【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1に係るモータ駆動装置1000の構成の一例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、モータ駆動装置1000は、ブラシレスモータMと、半導体集積回路(制御回路)100と、ブラシレスモータMに設けられた位置センサHと、を備える。
【0011】
ブラシレスモータMは、ここでは、3相ブラシレスモータである。このブラシレスモータMは、例えば、W相コイル、U相コイル、V相コイルが設けられたステータ(図示せず)と、ロータ(図示せず)と、を有する。なお、ブラシレスモータMは、単相ブラシレスモータ、2相ブラシレスモータ等、n(n:整数)相のブラシレスモータであってもよい。
【0012】
位置センサHは、ブラシレスモータMのコイルの誘起電圧の位相と同期した位置検出信号SHを出力する。なお、
図1では、一例として、3個の位置センサHが、ブラシレスモータMに設けられている。この位置センサHは、例えば、ホール素子またはホールICである。なお、位置センサHは、ブラシレスモータMの相数より少なくてもよいが、ここでは3個即ち3相分のホールICまたはホール素子が使用されている。この場合、位置検出信号SHは、ホールICの場合は3信号、ホール素子の場合は6信号となる。
【0013】
マイコン101は、ブラシレスモータMの駆動を規定する指令信号SVを、半導体集積回路100に、出力するようになっている。
【0014】
また、半導体集積回路100は、位置検出信号SHおよびブラシレスモータMの駆動を規定する指令信号SVに基づいて、ブラシレスモータMのコイルに疑似正弦波の駆動電圧Vdを通電端子Txから供給して、ブラシレスモータMの駆動を制御する。
【0015】
この半導体集積回路100は、例えば、
図1に示すように、位相調整回路(位相調整手段)PCと、通電信号回路(通電信号手段)TDと、ドライブ回路(駆動電圧出力手段)DRと、ブリッジ回路BRと、コンパレータCOMと、判定回路(判定手段)GCと、第1の抵抗R1と、第2の抵抗R2と、第1のダイオードD1と、第2のダイオードD2と、を備える。
【0016】
位相調整回路PCは、位置検出信号SHおよび後述する判定回路GCから出力される判定信号SGに基づいて、駆動電圧Vdの位相を調整する位相調整信号Sxを出力する。
【0017】
なお、位相調整回路PCは、外部から供給される位相制御信号SPによって、直接、位相調整信号Sxを制御可能になっている。
【0018】
通電信号回路TDは、位相調整信号Sx、位置検出信号SHおよび指令信号SVに基づいて、ブラシレスモータMの通電を制御するための通電信号SCを出力する。
【0019】
この通電信号回路TDは、位相調整信号Sx、位置検出信号SHおよび指令信号SVから、例えば、正弦波データの読み出しなどにより正弦波の通電信号SCを形成する。なお、正弦波データは3相変調でも2相変調でもよい。
【0020】
また、通電信号回路TDは、位置検出信号SHに基づいて、ブラシレスモータMの回転の有無及び回転数の情報を含む回転信号SOを出力する。
【0021】
ドライブ回路DRは、通電信号回路TDが出力した通電信号SCに応じて、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号SPWMを出力する。より詳しくは、ドライブ回路DRは、例えば、通電信号SCをデッドタイム処理し、さらに必要な電位に変換して得られたPWM制御信号SPWMを、ブリッジ回路BRに供給する。
【0022】
なお、ドライブ回路DRは、それに必要な各電位を、ブートストラップやチャージポンプにより生成する。
【0023】
なお、このドライブ回路DRは、省略され、若しくは、通電信号回路TDに含まれていてもよい。この場合、通電信号回路TDがこのドライブ回路DRの一部の機能を実行し、ブリッジ回路BRをPWM制御する。
【0024】
また、ブリッジ回路BRは、一端が直流電源VDD2に接続され、他端が接地に接続されている。そして、ブリッジ回路BRは、直流電源VDD2からブラシレスモータMを駆動するための3相の駆動電圧Vdを生成する。そして、ブリッジ回路BRは、PWM制御信号SPWMに応じて、ブラシレスモータMに対して、3相の駆動電圧Vdを供給する。そして、ブラシレスモータMは、上述の3相の駆動電圧により、3相のコイルに電流が流れて、駆動する。
【0025】
ここで、ブリッジ回路BRは、例えば、
図1に示すように、正側トランジスタTraと、正側ダイオードDaと、負側トランジスタTrbと、負側ダイオードDbと、を有する。
【0026】
正側トランジスタTraは、電流経路の一端(ドレイン)が直流電源VDD2に接続され、電流経路の他端(ソース)が通電端子Txに接続されている。
【0027】
正側ダイオードDaは、カソードが正側トランジスタTraの一端(ドレイン)に接続され、アノードが正側トランジスタTraの他端(ソース)に接続されている。
【0028】
負側トランジスタTrbは、電流経路の一端(ドレイン)が通電端子Txに接続され、電流経路の他端(ソース)が接地に接続されている。
【0029】
負側ダイオードDbは、カソードが負側トランジスタTrbの一端(ドレイン)に接続され、アノードが負側トランジスタTrbの他端(ソース)に接続されている。
【0030】
このブリッジ回路BRは、PWM制御信号SPWMに応じて、正側トランジスタTraと負側トランジスタTrbとが相補的にオン/オフするようにPWM制御して、通電端子TxからブラシレスモータMのコイルに疑似正弦波の駆動電圧Vdを供給する。
【0031】
なお、本実施例では、ブラシレスモータMが3相ブラシレスモータであるので、ブリッジ回路BRは、図示していないが、正側トランジスタTraと正側ダイオードDaを3組有する。そして、この3組の通電端子TxがそれぞれW相コイル、U相コイル、V相コイルに接続される。
【0032】
なお、正側トランジスタTraおよび負側トランジスタTrbは、MOSトランジスタまたはバイポーラトランジスタである。特に、
図1の例では、正側トランジスタTraおよび負側トランジスタTrbは、nMOSトランジスタである。
【0033】
次に、
図1に示すように、第1の抵抗R1は、一端が制御電源VDD1に接続され、他端がコンパレータCOMの第1の入力(非反転入力端子)に接続されている。 第2の抵抗R2は、一端が制御電源VDD1に接続され、他端がコンパレータCOMの第2の入力(反転入力端子)に接続されている。第1のダイオードD1は、アノードがコンパレータCOMの第1の入力に接続され、カソードが負側トランジスタTrbの一端(ドレイン)に接続されている。
【0034】
なお、この第1のダイオードD1は、その電流は制御電源VDD1と第1の抵抗R1により決定される極小さな値となる。しかし、第1のダイオードD1の耐圧は、ほぼ直流電圧に匹敵する特性を必要とする。
【0035】
第2のダイオードD2は、アノードがコンパレータCOMの第2の入力に接続され、カソードが負側トランジスタTrbの他端(ソース)に接続されている。
【0036】
この第2のダイオードD2は、第1のダイオードD1よりも耐圧が小さいものでよい。また、この第2のダイオードD2に代えて、抵抗を接続してもよい。そして、第1のダイオードD1とのバランスや制御電源VDD1の電圧変動を考慮して、第2のダイオードD2は、第1のダイオードD1とほぼ同じ飽和電圧のものが選択されている。
【0037】
このように、
図1に示すように、コンパレータCOMの第1の入力(非反転入力端子)は、第1のダイオードD1を介して、負側トランジスタTrbの一端(ドレイン)に接続され、コンパレータCOMの第2の入力(反転入力端子)は、第2のダイオードD2を介して、負側トランジスタTrbの他端(ソース)に接続されている。
【0038】
したがって、コンパレータCOMは、第1の入力(非反転入力端子)に負側トランジスタTrbの一端(ドレイン)の電圧に基づいた第1の電圧V1が入力され、第2の入力(反転入力端子)に負側トランジスタTrbの他端(ソース)の電圧に基づいた第2の電圧V2が入力される。そして、このコンパレータCOMは、第1の電圧V1と第2の電圧V2とを比較した結果に基づいた比較結果信号SRを出力する。
【0039】
ここで、例えば、負側トランジスタTrbがオンしているとき、モータ電流が負側トランジスタTrbから通電端子Txに流れる正の極性である場合、第1の電圧V1が第2の電圧V2未満になる。この場合、コンパレータCOMは、 例えば“Low”レベルの比較結果信号SRを出力する。
【0040】
一方、負側トランジスタTrbがオンしているとき、モータ電流が通電端子Txから負側トランジスタTrbに流れる負の極性である場合、第1の電圧V1が第2の電圧V2以上になる。この場合、コンパレータCOMは、例えば“High”レベルの比較結果信号SRを出力する。
【0041】
このように、コンパレータCOMが出力する比較結果信号SRは、モータ電流の極性に対応したものとなる。
【0042】
なお、このコンパレータCOMは、ハンチング現象を回避するためにヒステリシス特性を有するようにしてもよい。
【0043】
また、既述のコンパレータCOM、第1、第2のダイオードD1、D2、第1、第2の抵抗R1、R2の構成は、本実施例においては、ブラシレスモータMが3相ブラシレスモータであるので、3相分あることが相応しい。しかし、ブラシレスモータMが慣性の大きな負荷に使われる場合は、上述の構成は2相、または1相分でもよい。
【0044】
また、複数相分も受ける場合には、負側トランジスタTrbの他端(ソース)側に接続された抵抗とダイオードとは共通でもよい。
【0045】
判定回路GCは、比較結果信号SRに基づいて、負側トランジスタTrbに流れるモータ電流の極性を判定し、この判定結果に応じた判定信号SGを出力する。
【0046】
特に、判定回路GCは、負側トランジスタTrbがオンしている期間中にコンパレータCOMから出力された比較結果信号SRに基づいて、負側トランジスタTrbに流れるモータ電流の極性を判定する。
【0047】
ここで、例えば、
図1に示すように、既述の通電信号回路TDは、負側トランジスタTrbがオンしている期間中に、比較結果信号SRをサンプリングすることを指示するサンプリング信号SLを判定回路GCに出力する。なお、通電信号回路TDは、より好ましくは、PWM制御信号SPWMのデットタイムを考慮して、負側トランジスタTrbがオンしている期間の真ん中で、比較結果信号SRをサンプリングすることを指示するようにサンプリング信号SLを設定する。
【0048】
そして、判定回路GCは、このサンプリング信号SLに応じて、比較結果信号SRをサンプリングする。
【0049】
そして、判定回路GCは、サンプリングした比較結果信号SRが、第1の電圧V1は第2の電圧V2未満であることを規定している(例えば、“Low”レベルである)場合には、モータ電流が負側トランジスタTrbから通電端子Txに流れる正の極性であると判断する。
【0050】
一方、判定回路GCは、サンプリングした比較結果信号SRが、第1の電圧V1は第2の電圧V2以上であることを規定している(例えば、“High”レベルである)場合には、モータ電流が通電端子Txから負側トランジスタTrbに流れる負の極性であると判断する。
【0051】
位相調整回路PCは、判定信号SGに基づいて、モータ電流の位相を取得する。より詳しくは、例えば、位相調整回路PCは、モータ電流の極性が反転するゼロクロス点から、モータ電流の位相を取得する。
【0052】
また、位相調整回路PCは、位置検出信号SHに基づいて、ブラシレスモータMのコイルの誘起電圧の位相を取得する。
【0053】
ここで、例えば、ブラシレスモータMの効率を上げる場合、位相調整回路PCは、モータ電流の位相と誘起電圧の位相とが一致するように、駆動電圧Vdの位相を調整する位相調整信号Sxを出力する。
【0054】
そして、通電信号回路TDは、この位相調整信号Sxに応じた通電信号SCを出力する。そして、ドライブ回路DRがこの通電信号SCに応じて、PWM制御信号SPWMにより、モータ電流の位相と誘起電圧の位相とが一致するように、ブリッジ回路BRをPWM制御して、駆動電圧Vdを出力させる。
【0055】
また、高速運転する場合、位相調整回路PCは、モータ電流の位相が誘起電圧の位相よりも進むように、駆動電圧Vdの位相を調整する位相調整信号Sxを出力する。
【0056】
そして、通電信号回路TDは、この位相調整信号Sxに応じた通電信号SCを出力する。そして、ドライブ回路DRがこの通電信号SCに応じて、PWM制御信号SPWMにより、モータ電流の位相が誘起電圧の位相よりも進むように、ブリッジ回路BRをPWM制御して、駆動電圧Vdを出力させる。
【0057】
次に、
図2は、
図1に示す半導体集積回路100を電源系統毎の区分を規定した一例を示す図である。
【0058】
図2に示すように、通電信号回路TD、位相調整回路PC、判定回路GC、およびコンパレータCOMは、低電圧ICであり、制御電源VDD1から制御電圧(例えば、5V)が供給されて動作する。
【0059】
また、
図2に示すように、第1のダイオードD1、第2のダイオードD2、ドライブ回路DR、および、ブリッジ回路BRは、高電圧ICであり、直流電源VDD2から制御電圧よりも高い直流電圧(例えば、280V)が供給されて動作する。
【0060】
このように、電流正負判定に必要な第1、第2のダイオードD1、D2が接続されるために、負側トランジスタTrbの両端電圧がマイナスの場合にも、コンパレータCOMの入力電圧は同相入力電圧範囲内に収まる。
高電圧ICは、モータ電流の極性の判定に必要なダイオードを含んでいるので、より広い範囲の電源電圧に対応できる。
そして、例えば、半導体集積回路100は、80V以下などの低電圧で使用される場合には、DMOS(Double−Diffused MOSFET)などにより、低電圧の回路、高電圧の回路を同一チップで構成できる。
【0061】
次に、以上のような構成を有する半導体集積回路100の動作の一例について説明する。
図3は、
図1に示すコンパレータCOMに入力される第1、第2の電圧V1、V2の波形の一例を示す波形図である。また、
図4は、
図3で表された第1、第2の電圧V1、V2に応じてコンパレータCOMが出力する比較結果信号SR、この比較結果信号SRに応じて判定回路GCが出力する判定信号SG、駆動電流Vd、およびモータ電流の波形の一例を示す波形図である。
【0062】
図3、
図4に示すように、例えば、時刻0.02ms〜0.58msにおいて、コンパレータCOMは、サンプリング信号SLで規定されるサンプリングのタイミング(負側トランジスタTrbがオンしている期間)に、第1の電圧V1が第2の電圧V2未満であるので、“Low”レベルの比較結果信号SRを出力する。
【0063】
そして、判定回路GCは、サンプリングした比較結果信号SRが、第1の電圧V1は第2の電圧V2未満であることを規定している(例えば、“Low”レベルである)ので、モータ電流が負側トランジスタTrbから通電端子Txに流れる正の極性であると判断する(“Low”レベルの判定信号SGを出力する)。
【0064】
一方、
図3、
図4に示すように、時刻0.58ms〜1.04msにおいて、コンパレータCOMは、サンプリング信号SLで規定されるサンプリングのタイミング(負側トランジスタTrbがオンしている期間)に、第1の電圧V1が第2の電圧V2以上である場合には、“High”レベルの比較結果信号SRを出力する。
【0065】
そして、判定回路GCは、サンプリングした比較結果信号SRが、第1の電圧V1は第2の電圧V2以上であることを規定している(“High”レベルである)ので、モータ電流が通電端子Txから負側トランジスタTrbに流れる負の極性であると判断する(“High”レベルの判定信号SGを出力する)。
【0066】
ここで、既述のように、本実施例では、位置検出信号SHは、ブラシレスモータMのコイルの誘起電圧とその位相が同期している。
【0067】
位相制御信号SPがゼロ(基準値)の場合及び入力されない場合には、位相調整回路PCは、位置検出信号SHと上記判定信号SGとが同期するように調整する。
【0068】
具体的には、位相調整回路PCは、位置検出信号SHに対して判定信号SGが遅れている場合には、位相調整信号Sxで規定する駆動電圧Vdの位相を進み方向に調整する。一方、位相調整回路PCは、位置検出信号SHに対して判定信号SGが進んでいる場合には位相調整信号Sxで規定する駆動電圧Vdの位相を遅れ方向に調整する。
【0069】
結果として、位相調整回路PCは、モータ電流の位相と誘起電圧の位相とが一致するように、駆動電圧Vdの位相を調整する位相調整信号Sxを出力する。
【0070】
そして、通電信号回路TDは、この位相調整信号Sxに応じた通電信号SCを出力する。そして、ドライブ回路DRがこの通電信号SCに応じて、PWM制御信号SPWMにより、モータ電流の位相と誘起電圧の位相とが一致するように、ブリッジ回路BRをPWM制御して、駆動電圧Vdを出力させる。
【0071】
したがって、位相調整信号Sxの調整により通電信号回路TDによる通電信号SCの位相が調整されて、誘起電圧とモータ電流が各相一致して、ブラシレスモータMを最大効率で駆動することになる。
【0072】
また、例えば、位相調整回路PCは、位相制御信号SPが負(基準値以下)のときには、位置検出信号SHと判定信号SGの位相差に関係なく、駆動電圧Vdの位相を進み方向に調整することを規定する位相調整信号Sxを出力する。
【0073】
一方、位相調整回路PCは、位相調整信号SPが正(基準値以上)のときには、駆動電圧Vdの位相を遅れ方向に調整することを規定する位相調整信号Sxを出力する。
【0074】
そこで、例えば、ブラシレスモータMの負荷が高速時に軽い用途に有効なもので、指令信号SVが最大の電圧を規定している場合でも回転数が足りない場合に、位相制御信号SPを負に設定する。これにより、所謂、弱め界磁制御が可能となり、より高速に制御できる。
【0075】
以上のように、本実施例1に係るモータ駆動装置1000によれば、効率を向上することができる。
【0076】
特に、半導体集積回路100は、外付け部品が必要なく、電流検出抵抗すらないので、ブリッジ回路BRにおける消費電流を低減することができる。
【実施例2】
【0077】
図5は、実施例2に係るモータ駆動装置2000の構成の一例を示す図である。なお、
図5において、
図1の符号と同じ符号は、実施例1と同様の構成を示す。
【0078】
図5に示すように、モータ駆動装置2000は、ブラシレスモータMと、半導体集積回路(制御回路)200と、ブラシレスモータMに設けられた位置センサHと、を備える。
【0079】
マイコン101は、ブラシレスモータMの駆動を規定する指令信号SVを、半導体集積回路200に、出力するようになっている。
【0080】
また、半導体集積回路200は、位置検出信号SHおよびブラシレスモータMの駆動を規定する指令信号SVに基づいて、ブラシレスモータMのコイルに疑似正弦波の駆動電圧Vdを通電端子Txから供給して、ブラシレスモータMの駆動を制御する。
【0081】
この半導体集積回路200は、例えば、
図5に示すように、位相差算出回路(位相算出手段)PAと、位置情報補正回路(位置情報補正手段)PIと、位相差記憶手段PMと、通電信号回路(通電信号手段)TDと、ドライブ回路(駆動電圧出力手段)DRと、ブリッジ回路BRと、コンパレータCOMと、判定回路(判定手段)GCと、を備える。
【0082】
通電信号回路TDは、位置検出信号SHおよび指令信号SVに基づいて、ブラシレスモータMの通電を制御するための通電信号SCを出力する。
【0083】
この通電信号回路TDは、位置検出信号SHおよび指令信号SVから、例えば、正弦波データの読み出しなどにより正弦波の通電信号SCを形成する。なお、正弦波データは3相変調でも2相変調でもよい。
【0084】
ここで、例えば、通電信号回路TDは、ブラシレスモータMの効率を上げる場合、モータ電流の位相と誘起電圧の位相とが一致するように、駆動電圧Vdの位相を調整するように通電信号SCを出力する。
【0085】
そして、ドライブ回路DRがこの通電信号SCに応じて、PWM制御信号SPWMにより、モータ電流の位相と誘起電圧の位相とが一致するように、ブリッジ回路BRをPWM制御して、駆動電圧Vdを出力させる。
【0086】
また、通電信号回路TDは、高速運転する場合、モータ電流の位相が誘起電圧の位相よりも進むように、駆動電圧Vdの位相を調整する通電信号SCを出力する。
【0087】
そして、ドライブ回路DRがこの通電信号SCに応じて、PWM制御信号SPWMにより、モータ電流の位相が誘起電圧の位相よりも進むように、ブリッジ回路BRをPWM制御して、駆動電圧Vdを出力させる。
【0088】
また、この通電信号回路TDは、位置検出信号SHに基づいて、ブラシレスモータMの回転の有無及び回転数の情報を含む回転信号SOを出力する。
【0089】
さらに、通電信号回路TDは、ブラシレスモータMが回転している状態において正側トランジスタTraおよび負側トランジスタTrbをオフさせた期間中に、比較結果信号SRをサンプリングすることを指示するサンプリング信号SLを判定回路GCに出力する。
また、
図5に示すように、コンパレータCOMの第1の入力(非反転入力端子)は、負側トランジスタTrbの一端(ドレイン)に接続され、コンパレータCOMの第2の入力(反転入力端子)は、負側トランジスタTrbの他端(ソース)に接続されている。
【0090】
したがって、コンパレータCOMは、第1の入力(非反転入力端子)に負側トランジスタTrbの一端(ドレイン)の電圧に基づいた第1の電圧V1が入力され、第2の入力(反転入力端子)に負側トランジスタTrbの他端(ソース)の電圧に基づいた第2の電圧V2が入力される。そして、このコンパレータCOMは、第1の電圧V1と第2の電圧V2とを比較した結果に基づいた比較結果信号SRを出力する。
【0091】
ここで、例えば、ブラシレスモータMが回転している状態において正側トランジスタTraおよび負側トランジスタTrbがオフしているとき、コイルの誘起電圧(通電端子Txの電圧)が負の極性である場合、第1の電圧V1が第2の電圧V2未満になる。この場合、コンパレータCOMは、例えば“Low”レベルの比較結果信号SRを出力する。
【0092】
一方、ブラシレスモータMが回転している状態において正側トランジスタTraおよび負側トランジスタTrbがオフしているとき、コイルの誘起電圧が正の極性である場合、第1の電圧V1が第2の電圧V2以上になる。この場合、コンパレータCOMは、例えば“High”レベルの比較結果信号SRを出力する。
【0093】
このように、コンパレータCOMが出力する比較結果信号SRは、コイルの誘起電圧の極性に対応したものとなる。
【0094】
なお、このコンパレータCOMは、ハンチング現象を回避するためにヒステリシス特性を有するようにしてもよい。
【0095】
また、
図5に示すように、判定回路GCは、比較結果信号SRに基づいて、ブラシレスモータMのコイルの誘起電圧の極性を判定し、判定した極性に対応した位相を有する判定信号SGを出力する。
【0096】
特に、判定回路GCは、ブラシレスモータMが回転している状態において正側トランジスタTraおよび負側トランジスタTrbがオフしている期間中にコンパレータCOMから出力された比較結果信号SRに基づいて、コイルの誘起電圧(通電端子Txの電圧)の極性を判定する。
【0097】
ここで、例えば、
図5に示すように、既述の通電信号回路TDは、負側トランジスタTrbがオンしている期間中に、比較結果信号SRをサンプリングすることを指示するサンプリング信号SLを判定回路GCに出力する。
【0098】
そして、判定回路GCは、このサンプリング信号SLに応じて、比較結果信号SRをサンプリングする。
【0099】
そして、判定回路GCは、サンプリングした比較結果信号SRが、第1の電圧V1は第2の電圧V2未満であることを規定している(例えば、“Low”レベルである)場合には、コイルの誘起電圧(通電端子Txの電圧)が負の極性であると判断する。
【0100】
この場合、判定回路GCは、例えば、“High”レベルの判定信号SGを出力する。
【0101】
一方、判定回路GCは、サンプリングした比較結果信号SRが、第1の電圧V1は第2の電圧V2以上であることを規定している(例えば、“High”レベルである)場合には、コイルの誘起電圧(通電端子Txの電圧)が正の極性であると判断する。
【0102】
この場合、判定回路GCは、例えば、“Low”レベルの判定信号SGを出力する。
【0103】
また、位相差算出回路PAは、位置検出信号SHおよび判定信号SGが入力される。
【0104】
この位相差算出回路PAは、位置検出信号SHの位相と判定信号SGの位相との位相差を算出する。
【0105】
また、位相差記憶回路PMは、位相差算出回路PAにより算出された位相差を記憶する。この位相差記憶手段PMは、例えば、不揮発性記憶装置(例えば、NAND型フラッシュメモリ等)である。
【0106】
そして、位置情報補正回路PIは、算出された位相差と予め設定された基準値との差に基づいて、駆動電圧Vdの位相の補正量を規定する。ここでは、駆動電圧Vdの位相の補正量は、算出された位相差と予め設定された基準値との差である。
【0107】
これにより、位置情報補正回路PIは、ブラシレスモータMのロータの回転位置に関する情報を補正する。
【0108】
なお、既述の基準値は、ブラシレスモータMのコイルの位置と、このコイルの誘起電圧を検出する位置センサHの正規位置との電気角の位相差に基づいて決定される。
【0109】
そして、通電信号回路TDは、位相差算出回路PAにより算出された位相差と基準値との差がゼロに近づくようにして駆動電圧Vdの位相が補正されるように、通電信号SCを出力する。
【0110】
これにより、位置センサHがブラシレスモータMの取り付け位置の影響が低減され、ブラシレスモータMのロータ位置の検出精度が向上することとなる。
【0111】
なお、モータ駆動装置2000のその他の構成は、
図1に示すモータ駆動回路1000と同様である。
【0112】
次に、以上のような構成を有するモータ駆動装置2000の動作特性の一例について説明する。
【0113】
図6は、位置センサHがブラシレスモータMの正規位置に取り付けられている場合における、位置検出信号SH、判定信号SG、および、PWM制御信号SPWMの位相の関係の一例を示す図である。また、
図7は、位置センサHがブラシレスモータMの正規位置に取り付けられていない場合における、位置検出信号SH、判定信号SG、および、PWM制御信号SPWMの位相の関係の一例を示す図である。また、
図8は、ブラシレスモータMが時計回りで回転する場合における、ステータのコイルの鎖交磁束、位置センサH、および、ロータの磁極の位置関係の一例を示す図である。
図9は、
図8に示すブラシレスモータMが時計回りで回転する場合における、各信号波形の一例を示す図である。
【0114】
例えば、
図8、
図9に示すように、ブラシレスモータMが時計回りで回転する場合、位置センサHのホール信号Hupは、U相のコイルの鎖交磁束Φuに対して、60deg進んでいる。そして、U相のコイルの誘起電圧EMFuは、鎖交磁束Φuに対してπ/2遅れている。したがって、U相のコイルの誘起電圧EMFuは、ホール信号Hupに対応する信号Hu(位置検出信号SH)に対して150deg遅れる。
すなわち、位置センサHがブラシレスモータMの正規位置に取り付けられている場合、判定信号SGと位置検出信号SHとの位相差は、150deg(既述の基準値に対応する)となる。この場合は、駆動電圧Vdの位相の補正量はゼロであり、補正が不要である(
図6)。
【0115】
一方、位置センサHがブラシレスモータMの正規位置からずれて取り付けられている場合、判定信号SGと位置検出信号SHとの位相差は、例えば、120degとなる。この場合は、駆動電圧Vdの位相の補正量は30deg(150deg−120deg)であり、この補正量だけ補正が実行される(
図7)。
【0116】
また、
図10は、ブラシレスモータMが反時計回りで回転する場合における、ステータのコイルの鎖交磁束、位置センサH、および、ロータの磁極の位置関係の一例を示す図である。
図11は、
図10に示すブラシレスモータMが反時計回りで回転する場合における、各信号波形の一例を示す図である。
【0117】
図10、
図11に示すように、ブラシレスモータMが反時計回りで回転する場合、位置センサHのホール信号Hupは、U相のコイルの鎖交磁束Φuに対して、60deg遅れている。そして、U相のコイルの誘起電圧EMFuは、鎖交磁束Φuに対してπ/2進んでいる。したがって、U相のコイルの誘起電圧EMFuは、ホール信号Hupに対応する信号Hu(位置検出信号SH)に対して30deg遅れる。
すなわち、位置センサHがブラシレスモータMの正規位置に取り付けられている場合、判定信号SGと位置検出信号SHとの位相差は、30deg(既述の基準値に対応する)となる。この場合は、駆動電圧Vdの位相の補正量はゼロであり、補正が不要となる。
【0118】
一方、位置センサHがブラシレスモータMの正規位置からずれて取り付けられている場合、判定信号SGと位置検出信号SHとの位相差に基づいて、駆動電圧Vdの位相の補正量だけ補正が実行される。
【0119】
なお、既述の
図6ないし
図10の例では、U相コイルに関係する信号に注目して説明しているが、W相コイルおよびV相コイルについても同様である。
【0120】
以上のように、本実施例1に係るモータ駆動装置2000によれば、ブラシレスモータMのロータ位置の検出精度が向上するため、効率を向上することができる。
【0121】
特に、モータ駆動装置2000は、センサ取り付け精度を緩和することができ、製造コスト抑制することができる。
【0122】
なお、実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。