特許第6268013号(P6268013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6268013電極端子形状矯正装置及び電極端子形状矯正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268013
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】電極端子形状矯正装置及び電極端子形状矯正方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/30 20060101AFI20180115BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01M2/30 D
   H01M10/04 W
   H01M10/04 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-57331(P2014-57331)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-179642(P2015-179642A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】オートモーティブエナジーサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】青島 扶佐男
(72)【発明者】
【氏名】植木 泰久
(72)【発明者】
【氏名】波部 宏朗
(72)【発明者】
【氏名】山口 賢二
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−022847(JP,A)
【文献】 特開2001−246590(JP,A)
【文献】 特開平08−330795(JP,A)
【文献】 特開平06−314762(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0113494(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/008095(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池収容体に収容された二次電池の電極端子を挟み込むことが可能で、電池収容体側となる先端側ほど間隔が大きくなるよう形成された一対の矩形の金属板からなる複数のチャック部材と、
上記金属板の先端側の端部に取り付けられ上記電極端子を挟持可能な互いに対向する一対の挟持部材と、を有し、
上記チャック部材の先端側を閉じて上記一対の挟持部材によって上記電極端子を挟持する第1動作と、上記第1動作後に上記電極端子と上記挟持部材との接点を上記電極端子の先端側に徐々に変化させる第2動作と、上記第2動作後に上記チャック部材の先端側を開き上記電極端子を離す第3動作と、を行う形状矯正動作を複数回繰り返すことで、上記電極端子の形状を矯正することを特徴とする電極端子形状矯正装置。
【請求項2】
二次電池が収容された電池収容体への進退移動が可能なチャック駆動部と、
上記チャック駆動部とともに上記電池収容体への進退移動が可能で、かつ上記チャック駆動部に先だって上記電池収容体に向かう前進移動が規制されるチャック作動部と、を備え、
上記チャック駆動部は、電池収容体側となる前面に回転可能に並列に配置された一対のローラを複数有し、
上記チャック作動部は、上記一対のローラ間に挿入されて上記二次電池の電極端子を挟み込むことが可能な一対の矩形の金属板からなる複数のチャック部材を有し、
上記チャック部材は、電池収容体側となる先端側ほど上記金属板間の間隔が大きくなるよう形成されているとともに、先端側の端部に上記電極端子を挟持可能な互いに対向する一対の挟持部材を有し、
上記チャック駆動部の上記電池収容体に向かう前進移動による上記一対のローラの上記チャック部材先端側への移動より上記チャック部材の先端側を閉じて上記一対の挟持部材で上記電極端子を挟持する第1動作と、さらに上記チャック駆動部を上記電池収容体側に前進移動させることで上記電極端子と上記挟持部材との接点を上記電極端子の先端側に徐々に変化させる第2動作と、その後上記チャック駆動部を後退させて上記チャック部材の先端側を開き上記電極端子を離す第3動作と、を行う形状矯正動作を複数回繰り返すことで、上記電極端子の形状を矯正することを特徴とする電極端子形状矯正装置。
【請求項3】
上記電極端子の基端側から先端側に上記形状矯正動作を順次実施することを特徴とする請求項1または2に記載の電極端子形状矯正装置。
【請求項4】
上記一対の挟持部材は、互いに対向する挟持面が、上記チャック部材の先端側から基端側に沿って、対向する挟持面側に向かって凸となる円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極端子形状矯正装置。
【請求項5】
上記一対の挟持部材は、互いに対向する挟持面に、断面三角形状の突条が複数形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電極端子形状矯正装置。
【請求項6】
上記一対の挟持部材は、互いに対向する挟持面に、四角錐形状の複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電極端子形状矯正装置。
【請求項7】
電池収容体に収容された二次電池の電極端子を挟み込むことが可能で、電池収容体側となる先端側ほど間隔が大きくなるよう形成された一対の矩形の金属板からなる複数のチャック部材と、上記金属板の先端側の端部に取り付けられ上記電極端子を挟持可能な互いに対向する一対の挟持部材と、を用い、
上記チャック部材の先端側を閉じて上記一対の挟持部材によって上記電極端子を挟持する第1動作と、上記第1動作後に上記電極端子と上記挟持部材との接点を上記電極端子の先端側に徐々に変化させる第2動作と、上記第2動作後に上記チャック部材の先端側を開き上記電極端子を離す第3動作と、を行う形状矯正動作を複数回繰り返すことで、上記電極端子の形状を矯正することを特徴とする電極端子形状矯正方法。
【請求項8】
上記電極端子の基端側から先端側に上記形状矯正動作を順次実施することを特徴とする請求項7に記載の電極端子形状矯正方法。
【請求項9】
上記一対の挟持部材は、互いに対向する挟持面が、上記チャック部材の先端側から基端側に沿って、対向する挟持面側に向かって凸となる円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の電極端子形状矯正方法。
【請求項10】
上記一対の挟持部材は、互いに対向する挟持面に、断面三角形状の突条が複数形成されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の電極端子形状矯正方法。
【請求項11】
上記一対の挟持部材は、互いに対向する挟持面に、四角錐形状の複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の電極端子形状矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極端子形状矯正装置及び電極端子形状矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平なケース内から引き出された電極端子を有する板状の二次電池が知られている。このような薄型の二次電池は、複数回の充放電試験を実施した後に製品出荷される
例えば、特許文献1及び特許文献2には、一対の矩形の金属板からなる複数のチャック部材により、複数の薄型の二次電池の電極端子を挟持して、複数の二次電池の充放電試験を同時に行うようにした充放電試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−22847号公報
【特許文献2】特開2012−3959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1及び特許文献2に開示されるような従来の充放電試験装置においては、充放電試験前に二次電池の電極端子に曲がりなどの変形が生じている場合について十分な考慮がなされていない。
【0005】
そのため、充放電試験前に何らかの理由で二次電池の電極端子に曲がり等の変形が生じているような場合、充放電試験装置のチャック部材により二次電池の電極端子を挟持した際に、チャック部材に対する電極端子の接触が所期の接触状態に比べて十分なものとはならず、充放電試験に支障をきたしてしまう虞がある。
【0006】
つまり、二次電池を製造するにあたっては、電極端子が所期の形状に対して変形していないように、電極端子の変形を適宜矯正しつつ製造する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電極端子形状矯正装置は、電池収容体に収容された二次電池の電極端子を挟み込むことが可能で、電池収容体側となる先端側ほど間隔が大きくなるよう形成された一対の矩形の金属板からなる複数のチャック部材と、上記金属板の先端側の端部に取り付けられ上記電極端子を挟持可能な互いに対向する一対の挟持部材と、を有し、上記チャック部材の先端側を閉じて上記一対の挟持部材によって上記電極端子を挟持する第1動作と、上記第1動作後に上記電極端子と上記挟持部材との接点を上記電極端子の先端側に徐々に変化させる第2動作と、上記第2動作後に上記チャック部材の先端側を開き上記電極端子を離す第3動作と、を行う形状矯正動作を複数回繰り返すことで、上記電極端子の形状を矯正することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の電極端子形状矯正方法は、電池収容体に収容された二次電池の電極端子を挟み込むことが可能で、電池収容体側となる先端側ほど間隔が大きくなるよう形成された一対の矩形の金属板からなる複数のチャック部材と、上記金属板の先端側の端部に取り付けられ上記電極端子を挟持可能な互いに対向する一対の挟持部材と、を用い、上記チャック部材の先端側を閉じて上記一対の挟持部材によって上記電極端子を挟持する第1動作と、上記第1動作後に上記電極端子と上記挟持部材との接点を上記電極端子の先端側に徐々に変化させる第2動作と、上記第2動作後に上記チャック部材の先端側を開き上記電極端子を離す第3動作と、を行う形状矯正動作を複数回繰り返すことで、上記電極端子の形状を矯正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極端子が所期の形状に対して曲がっているような場合に、電極端子の曲がりを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】二次電池の斜視図。
図2】複数の二次電池が収容されたマガジンの斜視図。
図3】電極端子の形状矯正を行う工程を模式的に示した説明図。
図4】電極端子の形状矯正を行う工程を模式的に示した説明図。
図5】本発明に係る電極端子形状矯正装置の斜視図。
図6】本発明に係る電極端子形状矯正装置の斜視図。
図7】本発明に係る電極端子形状矯正装置の要部の拡大斜視図。
図8】形状矯正動作の第2動作を模式的に示した説明図であって、(A)は第2動作開始時、(B)は第2動作中、(C)は第2動作終了時の状態を示す。
図9】挟持部材の形状が異なる他の実施例における形状矯正動作の第2動作を模式的に示した説明図であって、(A)は第2動作開始時、(B)は第2動作中、(C)は第2動作終了時の状態を示す。
図10】挟持部材の形状が異なる他の実施例における形状矯正動作の第2動作を模式的に示した説明図であって、(A)は第2動作開始時、(B)は第2動作中、(C)は第2動作終了時の状態を示す。
図11】他の実施例における挟持部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、二次電池1の一例を模式的に示した説明図である。薄型の二次電池1は、例えば外装フィルムでシールされた平坦形状のリチウムイオン二次電池であり、扁平な長方形の外観形状を有し、長手方向の一方の端縁に一対の電極端子2a、2bを有している。
【0013】
図2は、複数の二次電池1が収容された電池収容体としてのマガジン11を示している。二次電池1の電極端子2の形状矯正は、マガジン11毎に実施する。
【0014】
マガジン11は、矩形板状の基台12と、基台12上の左右に設置された一対の側板13、14と、両側板13、14間に配置され二次電池1を収納する収納室(図示せず)を側板13と電池押圧板15との間に複数区画形成する複数枚の隔壁16と、一方の側板14側に配置された電池押圧板15と、隔壁16と電池押圧板15の四隅を貫通して側板13、14の四隅間に架設された4本のガイドステー17と、を備えている。隔壁16と電池押圧板15はガイドステー17に沿って移動可能となっている。
【0015】
電池押圧板15は、側面に形成された図示しない螺着部に、側板14を挿通する1本の調整ネジ18の一端側が螺着している。調整ネジ18を緩めると、側板13と電池押圧板15との間で各隔壁16がガイドステー17に沿って移動可能となり、各収容室内に二次電池1を1枚ずつ収容した後、調整ネジ18を締め付けると、電池押圧板15が各隔壁16を押圧、固定して、隔壁16の数に応じたマガジン11の電池収容幅Lが決定されるようになっている。
【0016】
二次電池1は、マガジン11に収容された状態で、充放電試験が実施される前の工程等の出荷前の工程で後述する本発明の電極端子形状矯正装置21によって電極端子2の形状矯正が実施される。
【0017】
図3に示すように、マガジン11は、コンベア22により電極端子形状矯正装置21前まで搬送される。電極端子形状矯正装置21前まで搬送されたマガジン11は、図4に示すように、リフター23により電極端子形状矯正装置21の正面位置まで上昇する。マガジン11が電極端子形状矯正装置21の正面位置まで上昇すると、電極端子形状矯正装置21は、電動モータを利用したスライド機構24により待機位置から形状矯正開始位置までマガジン11に向けて前進する。そして、上記形状矯正開始位置にて後述するエアシリンダ36を駆動して、マガジン11に収容されている二次電池1の電極端子2を把持し、後述する形状矯正動作を複数回繰り返して電極端子2の形状を矯正する。形状矯正動作による電極端子2の形状矯正が終了すると、電極端子形状矯正装置21はスライド機構24により上記形状矯正開始位置から上記待機位置まで後退し、マガジン11はリフター23により下降するとともに、コンベア22により電極端子形状矯正装置21前から次工程(例えば、二次電池の充放電試験工程)へ搬出される。
【0018】
図5図7は、電極端子形状矯正装置21を模式的に示した説明図であり、図5は正面側からみた斜視図であり、図6は背面側からみた斜視図、図7は電極端子形状矯正装置21の要部の拡大斜視図である。なお、説明の便宜上、図5図7において、電極端子形状矯正装置21の前後方向をX軸方向、電極端子形状矯正装置21の左右方向をY軸方向、電極端子形状矯正装置21の高さ方向をZ軸方向と定義する。
【0019】
電極端子形状矯正装置21は、支持基台31と、複動式のエアシリンダ36と、支持基台31に進退移動可能に取り付けられたチャック駆動部としてのローラ保持部材37及びチャック作動部としてのチャック保持部材41と、から大略構成されている。
【0020】
支持基台31は、前後左右上下に配した16本の支柱31a〜31pで構成された直方体形状の枠体であって、同一平面上に位置する3本の支柱31i〜31k上に、支持基台31の前後方向(X軸方向)の中央から後部側を塞ぐ支持板33が固定されている。
【0021】
エアシリンダ36は、支持基台31の前後方向(X軸方向)に伸縮するピストンロッド(図示せず)を有し、支持板33上の中央に取り付けられている。
【0022】
エアシリンダ36のケーシング36aには、上記ピストンロッドに沿ってその左右にそれぞれ1本の円柱状のガイド部材43が挿通している。両ガイド部材43、43と上記ピストンロッドの先端には、厚肉な板状の連結部材45が取り付けられている。
【0023】
連結部材45には、ローラ保持部材37を支持する長尺な平面視略コの字形状の支持ブラケット47が支持基台31の左右方向(Y軸方向)に亘って取り付けられている。支持ブラケット47の左右のフランジ49、49は支持基台31の前方へL字状に折曲されている。
【0024】
左右の両フランジ49、49間に支持基台31の左右方向(Y軸方向)架け渡された上下2本のシャフト51、53には、ローラ保持部材37の構成要素である複数の分割ローラ保持部材55が支持基台31の左右方向(Y軸方向)に並列に取り付けられている。
【0025】
分割ローラ保持部材55は、図7に示すように、上下2個の直方体形状のブロック部材63、65と、両ブロック部材63、65を連結する支持基台31の上下方向(Z軸方向)に沿って延びる1枚の連結プレート67と、両ブロック部材63、65に取り付けられた全体が略コの字形状の連結部材68と、から大略構成されている。
【0026】
ブロック部材63には、支持基台31の左右方向(Y軸方向)にシャフト51が挿通するようシャフト挿通穴69が形成されている。ブロック部材65には、支持基台31の左右方向(Y軸方向)にシャフト53が挿通するようシャフト挿通穴71が設けられている。両ブロック部材63、65の両側面にはシャフト挿通穴69、71が開口する筒状のスペーサ73が突設されている。
【0027】
連結部材68は、ブロック部材63、65の前面に一端側がネジ止めされた上下一対の支持基台31の前後方向(X軸方向)に沿って延びるアーム部75、75と、両アーム部75、75の他端に繋ぐ支持基台31の上下方向(Z軸方向)に沿って延びるローラ取付部81と、を有している。ローラ取付部81は、矩形状の開口部77、79が形成され、連結プレート67と対向配置される。両アーム部75、75は、ローラ取付部81に対して直交している。
【0028】
ローラ取付部81には、開口部77、79の上下に、それぞれ、一対のローラ取付ブラケット83、85が取り付けられている。各ローラ取付ブラケット83、85の先端側には、偶数個のローラ取付穴87が等間隔に設けられている。上下の各ローラ取付ブラケット83、85間のローラ取付穴87には、それぞれ、複数対(本実施例では上下にそれぞれ4対)のローラ89が回転可能に取り付けられている。
【0029】
分割ローラ保持部材55はこのように構成されており、本実施例では、2本のシャフト51、53に、8個の分割ローラ保持部材55がスペーサ73を介して並列に取り付けられ、支持ブラケット47に支持されている。また、左右のフランジ49の外周には、それぞれ断面L字状の連結ブラケット93が1つずつ取り付けられている。
【0030】
支持基台31の左右方向(Y軸方向)に沿って配置された上下2本のシャフト59、61には、チャック保持部材41の構成要素である複数の分割チャック保持部材57が支持基台31の左右方向(Y軸方向)に並列に取り付けられている。
【0031】
2本のシャフト59、61の両端には、それぞれ断面L字状の連結ブラケット107が一つずつ取り付けられている。
【0032】
連結ブラケット107及び連結ブラケット93は、支持基台31の左右に取り付けられたガイド部材109によってその上をすべり動くことで支持基台31の前後方向(X軸方向)へ移動可能に保持されている。一方のガイド部材109は、支持基台31の支柱31g、31l、31i間に取り付けられたプレート111に支持され、他方のガイド部材109は、支持基台31の支柱31h、31j、31m間に取り付けられたプレート113で支持されている。また、連結ブラケット107には、支持基台31の前後方向(X軸方向)に沿って延びる、上下に並んだ2つのシャフト挿通穴115が形成されている。両シャフト挿通穴115には、連結ブラケット93に互いに平行に取り付けられた2本のシャフト117、117の先端が挿入される。両シャフト117、117には、それぞれコイルスプリング39が巻装されている。
【0033】
分割チャック保持部材57は、分割ローラ保持部材55とユニット化されて対をなしている。つまり、ローラ保持部材37とチャック保持部材41は全体として1つのチャックユニットを構成している。
【0034】
このような分割チャック保持部材57は、ローラ取付部81に沿って、両アーム部75、75間に配置された厚肉な板状のチャック取付部材95と、チャック取付部材95前面の上下に、各対のローラ89に対応して複数個(本実施例では、上下にそれぞれ4個)並設されたチャック部材101と、から大略構成されている。
【0035】
チャック取付部材95には、支持基台31の左右方向(Y軸方向)にシャフト59、61が挿通するようシャフト挿通穴97、99が形成されている。
【0036】
チャック部材101は、一例としてベリリウム銅等の比較的硬いバネ性を有する2枚1組の短冊状の金属板103、105からなっている。2枚の金属板103、105の後端側は、互いに重ね合わされ、チャック取付部材95に形成された貫通穴(図示せず)を貫通している。チャック取付部材95の背面から突出した金属板103、105の後端は、それぞれチャック取付部材95の背面に沿ってL字状に折曲されて当該背面にネジ止めされている。
【0037】
そして、チャック取付部材95の前側に突出するチャック部材101(金属板103、105)毎に対応して一対のローラ89、89が配置されており、各対のローラ89、89間に各対の金属板103、105が挿通している。
【0038】
一対のローラ89、89間を挿通する一対の金属板103、105は、先端側(103a、105a)は平面視略V字状に拡開しているとともに、先端部(103b、105b)がやや内方へ折曲されており、概して先端側ほど一対の金属板103、105間の間隔が大きくなるよう形成されている。なお、二次電池1の製造時に生じる可能性がある電極端子2の変形の最大変形量は、過去の実績から既知であるので、金属板103、105の先端部(103b、105b)の間隔は、この電極端子2がこの最大変形量であっても挿入可能となるように設定されている。
【0039】
一対の金属板103、105の先端部(103b、105b)には、それぞれ金属製の挟持部材108、108が取り付けられている。つまり、チャック部材101の先端部(103b、105b)には、二次電池1の電極端子2を挟持可能な互いに対向する一対の挟持部材108、108が取り付けられている。
【0040】
挟持部材108は、金属板103の先端部103bまたは金属板105の先端部105bに貫通形成された取付穴(図示せず)にかしめ固定する脚部108aと、脚部108aに一体形成された平面視矩形板状の厚肉な頭部108bと、を有している。
【0041】
本実施例における挟持部材108の頭部108bは、二次電池1の電極端子2を挟持可能な挟持面108c(図8参照)が、チャック部材101の先端側から基端側に沿って(X軸方向に沿って)、対向する電極端子2側(対向する挟持部材108側)に向かって凸となる円弧形状に形成されている。
【0042】
分割チャック保持部材57は、このように構成されており、本実施例では、2本のシャフト59、61に、8個の分割チャック保持部材57が並列に取り付けられて、チャック保持部材41が構成されている。
【0043】
図5及び図6に示すようにエアシリンダ36の上記ピストンロッドが後方へ縮退しているとき、チャック保持部材41がコイルスプリング39のバネ力でローラ保持部材37の前方へ離間配置されている。
【0044】
エアシリンダ36が駆動して上記ピストンロッドが前方へ伸長すると、ローラ保持部材37とチャック保持部材41が共に前方へ移動するが、チャック保持部材41の左右外周に取り付けられた連結ブラケット107が支持基台31の左右の支柱31l、31mに達すると、連結ブラケット107が両支柱31l、31mに当接して、チャック保持部材41の前方への移動が規制されるようになっている。
【0045】
また、図5に示すように、支持基台31の支柱31a、31b間の中央にも、1本の支柱31pが支持基台31の上下方向(Z軸方向)に架け渡されており、上述の如く左右の連結ブラケット107が支柱31l、31mに当接すると同時に、支柱31pにシャフト59、61が当接してチャック保持部材41の前方への移動が規制されるようになっている。
【0046】
このようにチャック保持部材41の前方への移動が規制されたとき、チャック部材101は支持基台31の前方へ突出している。
【0047】
チャック保持部材41の前方への移動が規制されても、エアシリンダ36の駆動に何ら支障を来すことはなく、上記ピストンロッドは更に伸長するため、左右のコイルスプリング39のバネ力に抗してローラ保持部材37は更に前方へ移動し、これに伴い各対のローラ89が前方へ移動し、平面視略V字状に拡開している各チャック部材101の一対の金属板103、105がそれぞれ閉じられて、一対の金属板103、105の先端部(103b、105b)に取り付けられる一対の挟持部材108、108によって、二次電池1の電極端子2の挟持が可能となる。
【0048】
ここで、一対の挟持部材108、108によってそれまで挟持されていなかった二次電池1の電極端子2が、ローラ保持部材37の前方への移動により挟持されたときのローラ保持部材37の支持基台31前後方向(X軸方向)に沿った位置を挟持開始位置とする(図8(A))。
【0049】
本実施例では、ローラ保持部材37を上記挟持開始位置よりもさらに前進移動させることで、ローラ89、89が当接するので、一対の金属板103、105を弾性変形させ、図8(B)と図8(C)に示すように、一対の挟持部材108、108の各頭部108b、108bと二次電池1の電極端子2との接点を、電極端子2の先端側(電極端子形状矯正装置21側)に徐々に移動させる。チャック部材101を構成する一対の金属板103、105の硬さや先端側(103a、105a)のV字状の拡開角度やこの位置の反り具合及び先端側(103a、105a)に続く先端部(103b、105b)の先端側(103a、105a)に対してなす角度といった形状等を適宜設定することで、ローラ保持部材37を上記挟持開始位置よりも前進させた際に、図8に示すように、一対の挟持部材108、108の各頭部108b、108bと二次電池1の電極端子2との接点を、電極端子2の先端側(電極端子形状矯正装置21側)に徐々に移動させることが可能となる。
【0050】
そこで、チャック保持部材41の前方への移動が規制されてからのローラ保持部材37の前進移動に伴う一対のローラ89、89のチャック部材101先端部(103b、105b)側への移動によりチャック部材101の先端側を閉じて一対の挟持部材108、108で電極端子2を挟持する第1動作と、第1動作後、電極端子2が一対の挟持部材108、108によって挟持された状態からローラ保持部材37をさらに前進移動させることで一対の挟持部材108、108と電極端子2との接点を電極端子2の先端側(電極端子形状矯正装置21側)に徐々に移動させる第2動作と、第2動作後にローラ保持部材37を後退させてチャック部材101の先端側を開く電極端子2を離す第3動作と、を行う形状矯正動作を複数回(例えば5回)繰り返す。
【0051】
具体的には、電極端子2の基端側から先端側に順次位置を変更しながら、それぞれの位置で複数回形状矯正動作を実施する。例えば、支持基台31前後方向(X軸方向)に沿った5箇所で形状矯正動作による電極端子2の形状矯正をする場合、1回目の形状矯正動作を相対的に電極端子2の最も基端側で実施し、以降徐々に電極端子2の先端側に移動して形状矯正動作を実施し、5回目の形状矯正動作を相対的に電極端子2の最も先端側で実施する。
【0052】
なお、第3動作においては、ローラ保持部材37が上記挟持開始位置に戻るまでは、一対の挟持部材108、108と二次電池1の電極端子2との接点が、電極端子2の先端側から基端側に徐々に変化し、ローラ保持部材37が上記挟持開始位置よりも後退すると、一対の挟持部材108、108による電極端子2の挟持が終了する。つまり、第3動作は、第1、第2動作の逆方向の動きになる。
【0053】
このように、一対の挟持部材108、108で二次電池1の電極端子2を挟持する際の打撃と、挟持後の一対の挟持部材108、108と二次電池1の電極端子2との接点を電極端子2の先端側(電極端子形状矯正装置21側)に徐々に移動するように一対の挟持部材108、108による二次電池1の電極端子2の挟持の仕方を変化させることと、を行う形状矯正動作を複数回繰り返すことによって、二次電池1の電極端子2が所期の形状に対して変形しているような場合には、電極端子2の形状が所期の形状となるように精度良く矯正することが可能となる。
【0054】
すなわち、電極端子2が所期の形状に対して曲がっているような場合に、形状矯正動作を複数回実施することで電極端子2の曲がりを精度良く矯正することができる。特に、電極端子2の基端側から先端側に順次位置を変更しながら複数回の形状矯正動作を実施するようにすれば、電極端子2の形状をより一層精度良く矯正することができる。
【0055】
挟持部材108の頭部108bは、二次電池1の電極端子2と対向する挟持面108cが対向する電極端子2側に向かって凸となる円弧形状に形成されているので、第2動作において、挟持部材108と電極端子2とが常に一点で接触した状態を維持することができ、電極端子2の形状をより効果的に矯正することができる。
【0056】
なお、挟持部材108の形状は、上述した実施例の形状に限定されるものではなく、図9に示すように、頭部108bの頂部たる挟持面108cを円弧形状とし、さらにこの挟持面108cにローラ保持部材37及びチャック保持部材41の進退方向(X軸方向)に対して直交する断面三角形状の突条108dを複数形成するようにしてもよい。この場合にも、第2動作において、挟持部材108と電極端子2とが常に一点で接触した状態を維持することができ、電極端子2の形状をより効果的に矯正することができる。
【0057】
また、図10に示すように、頭部108bの頂部たる挟持面108cを平面状とし、さらにこの挟持面108cにローラ保持部材37及びチャック保持部材41の進退方向(X軸方向)に対して直交する断面三角形状の突条108dを複数形成するようにしてもよい。
【0058】
あるいは、図11に示すように、頭部108bの頂部たる挟持面108cを平面状とし、この挟持面108cに四角錐形状の複数の突起108eを形成するようにしてもよい。挟持面108cに四角錐形状の複数の突起108eを複数形成する場合、挟持面面108cを、対向する電極端子2側に向かって凸となる円弧形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…二次電池
2…電極端子
11…マガジン
21…電極端子形状矯正装置
31…支持基台
36…エアシリンダ
37…ローラ保持部材
41…チャック保持部材
55…分割ローラ保持部材
57…分割チャック保持部材
95…チャック取付部材
101…チャック部材
103…金属板
105…金属板
108…挟持部材
108a…脚部
108b…頭部
108c…挟持面
108d…突条
108e…突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11