(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファイバレーザ装置では、集光性の観点等から出射する光のビーム品質が優れていることが好ましく、そのため上記のように光をフューモードで伝搬可能なコアを有する光ファイバを用いることにより光の実効断面積を大きくする場合であっても、基本モード以外のモードの光が励振されることを抑えたいという要請がある。なお、ビーム品質は、例えば、M
2(エムスクエア)等で示される。
【0007】
そこで、本発明は、誘導ラマン散乱を抑制しつつ、ビーム品質の劣化を抑制することができる光ファイバ、及び、レーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、レーザ装置に用いられ、コアを波長1060nmの光が少なくともLP01モードとLP11モードとで伝搬可能な光ファイバであって、前記LP01モードの光の伝搬定数と前記LP11モードの光の伝搬定数との差が1850rad/m以上4000rad/m以下とされることを特徴とする。
【0009】
コアを光が少なくともLP01モードとLP11モードとで伝搬し、LP01モードの光の伝搬定数とLP11モードの光の伝搬定数との差が4000rad/m以下とされることで、シングルモードファイバと比べて、光の実効断面積を大きくすることができる。このため、誘導ラマン散乱を抑制することができる。また、本発明者等は、光ファイバを伝搬するLP01モードの光の伝搬定数とLP11モードの光の伝搬定数との差が1850rad/m以上である場合にビーム品質の劣化が抑制されることを見出した。これは、このような差がある場合、LP01モードの光からLP11モードの光に移行することが抑制されるためと考えられる。このため、本発明の光ファイバによれば、誘導ラマン散乱を抑制しつつ、ビーム品質の劣化を抑制することができる。
【0010】
また、前記LP01モードの光の伝搬定数と前記LP11モードの光の伝搬定数との差が2500rad/m以下とされることが好ましい。
【0011】
このように構成されることで、光の実効断面積をより大きくすることができ、誘導ラマン散乱をより抑制することができる。
【0012】
また、前記コアのクラッドに対する屈折率分布がステップ状であり、前記コアの直径が18μm以上28.5μm以下とされ、前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差が0.1%以上0.2%以下とされることとしても良い。
【0013】
この場合、前記コアの直径が23μm以上とされることが、光の実効断面積をより大きくする観点から好ましい。
【0014】
また、前記コアにはイッテルビウムが添加されても良い。
【0015】
この場合、上記の光ファイバをファイバレーザ装置に用いる増幅用光ファイバとして使用することができる。
【0016】
また、本発明のレーザ装置は、コアを波長1060nmの光が少なくともLP01モードとLP11モードとで伝搬する光ファイバを備え、前記光ファイバにおける前記LP01モードの光の伝搬定数と前記LP11モードの光の伝搬定数との差が1850rad/m以上4000rad/m以下とされることを特徴とする。
【0017】
このようなレーザ装置は、光ファイバにおいて、誘導ラマン散乱を抑制しつつビーム品質の劣化を抑制することができるため、波長シフトが抑制されビーム品質の劣化が抑制された光を出射することができる。
【0018】
また、前記コアにはイッテルビウムが添加され、前記光ファイバには励起光が入射することとしても良い。
【0019】
この場合、レーザ装置をファイバレーザ装置とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、誘導ラマン散乱を抑制しつつ、ビーム品質の劣化を抑制することができる光ファイバ、及び、レーザ装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る光ファイバ及びレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。なお、理解の容易のため、それぞれの図のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るレーザ装置を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のレーザ装置1は、共振器型のファイバレーザ装置とされ、増幅用光ファイバ10と、励起光源20と、第1光ファイバ30と、第1光ファイバ30に設けられる第1FBG35と、第2光ファイバ40と、第2光ファイバ40に設けられる第2FBG45と、光コンバイナ50とを主な構成として備える。
【0024】
図2は、
図1に示す増幅用光ファイバ10の断面の構造を示す断面図である。
図2に示すように増幅用光ファイバ10は、コア11と、コア11の外周面を隙間なく囲む内側クラッド12と、内側クラッド12の外周面を被覆する外側クラッド13と、外側クラッド13を被覆する被覆層14とを主な構成として備え、いわゆるダブルクラッド構造とされている。内側クラッド12の屈折率はコア11の屈折率よりも低く、外側クラッド13の屈折率は内側クラッド12の屈折率よりも低くされている。
【0025】
コア11は、例えば屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等のドーパントが添加された石英や、屈折率上昇のためのドーパントが添加されていない石英から成る。さらに、コア11には、後述のように光を増幅させるためのドーパントとして、励起光源20から出射される励起光により励起されるイッテルビウム(Yb)が添加されている。コア11に屈折率を上昇させるためのドーパントが添加されている場合、内側クラッド12は、例えば、何らドーパントが添加されない石英や屈折率を低下させるフッ素(F)等のドーパントが添加された石英から成る。また、コア11が屈折率上昇のためのドーパントが添加されていない石英から成る場合、内側クラッド12は、屈折率を低下させるフッ素(F)等のドーパントが添加された石英から成る。また、外側クラッド13は、樹脂または石英から成り、樹脂としては例えば紫外線硬化樹脂が挙げられ、石英としては例えば内側クラッド12よりもさらに屈折率が低くなるように屈折率を低下させるフッ素(F)等のドーパントが添加された石英が挙げられる。また、被覆層14を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂が挙げられ、外側クラッド13が樹脂の場合、外側クラッドを構成する樹脂とは異なる紫外線硬化樹脂とされる。
【0026】
また、増幅用光ファイバ10は、フューモードファイバであり、コア11を波長1060nmの光が伝搬する場合に、当該光は、基本モードであるLP01モードの光の他に2次LPモード以上の高次モードの光が伝搬する。この高次モードの光としては、例えば、LP11モードの光、LP21モードの光、LP02モードの光等を挙げることができる。
【0027】
励起光源20は、複数のレーザダイオード21から構成される。本実施形態では、レーザダイオード21は、例えば、GaAs系半導体を材料としたファブリペロー型半導体レーザであり中心波長が915nmの励起光を出射する。また、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21は光ファイバ25に接続されており、レーザダイオード21から出射する励起光は光ファイバ25を例えばマルチモード光として伝播する。
【0028】
それぞれの光ファイバ25は光コンバイナ50において、増幅用光ファイバ10の一端に接続されている。具体的には、それぞれの光ファイバ25のコアが増幅用光ファイバ10の内側クラッド12と光学的に結合するように、それぞれの光ファイバ25のコアと増幅用光ファイバ10の内側クラッド12とが接続されている。従って、それぞれのレーザダイオード21が出射する励起光は、光ファイバ25を介して増幅用光ファイバ10の内側クラッド12に入射して、内側クラッド12を主に伝搬する。
【0029】
図3は、第1光ファイバ30の様子を示す図である。第1光ファイバ30は、コア31と、このコア31の外周面を隙間なく囲むクラッド32と、クラッド32を被覆する被覆層34とを主な構成として備える。コア31の構成は、例えば、イッテルビウム等の希土類元素が添加されていない点を除き増幅用光ファイバ10のコア11の構成と同様とされ、コア31の直径はコア11の直径と例えば同じとされる。また、クラッド32は、例えば、増幅用光ファイバ10の内側クラッド12よりも直径が小さい点を除き内側クラッド12と同様の構成とされる。被覆層34は、例えば、増幅用光ファイバ10の被覆層14の構成と同様とされる。
【0030】
第1光ファイバ30は、光コンバイナ50において、光ファイバ25と共に増幅用光ファイバ10の一端に接続されている。具体的には、増幅用光ファイバ10のコア11に第1光ファイバ30のコア31が光学的に結合するように、増幅用光ファイバ10のコア11と第1光ファイバ30のコア31とが接続されている。第1光ファイバ30は、フューモードファイバとされ、増幅用光ファイバ10のコア11が伝搬する光と同様の光を伝搬する。従って、増幅用光ファイバ10のコア11を伝搬する各LPモードの光は、そのまま第1光ファイバ30のコア31を伝搬することができる。
【0031】
また、第1光ファイバ30のコア31にはゲルマニウム等の感光性(光が照射されることで屈折率が変化する性質)の元素が添加されており、第1光ファイバ30のコア31には、第1FBG35が設けられている。こうして、第1FBG35は増幅用光ファイバ10の一方側に配置され、増幅用光ファイバ10のコア11と光学的に結合する。第1FBG35は、コア31の第1FBG35以外の部分よりも屈折率が高い高屈折率部と、コア31の第1FBG35以外の部分と同様の屈折率である低屈折率部とが、コア31の長手方向に沿って周期的に繰り返されている。この高屈折率部の繰り返しパターンは、例えば高屈折率部となる部位に紫外線が照射されて形成される。この様にして形成される第1FBG35は、増幅用光ファイバ10のコア11に添加されているイッテルビウムが励起状態とされた状態で放出する光のうち少なくとも1060nmの波長を含む光を反射するように構成されている。また、第1FBG35の反射率は、後述の第2FBG45の反射率よりも高く、上記イッテルビウムが放出する光のうち波長1060nmの光を例えば99%以上で反射する。
【0032】
なお、第1光ファイバ30の増幅用光ファイバ10と接続される側と反対側には、光を熱に変換する終端部38が設けられている。
【0033】
第2光ファイバ40は、クラッドの直径が増幅用光ファイバ10の内側クラッド12と同じ直径である点を除き第1光ファイバ30と同様の構成とされる。従って、第2光ファイバ40は、第1光ファイバ30と同様にフューモードファイバであり、増幅用光ファイバ10のコア11が伝搬する光と同様の光を伝搬することができる。第2光ファイバ40は、増幅用光ファイバ10の他端において、増幅用光ファイバ10のコア11と第2光ファイバ40のコアとが光学的に結合するように接続される。従って、増幅用光ファイバ10のコア11を伝搬するフューモードの光は、フューモードのまま第2光ファイバ40のコアを伝搬する。
【0034】
また、第2光ファイバ40のコアには、第2FBG45が設けられている。こうして、第2FBG45は増幅用光ファイバ10の他方側に配置され、増幅用光ファイバ10のコア11と光学的に結合する。第2FBG45は、第1FBG35と同様に高屈折率部と低屈折率部とが周期的に繰り返されて形成されている。第2FBG45は、第1FBG35が反射する波長1060nmを含む光を第1FBG35よりも低い反射率で反射するように構成されている。第2FBG45は、第1FBG35が反射する光が入射する場合に、この光を例えば10%程度の反射率で反射する。こうして、第1FBG35と増幅用光ファイバ10と第2FBG45とで、共振器が形成されている。また、本実施形態では第2光ファイバ40の増幅用光ファイバ側と反対側の他端には特に何も接続されていないが、ガラスロッド等が接続されても良い。
【0035】
次に、レーザ装置1の動作について説明する。
【0036】
まず、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から励起光が出射される。この励起光は光ファイバ25を介して、増幅用光ファイバ10の内側クラッド12に入射して、主に内側クラッド12を伝搬する。内側クラッド12を伝搬する励起光は、コア11を通過する際にコア11に添加されているイッテルビウムを励起する。励起状態とされたイッテルビウムは、特定の波長帯域の自然放出光を放出する。この自然放出光を起点として、第1FBG35及び第2FBG45で共通して反射される波長1060nmを含む光が、第1FBG35と第2FBG45との間を共振する。共振する光が増幅用光ファイバ10のコア11を伝搬するときに、励起状態のイッテルビウムが誘導放出を起こして、共振する光が増幅される。共振する光のうち、一部の光は第2FBG45を透過して、第2光ファイバ40から出射する。そして、第1FBG35と増幅用光ファイバ10と第2FBG45とを含む共振器内における利得と損失が等しくなったところでレーザ発振状態となり、第2光ファイバ40から一定のパワーの光が出射する。
【0037】
ところで、上記のように増幅用光ファイバ10、第1光ファイバ30及び第2光ファイバ40はそれぞれフューモードファイバとされる。従って、第1FBG35と第2FBG45との間を共振する光、及び、第2FBG45を透過する光には、基本モードの光の他、第2LPモード以上となる幾つかの高次モードの光が含まれる。基本モードの光の他、第2LPモード以上となる幾つかの高次モードの光が第2光ファイバ40を伝搬して、レーザ装置1から出射する。
【0038】
なお、増幅用光ファイバ10側から第1FBG35を透過する光の大部分は、終端部38で熱に変換されて消滅する。
【0039】
ここで、光ファイバのコアを伝搬する光の伝搬定数について説明する。なお以下の説明において、クラッドという場合、第1光ファイバ30のクラッド32や第2光ファイバ40のクラッドや増幅用光ファイバ10の内側クラッド12を意味する。伝搬定数は、光波が伝搬する場合の位相変動に関する定数である。光は波であるため、光の振幅をAとし、コアの中心からの距離zとすると、コアにおける電界Eは、下記式(1)で示される。
E=Aexp[−(α+iβ)z] ・・・(1)
【0040】
なお、αは波の減衰を示す消衰係数であり、βは波の伝搬を示す伝搬定数であり、iは虚数単位である。上記式(1)は、コアを伝搬するそれぞれのモードの光毎に記述することができ、LP01モードの光とLP11モードの光とでは、互いに異なる消衰係数αを有し、互いに異なる伝搬定数βを有する。伝搬定数βは波の伝搬を示すため、コアを伝搬する光の伝搬定数βを規定することは、コアを伝搬する当該光の実効屈折率n
effを規定することとなる。コアを伝搬する光の波長をλとすると、実効屈折率n
effは下記式(2)で示すことができる。
n
eff=λβ/2π ・・・(2)
【0041】
ところで、コアを伝搬する光の実効断面積A
effは、当該光の実効屈折率n
effと相関する値である。従って、実効断面積A
effは、当該光の伝搬定数βと相関する値であると言える。
【0042】
次に、コアを伝搬するLP01モードの光の伝搬定数とLP11モードの光の伝搬定数との差をΔβとすると、伝搬定数差Δβも実効断面積A
effと相関する。
【0043】
図4は、光ファイバを伝搬する光の実効断面積と、LP01モードの光の伝搬定数とLP11モードの光の伝搬定数との差との関係を示すシミュレーション図である。
図4のシミュレーションでは、コアの屈折率分布を径方向に一定、すなわちステップ状の屈折率分布とした。また、当該シミュレーションでは、コアの直径を10μmから40μmまで1μm間隔で変化させると共に、コアのクラッドに対する比屈折率差を0.1%から0.2%まで0.005%間隔で変化させた。
図4より、上記のように伝搬定数差Δβが実効断面積A
effと相関することが分かる。また、
図4より、LP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβが4000rad/m以下であれば、光の実効断面積を200μm
2以上とすることができる。光の実効断面積が200μm
2以上であれば、光のエネルギー密度を低減することができ、誘導ラマン散乱が生じることを抑制することができる。また、伝搬定数差Δβが2500rad/m以下であれば、光の実効断面積を300μm
2以上とすることができる。光の実効断面積が300μm
2以上であれば、光のエネルギー密度をより低減することができ、誘導ラマン散乱が生じることをより抑制することができる。
【0044】
図5は、光ファイバを伝搬する光の実効断面積と、LP01モードの光の伝搬定数とLP11モードの光の伝搬定数との差との関係を示す実測値の図である。測定した光ファイバは、コアの屈折率分布がステップ状であり、コアの直径が28μmであり、コアのクラッドに対する比屈折率差が0.12%であり、理論上LP01モード、LP11モード、LP21モード、LP02モード、LP31モード、LP12モードの光が伝搬可能なものである。
図5に示す実測値においても、上記のように伝搬定数差Δβが実効断面積A
effと相関することが分かる。
【0045】
次に、LP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβと、光ファイバから出射する光のビーム品質との関係について説明する。
図6は、当該関係の実測値を示す図である。
図6の実測は
図5に用いた光ファイバを用いて、基本モードの光を光ファイバの一端から入射して、他方から出射する光のM
2を測定することで行った。
図6では、入射する光のM
2と出射する光のM
2との差ΔM
2を縦軸としている。基本モードのみから成る光のM
2は1であり、高次モードが励振されてビーム品質が悪くなるほどM
2の値は大きくなる。従って、
図6における差ΔM
2が大きいほど出射するビーム品質が悪化していることを示す。
図6から分かるように、LP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβが1850[rad/m]より小さくなるとビーム品質が劣化する場合がある。従って、LP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβが1850[rad/m]以上であれば、光ファイバから出射する光のビーム品質の劣化が抑制できることが分かる。
【0046】
次に、コアの直径rと、コアのクラッドに対する比屈折率差Δnと、LP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβと、の関係について説明する。コアの屈折率をn
1とし、クラッドの屈折率をn
2とすると、コアのクラッドに対する比屈折率差Δnは、下記式(3)で示される。
Δn=(n
12−n
22)/(2n
12) ・・・(3)
【0047】
図7は、LP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβごとに、コアの直径とコアのクラッドに対する比屈折率差Δnとの関係をシミュレーションで示す図である。なお、本図においても、コアの屈折率分布を径方向に一定、すなわちステップ状とした。
図7に示すように、コアの直径が18μm以上であれば、伝搬定数差Δβを4000rad/m以下にすることができることが分かる。つまり、
図4を考慮すると、コアの直径が18μm以上であれば、光の実効断面積を200μm
2以上とすることができることとなる。また、直径が23μm以上であれば、伝搬定数差Δβを2500rad/m以下にすることができることが分かる。つまり、
図4を考慮すると、コアの直径が23μm以上であれば、光の実効断面積を300μm
2以上とすることができることとなる。また、コアの直径が28.5μm以下であれば、伝搬定数差Δβを1850rad/m以上にすることができることが分かる。つまり、
図6を考慮すると、上記より、コアの直径が28.5μm以下であれば、光ファイバから出射する光のビーム品質の劣化が抑制できることとなる。
【0048】
従って、波長1060nmの光を出射する上記のレーザ装置1において、増幅用光ファイバ10を伝搬するLP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβが4000rad/m以下であれば、誘導ラマン散乱が生じることを抑制することができ、伝搬定数差Δβが2500rad/m以下であれば、誘導ラマン散乱が生じることをより抑制することができる。また、増幅用光ファイバ10を伝搬するLP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβが、1850rad/m以上であればレーザ装置1から出射する光のビーム品質の劣化が抑制できる。従って、増幅用光ファイバ10のコア11の内側クラッド12に対する屈折率分布はステップ状であり、コアの直径が18μm以上28.5μm以下とされることが好ましく、コアの直径が23μm以上28.5μm以下とされることがより好ましい。
【0049】
同様に、上記のレーザ装置1において、第1光ファイバ30や第2光ファイバ40を伝搬するLP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβが4000rad/m以下であれば、誘導ラマン散乱が生じることを抑制することができ、伝搬定数差Δβが2500rad/m以下であれば、誘導ラマン散乱が生じることをより抑制することができる。また、第1光ファイバ30や第2光ファイバ40を伝搬するLP01モードの光とLP11モードの光との伝搬定数差Δβが、1850rad/m以上であればレーザ装置1から出射する光のビーム品質の劣化が抑制できる。従って、第1光ファイバ30や第2光ファイバ40においても、上記増幅用光ファイバ10と同様にしてのコアのクラッドに対する屈折率分布はステップ状であり、コアの直径が18μm以上28.5μm以下とされることが好ましく、コアの直径が23μm以上28.5μm以下とされることがより好ましい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のレーザ装置1に用いられる光ファイバは、コアを波長1060nmの光が少なくともLP01モードとLP11モードとで伝搬可能であり、LP01モードの光の伝搬定数とLP11モードの光の伝搬定数との差が1850rad/m以上4000rad/m以下とされることで、誘導ラマン散乱を抑制しつつ、ビーム品質の劣化を抑制することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図8を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略することがある。
【0052】
図8は、本実施形態に係るレーザ装置を示す図である。
図8に示すように、本実施形態のレーザ装置2は、MO−PA(Master Oscillator Power Amplifier)型のファイバレーザ装置とされる点において第1実施形態のレーザ装置1と異なる。従って、本実施形態のレーザ装置2は、種光源70を備える。
【0053】
種光源70は、例えば、レーザダイオードやファイバレーザ等からなり、波長が1060nmの種光を出射するよう構成されている。種光源70は、第1実施形態の第1光ファイバ30と同様の構成とされFBGが形成されていない第1光ファイバ30に接続されており、種光源70から出射する種光は、第1光ファイバ30のコアを伝搬する。
【0054】
本実施形態の光コンバイナ50も第1実施形態の光コンバイナ50と同様の構成とされる。従って、種光源70から出射する種光は第1光ファイバ30のコアを介して増幅用光ファイバ10のコア31に入射してコア31を伝搬する。また、第1実施形態のレーザ装置1と同様に励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から出射する励起光は増幅用光ファイバ10の内側クラッド12に入射して主に内側クラッド12を伝搬し、コア11に添加されているイッテルビウムを励起する。このため、コアを伝搬する種光は、励起状態とされたイッテルビウムの誘導放出により増幅されて、増幅された種光が増幅用光ファイバ10から出力光として出射する。増幅用光ファイバ10から出射する光は第1実施形態と同様にして第2光ファイバ40を介して出射する。
【0055】
本実施形態においても、レーザ装置2に用いられる増幅用光ファイバ10、第1光ファイバ30及び第2光ファイバ40の少なくとも1つが、コアを波長1060nmの光が少なくともLP01モードとLP11モードとで伝搬可能であり、LP01モードの光の伝搬定数とLP11モードの光の伝搬定数との差が1850rad/m以上4000rad/m以下とされることで、誘導ラマン散乱を抑制しつつ、ビーム品質の劣化を抑制することができる。なお、本実施形態では第1光ファイバ30を伝搬する種光のパワーが小さい場合には、第1光ファイバ30が上記構成とされずとも誘導ラマン散乱の発生を抑えることができる。
【0056】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図9を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0057】
図9は、本実施形態に係るレーザ装置を示す図である。
図9に示すように本実施形態のレーザ装置3は、複数の光源60と、光コンバイナ53と、第1実施形態における第2光ファイバと同様の第2光ファイバ40とを主な構成として備える。
【0058】
それぞれの光源60は、波長1060nmの光を出射するレーザ装置とされ、例えば、ファイバレーザ装置や固体レーザ装置とされる。光源60がファイバレーザ装置とされる場合、光源60は第1実施形態と同様の共振器型のファイバレーザ装置とされたり、第2実施形態と同様のMO−PA型のファイバレーザ装置とされる。
【0059】
それぞれの光源60には、光源60から出射する光を伝搬する光ファイバ61が接続されている。それぞれの光ファイバ61は、例えば、第1実施形態の第1光ファイバ30と同様とされる。従って、それぞれの光源60から出射する光は、フューモードでそれぞれの光ファイバ61を伝搬する。
【0060】
光コンバイナ53は、それぞれの光ファイバ61のコアと第2光ファイバ40のコアとを光学的に接続する。
【0061】
本実施形態のレーザ装置3では、それぞれの光源60から波長1060nmの光が出射し、当該光はそれぞれの光ファイバ61を介して、光コンバイナ53を介して第2光ファイバ40のコアに入射する。そして、第2光ファイバ40から出射する。
【0062】
本実施形態においても、レーザ装置3に用いられる第2光ファイバ40が、コアを波長1060nmの光が少なくともLP01モードとLP11モードとで伝搬可能であり、LP01モードの光の伝搬定数とLP11モードの光の伝搬定数との差が1850rad/m以上4000rad/m以下とされることで、誘導ラマン散乱を抑制しつつ、ビーム品質の劣化を抑制することができる。
【0063】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の目的を達成する範囲において適宜構成を変更することができる。すなわち、本発明のレーザ装置に用いられる光ファイバは、コアを波長1060nmの光が少なくともLP01モードとLP11モードとで伝搬可能とされ、LP01モードの光の伝搬定数とLP11モードの光の伝搬定数との差が1850rad/m以上4000rad/m以下とされれば良く、その他の構成については適宜変更することができる。