特許第6268086号(P6268086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268086
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】放熱構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20180115BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180115BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01L23/36 M
   H05K7/20 A
   G06F1/20 Z
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-521286(P2014-521286)
(86)(22)【出願日】2013年6月6日
(86)【国際出願番号】JP2013065646
(87)【国際公開番号】WO2013187298
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-135289(P2012-135289)
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-204951(P2012-204951)
(32)【優先日】2012年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大熊 敬介
(72)【発明者】
【氏名】鴻上 亜希
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一男
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−187899(JP,A)
【文献】 特開平05−067893(JP,A)
【文献】 特開平07−249715(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0038124(US,A1)
【文献】 特開2010−171030(JP,A)
【文献】 特開2010−171129(JP,A)
【文献】 特開2012−102301(JP,A)
【文献】 特開2006−096986(JP,A)
【文献】 特開2005−129820(JP,A)
【文献】 特開2004−356525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性液状樹脂(I)と熱伝導性充填材(II)とを含有し、23℃での粘度が30Pa・s〜3000Pa・sであり、湿気または加熱によって硬化可能な熱伝導率0.5W/(m・K)以上の熱伝導性硬化性樹脂組成物を、発熱密度0.2W/cm〜500W/cmの電子部品が実装された基板上の電磁波シールドケース内に充填した状態で硬化させて得られ、熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化物が電磁波シールドケースと電子部品の両者と接触していることを特徴とする放熱構造体であって、
該硬化物のSUS基板に対する180度剥離強度が0.05N/25mm〜1.00N/25mmであることを特徴とする放熱構造体
【請求項2】
硬化性液状樹脂(I)が、硬化性アクリル系樹脂および/または硬化性ポリプロピレンオキサイド系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の放熱構造体。
【請求項3】
熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項1または2記載の放熱構造体。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項記載の放熱構造体を有する携帯情報端末。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項記載の放熱構造体を有する電子機器。
【請求項6】
発熱体および/または放熱体と、硬化性液状樹脂(I)と熱伝導性充填材(II)とを含有し、23℃での粘度が30Pa・s〜3000Pa・sであり、湿気または加熱によって硬化可能な熱伝導率0.5W/(m・K)以上の熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化物との接合体から該硬化物を除去する工程を含む電子機器の修理方法であって、
該硬化物のSUS基板に対する180度剥離強度が0.05N/25mm〜1.00N/25mmであることを特徴とする電子機器の修理方法。
【請求項7】
該硬化物を除去した後、該発熱体および/または該放熱体と、該硬化物と同一または異なる熱伝導性樹脂組成物の硬化物を接合させる工程を含む請求項記載の電子機器の修理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、精密機器などに用いられる基板上の電磁波シールドケース内に熱伝導性硬化性樹脂組成物を充填して硬化させた放熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品(電子機器駆動時に発熱する部材)に入出力される信号に外部からの電磁波がノイズとして重畳したり、電子部品自身が発生する電磁波が他の信号にノイズとして重畳したりするのを防止するため、その電子部品に出入りする電磁波をシールドすることが考えられている。このような電磁波シールドケース構造としては、プリント基板上に搭載された単一または複数の電子部品を上方から金属ケースで覆うものが知られている。
【0003】
ところが、上記構成の場合、電子部品は密閉状態となり、電磁波シールド特性に支障は無いが、電子部品は熱の不良導体である空気に覆われているために他の部品に比べて温度が上昇しやすく劣化が早い、或いは特性が出にくいなどの問題があった。特に、近年の電子部品は発熱密度が大きくなっていることから、熱対策が不可欠な要素となっている。
【0004】
このような系における熱対策の方法として、特許文献1、2には、電磁波シールドのための板金製ケースにより形成される密閉空間を樹脂で充填し、ケース内部に実装された電子部品の発熱をケース外表面に逃がす技術が開示されている。しかしながら、開示されている熱伝導性樹脂はシリコーン系樹脂であることから、低分子シロキサン成分や環状シロキサン成分の揮発による電子部品の接点障害が懸念されるものであった。
【0005】
一方、一般的な熱対策材料としは、特許文献3の熱伝導性グリースや特許文献4の熱伝導性シートがあるが、前者の場合、硬化しない性状のため系外へ流出する恐れがあり、後者の場合、電子部品の微細な凹凸に対応できないといった問題点があるため、上記のような電磁波シールドケース内の電子部品の熱対策には不適応であった。
【0006】
また近年、全世界で普及しつつあるスマートフォン、タブレットなどの携帯情報端末では、電子部品の演算速度が急速に高速化しており、これに伴い、単位時間当たりの発熱量も非常に大きなものとなってきている。一方、スマートフォン、タブレットなどの携帯情報端末では、放熱のための十分な空間を設けることができず、効率よく放熱できなければ、電子部品の温度が上昇しやすく劣化が早くなるなどの問題があった。したがって、従来と比べると格段に放熱効率の良い電磁波シールドケースが求められているのが現状である。
【0007】
特許文献5には架橋性官能基を有する硬化性アクリル系樹脂と熱伝導性充填材からなる熱伝導性材料が開示されている。この熱伝導性材料は、高い熱伝導率を有するだけでなく、硬化前は流動性を有するため、シート状やゲル状の熱伝導性材料と異なり、凸凹形状の物体に対して良好な密着性を有することができ、使用時の剥がれ落ちやエアギャップ等に起因する接触熱抵抗の上昇を抑制することができる。また、室温で硬化するため、グリース状熱伝導性材料の課題である系外への経時的な流出がないことや、シリコーン系熱伝導性材料の課題である発熱体電子部品の接点障害の原因である低分子シロキサン成分や環状シロキサン成分が揮発する可能性がないことといった長期安定性に優れる材料であった。
【0008】
しかしながら、熱伝導性材料には、作業現場や保守現場における取り扱いや作業性、特に、修理や点検、部品交換の際に施工した熱伝導性材料層を取り外す作業(リペア工程)において、発熱体や放熱体から容易に剥離できること、熱伝導性材料層が一部残存しても打ち継ぎにより性能が劣化することなく利用可能であることが求められている。
【0009】
このような熱伝導性材料層の剥離性については、例えば特許文献6には、剥離性が改善された硬化性シリコーン系樹脂について開示されている。しかしながら、シリコーン組成物であることから、前述した低分子シロキサン成分の揮発という問題点があった。また、特許文献7には主鎖骨格がポリイソブチレンである硬化性ポリイソブチレン系樹脂に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05−067893号公報
【特許文献2】特開2001−251088号公報
【特許文献3】特開2003−15839号公報
【特許文献4】特開2011−236365号公報
【特許文献5】特開2010−53331号公報
【特許文献6】特開2006−96986号公報
【特許文献7】特開2003−27025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、基板上の電磁波シールドケース内に設置された電子部品の熱対策として、低分子シロキサン成分等による電子部品の接点障害や、長期使用時の系外への流出の懸念がない熱伝導性硬化性樹脂組成物を充填・硬化した放熱構造体を提供することを目的とする。また、発熱密度が大きい電子部品にも適用できる放熱構造体を提供することを目的とする。さらに、電子機器の簡便な修理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
硬化性液状樹脂(I)と熱伝導性充填材(II)とを含有し、23℃での粘度が30Pa・s〜3000Pa・sであり、湿気または加熱によって硬化可能な熱伝導率0.5W/(m・K)以上の熱伝導性硬化性樹脂組成物を、発熱密度0.2W/cm〜500W/cmの電子部品が実装された基板上の電磁波シールドケース内に充填した状態で硬化させて得られることを特徴とする放熱構造体に関する。
【0013】
硬化性液状樹脂(I)が、硬化性アクリル系樹脂および/または硬化性ポリプロピレンオキサイド系樹脂であることが好ましい。
熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化物が電磁波シールドケースと電子部品の両者と接触していることが好ましい。
熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化後の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、本発明の放熱構造体を有する携帯情報端末に関する。
本発明はまた、本発明の放熱構造体を有する電子機器に関する。
【0015】
本発明はまた、発熱体および/または放熱体と、硬化性液状樹脂(I)と熱伝導性充填材(II)とを含有し、23℃での粘度が30Pa・s〜3000Pa・sであり、湿気または加熱によって硬化可能な熱伝導率0.5W/(m・K)以上の熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化物との接合体から該硬化物を除去する工程を含む電子機器の修理方法であって、
該硬化物のSUS基板に対する180度剥離強度が0.05N/25mm〜1.00N/25mmであることを特徴とする電子機器の修理方法に関する。
該硬化物を除去した後、該発熱体および/または該放熱体と、該硬化物と同一または異なる熱伝導性樹脂組成物の硬化物を接合させる工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱伝導性硬化性樹脂組成物は、液状樹脂であることから、電磁波シールドケース内を隙間なく充填することができるだけでなく、硬化することによって継時的な系外への樹脂組成物の流出の懸念がない。この熱伝導性硬化性樹脂組成物を用いた本発明の放熱構造体は、電磁波シールドケース内の電子部品の発熱を、電磁波シールドケースや基板に伝達することができるため、電子部品の発熱を抑制することができ、電子部品の性能劣化の抑制に大いに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る放熱構造体の一例を示す概略図である。
図2】本発明の実施例に係る概略断面図である。
図3】本発明の実施例に係る概略上面図である。
図4】本発明の実施例に係る概略断面図である。
図5】本発明の実施例に係る概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明にかかる放熱構造体は、硬化性液状樹脂(I)と熱伝導性充填材(II)とを含有し、23℃での粘度が30Pa・s〜3000Pa・sであり、湿気または加熱によって硬化可能な熱伝導率0.5W/(m・K)以上の熱伝導性硬化性樹脂組成物を、発熱密度0.2W/cm〜500W/cmの電子部品が実装された基板上の電磁波シールドケース内に充填した状態で硬化させて得られることを特徴とする。
【0019】
<硬化性液状樹脂(I)>
硬化性液状樹脂は、湿気又は加熱によって硬化可能であり、分子内に反応性基を有し硬化性がある液状樹脂が好ましい。
硬化性液状樹脂の具体例としては、硬化性アクリル系樹脂や硬化性メタクリル系樹脂に代表される硬化性ビニル系樹脂、硬化性ポリエチレンオキサイド系樹脂や硬化性ポリプロピレンオキサイド系樹脂に代表される硬化性ポリエーテル系樹脂、硬化性ポリイソブチレン系樹脂に代表される硬化性ポリオレフィン系樹脂、等が挙げられる。
【0020】
反応性基としては、エポキシ基、加水分解性シリル基、ビニル基、アクリロイル基、SiH基、ウレタン基、カルボジイミド基、無水カルボン酸基とアミノ基との組合せ、等各種の反応性官能基を用いることができる。
【0021】
硬化性液状樹脂が2種類の反応性基の組合せ、あるいは反応性基と硬化触媒との反応により硬化する場合には、2液型組成物として準備した後、基板や発熱体へ塗布する際に2液を混合することにより、硬化性を得ることができる。加水分解性シリル基を有する硬化性液状樹脂の場合には、空気中の湿気と反応して硬化できることから、1液型室温硬化性組成物とすることも可能である。ビニル基とSiH基とPt触媒との組合せの場合や、ラジカル開始剤とアクリロイル基の組み合わせ等の場合には、1液型硬化性組成物あるいは2液型硬化性組成物とした後、架橋温度にまで加熱させることにより、硬化させることもできる。一般的には、放熱構造体全体をある程度加熱するのが容易である場合には、加熱硬化型組成物を用いるのが好ましく、放熱構造体の加熱が困難である場合には、2液型硬化性組成物とするか、湿気硬化型組成物とするのが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0022】
硬化性液状樹脂の中でも、低分子量シロキサンによる電子機器内汚染の問題が少ないこと、耐熱性や生産性・作業性に優れていること等から、硬化性アクリル系樹脂または硬化性ポリプロピレンオキサイド系樹脂を用いるのが好ましい。硬化性アクリル系樹脂としては、公知のさまざまな反応性アクリル樹脂を用いることができる。これらの中でも、分子末端に反応性基を有するアクリル系オリゴマーを用いるのが好ましい。これら硬化性アクリル系樹脂としては、リビングラジカル重合、特に原子移動ラジカル重合にて製造された硬化性アクリル系樹脂と、硬化触媒との組合せを最も好ましく用いることができる。このような樹脂の例として、(株)カネカ製カネカXMAPが良く知られている。また、硬化性ポリプロピレンオキサイド系樹脂としては、公知の様々な反応性ポリプロピレンオキサイド樹脂を用いることができ、例えば、(株)カネカ製カネカMSポリマーを挙げることができる。これら硬化性液状樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上併用して使用しても良い。
【0023】
<熱伝導性充填材(II)>
熱伝導性硬化性樹脂組成物に用いられる熱伝導性充填材としては、市販されている一般的な良熱伝導性充填材を用いることが出来る。なかでも、熱伝導率、入手性、絶縁性等の電気特性を付与可能、充填性、毒性等種々の観点から、グラファイト、ダイヤモンド等の炭素化合物;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物;炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化ケイ素等の金属炭化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;結晶性シリカ:アクリロニトリル系ポリマー焼成物、フラン樹脂焼成物、クレゾール樹脂焼成物、ポリ塩化ビニル焼成物、砂糖の焼成物、木炭の焼成物等の有機性ポリマー焼成物;Znフェライトとの複合フェライト;Fe−Al−Si系三元合金;カルボニル鉄;鉄ニッケル合金;金属粉末等が好ましく挙げられる。
【0024】
さらに、入手性や熱伝導性の観点から、グラファイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、結晶性シリカ、Mn−Zn系ソフトフェライト、Ni−Zn系ソフトフェライト、Fe−Al−Si系三元合金(センダスト)、カルボニル鉄、及び、鉄ニッケル合金(パーマロイ)がより好ましく、グラファイト、α―アルミナ、六方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、Mn−Zn系ソフトフェライト、Ni−Zn系ソフトフェライト、Fe−Al−Si系三元合金(センダスト)、カルボニル鉄、及び、鉄ニッケル合金(パーマロイ)がさらにより好ましく、球状化グラファイト、丸み状あるいは球状のα―アルミナ、球状化六方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、Mn−Zn系ソフトフェライト、Ni−Zn系ソフトフェライト、球状Fe−Al−Si系三元合金(センダスト)、及び、カルボニル鉄が特に好ましい。なお、本発明でカルボニル鉄を用いる場合には、還元カルボニル鉄粉であることが望ましい。還元カルボニル鉄粉とは、標準グレードではなく、還元グレードに分類されるカルボニル鉄粉であり、標準グレードに比べ、カーボンと窒素の含有量が低いことが特徴である。
【0025】
また、これらの熱伝導性充填材は、樹脂に対する分散性が向上する点から、シランカップリング剤(ビニルシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、イソシアナートシラン、クロロシラン、アミノシラン等)やチタネートカップリング剤(アルコキシチタネート、アミノチタネート等)、又は、脂肪酸(カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の飽和脂肪酸、ソルビン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸等)や樹脂酸(アビエチン酸、ピマル酸、レボピマール酸、ネオアピチン酸、パラストリン酸、デヒドロアビエチン酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、コルム酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸等)等により、表面が処理されたものであることが好ましい。
【0026】
このような熱伝導性充填材の使用量としては、熱伝導性硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の熱伝導率を高くすることができる点から、熱伝導性充填材の容積率(%)が全組成物中の25容量%以上となることが好ましい。25容量%よりも少ない場合は、熱伝導性が十分でなくなる傾向がある。さらに高い熱伝導率を望む場合は、熱伝導性充填材の使用量を、全組成物中の30容量%以上とすることがより好ましく、35容量%以上とすることがさらに好ましく、40容量%以上とすることが特に好ましい。また熱伝導性充填材の容積率(%)が全組成物中の90容量%以下となることが好ましい。90容量%よりも多い場合は、硬化前の熱伝導性硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることがある。
【0027】
ここで熱伝導性充填材の容積率(%)とは、樹脂分及び熱伝導性充填材のそれぞれの重量分率と比重から算出されるものであり、次式により求められる。なお、次式においては、熱伝導性充填材を単に「充填材」と記載した。
充填材容積率(容量%)=(充填材重量比率/充填材比重)÷[(樹脂分重量比率/樹脂分比重)+(充填材重量比率/充填材比重)]×100
ここで、樹脂分とは、熱伝導性充填材を除いた全成分を指す。
【0028】
また、樹脂に対する熱伝導性充填材の充填率を高める1手法として、粒子径の異なる熱伝導性充填材を2種類以上併用することが好適である。この場合、粒子径の大きい熱伝導性充填材と、粒子径の小さい熱伝導性充填材との粒径比を100/5〜100/20程度とすることが好ましい。
【0029】
熱伝導性充填材は、単独の熱伝導性充填材だけでなく、種類の異なる2種以上を併用することもできる。
【0030】
<熱伝導性硬化性樹脂組成物>
熱伝導性硬化性樹脂組成物は、硬化性液状樹脂(I)と熱伝導性充填材(II)とを含有し、湿気または加熱によって硬化可能である。上記2成分の他に必要に応じて、硬化性液状樹脂を硬化させるための硬化触媒、熱老化防止剤、可塑剤、増量剤、チクソ性付与剤、貯蔵安定剤、脱水剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、難燃剤、電磁波吸収剤、充填剤、溶剤、等が添加されていても良い。
【0031】
熱伝導性硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない程度に、熱伝導性充填材以外の各種充填材を必要に応じて用いても良い。熱伝導性充填材以外の各種充填材としては、特に限定されないが、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、ケイソウ土、白土、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、非晶質球形シリカ等)、カーボンブラックのような補強性充填材;ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛およびシラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末等の樹脂粉末等の充填材;石綿、ガラス繊維およびガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填材等が挙げられる。これら充填材のうちでは沈降性シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、酸化チタン、タルク等が好ましい。なおこれら充填材の中には、わずかに熱伝導性充填材としての機能を有しているものもあり、また炭素繊維、各種金属粉、各種金属酸化物、各種有機繊維のように、組成、合成方法、結晶化度、結晶構造によっては優れた熱伝導性充填材として使用可能となるものもある。
【0032】
<熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化前粘度>
熱伝導性硬化性樹脂組成物は、23℃における硬化前の粘度が30Pa・s以上であり、流動性を有するが比較的高粘度である。硬化前の粘度が30Pa・s未満であると、粘度が低いために塗布箇所から硬化物が流失する等の理由で、塗布時の作業性が低下してしまう。硬化前の粘度は好ましくは40Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上である。硬化前の粘度の上限値は、3000Pa・s以下であり、好ましくは2000Pa・s以下である。3000Pa・sを超えると、塗布や注入が困難となったり、塗布時に空気を巻き込んでしまい熱伝導性を低下させる一因となったりする場合がある。硬化前の粘度は、23℃雰囲気下でBH型粘度計を用いて2rpmの条件で測定した値を用いる。
【0033】
<熱伝導性硬化性樹脂組成物の熱伝導率>
熱伝導性硬化性樹脂組成物は、熱伝導率が0.5W/(m・K)以上である。熱伝導性硬化性樹脂組成物は、熱を効率的に外部に伝える必要があることから、熱伝導率が高いことが求められる。熱伝導率は、好ましくは0.7W/(m・K)以上、より好ましくは0.8W/(m・K)以上、さらに好ましくは0.9W/(m・K)以上である。このような高熱伝導性樹脂を用いることにより、電子部品が空気と接している場合と比較して、電子部品の熱を効率よく電磁波シールドケースや基板に逃がすことが可能となる。
【0034】
<熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化物の熱伝導率>
熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化後の熱伝導率は0.5W/(m・K)以上であることが好ましい。熱を効率的に外部に伝える必要があることから、硬化物の熱伝導率が、0.7W/(m・K)以上であることがより好ましく、0.8W/(m・K)以上であることがさらに好ましく、0.9W/(m・K)以上であることが特に好ましい。このような高熱伝導性樹脂を用いることにより、電子部品が空気と接している場合と比較して、電子部品の熱を効率よく電磁波シールドケースや基板に逃がすことが可能となる。
【0035】
なお、熱伝導性硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の熱伝導率は、熱伝導性硬化性樹脂組成物の熱伝導率のプラスマイナス20%の範囲内にあることが好ましい。
【0036】
<硬化物の硬度>
熱伝導性樹脂組成物の硬化物の硬度は、高温時の熱膨張や歪みを吸収できるように低いことが好ましい。材料間の線膨張率差による剥離やクラックを防ぐため、硬度はアスカーC型硬度計で10以上99以下であることが好ましく、10以上95以下であることがより好ましく、20以上90以下であることがさらに好ましい。
【0037】
<硬化物の180度剥離強度>
本発明において、熱伝導性樹脂組成物の硬化物は、SUS304板に対する180度剥離強度(剥離速度300mm/min)が0.05N/25mm以上であることが好ましく、0.075N/25mm以上であることがより好ましく、0.10N/25mm以上であることが特に好ましい。また、1.00N/25mm以下であることが好ましく、0.75N/25mm以下であることがより好ましく、0.50N/25mm以下であることが特に好ましい。硬化物の剥離強度が0.05N/25mm未満の場合、電子部品や電磁波シールドケースとの密着力が悪く、接触熱抵抗が高くなって放熱性が低下するおそれがある。また、剥離強度が1.00N/25mmを超えると、特に凸凹状の電子部品や電磁波シールドケースから容易に剥離することができず、作業性が低下する傾向がある。
【0038】
なお、SUS基板に対する180度剥離強度は、例えば、以下のようにして測定する。
1.長さ150mm、幅20mm、厚さ25μmのPETフィルムに熱伝導性硬化性樹脂組成物を200μm塗布し、SUS304板に2kgローラー1往復により貼り合わせる。
2.23℃50%RH条件下で1日養生する。
3.万能引張試験機を用い、剥離角度180度、引張速度300mm/minで剥離試験を行う。
【0039】
尚、180度剥離試験では、硬化物は凝集剥離ではなく界面剥離することが好ましい。凝集剥離の場合、剥離する際に硬化物が両面に残留し、作業効率が悪くなるおそれがある。
硬化物が界面剥離可能であることは、剥離性試験により判断することができる。より具体的には、例えば熱伝導性硬化性樹脂組成物をメモリー基板(MV−DN333−A512M、バッファロー社製)上に5g塗布し、23℃50%RH条件下で1日養生した後、5分間の剥離作業を行ったときの硬化物の残留状況が、○(硬化物の残留なし)の場合や△(一部、硬化物の残留あり)の場合、硬化物が界面剥離可能であると判断する。
【0040】
<放熱構造体>
本発明の放熱構造体の一形態を図1に示す。電子部品13a及び電子部品13bが基板12上に固定され、電子部品13a、13bを覆う電磁波シールドケース11が基板12に設置され、電磁波シールドケース内11の硬化物14は、熱伝導性硬化性組成物を充填後硬化させたものである。
【0041】
<電子部品>
本発明で用いられる電子部品の発熱密度は、0.2W/cm〜500W/cmである。発熱密度が0.2W/cm以上の電子部品は、駆動時に高温まで発熱し、部品の性能低下が発生し易い傾向にある。電子部品は、電子機器・精密機器駆動時に発熱する部材であれば特に限定されない。電子部品の発熱密度は、0.3W/cm以上であることが好ましく、0.5W/cm以上であることがより好ましい。また、300W/cm以下であることが好ましく、100W/cm以下であることがより好ましい。尚、発熱密度とは、単位時間に単位面積から放出される熱エネルギーのことを言う。
【0042】
このような電子部品としては、CPU・GPU等のマイクロプロセッサ、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、パワーアンプ、RFトランシーバIC、増幅用IC、信号処理用IC、LNA、アンテナデバイス、フィルタデバイス、水晶デバイス、通信用各種チップ、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、メモリデバイス、パワーマネジメント、振動モータ、照度・加速度・地磁気・圧力等の各種センサーデバイス、ジャイロスコープ、各種プロセッサ、LED等の各種モジュール、集積回路、トランジスタ、ダイオード、抵抗器、コンデンサ、インダクタ等が挙げられる。
【0043】
電子部品は、基板上に一つだけあってもよいし、複数個が基板上に取り付けられていても良い。また、電磁波シールドケース内の電子部品についても、基板上に一つだけあってもよいし、複数個が基板上に取り付けられていても良い。複数個の電子部品が基板上に取り付けられている場合、電子部品の基板からの高さが一致している必要は無い。未硬化の熱伝導性硬化性樹脂組成物を配置した後硬化させることにより、電子部品の高さが一致していない場合にも密着し、電子部品から発生する熱を効率よく電磁波シールドケースや基板に伝えることができる。
【0044】
電子部品の温度は、その耐熱温度以下とする観点から、130℃以下とすることが好ましく、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは111℃以下である。130℃を超えると、電子部品を形成する半導体素子等の働きが鈍くなったり故障したりする場合がある。なお、電子機器によっては、電子部品の耐熱温度が120℃以下に制限される場合もある。また、耐熱温度が電子部品の温度以上である熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化物を用いることが好ましい。電子部品の温度は、好ましくは0℃以上である。
【0045】
<電磁波シールドケース>
電磁波シールドケースの材料は、電磁波を反射、伝導、又は吸収することにより電磁波シールド性能を発揮する材料であれば特に限定されるものでない。例えば、金属材料やプラスチック材料、各種磁性材料、炭素材料などを用いることができる。中でも、電磁波シールド性能(導電性・透磁率が高い)、材料強度、加工性、価格の観点から金属材料を好適に用いることができる。
【0046】
金属材料としては、金属元素のみからなる金属材料が好適である。具体的には、金属元素単体よりなる金属材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の周期表1族元素;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素(ランタン、セリウムなど)、アクチノイド元素(アクチニウムなど)等の周期表3族元素;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の周期表4族元素;バナジウム、ニオブ、タンタル等の周期表5族元素;クロム、モリブデン、タングステン等の周期表6族元素;マンガン、テクネチウム、レニウム等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム、オスミウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム、イリジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム、白金等の周期表10族元素;銅、銀、金等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム、水銀等の周期表12族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表13族元素;スズ、鉛等の周期表14族元素;アンチモン、ビスマス等の周期表15族元素などが挙げられる。一方、合金としては、例えば、ステンレス、銅−ニッケル合金、真ちゅう、ニッケル−クロム合金、鉄−ニッケル合金、亜鉛−ニッケル合金、金−銅合金、スズ−鉛合金、銀−スズ−鉛合金、ニッケル−クロム−鉄合金、銅−マンガン−ニッケル合金、ニッケル−マンガン−鉄合金などが挙げられる。
また、金属元素とともに非金属元素を含む各種金属系化合物としては、前記に例示の金属元素や合金を含む電磁波シールド性能を発揮できる金属系化合物であれば特に制限されず、例えば、硫化銅等の金属硫化物;酸化鉄、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウムスズ等の金属酸化物や金属複合酸化物などが挙げられる。
上記金属材料の中でも、金、銀、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、銅−ベリリウム合金(ベリリウム銅)、マグネシウム合金、鉄−ニッケル合金、パーマロイ、及び、銅−ニッケル合金が好ましく、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス、銅−ベリリウム合金(ベリリウム銅)、マグネシウム合金、及び、鉄−ニッケル合金が特に好ましい。
【0047】
プラスチック材料としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性プラスチックが挙げられる。
磁性材料としては、例えば、軟磁性粉、各種フェライト、酸化亜鉛ウイスカーなどが挙げられる。磁性材料としては、フェロ磁性やフェリ磁性を示す強磁性体が好適である。具体的には、例えば、高透磁率フェライト、純鉄、ケイ素原子含有鉄、ニッケル−鉄系合金、鉄−コバルト系合金、アモルファス金属高透磁率材料、鉄−アルミニウム−ケイ素合金、鉄−アルミニウム−ケイ素−ニッケル合金、鉄−クロム−コバルト合金などが挙げられる。
さらに、グラファイト等の炭素材料が挙げられる。
【0048】
電磁波シールドケースは、基板上の電子部品から発生する電磁波が外部に流出することを防ぐことを目的とする。電磁波シールドケースの構造は、電磁波シールド性能を発揮できる構造であれば特に限定されない。
一般に、電磁波シールドケースは、図1のように基板上のグランド層に設置され、電磁波発生源となる電子部品を包囲している。一般的に電磁波シールドケースと基板上のグランド層は、半田または導電性材料等で接合されている。
【0049】
電磁波シールドケースは、低周波から高周波にいたる電磁波シールド性能が損なわれない範囲で、穴や隙間が空いていても良い。電磁波シールドケースは一体物であっても良く、例えば枡形状のシールドケースと蓋状のシールドカバーのように2つ以上に分離できるタイプであっても良い。前者の場合、電磁波シールドケースの穴から熱伝導性硬化性樹脂組成物を注入させればよく、後者の場合、基板上に枡形状のシールドケースが設置されている状態で、熱伝導性硬化性樹脂組成物を塗布し、電子部品を十分覆った上で蓋状のシールドカバーを設置すればよい。また、リペア工程では、電磁波シールドケースを基板から取り除いた後、電磁波シールドケース内の熱伝導性樹脂を除去したり、電磁波シールドケースを設置したままで蓋状のシールドカバーを外し、熱伝導性樹脂を除去することで、電子機器のリペア作業を行うことができる。
【0050】
電磁波シールドケースは、高熱伝導性を有しているほど温度分布が均一になり、電磁波シールドケース内の電子部品の発熱を外部に有効に伝えることができるため好ましい。電磁波シールドケースの熱伝導率は、放熱性向上の観点から1W/(m・K)以上であることが好ましく、より好ましくは3W/(m・K)以上、さらに好ましくは5W/(m・K)以上、最も好ましくは10W/(m・K)以上である。電磁波シールドケースの熱伝導率は、好ましくは10000W/(m・K)以下である。
【0051】
<熱伝導性硬化性樹脂組成物の充填方法>
電磁波シールドケース内に熱伝導性硬化性樹脂組成物を充填する方法としては、一般的な液状樹脂塗布・注入方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、スプレー法等の公知の塗布方法を挙げることができる。また、熱伝導性硬化性樹脂組成物を充填したカートリッジやチューブ、シリンジ等の容器からディスペンサーを用いて塗布・注入し、電磁波シールドケース内を充填することができる。また、ディスペンサーを用いずにカートリッジやチューブ、シリンジ等の容器から直接塗布・注入することもできる。
【0052】
充填の際は、基板上に電磁波シールドケースの少なくとも一部分が設置されている状態が好ましい。例えば、電磁波シールドケースが、蓋のように上部に分離できるタイプであれば、蓋を外した状態で熱伝導性硬化性樹脂組成物を塗布・注入して電子部品を覆った後に、蓋を閉じることができ、電磁波シールドケースの一部に穴や隙間があるタイプであれば、その穴や隙間を通して熱伝導性硬化性樹脂組成物を注入することができる。
【0053】
熱伝導性硬化性樹脂組成物を充填後、常温放置または加熱して硬化させる。電磁波シールドケース内に充填した熱伝導性硬化性樹脂組成物は、硬化後に電磁波シールドケースと電子部品の両者と接触していることが好ましく、更には基板とも接触することが好ましい。硬化物が電磁波シールドケースや基板と接触することで、電子部品の熱を効率よく、電磁波シールドケースや基板に伝達することができる。
硬化物の形状は特に限定されず、シート状、テープ状、短冊状、円盤状、円環状、ブロック状、不定形が例示される。
【0054】
<携帯情報端末・電子機器>
本発明の携帯情報端末及び電子機器は、本発明の放熱構造体を有する。
携帯情報端末・電子機器としては、電磁波シールドケースに覆われ、基板上に実装された電子部品を内部に有する機器であれば特に限定されるものではない。携帯情報端末(Personal Digital Assistant:PDA)としては、例えば、電子手帳、PHS、携帯電話、スマートフォン、スマートブック、タブレット端末、デジタルメディアプレイヤー、デジタルオーディオプレイヤー等が挙げられる。電子機器としては、例えば、スーパーコンピュータ、メインフレーム、サーバー、ミニコンピュータ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、ポータブル、プラグ、ゲーム機、スマートテレビ、ラップトップ、ノートパソコン(CULV、タブレットPC、ネットブック、Ultra−Mobile PC、スマートブック、Ultrabook)、ポケットコンピュータ、携帯型ゲーム機、電子辞書、電子ブックリーダー、ポータブルデータターミナル、ヘッドマウントディスプレイ等の機器、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクタ、時計等の表示機器、インクジェットプリンタ(インクヘッド)、電子写真装置(現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置、半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品、リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(以上左記の配線板とは、プリント配線板なども含む)、真空処理装置、半導体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置、断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置、DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハードディスクドライブ等のデータ記録機器、カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、顕微鏡、CCD等の画像記録装置、充電装置、リチウムイオン電池、燃料電池、太陽電池等のバッテリー機器等が挙げられる。
【0055】
<電子機器の修理方法>
本発明に係る電子機器の修理方法は、発熱体および/または放熱体と、硬化性液状樹脂(I)と熱伝導性充填材(II)とを含有し、23℃での粘度が30Pa・s〜3000Pa・sであり、湿気または加熱によって硬化可能な熱伝導率0.5W/(m・K)以上の熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化物との接合体から該硬化物を除去する工程を含む電子機器の修理方法であって、該硬化物のSUS基板に対する180度剥離強度が0.05N/25mm〜1.00N/25mmであることを特徴とする。
該硬化物を除去した後、該発熱体および/または該放熱体と、該硬化物と同一または異なる熱伝導性樹脂組成物の硬化物を接合させる工程を含んでもよい。
【0056】
本発明における「修理」とは、広い意味で修理といわれている行為を意味する。すなわち、点検、部品交換のための行為や、再生産する行為も含まれる。
【0057】
電子機器としては、発熱体および/または放熱体と熱伝導性樹脂との接合体を有するものであれば特に限定されず、上述の携帯情報端末及び電子機器を挙げることができる。
【0058】
発熱体も特に限定されず、たとえば上述の電子部品を用いることができる。発熱体は基板上に実装されていることが好ましい。
【0059】
放熱体も特に限定されず、たとえば上述の電磁波シールドケースを用いることができる。放熱体は、発熱体が実装された基板上に、発熱体を囲うように設置されていることが好ましい。
放熱体の形状は特に限定されない。ケースとカバーのように2つ以上に分離できる形状の場合は、カバーのみを外せばケース部分を設置したまま熱伝導性樹脂を除去することができるので好ましい。また、放熱体が一体物の場合、放熱体を基板からはずした後、熱伝導性樹脂を除去すればよい。
【0060】
熱伝導性樹脂の原料である熱伝導性硬化性樹脂組成物としては、上記の条件を満足すれば特に限定されず、たとえば上述の熱伝導性硬化性樹脂組成物を用いることができる。
本発明によれば、熱伝導性樹脂のSUS基板に対する180度剥離強度が一定の範囲内にあるので、接合体から容易に剥離することができ、電子機器の簡便な修理が可能である。
【実施例】
【0061】
以下に実施例により発明の実施態様、効果を示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0062】
(合成例1)
窒素雰囲気下、250L反応機にCuBr(1.09kg)、アセトニトリル(11.4kg)、アクリル酸ブチル(26.0kg)及び2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(2.28kg)を加え、70℃〜80℃で30分程度撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミンを加え、反応を開始した。反応開始30分後から2時間かけて、アクリル酸ブチル(104kg)を連続的に追加した。反応途中ペンタメチルジエチレントリアミンを適宜添加し、内温70℃〜90℃となるようにした。ここまでで使用したペンタメチルジエチレントリアミン総量は220gであった。反応開始から4時間後、80℃で減圧下、加熱攪拌することにより揮発分を除去した。これにアセトニトリル(45.7kg)、1,7−オクタジエン(14.0kg)及びペンタメチルジエチレントリアミン(439g)を添加して8時間撹拌を続けた。混合物を80℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。
【0063】
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、ろ過助剤として珪藻土、吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイトを加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、内温100℃で加熱攪拌した。混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を内温100℃で減圧下、加熱攪拌して揮発分を除去した。
更にこの濃縮物に吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイト、熱劣化防止剤を加え、減圧下、加熱攪拌した(平均温度約175℃、減圧度10Torr以下)。更に吸着剤として珪酸アルミ、ハイドロタルサイトを追加し、酸化防止剤を加え、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)、内温150℃で加熱攪拌した。
この濃縮物にトルエンを加え、重合体を溶解させた後、混合液中の固形分をろ過で除去し、ろ液を減圧下加熱攪拌して揮発分を除去し、アルケニル基を有する重合体を得た。
【0064】
このアルケニル基を有する重合体、ジメトキシメチルシラン(アルケニル基に対して2.0モル当量)、オルトギ酸メチル(アルケニル基に対して1.0モル当量)、白金触媒[ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のキシレン溶液:以下白金触媒という](白金として重合体1kgに対して10mg)を混合し、窒素雰囲気下、100℃で加熱攪拌した。アルケニル基が消失したことを確認し、反応混合物を濃縮して末端にジメトキシシリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)樹脂(I−1)を得た。得られた樹脂の数平均分子量は約26000、分子量分布は1.3であった。樹脂1分子当たりに導入された平均のシリル基の数をH NMR分析により求めたところ、約1.8個であった。
【0065】
(合成例2)
数平均分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量25,500(送液システムとして東ソー社製HLC−8120GPCを用い、カラムは東ソー社製TSK−GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定したポリスチレン換算値)のポリプロピレンオキシドを得た。続いて、この水酸基末端ポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去した。得られた未精製のアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基である数平均分子量約25,500の2官能ポリプロピレンオキシドを得た。
【0066】
得られたアリル末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、触媒として白金含量3wt%の白金ビニルシロキサン錯体イソプロパノール溶液150ppmを添加して、トリメトキシシラン0.95重量部と90℃で5時間反応させ、トリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン系重合体(I−2)を得た。上記と同様、1H−NMRの測定の結果、末端のトリメトキシシリル基は1分子あたり平均して1.3個であった。
【0067】
(実施例1〜4、比較例2)
合成例1で得られた樹脂(I−1):90重量部、合成例2で得られた樹脂(I−2):10重量部、可塑剤(モノサイザーW−7010(DIC社製)):100重量部、酸化防止剤(Irganox1010):1重量部、表1記載の熱伝導性充填材を手混ぜで十分攪拌混練した後に、5Lバタフライミキサーを用いて加熱混練しながら真空に引き脱水した。脱水完了後に冷却し、脱水剤(A171):2重量部、硬化触媒(ネオデカン酸スズ、ネオデカン酸):各4重量部と混合し、熱伝導性硬化性樹脂組成物を得た。得られた熱伝導性硬化性樹脂組成物の粘度と熱伝導率を測定した後、図2及び図3に示す簡易モデルに熱伝導性硬化性樹脂組成物を充填し、温度と電磁波シールドケース内からの樹脂流出有無を評価した。また、硬化物の熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
熱伝導性硬化性樹脂組成物を用いずに実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0069】
(実施例5、6)
合成例1で得られた樹脂(I−1):90重量部、合成例2で得られた樹脂(I−2):10重量部、可塑剤(モノサイザーW−7010(DIC社製)):100重量部、酸化防止剤(Irganox1010):1重量部、表2記載の熱伝導性充填材を手混ぜで十分攪拌混練した後に、5Lバタフライミキサーを用いて加熱混練しながら真空に引き脱水した。脱水完了後に冷却し、脱水剤(A171):2重量部、硬化触媒(ネオデカン酸スズ、ネオデカン酸):各4重量部と混合し、熱伝導性硬化性樹脂組成物を得た。得られた熱伝導性硬化性樹脂組成物の粘度と熱伝導率を測定した後、簡易モデルに熱伝導性硬化性樹脂組成物を図4または図5のように充填し、温度と電磁波シールドケース内からの樹脂流出有無を評価した。また、硬化物の熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
【0070】
<評価>
(熱伝導性硬化性樹脂組成物の粘度)
23℃50%RH条件下でBH型粘度計を用いて2rpmにて熱伝導性硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。
【0071】
(熱伝導性硬化性樹脂組成物の熱伝導率)
熱伝導性硬化性樹脂組成物をサランラップ(登録商標)内に包み、ホットディスク法熱伝導率測定装置TPA−501(京都電子工業(株)製)を用い、4φサイズのセンサーを2個の試料で挟む方法にて、熱伝導率を測定した。
【0072】
(熱伝導性硬化性樹脂組成物の硬化後の熱伝導率)
熱伝導性硬化性樹脂組成物を23℃50%RH条件下で1日養生し、厚み3mm、直径20mmの円盤状サンプルを2枚得た。ホットディスク法熱伝導率測定装置TPA−501(京都電子工業(株)製)を用い、4φサイズのセンサーを2枚の試料で挟む方法にて、硬化物の熱伝導率を測定した。
【0073】
(電子部品、基板、電磁波シールドケースの温度測定)
図2及び図3に示す簡易モデルを作製し、電子部品、基板、電磁波シールドケースの各モデルの温度をテフロン(登録商標)被覆極細熱電対ダブル線TT−D−40−SLE(オメガエンジニアリング社製)を用いて測定した。尚、温度は電子部品モデルを1時間発熱させた後の値である。
なお、図2図5に示す簡易モデルの材質と寸法はすべて同じであり、以下のとおりである。
11:電磁波シールドケース・・・SUS(0.3mm厚み)製、20mm×20mm×1.40mm
12:基板・・・ガラスエポキシ製、60mm×60mm×0.75mm
13:電子部品・・・アルミナ発熱体(発熱量1W、発熱密度1W/cm)、10mm×10mm×1.05mm
14:熱伝導性硬化性樹脂組成物(又は硬化物)
○印:熱電対取付位置
【0074】
(電磁波シールドケースからの樹脂流出)
熱伝導性硬化性樹脂組成物を電磁波シールドケースに充填後、系外への流出有無を目視で評価した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1に示すように、比較例1に対し、実施例1〜4では電磁波シールドケースと基板、電子部品に接触するように熱伝導性硬化性樹脂組成物を塗布しているため、電子部品の温度が大きく下がるとともに、電磁波シールドケースと基板の温度が上がっていることが分かる。これは電子部品の発熱を電磁波シールドケースや基板に伝達していることを意味している。また表2に示すように、電子部品の上部にのみ塗布し、電磁波シールドケースと接触させた実施例6では、電子部品の温度が大きく下がり、基板には熱が伝わっていないが、電磁波シールドケースには熱が伝わり、放熱できることが分かる。一方、熱伝導性充填材を含有しない比較例2では、上記効果が小さいのみならず、粘度が低いため電磁波シールドケース外への樹脂流出が確認された。
【0078】
(実施例7)
合成例1で得られた樹脂(I−1):100重量部、可塑剤(DIDP(ジェイプラス社製)):100重量部、酸化防止剤(Irganox1010(チバ・ジャパン社製)):1重量部、熱伝導性充填材(AS−40(アルミナ、昭和電工社製)/酸化亜鉛(堺化学工業社製)):1070/500重量部を手混ぜで十分攪拌混練した後に、5Lバタフライミキサーを用いて加熱混練しながら真空に引き脱水した。脱水完了後に冷却し、脱水剤(A171(東レダウコーニングシリコーン社製)):4重量部、硬化触媒(ネオデカン酸スズU−50H(日東化成工業社製)):4重量部と混合し、熱伝導性硬化性樹脂組成物を得た。評価結果を表3に示す。
【0079】
(実施例8)
合成例1で得られた樹脂(I−1):100重量部、可塑剤(DIDP):100重量部、酸化防止剤(Irganox1010):1重量部、熱伝導性充填材(BF−083(水酸化アルミナ、日本軽金属社製)/酸化亜鉛:500/450重量部を手混ぜで十分攪拌混練した後に、5Lバタフライミキサーを用いて加熱混練しながら真空に引き脱水した。脱水完了後に冷却し、脱水剤(A171)):4重量部、硬化触媒(ネオデカン酸スズU−50H):4重量部と混合し、熱伝導性硬化性樹脂組成物を得た。評価結果を表3に示す。
【0080】
(実施例9)
合成例1で得られた樹脂(I−1):90重量部、合成例2で得られた樹脂(I−2):10重量部、可塑剤(DIDP):95重量部、酸化防止剤(Irganox1010):1重量部、熱伝導性充填材(BF−083(水酸化アルミナ、日本軽金属社製)/酸化亜鉛:440/100重量部を手混ぜで十分攪拌混練した後に、5Lバタフライミキサーを用いて加熱混練しながら真空に引き脱水した。脱水完了後に冷却し、脱水剤(A171):2重量部、硬化触媒(ネオデカン酸スズU−50H):4重量部と混合し、熱伝導性硬化性樹脂組成物を得た。評価結果を表3に示す。
【0081】
(比較例3)
熱伝導性硬化性エラストマー(KE3467、信越化学工業社製)を用いて実施例と同様に評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0082】
(比較例4)
熱伝導性硬化性エラストマー(SE4420、東レダウコーニングシリコーン社製)を用いて実施例と同様に評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0083】
<評価>
(熱伝導性硬化性樹脂組成物の粘度)
23℃50%RH条件下でBS型粘度計を用いて2rpmにて熱伝導性硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。
【0084】
(熱伝導性樹脂組成物の硬化後の熱伝導率)
熱伝導性硬化性樹脂組成物を23℃50%RH条件下で1日養生し、厚み3mm、直径20mmの円盤状サンプルを2枚得た。ホットディスク法熱伝導率測定装置TPA−501(京都電子工業(株)製)を用い、4φサイズのセンサーを2枚の試料で挟む方法にて、硬化物の熱伝導率を測定した。
【0085】
(熱伝導性樹脂組成物の硬化後の硬度)
熱伝導性硬化性樹脂組成物を23℃50%RH条件下で1日養生し、20×20×6mmの硬化物を作製し、アスカーC型硬度計で硬度を測定した。
【0086】
(熱伝導性樹脂組成物の硬化後の180度剥離強度)
長さ150mm、幅20mm、厚さ25μmのPETフィルムに熱伝導性硬化性樹脂組成物を200μm塗布し、SUS304板に2kgローラー1往復により貼り合わせた。23℃50%RH条件下で1日養生した後、万能引張試験機を用い、剥離角度180度、引張速度300mm/minで剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
【0087】
(熱伝導性樹脂組成物の硬化後の密着性)
熱伝導性硬化性樹脂組成物をメモリー基板(MV−DN333−A512M、バッファロー社製)上に5g塗布し、23℃50%RH条件下で1日養生した後、ヒートショック試験機(ES−56L、日立アプライアンス社製)を用いて、−40℃と85℃の温度環境下にそれぞれ30分保持させることを100サイクル繰り返してヒートショック試験を行い、硬化物の密着状況を以下の基準で評価した。
○:はがれ無し
△:一部はがれる
×:全て剥がれる
【0088】
(熱伝導性樹脂組成物の硬化後の剥離性)
熱伝導性硬化性樹脂組成物をメモリー基板(MV−DN333−A512M、バッファロー社製)上に5g塗布し、23℃50%RH条件下で1日養生した後、5分間の剥離作業を行ったときの硬化物の残留状況を以下の基準で評価した。
○:硬化物の残留なし
△:一部、硬化物の残留あり
×:硬化物が剥離できず、大部分が残留
【0089】
【表3】
【0090】
表3に示すように、実施例7〜9では、180度剥離試験における剥離強度が小さいため、想定する発熱体(実施例ではメモリ基板)上から硬化物を容易に剥離できることが確認できた。一方、比較例3及び4は180度剥離強度が1.00N/25mmより大きいことから、メモリ基板上に硬化物が一部、または大部分残留する結果となり、作業性が悪いことが分かった。
【符号の説明】
【0091】
11 電磁波シールドケース
12 基板
13 電子部品
13a 電子部品a
13b 電子部品b
14 熱伝導性硬化性樹脂組成物(又は硬化物)
図1
図2
図3
図4
図5