(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
引き戸本体と、この引き戸本体の側端部に位置する内壁部およびこの内壁部と対向する外壁部、前記内壁部と前記外壁部の対向方向と直交する方向で相対向する表壁部および裏壁部で囲まれた中空型材からなる縦框材と、この縦框材の表裏両側に対応配置されて取り付けられる引き手部材と、を有する引き戸であって、前記引き手部材が上下方向に長尺であり、前記表壁部及び前記裏壁部の各々に前記引き手部材が挿入される上下方向に長い取り付け用開口が形成され、少なくとも前記取り付け用開口の上下長さの範囲内において前記内壁部と前記外壁部とを連結する補強部材が両者間に架設されてなることを特徴とする引き戸。
表裏両側の前記引き手部材がその上下両端部付近において相互に結合されて前記取り付け用開口に固定されるものであり、前記補強部材の上下方向の長さを前記結合される部位間に納まる寸法としたことを特徴とする請求項1記載の引き戸。
前記補強部材がチャンネル材で形成され、このチャンネル材の長手方向に直交する断面内における両端部が前記内壁部と前記外壁部とに各々固着されて前記内壁部と前記外壁部とが連結されたことを特徴とする請求項1又は2記載の引き戸。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、
図2、
図3に示すように、引き戸本体2と、縦框材3と、縦框材3の表裏両側に対応配置されて取り付けられる引き手部材4と、を有する引き戸1である。縦框材3は、
図1に示すように、引き戸本体2の側端部に位置する内壁部31および内壁部31と対向する外壁部32、内壁部31と外壁部32の対向方向と直交する方向で相対向する表壁部33および裏壁部34で囲まれた中空型材からなる。
図5に示すように、引き手部材4が上下方向に長尺であり、
図4に示すように、表壁部33及び裏壁部34の各々に引き手部材4が挿入される上下方向に長い取り付け用開口30が形成される。少なくとも取り付け用開口30の上下長さの範囲内において内壁部31と外壁部32とを連結する補強部材5が内壁部31と外壁部32との間に架設される。
【0014】
また、表裏両側の引き手部材4がその上下両端部付近において相互に結合されて取り付け用開口30に固定されるものであり、補強部材5の上下方向の長さを前記結合される部位間に納まる寸法とすることが好ましい。
【0015】
また、補強部材5をチャンネル材で形成し、このチャンネル材の長手方向に直交する断面内における両端部を内壁部31と外壁部32とに各々固着して内壁部31と外壁部32とを連結することが好ましい。
【0016】
また、引き手部材4の上下方向の長さ寸法を縦框材3の上下方向の長さ寸法の1/9以上とすることが好ましい。
【0017】
以下、本発明の第一実施形態について添付図面に基いて説明する。
【0018】
引き戸本体2は、ガラス、樹脂、金属、木材や木質材、その他の材質(特に限定されない)が単体で又は組み合わされて構成される。引き戸本体2は、板状、格子状(通常の格子の他、横格子や縦格子や種々の格子の組み合わせも可)、網状、これらの組み合わせ等、特に限定されない。引き戸本体2は、板状の場合は勿論、格子状や網状である場合も、仕切りとなる面構成部材として機能するもので、便宜上、
図2(b)、
図1に示すように、面の両側の一方(矢印11が向く側)を表側、他方(矢印12が向く側)を裏側とする。なお、表側と裏側は上記と反対に定義されてもよい。
【0019】
また引き戸本体2は、透明、不透明、半透明のいずれでもよく、また無着色、着色のいずれでもよく、特に限定されない。第一実施形態における引き戸本体2の一例としては、
図2に示すように、正面視矩形状をしたガラス板で構成されるものである。また、第一実施形態における引き戸本体2の他の例としては、
図3に示すように、正面視矩形状をしたガラス板20の板面に、縦格子を模した複数の縦桟21が接着等により貼り付けられて、縦格子のように見えるものとなっている。引き戸本体2は、框材6により保持されるものである。
【0020】
框材6は、
図2、
図3に示すように、引き戸本体2の周端部に位置する中空型材からなるものである。框材6は、引き戸本体2の周端部の全周に亘って位置して引き戸本体2を囲うものである。すなわち、框材6は、引き戸本体2の左右の側端部に位置する縦框材3と、上下端部に位置する横框材7とを備えるものである。ここで、左右方向は、
図2(a)、
図3(a)に示す正面視における左右方向をいうものとする。縦框材3と横框材7とは、別体として形成されて連結されてもよいし、一体に形成されてもよい。
【0021】
框材6を構成する中空型材は、
図1に示すように、長手方向に直交する断面において、外郭が四角形(正方形、長方形)状等の環状をしたものであるが、形状は限定されない。なお、縦框材3を構成する中空型材と横框材7を構成する中空型材とが、形状等において異なるものであってもよいし、横框材7が中空型材で構成されなくてもよいが、少なくとも縦框材3は中空型材により構成される。
【0022】
框材6は、長手方向の全長または一部において、引き戸本体2を保持する。例えば、横框材7のみで引き戸本体2を保持し、縦框材3で引き戸本体2を保持しないものであってもよい。
【0023】
縦框材3は、
図1に示すように、水平断面(長手方向に直交する断面)において、内壁部31に外壁部32と表壁部33と裏壁部34とで内部を囲む、中空型材からなる。中空型材の材質としては特に限定されないが、第一実施形態においてはアルミニウムにより形成されている。内壁部31は、引き戸本体2の側端部に位置するものである。すなわち、内壁部31は、引き戸本体2の側端部に隙間なく又は隙間を介して隣接するか、側端部が挿入されて内部に含むように位置するもので、側端部を保持するものでもよいし、保持しなくてもよい。
【0024】
第一実施形態においては、
図1に示すように、内壁部31に、中空型材の中心側に凹み、引き戸本体2の側端部が挿入される挿入溝35が設けられている。挿入溝35の両内側面には、突起36が設けられている。引き戸本体2の側端部には、この側端部の表側の面および裏側の面を掴む保持部材22が嵌め込まれる。保持部材22の外面には、突起36が嵌め込まれる凹部23が設けられている。引き戸本体2は、保持部材22が嵌め込まれた側端部が挿入溝35に挿入され、保持部材22の凹部23が突起36に被嵌されて、側端部が内壁部31に保持される。
【0025】
内壁部31は、外壁部32と対向する。ここで、内外について、
図1に示すように、引き戸本体2に近い側(矢印13が向く側)を内側、引き戸本体2から遠い側(矢印14が向く側)を外側とする。外壁部32には、後述するが、中空型材の中心側に凹み外側(矢印14側)に開口する凹部37が上下全長に亘って設けられている。
【0026】
表壁部33と裏壁部34とは、水平断面における、内壁部31と外壁部32の対向方向(すなわち内外方向)と直交する方向(すなわち引き戸本体2の表裏方向(矢印11、12参照))において相対向する。第一実施形態においては、
図1に示すように、縦框材3の外郭形状が概ね四角形状(特に正方形状)をしているが、特に限定されない。
【0027】
表壁部33および裏壁部34には、
図1、
図4に示すように、引き手部材4が取り付けられる取り付け用開口30が、表壁部33、裏壁部34を表裏方向に貫通するように形成される。取り付け用開口30は、表壁部33と裏壁部34における対応する位置、すなわち、正面視における同じ位置に形成される。第一実施形態においては、表壁部33と裏壁部34に形成される取り付け用開口30は同形同大に形成されている。取り付け用開口30は、第一実施形態においては、引き手部材4の後述する本体部41が嵌め込まれる。なお、本体部41は、取り付け用開口30に嵌め込まれるのではなく、取り付け用開口30の内端縁との間に隙間をもって挿入されるものでもよく特に限定されない。取り付け用開口30は、上下方向に長尺に(すなわち、内外方向幅よりも上下長さの方が長く)形成されるものである。第一実施形態においては、
図4に示すように、取り付け用開口30の上下方向の長さ寸法は282(mm)となっている。
【0028】
引き手部材4は、
図5(a)に示すように、本体部41と、本体部41より突設されるフランジ部42と、を備え、上下方向に長尺となるものである。本体部41は、一方向に開口する箱状をした指挿入部43と、縦框材3に固定されるための固定部44と、を備えている。第一実施形態においては、指挿入部43の開口端における開口幅は20(mm)、開口深さ(最深部)は10(mm)で、開口幅は一般的な引き手の開口幅よりも短い。指挿入部43の開口の上下方向の長さ寸法は260(mm)で(
図6(a)参照)、一般的な引き手の開口の上下方向の長さ寸法よりも長い。引き手部材4の上下方向の長さ寸法は特に限定されないが、縦框材3の上下方向の長さ寸法の1/9以上(例えば1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4等)とすることが好ましい。
【0029】
固定部44は、指挿入部43の上下端部に設けられるものである。第一実施形態においては、
図6(b)に示すように、表壁部33の取り付け用開口30に取り付けられる引き手部材4aの固定部44と、裏壁部34の取り付け用開口30に取り付けられる引き手部材4bの固定部44とが、互いに連結されるようになっている。
【0030】
フランジ部42は、指挿入部43の開口端の周囲より外側に突出するように設けられるものである。
図6(a)に示すように、フランジ部42の上下長さは290(mm)で、これが引き手部材4の上下長さとなるものであり、一般的な引き手の上下長さよりも長い。フランジ部42の背面側に固定部44が連続している。
【0031】
図5(b)に示す、表壁部33の取り付け用開口30に取り付けられる引き手部材4aは、固定部44に背方に開口する穴部(不図示)が形成されていて、この穴部の内面に雌螺子が形成されている。
図5(c)に示す、裏壁部34の取り付け用開口30に取り付けられる引き手部材4bは、固定部44に表裏方向に貫通する穴部45が形成されている。
【0032】
第一実施形態においては、引き手部材4aと引き手部材4bとは、
図6に示すように、背面が対向して上下においてそれぞれ引き手部材4aの穴部と引き手部材4bの穴部45が連通された状態で、ビス46が穴部45より挿通されて穴部にねじ込まれる。これにより、引き手部材4aと引き手部材4bとが結合される。
【0033】
引き手部材4の縦框材3への取り付けは、
図1に示すように、引き手部材4aの本体部41が表壁部33の取り付け用開口30より挿入され、引き手部材4bの本体部41が裏壁部34の取り付け用開口30より挿入される。そして、ビス46により引き手部材4aと引き手部材4bとが結合されると、フランジ部42が表壁部33と裏壁部34とに当接して、引き手部材4aと引き手部材4bとで縦框材3を挟持する。これにより引き手部材4の縦框材3への取り付けが行われる。
【0034】
なお、引き手部材4の縦框材3への取り付けは、上述したように、引き手部材4aと引き手部材4bとが互いに連結されて、これらで縦框材3を挟持するものではなくてもよい。例えば、引き手部材4aと引き手部材4bのフランジ部42が表壁部33や裏壁部34にビス留めや溶接等により固定されて、引き手部材4aと引き手部材4bとがそれぞれ単独で縦框材3の取り付け用開口30に取り付けられてもよい。
【0035】
縦框材3の表壁部33と裏壁部34とに取り付け用開口30が形成されると、縦框材3の剛性が低下する。
図7(a)に、縦框材3の取り付け用開口30が形成されていない部分の水平断面図を示し、
図7(b)に、縦框材3の取り付け用開口30が形成されている部分の水平断面図を示す。縦框材3の剛性の低下としては、特に、表裏方向の軸8回りの曲げ剛性の低下が問題となる。すなわち、引き戸1は、
図1に示すように、引き手部材4に指が挿入されて横方向に引かれる。この時、横框材7に固定されている上下を固定端とする縦框材3に、表裏方向の軸8回りの曲げモーメントが発生する。そして、この曲げモーメントに対する縦框材3の曲げが問題となるものである。
【0036】
第一実施形態の縦框材3において、
図7(a)に示す取り付け用開口30が形成されていない部分と、
図7(b)に示す取り付け用開口30が形成されている部分の表裏方向の軸8回りの断面二次モーメントIと、断面係数Zを示す。詳細な寸法関係については省略するが、
図7(a)に示す取り付け用開口30が形成されていない部分については、断面二次モーメントIが約48400(mm
4)、断面係数Zが約2500(mm
3)となっている。また、
図7(b)に示す取り付け用開口30が形成されている部分については、断面二次モーメントIが約43900(mm
4)、断面係数Zが約2300(mm
3)となっている。これにより、取り付け用開口30が形成されている部分においては、引き戸1が引かれた時の縦框材3の曲げが生じ易くなっていることが分かる。
【0037】
そこで、本発明においては、補強部材5が設けられるものである。第一実施形態における補強部材5は、
図4に示すように、取り付け用開口30の上下長さの範囲内において、内壁部31と外壁部32とを連結し、内壁部31と外壁部32との間に架設されるものである。補強部材5の材質としては特に限定されないが、縦框材3を構成する中空型材の材質と同じに構成されることが好ましく、第一実施形態においてはアルミニウムにより形成されている。
【0038】
補強部材5は、第一実施形態においては、
図7(c)に示すように、中板部51と、中板部51の両端部からそれぞれ同方向に突出する側板部52、側板部53を有する、チャンネル材で形成される。
【0039】
第一実施形態においては、補強部材5の上下方向の長さ寸法は、引き手部材4aと引き手部材4bとが結合される部位(すなわち上下の固定部44)間に納まる寸法となっている。すなわち第一実施形態においては、
図4(a)に示すように、補強部材5の上下方向の長さ寸法は200(mm)となっている。特に、補強部材5の上下方向の長さ寸法は、上下の固定部44間に納まる範囲で、できるだけ長い寸法(例えば260(mm))となることが好ましい。
【0040】
なお、引き手部材4aと引き手部材4bとがそれぞれ単独で縦框材3の取り付け用開口30に取り付けられるような場合には、引き手部材4に固定部44が設けられる必要はない。更に、補強部材5の上下方向の長さ寸法は、固定部44間に納まる範囲内でなくてもよく、取り付け用開口30の上下長さと同等かそれ以上であってもよい。
【0041】
図4(a)に示すように、側板部52と側板部53にはそれぞれ、上下に所定の間隔(第一実施形態においては150(mm))をあけてビス55(
図1参照)が固着される螺子孔54が形成されている。また、内壁部31と外壁部32には、螺子孔54に対応する位置にビス55が挿通される挿通孔38が形成されている。
【0042】
補強部材5の縦框材3への固定は、
図4(a)に示すように、取り付け用開口30より挿入される。そして、内壁部31の挿通孔と外壁部32の挿通孔38とに、ビス55が外側より挿通され、側板部52の螺子孔54と側板部53の螺子孔にねじ込まれることで、補強部材5の縦框材3への固定が行われる。なお、第一実施形態における補強部材5の縦框材3への固定はビス55による固定であるが、スポット溶接等、他の固定方法でもよい。そして、
図1に示すように、閉塞部材39が外壁部32の凹部37に嵌め込まれて凹部37が閉塞され、挿通孔38およびビス55が隠される。
【0043】
図7(c)に示す補強部材5の表裏方向の軸8回りの断面二次モーメントIが約8200(mm
4)である。補強部材5が固定された縦框材3の取り付け用開口30が形成されていない部分の断面二次モーメントIは、約52100(mm
4)、断面係数Zが約2700(mm
3)となっている。これにより、縦框材3の曲げ剛性の低下を抑制するのみならず、縦框材3の取り付け用開口30が形成されていない部分よりも曲げ剛性が向上していることが分かる。
【0044】
本発明にあっては、補強部材5が設けられることにより、縦框材3の曲げ剛性の低下が抑制され、引き戸1が引かれた時の縦框材3の曲げ(撓み)が抑制される。これにより、引き戸1の開け閉めがし易くなり、また、縦框材3が曲がることによる縦框材3の破損が抑制される。特に、従来よりも狭い幅の縦框材3において、特に有効である。
【0045】
なお、本発明は、引き戸1のみならず、窓、網戸、雨戸、開き戸、天井レールや床レールに沿ってスライド可能な間仕切り等、建て具一般に適用可能である。