特許第6267984号(P6267984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267984
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】エレクトロスプレー装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/08 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   B05B5/08 B
   B05B5/08 F
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-24143(P2014-24143)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-150470(P2015-150470A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山本 清人
(72)【発明者】
【氏名】泉田 信也
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−093139(JP,A)
【文献】 特開2009−230081(JP,A)
【文献】 特開2013−230551(JP,A)
【文献】 特開2011−175921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから噴霧された溶液材料を、基板に薄膜として堆積するエレクトロスプレー装置であって、
溶液材料に電圧を印加した状態で噴霧する前記ノズルと、
前記基板の前記ノズル側の表面に接触するように設けられる第1導電体と、
前記薄膜の形成時に前記基板の前記ノズルとは反対側に配置され、前記ノズルとの間に電位差を形成するためのプレート部材とを備え、
前記第1導電体を介して、前記基板の前記ノズル側の表面を、接地するように構成されており、
前記ノズルと前記基板との間の前記基板の近傍に配置され、所定の開口パターンを有する開口部を含む絶縁性のマスクをさらに備え、
少なくとも前記ノズルから前記基板に溶液材料が噴霧されている際において、前記第1導電体は、前記マスクの前記基板側の表面と前記基板とに接触するように構成されている、エレクトロスプレー装置。
【請求項2】
記第1導電体は、前記マスクの前記基板側の表面に取り付けられている、請求項1に記載のエレクトロスプレー装置。
【請求項3】
前記基板は、絶縁性基板からなるとともに、前記基板の前記ノズル側の表面には、前記第1導電体とは異なる第2導電体が設けられており、
前記第2導電体と前記第1導電体とを介して、前記基板の前記ノズル側の表面を、接地するように構成されている、請求項1または2に記載のエレクトロスプレー装置。
【請求項4】
前記基板は、半導体素子が表面に形成される半導体素子基板からなり、
前記第2導電体は、前記半導体素子に電気的に接続されている端子を含む、請求項3に記載のエレクトロスプレー装置。
【請求項5】
前記第1導電体は、平面視において、前記基板の前記ノズル側の表面の前記薄膜の塗布領域の外側に設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロスプレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレクトロスプレー装置に関し、特に、溶液材料に電圧を印加した状態で噴霧するノズルを備えるエレクトロスプレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶液材料に電圧を印加した状態で噴霧するノズルを備えるエレクトロスプレー装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、溶液材料に電圧を印加した状態(溶液材料が帯電した状態)で噴霧するノズルと、ノズルから噴霧された溶液材料が堆積されて薄膜が形成される基板と、ノズルと基板との間に設けられるマスクとを備えるエレクトロスプレー装置が開示されている。このエレクトロスプレー装置では、基板のノズルと反対側の表面近傍に局所電極が設けられている。そして、溶液材料に印加される電圧と局所電極との間の電位差(電界)により、ノズルから基板に溶液材料が飛行することによって、基板に溶液材料が薄膜として堆積される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−175921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のエレクトロスプレー装置では、溶液材料に印加される電圧(ノズル側の電圧)に起因して、基板のノズル側の表面が帯電する場合があるという不都合がある。この場合、成膜前に予め基板に設けられる半導体素子などが、基板のノズル側の表面に帯電する電荷によって破損する場合があるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、基板のノズル側の表面に帯電する電荷に起因して、基板に設けられる素子などが破壊されるのを抑制することが可能なエレクトロスプレー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面によるエレクトロスプレー装置は、ノズルから噴霧された溶液材料を、基板に薄膜として堆積するエレクトロスプレー装置であって、溶液材料に電圧を印加した状態で噴霧するノズルと、基板のノズル側の表面に接触するように設けられる第1導電体と、薄膜の形成時に基板のノズルとは反対側に配置され、ノズルとの間に電位差を形成するためのプレート部材とを備え、第1導電体を介して、基板のノズル側の表面を、接地するように構成されており、ノズルと基板との間の基板の近傍に配置され、所定の開口パターンを有する開口部を含む絶縁性のマスクをさらに備え、少なくともノズルから基板に溶液材料が噴霧されている際において、第1導電体は、マスクの基板側の表面と基板とに接触するように構成されている
【0008】
この一の局面によるエレクトロスプレー装置では、上記のように、第1導電体を介して、基板のノズル側の表面を、接地することによって、基板のノズル側の表面に電荷が帯電することを抑制することができるので、基板のノズル側の表面に帯電する電荷に起因して、基板に設けられる素子などが破壊されるのを抑制することができる。
【0009】
また、薄膜の形成時に基板のノズルとは反対側に配置され、ノズルとの間に電位差を形成するためのプレート部材を設けることによって、ノズルとプレート部材との間の電位差(電界)によってノズルからプレート部材に向かって溶液材料(液滴)を飛行(飛翔)させることができる。これにより、ノズルとプレート部材との間に配置される基板に溶液材料(液滴)を堆積することができる。
【0010】
上記一の局面によるエレクトロスプレー装置において、好ましくは、第1導電体は、マスクの基板側の表面に取り付けられている。このように構成すれば、マスクとともに第1導電体を移動させて第1導電体を基板のノズル側の表面に接触させることができるので、マスクおよび第1導電体を個別に移動させる移動機構を設ける場合と異なり、エレクトロスプレー装置の構成を簡略化することができる。また、第1導電体を、マスクの基板側の表面に取り付けることによって、マスクおよび第1導電体を移動させる工程を同一の工程で行うことができるので、第1導電体を設けたとしても、基板への薄膜の堆積プロセスにおける工程数が増加するのを抑制することができる。
【0011】
上記一の局面によるエレクトロスプレー装置において、好ましくは、基板は、絶縁性基板からなるとともに、基板のノズル側の表面には、第1導電体とは異なる第2導電体が設けられており、第2導電体と第1導電体とを介して、基板のノズル側の表面を、接地するように構成されている。このように構成すれば、第1導電体を第2導電体に接触させるだけで、容易に、絶縁性の基板のノズル側の表面を、接地することができる。




【0012】
この場合、好ましくは、基板は、半導体素子が表面に形成される半導体素子基板からなり、第2導電体は、半導体素子に電気的に接続されている端子を含む。このように構成すれば、第1導電体を端子に接触させることにより、半導体素子が第1導電体を介して接地されるので、基板のノズル側の表面に帯電する電荷に起因して半導体素子が破壊されるのを容易に抑制することができる。
【0013】
上記一の局面によるエレクトロスプレー装置において、好ましくは、第1導電体は、平面視において、基板のノズル側の表面の薄膜の塗布領域の外側に設けられている。このように構成すれば、接地のための第1導電体を設けたとしても、薄膜の形成時に、第1導電体が溶液材料の飛行の妨げになるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、基板のノズル側の表面に帯電する電荷に起因して、基板に設けられる素子などが破壊されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態によるエレクトロスプレー装置の概略の構成を示す全体図である。
図2】本発明の一実施形態によるエレクトロスプレー装置により溶液材料が噴霧される基板の平面図である。
図3図3の基板に設けられる薄膜トランジスタの断面図である。
図4】本発明の一実施形態によるエレクトロスプレー装置のマスクの平面図である。
図5】本発明の一実施形態によるエレクトロスプレー装置のマスクと基板とを重ねた状態を示す図である。
図6】本発明の一実施形態の第1変形例によるエレクトロスプレー装置のマスクの平面図である。
図7】本発明の一実施形態の第2変形例によるエレクトロスプレー装置のマスクの平面図である。
図8】本発明の一実施形態の第3変形例によるエレクトロスプレー装置のマスクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図5を参照して、本実施形態によるエレクトロスプレー装置100の構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、エレクトロスプレー装置100は、ノズル1と、シリンジポンプ2と、アースプレート3と、マスク4と、昇降ユニット5とを備えている。また、アースプレート3とマスク4との間には、基板200が配置されている。なお、アースプレート3は、本発明の「プレート部材」の一例である。
【0019】
図2に示すように、本実施形態では、基板200は、ガラスなどの絶縁性基板からなる。また、基板200は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)201が形成されている半導体素子基板からなる。また、薄膜トランジスタ201は、基板200のマスク4側の表面200a(Z2方向側の面)にマトリクス状に設けられている。なお、薄膜トランジスタ201は、本発明の「半導体素子」の一例である。
【0020】
図3に示すように、薄膜トランジスタ201は、ゲート電極202と、ゲート絶縁膜203と、非晶質シリコン層204と、ソース電極205と、ドレイン電極206と、保護膜207と、透明電極208とを含む。ゲート電極202は、基板200の表面200a上に設けられている。ゲート絶縁膜203は、ゲート電極202を覆うように、基板200の表面200a上に設けられている。非晶質シリコン層204は、ゲート絶縁膜203を介してゲート電極202と対向するように、ゲート絶縁膜203の表面上に設けられている。ソース電極205およびドレイン電極206は、非晶質シリコン層204の一方側(ソース側)および他方側(ドレイン側)にそれぞれ接続されている。また、透明電極208は、ドレイン電極206に接続されている。また、保護膜207は、ソース電極205、ドレイン電極206および非晶質シリコン層204を覆うように、基板200上に設けられている。
【0021】
また、本実施形態では、図2に示すように、基板200のノズル1側の表面200a(Z2方向側の面)には、端子209が設けられている。端子209は、複数設けられており、それぞれの端子209は、薄膜トランジスタ201に電気的に接続されている。たとえば、端子209は、薄膜トランジスタ201のゲート電極202(ゲート線202a)およびソース電極205(ソース線205a)に接続されている。また、端子209は、保護膜207(図3参照)などには覆われずに露出している。また、端子209は、ノズル1から溶液材料が噴霧される塗布領域210の外側に配置されている。なお、端子209は、本発明の「第2導電体」の一例である。
【0022】
ノズル1は、溶液材料に電圧を印加した状態で、溶液材料を下方(Z2方向)から上方(Z1方向)に向かって噴霧するように構成されている。そして、ノズル1から噴霧された溶液材料が、基板200に薄膜(図示せず)として堆積されるように構成されている。また、シリンジポンプ2は、ノズル1に溶液材料を送液するように構成されている。
【0023】
アースプレート3は、たとえば金属板から構成されており、平板状を有する。また、本実施形態では、アースプレート3は、薄膜の形成時(図1に示す状態)に、ノズル1とは反対側(Z1方向側)に配置され、ノズル1との間に電位差を形成するように構成されている。具体的には、アースプレート3は、薄膜の形成時(図1に示す状態)に、基板200に接触して基板200のノズル1とは反対側の表面200b(Z1方向側の面)を接地するように構成されている。
【0024】
また、図1に示すように、マスク4は、ノズル1と基板200との間の基板200の近傍に配置され、所定の開口パターンを有する開口部4aを含むように構成されている。具体的には、図4に示すように、開口部4aは、平面視において、略矩形形状に形成されており、マスク4に1つ設けられている。そして、開口部4aから露出する基板200の部分に薄膜が堆積される。また、図1に示すように、マスク4は、マスク4の両端部が昇降ユニット5に支持されており、昇降ユニット5の昇降とともに昇降するように構成されている。なお、マスク4は、樹脂などの絶縁性部材により形成されており、薄膜の形成時には、マスク4に電荷が蓄積されるように構成されている。
【0025】
ここで、本実施形態では、図1および図4に示すように、マスク4の基板200側の表面4b(Z1方向側の面)には、基板200のノズル1側の表面200aに接触するように設けられる導電体6が取り付けられている。そして、導電体6を介して、基板200のノズル1側の表面200a(Z2方向側の面)が、接地されている。具体的には、図4に示すように、導電体6は、マスク4の基板200側の表面4b(Z1方向側の面)に、開口部4aを取り囲むように、枠状に設けられている。また、導電体6は、導電体6とアースプレート3とを接触させるための接触部6aを含む。接触部6aは、導電体6の枠状の部分(枠状部6b)から、X方向の一方端側(X1方向側)に延びるように形成されているとともに、接触部6aのX1方向側の端部(折曲部6c)は、Z1方向側(アースプレート3側)に90度折り曲げられている。そして、折曲部6cが、アースプレート3に接触することにより、導電体6が接地される。これにより、マスク4と基板200とを当接させた状態(図1に示す状態)で、導電体6を介して、基板200のノズル1側の表面200a(Z2方向側の面)が、接地される。なお、導電体6は、マスク4の表面4bから基板200側に突出するように設けられている。また、導電体6は、たとえば、導電性の樹脂テープ、銅箔などにより構成されている。また、導電体6は、本発明の「第1導電体」の一例である。
【0026】
また、導電体6は、マスク4の基板200側の表面4b(Z1方向側の面)に設けられているため、マスク4のノズル1側の表面4c(Z2方向側の面)は、接地されない。これにより、マスク4のノズル1側の表面4cは帯電する(電荷が蓄積される)ので、ノズル1から噴霧された溶液材料は、マスク4のノズル1側の表面4cに蓄積された電荷に反発されて、マスク4の開口部4a側に誘導される。
【0027】
また、本実施形態では、図5に示すように、導電体6は、平面視において、基板200のノズル1側の表面200aの薄膜の塗布領域210の外側に設けられている。具体的には、導電体6(枠状部6b)は、マスク4の開口部4aから所定の間隔Dを隔てたマスク4の外周側の部分に配置されている。
【0028】
また、図5に示すように、マスク4と基板200とを重ねた状態において、平面視において、導電体6と、基板200の端子209とが、オーバラップするように、導電体6がマスク4の表面4b(Z1方向側の面)に取り付けられている。そして、図1および図5に示すように、導電体6と、基板200の端子209とが、接触した状態(電気的に接続された状態)で、基板200の端子209と導電体6とを介して、基板200のノズル1側の表面200a(Z2方向側の面)が、接地される。具体的には、基板200のノズル1側の表面200a(Z2方向側の面)に設けられる薄膜トランジスタ201が、ソース線205aおよびゲート線202aと、基板200の端子209と、導電体6とを介して接地される。
【0029】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0030】
本実施形態では、上記のように、導電体6を介して、基板200のノズル1側の表面200aを、接地することによって、基板200のノズル1側の表面200aに電荷が帯電することを抑制することができるので、基板200のノズル1側の表面200aに帯電する電荷に起因して、基板200に設けられる素子(薄膜トランジスタ201)などが破壊されるのを抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態では、上記のように、薄膜の形成時に基板200のノズル1とは反対側に配置され、ノズル1との間に電位差を形成するためのアースプレート3を設けることによって、ノズル1とアースプレート3との間の電位差(電界)によってノズル1からアースプレート3に向かって溶液材料(液滴)を飛行(飛翔)させることができる。これにより、ノズル1とアースプレート3との間に配置される基板200に溶液材料(液滴)を堆積することができる。
【0032】
また、本実施形態では、上記のように、ノズル1と基板200との間の基板200の近傍に配置され、所定の開口パターンを有する開口部4aを含むマスク4を設けて、導電体6を、マスク4の基板200側の表面4bに取り付ける。これにより、マスク4とともに導電体6を移動させて導電体6を基板200のノズル1側の表面200aに接触させることができるので、マスク4および導電体6を個別に移動させる移動機構を設ける場合と異なり、エレクトロスプレー装置100の構成を簡略化することができる。また、導電体6を、マスク4の基板200側の表面4bに取り付けることによって、マスク4および導電体6を移動させる工程を同一の工程で行うことができるので、導電体6を設けたとしても、基板200への薄膜の堆積プロセスにおける工程数が増加するのを抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態では、上記のように、基板200は、絶縁性基板からなるとともに、基板200のノズル1側の表面200aには、端子209が設けられており、端子209と導電体6とを介して、基板200のノズル1側の表面200aを、接地する。これにより、導電体6を端子209に接触させるだけで、容易に、絶縁性の基板200のノズル1側の表面200aを、接地することができる。
【0034】
また、本実施形態では、上記のように、基板200を、薄膜トランジスタ201が表面200aに形成される半導体素子基板から構成して、基板200に薄膜トランジスタ201に電気的に接続されている端子209を設ける。これにより、導電体6を端子209に接触させることにより、薄膜トランジスタ201が導電体6を介して接地されるので、基板200のノズル1側の表面200aに帯電する電荷に起因して薄膜トランジスタ201が破壊されるのを容易に抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、上記のように、導電体6を、平面視において、基板200のノズル1側の表面200aの薄膜の塗布領域210の外側に設ける。これにより、接地のための導電体6を設けたとしても、薄膜の形成時に、導電体6が溶液材料の飛行の妨げになるのを抑制することができる。
【0036】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0037】
たとえば、上記実施形態では、導電体が、マスクの基板側の表面に取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図6に示す第1変形例によるエレクトロスプレー装置101のように、導電体7をマスク4には取り付けずに、マスク4と別個に配置してもよい。そして、導電体7を手動や移動機構(図示せず)により移動させて、基板200に接触させてもよい。なお、導電体7は、本発明の「第1導電体」の一例である。また、導電体7のその他の構成は、上記実施形態の導電体6(図3参照)と同様である。
【0038】
また、上記実施形態では、導電体が、枠状部と接触部とを含むように構成して、接触部をアースプレートに接触させることにより、導電体を接地する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、導電体をアースプレート以外の接地電位に接続するようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、導電体が、マスクの基板側の表面に、開口部を取り囲むように、枠状に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、導電体を枠状以外の形状に形成してもよい。たとえば、図7に示す第2変形例によるエレクトロスプレー装置102のように、基板211の表面に設けられる端子212が、開口部4aのY方向の両側(Y1方向、Y2方向)にのみ設けられる場合には、導電体8aおよび8bを、開口部4aのX方向の両側には設けずに、開口部4aのY方向の両側(Y1方向、Y2方向)にのみ設けてもよい。この場合、導電体8aおよび8bは、アースプレート3に接触することにより、それぞれ、接地される。なお、導電体8aおよび8bは、本発明の「第1導電体」の一例である。また、端子212は、本発明の「第2導電体」の一例である。
【0040】
また、上記実施形態では、導電体が、マスクの基板側の表面から基板側に突出するように設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図8に示す第3変形例によるエレクトロスプレー装置103のように、導電体9を、導電体9の表面9aとマスク4dの表面4eとが略面一になるように、マスク4dに埋め込むように構成してもよい。これにより、マスク4dと基板200との間に隙間が生じない状態で、基板200に薄膜を堆積することができる。なお、導電体9は、本発明の「第1導電体」の一例である。
【0041】
また、上記実施形態では、マスクに開口部が1つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、マスクに開口部が複数設けられていてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、基板の表面に薄膜トランジスタが設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、基板の表面に薄膜トランジスタ以外のダイオードなどの半導体素子が設けられていてもよい。また、薄膜トランジスタおよびダイオードなどの能動素子に限らず、抵抗、コンデンサなどの受動素子が基板の表面に設けられていてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、基板の表面上に、薄膜トランジスタに電気的に接続される端子(第2導電体)が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、基板の表面に、端子以外の透明電極などの導電体(第2導電体)が形成されていてもよい。この場合、透明電極に導電体(第1導電体)が接触することにより、透明電極が接地される。
【0044】
また、上記実施形態では、薄膜の形成時に、アースプレートが基板に接触して基板のノズルとは反対側の表面を接地することにより、ノズルとアースプレートとの間に電位差を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、アースプレート(プレート部材)を接地電位以外の電位にして、ノズルとアースプレートとの間に電位差を形成してもよい。そして、アースプレートを基板に接触させずに、基板と離間した状態で基板のノズルとは反対側に配置して、ノズルとアースプレートとの間に電位差を形成してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、溶液材料が下方から上方に向かってノズルから噴霧される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、溶液材料が上方から下方に向かってノズルから噴霧されるようにしてもよい。また、溶液材料が横方に向かってノズルから噴霧されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ノズル
3 アースプレート(プレート部材)
4、4b マスク
4a 開口部
4b 表面(基板側の表面)
6、7、8a、8b、9 導電体(第1導電体)
100、101、102、103 エレクトロスプレー装置
200、211 基板
200a 表面(ノズル側の表面)
200b 表面(ノズルとは反対側の表面)
201 薄膜トランジスタ(半導体素子)
209、212 端子(第2導電体)
210 塗布領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8