特許第6268169号(P6268169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6268169サンプルの表面を検査する装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268169
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】サンプルの表面を検査する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20180115BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20180115BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20180115BHJP
   H01J 37/141 20060101ALI20180115BHJP
   H01J 37/10 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01J37/244
   H01J37/28 B
   H01J37/09 A
   H01J37/141 Z
   H01J37/10
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-518354(P2015-518354)
(86)(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公表番号】特表2015-520501(P2015-520501A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】NL2013050416
(87)【国際公開番号】WO2013191539
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】2009053
(32)【優先日】2012年6月22日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】507013822
【氏名又は名称】テクニシエ ユニヴェルシテイト デルフト
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】クライト,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘイダリ,アリ モハマディ
(72)【発明者】
【氏名】レン,ヤン
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−317467(JP,A)
【文献】 特表2006−510184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00 −37/02
H01J 37/05
H01J 37/09 −37/18
H01J 37/21
H01J 37/24 −37/244
H01J 37/252−37/36
H01L 21/64 −21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの表面を検査する装置であって、
前記装置は、
一次荷電粒子ビームのアレイを生成するマルチビーム荷電粒子生成器と、
すべての荷電粒子ビームを、共通交差部に方向づける集光レンズと、
前記一次荷電粒子ビームを、前記共通交差部から、前記サンプル表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビームを、前記サンプル表面上の個々のスポットのアレイに収束するレンズシステムとを備え、
前記装置が、前記共通交差部を含み、光軸に垂直な面に位置づけられる検出面を備える、位置感応二次電子検出器を備え、
前記レンズシステムは、前記検出面において、前記サンプルの個々のスポットからの二次電子のビームを収束することを特徴とする、
装置。
【請求項2】
前記レンズシステムが、前記二次電子を、前記サンプル表面上の前記個々のスポットから、前記二次電子検出器上の個々のスポットに投射するよう配置される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記レンズシステムが、前記サンプル表面を、前記二次電子を使用して、前記二次電子検出器上に結像するよう配置される、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記レンズシステムが、前記サンプル表面を、5から400倍の範囲の光学倍率で、前記二次電子検出器上に結像するよう配置される、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記二次電子検出器が、前記一次荷電粒子ビームを通すための穴を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記レンズシステムが、磁気対物レンズを備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、前記サンプル表面を、前記対物レンズの磁場中に位置づけるよう配置されるサンプルホルダを備える、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記レンズシステムが、単一対物レンズを備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記レンズシステムが、小型対物レンズのアレイを有する対物レンズアレイを備え、好ましくは、各一次電子ビームに対して1つのレンズを備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、電磁場生成器を備え、前記二次電子を前記サンプル表面から前記二次電子検出器に向けて加速する静電場をもたらす、
請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
請求項6の従属請求項である場合、前記電磁場生成器が、静電場を、前記サンプルと、前記磁気対物レンズの極片との間にもたらすよう配置される、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記サンプル表面の前記スポット間のピッチが、0.3から30マイクロメートルの間である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記検出器が、CCDカメラ、CMOSカメラ、または二次電子から信号を直接取得する、アバランシェフォトダイオードもしくは光電子増倍管もしくはPN接合半導体検出器のアレイである、
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記検出器が、前記共通交差部を備える面か、または面付近に、少なくとも実質的に配置される蛍光板と、前記蛍光板から、CCDカメラ、CMOSカメラ、アバランシェフォトダイオードもしくは光電子増倍管のアレイに光子を運ぶ光学構成とを備える、
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
サンプルの表面を検査する方法であって、
前記方法は、
マルチビーム荷電粒子生成器を使用して、一次荷電粒子ビームのアレイを生成するステップと、
集光レンズを使用して、すべての荷電粒子ビームを、共通交差部に方向づけるステップと、
レンズシステムを使用して、前記一次荷電粒子ビームを、前記共通交差部から、前記サンプル表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビームを、前記サンプル表面上の個々のスポットのアレイに収束するステップと、
前記共通交差部を含み、光軸に垂直な面に位置づけられる検出面を備える、位置感応二次電子検出器を使用して、前記サンプル表面上の前記個々のスポットから生じる二次電子を検出するステップとを備え、
前記レンズシステムは、前記検出面において、前記サンプルの個々のスポットからの二次電子のビームを収束する、
方法。
【請求項16】
前記サンプル表面が、第1の方向に一定速度で移動し、一方、前記一次荷電粒子ビームが、前記第1の方向に少なくとも実質的に垂直な第2の方向に繰り返し走査される、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記レンズシステムが、前記一次荷電粒子ビームを走査するスキャナを備え、前記方法は、前記スキャナによる前記一次荷電粒子ビームの前記走査の設定に応じて、1つの特定の二次電子ビームを検出するようピクセルを選択するステップを備える、
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの表面を検査する装置および方法に関する。特に、本発明は、マルチビーム型走査電子顕微鏡などの、複数の荷電粒子ビームを使用して、サンプル表面を検査する装置に関する。本発明は、電子、陽電子、およびイオンなどの、任意の種類の荷電粒子に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
例えば、そのような装置は、米国特許第7,554,094号明細書に開示される。この米国特許は、一次電子ビームのアレイを生成するための荷電粒子源を備える電子顕微鏡について開示する。これらの一次電子ビームは、対物レンズを通過する。この対物レンズの下流では、一次電子ビームパスは、対物レンズの中間面上流で交差部を有する収束ビームパスである。対物レンズは、一次荷電粒子ビームを、共通交差部から、サンプルの表面に向けて方向づけ、一次荷電粒子ビームを、サンプル表面上の個々のスポットのアレイに収束する。
【0003】
サンプル上のスポットのアレイの個々のスポットから、二次電子が、サンプル表面から放射される。これらの二次電子を検出するために、二次電子ビームパスは、複数の二次電子ビームを備え、一次電子ビームパスから分離される。二次電子ビームパスを一次電子ビームパスから分離するために、既知の装置は、対物レンズと交差部との間に、ビームスプリッタ装置を備える。ビームスプリッタは、磁場部を使用して、(一次電子ビームの進行方向から見て)右に角度βだけ一次電子ビームをそらし、(二次電子ビームの進行方向から見て)右に角度γだけ二次電子ビームをそらす。ビームスプリッタの後、分離された二次電子ビームは、検出器に向けて方向づけられる。
【0004】
このシステムの欠点は、米国特許第7,554,094号明細書で説明するようにビームスプリッタの使用により、装置の画像品質が劣化することである。言い換えると、米国特許第7,554,094号明細書で説明するような装置は、画像品質を実質的に維持するために、磁場部によって引き起こされる、無非点収差、歪み、および/または分散を修正するために、多数の追加の電子光学部品を必要とすることである。追加の電子光学部品は、一次電子ビームパスと二次電子ビームパスとの両方に配置される。
【0005】
本発明の目的は、二次電子を検出するための新しい検出装置を提供するサンプル表面を検査するためのマルチ荷電粒子ビーム装置を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,554,094号明細書
【発明の概要】
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、サンプルの表面を検査する装置を提供する。本装置は、
一次荷電粒子ビームのアレイを生成するマルチビーム荷電粒子生成器と、
すべての荷電粒子ビームを、共通交差部に方向づける集光レンズと、
一次荷電粒子ビームを、共通交差部から、サンプル表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビームを、サンプル表面上の個々のスポットのアレイに収束するレンズシステムと、
【0008】
前記共通交差部を備える面に、または前記共通交差部を備える面の近くに、少なくとも実質的に位置づけられる、位置感応二次電子検出器(position sensitive secondary electron detector)とを備える。
【0009】
したがって、本発明は、二次荷電粒子ビームパスを、一次荷電粒子ビームパスから分離するために、ビームスプリッタまたはウィーンフィルタを使用することなく、二次電子を検出することが可能な、単純な検出システムを提供する。したがって、そのようなビームスプリッタまたはウィーンフィルタを使用する場合につきものの欠点を、避けることができる。
【0010】
本発明は、二次電子と一次荷電粒子との間のエネルギー差を使用する。例えば、SEMでは、一次電子のエネルギーは、通常、1keVから30keVであり、二次電子のエネルギーは、通常、0eVから50eVである。このエネルギー差の結果、レンズシステムは、二次電子に対してよりも一次荷電粒子に対して異なる働きをする。一方で、レンズシステムは、すべての一次荷電粒子ビームを、サンプル表面上の個々のスポットのアレイに収束するよう配置される。他方で、同じレンズシステムは、二次電子ビームを、共通交差部に向けて方向づけるよう使用される。二次電子は、エネルギーが、一次荷電粒子のエネルギーよりかなり低いので、レンズシステムは、必ずしも二次電子を共通交差部に戻して収束しないが、共通交差部を本質的に取り囲む領域上に二次電子を拡散するよう設計することが好ましい。したがって、前記共通交差部を備える面では、または前記共通交差部を備える面付近では、ほとんどの二次電子ビームは、共通交差部ですべて収束する一次荷電粒子ビームから空間的に分離される。前記共通交差部を備える面に、または前記共通交差部を備える面付近に、少なくとも実質的に、位置感応二次電子検出器を配置することによって、好ましくは、共通交差部に隣接する、および/または取り囲むように配置することによって、ほとんどの二次電子ビームを、一次荷電粒子ビームに対していかなる干渉をすることなく、検出することが可能となる。
【0011】
一実施形態において、レンズシステムは、二次電子を、サンプル表面上の個々のスポットから、二次電子検出器上の個々のスポットに投射するよう配置される。一実施形態において、レンズシステムは、サンプル表面を、二次電子を使用して、二次電子検出器上に結像するよう配置される。二次電子は、一次電子が命中したサンプル表面のポイントのみから生じるため、画像はドットのアレイになる。これらの実施形態では、位置感応二次電子検出器の空間解像度が、十分な大きさになるよう選択されると、位置感応二次電子検出器は、サンプル表面上の個々の一次荷電粒子スポットのほとんどから、個々の二次電子信号を取得することができる。共通交差部の位置で戻って投射または結像される二次電子だけは、検出することができない。他のすべてのスポットから生じた二次電子は、サンプル表面上の各スポットに対して、同時に、および別々に、検出することができる。したがって、高解像度走査荷電粒子顕微鏡画像は、単一ビーム走査荷電粒子顕微鏡の速度のn倍とすることができる。ここで、nは、検出器によって同時に、および別々に検出される二次ビームの数に実質的に等しい。例えば、nは、200とすることも、それ以上とすることも可能である。
【0012】
一実施形態において、レンズシステムは、サンプル表面を、5から400倍の範囲の光学倍率で、二次電子検出器上に結像するよう配置される。倍率により、二次電子検出器上の二次電子ビームの個々のスポット間のピッチが増すため、二次電子検出器上の画像における個々の二次電子スポットを分解することが容易になる。
【0013】
一実施形態において、前記二次電子検出器は、前記一次荷電粒子ビームを通すための穴を備える。好ましくは、一次荷電粒子ビームパスは、光学軸を備え、二次電子検出器は、光学軸が穴を通るように、好ましくは、光学軸が実質的に穴の中心軸に配置されるように配置される。二次電子検出器は、共通交差部が穴の中、または穴付近にあるように配置されることが好ましい。
【0014】
一実施形態において、レンズシステムは、磁気対物レンズを備える。一実施形態において、本装置は、サンプル表面を、対物レンズの磁場中に浸すように位置づけるよう配置されるサンプルホルダを備える。そのような構成は、一次電子に対して低収差をもたらし、顕微鏡において有利である。ここでの浸し構成は、さらにより有利になる。というのも、電子を上方に加速するために、サンプルと、非界浸レンズとの間には空間がなければならず、非界浸レンズの収差をさらに増加する。界浸レンズでは、加速はレンズの内側で起き、収差を減らす。また、二次電子を界浸領域から抽出することにより、二次電子検出器への二次電子の投射の倍率を、所望の値に設定できる見込みがさらにもたらされる。
【0015】
一実施形態において、レンズシステムは、単一の対物レンズを備え、好ましくは、すべての一次電子ビームに対して単一の対物レンズを備える。あるいは、レンズシステムは、小型対物レンズのアレイを有する対物レンズアレイを備え、好ましくは、各一次電子ビームに対して1つのレンズを備える。
【0016】
一実施形態において、本装置は、電磁場生成器を備え、二次電子をサンプル表面から二次電子検出器に向けて加速する静電場をもたらす。静電場は、二次電子を、サンプルから二次電子検出器に向けて方向づけ、二次電子ビームの開口角度を狭めるよう配置される。さらに、静電場を使用して、一次荷電粒子ビームにおける収束要件を均衡させ、二次電子ビームを収束する。静電場は、良好な解像度で一次荷電粒子ビームを収束し、十分な倍率で特定の検出面で二次電子ビームを収束するよう配置される。
【0017】
レンズシステムが磁気対物レンズを備える一実施形態において、電磁場生成器は、静電場を、サンプルと、磁気対物レンズの極片との間にもたらすよう配置される。一実施形態において、電磁場生成器は、減速レンズとも呼ばれる静電レンズを備え、静電レンズは、磁気対物レンズの下側に配置され、静電磁気対物レンズを形成する。
【0018】
一実施形態において、サンプル表面のスポット間のピッチは、0.3から30マイクロメートルの間である。好ましくは、ピッチは、1マイクロメートル未満である。
【0019】
一実施形態において、検出器は、CCDカメラ、CMOSカメラ、または二次電子から信号を直接取得する、アバランシェフォトダイオードもしくは光電子増倍管もしくはPN接合半導体検出器のアレイである。
【0020】
一実施形態において、検出器は、前記共通交差部を備える面か、または面付近に、少なくとも実質的に配置される蛍光板と、蛍光板から、CCDカメラ、CMOSカメラ、アバランシェフォトダイオードもしくは光電子増倍管のアレイに光子を運ぶ光学構成とを備える。この実施形態において、CCDカメラ、CMOSカメラ、アバランシェフォトダイオードもしくは光電子増倍管のアレイは、荷電粒子ビームから離れて配置することができる。
【0021】
第2の態様によれば、本発明は、サンプルの表面を検査する方法を提供する。本方法は、
マルチビーム荷電粒子生成器を使用して、一次荷電粒子ビームのアレイを生成するステップと、
集光レンズを使用して、すべての荷電粒子ビームを、共通交差部に方向づけるステップと、
【0022】
レンズシステムを使用して、一次荷電粒子ビームを、共通交差部から、サンプル表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビームを、サンプル表面上の個々のスポットのアレイに収束するステップと、
【0023】
前記共通交差部を備える面か、または面付近に、少なくとも実質的に位置づけられる位置感応二次電子検出器を使用して、サンプル表面上の個々のスポットから生じる二次電子を検出するステップとを備える。
【0024】
この方法の一実施形態において、サンプル表面は、第1の方向に一定速度で移動し、一方、一次荷電粒子ビームは、第1の方向に少なくとも実質的に垂直な第2の方向に繰り返し走査される。これにより、走査荷電粒子ビーム顕微鏡でサンプルを調べる新しい方法、すなわち、オフライン顕微鏡法をもたらす。オフライン顕微鏡法では、完全サンプル表面、例えば、1平方ミリメートルの領域は、顕微鏡の後ろではなく、コンピュータ上で画像を調査および/または検査する場合に、完全サンプル表面が、専門家、例えば、生物学者が利用可能な、ナノメートル解像度で走査および結像される。
【0025】
この方法の一実施形態において、位置感応二次電子検出器は、1つの特定の二次電子ビームを検出し、隣接する二次電子ビームを少なくとも部分的に分けるよう配置されるピクセルを備える。好ましくは、二次電子ビームは、二次電子検出器の表面で、少なくとも実質的に完全に空間的に分離され、ピクセルのサイズは、二次電子検出器の表面上の、二次電子ビームのスポットよりも小さい。二次電子ビームのスポットが、部分的に重なっている場合、1つの特定の二次電子ビームは、2つの二次電子ビームスポットでの強度分布を分析し、これらのスポットの中心ならびに有効直径を取得することによって、隣接二次電子ビームから区別することができる。そのような分析から、個々の二次電子ビームの強度を判断することができる。
【0026】
この方法の一実施形態において、レンズシステムは、一次荷電粒子ビームを走査するスキャナを備える。本方法は、スキャナによる一次荷電粒子ビームの走査の設定に応じて、1つの特定の二次電子ビームを検出する、ピクセルを選択するステップを備える。これにより、二次電子検出器を制御するのに適切なソフトウェアをもたらすことによって、提供することができる、サンプル表面で一次荷電粒子ビームを走査するため、検出器で二次電子ビームの動きを復元する方法を提供する。
【0027】
明細書で説明され、示されるさまざまな態様および特徴は、個々に、可能な限り、適用することができる。これらの個々の態様、特に、添付の従属請求項で説明する態様および特徴は、分割特許出願の主題とすることができる。
【0028】
本発明は、添付図面に示す例示的実施形態に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のマルチビーム走査電子顕微鏡(MBSEM)の一例である。
図2図1のMBSEMにおける一次電子ビームパスのエンベロープ(包絡線)表現である。
図3図1のMBSEMにおける一次電子ビームのアレイの内、1つの一次電子ビームのビームパスである。
図4】共通交差部からサンプルへの、図1のMBSEMの一部における、一次電子ビームである。
図5図1のMBSEMにおける二次電子ビームパスのエンベロープ表現である。
図6図1のMBSEMにおける2つの二次電子ビームのビームパスである。
図7】別の検出器構成を備える、MBSEMの一部である。
図8】小型対物レンズのアレイを備える、MBSEMの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明のマルチビーム走査電子顕微鏡(MBSEM)の一例である。
【0031】
MBSEM1は、マルチビーム荷電粒子生成器2を備え、一次荷電粒子ビーム3のアレイ、この場合では、一次電子ビーム3のアレイを生成する。マルチビーム電子生成器2は、少なくとも1つの電子源4を備え、発散電子ビーム5を生成する。発散電子ビーム5は、有孔電極レンズアレイ6によって収束された一次電子ビーム3のアレイに分割される。一次電子ビーム3は、矢印Pで模式的に示すように、後に、サンプル15に向けて方向づけられる。
【0032】
電子源4の複数画像は、加速レンズ7の物体主面に位置づけられる。加速レンズ7は、一次電子ビーム3を、光学軸8に向けて方向づけ、すべての一次電子ビーム3の第1の共通交差部9を生成する。
【0033】
第1の共通交差部9は、磁気集光レンズ10によって、電流制限開口の役目を果たす可変開口11上に結像される。可変開口11では、すべての一次電子ビーム3の第2の共通交差部が生成される。
【0034】
MBSEMは、一次荷電粒子ビームを、可変開口11の共通交差部から、サンプル表面15に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビーム3を、サンプル表面15上の個々のスポットのアレイに収束するレンズシステム13、14を備える。レンズシステムは、中間磁気レンズ13を備え、可変開口11を、対物レンズ14のコマフリー面に結像し、対物レンズ14が、サンプル表面15に収束された一次電子ビームのアレイを生成する。
【0035】
さらに、MBSEMは、走査コイル16を備え、サンプル表面15上に収束された一次電子ビームのアレイを走査する。
【0036】
MBSEMは、さらに、共通交差部を備える面か、または面付近に、この場合では、可変開口11の直下に、少なくとも実質的に位置づけられる、位置感応二次電子検出器12を備える。あるいは、位置感応二次電子検出器12は、可変開口11の代わりに、実質的に、例えば、図2から図8に示すように、可変開口11の位置に、配置することができる。この二次電子検出システム12は、サンプル表面15の各単一の一次電子ビームスポットの個々の二次電子画像を取得するよう配置される。これは、サンプル表面15が、このMBSEM1で走査される場合に、複数画像を、単一走査期間における同じ時点で取得することが可能であることを意味する。
【0037】
二次電子検出システムは、大エネルギー範囲にわたって、および大開口角度で放出される、ほとんどの二次電子を収集することが好ましい。さらに、この二次電子検出システムはまた、一次電子の大ランディングエネルギー範囲に対して動作する。
【0038】
さらに、二次電子ビームは、十分な倍率、例えば、5から400倍の範囲の倍率で、検出面で収束することが好ましい。収束により二次電子検出器に小スポットサイズの二次電子ビームをもたらし、十分な倍率により、検出面において隣接する二次電子ビーム間のピッチを大きくする。別々の二次電子ビームの画像を分離するために、隣接する二次電子ビームのピッチは、検出面における各二次電子ビームのスポットサイズより大きいことが好ましい。
【0039】
この目的を実現するために、本発明は、以下でより詳細に説明する、レンズ内二次電子検出を使用する。
【0040】
MBSEMは、電磁場生成器を備え、矢印Sにより模式的に示すように、二次電子をサンプル表面から二次電子検出器12に向けて加速する静電場をもたらすことが好ましい。電磁場生成器は、例えば、図7で模式的に示すように、サンプル表面15と、磁気対物レンズ14の極片17との間に、静電場をもたらすよう配置される。生成器は、例えば、極片17に対して負電位をサンプル表面15にもたらす電圧源18である。
【0041】
電磁場生成器18のこの構成により、静電レンズ(減速レンズ)として動作する静電場をもたらし、磁気対物レンズ14と、サンプル表面15との間に配置される。静電レンズおよび磁気対物レンズ14は、共に、静電磁気対物レンズを形成する。この静電磁気対物レンズは、二次電子を加速し、それらの開口角度を狭める。
【0042】
二次電子のエネルギーは、かなり小さく、例えば、コサイン角度分布で0から50eVの範囲である。つまり、静電加速場は、矢印Sにより模式的に示すように、高速で、上方向に二次電子を方向づける。
【0043】
この静電レンズを通過すると、開口軸に対する二次電子の開口角度αは、以下に近づく。
α=√ESE/ERL
【0044】
ここで、ESEは、二次電子の本来のエネルギーである。ERLは、減速レンズによって二次電子に与えられるエネルギーである。荷電粒子光学では、近軸条件は、良好な解像度および他の光学特性を達成するために必要とされることがよく知られている。そのため、集束レンズによってもたらされるビームの開きを最小にするために、高電位差静電レンズを使用し、SE二次電子が通過する場合、この開口角度αを制限することが好ましい。
【0045】
二次電子のエネルギーと、一次電子のエネルギーとの間に、通常、1KeVから30KeVの巨大なエネルギー差があるので、一次電子および二次電子のためのレンズシステム13、14の収束条件は、全く異なる。また、検出システムを簡単にするために、先行技術で使用されるようなウィーンフィルタや他のビームスプリッタの使用を避け、同じレンズシステム13、14を、一次電子および二次電子収束システムで共有する。
【0046】
さらに、静電レンズを導入して、一次および二次電子ビームを収束する際の収束要件を均衡させる。静電レンズは、良好な解像度で一次電子を収束し、さらに、十分な倍率で、1つの特定の検出面で二次電子を収束するよう配置される。
【0047】
二次電子を収集するのに最も実用的な面は、可変開口11面である。これは、最小一次電子スポットサイズを有し、実用上の理由で、その位置に、位置感応二次電子検出器を挿入することが容易であるためである。
【0048】
したがって、本例の装置は、前記第2の共通交差部を備える面11に、または前記第2の共通交差部を備える面11の近くに、少なくとも実質的に設置される、位置感応二次電子検出器12を備える。
【0049】
原理解析から、MBSEM1は、4つのサブシステムに分割することができ、そのサブシステムは、単一ソースシステムと、一次電子収束システムおよび二次電子検出システムの両方のためのマルチソースシステムとを含む。ある程度の対物距離およびある程度のランディングエネルギーで、集束レンズは、これら4つのサブシステムを良好に動作させる。
【0050】
図2に示すような第1のサブシステムは、システム全体の軸外収差を低減するためのある面において、マルチビーム3の交差部9、11を形成するよう配置される。加速レンズ7および集光レンズ10は、可変開口面11で、マルチビームを収束する。加速レンズ7は、さまざまな用途のために、異なる解像度およびピッチを実現するよう調整可能である。中間レンズ13は、マルチビーム3を収束し、対物レンズ14のコマフリー面付近で共通交差部を有し、収差を小さくする。
【0051】
図3に示すような第2のサブシステムは、良好な解像度で各単一の一次電子ビーム3’を収束するよう配置される。有孔電極レンズアレイ6は、2つの機械的電極と、例えば、25ミクロンピッチで直径18ミクロンの、薄いSi膜で微細加工された、開口のアレイとの組み合わせである。フィールド湾曲を補正し、低球面収差を有し、偏向色収差を無効にするよう設計される。このレンズアレイ6は、例えば、70ミクロンのピッチで、例えば、95nmの幾何学的スポットサイズを有する、加速レンズ面7において収束した一次電子ビームのアレイを生成する。スポットサイズおよびピッチのこの比率は、サンプル上で同じに保たれる。対物レンズ14は、主要収束寄与を、サンプル表面15上の一次電子ビームの最終スポットサイズおよび収差にもたらす。
【0052】
図5に示すような第3のサブシステムは、二次電子検出システムの輪郭を分析することによって、二次電子ビーム20の倍率を大きくすることを実現するよう配置される。中間レンズ13、および対物ならびに減速レンズ14’は共に、二次電子検出器12の検出面において十分な線形倍率で、二次電子ビーム20を投射する。ある所与の一次ビームエネルギーにより、中間レンズ13の強度が判断される。これは、荷電粒子光学において、収束条件が、レンズの強度および電子のエネルギーに関連するためである。そのため、所望の倍率または適切な倍率範囲を達成するために、二次電子ビーム20のエネルギー、すなわち、静電レンズの電位差が限定される。適切な電位差は、最適化されるべきである。レンズ13、14の良好な電位差および適切な設定を選択すると、隣接する二次電子ビームは、図4に示すような一次電子ビーム3の前記共通交差部を備える面に実質的に位置づけられる位置感応二次電子検出器12によって別々に検出されるのに十分大きなピッチを有することができる。
【0053】
図6に示すような第4のサブシステムは、単一の二次電子ビーム21、22の収束状態をもたらす。レンズシステム13、14の影響の下、各単一の二次電子ビーム21、22は、良好に収束し、検出面12において十分小さなスポットサイズを取得する。
【0054】
サンプル表面15での一次電子ビームの一ランディングエネルギーでは、二次電子の最終収束面、減速レンズの対物距離ならびに電位差は調整可能である。一次電子の収束とは異なり、二次電子の最終収束面は、一次電子のあらゆるランディングエネルギーに対して同じ位置に厳密に固定される必要はない。二次電子の最終収束面は、二次電子ビームの大きな開きを生じない限り、検出面12に単に近づく必要がある。
【0055】
さらに、一次ビームのピッチもまた調整可能である。集光レンズ10を使用して、一次電子ビーム3の共通交差部を変更することにより、全体の倍率および一次電子ビーム3のピッチを変更することができる。
【0056】
図4に模式的に示すように、サンプル15は、ステージ30の上部に配置され、サンプル表面15を、一次電子ビーム3のアレイに対して動かす。ステージ30の動きは、制御器40によって制御される。制御器40はまた、走査コイル16を制御し、この例では、さらに、CCD検出器12によって取得された画像データを収集する。
【0057】
サンプルの表面15を検査する場合、MBSEMは、マルチビーム荷電粒子生成器を使用して一次電子ビーム3のアレイを生成する。すべての一次電子ビーム3は、集光レンズを使用して共通交差部に方向づけられる。一次電子ビーム3は、共通交差部からサンプル表面15に方向づけられ、すべての一次電子ビーム3は、レンズシステム13、14を使用して、サンプル表面15の個々のスポットのアレイに収束される。サンプル表面15の個々のスポットから生じる二次電子は、前記共通交差部を備える面か、または前記共通交差部を備える面付近に、少なくとも実質的に位置づけられる位置感応二次電子検出器12を使用して検出される。
【0058】
大表面の画像を取得するために、1つの例示的実施形態では、サンプル15は、第1の方向に、好ましくは、一定速度で、ステージ30によって動かされ、一方、一次電子ビーム3は、第2の方向に、走査コイル16によって繰り返し走査される。第2の方向は、第1の方向に対し、少なくとも実質的に垂直である。
【0059】
一次電子ビーム3がサンプル表面15上で走査されると、二次電子ビーム20、21、21は、二次電子検出器12の検出面上で移動することができる。この移動は、例えば、走査コイル16による一次電子ビーム3の偏向の設定により、1つの特定の二次電子ビームを検出するために、ピクセルを選択することによって、補償される。
【0060】
図7では、代替検出器構成を示す。CCDなどの、二次電子20、21、22が直接ぶつかった場合に信号を生じ、共通交差部に配置することができ、検出器が中心軸を備え、中心軸が上記の例で説明したような一次荷電粒子ビーム3の光学軸に少なくとも実質的に配置される、検出器12を使用する代わりに、この代替検出器構成の検出器は、前記共通交差部を備える面に、もしくは面付近に少なくとも実質的に配置される蛍光板121および光学構成122、123を備え、蛍光板121から、CCDカメラ、CMOSカメラ、またはアバランシェフォトダイオードもしくは光電子増倍管124のアレイに光子を搬送する。この例での光学構成は、一次電子ビーム3が通過することを可能にするように開口部を備えるミラー122と、蛍光板12からCCDカメラ124に光子を投射する光学レンズ123とを備える。そのような蛍光板12の例には、YAG結晶の薄いディスクがあり、一次電子を通過させるための開口部を備える。
【0061】
図8では、単一レンズ目標14の代替を示す。代替構成では、レンズシステム13’、14’は、小型対物レンズのアレイを有する対物レンズアレイ14’を備え、好ましくは、各一次電子ビーム31に対して1つのレンズを備える。模式的に示すように、一次電子ビーム31は、位置感応二次電子検出器12の穴を通過し、この例では、コリメーターレンズ13’によって実質的に平行にされる。後に、各一次電子ビーム31は、サンプル表面15上で前記一次電子ビーム31を収束する対物レンズアレイ14’におけるそれぞれ個別のレンズに方向づけられる。二次電子ビーム32は、対物レンズアレイ14’のレンズによって収集され、二次電子検出器12の検出面上に投射される。
【0062】
上記の説明は、好適な実施形態の動作を示すことを意図しており、本発明の範囲を限定することを意味していないことが理解されよう。上記の説明から、当業者には、多くの変形が、本発明の主旨および範囲によってさらに包含されることが明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8