(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スターターモータにより始動される内燃機関を有する車両に搭載される発電機から給電され第1負荷に給電するバッテリと、前記発電機と前記バッテリの間に設けられた第1スイッチとの接続点に一端を、
前記発電機から給電され前記第1負荷に給電し電圧計で計測されるキャパシタと、前記発電機と前記キャパシタの間に設けられた第2スイッチとの接続点に他端を、
接続された双方向DC/DCコンバータであって、前記一端側に前記第1負荷を接続された双方向DC/DCコンバータと、
前記電圧計が計測した前記キャパシタの電圧値および前記内燃機関の稼働状態に基づいて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、および前記双方向DC/DCコンバータを制御する制御部と、
を備える回生システムであって、
前記スターターモータは、前記発電機と前記第1スイッチおよび前記第2スイッチの間に接続されたことを特徴とする回生システム。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の減速時の運動エネルギーを回生エネルギーとして利用する回生システムについては知られている。例えば、特許文献1は、車両減速時等の回生エネルギーを効率良く回収することを課題として車両用電源システムを開示する。この車両用電源システムは、電圧が異なる主電源および副電源の二つのバッテリを備える。鉛バッテリの主電源は、エンジン始動時にスタータへ給電すると共に、主に副電源に優先して一般負荷への電力供給を行う。状態検出が容易なリチウムイオンバッテリなどの副電源は、充電受け入れ性に優れ、車両減速時に発電機にて発電される回生電力を蓄電する冗長電源として使用される。主電源と副電源は、DC/DCコンバータを有する第1の給電回路と、スイッチを有する第2の給電回路とで接続されている。副電源は、回生エネルギーを発電機からDC/DCコンバータを介することなく、直接回収できるので、効率良くエネルギー回収を行うことができる。
【0003】
また、特許文献2は、スイッチを閉じる制御のみでショートなどが生じないようにすることを課題として車両用電源装置を開示する。この車両用電源装置は、主電源および車両の減速時に発電機で発生した回生エネルギーを充電する副電源の二つのバッテリと、主電源と副電源の間にスイッチと、DC/DCコンバータと、主電源とDC/DCコンバータとを接続するダイオードを備える。このダイオードのアノード側は、DC/DCコンバータの出力端に接続され、カソード側は主電源に接続されている。この車両用電源装置は、副電源の出力電圧に基づいてスイッチの開閉を制御し、スイッチを閉じる際、DC/DCコンバータおよびスイッチの動作を同時に制御する必要がなく、スイッチを閉じる制御のみでショートおよび給電断が生じることがない。
【0004】
また、特許文献3は、電気負荷の消費電流がDC/DCコンバータの最大出力電流を超える場合が生じても、各種電気負荷に対して適切な電力供給を行うことを課題として車両用電源制御装置を開示する。この車両用電源制御装置は、第1〜第3の給電回路を備える。第1の給電回路は、DC/DCコンバータを介して蓄電装置と第1の車両電気負荷とを接続する。第2の給電回路は、DC/DCコンバータと並列に配設されたバイパススイッチを介して蓄電装置と第1の車両電気負荷とを接続する。第3の給電回路は、DC/DCコンバータを介して蓄電装置と第2の車両電気負荷とを接続する。第2の給電回路による第1の車両電気負荷への電力供給の際には、DC/DCコンバータを作動させながら第3の給電回路による第2の車両電気負荷への電力供給を行いつつ、バイパススイッチをオン状態に設定する。
【0005】
また、特許文献4は、燃費を向上させることを課題として車両用電源装置を開示する。この車両用電源装置は、車両の減速開始などに応じて内燃機関への燃料供給が停止され、かつ車両の速度が所定速度よりも大きい場合には発電機を作動させ、発電機から出力される回生電力を用いて、DC/DCコンバータを介した発電機からキャパシタへの給電によってキャパシタを充電させる。これにより、内燃機関への燃料供給が停止されている場合に加えて、燃料供給の停止が解除された減速時(例えば、車両の停止直前など)であっても、第2電源を充電させることにより、燃費を向上させることができる。
【0006】
また、特許文献5は、第1及び第2蓄電池を異なる充電電圧で効率的に充電することを課題として給電制御装置を開示する。この給電制御装置は、オルタネータから蓄電池及び負荷への給電と、蓄電池から負荷への給電とを制御する。この給電制御装置では、オルタネータから蓄電池への給電経路にスイッチが設けられており、オルタネータから蓄電池及び負荷への給電経路にスイッチが設けられている。更に、DC/DCコンバータは、蓄電池及びスイッチ間の接続ノードと負荷との間に設けられており、オルタネータ又は蓄電池の出力電圧を変圧し、変圧した電圧を負荷に印加する。制御部は、外部から取得した充電情報が示す蓄電池それぞれのSOCに応じて、スイッチのオン/オフ、及び、DC/DCコンバータの作動/停止を制御する。これにより、第1及び第2蓄電池それぞれを個別に充電することが可能であるため、第1及び第2蓄電池を異なる充電電圧で充電することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、車両減速時の回生エネルギーを効率良く回収することで燃費を向上させ、また、アイドリングストップ状態から内燃機関を再始動する際の負荷への電圧低下を防止する回生システムおよびその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、車両に搭載される内燃機関および車両の減速時の運動エネルギーを原動力として発電する発電機と、その発電機から給電されるバッテリと、発電機から給電されるキャパシタと、そのキャパシタの電圧を計測する電圧計と、発電機とバッテリの間に設けられた第1スイッチと、発電機とキャパシタの間に設けられた第2スイッチと、一端をバッテリと第1スイッチの間に、他端をキャパシタと第2スイッチの間に接続された双方向DC/DCコンバータと、双方向DC/DCコンバータの一端と第1スイッチの間に接続された第1負荷と、内燃機関を始動するための、発電機と第1スイッチおよび第2スイッチの間に接続されたスターターモータと、電圧計が計測したキャパシタの電圧値および内燃機関の稼働状態に基づいて、第1スイッチ、第2スイッチ、および双方向DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備える回生システムが提供される。
これによれば、キャパシタが双方向DC/DCコンバータを介さず発電機から直接回生エネルギーを回収できるので、回生エネルギーを効率良く回収でき燃費を向上させる回生システムを提供できる。さらに、キャパシタから負荷への給電中にスターターモータを駆動しても、双方向DC/DCコンバータを介して負荷に給電しているので、内燃機関を再始動する際の負荷への電圧低下を防止する回生システムを提供できる。
【0010】
さらに、上記の回生システムは、さらに双方向DC/DCコンバータに接続される第2負荷を備え、双方向DC/DCコンバータは、内部に、一端側で2つに分岐して、双方向DC/DC変圧器と変圧回路スイッチを直列に有して他端と接続される変圧回路と、双方向DC/DC変圧器をバイパスして、バイパススイッチを介して第2負荷に接続されるバイパス回路と、を備えると共に、双方向DC/DC変圧器と変圧回路スイッチの接続点と、バイパススイッチと第2負荷の接続点とを、接続スイッチを介して接続する接続回路を、備えることを特徴としてもよい。
これによれば、第2負荷がバッテリおよびキャパシタから双方向DC/DCコンバータを介して接続されることで、回生システムは、アイドリングストップ状態から内燃機関を再始動する際の第2負荷への電圧低下を防止することができる。
【0011】
上記課題を解決するために、スターターモータにより始動される内燃機関を有する車両に搭載される発電機から給電され第1負荷に給電するバッテリと、発電機とバッテリの間に設けられた第1スイッチとの接続点に一端を、発電機から給電され第1負荷に給電し電圧計で計測されるキャパシタと、発電機とキャパシタの間に設けられた第2スイッチとの接続点に他端を、接続された双方向DC/DCコンバータであって、一端側に第1負荷を接続された双方向DC/DCコンバータと、電圧計が計測したキャパシタの電圧値および内燃機関の稼働状態に基づいて、第1スイッチ、第2スイッチ、および双方向DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備える回生システムであって、スターターモータは、発電機と第1スイッチおよび第2スイッチの間に接続されたことを特徴とする回生システムが提供される。
これによれば、キャパシタが双方向DC/DCコンバータを介さず発電機から直接回生エネルギーを回収できるので、回生エネルギーを効率良く回収でき燃費を向上させる回生システムを提供できる。さらに、キャパシタから負荷への給電中にスターターモータを駆動しても、双方向DC/DCコンバータを介して負荷に給電しているので、内燃機関を再始動する際の負荷への電圧低下を防止する回生システムを提供できる。
【0012】
さらに、双方向DC/DCコンバータは、内部に、一端側で2つに分岐して、双方向DC/DC変圧器と変圧回路スイッチを直列に有して他端と接続される変圧回路と、双方向DC/DC変圧器をバイパスして第1負荷とは異なる第2負荷に接続されるバイパス回路と、を備えると共に、双方向DC/DC変圧器と変圧回路スイッチの接続点と、バイパススイッチと第2負荷の接続点とを接続し、接続スイッチを有する接続回路を、備えることを特徴としてもよい。
これによれば、第2負荷がバッテリおよびキャパシタから双方向DC/DCコンバータを介して接続されることで、回生システムは、アイドリングストップ状態から内燃機関を再始動する際の第2負荷への電圧低下を防止することができる。
【0013】
さらに、制御部は、アイドリングストップ状態から内燃機関をスターターモータにより再始動する際、電圧値が所定の電圧値以上である場合、第1スイッチをオフ、第2スイッチをオンにして、キャパシタからスターターモータに給電し、接続スイッチをオフ、にして、キャパシタから双方向DC/DC変圧器を介して第1負荷に給電する、ことを特徴としてもよい。
これによれば、キャパシタの電圧が高い場合は、キャパシタからスターターモータを駆動することでバッテリの劣化を軽減し、キャパシタから双方向DC/DCコンバータを介して給電することで、アイドリングストップ状態からスターターモータを駆動させて内燃機関を再始動する際の第1負荷および第2負荷への電圧低下を防止することができる。
【0014】
さらに、制御部は、アイドリングストップ状態から内燃機関をスターターモータにより再始動する際、電圧値が所定の電圧値未満である場合、第2スイッチをオフ、第1スイッチをオンにして、バッテリからスターターモータに給電し、バッテリから第1負荷に給電し、バイパススイッチをオフ、変圧回路スイッチをオフ、接続スイッチをオンにして、バッテリから双方向DC/DC変圧器を経由して第2負荷に給電する、ことを特徴としてもよい。
これによれば、キャパシタの電圧が低い場合は、バッテリからスターターモータ、第1負荷および第2負荷へ給電することでキャパシタの電力を使用せずにアイドリングストップ状態から内燃機関を再始動することができ、双方向DC/DCコンバータを介して給電することで、再始動する際の第2負荷への電圧低下を防止することができる。
【0015】
さらに、制御部は、車両が走行中に減速している時、その電圧値が所定の電圧値以上である場合、第1スイッチをオフ、第2スイッチをオンにして、発電機が回生発電する電力をキャパシタに給電してキャパシタを充電し、バッテリから第1負荷に給電する、ことを特徴としてもよい。
これによれば、キャパシタの電圧が高い場合は、減速中にキャパシタは双方向DC/DCコンバータを介さず発電機から直接大電流で充電されることで、回生エネルギーを効率良く回収することで燃費を向上させることができる。
【0016】
さらに、制御部は、車両が走行中に減速している時、電圧値が所定の電圧値未満である場合、第2スイッチをオフ、第1スイッチをオンにして、発電機が回生発電する電力を、バッテリに給電してバッテリを充電する共に、第1負荷に給電する、ことを特徴としてもよい。
これによれば、キャパシタの電圧が低い場合は、減速中にキャパシタは発電機から双方向DC/DCコンバータを介して充電されることで、キャパシタが、発電機から直接充電できない低い電圧であっても、発電機からの電圧を双方向DC/DCコンバータで変圧することにより、発電機からの電力をキャパシタに回収することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、内燃機関を有する車両に搭載される発電機と、その発電機から給電されるバッテリと、発電機から給電されるキャパシタと、そのキャパシタの電圧を計測する電圧計と、発電機とバッテリの間に設けられた第1スイッチと、発電機とキャパシタの間に設けられた第2スイッチと、一端をバッテリと第1スイッチの間に、他端をキャパシタと第2スイッチの間に接続された双方向DC/DCコンバータと、双方向DC/DCコンバータの一端と第1スイッチの間に接続された第1負荷と、内燃機関を始動するための、発電機と第1スイッチおよび第2スイッチの間に接続されたスターターモータと、を備える回生システムの制御方法であって、電圧計が計測したキャパシタの電圧値および内燃機関の稼働状態に基づいて、第1スイッチ、第2スイッチ、および双方向DC/DCコンバータを制御することにより、発電機からバッテリ、キャパシタ、第1負荷へ給電し、バッテリまたはキャパシタから第1負荷、スターターモータに給電する回生システムの制御方法が提供される。
これによれば、キャパシタが双方向DC/DCコンバータを介さず発電機から直接回生エネルギーを回収できるので、回生エネルギーを効率良く回収でき燃費を向上させる回生システムの制御方法を提供できる。さらに、キャパシタから負荷への給電中にスターターモータを駆動しても、双方向DC/DCコンバータを介して負荷に給電しているので、内燃機関を再始動する際の負荷への電圧低下を防止する回生システムの制御方法を提供できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、車両減速時の回生エネルギーを効率良く回収することで燃費を向上させ、また、アイドリングストップ状態から内燃機関を再始動する際の負荷への電圧低下を防止する回生システムおよびその制御方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る実施例について説明する。
<第一実施例>
図1を参照し、本実施例における回生システム100Aを説明する。本発明に係る回生システム100Aは、省エネルギーの観点から、内燃機関2の駆動により走行する車両1Aにおいて、その減速時の運動エネルギーを回生エネルギーとして利用すると共に、停車中に内燃機関2を停止するアイドリングストップ機能を備える。なお、内燃機関2は、典型的には、ガソリン等の炭化水素系の燃料を内部で燃焼させることによって、車両1を推進するための動力を出力するエンジンである。また、アイドリングストップ機能とは、車両1Aの走行停止時にブレーキペダルを踏む操作を続けている場合などに内燃機関2の稼働を停止し、そのブレーキペダルを踏む操作が解除された場合に内燃機関2を再始動する機能である。
【0021】
回生システム100Aは、発電機70、スターターモータ80、バッテリ20、キャパシタ30、電圧計31、第1スイッチ40、第2スイッチ50、第1負荷L1、双方向DC/DCコンバータ60A、および、制御部10Aを備える。発電機70は、制御部10Aの制御を受け、内燃機関2が出力する動力(運動エネルギー)を用いて発電したり、車両1Aの減速時に車両1Aの車軸などから入力される動力(運動エネルギー)を用いて発電(回生)したりする。すなわち、発電機70は、車両1Aに搭載される内燃機関2および車両1Aの減速時の運動エネルギーを原動力として発電する。発電機70が発電した電力は、バッテリ20やキャパシタ30を充電したり、車両1Aに搭載された第1負荷L1などに給電されたりする。発電機70は、制御部10Aの制御により発電電圧を変更できる。
【0022】
スターターモータ80は、バッテリ20またはキャパシタ30から給電され、内燃機関2が停止している状態においてスターターモータスイッチ81をオンすることにより駆動されてクランキング動作を行い、内燃機関2を始動させる。スターターモータ80の駆動は、例えば、イグニッションオンされた直後にはバッテリ20から電力を供給されることで行われ、その後、アイドリングストップ状態からの再始動には原則的にキャパシタ30から電力供給されることで行われる。
【0023】
バッテリ20は、アイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動する際キャパシタ30に十分な電圧が残っている場合にはキャパシタ30から給電するので、高価なアイドリングストップ用の電池である必要はなく、所定電圧を出力する汎用鉛電池でよい。バッテリ20は、発電機70から充電されると共に、キャパシタ30に十分な電圧がない場合はスターターモータ80や第1負荷L1に電力を供給する。
【0024】
キャパシタ30は、電解コンデンサなどである。キャパシタ30にアイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動する際十分な電圧が残っている場合には、スターターモータ80は、キャパシタ30の電力を用いて駆動される。キャパシタ30は、電圧が低くなった場合には発電機70から充電される。電圧計31は、キャパシタ30のグランド側とプラス側の電位差を計測するためのものであり、キャパシタ30の電圧値を計測して示す。
【0025】
第1スイッチ40および第2スイッチ50は、大電流の直流をオンオフできるスイッチであれば特に限定されず、たとえば、FET等の半導体スイッチ、コンタクタ・リレー等であり、制御部10Aの制御によりオンオフされる。第1負荷L1は、車両1Aに搭載された電気負荷であり、ランプ類、オーディオ機器、ナビゲーションシステム、ワイパー、空調装置などである。第1負荷L1は、後述する第2負荷L2のように双方向DC/DCコンバータ60Aを経由しない電気負荷であり、第1負荷L1に供給される電圧が低下する場合がある。このため、電圧低下が起こって第1負荷L1が動作しなくても問題の少ない、たとえば室内ランプ類、空調装置などが、第1負荷L1の用途として好ましい。
【0026】
双方向DC/DCコンバータ60Aは、絶縁型/非絶縁型のいずれであっても構わないが、一端60E1と他端60E2の間の双方向で直流の昇圧または降圧の電圧変換を行うことができる変圧回路である。一端60E1および他端60E2は、入力端子でもあり、出力端子でもありうる。双方向DC/DCコンバータ60Aは、内部に制御部10Aの制御によりオンオフされるスイッチを備え、制御部10Aの制御に基づき所定の入力/出力の方向で所定の電圧を出力する。また、双方向DC/DCコンバータ60Aは、内部に制御部10Aの制御によりオンオフされるスイッチを備え、制御部10Aの制御に基づいて、変圧動作を停止し、電圧出力を停止する。
【0027】
制御部10Aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどの電子回路により構成されるECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)であり、車両情報を取得して、その車両情報に基づいて、第1スイッチ40、第2スイッチ50、および双方向DC/DCコンバータ60に制御信号を送出し制御する。車両情報は、電圧計31が計測したキャパシタ30の電圧値、発電機70の状態、内燃機関2の状態、車両1Aの走行状態などである。発電機70の状態とは、発電機70が稼働状態か、非稼働状態か、稼働状態の場合には内燃機関2の動力により稼働しているのか、減速時の車両1Aの車軸など動力により稼働して回生しているのかの状態を言う。内燃機関2の状態とは、内燃機関2が稼働状態なのか、非稼働状態なのかを言う。車両1Aの走行状態とは、車両1Aが、加速しているのか、減速しているのか、定速で走行しているのか、停車してアイドリングしているのか、停車してアイドリングストップしているのか、内燃機関2を初回始動または再始動しようとしているのか、イグニションがオフ/オンなのか、などの状態を言う。
【0028】
第1スイッチ40は、発電機70とバッテリ20の間に設けられ、第2スイッチ50は、発電機70とキャパシタ30の間に設けられる。また、スターターモータ80は、発電機70と第1スイッチ40の間であって、発電機70と第2スイッチ50の間に電気的に接続される。したがって、第1スイッチ40は、スターターモータ80とバッテリ20の間に設けられ、第2スイッチ50は、スターターモータ80とキャパシタ30の間に設けられる。
【0029】
第1スイッチ40は、制御部10Aの制御に基づきオンされた場合、発電機70で発電された電力をバッテリ20に供給して充電したり、バッテリ20に充電された電力をスターターモータ80に供給して駆動したりする。もちろん、第1スイッチ40は、制御部10Aの制御に基づきオンされた場合、発電機70で発電された電力を第1負荷L1に給電すると共にキャパシタ30にも給電して充電することもできる。また、第2スイッチ50は、制御部10Aの制御に基づきオンされた場合、発電機70で発電された電力をキャパシタ30に供給して充電したり、キャパシタ30に充電された電力をスターターモータ80に供給して駆動したりする。
【0030】
双方向DC/DCコンバータ60Aは、その一端60E1をバッテリ20と第1スイッチ40の間に、その他端60E2をキャパシタ30と第2スイッチ50の間に電気的に接続される。双方向DC/DCコンバータ60Aは、制御部10Aの制御に基づき内部に有するスイッチをオンオフすることにより、一端60E1を入力端子、他端60E2を出力端子として、または、一端60E1を出力端子、他端60E2を入力端子として、直流の電圧を変換して出力したり、または変換せずに出力したりする。
【0031】
キャパシタ30と発電機70の間には、第1スイッチ40および双方向DC/DCコンバータ60Aを介する第1の経路と、第2スイッチ50を介する第2の経路がある。第1の経路でキャパシタ30に充電する場合、通常DC/DCコンバータの電流は最大で50A程度なので、キャパシタ30への充電電流も最大で50A程度となってしまい効率があまりよくない。一方、第2の経路でキャパシタ30に充電する場合、そのような制約がないため発電機70からの大電流(たとえば、150〜200A)で充電が可能となり、充電効率が良くなる。したがって、キャパシタ30が双方向DC/DCコンバータ60Aを介さず発電機70から直接回生エネルギーを回収できるので、回生エネルギーを効率良く回収することで燃費を向上させることができる。
【0032】
第1負荷L1は、双方向DC/DCコンバータ60Aの一端60E1と第1スイッチ40の間、換言すればバッテリ20と第1スイッチ40の間に電気的に接続される。第1負荷L1は、バッテリ20から給電されている間に仮にバッテリ20において電圧低下が生じた場合(たとえば、同時にバッテリ20からスターターモータ80に給電し駆動する場合)、その影響を受けて動作を停止する場合がある。一方、第1負荷L1は、キャパシタ30から給電されている間に仮にキャパシタ30において電圧低下が生じた場合であっても、双方向DC/DCコンバータ60Aを介して給電されているのでその影響を受けることはない。
【0033】
たとえば、キャパシタ30から第1の経路で双方向DC/DCコンバータ60Aを介して第1負荷L1に給電している間に、第2スイッチ50をオンすることによりキャパシタ30から第2の経路を経由してスターターモータ80に給電して駆動しても、双方向DC/DCコンバータ60Aを介して給電されているのでその影響をうけることがない。したがって、第1の経路と第2の経路を有し、第2の経路でスターターモータ80に給電すると共に、第1の経路上の双方向DC/DCコンバータ60Aを介して第1負荷L1に給電するので、内燃機関2を再始動する際に第1負荷L1への電圧低下を防止することができる。これによれば、キャパシタ30から第1負荷L1への給電中にスターターモータ80を駆動しても、双方向DC/DCコンバータ60Aを介して第1負荷L1に給電しているので、内燃機関2を再始動する際の第1負荷L1への電圧低下を防止する回生システム100Aを提供できる。
【0034】
<第二実施例>
図2を参照し、本実施例における回生システム100を説明する。なお、上記実施例と同じ構成要素は同じ符号を付し、重複記載を避けるために上記実施例と異なる点を中心に説明する。
【0035】
本発明に係る回生システム100は、内燃機関2の駆動により走行する車両1において、その減速時の運動エネルギーを回生エネルギーとして利用すると共に、停車中に内燃機関2を停止するアイドリングストップ機能を備える。回生システム100は、発電機70、スターターモータ80、バッテリ20、キャパシタ30、電圧計31、第1スイッチ40、第2スイッチ50、第1負荷L1、第2負荷L2、双方向DC/DCコンバータ60、および、制御部10を備える。
【0036】
上記実施例に対してさらに、回生システム100は、双方向DC/DCコンバータ60に電気的に接続された第2負荷L2を備える。第2負荷L2は、第1負荷L1と同様車両1に搭載された電気負荷であるが、双方向DC/DCコンバータ60を経由して給電され、電圧低下の影響を受けることがないので、いかなる電気負荷であってもよい。
【0037】
双方向DC/DCコンバータ60は、内部に、双方向DC/DC変圧器62と複数のスイッチを備える。複数のスイッチは、大電流の直流をオンオフできるスイッチであれば特に限定されない。なお、本実施例では、複数のスイッチは双方向DC/DCコンバータ60の内部に備えられるが、同じ構成を有して外部に備えられてもよい。その場合は、双方向DC/DCコンバータ60は、双方向DC/DC変圧器62の機能のみを備える。双方向DC/DC変圧器62は、両端の間の双方向で直流の昇圧または降圧の電圧変換を行うことができる変圧回路である。両端は、入力端子でもあり、出力端子でもありうる。双方向DC/DC変圧器62は、内部に制御部10の制御によりオンオフされるスイッチを備え、制御部10の制御に基づき所定の入力/出力の方向で所定の電圧を出力する。また、双方向DC/DC変圧器62は、制御部10の制御に基づいて、変圧動作を停止し、電圧出力を停止する。
【0038】
双方向DC/DCコンバータ60は、一端60E1側の内部で2つに分岐する変圧回路61とバイパス回路64を備える。変圧回路61は、双方向DC/DC変圧器62と変圧回路スイッチ63を直列に有して他端60E2(キャパシタ30)と接続される回路である。なお、変圧回路スイッチ63は、双方向の電流に対応できるように2つのスイッチが直列に寄生ダイオードが逆向きになるように連結されて構成される。バイパス回路64は、双方向DC/DC変圧器62をバイパスしてバイパススイッチ65を介して第2負荷L2に電気的に接続される回路である。
【0039】
双方向DC/DCコンバータ60は、さらに、双方向DC/DC変圧器62と変圧回路スイッチ63の接続点と、バイパススイッチ65と第2負荷L2の接続点とを、接続スイッチ67を介して接続する接続回路66を備える。なお、接続スイッチ67は、双方向の電流に対応できるように2つのスイッチが直列に寄生ダイオードが逆向きになるように連結されて構成される。このように、双方向DC/DCコンバータ60は、第2負荷L2に対して、双方向DC/DC変圧器62を経由する回路(変圧回路61から接続回路66を通ってバイパス回路64へ通じる回路)と双方向DC/DC変圧器62をバイパスする回路(一端60E1側で分岐するバイパス回路64)を備えることで、電圧低下が無い場合には直接、電圧低下がある場合には双方向DC/DC変圧器62を介して給電できる。したがって、第2負荷L2がバッテリ20およびキャパシタ30から双方向DC/DCコンバータ60を介して接続されることで、回生システム100は、アイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動する際の第2負荷L2への電圧低下を防止することができる。
【0040】
図3を参照し、回生システム100における状態遷移を説明する。大きなレベルでの状態は、車両1の状態によるものであり、イグニションオフ状態、加速/定速/アイドリング/アイドリングストップ状態、減速状態、内燃機関再始動状態の4つの状態がある。イグニションオフ状態は、イグニション(IG)がオフの状態である。加速/定速/アイドリング/アイドリングストップ状態は、イグニションがオンされ、車両1が加速状態、定速走行状態、停止状態であるアイドリング状態およびアイドリングストップ状態を言う。減速状態は、車両1が減速している状態である。内燃機関再始動状態は、アイドリングストップ状態から内燃機関2をスターターモータ80で再始動する状態を言う。
【0041】
イグニションをオンオフすることで、イグニションオフ状態と加速/定速/アイドリング/アイドリングストップ状態の間で状態が遷移する。車両1が減速/加速することで、加速/定速/アイドリング/アイドリングストップ状態と減速状態の間の状態が遷移する。内燃機関2(ENG)をスターターモータ80で再始動する/再始動が完了したことにより、加速/定速/アイドリング/アイドリングストップ状態と内燃機関再始動状態の間の状態が遷移する。
【0042】
イグニションオフ状態は、Standbyモードという1つのモードを有する。残り3つの状態は、主にキャパシタ30の充電状態に応じた複数のモードを有する。加速/定速/アイドリング/アイドリングストップ状態は、内燃機関2を初回始動させる場合のBypassモード、キャパシタ30から負荷に放電するDis−chargeモード、およびキャパシタ30の充電電圧が十分でない場合発電機70から負荷に給電するGenerateモードの3つのモードを有する。
【0043】
Bypassモードにおいて、イグニションがオフされるとStandbyモードに遷移する。逆に、Standbyモードにおいて、イグニションがオンされるとBypassモードに遷移する。Bypassモードにおいて、内燃機関2を初回始動させて稼働状態(ENG Run)になると、Dis−chargeモードに移行する。逆に、Dis−chargeモードにおいて、内燃機関2が停止しアイドリングストップ状態(I/S中)であってキャパシタ30の充電電圧が所定の電圧値(たとえば8V)未満になるとBypassモードに移行する。Dis−chargeモードにおいて、内燃機関2が稼働状態であってキャパシタ30の充電電圧が十分でなく所定の電圧値(たとえば8V)未満になるとGenerateモードに移行する。逆に、Generateモードでキャパシタ30の充電電圧が所定の電圧値(たとえば10V)以上になるとDis−chargeモードに移行する。
【0044】
減速状態は、双方向DC/DCコンバータ60を経由してキャパシタ30に充電するChargeモード、および発電機70から直接キャパシタ30に充電するFast Chargeモードの2つのモードを有する。内燃機関2が稼働していて車両1が走行中(定速または加速状態)において、ブレーキ操作などで減速する場合であって、キャパシタ30の充電電圧が十分でない(たとえば10V未満)場合はChargeモードに移行し、キャパシタ30の充電電圧が所定の電圧値(たとえば10V)以上の場合はFast Chargeモードに移行する。逆に、ChargeモードまたはFast Chargeモードにおいてアクセル操作により加速するとDis−chargeモードに移行する。なお、この所定の電圧の8Vや10Vは例示であり、GenerateモードとDis−chargeモードを分ける所定の電圧値はキャパシタの特性や回生システムの設計により適宜定められる。
【0045】
内燃機関再始動状態は、アイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動(Auto Start)する場合、バッテリ20からスターターモータ80および負荷へ給電するBoostモード、およびキャパシタ30からスターターモータ80および負荷へ給電するRestartモードの2つのモードを有する。Dis−chargeモードにおいて、アイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動する場合であって、キャパシタ30の充電電圧がアイドリングストップ状態になった時に十分でなかった(たとえば12V未満であった)場合、Boostモードに移行する。その後内燃機関2の再始動が成功し、内燃機関2が稼働状態(ENG RUN)になった場合は、Dis−chargeモードに移行する。また、Dis−chargeモードにおいて、アイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動する場合であって、キャパシタ30の充電電圧がアイドリングストップ状態になった時に十分であった(たとえば12V以上であった)場合、Restartモードに移行する。その後内燃機関2の再始動が成功し、内燃機関2が稼働状態(ENG RUN)になった場合は、Dis−chargeモードに移行する。
【0046】
図4〜
図11を参照し、本実施例にける、上述したモード毎の動作を説明する。
図4は、Standbyモードの動作を示す。Standbyモードは、イグニションがオフにされた状態であり、すべてのスイッチがオフの状態である。第1負荷L1は、バッテリ20から給電可能な状態であり、第2負荷L2は、双方向DC/DCコンバータ60のバイパススイッチ65をオンにするだけで給電可能になるので、Standbyモードでは、双方向DC/DCコンバータ60の動作による消費電力を抑えることができる。
【0047】
図5は、Bypassモードの動作を示す。Bypassモードは、イグニションがオンされて内燃機関2を初回始動させる場合、またはキャパシタ30の充電電圧が所定電圧以下でアイドリングストップ状態になり再始動させる場合になるモードである。制御部10は、内燃機関2の状態などの車両情報に基づいて、第1スイッチ40、第2スイッチ50、および双方向DC/DCコンバータ60の各スイッチ、スターターモータスイッチ81を制御する。
【0048】
具体的には、制御部10は、Standbyモードから移行してきて内燃機関2を初回始動させる場合、第1スイッチ40をオン、第2スイッチ50をオフ、変圧回路スイッチ63をオフ、バイパススイッチ65をオン、接続スイッチ67をオフすると共に、スターターモータスイッチ81をオンすることで、バッテリ20にスターターモータ80、第1負荷L1、第2負荷L2へ給電させる。また、このとき、制御部10により、双方向DC/DC変圧器62の動作を停止させてもよい。この場合、バッテリ20に直接接続されている第1負荷L1および双方向DC/DC変圧器62を介さずバイパス回路64を経由して給電される第2負荷L2では、同じバッテリ20からスターターモータ80に給電することで電圧低下が発生することになる。しかし、内燃機関2を初回始動させる時なので、1回のみであり、またそもそも負荷自体が稼働していないため大きな影響はない。
【0049】
図6は、Dis−chargeモードの動作を示す。Dis−chargeモードは、Bypassモードから移行して内燃機関2が稼働した後のように、アイドリング状態など減速中以外でキャパシタ30の充電電圧が十分である(たとえば8V以上ある)場合になるモードである。制御部10は、車両1が加速/定速/アイドリング/アイドリングストップ状態であって、電圧計31が計測したキャパシタ30の電圧値が所定電圧(たとえば8V)以上であれば、このDis−chargeモードを維持する。
【0050】
制御部10は、このモードでは、第1スイッチ40をオフ、第2スイッチ50をオフ、変圧回路スイッチ63をオン、バイパススイッチ65をオン、接続スイッチ67をオフすることで、キャパシタ30を放電させて双方向DC/DC変圧器62を経由して第1負荷L1、第2負荷L2へ給電させる。制御部10は、バッテリ20への充放電電流を監視して、双方向DC/DC変圧器62の出力電圧を制御する。なお、このモードでは、発電機70は停止している。
【0051】
図7は、Generateモードの動作を示す。Generateモードは、Dis−chargeモードにおいてキャパシタ30の充電電圧が十分であったものが放電して所定の電圧未満になった場合になるモードである。制御部10は、車両1が加速/定速/アイドリング/アイドリングストップ状態であって、電圧計31が計測したキャパシタ30の電圧値が所定の電圧値(たとえば8V)未満であれば、このモードになる。なお、この所定の電圧の8Vは例示であり、GenerateモードとDis−chargeモードを分ける所定の電圧値はキャパシタの特性や回生システムの設計により適宜定められる。
【0052】
制御部10は、第1スイッチ40をオン、第2スイッチ50をオフ、変圧回路スイッチ63をオン、バイパススイッチ65をオン、接続スイッチ67をオフする。これにより、内燃機関2の動力により発電機70で発電された電力は、第1負荷L1へ直接、双方向DC/DC変圧器62をバイパスして第2負荷L2へ供給されると共に、バッテリ20に直接、キャパシタ30に双方向DC/DC変圧器62を介して供給されて充電される。発電機70からの充電によりキャパシタ30の充電不足が解消された場合には、GenerateモードからDis−chargeモードへ状態遷移する。
【0053】
図8は、Fast Chargeモードの動作を示す。Fast Chargeモードは、Dis−chargeモードにおいて減速された場合であって、キャパシタ30の電圧値が所定の電圧値以上(たとえば、10V以上)であった場合になるモードである。制御部10は、車両1の走行状態がブレーキ操作などにより減速状態であり、キャパシタ30の電圧値がたとえば10V以上であった場合では、このモードになる。制御部10は、第1スイッチ40をオフ、第2スイッチ50をオン、変圧回路スイッチ63をオフ、バイパススイッチ65をオン、接続スイッチ67をオフする。また、このとき、制御部10により、双方向DC/DC変圧器62の動作を停止させてもよい。これにより、減速時の車両1の運動エネルギーにより発電機70で発電された電力は、発電機70の電圧可変制御により直接キャパシタ30に供給され、キャパシタ30を大電流(たとえば、150〜200A程度)で充電する。また、バッテリ20は、第1負荷L1へ直接、双方向DC/DC変圧器62をバイパスして第2負荷L2へ電力を供給する。なお、発電機70の電圧可変制御は、ある範囲内(通常10V〜16V程度)で可能なので、このモードは、キャパシタ30の電圧値がこの範囲内に収まるよう所定の電圧値以上である場合に限られる。
【0054】
したがって、Fast Chargeモードでは、制御部10は、車両1が走行中に減速している時、電圧計31が示すキャパシタ30の電圧値が所定の電圧値以上である場合は、第1スイッチ40をオフ、第2スイッチ50をオンにして、発電機70が回生発電する電力をキャパシタ30に給電してキャパシタ30を充電し、バッテリ20から第1負荷L1に直接給電する。また、制御部10は、変圧回路スイッチ63をオフ、接続スイッチ67をオフ、バイパススイッチ65をオンにして、バッテリ20から第2負荷L2に給電する。これにより、キャパシタ30の電圧が所定電圧より高い場合は、減速中にキャパシタ30は双方向DC/DCコンバータ60を介さず発電機70から直接大電流で充電され、回生エネルギーを効率良く回収することで燃費を向上させることができる。
【0055】
図9は、Chargeモードの動作を示す。Chargeモードは、Dis−chargeモードにおいて減速された場合であって、キャパシタ30の電圧値が所定の電圧値未満(たとえば、10V未満)であった場合になるモードである。なお、この所定の電圧の10Vは例示であり、ChargeモードとFAST Chargeモードを分ける所定の電圧値はキャパシタの特性や回生システムの設計により適宜定められる。
【0056】
制御部10は、車両1の走行状態がブレーキ操作などにより減速状態であり、キャパシタ30の電圧値がたとえば10V未満であった場合では、このモードになる。制御部10は、第1スイッチ40をオン、第2スイッチ50をオフ、変圧回路スイッチ63をオン、バイパススイッチ65をオン、接続スイッチ67をオフする。これにより、減速時の車両1の運動エネルギーにより発電機70で発電された電力は、双方向DC/DC変圧器62を経由してキャパシタ30に供給され、双方向DC/DC変圧器62によって制御された最大出力電流(たとえば、50A程度)でキャパシタ30を充電する。
【0057】
また、発電機70で発電された電力は、バッテリ20、第1負荷L1、双方向DC/DC変圧器62をバイパスして第2負荷L2へ供給される。なお、上述したように、キャパシタ30への大電流による充電は、キャパシタ30の充電電圧値が所定の電圧値以上である必要がある。これは、所定の電圧値未満のキャパシタ30に対して、発電機70の電圧可変制御により直接大電流で充電しようとすると、回路に過電流が流れたり、急激な電圧低下を起こしたりする恐れがあるので、このモードは、キャパシタ30の電圧値が所定の電圧値未満である場合に限られる。
【0058】
したがって、制御部10は、車両1が走行中に減速している時、電圧計31が示すキャパシタ30の電圧値が所定の電圧値未満である場合、第2スイッチ50をオフ、第1スイッチ40をオンにして、発電機70が回生発電する電力を、バッテリ20に給電してバッテリ20を充電する共に、第1負荷L1に給電する。また、制御部10は、接続スイッチ67をオフ、変圧回路スイッチ63をオン、バイパススイッチ65をオンにして、発電機70が回生発電する電力を、キャパシタ30に給電してキャパシタ30を充電する共に、第2負荷L2に給電する。これにより、キャパシタ30の電圧が所定電圧より低い場合は、減速中にキャパシタ30は発電機70から双方向DC/DCコンバータ60を介して充電されることで、キャパシタが、発電機から直接充電できない低い電圧であっても、発電機からの電圧を双方向DC/DCコンバータで変圧することにより、発電機からの電力をキャパシタに回収することができる。このように、車両1の減速時に、Fast ChargeモードとChargeモードを、キャパシタ30の充電電圧で切り分けて動作させることで、車両減速時の回生エネルギーを効率良く回収することができ、燃費を向上させることができる。
【0059】
図10は、Restartモードの動作を示す。Restartモードは、Dis−chargeモードにおいて、アイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動する場合であって、キャパシタ30の充電電圧がアイドリングストップ状態になった時に十分であった(たとえば、12V以上)場合になるモードである。制御部10は、車両1の走行状態がアイドリングストップ状態であり、キャパシタ30の電圧値がたとえば12V以上であった場合では、このモードになる。制御部10は、第1スイッチ40をオフ、第2スイッチ50をオン、変圧回路スイッチ63をオン、バイパススイッチ65をオン、接続スイッチ67をオフ、スターターモータスイッチ81をオンする。これにより、キャパシタ30から双方向DC/DC変圧器62を経由して第1負荷L1および第2負荷L2に給電すると共に、キャパシタ30からスターターモータ80に給電し、内燃機関2を再始動させる。第1負荷L1および第2負荷L2は、双方向DC/DC変圧器62を経由して給電されるので、電圧低下をおこすことがない。
【0060】
したがって、制御部10は、アイドリングストップ状態から内燃機関2をスターターモータ80により再始動する際、電圧計31が示すキャパシタ30の電圧値が所定の電圧値以上である場合、第1スイッチ40をオフ、第2スイッチ50をオンにして、キャパシタ30からスターターモータ80に給電する。また、制御部10は、接続スイッチ67をオフ、変圧回路スイッチ63をオン、バイパススイッチ65をオンにして、キャパシタ30から双方向DC/DC変圧器62を介して第1負荷L1および第2負荷L2に給電する。これにより、キャパシタ30の電圧が所定の電圧より高い場合は、キャパシタ30からスターターモータ80を駆動することでバッテリ20の劣化を軽減することができる。さらに、キャパシタ30から双方向DC/DCコンバータ60を介して給電することで、スターターモータ80を駆動させて内燃機関2を再始動する際の第1負荷L1および第2負荷L2への電圧低下を防止することができる。
【0061】
図11は、Boostモードの動作を示す。Boostモードは、Dis−chargeモードにおいて、アイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動する場合であって、キャパシタ30の充電電圧がアイドリングストップ状態になった時に十分でなかった(たとえば、12V未満)場合になるモードである。また、Boostモードは、Bypassモードにおいて、アイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動する場合にもなるモードでもある。なお、この所定の電圧の12Vは例示であり、BoostモードとRestartモードを分ける所定の電圧値はキャパシタの特性や回生システムの設計により適宜定められる。
【0062】
制御部10は、車両1の走行状態がアイドリングストップ状態であり、キャパシタ30の電圧値がたとえば8Vから12Vの間であった場合では、このモードになる。制御部10は、第1スイッチ40をオン、第2スイッチ50をオフ、変圧回路スイッチ63をオフ、バイパススイッチ65をオフ、接続スイッチ67をオン、スターターモータスイッチ81をオンする。これにより、バッテリ20から第1負荷L1へ直接、および第2負荷L2へ双方向DC/DC変圧器62を経由して給電すると共に、バッテリ20からスターターモータ80に給電し、内燃機関2を再始動させる。第2負荷L2は、双方向DC/DC変圧器62を経由して給電されるので、電圧低下をおこすことがない。
【0063】
したがって、制御部10は、アイドリングストップ状態から内燃機関2をスターターモータ80により再始動する際、電圧計31が示すキャパシタ30の電圧値が所定の電圧値未満である場合、第2スイッチ50をオフ、第1スイッチ40をオンにして、バッテリ20からスターターモータ80に給電し、バッテリ20から第1負荷L1に給電し、バイパススイッチ65をオフ、変圧回路スイッチ63をオフ、接続スイッチ67をオンにして、バッテリ20から双方向DC/DC変圧器62を経由して前記第2負荷に給電する。これにより、キャパシタ30の電圧が低い場合は、バッテリ20からスターターモータ80、第1負荷L1および第2負荷L2へ給電することでキャパシタ30の電力を使用せずにアイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動することができ、再始動する際の第2負荷L2への電圧低下を防止することができる。このように、アイドリングストップ状態から内燃機関2を再始動させる場合、RestartモードとBoostモードを、キャパシタ30の充電電圧で切り分けて動作させることで、内燃機関を再始動する際の負荷への電圧低下を可能な限り防止することができる。
【0064】
なお、上述したことは、同様な構成要素を備える回生システムにおいて、キャパシタ30の電圧値や内燃機関2の稼働状態に基づいて、第1スイッチ40、第2スイッチ50、双方向DC/DCコンバータ60を制御することにより、発電機70からバッテリ20、キャパシタ30、第1負荷L1、第2負荷L2へ給電し、バッテリ20またはキャパシタ30から第1負荷L1、第2負荷L2、スターターモータ80に給電する回生システムの制御方法ということができる。
【0065】
図12を参照し、車両1や構成要素の状態を併せて説明する。本図は、左から右へ時間が経過するように描かれており、最も左が初期状態を示す。初期状態では、内燃機関2、スターターモータ80、発電機70、双方向DC/DCコンバータ60はすべて停止しており、また、すべてのスイッチはオフ状態であり、車両1の速度は毎時ゼロKm(Km/h)である。また、キャパシタ30の電圧は、8V未満であるとの想定である。この初期状態では、回生システム100は、Stanbyモードである。
【0066】
車両1の使用者がイグニションをオンにすると、制御部10は、第1スイッチ40をオンにして、バッテリ20から給電してスターターモータ80を駆動する準備を行う。使用者は、内燃機関2を稼働させる操作を行い、内燃機関2を初回の始動をさせる(手動による始動)。この際、回生システム100は、Bypassモードになる。内燃機関2は、初回始動するとアイドリング状態となり、回生システム100は、Dis−chargeモードとなる。制御部10は、アイドリング状態でキャパシタ30の電圧値を取得し、8V未満であることを検知すると、Generateモードにする。そうすると、発電機70は、内燃機関2の動力により発電をし始める(燃料発電)。
【0067】
使用者がアクセル操作を行い内燃機関2の回転数を増加させて加速すると、車両1の速度は増加し始め、車両1の走行状態は加速状態となる。その後、使用者がブレーキ操作を行い減速状態となると、制御部10は、Chargeモードにして、発電機70は燃料発電から回生発電に切り替えて発電する。また、発電機70は、双方向DC/DCコンバータ60を介して、回生発電により発電された電力をキャパシタ30へ供給し、充電を行う。これにより、キャパシタ30の充電電圧は増加する。
【0068】
また、使用者がアクセル操作を行い加速状態になると、制御部10は、Dis−chargeモードにして、発電機70は発電を停止し、キャパシタ30は放電し、負荷などへ電力を供給する。またその後減速状態となると、制御部10は、Chargeモードにして、発電機70は回生発電を行い、発電機70は、双方向DC/DCコンバータ60を介して、その電力をキャパシタ30へ供給し、充電を行う。これにより、キャパシタ30の充電電圧は増加し、10Vを超え、さらに12Vも超えたものとする。
【0069】
その後車両1は定速走行すると、キャパシタ30は十分に充電されたので、キャパシタ30からスターターモータ80や負荷への給電を準備するために、制御部10は、第1スイッチをオフ、第2スイッチをオンする。キャパシタ30は定速走行の間にも負荷のために放電するが、充電電圧が10V未満になる前に減速状態となった場合、制御部10は、FAST Chargeモードにして、発電機70が回生発電した電力を双方向DC/DCコンバータ60を介さずにキャパシタ30に供給して充電する(急速充電)。これにより、キャパシタ30は、ほぼ満充電されたと想定している。
【0070】
車両1は減速後停車し、アイドリング状態になるが、しばらくしてアイドリングストップ状態となる。その間、回生システム100は、Dis−chargeモードであり、キャパシタ30から負荷へ給電を行う。その後、アイドリングストップの解除操作を行うと、制御部10は、Restartモードにして、キャパシタ30からスターターモータ80に給電して再始動させ、車両1はアイドリング状態となる。この時、キャパシタ30は放電して10V以下の充電電圧となるので、キャパシタ30からスターターモータ80や負荷への給電は行わないものとして、制御部10は、第1スイッチをオン、第2スイッチをオフする。以降、また加速状態になるなど、同様な動作がなされる。
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、車両減速時の回生エネルギーを効率良く回収することで燃費を向上させ、また、アイドリングストップ状態から内燃機関を再始動する際の負荷への電圧低下を防止する回生システムおよびその制御方法を提供できる。
【0072】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。