特許第6267974号(P6267974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267974
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ケーシングビット
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/20 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   E21B7/20
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-12213(P2014-12213)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-140512(P2015-140512A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】都築 良夫
(72)【発明者】
【氏名】百田 光宏
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−188873(JP,A)
【文献】 特開昭62−228591(JP,A)
【文献】 特開平04−080496(JP,A)
【文献】 実開昭48−045274(JP,U)
【文献】 特開平09−279973(JP,A)
【文献】 特開平08−013975(JP,A)
【文献】 特開昭59−228587(JP,A)
【文献】 実開平05−022682(JP,U)
【文献】 特開平03−084115(JP,A)
【文献】 特開2009−097285(JP,A)
【文献】 実開昭61−010396(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0044839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−19/24
E21B 44/00−44/10
E02D 5/22−5/80
E02D 7/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削して円形の掘削溝を形成するケーシングビットであって、
環状のケーシング本体部と、
ビット部を有し、前記ケーシング本体部の掘削進行方向側から突出するように設けられた複数の突出部と、を備え、
前記複数の突出部の各々の前記ケーシング本体部の先端部からの前記掘削進行方向の突出長は、当該ケーシングビットを用いて地盤を掘削するときの前記ケーシング本体部の径方向の厚さ部分に対する単位面積あたりの構造物荷重をqとした場合に鉛直方向の増加応力の値が0.2qとなる深さである圧力球根の深さに相当する前記ケーシング本体部の径方向の厚さの3.2倍の長さよりも長くなっていることを特徴とするケーシングビット。
【請求項2】
地盤を掘削して円形の掘削溝を形成するケーシングビットであって、
環状のケーシング本体部と、
ビット部と当該ビット部を取り付けるビット取付部を有し、前記ケーシング本体部の掘削進行方向側から突出するように設けられた複数の突出部と、
前記複数の突出部の各々の前記ビット取付部に設けられ、掘削された土砂を前記ケーシング本体部の中心軸周りの回転方向後ろ側に移動させるように整流するビット側整流部と、を備え、
前記ビット側整流部は
前記ビット取付部におけるケーシングビットの回転方向前側の端部に設けられ、
回転方向前側から回転方向後ろ側になるにつれて径方向の厚さが厚さ方向中央から厚さ方向両側に漸次大きくなるような形状に形成されている
ことを特徴とするケーシングビット。
【請求項3】
地盤を掘削して円形の掘削溝を形成するケーシングビットであって、
環状のケーシング本体部と、
ビット部と当該ビット部を取り付けるビット取付部を有し、前記ケーシング本体部の掘削進行方向側から突出するように設けられた複数の突出部と、
前記複数の突出部どうしの間に設けられ、掘削された土砂を前記ケーシング本体部の中心軸周りの回転方向後ろ側且つ前記掘削進行方向と反対側に移動させるように整流する突出部間整流部と、を備え、
前記突出部間整流部は、
前記ビット取付部よりも前記ケーシングビットの回転方向前側、且つ、前記ケーシング本体部よりも掘削進行方向側に設けられ、前記掘削進行方向側から掘削進行方向と反対側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きく、且つ、回転方向前側から回転方向後ろ側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きくなるような形状に形成されている
ことを特徴とするケーシングビット。
【請求項4】
地盤を掘削して円形の掘削溝を形成するケーシングビットであって、
環状のケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部の掘削進行方向側の端部に設けられ、掘削された土砂を前記掘削進行方向と反対側に移動させるように整流する本体側整流部と、を備え、
前記本体側整流部は、
前記ケーシング本体部の掘削進行方向側の端部に設けられ、掘削進行方向側から掘削進行方向と反対側になるにつれて径方向の厚さが厚さ方向中央から厚さ方向両側に漸次大きくなるような形状に形成されている
ことを特徴とするケーシングビット。
【請求項5】
前記ケーシング本体部の外周面及び/又は内周面に設けられ、掘削された土砂の移動を案内する複数の周面案内部を更に備え、
前記複数の周面案内部は、それぞれ線状又は螺旋状に形成されてなり、一の周面案内部の前記掘削進行方向と反対側の端部と、当該一の周面案内部と前記ケーシング本体部の中心軸周りの回転方向後ろ側にて隣合う他の周面案内部の前記掘削進行方向側の端部とが前記掘削進行方向に重なるように配置されてなることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載のケーシングビット。
【請求項6】
ビット部を有し、前記ケーシング本体部の掘削進行方向側から突出するように設けられた複数の突出部と、
前記突出部の前記ケーシング本体部の掘削進行方向側の外面及び/又は内面に設けられ、掘削された土砂の移動を案内する先端側案内部を更に備え、
前記周面案内部は、前記先端側案内部に連続するように前記ケーシング本体部の外周面及び/又は内周面に形成されてなることを特徴とする請求項に記載のケーシングビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転掘削装置や回転杭の先端に取り付けられ、地盤を掘削するケーシングビットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転掘削装置や回転杭の先端に取り付けられたケーシングビットを、その中心軸周りに回転させてビットにより地盤を掘削する手法が知られている。
ところで、ケーシングビットを回転させながら地中に圧入していくと、先端の土砂等が圧密されて固結し、圧力球根と呼ばれる抵抗が生じたり、地盤に貫入されたケーシング体積分の土砂等が押し退けられることで管内壁と管内部の土砂等との間に圧密されて管内閉塞が生じる虞がある。この場合、上向きの抵抗が増大して、掘削不能に陥ってしまう。
【0003】
このため、水やエアーを使用することで、掘削不能に陥ることを回避するようになっているが、掘削の深度が深くなると効果が低減してしまう。また、周囲の地盤に対する影響を考慮すると、水やエアーの使用量を必要以上に多くすることができない。
そこで、管内閉塞が生じる前に、ケーシングの内側の土砂等を適宜ハンマーグラブ等で除去するようになっている。ここで、ケーシングの内壁とケーシング内側の未掘削の土砂等との間にハンマーグラブを入れる隙間が必要となるため、インサートカッターを設けて掘削幅を広げる構成のケーシングビットが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、ケーシングの先端に当該ケーシング下側の土砂を掘削するための地盤掘削翼と、掘削された土砂等を径方向外側に移動させるための掘削爪を設けた砂杭造成装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−66892号公報
【特許文献2】特開2000−154693号公報
【特許文献3】特開2010−133232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2の場合、ケーシングの内壁とケーシング内側の未掘削の土砂等との間の隙間が広がっても土砂等を排出する能力はないため、依然として水やエアーを使用しなければならず、深度が深くなると管内閉塞が生じる虞がある。
また、掘削されて押し退けられた土砂等を逃がす空間が少なく、ビットの前側とケーシング先端下面に土砂等の固結が短時間で発生してしまい、例えば、玉石等が挟まると外れないために掘削不能に陥ってしまう。
さらに、土砂等を逃がす空間が少ないためにビットの摩耗が多くなり、掘削の深度が深いと掘削ビットの交換が必要となる。このため、引き抜きにより周囲地盤が崩壊する虞のある現場では使用できないといった問題がある。また、掘削幅が広いために掘削速度が遅くなり、効率も低下してしまう。
【0007】
また、特許文献3の場合、掘削爪が先行して掘削することで形成される土砂等の密度の低い環状空間側に、地盤掘削翼のビットにより掘削されたケーシング下面の土砂等を押し出すようになっているため、柔らかい地盤でないと使用できず、硬質地盤での掘削は全くできないといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、硬質地盤での掘削を好適に行うことができるケーシングビットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
地盤を掘削して円形の掘削溝を形成するケーシングビットであって、
環状のケーシング本体部と、
ビット部を有し、前記ケーシング本体部の掘削進行方向側から突出するように設けられた複数の突出部と、を備え、
前記複数の突出部の各々の前記ケーシング本体部の先端部からの前記掘削進行方向の突出長は、当該ケーシングビットを用いて地盤を掘削するときの前記ケーシング本体部の径方向の厚さ部分に対する単位面積あたりの構造物荷重をqとした場合に鉛直方向の増加応力の値が0.2qとなる深さである圧力球根の深さに相当する前記ケーシング本体部の径方向の厚さの3.2倍の長さよりも長くなっていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
地盤を掘削して円形の掘削溝を形成するケーシングビットであって、
環状のケーシング本体部と、
ビット部と当該ビット部を取り付けるビット取付部を有し、前記ケーシング本体部の掘削進行方向側から突出するように設けられた複数の突出部と、
前記複数の突出部の各々の前記ビット取付部に設けられ、掘削された土砂を前記ケーシング本体部の中心軸周りの回転方向後ろ側に移動させるように整流するビット側整流部と、を備え、
前記ビット側整流部は
前記ビット取付部におけるケーシングビットの回転方向前側の端部に設けられ、
回転方向前側から回転方向後ろ側になるにつれて径方向の厚さが厚さ方向中央から厚さ方向両側に漸次大きくなるような形状に形成されている
ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
地盤を掘削して円形の掘削溝を形成するケーシングビットであって、
環状のケーシング本体部と、
ビット部と当該ビット部を取り付けるビット取付部を有し、前記ケーシング本体部の掘削進行方向側から突出するように設けられた複数の突出部と、
前記複数の突出部どうしの間に設けられ、掘削された土砂を前記ケーシング本体部の中心軸周りの回転方向後ろ側且つ前記掘削進行方向と反対側に移動させるように整流する突出部間整流部と、を備え、
前記突出部間整流部は、
前記ビット取付部よりも前記ケーシングビットの回転方向前側、且つ、前記ケーシング本体部よりも掘削進行方向側に設けられ、前記掘削進行方向側から掘削進行方向と反対側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きく、且つ、回転方向前側から回転方向後ろ側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きくなるような形状に形成されている
ことを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、
地盤を掘削して円形の掘削溝を形成するケーシングビットであって、
環状のケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部の掘削進行方向側の端部に設けられ、掘削された土砂を前記掘削進行方向と反対側に移動させるように整流する本体側整流部と、を備え、
前記本体側整流部は、
前記ケーシング本体部の掘削進行方向側の端部に設けられ、掘削進行方向側から掘削進行方向と反対側になるにつれて径方向の厚さが厚さ方向中央から厚さ方向両側に漸次大きくなるような形状に形成されている
ことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1〜の何れか一項に記載のケーシングビットにおいて、
前記ケーシング本体部の外周面及び/又は内周面に設けられ、掘削された土砂の移動を案内する複数の周面案内部を更に備え、
前記複数の周面案内部は、それぞれ線状又は螺旋状に形成されてなり、一の周面案内部の前記掘削進行方向と反対側の端部と、当該一の周面案内部と前記ケーシング本体部の中心軸周りの回転方向後ろ側にて隣合う他の周面案内部の前記掘削進行方向側の端部とが前記掘削進行方向に重なるように配置されてなることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のケーシングビットにおいて、
ビット部を有し、前記ケーシング本体部の掘削進行方向側から突出するように設けられた複数の突出部と
前記突出部の前記ケーシング本体部の掘削進行方向側の外面及び/又は内面に設けられ、掘削された土砂の移動を案内する先端側案内部を更に備え、
前記周面案内部は、前記先端側案内部に連続するように前記ケーシング本体部の外周面及び/又は内周面に形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬質地盤での掘削速度の高速化を図ることができるとともに、ビット部の摩耗を減少させてビット部の寿命をより長くすることができ、これにより、硬質地盤での掘削を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用した実施形態1のケーシングビットを示す底面図である。
図2図1のケーシングビットの突出部を説明するための図である。
図3】本発明を適用した実施形態2のケーシングビットを説明するための図である。
図4図3のケーシングビットの変形例を説明するための図である。
図5】本発明を適用した実施形態3のケーシングビットを説明するための図である。
図6】本発明を適用した実施形態4のケーシングビットを説明するための図である。
図7】本発明を適用した実施形態5のケーシングビットを説明するための図である。
図8】本発明を適用した実施形態6のケーシングビットを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0019】
[実施形態1]
図1は、本発明を適用した実施形態1のケーシングビット100の概略構成を模式的に示す図である。また、図2(a)は、ケーシングビット100を側方から見た状態を模式的に平面状に展開した状態を示す図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A線におけるケーシングビット100の断面図である。
なお、以下の実施形態では、回転しながら地盤を掘削するケーシングビット100の軸方向を上下方向として説明し、ケーシングビット100の掘削進行方向側を下側、掘削進行方向と反対側を上側とする。また、ケーシングビット100の回転方向とは、地盤を掘削する際に当該ケーシングビット100が正回転する方向(図2(a)中、白抜きの矢印で示す方向)のことを言う。
【0020】
ケーシングビット100は、回転掘削装置や回転杭等M(図2(b)参照)の先端に取り付けられる掘削工具であり、その中心軸回りに回転させてビットにより地盤を掘削させて円形の掘削溝を形成しつつ掘り進む掘削工法に利用される。
具体的には、図1及び図2に示すように、ケーシングビット100は、ケーシング本体部1と、このケーシング本体部1の掘削進行方向側に設けられた複数の突出部2、…とを備えている。
【0021】
ケーシング本体部1は、その掘削進行方向と反対側(図2(a)における上側)に回転掘削装置や回転杭等が接続されるようになっている。また、ケーシング本体部1は、例えば、軸方向に略直交する断面が略円環形状をなす円筒状に形成されている。
また、ケーシング本体部1の掘削進行方向側(図2(a)における下側)に複数の突出部2、…が設けられている。
【0022】
複数の突出部2、…の各々は、ケーシング本体部1の掘削進行方向側から突出するように設けられている。具体的には、複数の突出部2、…は、ケーシング本体部1の周方向に略等しい所定間隔を空けて並設されている。また、各突出部2は、ビット取付部21にビット部22が取り付けられて構成されている。
【0023】
ビット取付部21は、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に設けられている。また、ビット取付部21は、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端面に対して略直交するように掘削進行方向(上下方向)に沿って延在している。また、ビット取付部21の掘削進行方向側の端部にビット部22が取り付けられている。
ビット部22は、その掘削進行方向側の端部に掘削刃22aが設けられている。また、複数のビット部22、…は、ケーシングビット100の回転方向に隣合うものどうしで掘削刃22aの向きが逆向きとなるように互い違いに配設されている。
【0024】
各突出部2のケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部(先端部)からの突出長L1は、地盤に対して載荷重が影響する深さ以上とされている。
一般的に、ケーシングビット100を用いて地盤を掘削するときの単位面積あたりの構造物荷重をqとした場合に、鉛直方向の増加応力の値が0.2qとなる深さまで地盤に対して載荷重が影響すると考えられる。図2(b)には、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bがドットを付して模式的に表されている。
本実施形態のケーシングビット100を回転掘削装置や回転杭等に取り付けると、軸方向の長さが長い帯状荷重となり、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bの深さD1は、ケーシング本体部1の径方向の厚さW1(図2(b)参照)の3.2倍程度となる。
つまり、地盤に対して載荷重が影響する深さは、ケーシング本体部1の径方向の厚さW1の3.2倍までの距離であることから、各突出部2の突出長L1は、ケーシング本体部1の径方向の厚さW1の3.2倍の長さよりも長くなっているのが好ましい。
さらに、各突出部2の突出長L1は、ビット部22の径方向の厚さW2、すなわち、掘削幅の2倍の長さよりも長くなっているのがより好ましい。
【0025】
また、ケーシングビット100の回転方向に隣合う突出部2どうしの間隔D2が大きい程、土砂等が固結し難く、また、土砂等が固結しても圧密度が相対的に低い部分が生じることから剥がれ易くなる。そこで、ケーシングビット100の回転方向に隣合う突出部2どうしの間隔D2は、ビット部22の径方向の厚さW2の2倍の長さよりも長くなっているのがより好ましい。
なお、図2(a)には、固結した土砂等S1をクロスのハッチングを用いて表し、固結した土砂等S1よりも圧密度が低いが次第に固結していく土砂等S2を斜めのハッチングを用いて表し、圧密度が低い土砂等S3を横のハッチングを用いて表し、これらの領域により、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bが構成されている。
【0026】
次に、実施形態1のケーシングビット100を用いた地盤の掘削処理について説明する。
回転掘削装置や回転杭M等の先端に取り付けられたケーシングビット100を所定の回転方向に回転させながら掘削進行方向に移動させていくことで、当該ケーシングビット100による地盤の掘削が行われる。
【0027】
このとき、複数の突出部2、…の各々のケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部からの突出長L1は、地盤に対して載荷重が影響する深さ(鉛直方向の増加応力の値が0.2qとなる深さ)以上とされているので、掘削により圧力球根Bが発生しても実質的に影響のない深い位置、すなわち、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bよりも深い位置を掘削することができる。
さらに、ケーシングビット100の回転方向に隣合う突出部2どうしの間隔D2が大きいため、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に土砂等が固結し難くなる。仮に、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に土砂等が固結しても圧密度が相対的に低く、剥がれ易くなる。
【0028】
以上のように、実施形態1のケーシングビット100によれば、ビット部22を有する複数の突出部2、…の各々のケーシング本体部1の先端部からの突出長L1は、地盤に対して載荷重が影響する深さ以上とされているので、掘削により圧力球根Bが発生しても実質的に影響のない深い位置を掘削することができ、硬質地盤での掘削速度の高速化を図ることができる。また、複数の突出部2、…どうしの間により土砂等を逃がす空間を確保することができ、ビット部22の摩耗を減少させてビット部22の寿命をより長くすることができる。さらに、管内閉塞が生じ難くなり、杭の圧入をより短時間で行うことができる。
このように、硬質地盤での掘削を好適に行うことができる。
【0029】
[実施形態2]
図3は、本発明を適用した実施形態2のケーシングビット200の概略構成を模式的に示す図である。このうち、図3(a)は、ケーシングビット200を側方から見た状態を模式的に平面状に展開した状態を示す図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B線におけるケーシングビット200の断面図であり、図3(c)は、図3(a)のC−C線におけるケーシングビット200の断面図である。
【0030】
図3に示すように、実施形態2のケーシングビット200は、複数の突出部2、…どうしの間に突出部間整流部3が設けられている。
なお、ケーシング本体部1と突出部2の構成は、上記実施形態1と略同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0031】
複数の突出部間整流部3、…の各々は、突出部2のビット取付部21よりもケーシングビット200(ケーシング本体部1)の回転方向前側、且つ、ケーシング本体部1よりも掘削進行方向側に設けられている。
具体的には、突出部間整流部3は、側方から見た状態で一の辺がビット取付部21の回転方向前側の端部に接するとともに他の辺が掘削進行方向側の端部に接する略三角形状をなしている。
また、突出部間整流部3は、例えば、掘削進行方向側から掘削進行方向と反対側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きく、且つ、回転方向前側から回転方向後ろ側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きくなるような形状に形成されている。
【0032】
また、突出部間整流部3は、回転方向前側の端部の径方向の厚さW3(図3(c)参照)が最も幅狭となるように形成されているので、回転方向に関して増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bの高さH1(突出部間整流部3の回転方向前側の端部の径方向の厚さW3の3.2倍程度)が小さくなる。結果として、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bの径方向の幅W4は、突出部間整流部3の回転方向後ろ側の端部の径方向の厚さW5よりも小さくなる。
【0033】
このような構成の突出部間整流部3は、掘削された土砂等をケーシングビット200の回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側に移動させるように整流する機能を具備する。
【0034】
なお、図3(a)には、上記実施形態1と略同様に、圧密度が低いが次第に固結していく土砂等S2を斜めのハッチングを用いて表し、圧密度が低い土砂等S3を横のハッチングを用いて表し、これらの領域により、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bが構成されている。
【0035】
次に、実施形態2のケーシングビット200を用いた地盤の掘削処理について説明する。
上記実施形態1と略同様に、ケーシングビット200を所定の回転方向に回転させながら掘削進行方向に移動させていくことで、当該ケーシングビット200による地盤の掘削が行われる。
【0036】
このとき、複数の突出部2、…どうしの間に設けられている突出部間整流部3による整流作用により、掘削された土砂等は回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側に移動することとなり、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部や突出部間整流部3等に土砂等が固結し難くなる。仮に、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に土砂等が固結しても、突出部間整流部3による整流作用により剥がれ易くなる。
また、上記実施形態1のケーシングビット100と略同様に、複数の突出部2、…の各々のケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部からの突出長L1は、地盤に対して載荷重が影響する深さ以上とされているので、掘削により圧力球根Bが発生しても実質的に影響のない深い位置を掘削することができる。さらに、ケーシングビット200の回転方向に隣合う突出部2どうしの間隔D2が大きいため、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に土砂等が固結し難くなる。
【0037】
以上のように、実施形態2のケーシングビット200によれば、ビット部22を有する複数の突出部2、…どうしの間に突出部間整流部3が設けられているので、掘削された土砂等は当該突出部間整流部3による整流作用によりケーシングビット200の回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側に移動することとなり、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部や突出部間整流部3等に土砂等を固結し難くすることができる。これにより、ビット部22の地盤への喰い込みを効率良く行うことができ、硬質地盤での掘削速度の高速化を図ることができるとともに、ビット部22の摩耗を減少させてビット部22の寿命をより長くすることができる。さらに、管内閉塞が生じ難くなり、杭の圧入をより短時間で行うことができる。
このように、硬質地盤での掘削を好適に行うことができる。
【0038】
<変形例1>
図4は、実施形態2のケーシングビット200の変形例を説明するための図である。
図4に示すように、本変形例のケーシングビット200Aは、ケーシング本体部1と、複数の突出部2、…と、複数の突出部間整流部3、…とが一体となって構成されている。すなわち、ケーシング本体部1と複数の突出部2、…との継ぎ目部分や、ケーシング本体部1と複数の突出部間整流部3、…との継ぎ目部分が略面一となっている。
【0039】
このような構成としても、上記実施形態2のケーシングビット200と略同様に、ビット部22を有する複数の突出部2、…どうしの間に設けられている突出部間整流部3による整流作用により、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部や突出部間整流部3等に土砂等を固結し難くすることができる。さらに、ケーシング本体部1と複数の突出部2、…との継ぎ目部分や、ケーシング本体部1と複数の突出部間整流部3、…との継ぎ目部分を略面一とすることができ、これにより、土砂等の整流効果をより向上させることができる。
【0040】
[実施形態3]
図5は、本発明を適用した実施形態3のケーシングビット300の概略構成を模式的に示す図である。このうち、図5(a)は、ケーシングビット300を側方から見た状態を模式的に平面状に展開した状態を示す図であり、図5(b)は、D−D線におけるケーシングビット300の断面図であり、図5(c)は、E−E線におけるケーシングビット300の断面図である。
【0041】
図5に示すように、実施形態3のケーシングビット300は、ケーシング本体部1に本体側整流部4が設けられ、複数の突出部2、…の各々にビット側整流部55が設けられている。
【0042】
本体側整流部4は、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に設けられている。また、本体側整流部4は、例えば、図5(b)に示すように、掘削進行方向側から掘削進行方向と反対側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きくなるような形状に形成されている。すなわち、本体側整流部4は、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の部分に対して所定の加工を施すことで形成されている。
【0043】
このような構成の本体側整流部4は、掘削された土砂等をケーシングビット300の掘削進行方向と反対側に移動させるように整流する機能を具備する。
【0044】
また、本体側整流部4は、掘削進行方向側の端部の径方向の厚さW6(図5(b)参照)が最も幅狭となるように形成されているので、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bの深さD3(本体側整流部4の掘削進行方向側の端部の径方向の厚さW6の3.2倍程度)が浅くなる。つまり、複数の突出部2、…の各々のケーシング本体部1の先端部からの突出長L1のうち、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bがない領域に対応する長さL2(図5(a)参照)がより長くなる。
また、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bの径方向の幅W7は、ビット部22の径方向の厚さW2、すなわち、掘削幅よりも小さくなる。
【0045】
ビット側整流部5は、各突出部2のビット取付部21に設けられている。具体的には、ビット側整流部5は、ビット取付部21におけるケーシングビット300の回転方向前側の端部に設けられている。また、ビット側整流部5は、例えば、図5(c)に示すように、回転方向前側から回転方向後ろ側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きくなるような形状に形成されている。すなわち、ビット側整流部5は、ビット取付部21の回転方向前側の部分に対して所定の加工を施すことで形成されている。
【0046】
このような構成のビット側整流部5は、掘削された土砂等をケーシングビット300の回転方向後ろ側に移動させるように整流する機能を具備する。
【0047】
また、ビット側整流部5は、回転方向前側の端部の径方向の厚さW8(図5(c)参照)が最も幅狭となるように形成されているので、回転方向に関して増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bの高さH2(ビット側整流部5の回転方向前側の端部の径方向の厚さW8の3.2倍程度)が小さくなる。結果として、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bの径方向の幅W9は、ビット取付部21の径方向の厚さW10よりも小さくなる。
【0048】
また、ケーシング本体部1の本体側整流部4の回転方向後ろ側、且つ、ビット側整流部5の掘削進行方向と反対側には、本体側整流部4とビット側整流部5を接続する接続整流部6が設けられている。この接続整流部6は、例えば、掘削進行方向側から掘削進行方向と反対側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きく、且つ、回転方向前側から回転方向後ろ側になるにつれて径方向の厚さが漸次大きくなるような形状に形成されている。
【0049】
次に、実施形態3のケーシングビット300を用いた地盤の掘削処理について説明する。
上記実施形態1、2と略同様に、ケーシングビット300を所定の回転方向に回転させながら掘削進行方向に移動させていくことで、当該ケーシングビット300による地盤の掘削が行われる。
【0050】
このとき、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に設けられている本体側整流部4による整流作用により、掘削された土砂等は掘削進行方向と反対側に移動することとなり、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部や本体側整流部4等に土砂等が固結し難くなる。仮に、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に土砂等が固結しても、本体側整流部4による整流作用により剥がれ易くなる。
特に、本体側整流部4は、掘削進行方向側の端部の径方向の厚さW6が最も幅狭となるように形成されていることから、複数の突出部2、…の各々のケーシング本体部1の先端部からの突出長L1のうち、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bがない領域に対応する長さL2がより長くなり、土砂等の整流効果がより向上する。
【0051】
また、複数の突出部2、…の各々に設けられているビット側整流部5による整流作用により、掘削された土砂等は回転方向後ろ側に移動することとなり、突出部2の回転方向前側の端部やビット側整流部5等に土砂等が固結し難くなる。仮に、突出部2の回転方向前側の端部に土砂等が固結しても、ビット側整流部5による整流作用により剥がれ易くなる。
特に、ビット側整流部5は、回転方向前側の端部の径方向の厚さW8が最も幅狭となるように形成されていることから、増加応力が0.2qに相当する圧力球根Bの径方向の幅W9がビット取付部21の径方向の厚さW10よりも小さくなり、土砂等の整流効果がより向上する。
【0052】
また、上記実施形態1、2のケーシングビット100と略同様に、複数の突出部2、…の各々のケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部からの突出長L1は、地盤に対して載荷重が影響する深さ以上とされているので、掘削により圧力球根Bが発生しても実質的に影響のない深い位置を掘削することができる。さらに、ケーシングビット300の回転方向に隣合う突出部2どうしの間隔D2が大きいため、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に土砂等が固結し難くなる。
【0053】
以上のように、実施形態3のケーシングビット300によれば、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に本体側整流部4が設けられているので、掘削された土砂等は当該本体側整流部4による整流作用によりケーシングビット300の掘削進行方向と反対側に移動することとなり、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部や本体側整流部4等に土砂等を固結し難くすることができる。また、複数の突出部2、…の各々にビット側整流部5が設けられているので、掘削された土砂等は当該ビット側整流部5による整流作用によりケーシング本体部1の中心軸周りの回転方向後ろ側に移動することとなり、突出部2の回転方向前側の端部やビット側整流部5等に土砂等を固結し難くすることができる。
これにより、ビット部22の地盤への喰い込みを効率良く行うことができ、硬質地盤での掘削速度の高速化を図ることができるとともに、ビット部22の摩耗を減少させてビット部22の寿命をより長くすることができる。さらに、管内閉塞が生じ難くなり、杭の圧入をより短時間で行うことができる。
このように、硬質地盤での掘削を好適に行うことができる。
【0054】
なお、上記実施形態3のケーシングビット300は、本体側整流部4及びビット側整流部5の両方を備えるようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、本体側整流部4及びビット側整流部5のうち、少なくとも何れか一方を備えていれば良い。
【0055】
[実施形態4]
図6は、本発明を適用した実施形態4のケーシングビット400の概略構成を模式的に示す図である。
【0056】
図6に示すように、実施形態4のケーシングビット400は、本体側整流部4及びビット側整流部5に加えて、突出部間整流部3を具備している。
なお、突出部間整流部3の構成は、上記実施形態2と略同様であり、その詳細な説明は省略する。また、本体側整流部4及びビット側整流部5の構成は、上記実施形態3と略同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0057】
以上のように、実施形態4のケーシングビット400によれば、本体側整流部4、ビット側整流部5及び突出部間整流部3により土砂等の整流効果をより向上させることができる。結果として、ビット部22の地盤への喰い込みを効率良く行うことができ、硬質地盤での掘削速度の高速化を図ることができるとともに、ビット部22の摩耗を減少させてビット部22の寿命をより長くすることができる。さらに、管内閉塞が生じ難くなり、杭の圧入をより短時間で行うことができる。
このように、硬質地盤での掘削を好適に行うことができる。
【0058】
[実施形態5]
図7は、本発明を適用した実施形態5のケーシングビット500の概略構成を模式的に示す図である。
【0059】
図7に示すように、実施形態5のケーシングビット500は、ケーシング本体部1に本体側整流部4が設けられ、ケーシング本体部1の掘削進行方向側に複数のビット部22、…が取り付けられている。
すなわち、ケーシング本体部1には、上記実施形態3、4と略同様に、本体側整流部4が形成されている。なお、本体側整流部4の構成は、上記実施形態3、4と略同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0060】
複数のビット部22、…は、ケーシング本体部1の掘削進行方向側から突出するように取り付けられている。具体的には、本実施形態では、複数のビット部22、…は、ビット取付部21を介在させることなく、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に直接取り付けられている。また、複数のビット部22、…は、ケーシング本体部1の周方向に略等しい所定間隔を空けて並設されている。
【0061】
以上のように、実施形態5のケーシングビット500によれば、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部に本体側整流部4が設けられているので、掘削された土砂等は当該本体側整流部4による整流作用によりケーシングビット500の掘削進行方向と反対側に移動することとなり、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部や本体側整流部4等に土砂等を固結し難くすることができる。これにより、ビット部22の地盤への喰い込みを効率良く行うことができ、硬質地盤での掘削速度の高速化を図ることができるとともに、ビット部22の摩耗を減少させてビット部22の寿命をより長くすることができる。さらに、管内閉塞が生じ難くなり、杭の圧入をより短時間で行うことができる。
このように、硬質地盤での掘削を好適に行うことができる。
【0062】
[実施形態6]
図8は、本発明を適用した実施形態6のケーシングビット600の概略構成を模式的に示す図である。このうち、図8(a)は、ケーシングビット600を側方から見た状態を模式的に平面状に展開した状態を示す図であり、図8(b)は、F−F線におけるケーシングビット600の断面図である。
【0063】
図8に示すように、実施形態6のケーシングビット600は、ケーシング本体部1の外周面及び内周面に外周面案内部71及び内周面案内部72がそれぞれ複数設けられ、突出部2の外面又は内面に外先端側案内部81又は内先端側案内部82が設けられている。
なお、実施形態6のケーシングビット600は、突出部間整流部3を具備しているが、上記実施形態2と略同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0064】
外先端側案内部81及び内先端側案内部82は、ケーシングビット600の回転方向に隣合う突出部2に互い違いとなるように交互に配設されている。
外先端側案内部81は、突出部2の外面から径方向内側に凹んで形成された所定幅を有する溝状をなしている。また、内先端側案内部82は、突出部2の内面から径方向外側に凹んで形成された所定幅を有する溝状をなしている。
また、外先端側案内部81及び内先端側案内部82は、突出部2におけるケーシングビット600の回転方向後ろ側の端部に、掘削進行方向及び回転方向の各々に対して斜めに交わるように配設されている。具体的には、外先端側案内部81及び内先端側案内部82は、各々の掘削進行方向側の端部が回転方向前側に配置されるとともに、掘削進行方向と反対側の端部が回転方向後ろ側に配置されるように傾斜して形成されている。
【0065】
このような構成の外先端側案内部81及び内先端側案内部82は、掘削された土砂等をケーシングビット600の回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側に移動させるように案内する機能を具備する。なお、図8(a)には、土砂等の移動方向を、塗り潰した矢印で模式的に表している。
【0066】
外周面案内部71及び内周面案内部72は、ケーシング本体部1の掘削進行方向と反対側に、ケーシングビット600の回転方向(及びケーシングビット600の掘削進行方向)に対して互い違いとなるように交互に配設されている。
外周面案内部71は、外先端側案内部81に所定の深さの外側溝状部91を介して連続するようにケーシング本体部1の外周面に形成されている。また、外周面案内部71は、ケーシング本体部1の外周面から径方向外側に突出して形成された所定幅を有する線状をなしている(図8(a)及び図8(b)参照)。また、外周面案内部71は、掘削進行方向及び回転方向の各々に対して斜めに交わるように配置されている。
内周面案内部72は、内先端側案内部82に所定の深さの内側溝状部92を介して連続するようにケーシング本体部1の内周面に形成されている。また、内周面案内部72は、ケーシング本体部1の内周面から径方向内側に突出して形成された所定幅を有する線状をなしている(図8(a)及び図8(b)参照)。また、内周面案内部72は、掘削進行方向及び回転方向の各々に対して斜めに交わるように配置されている。
【0067】
また、複数の外周面案内部71、…は、一の外周面案内部71の掘削進行方向と反対側の端部と、当該一の外周面案内部71とケーシングビット600の回転方向後ろ側にて隣合う他の外周面案内部71の掘削進行方向側の端部とが掘削進行方向に重なるように配置されてなる。すなわち、複数の外周面案内部71、…のうち、ケーシングビット600の回転方向に隣合うものどうしは、一方の掘削進行方向側の端部と他方の掘削進行方向と反対側の端部とが重なり合っている。
また、複数の内周面案内部72、…は、一の内周面案内部72の掘削進行方向と反対側の端部と、当該一の内周面案内部72とケーシングビット600の回転方向後ろ側にて隣合う他の内周面案内部72の掘削進行方向側の端部とが掘削進行方向に重なるように配置されてなる。すなわち、複数の内周面案内部72、…のうち、ケーシングビット600の回転方向に隣合うものどうしは、一方の掘削進行方向側の端部と他方の掘削進行方向と反対側の端部とが重なり合っている。
【0068】
このような構成の外周面案内部71及び内周面案内部72は、掘削された土砂等をケーシングビット600の回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側に移動させるように案内する機能を具備する。なお、図8(a)には、土砂等の移動方向を、塗り潰した矢印で模式的に表している。
【0069】
次に、実施形態6のケーシングビット600を用いた地盤の掘削処理について説明する。
上記実施形態1〜5と略同様に、ケーシングビット600を所定の回転方向に回転させながら掘削進行方向に移動させていくことで、当該ケーシングビット600による地盤の掘削が行われる。
【0070】
このとき、突出部2に設けられている外先端側案内部81や内先端側案内部82により、掘削された土砂等は回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側への移動が案内されて、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部や突出部間整流部3等に土砂等が固結し難くなる。
また、ケーシング本体部1に設けられている外周面案内部71や内周面案内部72により、掘削された土砂等は回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側への移動が案内されて、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部や突出部間整流部3等に土砂等が固結し難くなる。特に、外周面案内部71や内周面案内部72は、外先端側案内部81や内先端側案内部82に連続するように形成されていることから、外先端側案内部81や内先端側案内部82により移動が案内される土砂等がスムーズに外周面案内部71や内周面案内部72に受け渡されて、回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側へと移動することとなる。
【0071】
以上のように、実施形態6のケーシングビット600によれば、突出部2に外先端側案内部81や内先端側案内部82が設けられているので、掘削された土砂等は当該外先端側案内部81や内先端側案内部82により案内されてケーシングビット600の回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側に移動することとなり、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部等に土砂等を固結し難くすることができる。また、ケーシング本体部1に外周面案内部71や内周面案内部72が設けられているので、掘削された土砂等は当該外周面案内部71や内周面案内部72により案内されてケーシングビット600の回転方向後ろ側且つ掘削進行方向と反対側に移動することとなり、ケーシング本体部1の掘削進行方向側の端部等に土砂等を固結し難くすることができる。特に、外周面案内部71や内周面案内部72は、外先端側案内部81や内先端側案内部82に連続するように形成されているので、外先端側案内部81や内先端側案内部82により移動が案内される土砂等がスムーズに外周面案内部71や内周面案内部72に受け渡されることとなる。
これにより、ビット部22の地盤への喰い込みを効率良く行うことができ、硬質地盤での掘削速度の高速化を図ることができるとともに、ビット部22の摩耗を減少させてビット部22の寿命をより長くすることができる。さらに、管内閉塞が生じ難くなり、杭の圧入をより短時間で行うことができる。
このように、硬質地盤での掘削を好適に行うことができる。
【0072】
なお、上記実施形態6では、外周面案内部71及び内周面案内部72として線状に形成されたものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、形状は適宜任意に変更可能であり、例えば、ケーシング本体部1の外周面や内周面に沿って螺旋状に形成されたものであっても良い。
また、外周面案内部71及び内周面案内部72の両方を設けるようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、外周面案内部71及び内周面案内部72のうち、少なくとも何れか一方が設けられていれば良い。
また、外先端側案内部81及び内先端側案内部82の両方を設けるようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、外先端側案内部81及び内先端側案内部82のうち、少なくとも何れか一方が設けられていれば良い。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、上記実施形態1〜6では、ケーシング本体部1として、軸方向に略直交する断面が略円環形状をなす円筒状に形成されたものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、断面が多角形状をなす角筒状に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0074】
100、200、200A、300、400、500、600 ケーシングビット
1 ケーシング本体部
2 突出部
21 ビット取付部
22 ビット部
3 突出部間整流部
4 本体側整流部
5 ビット側整流部
71 外周面案内部
72 内周面案内部
81 外先端側案内部
82 内先端側案内部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8