(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268124
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】内部圧力吸収部材を有するポンプ及びポンプヘッド
(51)【国際特許分類】
F04C 2/18 20060101AFI20180115BHJP
F04C 15/06 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
F04C2/18 311C
F04C15/06 C
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-111446(P2015-111446)
(22)【出願日】2015年6月1日
(62)【分割の表示】特願2013-121374(P2013-121374)の分割
【原出願日】2008年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-178835(P2015-178835A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2015年6月1日
(31)【優先権主張番号】60/967,125
(32)【優先日】2007年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510054050
【氏名又は名称】マイクロポンプ インク ア ユニット オブ アイデックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MICROPUMP,INC.,A Unit of IDEX Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】グリムス,デイヴィッド,ジェー
(72)【発明者】
【氏名】ワードル,キース,ジェイ
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭60−033355(JP,Y2)
【文献】
実開平07−042447(JP,U)
【文献】
特開平03−111683(JP,A)
【文献】
特開2007−085341(JP,A)
【文献】
特開2001−182648(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0254974(US,A1)
【文献】
特開2002−227791(JP,A)
【文献】
特開2006−336469(JP,A)
【文献】
特開昭53−027106(JP,A)
【文献】
特開昭59−018297(JP,A)
【文献】
特表2005−511969(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0237658(US,A1)
【文献】
米国特許第04802818(US,A)
【文献】
米国特許第05141415(US,A)
【文献】
米国特許第05704767(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/18
F04C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアキャビティと、少なくとも一つのインレットと、少なくとも一つのアウトレットと、前記ギアキャビティ及びアウトレットと流体連結し、内部が水性液体で十分に満たされたときに前記水性液体と接触する少なくとも1つの内部の非磨耗領域を含むマグネットカップとによって構成されるポンプハウジングと、
前記ギアキャビティ内で互いに噛み合うように配置され、ギア歯間の噛み合いによって前記インレットから前記ギアキャビティを通過して前記マグネットカップへの前記水性液体の流れを促す少なくとも一つの駆動ギア及び被動ギアと、
前記マグネットカップに配置され、前記ギアキャビティの前記駆動ギアと結合する永久磁石と、
前記マグネットカップの外側に配置され、磁石によって前記マグネットカップに結合され、前記マグネットカップ内の磁石を回転させて前記ギアキャビティ内のギアを回転させる磁気ドライバと、
前記ギアキャビティの外側及び前記マグネットカップ内の前記非磨耗領域に前記水性液体に接触するように配置される少なくとも一つの圧力吸収部材と、
前記非磨耗領域において前記圧力吸収部材を保持する保持部材と、を備え、
前記圧力吸収部材は、前記圧力吸収部材に接触する前記水性液体の圧力上昇を受けた時に容量圧縮を示し、前記容量圧縮は少なくとも一部の前記水性液体の圧力上昇を軽減するのに十分である
ギアポンプ。
【請求項2】
前記圧力吸収部材は、前記圧力吸収部材に接触する前記水性液体の圧力減少を受けるとき、体積膨張を示す請求項1に記載のギアポンプ。
【請求項3】
前記圧力吸収部材は、少なくとも前記圧力吸収部材に近いポンプハウジング内で凍結により生じる前記水性液体の膨張量を吸収するために容量を圧縮する請求項1に記載のギアポンプ。
【請求項4】
少なくとも一つの前記圧力吸収部材は、クローズドセル発泡構造物質を備える、請求項1に記載のギアポンプ。
【請求項5】
前記ポンプハウジングの前記水性液体と流体連結する少なくとも一つのセンサと、
前記センサに前記ポンプハウジング内で隣接して位置し、前記ポンプハウジングの前記水性液体と流体連結する少なくとも別の圧力吸収部材と、を備える請求項1に記載のギアポンプ。
【請求項6】
ギアキャビティと、前記ギアキャビティに流体連結する少なくとも一つのインレットと、前記ギアキャビティに流体接続する少なくとも一つのアウトレットと、前記ギアキャビティ及びアウトレットに流体連結するカップハウジングとによって構成されるポンプハウジングであって、前記ポンプハウジングは水性液体によって十分に呼び水がされ、前記カップハウジングは前記ポンプハウジングの内部の水性液体に接触する少なくとも一つの内部の非磨耗領域とを有する、ポンプハウジングと、
前記ギアキャビティで互いに噛み合い、ギア歯間の噛み合いによって前記インレットから前記ギアキャビティを通過して前記ポンプハウジングへの前記水性液体の流れを促す少なくとも一つの駆動ギア及び被動ギアと、
前記カップハウジングに配置され、前記ギアキャビティの前記駆動ギアと結合する永久磁石と、
前記カップハウジングの外側に配置され、磁石によって前記カップハウジングを通過して前記永久磁石と結合され、前記カップハウジング内の磁石を回転させて前記ギアキャビティ内のギアを回転させる磁気ドライバと、
前記ギアキャビティの外側及び前記カップハウジング内の前記非磨耗領域に位置し、前記水性液体と接触し、且つ接触する前記水性液体の圧力上昇を受けた時に容量圧縮を示し、前記容量圧縮は少なくとも一部の前記水性液体の圧力上昇を軽減するのに十分である圧力吸収部材と、
前記非磨耗領域において前記圧力吸収部材を保持する保持部材と、を有する、ギアポンプヘッド。
【請求項7】
前記磁気ドライバは、周囲に配置される前記カップハウジングと同じ軸を有している固定子を備え、前記固定子は、電気的に励起されたときいつでも前記磁石の回転を引き起こすように前記磁石に磁気的に接続されている請求項6に記載のギアポンプヘッド。
【請求項8】
前記ポンプハウジングの前記水性液体と流体連結する少なくとも一つのセンサを有し、
前記圧力吸収部材は、前記センサに隣接して配置される請求項6に記載のギアポンプヘッド。
【請求項9】
少なくとも一つの前記圧力吸収部材は、クローズドセル発泡構造物質のユニットである請求項6に記載のギアポンプヘッド。
【請求項10】
前記クローズドセル発泡構造物質ユニットは、前記ポンプハウジングの前記水性液体の凍結により生じる前記ポンプハウジング内の水性液体の体積の増加を吸収するのに十分な圧縮率を有する請求項9に記載のギアポンプヘッド。
【請求項11】
ギアポンプと、
前記ギアポンプに上流で流体連結する水性液体供給源と、
前記ギアポンプに下流で流体連結する液体排出ポートと、を有し、
前記ギアポンプは、
(a)ギアキャビティと、少なくとも一つのインレットと、少なくとも一つのアウトレットと、前記ギアキャビティ及びアウトレットと流体連結するマグネットカップであり、前記マグネットカップは、内部で実質的に前記水性液体によって呼び水がされたときに前記水性液体と接触する少なくとも一つの内部の非磨耗領域を有するポンプハウジングと、
(b)前記ギアキャビティで互いに噛み合い、ギア歯間の噛み合いによって前記インレットから前記ギアキャビティを通過して前記マグネットカップへの前記水性液体の流れを促す少なくとも一つの駆動ギア及び被動ギアと、
(c)前記マグネットカップに配置され、前記ギアキャビティの前記駆動ギアと結合する永久磁石と、
(d)前記マグネットカップの外側に配置され、磁石によって前記マグネットカップに結合され、前記マグネットカップ内の磁石を回転させて前記ギアキャビティ内のギアを回転させる磁気ドライバと、
(e)前記ギアキャビティの外側及び前記ポンプハウジング内の前記非磨耗領域に位置し、前記水性液体に接触する少なくとも一つの圧力吸収部材であり、前記圧力吸収部材は、前記圧力吸収部材に接触する前記水性液体の圧力上昇を受けた時に容量圧縮を示し、前記容量圧縮は少なくとも一部の前記水性液体の圧力上昇を軽減するのに十分である圧力吸収部材と、
(f)前記非磨耗領域において前記圧力吸収部材を保持する保持部材と、を有する、流体回路。
【請求項12】
前記ポンプハウジングに接続され、前記圧力吸収部材により受ける流体圧力を受けるように前記圧力吸収部材に十分に近い場所に、少なくとも一つのセンサを有する請求項11に記載の流体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、とりわけ液体の流れを駆動するために実質的に呼び水がされた状態において駆動するように構成されたギアポンプ及びその他のポンプに関連する。本発明に係るポンプ及びポンプヘッドは、対象のポンプ及びポンプヘッドは、例えばメッシュギアのような一つかそれ以上の回転部材、又は連続して周期的に駆動する少なくとも一つのポンピング部材を含む、様々な種類を含む。より具体的には、本開示はポンプヘッド内の凍結、圧力変動、またはそのような事象による液体の体積膨張に適応することが可能なポンプ及びポンプヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの種類のポンプは、液体又はその他の流体を最小の逆流でポンピングするのに特に有用であり、またそれらは小型化に適している。一つの例はギアポンプである。もう一つの例はピストンポンプである。3つ目の例は、回転ポンプ部材が互いにかみ合う突出物(ローべ)を有するギアポンプの変動である。ギアポンプ及び関連するポンプは、比較的小さなサイズ、低騒音駆動、信頼性、及び汲み上げられる流体に対しする駆動の清潔性などにより、技術的に大いに受け入れられている。ギアポンプ及び関連するポンプはまた、外部環境から離れて流体をポンピングするのに有利である。この後者の利益は、ポンプドライブシャフトの周囲で必要とされ、漏れが起きやすい油圧シールを排除した磁気的接続ポンプドライブメカニズムの出現により更に強化された。
【0003】
ギアポンプは、使用場所に対して極めて的確な流体の搬送を必要とするアプリケーションを含む多くのアプリケーションに採用されている。その結果、これらのポンプは医療装置及び科学計測に幅広く使用されている。科学技術のその他の多くの分野における発展は、精密なポンプ及び関連した流体搬送システムのための新しい場を生み出した。そのようなアプリケーションは例えば、様々な自動車用途における流体の運搬を含む。
【0004】
自動車用途は、技術的、信頼性及び環境的観点から求められている。技術的な要望は、空間制約、組立及び修理の簡便性、並びに有効性を含む。信頼性の要望は、高耐性、変性耐性、漏れ耐性、流体呼び水(prime)の維持、及び長い耐用年数を含む。環境的な要望は、内部及び外部耐食性並びに幅広い温度範囲での操作能力を含む。
【0005】
一般的な自動車のアプリケーションの温度範囲は、実質的に水及びその他の低濃度水性液体の凍結温度以下の温度を含む。これらの温度は、例えば、自動車が凍える程寒い気候に放置されたときに受けるであろう温度である。その他の多くの物質とは対照的に、水及びほとんどの水性液体は液体から氷へ変化するときに膨張する傾向がある。氷点下の温度に曝される家庭の配管システムで知られているように、凍結膨張により生成される静圧は、パイプを変形させるのに十分な高さである。従ってこれらの圧力は、呼び水がされた状態で氷点下の温度に曝される流体回路に接合されるパイプに実質的な損傷を与える場合がある。
【0006】
上記の観点において、提案されてもよい最も単純な解決方法は、単純に凍結防止剤を液体に加えること、或いは凍結温度を弱めるのに十分な溶質で液体を構成することである。残念ながら、これらの方法で液体を変化させることは、液体の構成要素及びその他の重要な特性を変化させてしまう可能性があり、意図する目的に対して液体を無効にしてしまう場合がある。そのため、凍結膨張により起きる損傷を示すことなく凍結環境によって発生する内部圧力に効率的に持ちこたえることができるポンプの要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開公報2007−0237658号
【特許文献2】米国特許第4802818号
【特許文献3】米国特許第5141415号
【特許文献4】米国特許第5704767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
汲み上げられた液体の出力ストリームの縮小圧力拍動性を示すポンプが求められている。多くの種類のポンプは、例えば実質的に連続的な出力ストリームを運搬するが、それにもかかわらずその出力ストリームは、ポンプヘッドによって一連のギア歯間の液体の増分が下流に搬送されるレートと同期する少なくともいくつかの圧力拍動性を示す傾向がある。静的というよりむしろ動的現象である出力圧力拍動性は、従来のギアポンプ、ピストンポンプなどを含む多くの種類のポンプにより示される。ピストンポンプのような特定の種類のポンプは、ギアポンプのような他の種類より更に高振幅の出力圧力拍動性を示す傾向がある。それにもかかわらず、特定の高精密アプリケーションは、ポンプを使用することでよりよい状態になるであろうし、さもなければ与えられた用途に対してきわめて効果的になり、従来のものより実質的に少ない排出拍動性を生成する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述された要望は、ここに開示されるようなとりわけポンプ、ポンプヘッド、及び方法により達成される。対象のポンプ及びポンプヘッドは、実質的に呼び水がなされた状態で作動する。液体は実質的に非圧縮性であるため、ポンプ内の液体が凍結でき、それにより凍結膨張する場合(その液体が水の場合、凍結時に膨張する)、呼び水がなされた状態で稼動する従来のポンプは、圧力ダメージに対して弱い。例えば、従来の呼び水がなされたポンプにおいて、液体が液体凍結する際の膨張のため余分な流体スペースに行きつくことはとても難しいか或いは不可能である場合がある。また従来の呼び水がなされたポンプは、二重反転ギア、往復ピストン等のポンプの“ポンプ部材”の特有のポンピング動作により発生する圧力変動を示す傾向がある。ここに開示されたようなポンプは、ポンプ作用に伴って起こる比較的低い振幅又は凍結中に発生される比較的高い振幅に関わらず、それらの圧力上昇を吸収するために追加の流体スペースを必要に応じて自動的に提供する。追加の流体スペースの供給は、不定の時間の間、継続的に起こることができ、それはポンプ作用に伴って起こる圧力変動の減少に効果的である。追加の流体スペースの供給は、ポンプ内の液体の凍結に伴なって起こるポンプ内で上昇する圧力を減らすために効果的である静的方式で無期限に維持されてもよい。
【0010】
一つの実施例のポンプは、ポンプキャビティによって明確にされるポンプハウジングと、少なくとも一つのインレットと、少なくとも一つのアウトレットと、を含む。ポンプハウジングは、ポンプハウジングに液体(呼び水)が引き込まれたとき、ポンプハウジングで液体に接触する少なくとも一つの内部非摩耗区域を含む。ポンプは、ポンプキャビティに位置する可動ポンピング部材を含む。ポンプが稼動されたとき、ポンピング部材はポンプキャビティを通じてインレットからアウトレットまで液体の流れを促す。少なくとも一つの圧力吸収部材が非摩耗区域のポンプハウジングの内部に位置し、液体と接触する。“ポンプハウジング内に”というのは、マグネットカップキャビティなど、液体に接触してポンプキャビティと流体連結しているポンプハウジングの付加的な内部キャビティを含む、ポンプキャビティ、インレット、及びアウトレット内のいかなる場所であってもよいが、これに限定されない。圧力吸収部材は、圧力吸収部材に接触する液体内の圧力上昇に曝されるとき、容積圧縮を示すように柔軟特性を有している。容積圧縮は、圧力上昇の少なくとも一部を緩和するのに十分である。圧量上昇を緩和することは、ポンプの凍結膨張損傷を十分に防ぐことができ、及び/又、例えばポンプのアウトレットで汲み上げられた液体の圧力変動を十分に減らすことができる。圧力上昇を緩和することは更に、圧力吸収部材が圧力吸収部材に接触する液体における圧力低下に曝されたとき、容量膨張も示す圧力吸収部材により容易になる。
【0011】
ポンプの特定の実施例において、可動ポンピング部材は、少なくとも一つのギアなどの回転ポンピング部材を有する。これらのギアを含む実施例は一般的に、少なくとも一つの“駆動”ギア及びギアポンプの通常の方法においてそれらの各軸の周囲を反対に回転する少なくとも一つの“被動”ギアを有する。その他の実施例において、可動ポンピング部材は、一般的に往復運動をする少なくとも一つのピストンを含む。
【0012】
圧力吸収部材は、各ユニットがクローズドセル構造発泡素材であることが望ましい。この種類の部材の代表例は、シリコンクローズドセル構造発泡体、フルオロシリコンクローズドセル構造発泡体、ポリウレタンクローズドセル構造発泡体、様々なあらゆるゴム系クローズドセル構造発泡体、及び同類のものを含むが、これに限定されない。特定のアプリケーションは、これに限定されないが例えばアルミニウムクローズドセル構造発泡体のような高剛性クローズドセル構造発泡素材である圧力吸収部材により有効的に行われる。圧力吸収部材のための素材は、化学的不活性、柔軟性、収縮性剛性、所望のサイズ及び形状への製造可能性の簡易性、などにより選択されてもよい。
【0013】
上述されたポンプは、ポンプを作動させる“原動機(mover)”だけではなく、通常“ポンプヘッド”と呼ばれる。ポンプヘッドは、様々な原動機に接続されてもよいユニットとして製造及び流通される場合がある。原動機の代表例は、ポンプヘッドの内部で可動ポンピング部材に直接的又は間接的に結合されてもよい様々な種類のいかなるモータであってもよい。原動機の駆動は、ポンプキャビティ内の可動ポンピング部材に対応する動きを引き起こす。原動機の一例は、可動ポンピング部材に結合される磁石と、その磁石を動かすために(すなわち軸周囲を回転する)磁石に磁気的に結合される磁石ドライバと、を含み、それによりポンピングキャビティ内のポンピング部材を動かす。磁気原動機を有するポンプは、通常“磁気駆動”ポンプと呼ばれる。そのようなポンプは、シャフトシールのような漏れの起きやすい動的シールの排除を可能にするので有利である。また、原動機は、例えば電気モータの電機子の直接結合器のような、可動ポンピング部材に接続される磁気的というよりはむしろ機械的な結合器を含んでいてもよい。
【0014】
ポンプの様々なあらゆる実施例は更に、ポンプハウジング内の液体と流体連結する少なくとも一つのセンサを含んでいてもよい。センサの例として、圧力センサ、温度センサ、流量センサ、化学センサ、及び同類のものを含むがそれに限定されない。望ましくは、ポンプハウジング内で、過度の圧力からセンサを保護するように、及び/又はセンサの近くで圧力変動を穏やかにするように、センサに隣接する少なくとも一つの圧力吸収部材が配置される。センサは一つ以上使用されてもよい。
【0015】
その他の観点に従って、ギアポンプヘッドが提供される。そのようなポンプヘッドの一つの実施例は、ギアキャビティを定義するポンプハウジングと、ギアキャビティに流体で接続される少なくとも一つのインレットと、ギアキャビティに流体で結合される少なくとも一つのアウトレットと、ポンプハウジング内で液体と接触する少なくとも一つの内部非摩耗区域と、を含む。少なくとも一つの駆動ギア及び一つの被動ギアは、ギアキャビティの中で互いに噛み合っている。少なくとも一つの圧力吸収部材は、ポンプハウジング内の非摩耗区域に位置して液体に接触する。圧力吸収部材は、圧力吸収部材に接している液体内で圧力上昇に曝されたとき容積圧縮を示すように柔軟特性を有している。容積圧縮は、圧力上昇の少なくとも一部を緩和するのに十分である。
【0016】
ギアポンプヘッドのポンプハウジングは、カップハウジングを更に含んでいてもよい。カップハウジングは、ギアキャビティと流体連結するカップキャビティを定義する。軸周囲のマグネットの回転が、駆動ギアひいては被動ギアに対応する回転を引き起こすように、カップキャビティは液体及び回転可能な駆動ギアに接続する回転駆動マグネットを含む。圧力吸収部材の適切な位置はカップキャビティ内である。これらの実施例は、モータの電機子に搭載された“駆動”磁石と呼ばれる第二磁石に磁石を磁気的に接続することにより、磁石へ回転を与えることができる。または、カップ内での磁石の回転は、カップハウジングに対して同軸周囲、但し外側、に固定子を配置することにより引き起こされる場合がある。固定子が電気的に励起されたときいつでも磁石の回転を引き起こすように、固定子は磁石と磁気的に結合している。後者のこの実施例は駆動磁石を排除する。
【0017】
上述されたように、ギアポンプヘッドは更に、ポンプハウジング内の液体と流体連結する少なくとも一つのセンサを含んでいてもよい。過度の圧力からセンサを保護し、及び/又はセンサの近くで圧力変動を減らすために、少なくとも一つの圧力吸収部材が、ポンプハウジングの中で、センサに隣接して配置されることが望ましい。
【0018】
その他の観点によると、流体回路が準備される。代表的な回路は、いかなる実施例で上述されたようなポンプと、ポンプの上流でポンプインレットに流体連結される液体供給源と、ポンプの下流でポンプアウトレットに流体連結される液体放出ポートと、を含む。ポンプは、代表例として、ギアポンプ又はピストンポンプであってもよい。しかしながら、これらの特定のポンプは限定されるものではないことは当然のことである。様々な他の特定の種類のポンプは、ここに説明されたような少なくとも一つの圧力吸収部材を容易に収容することができる。
【0019】
また、実質的に呼び水がされたポンプを使用して液体をポンピングする方法に関連して、流体キャビティの液体内において、少なくとも圧力上昇の閾値の大きさを受けることからポンプの流体キャビティを保護するための方法が提供される。このような方法の実施例は、ポンプの流体キャビティ内部の非摩耗区域に圧力吸収部材を配置することを含む。圧力吸収部材は、液体内の流体キャビティが圧力上昇を受けるときいつも、流体キャビティにおいて容量圧縮するために構成され、圧力吸収部材の容量圧縮は、圧力上昇を下げるのに十分である。閾値の大きさは例えば、流体キャビティ内の液体が少なくとも部分的に凍結した場合、流体キャビティ内で発生する圧力であってもよい。そのような場合、圧力吸収部材は、流体キャビティ内で少なくとも部分的な液体の凍結により起きたであろうポンプに対する損傷を防ぐのに十分な容量圧縮をするために構成されることが望ましい。あるいは又は加えて、閾値の大きさは、ポンプの駆動に伴って起こる流体キャビティ内の液体の圧力変動の結果として流体キャビティで発生する圧力である。
【0020】
また、提供されるのは、実質的に呼び水がされたポンプを使用して液体をポンピングする方法に関連して、ポンプによって流れるように駆動される液体における圧力変動を減らすための方法である。このような方法の実施例は、ポンプの流体キャビティ内部の非摩耗区域に圧力吸収部材を配置することを含む。圧力吸収部材は望ましくは、流体キャビティの液体がポンプにより汲み上げられると同時に流体キャビティ内で容積変化するために構成され、容積変化は圧力変動を減らすのに十分である。
【0021】
上述及びその他の物体、特性、並びに本発明の有利な点は、後述の詳細な説明によって更に明確にされ、添付の図により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】ポンプの原動力として使用される固定子を接合した磁気的被動ギアポンプヘッドを含む第一実施例に従ったポンプの斜視図である。
【
図1B】ポンプヘッドを示した
図1Aのポンプの直交端部図である。
【
図1E】
図1Dの円“B”で囲まれた箇所の詳細であり、マグネットカップの端部に位置する圧力吸収部材を示した図である。
【
図3】第二実施例に従った磁気的被動ギアポンプヘッドの拡大詳細図であって、圧力吸収部材はギアと磁石との間に位置している。
【
図4A】第三実施例に従ったポンプの取り付けブロックを示しており、圧力吸収部材は、アウトレット孔に位置している。
【
図4B】
図4Aの取り付けブロックのその他の構成を示しており、圧力吸収部材はアウトレットポート付近の孔に位置し、センサに繋がっている。
【
図5】ピストンポンプのヘッドの一部を通ったセクションであって、圧力吸収部材は、第四実施例に従ってハウジングのピストン孔に位置している。
【
図6】第五実施例に従ったポンプヘッドを含む代表的な流体回路の概略ダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、代表的な実施例において説明されるが、それに限定されるものではない。
【0024】
ここに使用されるように、単数形の“一つの(a)”又は“その(the)”は、その他に明確に指示しない限り複数の形を含む。また、“含む”という表現は“構成する”を意味する。更に、“接続される”という表現は、機械的及びその他の方法で物体を結合又は繋げることを含み、結合される物体の間に介在する要素を排除するものではない。
【0025】
本明細書で説明される事柄及び方法は、何かを制限するものではない。代わりに、本開示は、新しい事柄で明らかになっていない特徴や開示される様々な具体例の特徴を示す。開示された事柄及び方法は特定の観点や特性、或いはそれらの組み合わせに限定するものではなく、また開示された事柄及び方法は、1つ以上の特有の利点や問題が解決されることが要求されているわけではない。
【0026】
いくつかの開示された方法の実施に関しては、説明の都合で特定且つ順序立てて説明している。しかし、以下に説明される特別な手法のために特定の順序にする必要が無い限りは、説明の順番はどのような順番でも良い。例えば、順番に記述された実施例の実施は、幾つかの場合、実施の順番が変えられるか、実施を同時に行ってもよい。さらに、開示された物及び方法は他の物及び方法と併せて使用されてもよいが、簡略化のために添付の図面は様々な方法を示していない場合がある。また、明細書において“生成する”及び“提供する”という表現が、開示された方法を説明するために度々使用される。これらの表現は、実際に行われる実施を高度に抽象化したものである。これらの表現に対応する実際の実施は、実施方法によって変わり、また当業者によって容易に認識される。
【0027】
後述の明細書において、特定の表現、例えば“上”、“下”、“上部”、“下部”、“横の”、“縦の”、“左”、“右”、及びこれらに似たような表現が使用されるかもしれない。これらの表現は、これらの表現が当てはまる所で、相対的な関係を扱う時に、記述を明瞭にするために使用される。しかし、これらの表現は絶対的な関係、位置、方向を表わすものではない。例えば、物体の“上面”は、単純に物体を上下に反転した場合に“下面”になる。それにもかかわらず物体は変わらない。
【0028】
<第一実施例>
第一実施例のポンプ10が
図1A乃至
図1Eに描写される。それらは斜視図(
図1A)、直交端部図(
図1B及び
図1C)、及び断面図(
図1D及び
図1E)である。ポンプ10は磁気被動タイプである。ポンプ10は、作動部12及びポンプヘッド部14を有する。作動部12は、外部ケーシング16と、第一端板18及び第二端板20と、を有し、後述されるポンプヘッド部14のための“原動機”を含む。第二端板20は電気コネクタ22を含む。ポンプヘッド部14は、インレットポート及びアウトレットポート(アウトレットポート26のみ確認できる)を定義する取り付けブロック24を含む。ポンプヘッド部14はまた、シャフト32に実装された回転磁石30を含むカップハウジング28を含む。シャフト32は、回転し且つ被動ギア36と噛み合う駆動ギア34に実装される。ギア34,36は、ギアキャビティ38(インレット及びアウトレットポートの内部表面も含む“ポンプキャビティ”の一部)に配置される。ギアキャビティ38及びカップハウジング28の内部(“カップキャビティ”)は、ポンプ10によって汲み上げられた液体により浸水している。磁石30は本実施例において、カップハウジング28の壁を介して外部ケーシング16内部に含まれたスタータ40に磁気的に接続された複数の磁極を有している。
【0029】
ここに使用される“ギア”は、従来のポンプギアとして、そして互いに反回転関係にあるとき、流体を生成するための同じ第二の部材と噛み合うローブ、歯、又は類似したものを有する様々なその他の回転部材としても構成される回転部材を含む。
【0030】
固定子40は、同軸様式でカップハウジング28を包囲する鉄心44に付随する巻線42を含む。巻線42は、外部ケーシング16内部にも含有される電子装置46によってそれぞれ励起される。電力はコネクタ22を通して電子装置46に供給される。そのため、固定子40の励起は磁石30の軸回転を引き起こし、駆動ギア34を回転させ、被動ギア36を回転する。ギア34、36の反対回転は、キャビティ38を介して液体の流れを促す。特定の液体の改良された運用のために、キャビティ38は吸引シュー(詳述されない)を随意に含んでいてもよい。
【0031】
取り付けブロック24は、キャビティ38に通じ、キャビティをインレット及びアウトレットポート26に連結する通路を定義する。望まれれば又は要求されれば、取り付けブロック24は圧力変換器48(例えばアウトレット26に流体連結してもよい)も含む。圧力変換器48は、固定子40の励起のフィードバック制御を確立する方法において圧力変換器48の電気連結を可能にする電気コネクタ50を含む。取り付けブロック24は第一端部18に接続されて、カップハウジング28内部でカップキャビティ52を確立するためにカップハウジングの周縁に対して封止される。カップキャビティ52は、固定シール(例えばOリング)を使用して封止される。カップキャビティ52はギアキャビティ38と流体連結しており、それによって、上述したように、両者とも汲み上げられた液体により浸水している。また、通常実施の間、少なくともキャビティ52とギアキャビティ38とには、汲み上げられる液体により実質的に呼び水がされる。
【0032】
ポンプキャビティ内部、より具体的には本実施例のカップキャビティ52内部に含まれるのは、圧力吸収部材56である。この実施例において、圧力吸収部材56は磁石の端部に隣接して位置しており、保持リング58で固定されている。その他の実施例において、保持リング58は排除されてもよく、つまり必要に応じてその他の保持方法が使用されてもよい。保持リング58は、圧力吸収部材56を磁石30の回転を妨げない位置に保持する。
【0033】
圧力吸収部材56は、カップキャビティ52の内部及び/又はポンプキャビティ38の内部の液体の圧力上昇に応えて、圧力吸収部材56が圧縮又は収縮することを可能にするあらゆる様々な物質で形成されてもよい。圧力上昇は、ポンプキャビティ内の液体の凍結に付随して起こるような静的、又は汲み上げられる際の液体内の圧力変動の対応する部分のような動的である場合がある。凍結膨張圧力を吸収するために、結果として生じたキャビティ内の圧力上昇は圧力吸収部材56が膨張を“吸収”するように十分収縮することを引き起こし、その結果、ポンプを損傷するであろうポンプ内の圧力の増加を抑制するように、呼び水がされたキャビティ内の液体が凍結し膨張した場合、圧力吸収部材56は十分な収縮可能な容積を有していることが望ましい。一例として、水及び低濃度水溶性は、液体から固体への変化により最大約11%の容積膨張を示す。この容積膨張に応えて収縮することにより、圧力吸収部材56は、カップハウジング28の変形、磁石への損傷、圧力変換器48の損傷、及び/又はポンプ10のその他の部材への損傷のような、ポンプに対する凍結損傷を防ぐ。圧力吸収部材56が圧力変動を減衰させることだけを目的とする場合、ターゲット圧力変動の幅に応じて、凍結膨張に対して保護することを目的とする対応部材より更に小さくてもよい。
【0034】
ギアポンプは、汲み上げられる特定の液体に対して不活性であるいかなる様々な物質から形成されてもよい。例えば、ギア34及び36、カップハウジング28、及び保持リング58にPEEK材が使用されてもよいが、これに限定されない。
【0035】
圧力吸収部材56はその圧力吸収能力に加えて、汲み上げられる流体に対して化学的に不活性であることが望ましく、またポンプ10の全動作作温度範囲に渡ってその圧力適合及び整合性を維持することが望ましい。制限する目的ではなく、圧力吸収部材56を製造するための代表的な物質はフッ素化シリコンクローズドセル構造発泡部材であり、それは高不活性で幅広い温度範囲に渡り柔軟性を維持する。そのような物質を形成するときに、圧力吸収部材56は例えばポンプ内に配されるために適当なサイズと形状に切断されたり穴が開けられたり、又は成形されてもよい。他の候補物質は、一般的なシリコンクローズドセル構造発泡部材、ポリウレタンクローズドセル構造発泡部材、及びあらゆる様々なゴムクローズドセル構造発泡部材である。オープンセル構造は時間とともに液体を吸収する場合があり、圧力吸収能力に影響を及ぼす場合があるため、この“クローズドセル”特性は重要である。
【0036】
圧力吸収部材56は常にゴムのような硬さである必要はない。より硬い構造は、特定の条件または流体に対して適している場合がある。代表的な上述された弾性クローズドセル構造発泡部材より更に硬い物質は、アルミニウムクローズドセル構造発泡部材である。クローズドセル物質は本来、複数のガス気泡の集合であり、サイズ及び/又は気泡の数に特定の制限はない。気泡は大きくても小さくても、少なくても多くても、実質的に全て同じサイズでも異なるサイズでもよい。圧力吸収部材のサイズ、厚さ、硬さ、及び構成のパラメータは、ポンプヘッドのサイズ、ポンプヘッドによって汲み上げられる液体の構成、圧力吸収部材が受けると予測される力、ポンプヘッド内の液体が凍結した場合に予測される体積膨張、減衰される圧力変動の大きさ、ポンプヘッド内部の圧力吸収部材の特定環境、などにより選択されてもよい。圧力吸収部材のその他の有利な点は、圧力上昇に対して迅速に対応できることである。
【0037】
その凍結膨張に関連した圧力を吸収する役割に加え、圧力吸収部材56は更にギア34、36の回転により汲み上げられた液体に与えられた圧力変動を効果的に吸収する。これらの圧力変動は、液体の流れを促すために、回転又は他の可動ポンピング部材に依存する様々な種類のポンプの固有の結果である。変動は一般的に、ギア又は他の可動ポンプ部材の動きの周期性に比例する期間を有する規則的な周期性性質である。変動は、少なくともギアポンプにおいて、通常比較的低いマグニチュードではあるが、変動は特定の用途において及び/又はピストンポンプのような特定の他の種類のポンプには重要である場合がある。ギアポンプにおいて、反対回転ギアはギアにより流れるように促進される液体により占められる定義された容積の間隔である歯を有する、という事実により圧力変動は生じる。圧力吸収部材56は、ギア歯間に存在する汲み上げられた液体のそれぞれの一時的な“振動”に応えて少量を瞬時に収縮することで圧力変動を吸収する。圧力吸収部材56による体積反応はとても早い場合があり、対応する圧力変動に一致する又は実質的に同調するのに十分な早さであってもよい。圧力変動に応えて(及び同調して)周期的な収縮及び膨張を自動的に受けることにより、圧力吸収部材56は効果的にこれらの圧力変動を弱めることができる。従って、圧力吸収部材56は、ポンプハウジングが凍結条件に曝されると予期されていなくても、ポンプハウジングに有利に用いられることができる。
【0038】
圧力吸収部材がギアポンプのアウトレットで弱めることができる圧力変動の程度を調査した実験において、圧力吸収部材を有さないポンプに対して、圧力吸収部材を有するポンプで少なくとも10%のマグニチュードの縮小が観察された。当然のことながら、ポンピング体積が圧力吸収部材の体積に関連して収縮量が変化するとき、収縮量は特定のアプリケーションに適合される。圧力変動を弱めるために有用な圧力吸収部材56のサイズは、ポンプハウジング内の液体の凍結に関連する圧力を吸収するために効果的に収縮しなければならない圧力吸収部材56より更に小さくてもよい。
【0039】
図1Eで示された部分の拡大詳細は、
図2で示され、
図1Eに示された要素に加えて、吸引シュー60を示す。
【0040】
<第二実施例>
第二実施例は、圧力吸収部材56が
図1及び
図2で示されたカップハウジング内で異なる位置を有する以外、第一実施例に類似している。具体的には、第二実施例において、圧力吸収部材56は
図3に示されるように、カップハウジング28の中でギア34と磁石30との間に位置している。すなわち、圧力吸収部材56は磁石30の近位端に隣接して配置されている。圧力吸収部材56は、保持リング58によって保持される。この位置では、圧力吸収部材は、吸引シュー60を保持することができるので、そのような目的のためのバネまたは類似のものの従来の必要性を排除する。
【0041】
その他の構成において、圧力吸収部材はカップハウジングのあらゆる様々な他の位置に配置されている。代表的なその他の配置は、磁石自体への実装及びカップハウジングの内壁が圧力吸収部材で裏打ちされた形でのカップの同軸上への実装を含むが、それに限定されない。
【0042】
<第三実施例>
第一及び第二実施例は、磁気被動ポンプである。しかしながら、ここに開示される理念は、磁気被動ポンプに限定されるものではない。磁気駆動は大抵、動的シール(例えば回転部材に接続される駆動シャフトの周囲のシール)の必要性を排除するので一般的に有利である。動的シール(シャフトシールなど)を有するポンプは、通常磁石又はマグネットカップを有していないが、多様なアプリケーションへの用途がある。シャフトシールは、ポンプヘッド内の液体の凍結膨張により発生される圧力のような、ポンプヘッド内部の余分な圧力により引き起こされる損傷を受けやすい。そのようなポンプヘッド内の少なくとも一つの圧力吸収部材を含んでいることは、動的シールの保護を助け、それによりポンプ自体を凍結膨張損傷から保護する。ポンプヘッド内で液体に接触する少なくとも一つの圧力吸収部材を有していることはまた、上述されたように圧力変動の減衰を提供する。ポンプが実際に駆動される方法は、少なくとも一つの圧力吸収部材をポンプヘッド内に含むことにより提供されるこれらの要望又は改善を著しく変化しない。
【0043】
従って、ポンプが磁気的に駆動されるかにかかわらず、圧力吸収部材56のその他の可能な配置はマグネットカップに制限されない。通常、あらゆる実質的なポンプヘッド内の可能な配置は、汲み上げられた液体に接触するポンプハウジング内の内部非磨耗表面である。いくつかのポンプヘッドにおいて、適当な非摩耗表面はポンプの回転部材上に存在する場合がある。また、単一箇所への配置の代わりに、圧力吸収部材56はポンプヘッドの複数の位置に配置されてもよい。この実施例では、圧力吸収部材はアウトレット26の傍に配置される。参照は、取り付けブロック24及びアウトレット26の近くで
図1(a)の構成の一部を描写した
図4(a)に対して示される。本実施例においてアウトレット取り付け金具130は、アウトレット26に取り付けられる。アウトレット26は、圧力吸収部材134が挿入されているボア132を含む。圧力吸収部材134は、汲み上げられた液体を接続金具130へ導くためにボア136を定義する。取り付け金具130は固定シール138(例えばOリング)を含む。圧力吸収部材134は、少なくとも(a)凍結膨張損傷からのポンプヘッド自体の保護、(b)ポンプヘッドによって汲み上げられる液体における圧力拍動性の削減、を提供する。
【0044】
その他の構成が
図4(B)に示されており、取り付けブロック24及びアウトレット26の近くの領域を描写している。この構成において、アウトレット26は、変換器142(例えば圧力変換器)が挿入されるブランチボア140を含む。固定シール144(例えばOリング)は連結部を封止する。ブランチボア144の中に圧力吸収部材146が挿入される。圧力吸収部材146は、変換器142とアウトレット26の液体との間の流体連結を可能にするボア148を定義する。圧力吸収部材146は、(a)凍結膨張損傷からのポンプヘッド自体の保護、(b)凍結膨張損傷からの変換器142の保護、(c)ポンプヘッドにより汲み上げられる液体内の圧力拍動性の削減、を少なくとも提供する。
【0045】
更に他の構成は、
図4A及び4Bの構成の組み合わせであり、描写されたそれぞれの位置に各圧力吸収部材が配置される。
【0046】
更に他の構成において、変換器142は圧力変換器というよりはむしろ、例えば流速メータである。流速メータは大抵、圧力吸収部材が
図4Aで示される方法に類似した方法で配置されるのを可能にするアウトレット26と一連に連結されており、流速メータは取り付けブロック24と取り付け金具130との間に連結されている。変換器142はまた、例えば、温度センサ、導電センサ、又は化学センサ(例えばイオン特定電極又はpHプローブ)であってもよい。
【0047】
更に他の構成において、各圧力吸収部材は、他の取り付け孔又は連結孔のようなポンプヘッド内のあらゆる様々な孔に挿入される。アウトレット26に類似したこれらのその他の孔はポンプヘッド内部の非摩耗区域であるので、圧力吸収部材には適した位置である。選択される特定の位置は、少なくとも一部分において、ポンプヘッドのサイズ及びレイアウト、機械的、機械加工、又は成形観点からの配置のアクセスのし易さ、並びに取り組まれている特定の圧力吸収仕様、に依存する。
【0048】
<第四実施例>
候補のポンプヘッドの種類は、ギアポンプに限定されない。代表的な他の種類のポンプヘッドは、限定する目的ではなく、無弁ピストンポンプである。無弁ピストンポンプは、特許文献1で開示され参照することで本明細書に組み込まれる。この参照として特に
図11を参照し、ページ9乃至14の説明を添付する。
【0049】
図5は、ピストン212、ハウジング214、ライナー216、インレットポート228、及びアウトレットポート230を含むピストンポンプヘッド200を描写した図である。ピストン212は、ハウジング214で定義されるボア224内部を往復方式(矢印222)で移動する。そのボアに挿入されるのは、ボア内(及びピストン212によって汲み上げられる)の液体と接触する圧力吸収部材226である。圧力吸収部材226は、ピストンポンプによって汲み上げられる液体内で生成される圧力変動を減衰させる働きをする。圧力吸収部材226はまた、凍結環境においてポンプヘッド内(例えばボア224内)で生成される余剰圧力からポンプヘッドを保護する。
【0050】
<第五実施例>
本実施例は、上述されたようなポンプを含む流体回路を対象とする。回路100は
図6に示され、インレット102並びにアウトレット106を有するポンプ及び圧力センサ102を含む。ポンプ及び圧力センサ102は、第一実施例及びその他の実施例で上述された装置10により示される。インレット104はフィルタ108の下流に位置し、ポンプ102によって汲み上げられる液体用の容器として機能するタンクの下流に位置している。アウトレット106は下流注入機112又は回路から放出される液体の他の要素に流体連結している。望まれれば、回路100は、注入機112から実際に放出されない液体をタンク110に戻すための回帰ライン114を含んでいてもよい。
【0051】
図6の回路100は、少なくともポンプ及び圧力センサ102が凍結現象を含む環境にある自動車アプリケーションに使用されるような回路を示す。ポンプ102は、上述されたような圧力吸収部材56を含むため、ポンプ102内部の液体の凍結膨張はその部材により吸収され、それによりポンプに損傷を与える圧力の生成から保護する。
【0052】
開示された発明の方法を適用することができる多くの実施例を考慮すると、描かれた実施例は発明の好ましい例であるだけであり、本発明の観点を制限するものではないことが認識される。むしろ、本発明の観点は、添付の特許請求の範囲により定義される。従って、これらの特許請求の範囲の精神において我々の発明として主張する。