
【0155】
従って、No.33のポリウレタン水分散体にアクリルエマルジョンを混合することによっても、25%塩凝固法で得られたフィルム成形体の柔軟性を向上できる。
【0156】
また、No.51では、耐エタノール強度は、「良好」であるが、No.52では、耐エタノール強度は、「不良」である。
【0157】
従って、不揮発分中のアクリル樹脂分が5重量%以下の範囲でアクリルエマルジョンをポリウレタン水分散体に混合することにより、耐エタノール強度の点で実用性を有するとともに、柔軟性の点でも実用性を有するフィルム成形体を得ることができる。
【0158】
このように、ポリウレタン水分散体にNBRラテックスまたはアクリルエマルジョンを混合して25%塩凝固法でフィルム成形体を製造することによって、耐エタノール強度の点で実用性を有するとともに、柔軟性の点でも実用性を有するフィルム成形体を得ることができる。
【0159】
なお、ポリウレタン以外の素材がカルボン酸などの反応性官能基を有する場合、カルボジイミドなどの架橋剤を合わせて混合することにより、耐エタノール水性能を維持しつつ柔軟性を更に向上させることも可能である。
【0160】
上記においては、ポリウレタン水分散体に混合する他の素材の水分散体として、ニトリルブタジエンゴムラテックスおよびアクリルエマルジョンについて説明したが、実施の形態2においては、ポリウレタン水分散体に混合する他の素材の水分散体は、ポリウレタン水分散体よりも低モジュラスなゴムラテックスまたは樹脂エマルジョンであればよい。
【0161】
上述したように、成分(B)と成分(C)とを併用することにより、塩凝固法によりフィルム成形体を製造するときの加工適性の点で実用性を有するとともに、得られたフィルム成形体が耐エタノール水性能の点で実用性を有する。
【0162】
また、本発明によるポリウレタン水分散体は、ジイソシアネート、ポリオールおよびカルボキシル基を有するジオール化合物を重合して製造されるため、成分(A),(E)は、ポリウレタン水分散体を製造する上で必要な原料である。そして、塩凝固法で得られたフィルム成形体において横すじが形成されるのを防止するには、成分(A)は、脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(a2)を少なくとも含めばよい。
【0163】
従って、塩凝固法によりフィルム成形体を製造するときの加工適性の点で実用性を有するとともに、得られたフィルム成形体が耐エタノール水性能の点で実用性を有し、更に、得られたフィルム成形体に横すじが形成されるのを防止するには、脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(a2)を少なくとも含む成分(A)、および成分(B),(C),(E)を少なくとも反応させてポリウレタン水分散体を製造すればよい。
【0164】
よって、実施の形態2によるポリウレタン水分散体は、脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(a2)を少なくとも含む成分(A)、および成分(B),(C),(E)を少なくとも反応させて得られるものであればよい。
【0165】
実施の形態2におけるその他の説明は、実施の形態1における説明と同じである。
【0166】
上述したように、実施の形態1においては、塩凝固法によりフィルム成形体を製造するときの加工適性の点で実用性を有するとともに、得られたフィルム成形体が耐エタノール水性能の点で実用性を有するようにするには、成分(A)〜(C),(E)を少なくとも反応させてポリウレタン水分散体を製造すればよいことを説明した。
【0167】
また、実施の形態2においては、塩凝固法によりフィルム成形体を製造するときの加工適性の点で実用性を有するとともに、得られたフィルム成形体が耐エタノール水性能の点で実用性を有し、得られたフィルム成形体に横すじが形成されるのを防止するには、イソホロンジイソシアネートよりも反応速度が速い脂環式ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(a2)を少なくとも含む成分(A)、および成分(B),(C),(E)を少なくとも反応させてポリウレタン水分散体を製造すればよいことを説明した。
【0168】
従って、この発明の実施の形態によれば、塩凝固法によりフィルム成形体を製造するときの加工適性の点で実用性を有するとともに、得られたフィルム成形体が耐エタノール水性能の点で実用性を有するようにするには、成分(A)〜(C),(E)を少なくとも反応させてポリウレタン水分散体を製造すればよい。
【0169】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。