【実施例1】
【0009】
本実施例では、パワーコンディショナへの電力供給が途絶えた時点のブレーカの状態をメモリに記憶させることで、ブレーカの遮断か、系統または太陽電池からの電力供給が途絶えたのかがわかる機能を説明する。
【0010】
図1は、本実施例のパワーコンディショナの構成図の例である。
【0011】
図1にて、パワーコンディショナ100は、系統1と太陽電池2から電力供給を受けている。パワーコンディショナ100には、系統側ブレーカ10、直流側ブレーカ11、制御電源用ブレーカ12、PT20、トランス21、フィルタ22、CT23、インバータ24、直流部コンデンサ25、制御電源回路30、制御回路40を備えて構成され、制御回路40は、運転条件判定部41、パルス生成部42、ブレーカ状態検出部43、系統異常検出手段50を備える。
【0012】
インバータ24は太陽電池2から受けた直流電力を交流電力に変換し、フィルタ22、トランス21を介して系統1に接続されている。
【0013】
系統1側には系統側ブレーカ10、太陽電池2側には直流側ブレーカ11を搭載している。
【0014】
系統1は、制御電源用ブレーカ12を介して制御電源回路30へ電力を供給し、この制御電源回路30から制御回路40へ電源を供給している。また、制御電源回路30は太陽電池2からも電力供給を受けているため、系統1または太陽電池2のどちらか一方が電力を供給できる状態であれば、制御電源回路30は制御回路40へ電源を供給できる。
【0015】
この制御回路40は、系統異常検出手段50、運転条件判定部41、パルス生成部42、ブレーカ状態検出部43を有し、また、ブレーカ状態検出部43は、系統側ブレーカ10、直流側ブレーカ11、制御電源用ブレーカ12(以下、全ブレーカとする)の補助接点信号を取り込んでいる。
【0016】
制御回路40が有する系統異常検出手段50は、制御回路40の外部に設けられていても問題ない。
【0017】
系統異常検出手段50は、PT20で電圧を検出し、系統異常判定信号を運転条件判定部41に出力している。
【0018】
運転条件判定部41は、系統異常検出手段50から入力された信号と、直流部コンデンサ25の電圧を監視し、運転が行える条件が整っていれば、パルス生成部42へ信号を出力する。
【0019】
パルス生成部42は運転条件判定部41から信号を入力されると、PT20とCT23から検出している電圧、電流、また、監視している直流部コンデンサ25の電圧をもとに、インバータ24へ6本のスイッチング信号を出力する。
【0020】
系統異常検出手段50にて行っている系統の監視により、系統1に異常が発生すると運転条件を不成立とし、運転中の場合は停止する。系統が復電すると、予め選択していた自動または手動の復帰方法による動作を行う。自動を選択していた場合は自動的に運転を再開し、手動を選択していた場合は、外部からの手動復帰信号が無ければ運転条件を成立させない。
【0021】
系統異常検出には電力会社との連系協議時に設定する検出時限が存在する。検出時限分の異常を検出することで系統異常と判断する。
【0022】
この系統異常検出を行うため、制御回路40に系統異常検出手段50を設けている。
【0023】
図2の系統異常検出手段構成図を用いて、系統異常検出手段について説明する。
【0024】
系統異常検出手段50には、RMS演算51、PLL52、単独運転判定部53、OV判定部54、UV判定部55、OF判定部56、UF判定部57がある。ここで、OVは過電圧、UVは不足電圧、OFは過周波数、UFは不足周波数を指す。
【0025】
RMS演算51では、PT20で検出した三相の交流電圧信号から実効値を計算し、OV判定部54とUV判定部55へ出力する。
【0026】
OV判定部54は、RMS演算51より入力された信号を、OV閾値と比較し、OV閾値よりも大きい状態が、検出時限よりも長い時間継続した場合に異常信号を出力する。
【0027】
UV判定部55は、RMS演算51より入力された信号を、UV閾値と比較し、UV閾値よりも小さい状態が、検出時限よりも長い時間継続した場合に異常信号を出力する。
【0028】
同様にPLL52では、PT20で検出した三相の交流電圧信号から周波数を演算し、OF判定部56、UF判定部57へ周波数を出力する。
【0029】
OF判定部56は、PLL52より入力された信号を、OF閾値と比較し、OF閾値よりも大きい状態が、検出時限よりも長い時間継続した場合に異常信号を出力する。
【0030】
UF判定部57は、PLL52より入力された信号を、UF閾値と比較し、UF閾値よりも小さい状態が、検出時限よりも長い時間継続した場合に異常信号を出力する。
【0031】
単独運転判定部53は、PT20で検出した電圧を判定し、単独運転動作を行っていた場合、信号を出力する。
【0032】
これら、OV判定部54、UV判定部55、OF判定部56、UF判定部57、単独運転判定部53のいずれかから異常信号が出力された場合に系統異常と判断し、系統異常信号を運転条件判定部41へ出力する。
【0033】
ここで、
図3の系統異常検出のタイムチャートを用いて、夜間に停電が発生した場合の動作を説明する。
【0034】
夜間及び直流側からの制御電源回路30への電力供給が無い状態で停電が発生すると、パワーコンディショナ100への電力供給が途絶えてしまうが、制御電源回路30の内部にあるコンデンサによって制御回路40への電源供給が持続される。その後電源供給が途絶え、系統が復電するとパワーコンディショナ100が起動する。
【0035】
このとき、検出時限が短く設定された場合は、系統異常を検出してから制御回路40への電源供給が途絶える。この場合、電源供給が途絶える前に検出した異常を記憶装置等に保存し、次回の電源投入時に本情報を利用すれば、系統復電後は手動復帰待機状態となる。しかしながら、ブレーカ遮断時においても系統異常が検出できてしまうため、手動復帰待機状態となってしまう。
【0036】
一方、検出時限を長く設定していた場合は、夜間に停電が発生すると、系統異常と判断する前に制御回路40への電源供給が途絶えるため、系統異常を適切に検出することはできない。
【0037】
この検出時限は、連系される電力系統に合わせて適切な値が決定されるため、数秒程度の値となる場合もあり、一般的に利用される電解コンデンサ等の回路では、現実的ではない。
【0038】
外部に電力供給装置を設けることで、夜間に停電が発生した場合でも制御回路40へ電源を供給することが可能となるため、系統異常検出処理が正常に動作することができるが、システムのコストアップのみならず、定期的にメンテナンスを行わなければ故障の際に正常に動作しない可能性がある。
【0039】
上記に述べるように、外部からの電力供給装置無しで長時間の系統異常を検出することは非常に困難である。
【0040】
そこで、制御電源回路30に電力が供給され、制御回路40が起動した際に必ず手動復帰とする方法がある。
【0041】
この場合も長く設定された系統異常の検出は不可能だが、系統復電後に手動復帰操作が無く、自動的に運転を再開してしまうことを回避できる。
【0042】
この場合、ユーザによるブレーカ遮断後の再投入時にも本来不要な手動復帰操作が要求されることから、使い勝手の低下が懸念される。
【0043】
そこで、夜間停電とユーザによるブレーカ遮断を区別し、停電時のみを手動復帰状態とする方法が考えられる。
【0044】
夜間停電は、太陽電池2からの直流電力供給がない状態で、系統1からの電力供給が途絶えるため、制御回路40への電源供給が無くなる状態である。これは、直流側ブレーカ11と制御電源用ブレーカ12を遮断した場合にも同様となる。
【0045】
PT20にて電圧を常に監視しているが、電圧の状態だけでは夜間停電とブレーカ遮断の区別をすることができない。
【0046】
そこで本発明では、パワーコンディショナ100への電力供給が途絶えた時点のブレーカの状態を次の電源投入時に確認することで、電力の供給が無くなった要因が夜間停電か、ブレーカ遮断によるものかを判別できる手段を提供する。
【0047】
この方法として、夜間停電直前までパワーコンディショナが運用されている場合、全ブレーカが投入された状態でパワーコンディショナ100への電力供給が無くなるため、全ブレーカが投入された時点でその情報を記憶し、系統復電時にその情報を確認することで、夜間停電が発生したかどうかが判別できる。
【0048】
系統側ブレーカ10を含め、どれか一つでもブレーカが遮断された場合は、全ブレーカが投入された時点の情報を無効とする。
【0049】
この判別方法を
図4の停電検出フローを用いて説明する。
【0050】
パワーコンディショナが起動すると(S401)、初めに起動時処理を行い、通常処理に遷移する。この通常処理では、ブレーカの状態を確認しており(S404)、全ブレーカが投入されていれば停電検出フラグをONし(S406)、どれか一つでもブレーカが遮断されていた場合は、検出フラグをOFFする(S405)。通常処理中は、常にブレーカの状態を確認している。
【0051】
そして、起動時処理の際に手動復帰待機状態へ遷移するかどうかを、この停電検出フラグを確認することで判定を行っている(S402)。停電検出フラグがONであった場合、手動復帰待機状態へ遷移し(S403)、通常処理へ移行する。
【0052】
この停電検出フラグの情報を記憶させる方法として、電源を供給された揮発性メモリに書込む方法がある。このとき、揮発性メモリに供給する電源は、電力供給装置ではなく、メモリの状態を保存するだけの電力を備えたバッテリを指す。
【0053】
また、揮発性メモリの代わりに不揮発性メモリを使用することで、バッテリを使用すること無く、ブレーカの状態を記憶することも可能である。
【0054】
ここで、
図5の夜間停電時の検出処理を用いて、正確にブレーカ状態を検出する方法について説明する。
【0055】
夜間停電時にブレーカ状態検出部43よりもブレーカの補助接点信号が先に切れてしまった場合、ブレーカ状態検出部43はブレーカが遮断されたと判断し、停電検出フラグをOFFしてしまう。
【0056】
ブレーカ状態検出部43よりもブレーカの補助接点信号が後に切れた場合は、停電検出フラグがONの状態を継続し、電源供給が無くなるため、系統復電後に手動復帰待機状態に遷移することが可能となる。
【0057】
このことから、ブレーカ補助接点信号はブレーカ状態検出部43が処理を行えなくなるまでONし続ける必要がある。
【0058】
この動作を実現するために、例えば、制御電源回路30が生成する電源を、抵抗を接続してブレーカの補助接点信号の電圧よりも低くなるようにし、ブレーカ状態検出部43に入力する方法がある。これは、制御回路への電源供給が弱くなっていることを知らせる信号となる。
【0059】
そのためこの電源信号の電圧は、制御回路40への電源供給が途絶えてから、ブレーカ状態検出部43が処理を行えなくなるまでの間にOFFとなる電圧とする。
【0060】
この電源信号がOFFとなった時点で、ブレーカ状態検出部43がブレーカ補助接点信号を無視することで、ブレーカ補助接点信号のOFFがその後検出できたとしても、停電検出フラグをOFFすることはない。
【0061】
ここで、電源信号に接続した抵抗は、例えばダイオードなど、電圧を低下させる効果を持つ部品であれば代用可能である。
【0062】
また、電源信号を作成する方法の他に、制御電源回路30の電流を取り込む電流検出器を設け、ある一定の電流以下になるとブレーカ状態検出部43がブレーカ補助接点信号を無視するようにすることで、代用可能である。
【0063】
上記の方法を用いれば、外部に電力供給装置を設けること無く、夜間に系統異常が発生した場合でも、系統復電後に確実に手動復帰状態とすることが可能となる。また、ユーザによるブレーカ遮断後の再投入操作において、余計な手動復帰操作を行う必要がなく、安価で使いやすいシステムを提供できる。
【0064】
以上のように、パワーコンディショナへの電力供給が途絶えた時点のブレーカの状態を記憶することで、外部に電力供給装置を設けることや、複雑な通信状態判定手段を用いること無く、電力系統の異常かブレーカの作動かを判別できる機能を提供することができる。外部に電力供給装置を設けることなく、パワーコンディショナへの電力供給が途絶えた時点のブレーカの状態を記憶することで、電力系統の異常かブレーカの作動かを判別できるため、システムの低コスト化が実現できる。また、判別方法に通信状態判定手段を用いることも無いため、システムの複雑化を防ぐことが可能となる。