(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268149
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】緩衝機能を付与した臥床台を有する保育器
(51)【国際特許分類】
A61G 11/00 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
A61G11/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-244035(P2015-244035)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-108818(P2017-108818A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022541
【氏名又は名称】アトムメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 啓介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 信介
(72)【発明者】
【氏名】寶田 佳左
(72)【発明者】
【氏名】松原 一郎
(72)【発明者】
【氏名】松原 照巳
【審査官】
井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−516808(JP,A)
【文献】
特開平10−277095(JP,A)
【文献】
特開2009−137368(JP,A)
【文献】
特表2015−524731(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/091412(WO,A1)
【文献】
特開2015−192765(JP,A)
【文献】
特開平03−222950(JP,A)
【文献】
特開平07−055546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保育器の本体部の上部に開閉できるフードが取り付けられると共に、マットレスを備えた臥床台を有する新生児の保育に使用される保育器であって、
前記本体部の天板に所要間隔をもって複数のゴム製のインシュレータが起立状態に取り付けられると共に、臥床台を載せて前後方向にスライドさせる一対の天板レールが取り付けられ、
前記臥床台の下面には、前記インシュレータの上端が係合または嵌合する段差部をもち且つ手前側から見てU字状の一対の立ち上がりガイドレールを設け、
前記臥床台は、前記本体部に対して天板レール上に載置して施術する位置と、前記インシュレータを介して前記段差部により所要の間隔をもって上方に浮き上がらせて弾性的に支持される位置とに、それぞれ取り付け得ること
を特徴とする緊急搬送用にも使用できる保育器。
【請求項2】
前記インシュレータの上端には、リング状またはキャップ状の滑り材が取り付けられていること
を特徴とする請求項1に記載の緊急搬送用にも使用できる保育器。
【請求項3】
前記ガイドレールにおけるU字状部の端縁内側にフランジ部が形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の緊急搬送用にも使用できる保育器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、院内において新生児を収容し所要のカートに乗せて育児室まで搬送するための搬送用保育器であり、また、例えば、生まれたばかりの新生児に重大な疾患が見つかった場合に、個人病院または小規模病院から大病院へ緊急搬送するための搬送用保育器であて、緩衝機能を付与した臥床台を有する保育器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送用保育器ではないが、新生児または乳幼児用保育器は複数のものが公知になっている。
第1の公知技術としては、新生児を収容するベッド部と、該ベッド部を覆い複数の手入窓(処置窓)を有する保護カバーと、該保護カバー内の温度や湿度などを管理するためのコントロールパネルを備えた保育器であって、前記保護カバーは、構成成分として導電性酸化亜鉛を含有する透明なガラスで形成され、可視光線のみを透過し、放射線や電磁波などを遮断する保育器である(特許文献1参照)。
【0003】
この第1の公知技術に係る保育器においては、新生児を収容するベッド部を覆う保護カバーを、構成成分として導電性酸化亜鉛を含有するガラスで形成することにより、この保護カバーが可視光線のみを不規則な屈折や乱反射を生じることなく透過し、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線、中性子線等を効果的に遮断するので、収容された新生児の目の発育や能の発達や育成状態に悪影響を与えることが少ない。また、この保護カバーは透明で熱伝導率が高く、内部の熱を適度に放散するので、熱のこもりに起因する雑菌繁殖のおそれがなく,内部に収容された新生児の顔色などを観察するときにも支障がない。さらに、保護カバーを構成するガラス自体が紫外線などの遮蔽機能を備えているため、表面損傷による機能低下や経時変化が発生せず、耐久性も優れている、というものである。
【0004】
また、第2の公知技術は、新生児収納室の側面に設けられている処置窓と、この処置窓を閉鎖および開放する処置扉と、下降および上昇することによって前記新生児収容室の天面を閉鎖および開放する天蓋と、前記新生児収容室を加熱する加熱器とを備えられている保育器において、前記処置窓を閉鎖している最上昇位置と前記処置窓を開放している最下降位置との間で前記処置扉を下降および上昇させ、且つ前記最上昇位置と前記最下降位置との間の中間位置に前記処置扉を停止させることができる、処置扉昇降機構と、前記天蓋の前記下降および上昇の経路から変位している経路で前記加熱器を下降および上昇させる加熱器昇降機構とを具備する保育器である(特許文献2参照)。
【0005】
この第2の公知技術に係る保育器においては、天蓋及び加熱器がそれらの最上昇位置にあって、処置扉が中間位置にある開放型保育器の状態と、天蓋及び処置扉が夫々最下降位置及び最上昇位置にあり加熱器が最上昇位置にあって加熱器が天蓋等を加熱可能な閉鎖型保育器の状態と、天蓋及び処置扉が夫々最下降位置及び最上昇位置にあり加熱器が最下降位置にあって移動の容易な閉鎖型保育器の状態と、天蓋及び加熱器がそれらの最上昇位置にあって処置扉か最下降位置にある蘇生処置用装置の状態との間で、保育器を切り換えることができる。従って,単一の保育器を四種類の装置の状態で使用することができて多くの装置を備える必要がない、というものである。
【0006】
さらに、第3の公知技術は、早産児や新生児用の保育器に使用される保育器用フードであって、少なくとも前記保育器用フードの光を受ける面が、電圧の印加により波長が680nm以下の光透過を抑制する機能を有する調光エレクトロクロミック素子からなるフィルタを有している保育器用フードであり、該フードを備えた保育器である(特許文献3参照)。
【0007】
この第3の公知技術に係る保育器においては、スイッチの入り切りによって、波長が680nm以下の光透過を抑制することができるため、新生児室内の照明を点灯した状態のまま、早産児や新生児の発育に効果的な明暗環境を作ることができる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−153523号公報
【特許文献2】特開2010−99243号公報
【特許文献3】特開2014−200494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、新生児が早産児(在胎37週未満で出生した児)の内、低出生体重児(2500g未満)や、肺などの呼吸器疾患および心臓などの循環器疾患等のような疾病をもって生まれた場合に、個人病院や小規模病院では治療設備(NICU等)がないので、治療設備が整った大規模病院に救急車またはヘリコプターで緊急搬送する必要があるが、前記第1、2、3の公知技術に係る保育器は、いずれも臥床台が本体部に対して定着型の保育器であって,保育器内部を病状に合った適切な状態に維持しながら、新生児を安全に緊急搬送には使用できないのである。
【0010】
その理由は、前記公知の保育器を使用し、患者をシートベルトで緩く臥床台に固定して救急車やヘリコプターで大病院へ緊急搬送するようになった場合は、道路の状態(段差があったりデコボコ状態であったり)や車の混み具合によってブレーキを掛けたりスピードを上げたり、急ブレーキを掛けたりする際に衝撃を受けるし、ヘリコプターの場合は、飛んでいる時は振動を受け、屋上のヘリポートに着地した時の衝撃や、ヘリポートからカートリッジに乗せられて病室までカートに乗せて搬送する際に衝撃や振動を受けるので、患者の新生児がシートベルトからすり抜けて、カバー又はフードの壁にぶつかってしまったり、又は、シートベルトをきつく締めつけると皮膚が擦れて擦り傷ができたりする恐れがある。
【0011】
いずれにしても、前記第1〜3の公知技術に係る保育器においては、臥床台が本体部上面に直接配置または搭載された構造を有しており、病院内での搬送中であっても、また、新生児の患者を外部の病院に緊急搬送するためであっても、搬送中における本体部からの振動または衝撃が直に臥床台に伝わり、搬送中の新生児または患者に不快感を与えるという問題点を有している。
【0012】
従って、この種の新生児の保育器においては、院内でも普通に使用できるし、緊急時にも振動または衝撃を緩衝または吸収して不快感を与えないように搬送できるようにすることに解決課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決する具体的手段として、保育器の本体部の上部に開閉できるフードが取り付けられると共に、マットレスを備えた臥床台を有する新生児の保育に使用される保育器であって、前記本体部の天板に所要間隔をもって複数のゴム製のインシュレータが起立状態に取り付けられると共に、
臥床台を載せて前後方向にスライドさせる一対の天板レールが取り付けられ、前記臥床台の下面には、前記インシュレータの上端が係合または嵌合する段差部をも
ち且つ手前側から見てU字状の
一対の立ち上がりガイドレールを設け、前記臥床台は、前記本体部に対して
天板レール上に載置して施術する位置と、前記インシュレータを介して
前記段差部により所要の間隔をもって上方に浮き上がらせて弾性的に支持される
位置とに、それぞれ取り付け
得ることを特徴とする緊急搬送用にも使用できる保育器を提供するものである。
【0014】
本発明に係る搬送用保育器にも使用できる保育器において、前記インシュレータの上端には、リング状またはキャップ状の滑り材が取り付けられていること;および前記ガイドレールにおけるU字状部の端縁内側にフランジ部が形成されていること、を付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る緊急搬送用にも使用できる保育器によれば、通常は、院内において生まれた新生児を収容し、看護士が複数日面倒を見るために使用するものであるが、本体部の天板に複数のインシュレータと共に一対の天板レールを設けたこと、および本体部に取り付けられる臥床台の下面には、前記インシュレータの上端が係合または嵌合する段差部をもったU字状の立ち上がりガイドレールを設けた構成としたことにより、臥床台を天板レール上にセットすれば、所要の施術に支障を来さない安定した状態にセットできると共に、新生児が普通ではなく疾病をもって生まれた時に、個人病院や小規模病院では治療設備(NICU等)がないため、治療設備が整った大規模病院に救急車またはヘリコプターで緊急搬送する必要があるときに、そのまま使用することができるばかりでなく、院内での搬送または緊急搬送の場合でも、臥床台が複数のインシュレータによって弾性的に支持され、搬送中に受ける振動や衝撃を緩衝または吸収するので、新生児の患者に不快感を与えることなく、しかも、安全に安定した状態で搬送することができるという優れた効果を奏する。
【0016】
さらに、本発明に係る緊急搬送用にも使用できる保育器は、インシュレータの上端には、リング状またはキャップ状の滑り材が取り付けられていることによって、臥床台を本体部に対して簡単に取り付けまたは取り外しができるのであり、もし、臥床台のマットレスが汚れてしまった場合でも、簡単に臥床台を取り換えることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の好ましい実施の形態に係る緊急搬送用にも使用できる保育器の全体を示した斜視図である。
【
図2】同実施の形態に係る保育器で、前面側フードを開いた状態を示す、要部の拡大断面図である。
【
図3】同実施の形態に係る保育器に使用される好ましい臥床台を示す斜視図である。
【
図4】同実施の形態に係る保育器で、同臥床台のトレーの構成を示す下面側または裏面側の斜視図である。
【
図5】同実施の形態に係る保育器で、同臥床台を本体部に取り付ける初期位置状態を示すと共に要部の一部を拡大して示した断面図である。
【
図6】同実施の形態に係る保育器で、同臥床台が取り付けられる本体部の天板に取り付けられたインシュレータの取り付け状態と天板レールとを示した略示的な斜視図である。
【
図7】同実施の形態に係る保育器で、同臥床台を本体部に取り付けるに当たって、施術可能な位置状態を示した断面図である。
【
図8】同実施の形態に係る保育器で、同臥床台を本体部に取り付けられた最終取付位置を示した断面図である。
【
図9】同実施の形態に係る保育器で、同臥床台を本体部に取り付けた状態で、全体を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。まず、
図1〜
図2において、本発明に係る保育器1は、温度調整機能等を備えた本体部2の上部に、透明な樹脂で形成されたフード3が配設されたものであり、該フ−ド3は、厚みの薄い前側フード3aと厚みの厚い後側フード3bとに分割され、それぞれは前後方向に開閉できるように、例えば、蝶番などにより回転可能に取り付けられており、前側フード3aと後側フード3bとの開口部側の当接部が開かないようにロック手段4によりロックされている。
【0019】
前側フード3aと後側フード3bには、それぞれ両手をフード3内に挿入して施術ができるように一対の手入窓が設けられ、該手入窓は、通常は軸受け部5を介して開閉自在に取り付けられた扉6により係止部7を係止させて閉塞されており、必要が生じた時にそれぞれ係止部7を外して扉6を開いて両手をフード3内に挿入することができるのである。なお、符号8は、各種調整機能を設定するためのボードである。
【0020】
上記説明の構成を有する搬送用保育器は、従来技術と略同様な構造であるが、本発明は、本体部2の上部9、即ち、フード3内に設置される臥床台10に特徴が存するのである。
つまり、病院内で通常通りに使用されると共に、緊急搬送用にも使用される臥床台が搬送途上において、振動または衝撃を緩衝または吸収する状態に且つ着脱可能に設置される構造であって、
図2においては、まだ、本体部2の上部9に臥床台10が取り付けられていない状況を示すものである。
【0021】
そこで、臥床台10については、
図3および
図4に示したように、本体部2の上部9でフード3内に納まる大きさに、金属またはプラスチック等で形成したトレー11上に所要の厚みを有するマットレス12を敷設したものであり、トレー11の下面側または裏面側には、
図4に示したように、U字状のストロークの長いものと短いものとからなる各1対の立ち上がりガイドレール13a、13bと14a、14bとが所要の間隔をもって、トレー11の長辺側を横切る方向に且つ短辺側寄りに設けられている。これらガイドレールは、本体部2の上部9に取り付けられた複数(4個)のインシュレータ15a、15b、16a、16b(仮想線で示す)が夫々嵌まって適正にガイドされる。なお、各ガイドレールにおけるU字状部分の端縁の内側に張り出したフランジ部13c、13d、14c、14dが夫々形成されると共に、そのフランジ部に至る位置の底面に、夫々段差部13e、13f、14e、14fが形成されている。なお、マットレス12の上面には、自由に取り替えができるシート17が敷設されている。また、前記トレー11の両側面の立ち上がり壁11aには、緊急搬送時に患者の移動を押さえるために、複数(例えば3個所)のシートベルト取り付け部22が所要間隔をもって設けられている。
【0022】
また、
図5と
図6に示したように、本体部2の上部9に取り付けられる複数のインシュレータ15a、15b、16a、16bは、所要間隔をもって、好ましくは、本体部2を横切る方向で1列2個で2列に、両短辺寄りで且つ長辺側に夫々に取り付けられる。そして、その内の1つを取り出して拡大して示したように、インシュレータの本体部分は円柱状のゴムで形成され、各上端部にリング状またはキャップ状の滑り材18a〜18dが夫々一体的に取り付けられたものであり、各インシュレータ15a〜16bの下端部は、
図6に示したように、本体部2における天板19の設定された位置(4個所)に設けた凹み部20に起立状態で強固に取り付けられている。さらに、天板19には、前記臥床台10を安定した状態に設置できるようにすることと、緩衝機能を付与するように設置できるようにするために、一対の天板レール21が設けられ、該天板レール21上に臥床台10の裏面を接触させ且つガイドレール13a、13bと14a、14bに各インシュレータ15a〜16bを係合させて載せて安定した状態と、その状態から臥床台10を背面側にスライドさせることにより緩衝状態に取り付けることができるのである。
【0023】
つまり、本体部2の前面側から臥床台10を天板レール21上にセットし、ガイドレール13aに手前側のインシュレータ15aを、ガイドレール14aに手前側のインシュレータ16aを夫々嵌合または係合させ、本体部2に対して水平に滑らせるように押し込むことにより、
図7に示したように、ガイドレール13bに奥側のインシュレータ15bが、ガイドレール14bに奥側のインシュレータ16bが夫々嵌合または係合するようになって、各インシュレータ15a〜16bの頂部が各ガイドレール13a〜14bの各段差部13e、13f、14e、14fに当接する位置が、臥床台10が天板レール21に支持されているので安定した状態であって、術者にとって施術し易く、施術の正確性が維持できる。
【0024】
また、保育器1を搬送する際には、さらに、臥床台10を奥側に押し込むことにより、各インシュレータの滑り材18a〜18dが各段差部13e、13f、14e、14fを乗り越えて、
図8と
図9に示したように、各インシュレータ15a〜16bの上端(頭部)がフランジ部13c、13d、14c、14dの内側に嵌まり込むと共に、段差部の分だけ臥床台10が天板レール21から所要の隙間をもって上方に浮き上がり、実質的にゴムで形成されたインシュレータ15a〜16bによって臥床台10が本体部2から離されて弾性的に四点支持されて緩衝状態に取り付けられ、本体部2からの振動や衝撃を吸収または緩衝する役目を果たしているのである。
いずれにしても、天板19に設けた天板レール21と、臥床台10に設けた段差部13e、13f、14e、14f付きのガイドレール13a〜14bとによって、本体部2に対して臥床台10をスムーズに着脱できると共に、施術用として安定した位置付けと、搬送時の振動や衝撃を吸収または緩衝する緩衝状態の位置付けとの相反する効果を実現させているのである。
【0025】
このように臥床台10を組み込んだ保育器1は、一般的には病院内において何らかの施術が必要な場合には、
図7に示した位置に、臥床台10をセットして所要の施術を行い、その後、臥床台10を奥側に押し込んで天板レール21から所要の隙間をもって離間させ、フード3を被せて所要のカートに乗せて産室から育児室まで移動するものであるが、この移動において、カートおよび本体部2からの振動または衝撃がインシュレータ15a〜16bによって緩衝または吸収され、臥床台10には直接的には伝達されないので、新生児に不快感を与えないのである。
【0026】
さらに、新生児が普通ではなく疾病をもって生まれた時に、外部の設備が整った大病院へ緊急搬送用に使用される場合でも、臥床台10がインシュレータ15a〜16bによって緩衝機能が付与されているので、そのまま緊急搬送用として使用できるのである。この場合には、保育器1の本体部2を乗せるカートは、救急車やヘリコプターに移載する際に、脚部が自動的に折れ畳まれて本体部2と一緒にカートも移載できる構成のものが使用され、また、降ろされる時には、自動的に脚部が元の状態に戻る構成のカートが使用される。
【0027】
そして、図示していないが、緊急搬送時にはトレー11のシートベルト取り付け部22に対して、夫々所要のシートベルトが架け渡され、一方の側面、好ましくは、前面側の側面で、例えば、ベルクロファスナー等により係合できるようにしてあり、実際の使用時において、新生児の患者を臥床台10上に寝かせて収容した後に、例えば、ソフトなタオル等を掛けて患者が移動しない程度に軽く締めつけるようにするのである。なお、必要があれば、臥床台10上にソフトなウレタンスポンジ等のクッション材を敷設することができ、そのクッション材として、ソフトなウレタンスポンジや、ゲル材、水を含む液体または気体を袋詰めしたもの、綿またはゴム全般も使用可能対象として含まれるものである。さらに、保育器1を緊急搬送時に使用した場合に、救急車またはヘリコプター側に適合する電源がない時に、保育器1における温度調整機能等を制御するための電源として、本体部2に所要のバッテリー23を装備しており、常に正常な状態で、例えば、少なくとも3〜6時間程度は駆動状態が維持されるようになっている。
【0028】
いずれにしても、本発明に係る保育器1は、通常は育児室に設置して生まれたばかりの新生児を収容し、新生児に異常がなければ、看護師が複数日に渡って面倒を見るようにしているが、仮に、所要の施術が必要な場合には、臥床台10を施術に支障を来さない安定した状態にセットでき、さらに、早産児の内、低出生体重児や、肺などの呼吸器疾患および心臓などの循環器疾患等のような疾病をもって生まれた場合に、個人病院や小規模病院では治療設備(NICU等)がないので、治療設備が整った大規模病院に救急車またはヘリコプターで緊急搬送する必要があるので、搬送時には、臥床台10を緩衝機能が発揮できる状態にセットできるのであり、要するに、通常の状態で使用される保育器1をそのまま緊急用として使用できるのである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る緊急搬送用に使用できる保育器1は、保育器の本体2の上部に開閉できるフード3a、3bが取り付けられると共に、マットレス12を備えた臥床台10を有する新生児の保育に使用される保育器1であって、前記本体部2の天板19に所要間隔をもって複数のゴム製のインシュレータ15a〜16bが起立状態に取り付けられと共に、一対の天板レール21が設けられ、前記臥床台10の下面には、前記インシュレータの上端が係合または嵌合するU字状の立ち上がりガイドレール13a〜14bを設け、該各ガイドレールに段差部13e、13f、14e、14fを設けたものであり、臥床台10は施術に支障を来さないように天板レール21上に安定した状態でセットできるばかりでなく、臥床台10は、前記本体部2に対して前記インシュレータを介して弾性的に支持されて取り付けられる構成にしたものであって、緊急搬送用にもそのまま使用できる保育器である。つまり、通常は、院内において生まれた新生児を収容し、看護士が複数日面倒を見るために使用するものであるが、新生児が普通ではなく疾病をもって生まれた時に、個人病院や小規模病院では治療設備(NICU等)がないため、治療設備が整った大規模病院に救急車またはヘリコプターで緊急搬送する必要があるときに、そのまま使用しても新生児の患者を安全に安定した状態で緊急搬送することができると共に、振動や衝撃を緩衝または吸収して新生児の患者に不快感を与えないので、前記実施の形態に拘わらず一般用または搬送用保育器として広く利用できるのである。
【符号の説明】
【0030】
1 保育器
2 本体部
3 フード
3a 前側フード
3b 後側フード
4 ロック手段
5 軸受け部
6 扉
7 係止部
8 ボード
9 上面
10 臥床台
11 トレー
11a 立ち上がり壁
12 マットレス
13a、13b、14a、14b ガイドレール
13c、13d、14c、14d フランジ部
13e、13f、14e、14f 段差部
15a、15b、16a、16b インシュレータ
17 シート
18a〜18d 滑り材
19 天板
20 凹み部
21 天板レール
22 シートベルト取り付け部
23 バッテリー