(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
  以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
 
【0022】
  本発明による踏切遮断桿折損検知装置は、子機と親機とから構成され、踏切遮断機が備える遮断桿に設けられた子機から親機への通知の有無によって遮断桿の折損発生の有無を検知するものである。
 
【0023】
  また、以下に示す実施形態は、複数の遮断桿の折損検知が行えるように構成されている。踏切遮断機は、通常、線路を挟んで線路の両側に、一機ずつ或いは二機ずつが設置されるので、ひとつの踏切に対して、二機又は四機の踏切遮断機が存在することになる。以下に示す実施形態は、線路の両側に配置された合計四機の踏切警報機が備える遮断桿の折損検知を行うことができるものとして構成されている。
 
【0024】
  図1は、本発明による踏切遮断桿折損検知装置の構成を説明するための図である。
 
【0025】
  同図に示すように、本発明による踏切遮断桿折損検知装置100は、複数台(本実施形態では4台)の子機110(110a〜110d)と、一台の親機120とによって構成されている。
 
【0026】
  子機110は、折損検知対象となる遮断桿に装着されて使用されるものであって、遮断桿の傾斜状態を監視して、傾斜状態が変化した際に、親機120に対して所定の通知(傾斜状態通知)を行うものである。本実施形態においては、子機110は、遮断桿の先端部分に装着されて、遮断桿が水平状態(遮断桿が完全に降下した状態)から垂直状態(遮断桿が完全に上昇した状態)に移行した際、及び、垂直状態から水平状態に移行した際に、親機120に対して傾斜状態通知を行う。本実施形態においては、傾斜状態通知は、子機110が、所定のデータを、親機120に対して無線通信によって送信することで行われる。
 
【0027】
  親機120は、例えば、各踏切の近くに設けられている踏切器具箱内へ設置されて使用されるものであって、子機110からの傾斜状態通知に基づいて、折損検知対象となる遮断桿の折損発生の有無を判断するものである。本実施形態においては、親機120は、踏切遮断機から出力される遮断機昇降状態信号に基づいて、踏切遮断機の昇降状態を監視し、踏切遮断機の昇降状態が降下状態(遮断状態)から上昇状態(開放状態)に移行した際に、当該移行に伴う傾斜状態通知が各子機110からあるか否かによって、各遮断桿の折損発生の有無を判断する。
 
【0028】
  図2及び
図3は、踏切遮断桿折損検知装置100における遮断桿折損検知方法の概要を説明するための図である。
図2は遮断桿の折損が発生していない状態を示し、
図3は遮断桿の折損が発生した状態を示している。また、
図2(a)及び
図3(a)はそれぞれ、踏切遮断機(遮断桿)が完全に降下した遮断時の状態を示し、
図2(b)及び
図3(b)はそれぞれ、踏切遮断機(遮断桿)が完全に上昇した遮断解除時の状態を示している。
 
【0029】
  図2に示すように、遮断桿210の折損が発生していない状態においては、踏切遮断機200が完全に降下している時は、遮断桿210は水平方向を向き、踏切遮断機200が完全に上昇している時は、遮断桿210は垂直方向を向くこととなる。すなわち、踏切遮断機200が上昇動作及び降下動作を繰り返す度に、遮断桿210の傾斜状態についても水平状態から垂直状態への移行及び垂直状態から水平状態への移行を繰り返すことになる。その結果、遮断桿210に装着された子機110の傾斜状態についても、踏切遮断機200の上昇動作及び降下動作に伴って変化することになる。
 
【0030】
  一方、
図3に示すように、遮断桿210の折損が発生した状態においては、子機110が装着された遮断桿の先端側部分211は、基端側部分212から分離してしまい、踏切遮断機200の上昇動作及び降下動作が行われても、傾斜状態は変化しないようになる。その結果、遮断桿210に装着された子機110の傾斜状態についても、踏切遮断機200の上昇動作や降下動作が行われても変化しないことになる。
 
【0031】
  踏切遮断桿折損検知装置100においては、遮断桿210の折損が発生した場合、踏切遮断機220が上昇動作や降下動作を行っても、子機110の傾斜状態に変化が生じなくなることを利用して、遮断桿210の折損の発生を検知する。より具体的には、まず、子機110は、遮断桿210の上昇及び降下に伴う傾斜状態の変化を検知すると、傾斜状態通知を、親機120に対して送る。一方、親機120は、踏切遮断機220の昇降状態を監視し、踏切遮断機220の昇降状態が変化したことを検知すると、当該変化に伴う傾斜状態通知を、子機110から受信したか否かを判別し、当該傾斜状態通知を受信していなければ、遮断桿210に折損が発生していると判断する。
 
【0032】
  次に、踏切遮断桿折損検知装置100を構成する子機110及び親機120の詳細について説明する。
 
【0033】
  まず、子機110の詳細について説明する。
 
【0034】
  図4は、子機110のハードウェア構成を説明するための図である。
 
【0035】
  同図に示すように、子機110は、CPU(マイクロコントローラ)111と、傾斜状態検知部112と、無線通信部113と、太陽電池部114とを備える。
 
【0036】
  CPU111は、子機110の動作を制御するためのものであり、内部にメモリ(ROM115及びRAM116)及びタイマ117を備えている。CPU111は、内部のROM115に予め記録されたプログラムを実行することで、子機110の各種機能を実現する。また、CPU111は、タイマ117を利用することで、定期通知(後述)のための時間管理等を行う。
 
【0037】
  傾斜状態検知部112は、子機110が装着された遮断桿の傾斜状態を検知するためのものである。本実施形態においては、傾斜状態検知部112は、ボール式の傾斜スイッチで構成されており、例えば、子機110が装着された遮断桿が水平状態の場合、デジタル値「0」を表す信号を出力し、子機110が装着された遮断桿が垂直状態の場合、デジタル値「1」を表す信号を出力するように構成されている。傾斜状態検知部112の出力信号は、CPU111のデジタル入力端子(デジタル入力ポート)に接続されており、CPU111は、傾斜状態検知部112の出力信号を読み込み、傾斜状態検知部112の出力信号の状態を確認することができるように構成されている。CPU111は、傾斜状態検知部112の出力信号の状態を確認することで、傾斜状態検知部112によって検知された遮断桿の傾斜状態を確認することができることになる。
 
【0038】
  無線通信部113は、親機120との間で無線通信を行うためのものである。本実施形態においては、無線通信部113は、ZigBee(登録商標)用の無線通信モジュールによって構成されており、CPU111と適宜、電気的に接続されている。
 
【0039】
  太陽電池部114は、子機110の動作に必要な電力を供給するためのものである。本実施形態においては、太陽電池を利用しているので、外部からの電力供給を必要とすることなく、子機110を動作させることが可能となっている。すなわち、電力供給のための配線が不要であり、子機110の遮断桿への装着が容易になっている。更に、乾電池等を利用する場合に比較して、電池切れに伴う交換等が必要ないので、メインテナンスの手間を低減させることができるようになっている。本実施形態においては、子機110を遮断桿に装着した際に、太陽電池部114の受光面が遮断桿の先端側端面において露出するように構成されている。
 
【0040】
  図5は、子機110の機能構成(ソフトウェア構成)を説明するための図である。
 
【0041】
  同図に示すように、子機110は、傾斜状態取得部510と、時間管理部520と、通知要否判別部530と、送信処理部540とを備える。各部510〜540は、基本的に、CPU111が、内部のROM115に予め記録されたプログラムを実行することによって実現される。
 
【0042】
  傾斜状態取得部510は、遮断桿の傾斜状態を取得するためのものである。本実施形態では、傾斜状態取得部510は、傾斜状態検知部112からの出力信号を読み取ることで、遮断桿の傾斜状態を取得する。すなわち、傾斜状態検知部112の出力信号が接続されたCPU111のデジタル入力ポートの値を読み出すことで、遮断桿の傾斜状態を取得する。傾斜状態取得部510は、適当な頻度で、遮断桿の傾斜状態の取得を繰り返す。
 
【0043】
  時間管理部520は、親機120への定期的な通知を行うための時間管理を行うものである。より具体的には、時間管理部520は、予め決められた一定時間が経過する毎に、定期通知フラグをセットする(定期通知フラグの値を「1」にする)。定期通知フラグは、定期通知の要否を示すものであって、「1」の場合、定期通知が必要であることを示し、「0」の場合、定期通知が必要ではないことを示す。なお、後述するように、定期通知が行われると、定期通知フラグはクリアされる(定期通知フラグの値が「0」にされる)。定期通知フラグの値は、例えば、CPU111内部のRAM116上に確保された所定の領域に記憶される。本実施形態においては、時間管理部320は、CPU111が、内部のタイマ117を利用することで実現される。
 
【0044】
  通知要否判別部530は、傾斜状態取得部510によって取得された遮断桿の傾斜状態及び定期通知フラグ等に基づいて、親機120への通知を行うか否かを判断するものである。具体的には、まず、遮断桿の傾斜状態に変化があったか否かによって、親機120への通知を行うか否かの判断を行う。すなわち、遮断桿の傾斜状態が水平状態から垂直状態に変化した場合、及び、垂直状態から水平状態に変化した場合に、親機120への通知(傾斜状態通知)を行うと判断する。遮断桿の傾斜状態に変化があったか否かは、傾斜状態取得部510によって取得された遮断桿の傾斜状態と、傾斜状態フラグとの比較を行って、両者が相違しているか否かによって判別する。傾斜状態フラグは、傾斜状態取得部510によって以前に取得された遮断桿の傾斜状態を示すものであって、傾斜状態フラグの値は、例えば、CPU111内部のRAM116上に確保された所定の領域に記憶される。傾斜状態フラグの値は、遮断桿の傾斜状態に変化があった場合に、今回取得された遮断桿の傾斜状態(変化後の傾斜状態)の値に適宜更新される。
 
【0045】
  また、通知要否判別部530は、定期通知フラグがセットされているか否かによって、親機120への通知を行うか否かの判断も行う。すなわち、定期通知フラグがセットされていた場合は、親機120への通知(定期通知)が必要と判断する。通知要否判別部530における処理の詳細については後述する。
 
【0046】
  送信処理部540は、親機120に所定の通知を行うための送信データを、親機120に送信するためのものである。より具体的には、送信処理部540は、無線通信部113を制御して、傾斜状態通知用の送信データ、及び、定期通知用の送信データを、親機120に送信する。
 
【0047】
  図6は、子機110から親機120に送信される送信データの構成を説明するための図である。
 
【0048】
  同図に示すように、子機110から親機120へ送信される送信データ600には、子機ID610と、定期通知フラグ620と、傾斜状態フラグ630とが含まれる。
 
【0049】
  子機ID610は、各子機110を識別するための情報である。送信データ600に子機ID610を含ませることによって、当該送信データ600を受信した親機120は、当該送信データ600が、いずれの子機110から送信されたものであるかを判別することが可能となる。本実施形態では、子機IDとして、各子機110が備える各ZigBee用無線通信モジュールに一意に割り当てられている64ビットのIEEEアドレスを利用する。
 
【0050】
  定期通知フラグ620は、送信データ600が定期通知用のものであるか否かを示すものである。送信データ600に定期通知フラグ620を含ませることによって、当該送信データ600を受信した親機120は、当該送信データ600が、定期通知用の送信データであるか否かを判別することが可能となる。すなわち、定期通知フラグ620の値が「1」であれば、当該定期通知フラグ620を含む送信データ600は、定期通知用の送信データであり、定期通知フラグ620の値が「0」であれば、当該定期通知フラグ620を含む送信データ600は、定期通知用の送信データではない(傾斜状態通知用の送信データである)ということになる。
 
【0051】
  傾斜状態フラグ630は、傾斜状態通知の種類を示すものである。送信データ600に傾斜状態フラグ630(及び定期通知フラグ620)を含ませることによって、当該送信データ600を受信した親機120は、当該送信データ600が、遮断桿の傾斜状態が水平状態から垂直状態に移行したことに伴う傾斜状態通知(垂直移行通知)か、遮断桿の傾斜状態が垂直状態から水平状態に移行したことに伴う傾斜状態通知(水平移行通知)かを判別することが可能となる。すなわち、傾斜状態フラグ630の値が「1」(かつ、定期通知フラグ620の値が「0」)であれば、当該傾斜状態フラグ630(及び定期通知フラグ620)を含む送信データ600は、垂直移行通知であり、傾斜状態フラグ630の値が「0」(かつ、定期通知フラグ620の値が「0」)であれば、当該傾斜状態フラグ630(及び定期通知フラグ620)を含む送信データ600は、水平移行通知であるということなる。
 
【0052】
  図7は、子機110における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
 
【0053】
  同図に示すように、まず、時間管理部520によって、定期通知の間隔(周期)を規定する一定時間が経過したか否かが判別される(S701)。判別の結果、当該一定時間が経過していた場合は(S701:Yes)、時間管理部520によって、定期通知フラグがセットされる(S702)。そして、時間管理部520では、改めて前記一定時間の計数(カウント)が開始される。一方、前記一定時間が経過していなかった場合は(S701:No)、そのまま、次の処理に移行する。
 
【0054】
  次に、通知要否判別部530によって、遮断桿の傾斜状態に変化があったか否かが判別される(S703)。すなわち、傾斜状態取得部510を介して取得された現時点の傾斜状態と、以前に取得された傾斜状態を示す傾斜状態フラグとを比較することで、遮断桿の傾斜状態に変化があったか否かが判別される。なお、傾斜状態フラグの値は、子機110の動作開始時に適当な値(例えば、「0」)に初期化されている。
 
【0055】
  判別の結果、遮断桿の傾斜状態に変化があった場合は(S703:Yes)、親機120への傾斜状態通知が必要と判断され、まず、傾斜状態フラグの値が今回取得された遮断桿の傾斜状態(変化後の傾斜状態)に更新される(S704)。そして、送信処理部540によって、傾斜状態通知用の送信データが、親機120へ送信される(S705)。その後、再び、上述したS701の処理に戻って、S701以下の処理が繰り返される。
 
【0056】
  一方、遮断桿の傾斜状態に変化がなかった場合は(S703:No)、通知要否判別部530によって、定期通知フラグがセットされているか否かが判別される(S706)。判別の結果、定期通知フラグがセットされていた場合(S706:Yes)、すなわち、定期通知フラグの値が「1」であった場合は、定期通知が必要と判断され、送信処理部540によって、定期通知用の送信データが、親機120へ送信される(S707)。そして、定期通知フラグがクリアされ(S708)、その後、再び、上述したS701の処理に戻って、上述したS701以下の処理が繰り返される。
 
【0057】
  一方、定期通知フラグがセットされていなかった場合(S706:No)、すなわち、定期通知フラグの値が「0」であった場合は、定期通知は不要と判断され、再び、上述したS701の処理に戻って、S701以下の処理が繰り返される。
 
【0058】
  以上のような処理を行うことによって、子機110は、親機120に対して傾斜状態通知及び定期通知を行うことが可能となる。
 
【0059】
  次に、親機120の詳細について説明する。
 
【0060】
  図8は、親機120のハードウェア構成を説明するための図である。
 
【0061】
  同図に示すように、親機120は、CPU(マイクロコントローラ)121と、外部条件入力部122と、無線通信部123と、検知結果出力部124とを備える。
 
【0062】
  CPU121は、親機120の動作を制御するためのものであり、内部にメモリ(ROM125及びRAM126)及びタイマ127を備えている。CPU121は、内部のROM125に予め記録されたプログラムを実行することで、親機120の各種機能を実現する。また、CPU121は、タイマ127を利用することで、子機110からの通知を受け取った時刻の管理等を行う。
 
【0063】
  外部条件入力部122は、親機120の遮断桿折損検知動作を制御するための外部信号を内部に取り込むためのものであって、フォトカプラ等で構成される。本実施形態においては、遮断桿折損検知動作を制御するための外部信号として、遮断機昇降状態信号が入力可能に構成されている。
 
【0064】
  遮断機昇降状態信号は、踏切遮断機(遮断桿)の昇降状態(例えば、上昇していること、又は、降下していること)を示す信号であって、親機120は、当該遮断機昇降状態信号に基づいて、遮断桿折損が発生しているか否かの判別処理を開始する。本実施形態においては、遮断機昇降状態信号として、踏切遮断機が完全に降下していることを示す信号(遮断機降下信号)が入力される。一般に、踏切遮断機の制御系からは、踏切遮断機が完全に降下していることを示す信号(遮断機降下信号)が出力されており、当該遮断機降下信号は、踏切に設置されたすべての踏切遮断機について降下が完了したことを列車の運転士に知らせるための踏切遮断反応灯(踏切動作反応灯)の制御や、沿線住民に対する騒音対策として、すべての踏切遮断機の降下完了後に警報音の音量を自動的に低下させるための踏切警報機の制御等に利用されている。本実施形態においては、踏切遮断機の制御系から出力される遮断機降下信号を利用して、遮断桿折損検知動作の制御を行う。
 
【0065】
  無線通信部123は、子機110との間で無線通信を行うためのものである。本実施形態においては、無線通信部123は、ZigBee用の無線通信モジュールによって構成されており、CPU121と適宜、電気的に接続されている。
 
【0066】
  検知結果出力部124は、遮断桿の折損が発生したこと等を外部の監視装置等に通知するための信号を出力するものであって、リレー等によって構成される。具体的には、検知結果出力部124は、遮断桿の折損発生を検知したことを示す折損検知信号を出力する。更に、後述するように、本実施形態における親機120は、各子機110の不良検知も行っており、検知結果出力部124は、子機不良を検知したことを示す子機不良検知信号も出力する。
 
【0067】
  図9は、親機120の機能構成(ソフトウェア構成)を説明するための図である。
 
【0068】
  同図に示すように、親機120は、受信処理部910と、時刻管理部920と、受信時刻管理テーブル930と、折損判別部940と、子機不良判別部950とを備える。各部910、920、940及び950は、基本的に、CPU121が、内部のROM125に予め記録されたプログラムを実行することによって実現される。また、受信時刻管理テーブル930は、CPU121内部のRAM126上に確保された所定の領域に設けられる。
 
【0069】
  受信処理部910は、子機110によって送信された送信データを受信するためのものである。具体的には、受信処理部910は、無線通信部123を制御して、子機110が送信した送信データを受信する。更に、受信処理部910は、子機110から所定の送信データを受信すると、当該送信データを受信した時点の時刻を、時刻管理部920から取得して、受信時刻管理テーブル930に格納する。受信処理部910における処理の詳細いては後述する。
 
【0070】
  時刻管理部920は、時刻の管理を適宜行い、受信処理部910等に対して現在時刻を提供するものである。本実施形態においては、時刻管理部920は、CPU121が、内部のタイマ127を利用することで実現されており、時刻管理部920が起動された時点からの経過時間を時刻として利用する。
 
【0071】
  受信時刻管理テーブル930は、子機110からの所定の送信データを受信した時刻を管理するもの(受信時刻管理部)である。本実施形態においては、受信時刻管理テーブル930は、各子機110から送られてくる3種類の送信データの受信時刻を管理する。受信時刻管理テーブル930の詳細については後述する
 
【0072】
  折損判別部940は、外部条件入力部122を介して入力された遮断機昇降状態信号と、受信時刻管理テーブル930に格納された情報とに基づいて、遮断桿の折損が発生しているか否かを判別するものである。すなわち、折損判別部940は、遮断機昇降状態信号(遮断機降下信号)に基づいて、踏切遮断機が完全に上昇したことを検知すると、受信時刻管理テーブル930に格納された情報を確認して、各子機110から当該上昇(水平状態から垂直状態への移行)に伴う傾斜状態通知を受信しているか否かを確認する。そして、当該傾斜状態通知を受信していない子機110が存在する場合は、当該子機110が装着された遮断桿に折損が発生していると判断する。そして、検知結果出力部124を制御して、遮断桿の折損発生を検知したことを示す折損検知信号を外部に出力する。折損判別部930における処理の詳細については後述する。
 
【0073】
  子機不良判別部950は、受信時刻管理テーブル930に格納された情報に基づいて、各子機110が正常に動作しているか否かを判別するものである。すなわち、子機不良判別部950は、定期的に、受信時刻管理テーブル930に格納されている情報を確認して、各子機110から定期通知用の送信データを定期的に受信しているか否かを判別し、定期通知用の送信データを定期的に受信していない子機110については、なんらかの異常が発生していると判断する。そして、検知結果出力部124を制御して、子機110の不良を検知したことを示す子機不良検知信号を外部に出力する。子機不良判別部950における処理の詳細については後述する。
 
【0074】
  図10は、受信時刻管理テーブル930の構成を説明するための図である。
 
【0075】
  同図に示すように、受信時刻管理テーブル930は、「子機番号」フィールド931と、「子機ID」フィールド932と、「定期通知受信時刻」フィールド933と、「垂直移行通知受信時刻」フィールド934と、「水平移行通知受信時刻」フィールド935とを備える。
 
【0076】
  「子機番号」フィールド931には、親機120によって管理される子機110を、親機120内において区別するための情報(番号)が格納される。本実施形態においては、4台の子機110を管理するため、同図に示すように、「1」から「4」の番号が格納されている。
 
【0077】
  「子機ID」フィールド932には、各子機110からの通知(通知の送信元)を識別するための情報が格納される。本実施形態では、各子機110が備える各ZigBee用無線通信モジュールに一意に割り当てられている64ビットのIEEEアドレスが、各子機110からの通知を識別するための情報として「子機ID」フィールド932に格納される。踏切遮断桿折損検知装置100の利用を開始する際は、子機110と親機120との間で通信を行うためのネットワーク(本実施形態においては、ZigBeeのPAN)を形成するために、当該ネットワークに参加する子機110を親機120に登録することが必要となるが、その際、各子機110から通知されるIEEEアドレスが「子機ID」フィールド932の該当箇所に格納されることになる。
 
【0078】
  「定期通知受信時刻」フィールド933には、各子機110から定期通知を受信した(最も最近の)時刻が格納される。「定期通知受信時刻」フィールド933は、各子機110から定期通知用の送信データを受信する度に、該当部分が更新される。
 
【0079】
  「垂直移行通知受信時刻」フィールド934には、各子機110から遮断桿が垂直状態に移行したことを通知する傾斜状態通知(垂直移行通知)を受信した(最も最近の)時刻が格納される。「垂直移行通知受信時刻」フィールド934は、各子機110から垂直移行通知を受信する度に、該当部分が更新される。
 
【0080】
  「水平移行通知受信時刻」フィールド935には、各子機110から遮断桿が水平状態に移行したことを通知する傾斜状態通知(水平移行通知)を受信した(最も最近の)時刻が格納される。「水平移行通知受信時刻」フィールド935は、各子機110から水平移行通知を受信する度に、該当部分が更新される。
 
【0081】
  図11及び
図12は、親機120における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図11は、子機110から所定の送信データを受信した際に実行される処理の流れを示し、
図12は、子機不良及び折損発生を検知するための処理の流れを示している。
 
【0082】
  まず、
図11に示す処理について説明する。
 
【0083】
  子機110からの所定の送信データを受信すると、同図に示すように、まず、受信処理部910によって、時刻管理部920から現在の時刻が取得される(S1101)。
 
【0084】
  次に、子機110から受信した送信データが定期通知のためのものであるか否かが判別される(S1102)。すなわち、当該送信データに含まれる定期通知フラグの値が「1」であるか否かが判別される。
 
【0085】
  判別の結果、子機110から受信した送信データが定期通知のためのものであった場合(S1102:Yes)、すなわち、当該送信データに含まれる定期通知フラグの値が「1」であった場合は、時刻管理部920から取得された時刻が、受信時刻管理テーブル930の「定期通知受信時刻」フィールド933の該当箇所に格納される(S1103)。すなわち、当該送信データに含まれる子機IDに基づいて、「定期通知受信時刻」フィールド933の当該子機IDに対応する箇所に格納される。
 
【0086】
  一方、子機110から受信した送信データが定期通知のためのものでなかった場合(S1102:No)、すなわち、当該送信データに含まれる定期通知フラグの値が「0」であった場合は、続いて、当該送信データが垂直移行通知のためのものであるか否かが判別される(S1104)。すなわち、当該送信データに含まれる傾斜状態フラグの値が「1」であるか否かが判別される。
 
【0087】
  判別の結果、子機110から受信した送信データが垂直移行通知のためのものであった場合(S1104:Yes)、すなわち、当該送信データに含まれる傾斜状態フラグの値が「1」であった場合は、時刻管理部920から取得された時刻が、受信時刻管理テーブル930の「垂直移行通知受信時刻」フィールド934の該当箇所に格納される(S1105)。すなわち、当該送信データに含まれる子機IDに基づいて、「垂直移行通知受信時刻」フィールド934の当該子機IDに対応する箇所に格納される。
 
【0088】
  一方、子機110から受信した送信データが垂直移行通知のためのものでなかった場合(S1104:No)、すなわち、当該送信データに含まれる傾斜状態フラグの値が「0」であった場合は、時刻管理部920から取得された時刻が、受信時刻管理テーブル930の「水平移行通知受信時刻」フィールド935の該当箇所に格納される(S1106)。すなわち、当該送信データに含まれる子機IDに基づいて、「水平移行通知受信時刻」フィールド935の当該子機IDに対応する箇所に格納される。
 
【0089】
  子機110から所定の送信データを受信する度に、以上のような処理を繰り返すことにより、受信時刻管理テーブル930には、所定の送信データを(最も最近)受信した時刻が格納されることになる。
 
【0090】
  次に、
図12に示す処理について説明する。同図に示す処理は、親機120が動作を開始した後に、継続的に実行されるものである。
 
【0091】
  同図に示すように、まず、子機不良判別部550によって、各子機110からの定期通知を受信しているか否かが判別される(S1201)。すなわち、受信時刻管理テーブル930に格納されている各子機110からの定期通知受信時刻と、時刻管理部920から取得される現在時刻とを比較して、所定の時間範囲内(現在時刻の所定時間前から現在時刻までの間)に、各子機110から定期通知を受信しているか否かが判別される。例えば、現在時刻と受信時刻管理テーブル930に格納されている各定期通知受信時刻との差が算出され、当該差が予め決められた閾値未満であれば、定期通知を受信していると判別され、当該差が予め決められた閾値以上であれば、定期通知を受信していないと判別される。
 
【0092】
  判別の結果、定期通知を受信していない子機110が存在する場合(S1201:No)、当該子機110についてはなんらかの異常が発生していると判断して、検知結果出力部124を制御して、子機110の不良を外部に通知するための子機不良検知信号を外部に出力する(S1202)。
 
【0093】
  一方、すべての子機110から定期通知を受信している場合は(S1201:Yes)、各子機110は正常に動作していると判断して、そのまま、次の処理に移行する。
 
【0094】
  次に、折損判別部940によって、踏切遮断機の昇降状態に変化があったか否かが判別される(S1203)。すなわち、遮断機昇降状態信号(遮断機降下信号)の値を読み取り、現在の遮断機昇降状態信号の値と、以前に読み取った遮断機昇降状態信号の値を示す遮断機昇降状態フラグとの比較を行い、両者に違いが存在するか否かが判別される。遮断機昇降状態フラグの値は、例えば、CPU121内部のRAM126上に設けられた所定の領域に記憶される。なお、遮断機昇降状態フラグの値は、親機120の動作開始時に適当な値(例えば、「0」)に初期化されている。
 
【0095】
  更に、本実施形態においては、踏切遮断機の昇降状態が降下状態から上昇状態に移行した際に、遮断桿の折損検知処理を行うようにしている。すなわち、折損判別部540は、S1203の処理においては、遮断機降下信号の値に基づいて、踏切遮断機が降下状態から上昇状態に移行し始めたか否かを判別し、踏切遮断機が上昇状態に移行し始めたことを検知すると、その後、(後述するS1204の処理で)踏切遮断機が完全に上昇するのを待った上で、遮断桿の折損検知処理を開始をする。前述したように、本実施形態においては、遮断機昇降状態信号として、遮断機降下信号(踏切遮断機が完全に降下していることを示す信号)を利用しているので、遮断機降下信号の値が「1」(踏切遮断機が完全に降下していることを示す値)から「0」(踏切遮断機が完全に降下していないことを示す値)に移行した際に、踏切遮断機が降下状態から上昇状態に移行し始めたと判断されることになる。
 
【0096】
  なお、本発明の原理的には、踏切遮断機が上昇状態から降下状態に移行した際に遮断桿の折損検知処理を行うように構成することも可能である。但し、この場合は、例えば、遮断桿の降下が自動車や人によって一時的に妨害されて遮断桿の水平状態への移行が遅れた場合等に、子機110からの傾斜状態通知が所定の時間範囲内に親機120に到達せず、その結果、親機120が遮断桿の折損が発生したと誤検知してしまう可能性がある。一方、本実施形態のように、踏切遮断機が降下状態から上昇状態に移行した際に、遮断桿の折損検知処理を行うようにすれば、そのような誤検知の可能性を簡便に排除することができる。
 
【0097】
  判別の結果、踏切遮断機の昇降状態に変化があった場合(S1203:Yes)、すなわち、踏切遮断機が降下状態から上昇状態への移行を開始した場合は、次に、踏切遮断機が上昇状態への移行を開始してから、予め決められた一定時間が経過したか否かが判別される(S1204)。判別の結果、当該一定時間が経過していなかった場合は(S1204:No)、当該一定時間が経過するまで、当該判別処理S1204が繰り返される。このように遮断桿の折損検知処理を実際に開始する前に、一定時間の経過を待つのは、遮断桿が水平状態から垂直状態に移行するまでに一定の時間(例えば、5秒程度)が必要なこと、また、遮断桿の傾斜状態の変化に伴い、子機110が遮断桿の傾斜状態の変化を検知して傾斜状態通知を送信し、当該傾斜情報通知が親機120によって受信されるまでにも一定の時間が必要なことから、遮断桿が完全に上昇するのを待つと共に、親機120が、各子機110からの傾斜状態通知を確実に受信するための時間を確保するためである。
 
【0098】
  次に、折損判別部940によって、各子機110から傾斜状態通知を受信しているか否かが判別される(S1205)。すなわち、受信時刻管理テーブル930に格納されている各子機110からの垂直移行通知受信時刻と、時刻管理部920から取得される現在時刻とを比較して、所定の時間範囲内(現在時刻の所定時間前から現在時刻までの間)に、各子機110から垂直移行通知を受信しているか否かが判別される。例えば、現在時刻と受信時刻管理テーブル930に格納されている各垂直移行通知受信時刻との差が算出され、当該差が予め決められた閾値未満であれば、垂直移行通知を受信していると判別され、当該差が予め決められた閾値以上であれば、垂直移行通知を受信していないと判別される。
 
【0099】
  判別の結果、傾斜状態通知を受信していない子機110が存在する場合は(S1205:No)、当該子機110が装着された遮断桿については折損が発生していると判断して、検知結果出力部124を制御して、遮断桿折損の発生を外部に通知するための折損検知信号を外部に出力する(S1206)。
 
【0100】
  一方、すべての子機110から傾斜状態通知を受信している場合は(S1205:Yes)、遮断桿の折損は発生していないと判断して、再度、上述したS1201の処理に戻って、S1201以下の処理が繰り返される。また、踏切遮断機の昇降状態に変化がなかった場合も(S1203:No)、そのまま、再度、上述したS1201の処理に戻って、S1201以下の処理が繰り返される。
 
【0101】
  以上のような処理を行うことによって、親機120は、子機の不良及び遮断桿の折損発生を検知することが可能となる。
 
【0102】
  以上説明したように、上述した踏切遮断桿折損検知装置100によれば、遮断桿折損の発生を自動で検知することができる。また、子機110による定期通知を利用して、子機110自体の異常の発生も別途検知するようにしているので、子機110自体の異常により、子機110からの傾斜状態通知がなかった場合に、遮断桿折損の発生と誤検知することを防ぐことが可能となっている。
 
【0103】
  以上、本発明の実施形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の実施形態は上記のものに限られない。例えば、上述した実施形態においては、子機110は、傾斜状態通知として、垂直移行通知及び水平移行通知の両方を親機120に対して送信していたが、親機120の折損検知処理のタイミングに対応させて、垂直移行通知及び水平移行通知のいずれか一方のみを送信するようにすることも考えられる。