特許第6268084号(P6268084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268084
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ハニカム担体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/02 20060101AFI20180115BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20180115BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20180115BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20180115BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180115BHJP
   B01D 46/00 20060101ALN20180115BHJP
   B01D 53/86 20060101ALN20180115BHJP
   F01N 3/28 20060101ALN20180115BHJP
【FI】
   B28B11/02
   C04B41/85 C
   B01J35/04 301F
   B01J32/00ZAB
   B01J37/02 301Z
   !B01D46/00 302
   !B01D53/86
   !F01N3/28 311H
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-254443(P2014-254443)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-112524(P2016-112524A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2016年9月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】益子 一豊
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−262020(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/044012(WO,A1)
【文献】 実開昭50−027220(JP,U)
【文献】 特開2008−045521(JP,A)
【文献】 特開2009−085202(JP,A)
【文献】 特開2010−223082(JP,A)
【文献】 特開2005−074243(JP,A)
【文献】 特開2013−144954(JP,A)
【文献】 特開2002−227633(JP,A)
【文献】 特開2000−153464(JP,A)
【文献】 特開2004−274825(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0118108(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0069067(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20、46/00、53/86
B01J 32/00、35/04、37/02
B28B 11/02
C04B 41/85
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム基材(28)の外周に、その全周にわたり、環状に突出する環状突部(29A,29B)が設けられたハニカム担体(15A,15B)の製造方法において、
耐熱性の布(32)に粘土質を含む粘性液体(33)を含浸して成る帯状材(31)を前記ハニカム基材(28)の外周に巻回する巻回工程と、前記ハニカム基材(28)の外周に巻回した前記帯状材(31)を押し固めて成形する成形工程と、前記帯状材(31)から水分を除去するように乾燥する乾燥工程とを、この順に実行することを特徴とするハニカム担体の製造方法。
【請求項2】
前記巻回工程を実行する前に、前記ハニカム基材(28)の外周に接着剤を塗布する接着剤塗布工程を実行することを特徴とする請求項に記載のハニカム担体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム基材の外周に、その全周にわたる環状突部が設けられて成るハニカム担体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカム担体をケーシング内に収納して排気浄化装置を構成するにあたり、ハニカム担体のケーシング内での軸方向位置を定めるために、ハニカム基材の外周にその全周にわたる環状突部が設けられるようにしてハニカム担体を構成し、ケーシングの内面に形成される環状凹部に、保持剤を介在させて前記環状突部を係合するようにしたものが、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−144954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示されるものでは、必要とされる外径よりも大径に形成されるハニカム基材の外周に切削加工を施して、必要な外径のハニカム基材の外周に環状突部が設けられたハニカム担体を得るようにしているが、このような切削によるものでは、歩留りの関係で環状突部の高さには限界がある。しかも切削加工後のハニカム担体の形状精度を高めるために、切削加工精度を高める必要があるとともに、切削加工時にハニカム基材に割れ等が生じないようにするために慎重に時間をかけて切削することが必要となり、コストの増大を招いてしまう。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ハニカム基材の外周に設けられる環状突部の高さ調節を自在に調節可能としつつ環状突部を容易に形成可能としたハニカム担体を効率的に製造可能なハニカム担体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ハニカム基材の外周に、全周にわたり、環状に突出する環状突部が設けられるハニカム担体の製造方法において、耐熱性の布に粘土質を含む粘性液体を含浸して成る帯状材を前記ハニカム基材の外周に巻回する巻回工程と、前記ハニカム基材の外周に巻回した前記帯状材を押し固めて成形する成形工程と、前記帯状材から水分を除去するように乾燥する乾燥工程とを、この順に実行することを第の特徴とする。
【0007】
さらに本発明は、第の特徴の構成に加えて、前記巻回工程を実行する前に、前記ハニカム基材の外周に接着剤を塗布する接着剤塗布工程を実行することを第の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、耐熱性の布に粘土質を含む粘性液体を含浸して成る帯状材が、ハニカム基材の外周に配置されて乾燥されることで環状突部をハニカム基材の外周に形成するので、ハニカム基材の外周を切削するものが環状突部の高さに限界があるのに対して、帯状材の巻き数を増やすことで環状突部を高くすることができ、環状突部の高さを自在に調節することができ、ハニカム担体の強度も高めることができる。しかも乾燥処理後には、布地のざらざら感が環状突部の表面に残ることになり、適度な表面粗さを有することになるので、ケーシング内に収容したときの摩擦力をあげて軸方向保持力を高めることができる。
【0009】
また、帯状材をハニカム基材の外周に巻回する巻回工程と、その帯状材を押し固めて成形する成形工程と、前記帯状材から水分を除去する乾燥工程とを重に実行することで、切削工程を不要とすることで歩留りを良くしつつ、ハニカム担体を効率よく製造することができる。
【0010】
さらに本発明の第の特徴によれば、巻回工程の前にハニカム基材の外周に接着剤を塗布するので、帯状材をハニカム基材の外周に強固に固定して、軸方向荷重に対して強固なハニカム担体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態の排気浄化装置の縦断面図である。
図2図1の2−2線断面図である。
図3】帯状材の断面図である。
図4】ハニカム担体の製造工程の一部を順次示す図である。
図5】第2の実施の形態の排気浄化装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明の第1の実施の形態について図1図3を参照しながら説明すると、先ず図1および図2において、この排気浄化装置11Aは、ガソリンエンジンの排気系の一部に用いられるものであり、ケーシング12A内に、排気流通方向13に沿う上流側から順に、排気中のCO、HCおよびNOx等の有害成分を除去するための触媒担体14と、前記排気中に含まれる排気微粒子を捕集するためのハニカム担体15Aとが収容、固定される。
【0014】
図2を併せて参照して、前記ケーシング12Aは、横断面形状を半円状とした一対のケース半体16,17が、それらのケース半体16,17の周方向両端にそれぞれ一体に設けられる鍔部16a,17aを相互に接合することで円筒状に形成される。また前記ケーシング12Aの一端部には、前記排気流通方向13に沿って下流側に向かうにつれて大径となるテーパ筒部18aを有するとともに一端部にフランジ19が溶接等で固着される上流側接続管18が溶接等で固着され、前記ケーシング12Aの他端部には、前記排気流通方向13に沿って下流側に向かうにつれて小径となるテーパ筒部20aを有する下流側接続管20の一端部が溶接等で固着され、該下流側接続管20の他端部にはフランジ21が溶接等で固着される。
【0015】
前記ケーシング12Aには、前記触媒担体14に対応する上流側大径部22と、前記ハニカム担体15Aに対応する下流側大径部23Aとが形成される。
【0016】
前記触媒担体14は、耐熱性を有する第1のマット24を前記上流側大径部22の内面との間に介在させて前記ケーシング12Aに収容され、前記ハニカム担体15Aは、耐熱性を有する第2のマット25を前記下流側大径部23Aの内面との間に介在させて前記ケーシング12Aに収容される。
【0017】
前記ハニカム担体15Aは、本発明に従って構成されるものであり、排気通路となる複数のセル26を区画形成する多孔室の隔壁27を有しつつ炭化珪素等のセラミックスによって円柱状の外周面を有するように形成されるハニカム基材28の外周に、その全周にわたる環状突部29Aが設けられて成る。
【0018】
前記環状突部29Aは、前記ケーシング12A内での前記ハニカム担体15Aの軸方向移動を規制するためのものであり、前記ケーシング12Aにおける前記下流側大径部の内周には、前記環状突部29Aに対応した環状の収容凹部30Aが形成される。
【0019】
前記ハニカム担体15Aを製造するにあたっては、図3(a)で示すように前記ハニカム基材28の外周に帯状材31を巻回する巻回工程と、図3(b)で示すように前記ハニカム基材28の外周に巻回した前記帯状材31を前記ハニカム基材28とともにプレス機34で押し固めて成形する成形工程と、図3(c)で示すように前記帯状材31から水分を除去するように炉35内で乾燥する乾燥工程とを、この順に実行する。なおヒータが設けられたプレス機34を用いて、当該プレス機34で乾燥工程を実行するようにしてもよい。
【0020】
図4を併せて参照して、前記帯状材31は、耐熱性の布32に粘土質を含む粘性液体33を含浸して成るものである。前記布32は、耐熱性を有する無機繊維による織物もしくは不織布から成るものであり、たとえば連続ガラス繊維、シリカ繊維、玄武岩繊維、多結晶繊維、加熱処理済み耐火性セラミック繊維等を好適に用いることができる。また前記粘性液体33は、典型的には、PCT国際出願公開WO2013/044012(A1)号に開示されているような水、無機バインダおよび無機充填粒子を含むスラリーであり、前記ハニカム基材28の構成成分を含んでいることが望ましい。
【0021】
前記帯状材31の前記ハニカム基材28への巻回にあたっては、前記帯状材31の少なくとも一部が複数枚重なるようにして前記ハニカム基材28の外周に巻回されることが望ましく、また前記ハニカム基材28の外周との間に接着剤が介装されるようにしてもよく、この接着剤は、前記巻回工程を実行する前の接着剤塗布32工程で、前記ハニカム基材28の外周に接着剤を塗布するようにすればよい。
【0022】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、ハニカム担体15Aは、ハニカム基材28の外周に、その全周にわたる環状突部29Aが設けられて成るものであり、前記環状突部29Aは、耐熱性の布32に粘土質を含む粘性液体33を含浸して成る帯状材31が、前記ハニカム基材28の外周に該外周から環状に突出するように配置された状態で乾燥されて成るものであり、ハニカム基材の外周を切削することでハニカム担体を構成するものが環状突部の高さに限界があるのに対して、帯状材31の巻き数を増やすことで環状突部29Aを高くすることができ、環状突部29Aの高さを自在に調節することができ、ハニカム担体15Aの強度も高めることができる。この際、前記粘性液体33が前記ハニカム基材28の構成成分を含んでいる場合には、環状突部29Aのハニカム基材28への馴染みがよく、前記軸方向の荷重に対してより強固な環状突部29Aを構成することができる。
【0023】
しかも乾燥処理後には、布地のざらざら感が環状突部29Aの表面に残ることになり、適度な表面粗さを有することになるので、ケーシング12A内に収容したときの摩擦力をあげて軸方向保持力を高めることができる。
【0024】
また前記ハニカム基材28の外周に少なくとも一部が複数枚重なるようにして帯状材31が巻回されるので、ハニカム担体15Aに作用する軸方向荷重に対して強固なハニカム担体15Aを得ることができ、また帯状材31およびハニカム基材28の外周間に接着剤が介材することで、これによっても前記軸方向荷重に対して強固なハニカム担体15Aを得ることができる。
【0025】
またハニカム担体15Aを用いた排気浄化装置11Aでは、前記環状突部29Aに対応した収容凹部30Aを内周に有するケーシング12Aに、耐熱性を有する第2のマット25を前記ケーシング12Aの内面との間に介在させて前記ハニカム担体15Aが収容されるので、ハニカム担体15Aに作用する軸方向荷重に対してケーシング12Aがハニカム担体15Aを強固に保持することができる。
【0026】
またハニカム担体15Aを製造するにあたっては、耐熱性の布32に粘土質を含む粘性液体33を含浸して成る帯状材31を前記ハニカム基材28の外周に巻回する巻回工程と、前記ハニカム基材28の外周に巻回した前記帯状材31を押し固めて成形する成形工程と、前記帯状材31から水分を除去するように乾燥する乾燥工程とを、この順に実行するので、切削工程を不要とすることで歩留りを良くしつつ、ハニカム担体15Aを効率よく製造することができる。
【0027】
さらに前記巻回工程を実行する前に、前記ハニカム基材28の外周に接着剤を塗布する接着剤塗布工程を実行するようにしてもよく、そうすれば帯状材31をハニカム基材28の外周に強固に固定して、軸方向荷重に対して手強固なハニカム担体15Aを効率よく製造することができる。
【0028】
本発明の第2の実施の形態について図5を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0029】
排気浄化装置11Bのケーシング12Bは、触媒担体14に対応する上流側大径部22と、ハニカム担体15Bに対応する下流側大径部23Bとを有するように形成される。
【0030】
ハニカム基材28の外周に、その全周にわたる環状突部29Bが設けられて成るハニカム担体15Bは、耐熱性を有する第2のマット25を前記下流側大径部23Bの内面との間に介在させて前記ケーシング12Bに収容され、前記ケーシング12Bにおける前記下流側大径部23Bの内周には、前記環状突部29Bに対応した収容凹部30Bが形成される。
【0031】
前記環状突部29Bは、第1の実施の形態のハニカム担体15Aの環状突部29Aと同様に、前記ハニカム基材28の外周に帯状材31(第1の実施の形態参照)を巻回する巻回工程と、前記ハニカム基材28の外周に巻回した前記帯状材31を押し固めて成形する成形工程と、前記帯状材31から水分を除去するように乾燥する乾燥工程とをこの順に実行することで形成されるのであるが、前記巻回工程で、前記帯状材31を、その巻き上げ位置を前記ハニカム基材28の軸方向にずらせて折り返しながら複数枚が相互に重なるように巻回することで、前記環状突部29Bは、台形状の横断面形状を有しつつ前記ハニカム基材28の軸方向に長く形成される。このような環状突部29Bに対応して、前記ケーシング12Bの前記収容凹部30Bも軸方向に長く形成される。
【0032】
この第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる上に、ハニカム基材28のセル26に及ぼす荷重を軸方向で均等に近づけることができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0034】
11A,11B・・・排気浄化装置
12A,12B・・・ケーシング
15A,15B・・・ハニカム担体
25・・・マット
28・・・ハニカム基材
29A,29B・・・環状突部
30A,30B・・・収容凹部
31・・・帯状材
32・・・布
33・・・粘性液体

図1
図2
図3
図4
図5