特許第6268045号(P6268045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日阪製作所の特許一覧

<>
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000002
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000003
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000004
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000005
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000006
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000007
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000008
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000009
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000010
  • 特許6268045-プレート式熱交換器 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268045
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 9/02 20060101AFI20180115BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20180115BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   F28D9/02
   F28F3/08 311
   F28F9/22
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-121313(P2014-121313)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-1082(P2016-1082A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 信雄
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−229880(JP,A)
【文献】 特表2005−509514(JP,A)
【文献】 特開2002−303499(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0109798(US,A1)
【文献】 特開平05−172478(JP,A)
【文献】 特開平02−166389(JP,A)
【文献】 特開2015−121335(JP,A)
【文献】 特開2015−137844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 9/00−9/02
F28F 3/00−3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の伝熱プレートを含む本体部を備え、本体部は、第一流体を流通させる複数の第一流路であって、それぞれが隣り合う伝熱プレートによって画定され、複数の伝熱プレートの積層方向に並ぶ複数の第一流路と、第二流体を流通させる複数の第二流路であって、それぞれが隣り合う伝熱プレートによって画定され、伝熱プレートを介して第一流路と隣り合った状態で前記積層方向に並ぶ複数の第二流路と、前記積層方向における途中位置に配置され、第一流体の流通経路の分岐の基準となる分岐基準流路であって、隣り合う伝熱プレートによって画定された少なくとも一つの分岐基準流路と、前記積層方向に延び、該積層方向における当該本体部の一端に第一流体の入口となる始端を有するとともに、前記積層方向における途中位置に終端を有する第一流入路であって、前記分岐基準流路と連通し、該分岐基準流路に気液混合状態の第一流体を流入させる第一流入路と、前記積層方向に延びる第一流出路であって、第一流路から第一流体を流出させる第一流出路と、前記積層方向に延びる第二流入路であって、第二流路に第二流体を流入させる第二流入路と、前記積層方向に延びる第二流出路であって、第二流路から第二流体を流出させる第二流出路と、それぞれが分岐基準流路に連通した始端を有するとともに、前記積層方向における当該本体部の他端側に延びて異なる第一流路に直接的又は間接的に連通する終端を有する二つ以上の一次分岐流路とを備え、該一次分岐流路の終端に連通した第一流路は、第一流出路に対して直接的又は間接的に連通していることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記本体部は、前記分岐基準流路を二つの領域に区切る区画部を備え、前記第一流入路及び前記二つ以上の一次分岐流路は、前記二つの領域のうちの一方の領域と連通している請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記一方の領域は、前記二つの領域のうちの他方の領域よりも小さい請求項2に記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記二つの領域のうちの他方の領域は、第一流路又は第二流路の何れか一方を構成している請求項2又は3に記載のプレート式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数の伝熱プレートを含む本体部を備えたプレート式熱交換器に関する。具体的には、本発明は、複数の伝熱プレートが積層されることによって、本体部内に第一流体を流通させる第一流路と第二流体を流通させる第二流路とが伝熱プレートを介して隣り合わせに配置されたプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第一流体と第二流体とを熱交換させる熱交換器として、図9に示す如く、積層された複数の伝熱プレート100…を含む本体部101を備えたプレート式熱交換器が提供されている。
【0003】
この種のプレート式熱交換器において、本体部101は、図10に示す如く、第一流体Aを流通させる第一流路102と、第二流体Bを流通させる第二流路103とを有する。第一流路102及び第二流路103は、伝熱プレート100を介して隣り合わせに配置される。一般的に、第一流路102及び第二流路103は、伝熱プレート100を境にして複数の伝熱プレート100…の積層方向(以下、単に積層方向という)に交互に配置される。
【0004】
これに伴い、本体部101は、第一流路102のみに連通する第一流入路104であって、外部から流入した第一流体Aを第一流路102に流入させる第一流入路104と、第一流路102のみに連通する第一流出路105であって、第一流路102から流入した第一流体Aを外部に流出させる第一流出路105と、第二流路103のみに連通する第二流入路106であって、外部から流入した第二流体Bを第二流路103に流入させる第二流入路106と、第二流路103のみに連通する第二流出路107であって、第二流路103から流入した第二流体Bを外部に流出させる第二流出路107とを有する。
【0005】
この種のプレート式熱交換器において、一般的に、第一流入路104及び第一流出路105は、積層方向に真っ直ぐに延びており、複数の第一流路102…の全てに連通している。すなわち、第一流入路104及び第一流出路105は、積層方向で本体部101の全長に亘って形成されている。
【0006】
そして、第一流入路104は、積層方向における本体部101の何れか一端に入口を有し、第一流出路105は、積層方向における本体部101の何れか一端に出口を有する。また、第二流入路106は、積層方向における本体部101の何れか一端に入口を有し、第二流出路107は、積層方向における本体部101の何れか一端に出口を有する。
【0007】
これにより、第一流体Aは、第一流入路104、第一流路102、第一流出路105の順に流通するとともに、第二流体Bは、第二流入路106、第二流路103、第二流出路107の順に流通する。これに伴い、第一流路102を流通する第一流体A及び第二流路103を流通する第二流体Bは、伝熱プレート100を介して互いに熱交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−326074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、この種のプレート式熱交換器では、積層される伝熱プレート100…の数が多くなると、熱交換に寄与する伝熱面積が広くなり、熱交換性能が高くなるとされている。
【0010】
しかしながら、伝熱プレート100…の数が多くなると、積層方向に延びる第一流入路104、第一流出路105、第二流入路106、及び第二流出路107の長さが、積層される伝熱プレート100…の数に応じて長くなってしまう。
【0011】
その結果、第一流入路104における第一流体Aの流通抵抗が大きくなり、第一流体Aが流通し難くなる。そのため、この種のプレート式熱交換器では、第一流入路104の入口側にある第一流路102への第一流体Aの流入と、第一流入路104の奥側にある第一流路102への第一流体Aの流入とが不均一になり、複数の第一流路102…に対する第一流体Aの分配ムラが生じるといった問題がある。
【0012】
特に、第一流体Aが冷媒のような相変化するもの(熱交換に伴って気体と液体とに状態変化するもの)である場合、第一流体Aが気液混合状態(二相状態)で第一流入路104に供給されると、第一流体Aにおける慣性の大きな液体(気体よりも比重の大きな液体)が第一流入路104における奥側と連通する第一流路102に流入する割合が高く、第一流体Aにおける慣性の小さな気体(液体よりも比重の小さな気体)が第一流入路104の入口側と連通する第一流路102に流入する割合が高くなってしまう。
【0013】
そのため、この種のプレート式熱交換器では、積層方向における位置によって熱交換効率が異なってしまうといった問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、複数の第一流路のそれぞれに第一流体を均質な状態で供給でき、全体における熱交換の均衡を図ることのできるプレート式熱交換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るプレート式熱交換器は、積層された複数の伝熱プレートを含む本体部を備え、本体部は、第一流体を流通させる複数の第一流路であって、それぞれが隣り合う伝熱プレートによって画定され、複数の伝熱プレートの積層方向に並ぶ複数の第一流路と、第二流体を流通させる複数の第二流路であって、それぞれが隣り合う伝熱プレートによって画定され、伝熱プレートを介して第一流路と隣り合った状態で前記積層方向に並ぶ複数の第二流路と、前記積層方向における途中位置に配置され、第一流体の流通経路の分岐の基準となる分岐基準流路であって、隣り合う伝熱プレートによって画定された少なくとも一つの分岐基準流路と、前記積層方向に延び、該積層方向における当該本体部の一端に第一流体の入口となる始端を有するとともに、前記積層方向における途中位置に終端を有する第一流入路であって、前記分岐基準流路と連通し、該分岐基準流路に気液混合状態の第一流体を流入させる第一流入路と、前記積層方向に延びる第一流出路であって、第一流路から第一流体を流出させる第一流出路と、前記積層方向に延びる第二流入路であって、第二流路に第二流体を流入させる第二流入路と、前記積層方向に延びる第二流出路であって、第二流路から第二流体を流出させる第二流出路と、それぞれが分岐基準流路に連通した始端を有するとともに、前記積層方向における当該本体部の他端側に延びて異なる第一流路に直接的又は間接的に連通する終端を有する二つ以上の一次分岐流路とを備え、該一次分岐流路の終端に連通した第一流路は、第一流出路に対して直接的又は間接的に連通していることを特徴とする。
【0016】
上記構成のプレート式熱交換器によれば、第一流路又は第二流路の何れか一方が、第一流路又は第二流路の何れか他方を挟んで配置される。そして、第一流入路が伝熱プレートの積層方向の途中位置にある分岐基準流路だけに連通している。従って、第一流入路は、伝熱プレートの積層方向における途中位置までにしか形成されず、伝熱プレートの積層方向で本体部の全長に亘って形成される従来の第一流入路よりも流路長が短くなる。これにより、第一流入路での第一流体の圧力損失の増大を抑えることができる。
【0017】
各一次分岐流路の終端が異なる第一流路と連通することで、本体部内には、分岐基準流路を始端とする第一流体の流通経路が二系統以上形成される。従って、第一流入路から第一流出路に至るまでの第一流体の流路の長さ(一系統当りの流路長)が短くなる。これにより、上記構成のプレート式熱交換器では、第一流体の流路全体での圧力損失の増大を抑えることができ、高い熱交換性能を得ることができる。
【0018】
さらに、上記構成のプレート式熱交換器は、二つ以上の一次分岐流路のそれぞれが、同一の分岐基準流路を基準にして前記積層方向における当該本体部の他端側に延びているため、供給される第一流体が気液混合状態であっても、気液比(気体と液体の割合)を異にした第一流体が各一次分岐流路に流入することを抑制することができる。
【0019】
例えば、二つ以上の一次分岐流路のうち何れかが分岐基準流路から本体部における他端側に延びるように形成され、残りの一次分岐流路が分岐基準流路から本体部における一端側に延びるように形成された場合、本体部の他端側に延びる一次分岐流路における第一流体の流通方向は、第一流入路における第一流体の流通方向と同じ方向になるのに対し、本体部の一端側に延びる一次分岐流路における第一流体の流通方向は、分岐位置である分岐基準流路で切り替わって第一流入路における第一流体の流通方向と反対向きになる。
【0020】
これに伴い、第一流体が気液混合状態で第一流入路に供給されると、各一次分岐流路に気体と液体の割合を異にした第一流体が流入してしまう。具体的に説明すると、液体は気体よりも比重が大きいため、流通時の慣性エネルギーの影響を受けやすい。そのため、分岐基準流路に流入した第一流体のうち液体の部分は、慣性エネルギーの影響で直進しようとし、第一流体の流通方向が第一流入路における第一流体の流通方向と同じ方向になる一次分岐流路に積極的に流入してしまう。
【0021】
そのため、分岐基準流路に流入した第一流体の気体の部分は、第一流入路における第一流体の流通方向と同じ方向になる一次分岐流路への流入が該第一流体の液体の部分に阻まれた状態になり、第一流体の流通方向が第一流入路における第一流体の流通方向と反対向きになる一次分岐流路に流入する。その結果、複数の第一流路のそれぞれに、異なった気液比(気体と液体との比)の第一流体が流入することになり、複数の第一流路の位置によって第一流体と第二流体との熱交換状態が異なってしまう。
【0022】
しかし、本発明に係るプレート式熱交換器は、二つ以上の一次分岐流路のそれぞれが、同一の分岐基準流路を基準に前記積層方向における当該本体部の他端側に延びている(同方向に延びている)ため、全ての一次分岐流路における第一流体の流通方向が第一流入路における第一流体の流通方向と一致する。
【0023】
これにより、慣性エネルギーの影響を受けて直進しようとする第一流体の液体の部分が、全ての一次分岐流路に流入し、該第一流体の残りの気体の部分も全ての一次分岐流路に流入する。その結果、複数の第一流路のそれぞれに、同一又は略同一の気液比の第一流体(均質な第一流体)が流入することになるため、複数の第一流路のそれぞれで流通する第一流体と、複数の第二流路のそれぞれで流通する第二流体とをバランスよく熱交換させることができる。
【0024】
本発明の一態様として、前記本体部は、前記分岐基準流路を二つの領域に区切る区画部を備え、前記第一流入路及び前記二つ以上の一次分岐流路は、前記二つの領域のうちの一方の領域と連通していてもよい。
【0025】
このようにすれば、区画部によって区画された領域は、区画部によって区画されていない状態の全体領域の大きさよりも小さい。これにより、気液混合状態で流入してきた第一流体の気体の部分や、液体の部分が蒸発によってガス化した気体が分岐基準流路で溜まることを抑制でき、熱交換性能を高めることができる。
【0026】
具体的に説明すると、第一流体の気体の部分(ガス)は、第二流体との熱交換性能が低い。そのため、第一流体の気体が第一流路内に滞留すると、そのガスの滞留した領域では第二流体とほとんど熱交換が行われず、熱交換効率が低下する傾向にある。
【0027】
しかし、本発明において、区画部によって区切られることで区画されていない状態の領域よりも小さくなった一つの領域に、前記第一流入路及び前記二つ以上の一次分岐流路が集約されて連通しているため、第一流入路から各一次分岐路までの距離が短くでき、分岐位置での第一流体の気体(ガス)の占有(滞留)を抑制できる。
【0028】
この場合、前記一方の領域は、前記二つの領域のうちの他方の領域よりも小さいことが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、一方の領域は第一流体の流路を分岐させるために必要な大きさに抑えることができ、第一流体の気体の部分(ガス)の滞留をより効果的に抑制できる。
【0030】
また、前記二つの領域のうちの他方の領域は、第一流路又は第二流路の何れか一方を構成していることが好ましい。
【0031】
このようにすれば、区画部によって区画された他方の領域において、熱交換させる機会を増やすことができ、熱交換効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、複数の第一流路のそれぞれに第一流体を均質な状態で供給でき、全体における熱交換の均衡を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器の全体斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係るプレート式熱交換器の概略分解斜視図である。
図3図3は、図2の部分拡大図である。
図4図4は、同実施形態に係るプレート式熱交換器における第一流体及び第二流体のそれぞれの流路を説明する模式図である。
図5図5は、本発明の他実施形態に係るプレート式熱交換器における第一流体及び第二流体のそれぞれの流路を説明する模式図である。
図6図6は、本発明の別の実施形態に係るプレート式熱交換器における第一流体及び第二流体のそれぞれの流路を説明する模式図である。
図7図7は、本発明のさらに別の実施形態に係るプレート式熱交換器における第一流体及び第二流体のそれぞれの流路を説明する模式図である。
図8図8は、本発明のさらに別の実施形態に係るプレート式熱交換器における第一流体及び第二流体のそれぞれの流路を説明する模式図である。
図9図9は、従来のプレート式熱交換器の斜視図である。
図10図10は、従来のプレート式熱交換器における第一流体及び第二流体のそれぞれの流路を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0035】
本実施形態に係るプレート式熱交換器は、図1及び図2に示す如く、積層された複数の伝熱プレート2,…を含む本体部3と、複数の伝熱プレート2,…の積層方向(以下、単に「積層方向」という)で本体部3を挟む一対のエンドプレート4,5とを備える。
【0036】
複数の伝熱プレート2,…のそれぞれは、金属プレートをプレス成形したもので、図3に示す如く、第一流体Aと第二流体Bとを熱交換させる伝熱部20と、伝熱部20の外周に沿った環状の嵌合部21であって、隣り合う伝熱プレート2,…の外周に嵌合可能な嵌合部21とを備える。
【0037】
伝熱部20は、長方形状に形成され、一方の面と該一方の面の裏側の他方の面とを有する。伝熱部20は、長手方向の一端を含む所定範囲の第一領域20aと、長手方向の他端を含む所定範囲の第二領域20bと、第一領域20aと第二領域20bとの間の中間領域20cとを有する。
【0038】
伝熱部20の第一領域20aには、後述する第一流入路32、一次分岐流路37a,37b等の流路を形成するための複数の孔(採番しない)が設けられている。これに対し、伝熱部20の第二領域20bには、第一流出路33、第二流入路34、第二流出路35等の流路を形成するための複数の孔(採番しない)が設けられている。
【0039】
中間領域20cは、第一流体Aと第二流体Bとを熱交換させる領域であり、一方の面及び他方の面のそれぞれに複数の凹条及び凸条(図示しない)を有する。凹条及び凸条は、交互に配置されている。なお、凹条及び突条は、第一流体A及び第二流体Bの流体的な特性に応じて中間領域20c(伝熱部20)内に適宜配置される。
【0040】
嵌合部21は、伝熱部20の外周全周に接続され、伝熱部20の一方の面側に延出している。
【0041】
複数の伝熱プレート2,…のそれぞれは、伝熱部20に対して面交差する方向に積層されることで、隣り合う伝熱プレート2,…の伝熱部20における凸条同士を交差衝合させつつ、隣り合う伝熱プレート2,…の嵌合部21同士を嵌合させる。そして、積層された複数の伝熱プレート2,…がロウ付けされることで、隣り合う伝熱プレート2,…の密接する部位が封着されている。
【0042】
これにより、本体部3は、図2図4に示す如く、第一流体Aを流通させる複数の第一流路30,…であって、それぞれが隣り合う伝熱プレート2,…よって画定され、積層方向に並ぶ複数の第一流路30,…と、第二流体Bを流通させる複数の第二流路31,…であって、それぞれが隣り合う伝熱プレート2,2によって画定され、該伝熱プレート2を介して第一流路30と隣り合った状態で積層方向に並ぶ複数の第二流路31,…とを備える。本実施形態において、第一流路30,…と第二流路31,…とは、伝熱プレート2,…を境に積層方向に交互に配置される。
【0043】
また、本体部3は、伝熱プレート2,…の伝熱部20に設けられた孔が連なって形成された流路を有する。すなわち、本体部3は、積層方向に延びる第一流入路32であって、積層方向における本体部3の一端に第一流体Aの入口となる始端を有するとともに、積層方向における途中位置に終端を有する第一流入路32と、積層方向に延びる第一流出路33であって、第一流路30,…から第一流体Aを流出させる第一流出路33と、積層方向に延びる第二流入路34であって、第二流路31,…に第二流体Bを流入させる第二流入路34と、積層方向に延びる第二流出路35であって、第二流路31,…から第二流体Bを流出させる第二流出路35とを備える。
【0044】
本体部3は、上記構成に加え、積層方向における途中位置に配置され、第一流体Aの流通経路の分岐の基準となる分岐基準流路(以下、一次分岐基準流路という)36,36であって、隣り合う伝熱プレート2,…によって画定された一次分岐基準流路36,36と、それぞれが一次分岐基準流路36,36に連通した始端を有するとともに、積層方向における本体部3の他端側に延びて異なる第一流路30,…に直接的又は間接的に連通する終端を有する一対(二つ)の一次分岐流路37a,37bとを備える。
【0045】
第一流入路32は、図3及び図4に示す如く、伝熱部20の第一領域20aに設けられた孔が連なって形成されている。これにより、第一流入路32は、伝熱部20の第一領域20a内で積層方向に延び、一次分岐基準流路36,36のみに連通している。
【0046】
第一流出路33は、伝熱部20の第二領域20bに設けられた孔が連なって形成されている。これにより、第一流出路33は、伝熱部20の第二領域20b内で積層方向に延び、所定の第一流路30,…(複数の第一流路30,…が繋がった第一流体Aの流路であって、第一流入路32と第一流出路33とを繋ぐ第一流体Aの流路の最下流位置となる第一流路30,…)のみに連通している。
【0047】
第二流入路34は、伝熱部20の第二領域20bに設けられた孔が連なって形成されている。これにより、第二流出路35は、伝熱部20の第二領域20b内で積層方向に延び、所定の第二流路31,…(複数の第二流路31,…が繋がった第二流体Bの流路であって、第二流入路34と第二流出路35とを繋ぐ第二流体Bの流路の最上流位置となる第二流路31,…)のみに連通している。
【0048】
第二流出路35は、伝熱部20の第二領域20bに設けられた孔が連なって形成されている。これにより、第二流出路35は、伝熱部20の第二領域20b内で積層方向に延び、所定の第一流路30,…(複数の第二流路31,…が繋がった第二流体Bの流路であって、第二流入路34と第二流出路35とを繋ぐ第二流体Bの流路の最下流位置となる第二流路31,…)のみに連通している。
【0049】
本実施形態において、第二流入路34及び第二流出路35は、異なる第二流路31,…に連通している。そのため、本体部3は、すべての第二流路31,…に連通した連絡路38を有する。
【0050】
連絡路38は、伝熱部20の第一領域20aに設けられた孔が連なって形成されている。これにより、連絡路38は、伝熱部20の第一領域20a内で積層方向に延び、全ての第二流路31,…と連通している。従って、第二流入路34から所定の第二流路31,…に流入した第二流体Bは、連絡路38に流入した後に残りの第二流路31,…に流入し、第二流出路35に流出する。
【0051】
一次分岐基準流路36,36は、積層方向における本体部3の途中位置に配置される。ここで「途中位置」とは、積層方向における本体部3の一端と他端の間にある任意の位置を意味する。より具体的に説明すると、一次分岐基準流路36,36は、第一流路30,…及び第二流路31,…と同様に、隣り合う伝熱プレート2,2間に形成される空間である。一次分岐基準流路36,36は、第一流入路32及び一次分岐流路37a,37bの連通する空間であるため、一つであってもよいが、本実施形態においては、一次分岐基準流路36,36が二つ設けられている。すなわち、本実施形態に係る本体部3は、一対の一次分岐流路37a,37bの分岐位置として二つの一次分岐基準流路36,36を有する。
【0052】
二つの一次分岐基準流路36,36は、単一の第一流路30,…又は単一の第二流路31,…の何れか一方を挟んで配置される。本実施形態において、二つの一次分岐基準流路36,36は、第一流路30を挟んで配置されている。すなわち、二つの一次分岐基準流路36,36のそれぞれは、本来、第一流路30,…との関係において、第二流路31,…となるべき位置に配置されている。
【0053】
これに伴い、本体部3は、一次分岐基準流路36,36を二つの領域36a,36bに区切る区画部39aを備え、第一流入路32及び一次分岐流路37a,37bは、一次分岐基準流路36,36の二つの領域36a,36bのうちの一方の領域36aと連通している。すなわち、一次分岐基準流路36,36は、上述の如く、本来、第一流路30との関係で第二流路31となるべき位置に配置されているが、区画部39aによって二つの領域36a,36bに区画されることで、一方の領域36aが第一流入路32及び一対の一次分岐流路37a,37bを連通させる空間として機能する。本実施形態において、他方の領域36bは、本来の流路である第二流路31,…として機能する。
【0054】
本実施形態において、区画部39aは、一方の領域36aが他方の領域36bよりも小さくなるように設けられる。本実施形態において、第一流入路32及び一対の一次分岐流路37a,37bが第一領域20aの所定領域内に集約されており、区画部39aは、第一流入路32及び一対の一次分岐流路37a,37bを取り囲むように設けられている。これにより、一方の領域36aが第一流入路32及び一対の一次分岐流路37a,37bを連通させる最小限の広さにされ、他方の領域36bが第二流路31,…として機能するのに必要な広さにされる。すなわち、他方の領域36bは、第一流体Aとの熱交換に必要な最大限の広さで確保される。
【0055】
本実施形態において、上述の如く、一次分岐基準流路36,36が二つ設けられるに伴い、第一流入路32及び一対の一次分岐流路37a,37bは、二つの一次分岐基準流路36,36と連通している。
【0056】
一対の一次分岐流路37a,37bのそれぞれは、伝熱部20の第一領域20aに設けられた孔が連なって形成されている。これにより、一対の一次分岐流路37a,37bのそれぞれは、伝熱部20の第一領域20a内で積層方向に延びている。一対の一次分岐流路37a,37bのそれぞれの始端は、一次分岐基準流路36,36(二つの一次分岐基準流路36,36)と連通しているが、一対の一次分岐流路37a,37bのそれぞれの終端は、異なる第一流路30,…に連通している。
【0057】
本実施形態において、一対の一次分岐流路37a,37bのそれぞれの終端は、図4に示す如く、複数の第一流路30,…が繋がった第一流体Aの流路であって、一次分岐流路37a,37bと第一流出路33とを繋ぐ第一流体Aの流路の最上流位置にある第一流路30(始端となる第一流路30)に連通する。すなわち、本実施形態に係るプレート式熱交換器1(本体部3)は、一方の一次分岐流路37aに繋がる第一流体Aの流路であって、複数の第一流路30,…によって形成された第一流体Aの流路を含む第一ブロックBL1と、他方の一次分岐流路37bに繋がる第一流体Aの流路であって、複数の第一流路30,…によって形成された第一流体Aの流路を含む第二ブロックBL2とを含む。
【0058】
第一ブロックBL1及び第二ブロックBL2は、積層方向に並んで配置される。第一ブロックBL1に含まれる第一流体Aの流路と、第二ブロックBL2に含まれる第一流体Aの流路とは、同一形態に構成される。第一ブロックBL1及び第二ブロックBL2のそれぞれに含まれる第一流体Aの流路は、最上流の第一流路30,…が一次分岐流路37a,37bと連通し、最下流の第一流路30,…が第一流出路33と連通している。
【0059】
具体的に説明すると、第一ブロックBL1及び第二ブロックBL2のそれぞれにおける第一流体Aの流路は、積層方向の途中位置にある二次分岐基準流路40であって、一次分岐流路37a,37bの終端が連通した二次分岐基準流路40と、二次分岐基準流路40に連通する始端を有する一対の二次分岐流路41a,41bであって、積層方向で互いに背反する方向に延び、異なる第一流路30,…に連通する終端を有する一対の二次分岐流路41a,41bと、二次分岐流路41a,41bの終端が連通する第一流路30,…を分岐基準とする一対の三次分岐流路42a,42bであって、積層方向で互いに背反する方向に延び、異なる第一流路30,…に連通する終端を有する一対の三次分岐流路42a,42bと、三次分岐流路42a,42bの終端が連通する第一流路30,…に連通する始端を有するとともに、始端の連通した第一流路30,…と隣り合う第一流路30,…に連通する終端を有し、始端の連通した第一流路30,…と連通する三次分岐流路42a,42bと同方向に延びる第一連通路43a,43bと、第一連通路43a,43bの終端に連通した第一流路30,…であって、第一流出路33と連通し、当該ブロックにおける第一流体Aの流路の最下流位置にある第一流路30,…とを有する。
【0060】
二次分岐基準流路40は、本来、第一流路30,…との関係において、第二流路31,…となるべき位置に配置されている。これに伴い、本実施形態の本体部3は、二次分岐基準流路40を二つの領域36a,36bに区切る区画部39bを備え、一対の二次分岐流路41a,41bは、二次分岐基準流路40の二つの領域40a,40bのうちの一方の領域40aと連通している。すなわち、二次分岐基準流路40は、上述の如く、本来、第一流路30との関係で第二流路31となるべき位置に配置されているが、区画部39bによって二つの領域40a,40bに区画されることで、一方の領域40aが一対の二次分岐流路41a,41bを連通させる空間として機能する。本実施形態において、他方の領域40bは、本来の流路である第二流路31として機能する。
【0061】
一対の二次分岐流路41a,41bは、伝熱部20の第一領域20aに設けられた孔が連なって形成されている。これにより、一対の二次分岐流路41a,41bのそれぞれは、伝熱部20の第一領域20a内で積層方向に延び、二次分岐基準流路40(一方の領域40a)と第一流路30とを連通させている。本実施形態において、一対の二次分岐流路41a,41bは、積層方向において第一流入路32と直列に配置されている。
【0062】
一対の三次分岐流路42a,42bは、伝熱部20の第二領域20bに設けられた孔が連なって形成されている。これにより、一対の三次分岐流路42a,42bのそれぞれは、伝熱部20の第二領域20b内で積層方向に延び、隣り合う第一流路30,30を連通させている。
【0063】
第一連通路43a,43bは、伝熱部20の第二領域20bに設けられた孔が連なって形成されている。これにより、第一連通路43a,43bは、伝熱部20の第二領域20b内で積層方向に延び、隣り合う第一流路30,30を連通させている。
【0064】
これにより、二次分岐基準流路40に流入した第一流体Aは、積層方向の一端側及び他端側に分かれ、積層方向における所定位置で第一流路30,…内の流通方向を代え、最終的に第一流出路33に流出する。
【0065】
これに対し、第二流入路34から所定の第二流路31,…に流入した第二流体Bは、上述の如く、連絡路38に流入した後に残りの第二流路31,…に流入することで、第二流出路35に流出する。これにより、第一流路30,…内で流通する第一流体Aと、第二流路31,…内で流通する第二流体Bとが伝熱プレート2,…を介して熱交換する。
【0066】
一対のエンドプレート4,5のそれぞれは、伝熱プレート2の伝熱部20と対向するメインフレーム部(採番しない)と、メインフレーム部の外周から延出した環状部(採番しない)とを備える。一対のエンドプレート4,5は、本体部3を積層方向から挟み込むことで、メインフレーム部が伝熱部20と重なりつつ環状部が伝熱プレート2の嵌合部21に嵌合するようになっている。そして、一対のエンドプレート4,5のうちの一方のエンドプレート4のメインフレーム部には、第一流入路32,第一流出路33、第二流入路34及び第二流出路35と対応した位置に開口が形成されている。これに対し、一対のエンドプレート4,5のうちの他方のエンドプレート5のメインフレーム部には、開口が設けられていない。そして、一対のエンドプレート4,5は、複数の伝熱プレート2,…とともにロウ付けされ、本体部3と一体的になっている。
【0067】
以上のように、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、積層された複数の伝熱プレート2,…を含む本体部3を備え、本体部3は、第一流体Aを流通させる複数の第一流路30,…であって、それぞれが隣り合う伝熱プレート2,…よって画定され、複数の伝熱プレート2,…の積層方向に並ぶ複数の第一流路30,…と、第二流体Bを流通させる複数の第二流路31,…であって、それぞれが隣り合う伝熱プレート2,…によって画定され、伝熱プレート2,…を介して第一流路30,…と隣り合った状態で積層方向に並ぶ複数の第二流路31,…と、積層方向における途中位置に配置され、第一流体Aの流通経路の分岐の基準となる一次分岐基準流路36,36であって、隣り合う伝熱プレート2,…によって画定された少なくとも一つの一次分岐基準流路36,36と、積層方向に延び、該積層方向における当該本体部3の一端に第一流体Aの入口となる始端を有するとともに、積層方向における途中位置に終端を有する第一流入路32であって、一次分岐基準流路36,36と連通し、該一次分岐基準流路36,36に気液混合状態の第一流体Aを流入させる第一流入路32と、積層方向に延びる第一流出路33であって、第一流路30,…から第一流体Aを流出させる第一流出路33と、積層方向に延びる第二流入路34であって、第二流路31,…に第二流体Bを流入させる第二流入路34と、積層方向に延びる第二流出路35であって、第二流路31,…から第二流体Bを流出させる第二流出路35と、それぞれが一次分岐基準流路36,36に連通した始端を有するとともに、積層方向における当該本体部3の他端側に延びて異なる第一流路30,…に直接的又は間接的に連通する終端を有する二つ以上の一次分岐流路37a,37bとを備え、該一次分岐流路37a,37bの終端に連通した第一流路30,…は、第一流出路33に対して直接的又は間接的に連通する。
【0068】
上記構成のプレート式熱交換器1によれば、第一流路30,…及び第二流路31,…の何れか一方が、第一流路30,…及び第二流路31,…の何れか他方を挟んで配置される。そして、第一流入路32が伝熱プレート2,…の積層方向の途中位置にある一次分岐基準流路36,36だけに連通している。従って、第一流入路32は、伝熱プレート2,…の積層方向における途中位置までにしか形成されず、伝熱プレート2,…の積層方向で本体部3の全長に亘って形成される従来の第一流入路32よりも流路長が短くなる。これにより、第一流入路32での第一流体Aの圧力損失の増大を抑えることができる。
【0069】
各一次分岐流路37a,37bの終端が異なる第一流路30,…と連通することで、本体部3内には、一次分岐基準流路36,36を始端とする第一流体Aの流通経路が二系統以上形成される。従って、第一流入路32から第一流出路33に至るまでの第一流体Aの流路の長さ(一系統当りの流路長)が短くなる。これにより、上記構成のプレート式熱交換器1では、第一流体Aの流路全体での圧力損失の増大を抑えることができ、高い熱交換性能を得ることができる。
【0070】
さらに、二つ以上の一次分岐流路37a,37bのそれぞれが、同一の一次分岐基準流路36,36を基準に前記積層方向における当該本体部3の他端側に延びているため、供給される第一流体Aが気液混合状態であっても、気液比(気体と液体の割合)を異にした第一流体Aが各一次分岐流路37a,37bに流入することを抑制することができる。
【0071】
例えば、二つ以上の一次分岐流路37a,37bのうち何れかが一次分岐基準流路36,36から本体部3における他端側に延びるように形成され、残りの一次分岐流路37a,37bが一次分岐基準流路36,36から本体部3における一端側に延びるように形成された場合、本体部3の他端側に延びる一次分岐流路37a,37bにおける第一流体Aの流通方向は、第一流入路32における第一流体Aの流通方向と同じ方向になるのに対し、本体部3の一端側に延びる一次分岐流路37a,37bにおける第一流体Aの流通方向は、分岐位置である一次分岐基準流路36,36で切り替わって第一流入路32における第一流体Aの流通方向と反対向きになる。
【0072】
これに伴い、第一流体Aが気液混合状態で第一流入路32に供給されると、各一次分岐流路37a,37bに気体と液体の割合を異にした第一流体Aが流入してしまう。具体的に説明すると、液体は気体よりも比重が大きいため、流通時の慣性エネルギーの影響を受けやすい。そのため、一次分岐基準流路36,36に流入した第一流体Aのうち液体の部分は、慣性エネルギーの影響で直進しようとし、第一流体Aの流通方向が第一流入路32における第一流体Aの流通方向と同じ方向になる一次分岐流路37a,37bに積極的に流入してしまう。
【0073】
そのため、一次分岐基準流路36,36に流入した第一流体Aの気体の部分は、第一流入路32における第一流体Aの流通方向と同じ方向になる一次分岐流路37a,37bへの流入が該第一流体Aの液体の部分に阻まれた状態になり、第一流体Aの流通方向が第一流入路32における第一流体Aの流通方向と反対向きになる一次分岐流路37a,37bに流入する。その結果、複数の第一流路30,…のそれぞれに、異なった気液比(気体と液体との比)の第一流体Aが流入することになり、複数の第一流路30,…の位置によって第一流体Aと第二流体Bとの熱交換状態が異なってしまう。
【0074】
しかし、本実施形態に係るプレート式熱交換器1においては、二つ以上の一次分岐流路37a,37bのそれぞれが、同一の一次分岐基準流路36,36を基準に前記積層方向における当該本体部3の他端側に延びている(同方向に延びている)ため、全ての一次分岐流路37a,37bにおける第一流体Aの流通方向が第一流入路32における第一流体Aの流通方向と一致する。
【0075】
これにより、慣性エネルギーの影響を受けて直進しようとする第一流体Aの液体の部分が、全ての一次分岐流路37a,37bに流入し、該第一流体Aの残りの気体の部分も全ての一次分岐流路37a,37bに流入する。その結果、複数の第一流路30,…のそれぞれに、同一又は略同一の気液比の第一流体A(均質な第一流体A)が流入することになるため、複数の第一流路30,…のそれぞれで流通する第一流体Aと、複数の第二流路31,…のそれぞれで流通する第二流体Bとをバランスよく熱交換させることができる。
【0076】
また、本実施形態において、本体部3は、一次分岐基準流路36,36を二つの領域36a,36bに区切る区画部39aを備え、第一流入路32及び二つの一次分岐流路37a,37bは、二つの領域36a,36bのうちの一方の領域36aと連通しているため、気液混合状態で流入してきた第一流体Aの気体の部分や、第一流体Aの液体の部分がガス化した気体が、一次分岐基準流路36,36で溜まることを抑制でき、熱交換性能を高めることができる。
【0077】
具体的に説明すると、第一流体Aの気体(ガス)は、第二流体Bとの熱交換性能が低い。そのため、第一流体Aの気体が第一流路30内に滞留すると、その気体の滞留した領域では第二流体Bとほとんど熱交換が行われず、熱交換効率が低下する傾向にある。
【0078】
しかし、本実施形態に係るプレート式熱交換器1においては、一次分岐基準流路36,36が区画部39aによって二つの領域36a,36bに区切られることで、各領域36a,36bは、区画されていない状態の領域(区画前の全領域)よりも小さくなるため、その一つの領域36aに、第一流入路32及び一対の一次分岐流路37a,37bが集約されて連通することで、第一流入路32から各一次分岐流路37a,37bまでの距離が短くなり、一次分岐基準流路36(分岐位置)で第一流体Aの気体(ガス)の占有(滞留)を抑制できる。
【0079】
特に、本実施形態において、一方の領域36aは、二つの領域36a,36bのうちの他方の領域36bよりも小さいため、一方の領域36aが第一流体Aの流路を分岐させるために必要な大きさに抑えられ、第一流体Aの気体(ガス)の滞留をより効果的に抑制できる。
【0080】
また、二つの領域36a,36bのうちの他方の領域36bは、第二流路31,…を構成するため、本体部3内のスペースを有効利用して、熱交換させる機会を増やすことができ、熱交換効率を高めることができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加え得ることは勿論である。
【0082】
例えば、上記実施形態において、第一流入路32の分岐位置として二つの一次分岐基準流路36,36を設けたが、これに限定されない。一次分岐基準流路36,36は、第一流入路32の分岐位置一箇所当り、少なくとも一つあればよい。すなわち、一次分岐基準流路36,36は、第一流入路32の分岐位置一箇所当り、一つ設けられてもよいし、二つ以上設けられてもよい。
【0083】
上記実施形態において、一次分岐流路37a,37bが一対(二つ)設けられたが、これに限定されない。例えば、一次分岐流路37a,37bは、三つ以上設けられてもよい。但し、この場合においても、三つ以上の一次分岐流路37a,37bのそれぞれは、一次分岐基準流路36,36に連通した始端を有するとともに、積層方向における当該本体部3の他端側に延びて異なる第一流路30,…に連通する終端を有することは勿論である。
【0084】
上記実施形態において、一対の二次分岐流路41a,41bが相反する方向に延びて形成されたが、これに限定されない。例えば、一対の二次分岐流路41a,41bのそれぞれは、一対の一次分岐流路37a,37bと同様に、それぞれが二次分岐基準流路40に連通した始端を有するとともに、積層方向における当該本体部3の他端側に延びて異なる第一流路30,…に直接的又は間接的に連通する終端を有してもよい。また、二次分岐流路41a,41bは、三つ以上設けられてもよい。これらの点は、三次分岐流路42a,42bも同様である。
【0085】
上記実施形態において、本体部3が第一流路30,…の流路を二系統備えた(第一ブロックBL1及び第二ブロックBL2を備えた)が、これに限定されない。例えば、図5に示す如く、第一ブロックBL1及び第二ブロックBL2を含む大ブロックBL,…を二つ以上備えてもよい。すなわち、本体部3は、第一流路30,…の流路を二系統以上備えてもよい。
【0086】
また、図5及び図6に示す如く、第一流入路32の分岐位置を二箇所以上設け、各分岐位置において、少なくとも一つの一次分岐基準流路36を配置してもよい。この場合、各分岐位置にある一次分岐基準流路36,36に対し、二つ以上の一次分岐流路37a,37bを連通させ、各一次分岐流路37a,37bを対応する大ブロックBL,…の第一ブロックBL1及び第二ブロックBL2にある第一流体Aの流路の最上流に連通させればよい。
【0087】
さらに、図5に示す如く、単一の第一流入路32を二箇所の分岐位置にある一次分岐基準流路36,36と連通させてもよいし、図6に示す如く、二箇所の分岐位置にある一次分岐基準流路36,36のそれぞれに対応して二つ以上の第一流入路32,32を設けてもよい。
【0088】
また、本体部3が第一ブロックBL1及び第二ブロックBL2を含む大ブロックBL,…を二つ以上備える場合、図7に示す如く、積層方向の途中位置の一箇所に第一流入路32の分岐位置となる一次分岐基準流路36,36が設けられるとともに、一次分岐基準流路36,36に二つ以上の一次分岐流路37a,37bが連通されることを前提に、各一次分岐流路37a,37bの終端に連通する位置に分岐基準流路44が設けられるとともに、該分岐基準流路44に二つ以上の分岐流路45a,45bが連通され、該二つ以上の分岐流路45a,45bのそれぞれが大ブロックBL,…内の第一ブロックBL1及び第二ブロックBL2のそれぞれにおける第一流体Aの流路(最上流)に連通されてもよい。
【0089】
さらに、本体部3が第一ブロックBL1及び第二ブロックBL2を含む大ブロックBL,…を二つ以上備える場合、図8に示す如く、大ブロックBL,…毎に第一流入路32及び第一流出路33が設けられてもよい。すなわち、本体部3が二つ以上の大ブロックBL,…を備えた場合、第一流体Aの流出入を大ブロックBL,…毎に行えるよう、第一流入路32及び第一流出路33は、大ブロックBL,…単位で設けられてもよい。
【0090】
上記実施形態において、一次分岐流路37a,37bから第一流出路33までの第一流体Aの流路は、二次分岐基準流路40、一対の二次分岐流路41a,41b、第一流路30,…、一対の三次分岐流路42a,42b、第一連通路43a,43bを備えたが、これに限定されない。一次分岐流路37a,37bから第一流出路33までの第一流体Aの流路(第一流路30,…の繋ぎ方)は、適宜変更可能である。
【0091】
上記実施形態において、本体部3が一次分岐基準流路36,36を二つの領域36a,36bに区画する区画部39aを備え、一方の領域36aに第一流入路32及び一次分岐流路37a,37bを連通させ、他方の領域36bを第二流路31としたが、これに限定されない。例えば、本体部3が一次分岐基準流路36,36を二つの領域36a,36bに区画する区画部39aを備え、一方の領域36aに第一流入路32及び一次分岐流路37a,37bを連通させ、他方の領域36bを第一流路30(第一流体Aの流路の一部)としてもよい。なお、図5図6に上記実施形態と異なる別の実施形態に係るプレート式熱交換器1が図示されており、これらにおいて分岐位置(基準位置)が本来第二流路31,…となるべき位置にあるが、この分岐位置においても、第一流路30,…となるべき位置にあっても勿論よい。
【0092】
上記実施形態において、本体部3が一次分岐基準流路36,36を二つの領域36a,36bに区画する区画部39aを備えたが、これに限定されない。例えば、一次分岐基準流路36,36の内部が区画されることなく単一の流路を構成してもよい。なお、一次分岐基準流路36,36の流路長(伝熱部20の長手方向の長さ)が長いと、第一流体Aの気体の部分が滞留する虞があるため、第一流入路32及び一次分岐流路37a,37bを接続する領域が確保できる最小限の領域にされることが好ましい。
【0093】
上記実施形態において、第一流路30,…と第二流路31,…とが伝熱プレート2,…を境にして一つずつ交互に配置されているが、これに限定されない。例えば、積層方向に並ぶ二つの第二流路31,…間に二つの第一流路30,…が隣り合って配置されてもよい。また、第一流路30,…及び第二流路31,…のそれぞれが二つずつ交互に配置されてもよい。すなわち、積層方向における第一流路30,…の両側のうちの少なくとも一方側に第二流路31,…が配置されればよい。
【符号の説明】
【0094】
1…プレート式熱交換器、2…伝熱プレート、3…本体部、4…エンドプレート、5…エンドプレート、20…伝熱部、20a…第一領域、20b…第二領域、20c…中間領域、21…嵌合部、30…第一流路、31…第二流路、32…第一流入路、33…第一流出路、34…第二流入路、35…第二流出路、36…一次分岐基準流路(分岐基準流路)、36a…一方の領域、36b…他方の領域、37a,37b…一次分岐流路、38…連絡路、39a…区画部、39b…区画部、40…二次分岐基準流路、40a…一方の領域、40b…他方の領域、41a,41b…二次分岐流路、42a,42b…三次分岐流路、43a,43b…第一連通路、44…分岐基準流路、45a,45b…分岐流路、A…第一流体、B…第二流体、BL…大ブロック、BL1…第一ブロック、BL2…第二ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10