【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表裏層と中間層とを有する熱収縮性多層フィルムであって、前記表裏層は、環状オレフィン系樹脂を60〜80重量%、エチレン系樹脂を20〜40重量%含有し、前記中間層は、オレフィン系樹脂を50〜80重量%、可塑性樹脂を20〜50重量%含有し、前記中間層を構成する樹脂成分の合計を100モル%としたとき、プロピレン成分を35〜70モル%、エチレン成分を1〜10モル%及びブテン成分を1〜10モル%含有
し、前記可塑性樹脂は、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、又はこれらの水素添加物誘導体であることを特徴とする熱収縮性多層フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、中間層を構成する樹脂がプロピレン成分、エチレン成分及びブテン成分を所定の割合で含有することにより、低密度を達成しつつ、優れた収縮特性及び高い剛性を発揮することを見出した。更に、層間剥離を抑制して、透明性を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、表裏層と中間層とを有する。
本明細書中、表裏層とは、表面層と裏面層との両方を意味する。
【0013】
上記表裏層は、環状オレフィン系樹脂を含有することが好ましい。
上記環状オレフィン系樹脂を含有することで、結晶性を低下させ、熱収縮率が高められるとともに、フィルム製膜時の延伸性も向上することができる。
【0014】
上記環状オレフィン系樹脂としては、(a)エチレン又はプロピレンと環状オレフィン(例えば、ノルボルネン及びその誘導体やテトラシクロドデセン及びその誘導体等)との共重合体、(b)該環状オレフィンの開環重合体又はα−オレフィンとの共重合体、(c)上記(b)の重合体の水素添加物、(d)不飽和カルボン酸及びその誘導体等による上記(a)〜(c)のグラフト変性物等が挙げられる。
また、上記環状オレフィン系樹脂の市販品としては、ゼオノア(日本ゼオン社製)、アペル(三井化学社製)、トパス(ポリプラスチックス社製)等が挙げられる。
【0015】
上記環状オレフィンとしては特に限定されず、例えば、具体的には例えば、ノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、6−nーブチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン等が挙げられる。
また、テトラシクロドデセン及びその誘導体としては、例えば、8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン等が挙げられる。
【0016】
上記表裏層における上記環状オレフィン系樹脂の含有量は、下限が60重量%、上限が80重量%である。
上記下限以上上限以下であると、熱収縮性多層フィルムの取扱い性や透明性を良好なものとすることができる。
上記環状オレフィン系樹脂の含有量は、好ましい下限が65重量%、好ましい上限が75重量%である。
【0017】
上記環状オレフィン系樹脂のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定される数平均分子量は1000〜100万であることが好ましい。上記範囲内とすることで、フィルムの製膜が容易になる。
【0018】
上記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は20〜130℃が好ましく、より好ましくは50〜100℃である。上記ガラス転移温度が20℃以上であると、フィルム表面の耐熱性を良好なものとして、装着ライン上で容器同士のブロッキングの発生を抑制することができ、又、自然収縮率を良好な範囲とすることができる。130℃以下であると、横方向の熱収縮率を充分に大きくすることができる。
【0019】
上記環状オレフィン系樹脂の密度は1000〜1050kg/m
3であることが好ましく、1010〜1040kg/m
3であることがより好ましい。
【0020】
上記環状オレフィン系樹脂は、230℃でのMFR(メルトフローレート)が1〜10g/minであることが好ましい。
【0021】
上記表裏層は、更に、エチレン系樹脂を含有することが好ましい。
上記表裏層に含まれる環状オレフィン系樹脂は、皮脂等の脂肪酸エステル等に弱く、容器等に装着して収縮させるまでに人が手で触れる機会があった時に、接触した手の指紋のついた部分が収縮後に白化することがあり、これを改善するためにエチレン系樹脂をさらに含有させることがある。上記エチレン系樹脂を含有することで、優れた耐脂性を付与することが可能となる。
【0022】
上記表裏層における上記エチレン系樹脂の含有量は、下限が20重量%、上限が40重量%である。
上記エチレン系樹脂の含有量が、上記下限以上上限以下であると、得られる熱収縮性多層フィルムの熱収縮率を充分に高めることができる。
上記エチレン系樹脂の含有量は、好ましい下限が25重量%、好ましい上限が35重量%である。
【0023】
上記エチレン系樹脂としては、密度880〜940kg/m
3であり、190℃でのMFRが0.1〜30g/10minのものを用いることが好ましい。これにより、上記環状オレフィン系樹脂との相溶性が良くなり、透明性の悪化が最小限に抑えられる。
【0024】
上記エチレン系樹脂のビカット軟化温度は、90〜110℃であることが好ましい。なお、ビカット軟化温度は、JISK−7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
また、上記エチレン系樹脂の融点は、100〜120℃であることが好ましい。
【0025】
上記エチレン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。なかでも、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0026】
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの例としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。
上記直鎖状低密度ポリエチレンとしては、密度880〜940kg/m
3であり、190℃でのMFRは0.1〜30g/10minのものを用いることが好ましい。
上記直鎖状低密度ポリエチレンのうち、市販品として例えば、エボリューSP1520(プライムポリマー社製)、ユメリット1520F(宇部丸善ポリエチレン社製)、スミカセンEFV402(住友化学社製)等が挙げられる。
【0027】
上記表裏層は、更に、有機系微粒子を含有していてもよい。
上記有機系微粒子としては、アクリル系樹脂微粒子、スチレン系樹脂微粒子、スチレン―アクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、シリコーン系樹脂微粒子等の有機系微粒子を用いることができる。これらは架橋されていても架橋されていなくてもよいが、微粒子の耐熱性を高めるために架橋されていることが望ましい。中でも上記環状オレフィン系樹脂との相溶性の観点からアクリル系樹脂微粒子が好ましく、ポリメタクリル酸メチル系架橋微粒子がより好ましい。
また、上記有機系微粒子のうち、市販品としては、例えば、テクポリマー(積水化成品工業社製)、ファインスフェア(日本ペイント社製)、ガンツパール(アイカ工業社製)、アートパール(根上工業社製)等が挙げられる。
【0028】
上記有機系微粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は20μmである。0.1μm未満であると、フィルムのブロッキング防止の機能が付与されないことがあり、20μmを超えても、フィルムのブロッキング防止の機能が付与されないことがある。より好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は10μmである。更に好ましい下限は1μm、更に好ましい上限は5μmである。なお、本発明では、平均粒子径の異なる有機系微粒子を組み合わせて使用してもよい。有機系微粒子の平均粒子径は公知のレーザー回折・散乱法等で測定することができる。
【0029】
上記有機系微粒子の含有量は、下限が0.01重量%、上限が0.3重量%である。
0.01重量%未満であると、フィルムの動摩擦係数が悪くなり、0.3重量%を超えると、透明性が悪くなる。好ましい下限は0.03重量%、好ましい上限は0.2重量%である。
【0030】
上記中間層は、オレフィン系樹脂を含有する。
上記オレフィン系樹脂を含有することで、熱収縮性多層フィルムの密度を低く抑えることができる。
【0031】
上記オレフィン系樹脂としては、オレフィン類の単独重合体、相互共重合体、及びこれらの混合樹脂等が挙げられる。具体的には、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0032】
上記エチレン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、又は、これらの混合物が挙げられる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。
上記共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
なかでも、エチレン−ブテン共重合体が好ましく用いられる。
上記エチレン系樹脂のうち、市販品として例えば、ネオゼックス2012F(プライムポリマー社製)、ノバテックUF240(日本ポリエチレン社製)等が挙げられる。
【0033】
上記エチレン系樹脂の密度は880〜950kg/m
3であることが好ましい。
上記エチレン系樹脂の190℃でのMFRは0.1〜10g/10minであることが好ましい。
上記エチレン系樹脂の融点は110〜130℃であることが好ましい。
上記エチレン系樹脂のビカット軟化点温度は90〜120℃であることが好ましい。
【0034】
上記プロピレン系樹脂としては、熱収縮性を発現するという観点から、プロピレンを主成分とし、α−オレフィンを共重合成分とする二元、または三元共重合体が好ましい。上記共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
α−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等からなるものが好ましく、2種類以上のα−オレフィンを含んでいても良い。共重合成分であるα−オレフィンの比率は1〜10モル%であるのが好ましい。
また、上記プロピレン系樹脂としては、異なるプロピレン−α−オレフィン共重合体の混合物であってもよい。
なかでも、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体、プロピレン−エチレン二元共重合体、プロピレン−ブテン二元共重合体が好ましく用いられる。
上記プロピレン系樹脂のうち、市販品として例えば、Adsyl 5C30F(Basell社製)、ノバテックFX4G(日本ポリプロ社製)、ポリプロピレンPC540R(サンアロマー社製)等が挙げられる。
【0035】
上記プロピレン系樹脂の密度は880〜950kg/m
3であることが好ましい。
上記プロピレン系樹脂の190℃でのMFRは0.1〜10g/10minであることが好ましい。
上記プロピレン系樹脂の融点は120〜140℃であることが好ましい。
上記プロピレン系樹脂のビカット軟化点温度は110〜130℃であることが好ましい。
【0036】
上記オレフィン系樹脂は、オレフィン系エラストマー樹脂も含む。
【0037】
上記オレフィン系エラストマー樹脂としては、エチレン/α−オレフィン共重合体エラストマー、プロピレン/α−オレフィン共重合体エラストマーを用いることが好ましい。上記共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
上記エチレン/α−オレフィン共重合体エラストマー、上記プロピレン/α−オレフィン共重合体エラストマーとは、炭素数4以上のα−オレフィンの共重合成分が15モル%以上のエラストマーである。ここでα−オレフィンとしては、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられる。
なかでも、エチレン/ブテン共重合体エラストマー、プロピレン/ブテン共重合体エラストマーが好ましい。
上記オレフィン系エラストマー樹脂のうち、市販品として例えば、タフマーA4085S(三井化学社製)、タフマーXM7070(三井化学社製)等が挙げられる。
【0038】
上記エチレン/ブテン共重合体エラストマーは、エチレン成分を70モル%〜90モル%、ブテン成分を10〜30モル%含有することが望ましい。
また、上記プロピレン/ブテン共重合体エラストマーは、プロピレン成分を65〜85モル%、ブテン成分を15〜35モル%含有することが望ましい。
上記構成を有することにより、熱収縮性多層フィルムに高収縮性を付与することができ、さらに低温での伸度保持性に優れたフィルムを得ることができる。
【0039】
上記オレフィン系エラストマー樹脂の密度は850〜950kg/m
3であることが好ましい。
上記オレフィン系エラストマー樹脂の190℃でのMFRは2〜8g/10minであることが好ましい。
上記オレフィン系エラストマー樹脂の230℃でのMFRは3〜10g/10minであることが好ましい。
上記オレフィン系エラストマー樹脂の融点は60〜80℃であることが好ましい。
上記オレフィン系エラストマー樹脂のビカット軟化点温度は50〜75℃であることが好ましい。
【0040】
上記中間層を構成する上記オレフィン系樹脂は、単独の樹脂であってもよく、複数の樹脂を組み合わせた混合樹脂であってもよい。
【0041】
上記中間層は、上記オレフィン系樹脂を50〜80重量%含有する。
上記オレフィン系樹脂の含有量が50重量%以上であると、熱収縮性多層フィルムの密度を低く抑えることができ、さらに高収縮性を付与することができる。上記オレフィン系樹脂の含有量が80重量%以下であると、高剛性の熱収縮性多層フィルムを得ることができる。
上記オレフィン系樹脂の含有量は、55〜75重量%であることが好ましく、60〜70重量%であることがより好ましい。
【0042】
上記中間層は、可塑性樹脂を含有する。
本発明において、上記可塑性樹脂とは、可塑性を有する樹脂であって、上記オレフィン系樹脂以外の樹脂を意味する。
上記可塑性樹脂としては、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、又はこれらの水素添加物誘導体等が挙げられる。
【0043】
上記石油樹脂としては、例えば、シクロペンタジエン又はその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂等が挙げられる。
ここで石油樹脂は、ナフサを熱分解してエチレン、プロピレン、ブタジエン等の有用な化合物を得ているが、それを取り去った残りのC4〜C5留分(主としてC5留分)あるいは、C5〜C9留分(主としてC9留分)を混合状態のまま重合して得られた樹脂をいう。原料のオレフィン留分の組成比率によって生成樹脂の性質が異なるが、分子量200〜2000、軟化点5〜160℃の透明な淡黄色ないし黄褐色の松脂(まつやに)状樹脂である。
【0044】
上記テルペン樹脂としては、例えば、β−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂等が挙げられる。
テルペン樹脂は、植物の精油に含まれる成分として知られており、その化学構造は炭素数5のイソプレンを単位とした天然物の一群から生成された樹脂である。メバロン酸経路で生合成され、イソペンテニルピロリン酸が頭−尾(head−to−tail)結合したタイプの化合物である。また、イソプレン単位の数に応じて、へミテルペン(C
5)、モノテルペン(C
10)、セスキテルペン(C
15)、ジテルペン(C
20)、トリテルペン(C
30)等のように分類される。
【0045】
上記ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン樹脂等が挙げられる。
ロジン系樹脂とは、松科の植物に多量に含まれる松脂に不揮発性の成分であり、一般的には樹脂酸とよばれる各種異性体を主成分として生成された樹脂である。
上記樹脂酸としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸の共役二重結合を有する樹脂酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられる。
【0046】
上記可塑性樹脂のうち、市販品としては例えば、アルコン(荒川化学工業社製)、クリアロン(ヤスハラケミカル社製)、アイマーブ(出光興産社製)等が挙げられる。
【0047】
上記可塑性樹脂としては、軟化温度が100〜150℃であるものを用いることが好ましい。より好ましくは110〜140℃である。上記可塑性樹脂の軟化温度を上記範囲内とすることで、良好な熱収縮性を発現することができる。
【0048】
また、上記可塑性樹脂の密度は、950〜1050kg/m
3であることが好ましく、980〜1020kg/m
3であることがより好ましい。
上記可塑性樹脂の密度を上記範囲内にすることで、高剛性を付与したフィルムを得ることができる。
【0049】
上記可塑性樹脂の数平均分子量は500〜1000であることが好ましく、600〜900であることがより好ましい。
上記可塑性樹脂の数平均分子量を上記範囲内にすることで、高剛性を付与したフィルムを得ることができる。
【0050】
上記可塑性樹脂の20℃における屈折率は1.0〜2.0であることが好ましく、1.2〜1.8であることがより好ましい。
上記可塑性樹脂の屈折率を上記範囲内にすることで、良好な透明性を保持したフィルムを得ることができる。
【0051】
上記中間層は、上記可塑性樹脂を20〜50重量%含有する。
上記可塑性樹脂の含有量が20重量%以上であると、熱収縮性多層フィルムに高収縮性を付与することができ、且つ高剛性のフィルムを得ることができる。上記可塑性樹脂の含有量が50重量%以下であると、低温での伸度低下と層間での剥離を抑制することができ、さらに熱収縮性多層フィルムの密度を低く抑えることができる。
上記可塑性樹脂の含有量は、25〜45重量%であることが好ましく、30〜40重量%であることがより好ましい。
【0052】
上記中間層を構成する樹脂成分の合計を100モル%としたとき、上記中間層を構成する樹脂は、プロピレン成分を35〜70モル%、エチレン成分を1〜10モル%及びブテン成分を1〜10モル%含有する。
上記成分を上記範囲内で含有することにより、本発明の熱収縮性多層フィルムは、収縮性を充分に付与することができるとともに、フィルムの剛性を高くすることができる。
【0053】
上記中間層を構成する樹脂におけるプロピレン成分の含有量の下限は35モル%、上限は70モル%である。
上記プロピレン成分の含有量が上記範囲であると、熱収縮性多層フィルムに高い剛性と高い収縮性を付与することができる。
上記プロピレン成分の含有量の好ましい下限は40モル%、より好ましい下限は50モル%、好ましい上限は60モル%、より好ましい上限は55モル%である。
【0054】
上記中間層を構成する樹脂におけるエチレン成分の含有量の下限は1モル%、上限は10モル%である。
上記エチレン成分の含有量が上記範囲であると、熱収縮性多層フィルムの層間剥離の抑制と透明性の向上に繋がる。
上記エチレン成分の含有量の好ましい下限は1.5モル%、より好ましい下限は2.0モル%、好ましい上限は5.0モル%、より好ましい上限は4.0モル%である。
【0055】
上記中間層を構成する樹脂におけるブテン成分の含有量の下限は1モル%、上限は10モル%である。
上記ブテン成分の含有量が上記範囲であると、熱収縮性多層フィルムに高い収縮性を付与することができ、透明性を向上させることができる。
上記ブテン成分の含有量の好ましい下限は2.0モル%、より好ましい下限は4.0モル%、好ましい上限は8.0モル%、より好ましい上限は6.0モル%である。
【0056】
上記中間層を構成する樹脂におけるプロピレン成分、エチレン成分及びブテン成分の合計含有量は、好ましい下限が50モル%、好ましい上限が80モル%である。
上記合計含有量が上記範囲であると、熱収縮性多層フィルムの密度を低く抑えることができ、さらに高い収縮性と透明性を付与することができる。
上記合計含有量は、より好ましい下限が55モル%、より好ましい上限が75モル%である。
【0057】
上記プロピレン成分、上記エチレン成分及び上記ブテン成分とは、それぞれ上記中間層を構成する樹脂におけるプロピレンに由来する成分、エチレンに由来する成分、及び、ブテンに由来する成分を意味する。
上記中間層を構成する樹脂は、プロピレン成分、エチレン成分及びブテン成分以外のその他の成分を含有してもよい。
上記中間層を構成する樹脂におけるプロピレン成分、エチレン成分、ブテン成分、及びその他の成分の合計は100モル%である。
上記中間層を構成する樹脂におけるプロピレン成分、エチレン成分及びブテン成分の含有量は、例えば、中間層を構成する原料樹脂中のプロピレン成分、エチレン成分、ブテン成分の含有量をNMR(核磁気共鳴法)により測定し、得られた各成分の含有量と中間層における各原料樹脂の配合割合に基づいて算出することができる。
例えば、中間層を構成する樹脂が単独の樹脂である場合、中間層におけるプロピレン成分、エチレン成分及びブテン成分の含有量は、NMRにより測定することができる。
また、中間層を構成する樹脂が、複数の樹脂を組み合わせた混合樹脂である場合、中間層におけるプロピレン成分、エチレン成分及びブテン成分の割合は、中間層を構成する原料樹脂中のプロピレン成分、エチレン成分、ブテン成分及びその他の成分の含有量をNMRにより測定し、中間層における各原料樹脂の配合割合に基づいて算出することができる。
更に、中間層を構成する樹脂が単独の樹脂である場合及び複数の樹脂を組み合わせた混合樹脂である場合の何れにおいても、中間層を構成する樹脂中のプロピレン成分、エチレン成分、ブテン成分の含有量をNMRにより測定してもよい。
【0058】
上記表裏層及び中間層には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0059】
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さは、好ましい下限が20μm、好ましい上限が80μmであり、より好ましい下限が25μm、より好ましい上限が70μmである。熱収縮性多層フィルム全体の厚さが上記範囲内であると、優れた熱収縮性、印刷又はセンターシール等の優れたコンバーティング性、優れた装着性が得られる。
また、本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記中間層の厚さは、熱収縮性多層フィルム全体の厚みに対する好ましい下限が50%、好ましい上限が90%である。上記中間層の厚さが上記範囲内であると、高い層間強度、高い透明性等が得られる。
【0060】
本発明の熱収縮性多層フィルムの動摩擦係数は、好ましい下限が0.3、好ましい上限が0.55であり、より好ましい下限が0.4、より好ましい上限が0.5である。上記動摩擦係数を上記範囲内とすることで、ブロッキング等の不具合を防止できる。また、得られる熱収縮性多層フィルムの取扱い性を向上させることができる。
【0061】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、密度が1000kg/m
3未満であることが好ましい。
上記密度が1000kg/m
3未満であると、熱収縮性ラベルを装着した容器のリサイクルの際に、比重分離機により、容易に分離することができる。
上記密度は980kg/m
3未満であることがより好ましく、960kg/m
3未満であることが更に望ましい。
【0062】
本発明の熱収縮性多層フィルムを90℃温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向(TD方向)の熱収縮率は、好ましい下限が60%である。上記熱収縮率が60%以上であると、しわや歪み等の収縮不良の問題を起こすことがなく、熱収縮性多層フィルムとして好適に使用することができる。
上記熱収縮率は、より好ましい下限が62%、好ましい上限が70%である。
【0063】
本発明の熱収縮性多層フィルムを5℃雰囲気下での主収縮方向と直交する方向(MD方向)における引張破断伸度は、好ましい下限が100%である。
上記引張破断伸度が100%以上であると、印刷・シール加工等の工程において、フィルムの破断が生じにくく、生産性が向上する。
上記引張破断伸度は、より好ましい下限が200%、好ましい上限が400%である。
【0064】
本発明の熱収縮性多層フィルムを40℃雰囲気下で7日間静置した場合の主収縮方向(TD方向)における自然収縮率は、3.0%未満であることが好ましい。
上記自然収縮率が3.0%未満であると、保管の際の収縮が小さく、収縮不良等の問題を起こすことがなく、熱収縮性多層フィルムとして好適に使用することができる。
上記自然収縮率は、2.8%未満であることがより好ましい。
【0065】
本発明の熱収縮性多層フィルムの層間剥離強度は、好ましい下限が0.4N/10mmである。
上記層間剥離強度が、0.4N/10mm以上であると、印刷・シール加工やラベル装着時に表裏層と中間層との剥離が生じにくく、熱収縮性ラベルとして好適に用いることができる。
【0066】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法は特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好ましい。上記共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。
【0067】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては、具体的には、例えば、上記表裏層を構成する原料と、必要に応じて中間層を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、ダイスによりシート状に押出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法が挙げられる。
上記延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法又はこれらの組み合わせを用いることができる。延伸温度はフィルムを構成する樹脂の軟化温度、熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性等に応じて変更されるが、好ましい下限は65℃、好ましい上限は120℃、より好ましい下限は70℃、より好ましい上限は115℃である。主収縮方向の延伸倍率はフィルムを構成する樹脂、延伸手段、延伸温度等に応じて変更されるが、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上であって、好ましくは7倍以下、より好ましくは6倍以下である。このような延伸温度及び延伸倍率とすることにより、優れた厚み精度を達成することができる。
【0068】
本発明の熱収縮性多層フィルムの用途は特に限定されないが、本発明の熱収縮性多層フィルムは、ミシン目のカット性に優れ、耐落下衝撃性に優れるとともに、透明性にも優れることから、例えば、ペットボトル、金属罐等の容器に装着される熱収縮性ラベルのベースフィルムとして好適に用いられる。