【実施例1】
【0016】
図1ないし
図5は、本発明の実施例1による工作機械のチップコンベアを説明するための図である。本実施例において、前,後,左,右と記す場合は、機械正面から見た状態での前,後,左,右を意味する。
【0017】
図において、1は本実施例のチップコンベアを示している。このチップコンベア1は、主として、工作機械(不図示)によるワークの機械加工により発生した切屑aがワーク加工部に供給された切削液bと共に落下する切屑落下口2aと、前記切屑が搬出される切屑搬出口2bとを有するケーシング2と、該ケーシング2内に前記切屑落下口2aから切屑搬出口2bに渡るように配設された切屑搬送機構3とを備えている。
【0018】
前記切屑搬送機構3は、前記切屑落下口2aから落下した切屑aを、該切屑aから前記切削液bを分離させつつ切屑搬出口2bに搬送し、該切屑搬出口2bから機外に排出するように構成されている。この切屑搬出口2bの下方には切屑を回収するバケット(不図示)が配置されている。
【0019】
前記ケーシング2は、機械正面Aから見て、前後方向に延びる大略矩形箱状をなしており、手前側に配設され、切屑落下口2aから落下した切削液bを所定水位となるよう貯留する貯留部5と、該貯留部5に続いて後斜め上方に立ち上がるよう延びる搬送ダクト6と、該搬送ダクト6の上端部に続いて下方に延びる排出ダクト7とを有する。
【0020】
前記貯留部5は、略平坦面をなす底壁部5aと、該底壁部5aの左右縁から立ち上がる左右の側壁部5b,5bと、該側壁部5b,5bの上端間に架設された天壁部5cとを有する。この天壁部5cの手前側部分に前記切屑落下口2aが形成されている。なお、前記搬送ダクト6及び排出ダクト7についても前記貯留部5と略同様の構造となっている。
【0021】
前記切屑搬送機構3は、前記搬送ダクト6と排出ダクト7との境界部分に配置された左,右一対の駆動スプロケット8,8と、前記貯留部5内の手前側部分に配置された左,右一対のガイド部材9,9と、該左,右のガイド部材9,9と左,右の駆動スプロケット8,8にそれぞれ環状をなすように巻回された左,右の駆動チェン10,10と、該左,右の駆動チェン10,10に所定間隔をあけて架け渡して固定された多数の掻き板11とを有する。ここで、符号13及び14は、駆動チェン10のばたつきを防止するとともに、張力を調整するチェンガイドである。
【0022】
前記左,右の駆動スプロケット8,8は駆動軸8aに固定されており、該駆動軸8aは駆動モータ12により回転駆動される。
【0023】
前記貯留部5と搬送ダクト6との境界部分には、ドラムフィルタ15が配設されている。このドラムフィルタ15は、切削液bのみ通過させ、切屑aの通過を阻止する大きさの微細孔(不図示)が多数形成されたフィルタ本体15aと、該フィルタ本体15aに固定され、前記を駆動チェン10により回転駆動される回転ギヤ15bとを有する。このフィルタ本体15a内に流入した切削液bは不図示のろ過装置を経て工作機械のワーク加工部に再度供給される。
【0024】
前記各掻き板11は、板金製又は樹脂製のものであり、後述する仕切り板17の上面に当接し、かつ搬送方向(反時計回り)Aに対して前傾姿勢をなすよう形成された正転掻き出し部11aと、該正転掻き出し部11aに続いて屈曲形成され、前記ケーシング2の底壁部5aの上面に当接し、かつ前記搬送方向Aと逆方向(時計回り)Bに対して前傾姿勢をなすよう形成された逆転掻き出し部11bとを有する。
【0025】
前記ケーシング2内には、該ケーシング2内を底壁部5a側と天壁部5c側とに上下に仕切る前記仕切り板17が配設されている。この仕切り板17は、金属製平板を多数並べて連結することにより形成されており、前記環状の駆動チェン10の下側部10aと上側部10bとの間に、かつ該上側部10bに近接するように配置されている。
【0026】
前記仕切り板17は、前記ケーシング2の左,右側壁部5b,5b内面にスペーサ18,18を介して取り付けられた略L字形状の左,右ブラケット19,19にボルト締め固定されている。
【0027】
前記仕切り板17の切屑落下口2aの下方部分には、開口17aが形成されており、該開口17aには蓋板20が仕切り板17と連続面をなすように、かつ開閉可能に配設されている。前記開口17aは、前記切屑落下口2aと大略同じ面積を有し、前記蓋板20は複数本のボルト22により前記左,右ブラケット19に取り外し可能に取り付けられている。
【0028】
前記蓋板20は、前記隣接する掻き板11′,11′同士の間から切屑落下口2aを通して外部に取り出し可能となっている。前記蓋板20を取り付けることで前記仕切り板17の切屑落下口2a下方部分は閉状態となり、蓋板20を取り外すことにより前記仕切り板17の切屑落下口2a下方部分は開状態となる。
【0029】
そして前記切屑搬送機構3では、前記蓋板20が閉状態にあるときは、各掻き板11をA方向に、つまり仕切り板17上の切屑aを搬送ダクト6内を通って切屑搬出口2bに搬送可能の方向に移動させ、開状態にあるときは、各掻き板11を前記A方向と逆のB方向に、つまり底壁部5a上の切屑を搬送ダクト6内を通って切屑搬出口2bに搬送可能の方向に移動させるように駆動モータ12の回転方向が切替え制御される。
【0030】
例えば、機械加工により発生した切屑aが比較的長い場合は、蓋板20を取り付けて閉状態とする。この切屑a及びワーク加工部に供給された切削液bが切屑落下口2aから仕切り板17の蓋板20上に落下する。駆動モータ12により左,右の駆動チェン10が反時計回りであるA方向に回転駆動され、各掻き板11の正転掻き出し部11aが蓋板20及び仕切り板17の上面に当接しつつ移動し、切屑を搬送ダクト6を介して連続的に切屑搬出口2bに搬送し、排出ダクト7から機外に排出する。この場合、切屑a及び切削液bが搬送ダクト6内を上昇する間に切屑aに付着した切削液bは自重により貯留部5に流下する。また貯留部5内の切削液bは、ドラムフィルタ15により回収され、浄化された後、再びワーク加工部に供給される。
【0031】
一方、切屑が微細切粉の場合は、蓋板20を取り外して開状態とする。この微細切粉及び切削液がケーシング2内に落下し、微細切粉が切削液中を浮遊しつつケーシング2の底壁部5a上に沈殿する。左,右の駆動チェン10が時計回りであるB方向に回転駆動され、各掻き板11の逆転掻き出し部11bが底壁部5aの上面に当接しつつ移動し、微細切粉を搬送ダクト6を介して連続的に切屑搬出口2bに搬送する。
【0032】
ここで、切削液中に浮遊する微細切粉の一部は、ドラムフィルタ15周りに溜まり易く、目詰まりの原因となる。この場合、A方向のみの運転では、ドラムフィルタ15に溜まった微細切粉を除去することが困難であるが、逆のB方向に運転することにより除去することが可能となる。
【0033】
本実施例によれば、ケーシング2内を上下に仕切る仕切り板17の切屑落下口2aの下方部分を蓋板20により開閉可能とし、該蓋板20を取り付けて閉状態とした場合は搬送方向をA方向とし、蓋板20を取り外して開状態とした場合は逆のB 方向としたので、仕切り板17の蓋板20が閉状態では、仕切り板17の蓋板20上に落下した切屑aを各掻き板11の正転掻き出し部11aにより搬出する。一方、蓋板20を取り外して開状態としたときには、切屑が仕切り板17の開口17aを通ってケーシング2の底壁部5aに直接落下することとなり、底壁部5aに浮遊沈殿する切屑を仕切り板17を介さずに搬出することとなる。
【0034】
このように本実施例では、切屑搬送機構3の駆動モータ12の回転方向を切り換えるだけで仕切り板17上に落下した切屑の搬出と、ケーシング2の底壁部5aに浮遊する切屑の搬出とを行なうことができる。これにより加工するワークの材質等を考慮したチップコンベアの選別を不要にでき、ひいてはタイプ別にチップコンベアを製作する必要はなく、その結果、コストの低減が可能となる。
【0035】
本実施例では、前記仕切り板17の切屑落下口2aの下方に配設された蓋板20を着脱可能とし、該蓋板20を隣接する掻き板11′,11′同士の間から切屑落下口2aを介して機外に取り出し可能としたので、切屑落下口下方部分の開閉作業を容易確実に行なうことができる。
【実施例2】
【0036】
図6(a)〜(c)は、それぞれ本発明の実施例2による蓋板の開閉状態を示す図である。図中、
図2と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0037】
本実施例は、仕切り板17のケーシング2の切屑落下口2aの下方の開口17aに配置された蓋板20を、前記仕切り板17の蓋板20に隣接する部分17′の下側に位置するようにスライド可能とした例である。
【0038】
前記仕切り板17の隣接部分17′の下側には、蓋板20をスライド可能に案内支持するレール部材25が取り付けられている。開状態とする場合は、ボルトを取り外して蓋板20をレール部材25上にスライドさせて該レール部材25に固定する。
【0039】
本実施例では、仕切り板17の切屑落下口2a下方に配設された蓋板20を、該仕切り板17に隣接する部分17′の下側に位置するようにスライド可能としたので、蓋板20を機外に取り出すことなく仕切り板17の切屑落下口下方部分を容易確実に開閉することができる。