(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267956
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】点火励起システムのための放電スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01T 15/00 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
H01T15/00 C
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-264827(P2013-264827)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2014-127470(P2014-127470A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2016年12月19日
(31)【優先権主張番号】61/745,971
(32)【優先日】2012年12月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/018,658
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】309012096
【氏名又は名称】ユニゾン・インダストリーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジョセフ・コチュラン
【審査官】
山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−271963(JP,A)
【文献】
特開平08−015339(JP,A)
【文献】
特開昭53−131172(JP,A)
【文献】
特開昭62−103461(JP,A)
【文献】
特開平03−105068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧値を基準電圧値と比較するように構成されたコンパレータ部と、
前記基準電圧値の変化を低減するように構成された温度補償ダイオードと、
前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、蓄積エネルギーを放電するように構成されたトリガー部と
を備え、
前記トリガー部は、トリガー装置及び放電装置を備え、
前記トリガー装置は、トリガー金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)及びトリガートランスを備える、
放電スイッチ装置。
【請求項2】
前記トリガー装置は、
前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、前記トリガーMOSFETをスイッチを入れた状態にし、
第1の蓄積キャパシタに蓄積されたエネルギーを、前記トリガートランスの1次巻線を通して放電するように構成された、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記トリガートランスは、前記放電装置にトリガーパルス信号を出力するように構成された、請求項2記載の装置。
【請求項4】
入力電圧値を基準電圧値と比較するように構成されたコンパレータ部と、
前記基準電圧値の変化を低減するように構成された温度補償ダイオードと、
前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、蓄積エネルギーを放電するように構成されたトリガー部と
を備え、
前記トリガー部は、トリガー装置及び放電装置を備え、
前記放電装置は、サイリスタを備え、
前記サイリスタは、前記トリガートランスから前記トリガーパルス信号を受け取ると、前記蓄積エネルギーを放電するように構成される、
放電スイッチ装置。
【請求項5】
入力電圧値を基準電圧値と比較するように構成されたコンパレータ部と、
前記基準電圧値の変化を低減するように構成された温度補償ダイオードと、
前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、蓄積エネルギーを放電するように構成されたトリガー部と、
初期充電サイクルの期間において、前記コンパレータ部をフィードバック電圧から保護するように構成された電圧保護装置と
を備える放電スイッチ装置。
【請求項6】
前記電圧保護装置は、MOSFETを備える、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記コンパレータ部は、前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、前記トリガー部に放電信号を送るように、さらに構成された、請求項1乃至6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記放電スイッチ装置は、既存のスパークギャップ装置を直接置換する、請求項1乃至7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
電源からの入力電圧を高レベル電圧に変換するように構成された入力電圧コンバータと、
前記入力電圧コンバータによって変換されたエネルギーを蓄積するように構成された蓄積キャパシタと、
放電スイッチ装置と、
前記放電スイッチ装置によって放電されるエネルギーを受け取るように構成されたイグナイターと
を備え、
前記放電スイッチ装置は、
入力電圧値を基準電圧値と比較するように構成されたコンパレータ部と、
前記基準電圧値の変化を低減するように構成された温度補償ダイオードと、
前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、蓄積エネルギーを放電するように構成されたトリガー部と、
前記イグナイターへ供給する放電パルスを生成するように構成されたパルス成形回路網と、 を備える点火励起システム。
【請求項10】
電源からの入力電圧を高レベル電圧に変換するように構成された入力電圧コンバータと、
前記入力電圧コンバータによって変換されたエネルギーを蓄積するように構成された蓄積キャパシタと、
放電スイッチ装置と、
前記放電スイッチ装置によって放電されるエネルギーを受け取るように構成されたイグナイターと
を備え、
前記放電スイッチ装置は、
入力電圧値を基準電圧値と比較するように構成されたコンパレータ部と、
前記基準電圧値の変化を低減するように構成された温度補償ダイオードと、
前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、蓄積エネルギーを放電するように構成されたトリガー部と、
前記イグナイターへ供給する放電パルスを生成するように構成されたパルス成形回路網と、 を備え、
前記トリガー部は、トリガー装置及び放電装置を備え、
前記トリガー装置は、トリガー金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)及びトリガートランスを備える、
点火励起システム。
【請求項11】
前記トリガー装置は、
前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、前記トリガーMOSFETをスイッチを入れた状態にし、
第1の蓄積キャパシタに蓄積されたエネルギーを、前記トリガートランスの1次巻線を通して放電するように構成された、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記トリガートランスは、前記放電装置にトリガーパルス信号を出力するように構成された、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
電源からの入力電圧を高レベル電圧に変換するように構成された入力電圧コンバータと、
前記入力電圧コンバータによって変換されたエネルギーを蓄積するように構成された蓄積キャパシタと、
放電スイッチ装置と、
前記放電スイッチ装置によって放電されるエネルギーを受け取るように構成されたイグナイターと
を備え、
前記放電スイッチ装置は、
入力電圧値を基準電圧値と比較するように構成されたコンパレータ部と、
前記基準電圧値の変化を低減するように構成された温度補償ダイオードと、
前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、蓄積エネルギーを放電するように構成されたトリガー部と、
を備え、
前記放電装置は、サイリスタを備え、
前記サイリスタは、前記トリガートランスから前記トリガーパルス信号を受け取ると、前記蓄積エネルギーを放電するように構成される、
点火励起システム。
【請求項14】
前記コンパレータ部は、前記入力電圧値が前記基準電圧値を超える場合に、前記トリガー部に放電信号を送るように、さらに構成された、請求項9乃至13のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、一般に放電スイッチ装置に関する。より詳細には、点火励起システムのための放電スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも幾つかの周知のイグニッションエキサイタは、蓄積キャパシタに蓄積されたエネルギーをイグナイターに放電するための、スパークギャップスイッチ装置を含んでいる。この種のスパークギャップ装置は、典型的には、一貫した電離レベル及び均一な動作を得ることを助けるために、クリプトン−85(Kr85)などの放射性物質を含んでいる。したがって、このような放射性物質の使用に関して、環境、健康及び安全に対する懸念が生じている。そうしたことから、このようなスパークギャップ装置に対しては、市販の、コスト効率が良く、サイズ効率の良い代替物が存在しない。
【0003】
さらに、スパークギャップは、エキサイタに適用する場合に、以下のようないくつかの不利な点がある。それは、(1)寿命の限られた部品であること、(2)スパークからスパークまでの電圧(典型的には+/−100ボルト)が変化すること、(3)動作可能な寿命の間に、ブレークオーバー電圧が変化することである。これら各々の理由のために、点火システムは、システム寿命の全期間にわたって、一貫したレベルのスパークエネルギーをイグナイターに供給することができない。この特性に対する著しく不利な点は、そのためにイグナイターの交換間隔を決めるのが困難になるということである。イグナイターは、年数及びエキサイタスパークギャップの条件によって、放電ストレスのレベルがそれぞれ異なるからである。
【0004】
以前は、ブレークオーバーダイオードが、サイリスタ素子のゲートトリガーを与えるトリガー電圧を設定するために用いられていた。しかし、この素子は、大きな温度係数をもち、温度変化に対してタンク電圧を安定に保つことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7880281号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、放電スイッチ装置は、コンパレータ部、温度補償ダイオード及びトリガー部を含む。コンパレータ部は、入力電圧値を基準電圧値と比較するように構成される。温度補償ダイオードは、基準電圧値の変化を低減するように構成される。トリガー部は、入力電圧値が基準電圧値を超える場合に、蓄積エネルギーを放電するように構成される。
【0007】
別の実施形態では、点火励起システムは、電源からの入力電圧を高レベル電圧に変換するように構成された入力電圧コンバータと、入力電圧コンバータによって変換されたエネルギーを蓄積するように構成された蓄積キャパシタとを含む。点火システムは、コンパレータ部と、温度補償ダイオードと、トリガー部とを含む放電スイッチ装置をさらに含む。コンパレータ部は、入力電圧値を基準電圧値と比較するように構成される。温度補償ダイオードは、基準電圧値の変化を低減するように構成される。トリガー部は、入力電圧値が基準電圧値を超える場合に、蓄積エネルギーを放電するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】例示的な交流(AC)点火励起システムの回路図。
【
図2】
図1に示す放電スイッチ装置の例示的な回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、本発明の実施形態を例示するものであって、これに限定するものではない。詳細な説明によって、明らかに当業者は開示される内容を作製し使用することができる。また、詳細な説明には、いくつかの実施形態、適応例、変形例、代替例、及び開示される内容の使用について記載されており、これらは開示される内容を実施するための最良の形態であると現在考えられるものを含んでいる。開示される内容には、例示する実施形態、すなわち、点火システムのエネルギーを放電するシステム及び方法に適用されることが記載されている。しかし、この開示内容は、工業用、商用、及び住居用の点火システムに広く適用すると考えられる。
【0010】
本明細書において、単数で記載され、「a」又は「an」の単語が先行する要素又は工程は、複数の要素又は工程を除外する旨の明示的な記載がない限り、複数の要素又は工程を除外しないものとして理解されなければならない。さらに、本発明の「一実施形態」を参照することは、記載された特徴を含む実施形態がさらに存在することを除外するものと解釈すべきではない。
【0011】
図1は、例示的な交流(AC)点火励起システム100の回路図である。例示の実施形態では、システム100は、電磁障害(EMI)フィルタ及び過渡的保護回路102と、入力電圧コンバータ104と、蓄積(「タンク」)キャパシタ106と、放電スイッチ装置108と、パルス成形回路網110とを含む。システム100は、AC入力電圧を供給する電源112に接続される。入力電圧コンバータ104は、電源112からの入力電圧を、タンクキャパシタ106に蓄積するために、高レベル電圧に変換する。放電スイッチ装置108は、「タンク
+」端子114及び「タンク
-」端子116を含む。放電スイッチ装置108は、タンクキャパシタ106に蓄積されたエネルギーを、タンク
+端子114からタンク
-端子116へ伝送し、そして、パルス成形回路網110に供給する。パルス成形回路網110は、放電パルスを増幅及び成形し、放電パルスをイグナイター118に供給する。
【0012】
図2は、放電スイッチ装置108(
図1に示す)の例示的な回路図である。放電スイッチ装置108は、周知のスパークギャップスイッチを直接に置き換えるものである。例示の実施形態では、放電スイッチ装置108は、タンク
+端子114及びタンク
-端末116を介して、システム100(
図1に示す)に接続される。放電スイッチ装置は、約−55°Cから125°Cの温度範囲で動作するように構成され、短時間の温度変化であれば、約150°Cまで動作する。
【0013】
初期充電サイクル期間に、システム100のタンク
+電圧が上昇し、電流が放電スイッチ装置108の第1の分割器200及び第2の分割器202を流れる。第1の分割器200がタンク
+電圧によって充電し、しきい値に達すると、コンパレータ204の正入力に電力を供給するのに使用される。タンク
+電圧が上昇し、しきい値に達するまでは、ノード206を流れる電流は、コンパレータ204に電力を供給する、又は「覚醒させる」には十分ではない。コンパレータが覚醒するまでの期間では、入力電圧が電力コンパレータ204へ供給されるまで、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)208は、コンパレータ204を保護するために、初期充電サイクル期間のタンクフィードバック電圧をブロックする。例えば、MOSFET208は、コンパレータ204の損傷又は初期トリップを防止する。
【0014】
例示の実施形態では、初期充電サイクル期間に、放電スイッチ装置108は、放電スイッチ装置108のコンパレータ部210及びトリガー部212に電力を供給するために、少量の電流(すなわち、約400μA)を引き抜く。コンパレータ部210は、入力電圧値を基準電圧値と比較するように構成される。トリガー部212は、入力電圧値が基準電圧値を超える場合に、蓄積エネルギーを放電するように構成される。ツェナーダイオード214は、コンパレータ204の正電源入力電圧Vccを設定する。また、ダイオード214は、トリガー部212を駆動するための電圧レベルを設定する。基準ツェナーダイオード218は、コンパレータ204に基準電圧値を設定する。
【0015】
初期充電サイクルにおいて、タンク
+電圧が約1500ボルトの電圧しきい値に達した場合に、コンパレータ部210が覚醒する。電圧しきい値が満たされた場合に、ダイオード214、218が導通し、コンパレータ部210が機能する。
【0016】
ダイオード220は、温度補償ダイオードとして、基準ダイオード218と直列に設けられる。温度補償ダイオード220は、基準電圧値の変化を低減するように構成される。より具体的には、温度補償ダイオード220は、温度によるツェナー電圧の変化を相殺して、安定なタンク電圧を供給するように、ダイオード218に適合される。
【0017】
一旦コンパレータ部210が動作可能になると、タンク
+フィードバック電圧は、コンパレータ204の正入力でモニターされ、コンパレータ204の負入力と比較される。基準ダイオード218によってコンパレータ204の負入力に供給される基準レベルが超えられた場合に、コンパレータ204の出力は高くなり、トリガー部212に放電信号を送る。例示の実施形態では、トリガー部212は、トリガー装置及び放電装置を含む。トリガー装置は、トリガーMOSFET222及びトリガートランス216を含む。より具体的には、コンパレータ204は、トリガーMOSFET222に電力を供給する。キャパシタ224に蓄積されるエネルギーは、トリガートランス216の一次巻線によって放電される。トリガートランス216は、サイリスタ226にゲートトリガーパルスを出力する。例示の実施形態では、サイリスタ226は、シリコン制御整流器である。サイリスタ226は、タンクキャパシタ106(
図1に示す)に蓄積されるエネルギーを伝送して、パルス成形回路網110(
図1に示す)に放電する。
【0018】
本願明細書に記載された例示的な方法及びシステムは、点火励起システムのための放電スイッチ装置に関する。より具体的には、例示の実施形態は、高エネルギー及び/又は高圧点火システムに用いる半導体スパークギャップ置換スイッチ装置に関する。本装置は、現場のエキサイタのスパークギャップ装置を改造する「ドロップイン」交換用として用いることもできる。本装置は、スパークギャップ装置と比較した場合に、温度変化に対してより一貫した放電設定点を維持するための温度補償を含む。
【0019】
本明細書では、実施例を用いることによって、最良の形態を含む本発明を開示し、さらに、いかなる当業者でも本発明を実施することを可能にする。この実施には、本発明の任意の装置又はシステムを作製し使用すること、及び、任意の組み込まれた方法を実行することが含まれる。本発明の特許され得る範囲は、請求項によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、それらが請求項の文字通りの言葉と異ならない構成要素を有する場合、又は、それらが請求項の文字通りの言葉と実体のない違いを有する等価な構成要素を含む場合には、請求項の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0020】
100 点火励起システム
102 過渡的保護回路
104 入力電圧コンバータ
106 タンクキャパシタ
108 放電スイッチ装置
110 パルス成形回路網
112 電源
114 タンク
+端子
116 タンク
-端子
118 イグナイター
200 第1の分割器
202 第2の分割器
204 コンパレータ
206 ノード
208 MOSFET
210 コンパレータ部
212 トリガー部
214 ツェナーダイオード
216 トリガートランス
218 基準ツェナーダイオード
220 温度補償ダイオード
220 ダイオード
222 トリガーMOSFET
224 キャパシタ
226 サイリスタ