(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ABCB5に選択的に結合する単離されたモノクローナル抗体を含む、癌の治療における使用のための組成物であって、該治療は、ABCB5を発現する癌細胞の細胞内区画に治療剤を送達することを含み、該細胞が、該細胞の細胞内区画に治療剤を送達するのに有効な量の、該治療剤にコンジュゲートされたABCB5に選択的に結合する該単離されたモノクローナル抗体と接触させられることを特徴とし、ここで、該単離されたモノクローナル抗体が、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR3−H3配列を有する免疫グロブリン重鎖可変ドメインおよび配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3−L3配列を有する免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む、組成物。
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR3−H3配列を有する免疫グロブリン重鎖可変ドメインおよび配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3−L3配列を有する免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含み、mAb 3C2−1D12ではない、ABCB5に選択的に結合する単離されたモノクローナル抗体。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、少なくとも部分的には、化学抵抗性のABCB5
+腫瘍幹細胞がメラノーマのような癌の発生に寄与し、これらの細胞を標的化して、癌を治療することができるという発見に基づく。ABCB5標的化は、特に、現在難治性の転移性疾患を持つ患者において、播腫性疾患に対する単独型の治療的アプローチとして、または化学治療剤に対して癌細胞を感受性とするための補助的療法として使用することができる。ABCB5標的化治療アプローチの利点は、それが発癌性の幹細胞に向けられ、他方、慣用的な治療剤は腫瘍細胞のバルク集団のみを標的化するということである。
【0004】
いくつかの態様において、本発明は、細胞を、細胞の細胞内区画へ治療剤を送達するのに有効な量の、治療剤にコンジュゲートしたABCB5に選択的に結合する単離された分子と接触させることによって、治療剤を該細胞の細胞内区画に送達する方法に関する。
【0005】
いくつかの実施形態において、ABCB5に選択的に結合する単離された分子は単離されたペプチドである。他の実施形態において、それは小分子である。単離されたペプチドは、例えば、抗体、またはその抗原結合断片またはscFvであってよい。
【0006】
治療剤は、いくつかの実施形態において、毒素、siRNA、化学治療剤または治療抗体であってよい。
【0007】
本方法は、いくつかの実施形態において、CD49e、CD133、CD166、BMPR1a、TIR−1、VE−カドヘリン(CD144)またはネスチンのような表面マーカーに選択的に結合する単離された分子と細胞とを接触させる工程を含む。
【0008】
本発明のもう1つの態様によると、ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたポリペプチドの組成物が提供され、ここに、該単離されたペプチドはmAb 3C2−1D12ではない。
【0009】
本発明の他の態様において、ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドの組成物が提供される。該単離された抗体または抗体断片は、ヒト被験体において化学的増感を高めるのに有効な量で存在する。
【0010】
本発明のなおもう1つの態様によると、ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドの組成物が提供される。該単離されたペプチドは、好ましくは、治療剤とで同時製剤化される。
【0011】
単離されたペプチドは、いくつかの実施形態において、治療剤にコンジュゲートされる。他の実施形態において、治療剤はカンプトテシン9−NH2、ミトキサントロン、カンプトテシン7−Cl、ピラゾフリン、メノガリル、カンプトテシン20エステル、カンプトテシン、アムサクリン、エトポシド、アントラピラゾール誘導体、テルニポシド、カンプトテシン11−ホルミル、カンプトテシン10−OH、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン(doxydoxorubicin)、ドキソルビシン、オキサントラゾール、カンプトテシン11−HOMe、ゾルビシン、ウラシルマスタード、ピペラジンジオン、ヘプスルファム、メルファラン、ビサントレン、トリエチレンメラミン、スピロムスチン、Yoshi−864、クロラムブシル、ピペラジンマスタード、ヒドロキシ尿素、ポルフィロマイシン、メクロレタミン、フルオロドパン、マイトマイシン、シタラビン(araC)、ジアンヒドロガラクチトール、ゲムシタビン、チオテパ、N,N−ジベンジルダウノマイシン、テロキシロンおよびアフィジコリングリシネートよりなる群から選択される。
【0012】
本発明の他の態様によると、キットが提供される。該キットは、ABCB5に選択的に結合し、かつ1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドを収容する容器、および該単離されたペプチドをヒト被験体に投与するための指示書を含む。
【0013】
被験体を治療するための方法は、本発明の他の態様に従って提供される。該方法は、ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドを、癌を治療するのに有効な量にて癌を有する被験体に全身投与することを含む。
【0014】
本明細書中に記載された組成物のいずれか1つを、癌を治療するのに有効な量にて癌を有する被験体に投与することによって、被験体を治療する方法も提供される。
【0015】
被験体を治療するための方法は、本発明の他の態様に従って提供される。該方法は、ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチド、および化学治療剤を、癌を治療するのに有効な量にて、癌を有する被験体に投与することを含む。
【0016】
本発明の他の態様によると、ABCB5に選択的に結合する単離された抗体または抗体断片、および化学治療剤を、癌を治療するのに有効な量にて癌を有する被験体に全身投与することによって被験体を治療する方法が提供される。
【0017】
本発明は、他の態様において、免疫グロブリン重鎖可変ドメインの単離されたペプチドであり、ここに:(i)CDR1−H1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;(ii)CDR2−H2は配列番号4のアミノ酸配列を含み、および(iii)CDR3−H3配列、ここに、単離されたペプチドはmAb 3C2−1D12ではない。いくつかの実施形態において、CDR3−H3は配列番号3のアミノ酸配列を有する。単離されたペプチドはヒトABCB5に結合することができ、抗体であってよい。所望により、単離されたペプチドは、さらに、軽鎖可変ドメインを含み、ここに、CDR1−L1は配列番号6のアミノ酸配列を有し、CDR2−L2は配列番号7のアミノ酸配列を含み、および/またはCDR3−L3は配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0018】
他の態様において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを有する単離されたペプチドであり、ここに:(i)CDR1−L1は配列番号6のアミノ酸配列を有し、(ii)CDR2−L2は配列番号7のアミノ酸配列を有し、および(iii)CDR3−L3配列は、ここに、単離されたペプチドはmAb 3C2−1D12ではない。いくつかの実施形態において、CDR3−L3は配列番号8のアミノ酸配列を有する。
【0019】
少なくとも2つの抗体可変ドメイン:(a)本明細書中に記載された単離されるようなペプチドを含む重鎖抗体可変ドメイン、および(b)本明細書中に記載されるような単離されたペプチドを含む軽鎖可変ドメインを含む単離されたペプチドが、本発明の他の態様によって提供される。いくつかの実施形態において、単離されたペプチドは単一鎖Fvである。他の実施形態において、単離されたペプチドはFab単離ペプチドである。なお他の実施形態において、単離されたペプチドは十分にヒトの単離されたペプチドである。
【0020】
単離されたペプチドは、さらに、変異体CDR1−H1、CDR2−H2、CDR3−H3に対応する単離されたペプチド可変ドメインについてのフレームワーク領域FR1、FR2、FR3および/またはFR4を含んでもよく、ここに、該フレームワーク領域は単一のポリペプチド鋳型から得られる、フレームワーク領域の各々は、ポリペプチド配列番号1のフレームワーク領域アミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有してもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、単離されたペプチドは、さらに、重鎖ポリペプチド可変ドメインのC末端領域に連結された二量体化ドメインを含む。二量体化ドメインは、ロイシンジッパードメイン、または少なくとも1つのシステイン残基を有する配列であってよい。二量体化ドメインは、いくつかの実施形態においては、ヒンジ領域を有する。他の実施形態において、二量体化ドメインは単一のシステインである。
【0022】
いくつかの実施形態において、単離されたペプチドはモノクローナル抗体である。他の実施形態において、それは二重特異性抗体である。なお他の実施形態において、単離されたペプチドは合成抗体である。
【0023】
本発明のもう1つの実施形態によると、抗ABCB5抗体またはその抗原結合断片が提供される。該抗体はヒト定常領域を有し、ここに、該抗ABCB5抗体、または抗原結合断片は、mAb 3C2−1D12のABCB5への結合を競合的に阻害する。いくつかの実施形態において、抗原結合断片はFab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、dsFv、Fd、VH dAb、およびVL dAbよりなる群から選択される。他の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、免疫グロブリンクラスIgA、IgGb1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgMのものである。なお他の実施形態において、抗体または抗原結合断片はヒト定常領域を含み、ヒト可変フレームワーク領域または抗原結合断片は単一鎖抗体である。単一鎖抗体は、所望により、ラクダ科動物の抗体である。
【0024】
機能的抗原結合領域を有するヒト化抗体可変ドメインが本発明の他の態様によって提供される。ヒト化抗体可変ドメインは、ヒト可変ドメインに一体化されたmAb 3C2−1D12のCDR1−H1、CDR2−H2、CDR3−H3、CDR1−L1、CDR2−L2、およびCDR3−L3に対して少なくとも90%相同性を有する非ヒトCDR1−H1、CDR2−H2、CDR3−H3、CDR1−L1、CDR2−L2、およびCDR3−L3を有する。
【0025】
本発明の他の態様において、キメラ抗体が提供される。該キメラ抗体は、ABCB5に特異的に結合する可変ドメイン、および定常ドメインを有し、ここに、該可変ドメインおよび該定常ドメインは異なる種からのものである。
【0026】
いくつかの実施形態において、単離されたペプチドはABCB5結合CDR3−H3のアミノ酸配列、またはその機能的に同等な変異体を有する。他の実施形態において、単離されたペプチドは、ABCB5結合CDR2−H2のアミノ酸配列、またはその機能的に同等な変異体を有する。他の実施形態において、単離されたペプチドはABCB5結合CDR1−H1のアミノ酸配列、またはその機能的に同等な変異体を有する。他の実施形態において、単離されたペプチドはABCB5結合CDR3−L3のアミノ酸配列、またはその機能的に同等な変異体を有する。他の実施形態において、単離されたペプチドは、ABCB5結合CDR2−L2のアミノ酸配列、またはその機能的に同等な変異体を有する。なお他の実施形態において、単離されたペプチドは、ABCB5結合CDR1−L1のアミノ酸配列、またはその機能的に同等な変異体を有する。
【0027】
他の実施形態において、単離されたペプチドは、単離された抗体または抗体断片である。単離された抗体または抗体断片は、所望により、無傷の可溶性モノクローナル抗体であってよい。他の実施形態において、単離された抗体または抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、dsFv、Fd、VH dAb、およびVL dAbよりなる群から選択される単離されたモノクローナル抗体断片である。なお他の実施形態において、単離された抗体または抗体断片は化学的増感を高める。好ましい実施形態において、単離されたペプチドはABCB5に選択的に結合する。なお他の実施形態において、単離された抗体または抗体断片は、ヒト化抗体である。単離されたペプチドは、所望によりscFvであってよい。
【0028】
他の実施形態において、単離されたペプチドは検出可能な標識にコンジュゲートしている。
【0029】
組成物は、医薬上許容される担体を含んでもよく、所望により、滅菌製剤であってよい。
【0030】
本発明は、その適用を、以下に記述されまたは図面において示された構成の詳細、および構成要素の配置に制限されない。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ種々の方法で実行し、または行うことができる。また、本明細書中で用いられる用語および専門用語は記述を目的とするものであり、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書中において、「包含する」、「含む」、または「有する」、「含有する」、「関連する」、およびその変形の使用は、後にリストされる項目、およびその均等物、ならびに追加の項目を含むことを意図する。
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
細胞を、該細胞の細胞内区画に治療剤を送達するのに有効な量の、治療剤にコンジュゲートされたABCB5に選択的に結合する単離された分子と接触させることを含む、細胞の細胞内区画に治療剤を送達する方法。
(項目2)
ABCB5に選択的に結合する該単離された分子が単離されたペプチドである、項目1記載の方法。
(項目3)
前記単離されたペプチドが抗体またはその抗原結合断片である、項目2記載の方法。
(項目4)
前記治療剤が毒素である、項目1記載の方法。
(項目5)
前記治療剤がsiRNAである、項目1記載の方法。
(項目6)
前記治療剤が化学治療剤である、項目1記載の方法。
(項目7)
前記治療剤が治療抗体である、項目1記載の方法。
(項目8)
さらに細胞を、CD49e、CD133、およびCD166よりなる群から選択される表面マーカーに選択的に結合する単離された分子と接触させることを含む、項目1記載の方法。
(項目9)
さらに細胞を、BMPR−1a、TIR−1、VE−カドヘリン(CD144)およびネスチンよりなる群から選択される表面マーカーに選択的に結合する単離された分子と接触させることを含む、項目1記載の方法。
(項目10)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドを含み、ここで、該単離されたペプチドはmAb 3C2−1D12ではない、組成物。
(項目11)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドを含み、ここで、該単離されたペプチドはヒト被験体において化学的増感を増強するのに有効な量にて存在する、組成物。
(項目12)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドを含み、ここで、該単離されたペプチドは治療剤と同時製剤化される、組成物。
(項目13)
前記単離されたペプチドが治療剤にコンジュゲートされている、項目12記載の組成物。
(項目14)
前記治療剤がカンプトテシン9−NH2、ミトキサントロン、カンプトテシン7−Cl、ピラゾフリン、メノガリル、カンプトテシン20エステル、カンプトテシン、アムサクリン、エトポシド、アントラピラゾール誘導体、テルニポシド、カンプトテシン11−ホルミル、カンプトテシン10−OH、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、ドキソルビシン、オキサントラゾール、カンプトテシン11−HOMe、ゾルビシン、ウラシルマスタード、ピペラジンジオン、ヘプスルファム、メルファラン、ビサントレン、トリエチレンメラミン、スピロムスチン、Yoshi−864、クロラムブシル、ピペラジンマスタード、ヒドロキシ尿素、ポルフィロマイシン、メクロレタミン、フルオロドパン、マイトマイシン、シタラビン(araC)、ジアンヒドロガラクチトール、ゲムシタビン、チオテパ、N,N−ジベンジルダウノマイシン、テロキシロンおよびアフィジコリングリシネートよりなる群から選択される、項目12記載の組成物。
(項目15)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドを収容する容器、および該単離されたペプチドをヒト被験体に投与するための指示書を含む、キット。
(項目16)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドを、癌を治療するのに有効な量にて癌を有する被験体に全身投与することを含む、被験体を治療する方法。
(項目17)
項目10〜12の組成物のうちのいずれか1つを、癌を治療するのに有効な量にて癌を有する被験体に投与することを含む、被験体を治療する方法。
(項目18)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチド、および化学治療剤を、癌を治療するのに有効な量にて癌を有する被験体に投与することを含む、被験体を治療する方法。
(項目19)
ABCB5に選択的に結合する単離された抗体または抗体断片、および化学治療剤を、癌を治療するのに有効な量にて癌を有する被験体に全身投与することを含む、被験体を治療する方法。
(項目20)
免疫グロブリン重鎖可変ドメインを含む単離されたペプチドであって、ここで:(i)CDR1−H1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;(ii)CDR2−H2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;および(iii)CDR3−H3配列、ここで、該単離されたペプチドはmAb 3C2−1D12ではない、単離されたペプチド。
(項目21)
前記CDR3−H3が配列番号3のアミノ酸配列を含む、項目20記載の単離されたペプチド。
(項目22)
ヒトABCB5に結合する、項目20記載の単離されたペプチド。
(項目23)
抗体である、項目22記載の単離されたペプチド。
(項目24)
さらに、軽鎖可変ドメインを含み、ここで、CDR1−L1が配列番号6のアミノ酸配列を含む、項目20記載の単離されたペプチド。
(項目25)
さらに、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2−L2を含む、項目24記載の単離されたペプチド。
(項目26)
さらに、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3−L3を含む、項目24記載の単離されたペプチド。
(項目27)
免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含み、ここで:(i)CDR1−L1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;(ii)CDR2−L2は配列番号7のアミノ酸配列を含み;および(iii)CDR3−L3配列、ここに、該単離されたペプチドはmAb 3C2−1D12ではない、単離されたペプチド。
(項目28)
前記CDR3−L3が配列番号8のアミノ酸配列を含む、項目27記載の単離されたペプチド。
(項目29)
(a)項目20記載の単離されたペプチドを含む重鎖抗体可変ドメイン;および(b)項目27記載の単離されたペプチドを含む軽鎖抗体可変ドメインを含む少なくとも2つの抗体可変ドメインを含む、単離されたペプチド。
(項目30)
単一鎖Fvである、項目29記載の単離されたペプチド。
(項目31)
Fab単離ペプチドである、項目29記載の単離されたペプチド。
(項目32)
完全にヒトの単離されたペプチドである、項目29記載の単離されたペプチド。
(項目33)
さらに、変異体CDR1−H1、CDR2−H2、CDR3−H3に対応する単離されたペプチド変異体ドメインについてのフレームワーク領域FR1、FR2、FR3および/またはFR4を含み、ここで、該フレームワーク領域は単一のポリペプチド鋳型から得られる、項目29記載の単離されたペプチド。
(項目34)
前記フレームワーク領域の各々が、ポリペプチド配列番号1のフレームワーク領域アミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含む、項目33記載の単離されたペプチド。
(項目35)
さらに、重鎖ポリペプチド可変ドメインのC末端領域に連結された二量体化ドメインを含む、項目29記載の単離されたペプチド。
(項目36)
前記二量体化ドメインがロイシンジッパードメイン、または少なくとも1つのシステイン残基を含む配列を含む、項目35記載の単離されたペプチド。
(項目37)
前記二量体化ドメインがポリペプチドからのヒンジ領域、およびロイシンジッパーを含む、項目35記載の単離されたペプチド。
(項目38)
前記二量体化ドメインが単一システインである、項目35記載の単離されたペプチド。
(項目39)
前記単離されたペプチドがモノクローナル抗体である、項目20記載の単離されたペプチド。
(項目40)
前記単離されたペプチドが二重特異性抗体である、項目20記載の単離されたペプチド。
(項目41)
前記単離されたペプチドが合成抗体である、項目20記載の単離されたペプチド。
(項目42)
少なくとも1つのヒト領域を有する、抗ABCB5抗体またはその抗原結合断片であって、ここで、該抗ABCB5抗体または抗原結合断片はmAb 3C2−1D12のABCB5への結合を競合的に阻害する、抗ABCB5抗体またはその抗原結合断片。
(項目43)
前記抗原結合断片がFab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、dsFv、Fd、VH dAb、およびVL dAbよりなる群から選択される、項目42記載の抗体。
(項目44)
前記抗体または抗原結合断片が免疫グロブリンクラスIgA、IgGb1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgMのものである、項目42記載の抗体。
(項目45)
前記抗体または抗原結合断片がヒト定常領域およびヒト可変フレームワーク領域を含む、項目42記載の抗体。
(項目46)
前記抗原結合断片が単一鎖抗体である、項目42記載の抗体。
(項目47)
前記単一鎖抗体がラクダ科動物抗体である、項目46記載の抗体。
(項目48)
機能的抗原結合領域を有するヒト化抗体可変ドメインであって、前記ヒト化抗体可変ドメインは、ヒト抗体可変ドメインに一体化されたmAb 3C2−1D12のCDR1−H1、CDR2−H2、CDR3−H3、CDR1−L1、CDR2−L2、およびCDR3−L3に対して少なくとも90%相同性を有する非ヒトCDR1−H1、CDR2−H2、CDR3−H3、CDR1−L1、CDR2−L2、およびCDR3−L3を含む、ヒト化抗体可変ドメイン。
(項目49)
ABCB5に特異的に結合する可変ドメイン、および定常ドメインを含み、ここで、該可変ドメインおよび該定常ドメインは異なる種からのものである、キメラ抗体。
(項目50)
前記単離されたペプチドがABCB5結合CDR3−H3のアミノ酸配列またはその機能的に同等な変異体を含む、項目10記載の組成物。
(項目51)
前記単離されたペプチドがABCB5結合CDR2−H2のアミノ酸配列またはその機能的に同等な変異体を含む、項目10記載の組成物。
(項目52)
前記単離されたペプチドがABCB5結合CDR1−H1のアミノ酸配列またはその機能的に同等な変異体を含む、項目10記載の組成物。
(項目53)
前記単離されたペプチドがABCB5結合CDR3−L3のアミノ酸配列またはその機能的に同等な変異体を含む、項目10記載の組成物。
(項目54)
前記単離されたペプチドがABCB5結合CDR2−L2のアミノ酸配列またはその機能的に同等な変異体を含む、項目10記載の組成物。
(項目55)
前記単離されたペプチドがABCB5結合CDR1−L1のアミノ酸配列またはその機能的に同等な変異体を含む、項目10記載の組成物。
(項目56)
前記単離されたペプチドが単離された抗体または抗体断片である、項目10記載の組成物。
(項目57)
前記単離された抗体または抗体断片が完全な可溶性モノクローナル抗体である、項目56記載の組成物。
(項目58)
前記単離された抗体または抗体断片がFab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、dsFv、Fd、VH dAb、およびVL dAbよりなる群から選択される単離されたモノクローナル抗体断片である、項目56記載の組成物。
(項目59)
前記単離された抗体または抗体断片が化学増感を増強させる、項目56記載の組成物。
(項目60)
前記単離されたペプチドが検出可能な標識にコンジュゲートされている、項目10記載の組成物。
(項目61)
さらに、医薬上許容される担体を含む、項目10記載の組成物。
(項目62)
前記単離されたペプチドがABCB5に選択的に結合する、項目10記載の組成物。
(項目63)
前記単離された抗体または抗体断片がヒト化抗体である、項目56記載の組成物。
(項目64)
前記単離されたペプチドがscFvである、項目10記載の組成物。
(項目65)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドを含む、癌を有する被験体の治療に用いる組成物であって、ここで、該組成物は全身投与のために製剤化される、組成物。
(項目66)
項目10〜12の組成物のいずれか1つを含む、癌を有する被験体の治療用組成物。
(項目67)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチド、および化学治療剤を含む、癌を有する被験体の治療用組成物。
(項目68)
ABCB5に選択的に結合する単離された抗体または抗体断片、および化学治療剤を含む、癌を有する被験体の治療用組成物であって、ここで、該組成物は全身投与用に製剤化される、組成物。
(項目69)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチドを含む組成物の使用であって、ここで、該組成物は癌を有する被験体の治療において全身投与用に製剤化される、使用。
(項目70)
癌を有する被験体の治療における、項目10〜12の組成物のいずれか1つを含む組成物の使用。
(項目71)
ABCB5に選択的に結合し、かつ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列、または保存的置換を含有するその機能的に同等な変異体を含む単離されたペプチド、および化学治療剤を含む組成物の、癌を有する被験体の治療における使用。
【発明を実施するための形態】
【0032】
腫瘍成長を担う、自己更新および分化が可能な腫瘍開始細胞が、ヒト血液悪性疾患および固形癌で同定された。そのような少数派集団がヒト患者における腫瘍進行に関連する場合、腫瘍開始細胞の特異的標的化は、全身療法に現在抵抗性である癌を根絶するための新規な戦略を提供するであろう。化学抵抗性メディエーターABCB5の発現によって定義されるヒト悪性癌開始細胞が増大した亜集団が、本発明に従って同定された。以下の実施例に示すように、この腫瘍形成性少数派集団の特異的標的化は、腫瘍の成長を抑制する。
【0033】
本発明者らは、最近、メラノーマ細胞系列の細胞によって優先的に発現されることが示された新規なヒト多薬物耐性トランスポーターであるABCB5をクローン化し、特徴付けた。ABCB5の阻害によって通常、耐性のメラノーマ細胞はドキソルビシンに対して感受性となる。我々は、ABCB5発現が、1)幹細胞表現型および機能の腫瘍形成性メラノーマ細胞をマークし;および2)ABCB5
+メラノーマ幹細胞区画の特異的標的化が、メラノーマ療法に対する新規で高度に有望な幹細胞標的化アプローチを構成することを示した。該データは、実施例部分により詳細に記載される。
【0034】
さらに、一連の、マウスに対するヒト異種移植実験において、ABCB5
+メラノーマ細胞は、ABCB5
−バルク集団よりも大きな腫瘍形成性能力を保有した。さらに、インビボ遺伝子的細胞の運命追跡は、腫瘍形成性ABCB5
+癌細胞がABCB5
+およびABCB5
−の子孫を生じさせることができ、他方、ABCB5
−細胞は、ABCB5
−子孫を専ら生起させることを示した。ヒト悪性疾患における化学的抵抗性のメカニズムおよび癌幹細胞の間の特異的関係のこの同定は、癌療法に対する幹細胞標的化アプローチについての重要な示唆を有する。
【0035】
また、本発明により、標的化された免疫療法アプローチを介するABCB5
+メラノーマ細胞の除去は、腫瘍細胞のバルク集団に支配的に向けられた療法戦略によって得られるものよりも、持続性の臨床的応答を達成するための新しい戦略を表わすことができることも判明した。従って、我々は、抗ABCB5モノクローナル抗体(mAbクローン3C2−1D12)の全身投与を介する化学的耐性の腫瘍形成性ヒトABCB5
+メラノーマ幹細胞の選択的除去が、ヌードマウスに対するヒト腫瘍異種移植片に関連するヒト悪性メラノーマの重要な前臨床動物モデルにおける腫瘍形成/腫瘍根絶の阻害を容易とするか否かを調べた。
【0036】
以下により詳細に示すように、我々は、マウスに対するヒトメラノーマ異種移植片モデルにおいて、インビボ投与された抗ABCB5 mAbの生物学的利用性およびメラノーマ結合効力/特異性を調べた。抗ABCB5 mAbの投与の結果、検出可能なインビボ血清レベルが得られるか否かを調べるために、マウス血清を、新たに採取されたヒトメラノーマ細胞培養物と共にインキュベートし、引き続いて、FITCコンジュゲート型ヤギ抗マウスIg二次Abでの細胞の逆染色、および単一色フローサイトメトリーによるその後の分析を行った。抗ABCB5 mAb処理マウスに由来する全てのテストされた希釈物において、血清とプレインキュベートされたメラノーマ培養物への、FITCコンジュゲート型ヤギ抗マウスIg二次Abの有意な結合が観察された。結合は、イソタイプ対照処理または未処理動物いずれかに由来する血清では観察されなかった。1:100と低い血清希釈における5.4%ABCB5陽性の検出(
図1A)は、インビトロ培養されたG3361メラノーマ細胞の中でも、以前に報告されたABCB5
+細胞頻度に合致した(Frank,N.Y.ら、ABCB5−mediated doxorubicin transport and chemoresistance in human malignant melanoma.Cancer Res65,4320−33(2005);Frank,N.Y.ら、Regulation of progenitor
cell fusion by ABCB5 P−glycoprotein,a novel human ATP−binding casette transporter.J Biol Chem 278,47156−65(2003))。これらの知見は、全身投与された抗ABCB5 mAbの結果、効果的なインビボmAb血清レベルがもたらされることを示す。本明細書中に記載されたデータは、さらに、全身投与された抗ABCB5 mAbがインビボにて異種移植されたABCB5
+ヒトメラノーマ細胞に効果的にかつ優先的に結合し、インビボ治療標的化アプローチについてのその適当性に関する証拠を提供することを示す。ヌードマウスへのヒトメラノーマ細胞異種移植片を用い、抗体によるABCB5
+メラノーマ幹細胞区画の特異的標的化が、メラノーマ療法に対する有効な幹細胞標的化アプローチであったことが示された。
【0037】
本発明は、部分的には、ABCB5に結合するヒトモノクローナル抗体のようなABCB5結合分子の単離および特徴付けが癌の治療で有用であるという発見に基づく。ABCB5は、癌性幹細胞に存在する多薬物耐性トランスポーターである。
【0038】
かくして、本発明の組成物は、癌を有する、または有する危険性がある被験体の治療で有用であろう。被験体は、ヒトまたは限定されるものではないが、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、および霊長類、例えば、サルを含めた脊椎動物、哺乳動物を意味する。かくして、本発明を用いて、非ヒト被験体において疾患または状態を治療することもできる。例えば、癌は、愛玩動物(すなわち、ネコおよびイヌ)における死の主な原因の1つである。好ましくは、被験体はヒトである。
【0039】
本明細書中で用いるように、癌のような障害に関して用いる場合、治療、治療された、または治療しているという用語は、治療法がない場合と比較して、疾患と闘うために、疾患が悪くなるのを妨げるために、または疾患の進行を遅らせるために、疾患の発生に対する被験体の抵抗性を増加させる、または換言すれば、被験体が疾患を発生する確率を減少させる予防的処置、ならびに被験体が疾患を発生した後の処置をいう。
【0040】
癌を発生する危険性がある被験体は、癌を発生する確率が高い者である。これらの被験体には、例えば、その存在が、癌を発生する高い確率に対して相関的関係を有することが示されている遺伝的異常を有する被験体、およびタバコ、アスベスト、または他の化学的毒素のような癌原因剤に曝露された被験体、または従前に癌で治療されたことがあり、明らかな寛解中である被験体を含む。癌を有する危険性がある被験体は、前癌病変を有する被験体も含む。前癌病変とは、改変された特性を有し、皮膚癌に転ずる危険性のある組織の領域である。前癌病変は、例えば、UV照射、遺伝学、ヒ素、タールまたはx線照射のような癌原因への暴露によって引き起こされ得る。
【0041】
癌を有する被験体は、検出可能な癌性細胞を有する被験体である。癌は悪性または非悪性癌であってよい。癌または腫瘍には、限定されるものではないが、胆管癌;脳癌;乳癌;頸癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;表皮内新生物;リンパ腫;肝臓癌;肺癌(例えば、小細胞および非小細胞);メラノーマ;神経芽細胞腫;口腔癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;甲状腺癌;および腎臓癌、ならびに他の癌腫および肉腫を含む。好ましくは、癌には、ABCB5を発現する癌幹細胞を含む。
【0042】
所望により、治療に先立って、ABCB5陽性幹細胞の存在は、本明細書中に記載された結合分子を用いて検出することができる。本発明によって提供される検出または診断方法は、一般に、本発明の1以上の分子を被験体における、または被験体からの試料と接触させることを含む。好ましくは、試料をまず被験体から採取するが、インビボ検出方法も考えられる。試料には、癌幹細胞を保有することが疑われるいずれの体組織または体液も含むことができる。例えば、幹細胞は、通常、腫瘍塊において、または腫瘍塊の周りに見出される。
【0043】
いくつかの態様において、本発明は、ペプチド、抗体、抗体断片および小分子のような結合性分子を提供する。本発明の分子はABCB5に結合し、腫瘍殺傷を増強させる。該結合分子とは、本明細書中においては、ABCB5に選択的に結合する単離された分子をいう。そのような抗体は、その源にかかわらずABCB5に結合することができるのは理解されるべきである。従って、本発明の抗体は、例えば、メラノーマ細胞ABCB5に結合すると定義され、かつ、例えば、メラノーマ細胞、ならびに乳癌のような他の癌において抗腫瘍効果を検出し、および/またはそれを増強させることができる。
【0044】
いずれかの特定の理論に拘束されるつもりはないが、腫瘍および癌の治療は、腫瘍形成性幹細胞が慣用的な治療によって有効的に標的化されないが故に失敗するであろうと考えられる。本発明のABCB5結合分子は、特異的に標的化し、これらの細胞の破壊に関与する。かくして、これらの細胞を単独で、または慣用的な療法と組合せて用いる場合、腫瘍の最も攻撃的な細胞が殺傷できる。
【0045】
抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)、補体媒介細胞傷害性(CDC)、または抗体依存性マクロファージ媒介細胞傷害性(ABMC)、および/または幹細胞腫瘍原性に寄与し得るABCB5機能の阻害を含めた抗ABCB5 mAb治療が、このレシピエントヌードマウスモデルにおいてインビボ腫瘍形成性成長、およびヒトメラノーマ異種移植片の腫瘍生存性を阻害し得るいくつかの可能なメカニズムがある。これらのメカニズムのいずれも、対照と比較して、ABCB5
−発現腫瘍細胞サブセットのみを標的化すると予測される。また、我々は、化学増感、またはイムノトキシン媒介細胞除去戦略を介する、ABCB5
+メラノーマ幹細胞の抗ABCB5 mAb媒介インビボ治療標的化を予測する。さらなる腫瘍幹細胞特異的遺伝子標的に向けての、毒素(化学的または生物学的毒素、放射性核種)、またはABCB5 mAbコンジュゲート型siRNAのABCB5
−標的化送達は、細胞毒素内在化を必要とするであろうから、我々は、ABCB5
+ヒトメラノーマ細胞への表面結合に続いての抗ABCB5 mAbの細胞内在化も調べた。結果は、抗ABCB5 mAbコンジュゲート型毒素が、化学的耐性のABCB5
+ヒトメラノーマ細胞において細胞内区画に特異的に送達できることを示し、臨床的メラノーマおよび他の癌の治療に対するこの新規なアプローチの治療的利点を強調する。
【0046】
本明細書中で用いられるABCB5に選択的に結合する分子とは、ABCB5と相互作用し、所望により、ABCB5活性に干渉してもよい分子、例えば、小分子、ペプチド、抗体、断片をいう。いくつかの実施形態において、分子はペプチドである。
【0047】
本発明のペプチドは、最小限、ABCB5に結合する領域を含む。ABCB5
−結合領域は、いくつかの実施形態において、本発明の抗体のABCB5
−結合領域に由来し、あるいは、それらはそのような領域の機能的に同等な変異体である。従って、抗体由来ABCB5
−結合領域の2つの特に重要なクラスは、本明細書中に記載された抗体の可変領域およびCDRである。CDRおよび可変領域の核酸は、抗体産生細胞からクローン化することができ、または本明細書中に記載された配列に基づいて合成的に調製することができる。
【0048】
用語「抗体」は、本明細書中においては、最も広い意味で用いられ、具体的には、無傷モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷抗体から形成された多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗体断片、所望の生物学的活性を呈する限りはscFvのような抗体様分子におよぶ。天然抗体は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロテトラマー糖蛋白質をいう。各重鎖および軽鎖は規則的に間隔が設けられた鎖内ジスルフィドブリッジを有する。各重鎖は、1つの端部において、可変ドメイン(VH)、続いての多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、1つの端部において可変ドメイン(VL)およびその他の端部において定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の最初の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメインの間に界面を形成すると考えられる。
【0049】
可変ドメインのある部分は、抗体の間で配列が専ら異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性に用いられる。しかしながら、変動が抗体の可変ドメイン全体にわたって均一には分布していない。それは、軽鎖および重鎖可変ドメインの双方において、「相補性決定領域」(CDR)または「超可変領域」と呼ばれる3つまたは4つのセグメントに集結される。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、CDRによって連結された、βシート立体配置をかなり取る4または5のFR領域を含み、それは、βシート構造を連結するループを形成し、ある場合には、βシート構造の部分を形成する。各鎖におけるCDRは、FR領域によって近接して一緒に保持され、他の鎖からのCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、NIH Publ.No.91−3242,Vol.I.pages 647−669(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に必ずしも直接的には関与しないが、抗体依存性細胞傷害性において抗体の関与のような種々のエフェクター機能を呈する。
【0050】
超可変領域またはCDRは、本明細書中で用いるように、抗原結合部位を形成し、抗原特異性の主な決定基である、抗体の極端な配列変動の可変領域内のサブ領域を定義する。1つの定義によると、それは軽鎖可変領域における残基(Kabat命名法)24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、および重鎖可変量基における残基(Kabat命名法 31〜35(H1)、50〜65(H2)、95〜102(H3)であり得る。Kabatら、Sequences of Proteins of Innunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,Md.[1991])。
【0051】
「無傷」抗体は、抗原結合可変領域ならびに軽鎖定常ドメイン(C
L)および重鎖定常ドメイン、C
H1、C
H2およびC
H3を含むものである。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であってよい。好ましくは、無傷抗体は1以上のエフェクター機能を有する。抗体断片の産生のために種々の技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は無傷抗体の蛋白質分解消化を介して誘導された(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992);およびBrennanら、Science,229:81(1985)参照)。しかしながら、これらの断片は、今や、組換え宿主細胞によって直接的に産生することができる。例えば、抗体断片は、抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’−SH断片はE.coliから直接的に回収することができ、化学的にカップリングさせて、F(ab’)
2断片を形成することができる(Carterら、Bio/Technology 10:163−167(1992))。もう1つのアプローチによると、F(ab’)
2断片は組換え宿主細胞から直接的に単離することができる。
【0052】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部、好ましくは、無傷抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例にはFab、Fab’、F(ab’)
2、およびFv断片;ダイアボディ;単一鎖抗体分子;および抗体断片から形成された多特異的抗体を含む。抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位、およびその名称は容易に結晶化するその能力を反映する残存「Fc」断片を持つ、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を生じる。ペプシン処理は、2つの抗原組合せ部位を有し、依然として、抗原を架橋させることができるF(ab’)
2断片を生じる。
【0053】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含有する最小抗体断片である。この領域は、密な非共有結合会合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインのダイマーよりなる。各々の可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VLダイマーの表面の抗原結合部位を規定するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのCDRは、抗原結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも低い親和性におけるものであるが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0054】
Fab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1以上のシステインを含めた重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数個の残基の付加だけ、Fab断片と異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書中についての表示である。F(ab’)
2抗体断片は、元来、Fab’断片の間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として作製された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0055】
用語「Fc領域」は、無傷抗体のパパイン消化によって生じさせることができる免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するのに用いられる。Fc領域は、天然配列Fc領域または変異体Fc領域であってよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、約Cys226の位置におけるアミノ酸残基から、または約PRO230の位置から、Fc領域のカルボキシル末端へ伸びるように定義される。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、所望により、CH4ドメインを含んでもよい。「Fc領域鎖」とは、本明細書中においては、Fc領域の2つのポリペプチド鎖の1つを意味する。
【0056】
「ヒンジ領域」およびその変形は、本明細書中で用いるように、例えば、Janewayら、Immuno Biology:the immune system in health and disease(Elsevier Science Ltd.,NY)(4th ed.,1999)に説明された、当該分野で公知の意味を含む。
【0057】
その重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは異なるクラスに帰属させることができる。免疫グロブリンの5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちいくつかは、さらに、サブクラス(イソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、各々、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置はよく知られている。
【0058】
いずれかの脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(Κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別されるタイプの1つに帰属させることができる。
【0059】
好ましくは、ABCB5結合ペプチドは、最小限、本明細書中に記載されたものからの少なくとも1つのCDR、または本明細書中に記載された配列に由来し得るものを含む。本明細書中で用いるように、ABCB5結合CDRは本明細書中に記載されたCDRである。ABCB5結合領域はABCB5結合CDR1、ABCB5結合CDR2、またはABCB5結合CDR3であってよく、その全ては、抗体、および本明細書中に開示された抗体の可変鎖に由来する。
【0060】
本明細書中で用いるように、「ABCB5結合CDR1」は、好ましくは、特異的にABCB5に結合し、本明細書中に記載された抗体の重鎖または軽鎖可変ドメインいずれかに由来するCDR1である。それは、配列番号3および配列番号6よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有することができる。「ABCB5結合CDR2」は、好ましくは特異的にABCB5に結合し、本明細書中に記載された抗体の重鎖または軽鎖可変領域いずれかに由来するCDR2である。それは、配列番号4および配列番号7よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有することができる。「ABCB5結合CDR3」は、好ましくは特異的にABCB5に結合し、本明細書中に記載された抗体の重鎖または軽鎖可変領域いずれかに由来するCDR3である。それは、配列番号5および配列番号8よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有することができる。
【0061】
本明細書中でリストされた配列に加え、本発明は、以下により詳細に記載するように、アミノ酸またはヌクレオチド配列いずれかにおいて保存的置換変異体を含めたこれらの配列の機能的に同等な変異体を含むことを意図する。
【0062】
本発明のペプチドは、試料において、または被験体からの、ABCB5抗原またはABCB5発現細胞を検出することを目的とする診断方法においてとりわけ有用である。最小限、これらの方法で有用なペプチドは、それが腫瘍殺傷を高めるか否かにかかわらず、ABCB5を認識し、結合するのみを必要とする。抗体は、例えば、診断FACS分析、ウェスタンブロッティング、および免疫組織化学で使用することができる。そのような抗体はインビボ診断用途で使用することもでき、そこでは、標識コンジュゲート型mAbを用いて、ABCB5発現腫瘍の化学療法または外科的療法に続いて、腫瘍負荷、腫瘍局所化または残存腫瘍塊を評価することができる。重要な実施形態において、抗体およびその断片は、選択的にABCB5に結合する。いくつかの実施形態において、それは本明細書中に記載された抗体クローンに由来する1以上のCDRを保有するのみである。好ましい実施形態において、ペプチドはABCB5結合CDR3を含み、なおより好ましくは、ペプチドは重鎖ABCB5結合CDR3を含む。ABCB5への結合を行うには、CDRの全てが必要というのではないことは理解されるべきである。しかしながら、いくつかの実施形態において、ペプチドは本明細書中で開示された所与の抗体クローンのCDRの全てを含む。
【0063】
さらに、本発明は、本明細書中で提供された可変領域の間のCDRの交換も含むと理解されるべきである。好ましくは、重鎖CDRをもう1つの重鎖可変領域CDRと交換し、同様に、軽鎖CDRはもう1つの軽鎖可変領域CDRと交換される。
【0064】
ペプチドはABCB5結合可変領域も含むことができる。ABCB5結合可変領域は、本明細書中に記載された可変領域(好ましくは、抗体可変領域)である。配列番号1は、重鎖可変領域のアミノ酸配列に対応する。配列番号9は、重鎖可変領域のヌクレオチド配列に対応する。配列番号2は、軽鎖可変領域のアミノ酸配列に対応する。配列番号10は、軽鎖可変領域のヌクレオチド配列に対応する。
【0065】
本発明の核酸またはペプチドは、本明細書中で提供された配列に由来してもよいのは理解されるべきである。全長可変領域、または全長可変領域の断片に対応するペプチドおよび可変領域を含む抗体を生じさせるために、これらの配列は、(例えばCDRによって)クローン化し、ベクターおよび/または細胞に挿入することができる。従って、抗体、または軽鎖および重鎖可変領域の組合せを含むその断片を生じさせることが可能である。
【0066】
本発明は、抗体、および種々のイソタイプの抗体断片を捕捉することを意図する。抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgE、IgM、IgA1、IgA2、またはsIgAイソタイプのものであってよい。本発明は、限定されるものではないが鳥類およびサメにおけるIgYのような非ヒト種において同様に見出されるイソタイプを捕捉することを意図する。種々のイソタイプの定常領域をコードするベクターが知られており、既に記載されている(例えば、Colomaら、Novel vectors for the expression of antibody molecules using variable regions generated by polymerase chain reaction.J Immunol Methods.1992 Jul 31;152(1):89−104;Guttieriら、Cassette vectors for conversion of Fab fragments into full−length human IgG1 monoclonal antibodies by expression in stably transformed insect cells.Hybrid Hybridomics.2003 Jun;22(3):135−45;McLeanら、Human and murine immunoglobulin expression vector cassettes.Mol Immunol.2000 Oct;37(14):837−45;Wallsら、Vectors for the expression of PCR−amplified immunoglobulin variable domains with human constant regions.Nucleic Acids Res.1993 Jun 25;21(12):2921−9;Norderhaugら、Versatile vectors for transient and stable expression of recombinant antibody molecules in mammalian cells.J Immunol Methods.1997 May 12;204(1):77−87参照)。
【0067】
本発明のペプチドは単離されたペプチドである。本明細書中で用いるように、用語「単離されたペプチド」は、ペプチドが実質的に純粋であって、それと共に天然でまたはインビボ系において見出すことができる他の物質を、その意図した使用に現実的かつ適切な程度まで実質的に含まないことを意味する。特に、ペプチドは十分に純粋であって、例えば、医薬製剤の生産または配列決定において有用なようにその宿主細胞の他の生物学的構成要素を十分に含まない。本発明の単離されたペプチドは医薬製剤中で医薬上許容される担体と混合することができるので、ペプチドは製剤の小さな重量パーセントを含むのみである。それにもかかわらず、ペプチドは、生体系中でそれが会合することができる物質から実質的に分離されている点において、実質的に純粋である。
【0068】
本発明のペプチドは好ましくは選択的にABCB5に結合する。本明細書中で用いるように、用語「選択的結合」および「特異的結合」は、非ABCB5由来化合物に対するよりはABCB5およびその断片に対してより大きな親和性でもって結合するペプチドの能力を相互交換的にいうのに用いられる。すなわち、ABCB5に選択的に結合するペプチドは、ABCB5およびその断片に結合するのと同一程度まで、かつ同一親和性でもって非ABCB5由来化合物に結合せず、炭水化物のペプチドミメティックスのようなABCB5のミミック、またはABCB5と同様にABCB5結合ペプチドに結合する抗イデオタイプ抗体の可変領域とされる架橋反応性抗原または分子を例外とする。いくつかの実施形態において、本発明のペプチドはABCB5およびその断片に対してのみ結合する。本明細書中で用いるように、腫瘍細胞ABCB5に選択的にまたは特異的に結合する結合ペプチドもまた、他の源からのABCB5に結合することができ、非ABCB5由来化合物に(たとえあるにしても)より小さな親和性でもって結合するであろう。より小さな親和性には、少なくとも10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、または95%未満を含むことができる。
【0069】
「単離された抗体」とは、本明細書中で用いるように、他の細胞物質から実質的に物理的に分離された(例えば、抗体を生じさせる細胞から分離された)、または本発明の診断もしくは治療方法いずれかにおけるその用途を妨げる他の物質から実質的に物理的に分離された抗体をいう。好ましくは、単離された抗体は抗体の均一な集団(例えば、モノクローナル抗体の集団)に存在する。単離された抗体の組成物は、しかしながら、限定されるものではないが、医薬上許容される担体、アジュバント等のような他の化合物と組合せることができる。
【0070】
(本明細書中に記載されたもののような)単離されたハイブリドーマおよび単離された組換え細胞を含めた「単離された抗体産生細胞」とは、本明細書中で用いるように、他の細胞、他の身体物質(例えば、腹水組織および液)、ならびに例えば、単離された、好ましくは均一な抗体集団の産生においてその用途を妨げる他の物質から実質的に物理的に分離された抗体産生細胞をいう。
【0071】
かくして、1つの実施形態において、本発明のペプチドは、ABCB5に特異的な単離された無傷可溶性モノクローナル抗体である。本明細書中で用いるように、用語「モノクローナル抗体」とは、同一のエピトープ(すなわち、抗原決定基)に特異的に結合する免疫グロブリンの均一な集団をいう。本発明のペプチドは、1つの実施形態において、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有するモノクローナル抗体である。軽鎖および重鎖可変領域のいずれかの組合せを有するモノクローナル抗体は、本発明に含まれる。
【0072】
本発明は、例えば、3C2−1D12の配列以外の抗体を含むことを意図し、但し、そのような抗体は本明細書中に記載されたモノクローナル抗体の結合特徴を有するものとする。所望により、これらのさらなる抗体は、ABCB5発現癌細胞の腫瘍殺傷も含む。当業者であれば、本明細書中において詳細に記載されたスクリーニングおよび結合アッセイを用いて、このモノクローナル抗体の機能的特徴を有する抗体を容易に同定することができる。
【0073】
別の記載がない限り、用語「モノクローナル抗体3C2−1D12」または「mAb3C2−1D12」とは、ネズミ3C2−1D12抗体、またはそれに由来する抗原結合残基を有する抗体をいう。
【0074】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書中で用いるように、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわち、該集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る天然に生じる突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に向けられる。さらに、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含む慣用的な(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一決定基に対して向けられる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それが他の免疫グロブリンによって汚染されていない、ハイブリドーマ培養によって合成される点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られるものとしての抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。
【0075】
モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られ、すなわち、該集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る天然に生じる突然変異を除いて同一である。かくして、修飾語「モノクローナル」は、区別される抗体の混合物ではない抗体の特徴を示す。
【0076】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法を用いて作製できるか、または組換えDNA方法によって作製することができる(米国特許第4,816,567号)。
【0077】
ハイブリドーマ方法によっては、マウス、またはハムスターのような他の適当な宿主動物を前記したように免疫化して、免疫化で用いた蛋白質に特異的に結合するであろう抗体を産生する、または産生することができるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫化することができる。次いで、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いてリンパ球をミエローマ細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
【0078】
そのように調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない親ミエローマ細胞の成長または生存を阻害する1以上の物質を含有する適当な培養基に撒き、そこで成長させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠如する場合、ハイブリドーマのための培養基は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含み(HAT培地)、その物質はHGPRT欠乏細胞の成長を妨げる。
【0079】
好ましいミエローマ細胞は、効果的に融合し、選択された抗体産生細胞によって抗体の安定な高レベルの産生を支持するものであり、HAT培地のような培地に対して感受性である。これらのうち、好ましいミエローマ細胞系は、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.USAから入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍、およびAmerican Type Culture Collection,Rockville,Md.USAから入手可能なSP−2またはX63−Ag8−653細胞に由来するもののようなネズミミエローマ系である。ヒトミエローマおよびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞系もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);およびBrodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0080】
ハイブリドーマ細胞が成長している培養基を、抗原に対して向けられたモノクローナル抗体の産生のためにアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈澱、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイによって決定される。
【0081】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munsonら、Anal.Biochem.,107:220(1980)のScatchard分析によって決定することができる。
【0082】
所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、限界希釈手法によって該クローンをサブクローン化し、標準的な方法によって成長させることができる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。この目的のための適当な培養基には、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地を含む。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水液腫瘍としてインビボにて成長させることができる。
【0083】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、適切には、例えば、プロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーのような慣用的な抗体精製手法によって培養基、腹水液または血清から分離される。
【0084】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)慣用的な手法を用いることによって、容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい源として役立つ。一旦単離されれば、DNAを発現ベクターに入れることができ、それは、次いで、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはそうでなければ抗体蛋白質を産生しないミエローマ細胞のような宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現についての総説には、Skerraら、Curr.Opinion in Immunol.,5:256−262(1993)およびPluckthun,Immunol.Revs.,130:151−188(1992)を含む。
【0085】
さらなる実施形態において、モノクローナル抗体または抗体断片は、McCaffertyら、Nature,348:552−554(1990)に記載された技術を用いて生じた抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clacksonら、Nature,352:624−628(1991)およびMarksら、J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)は、各々、ファージライブラリーを用いるネズミおよびヒト抗体の単離を記載する。引き続いての刊行物は、鎖シャッフリング(Marksら、Bio/Technology,10:779−783(1992))による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生、ならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染およびインビボ組換えを記載する(Waterhouseら、Nuc.Acids.Res.,21:2265−2266(1993))。かくして、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する有益な代替法である。
【0086】
典型的には、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインと置き換わり、または抗体の1つの抗原組合せ部位の可変ドメインと置き換わり、抗原に対する特異性を有する1つの抗原組合せ部位、および異なる抗原に対する特異性を有するもう1つの抗原組合せ部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
【0087】
他の実施形態において、ペプチドは抗体断片である。当該分野でよく知られているように、抗体分子の非常に小さな部分にすぎないパラトープは、抗体のそのエピトープへの結合に関与する(一般に、Clark,W.R.(1986)The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley&Sons,Inc.,New York;Roitt,I.(1991)Essential Immunology,7th Ed.,Blackwell Scientific Publications,Oxford;およびPier GB,Lyczak JB,Wetzler LM,(eds).Immunology,Infection and Immunity(2004)1
st Ed.American Society for Microbiology Press,Washington
D.C.参照)。抗体のpFc’およびFc領域は、例えば補体カスケードのエフェクターであり、ファゴサイトーシス細胞上のFc受容体への結合を媒介することができるが、抗原結合には関与しない。F(ab’)
2断片と命名される、pFc’領域がそれから酵素的に切断された、またはpFc’領域なくして産生された抗体は、無傷抗体の抗原結合部位の双方を保有する。単離されたF(ab’)
2断片は、その2つの抗原結合部位のため二価モノクローナル断片といわれる。同様に、Fab断片と命名される、Fc領域がそれから酵素的に切断された、またはFc領域なくして産生された抗体は、無傷の抗体分子の抗原結合部位の1つを保有する。さらに進めると、Fab断片は、共有結合した抗体軽鎖、およびFdで示される抗体重鎖の一部(重鎖可変領域)よりなる。Fd断片は抗体特異性の主な決定基であり(単一のFd断片は、抗体の特異性を改変することなく10までの異なる軽鎖と会合することができる)、Fd断片は単離においてエピトープ結合能力を保有する。
【0088】
用語Fab、Fc、pFc’、F(ab’)
2およびFvはどちらかの標準的な免疫学的意味で使用される[Klein,Immunology(John Wiley,New York,NY,1982);Clark,W.R.(1986)The Experimental Foundations of Modern Immunology (Wiley&Sons,Inc.,New York);Roitt,I.(1991)Essential Immunology,7th Ed.,(Blackwell Scientific Publications,Oxford);およびPier GB,Lyczak JB,Wetzler LM,(eds).Immunology, Infection and Immunity(2004)1
st Ed.American Society for Microbiology Press,Washington D.C.]。
【0089】
他の実施形態において、IgM、ならびに本明細書中に記載されたモノクローナル抗体のCDRのいくつかまたは全てを有するヒトIgG抗体を産生するために、本発明の抗体のFc部分を置き換えることができる。特に重要なのは、ABCB5結合CDR3領域ならびに、より低度は低いが、他のCDR、および本明細書中に記載されたモノクローナル抗体のフレームワーク領域の部分を含めることである。そのようなヒト抗体は、ABCB5を好ましくは選択的に認識して結合するが、抗体それ自体に対してヒトにおいて免疫応答を誘導しない点で、特別な臨床的用途を有するであろう。
【0090】
また、本発明は、ABCB5結合ペプチドの機能的に同等な変異体を含むことを意図する。「機能的に同等な変異体」は、本発明のペプチドと同一の機能(すなわち、ABCB5に結合する能力)を有する化合物である。機能的に同等な変異体は、性質がペプチドであり得るがそのように限定されないものである。例えば、それは炭水化物、ペプチドミメティック等であってよい。重要な実施形態において、機能的に同等な変異体は、依然としてABCB5に結合することができる、可変領域またはその中に保存的置換を持つCDRのアミノ酸配列を有するペプチドである。重鎖可変領域(すなわち、配列番号1)からのABCB5結合CDR3の機能的に同等な変異体の例は、好ましくは特異的にABCB5に結合し、所望により、ABCB5発現細胞の腫瘍殺傷を高める配列番号1において保存的置換を有するペプチドである。
【0091】
用語「アミノ酸配列変異体」とは、ある程度、天然配列ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。該アミノ酸配列変異体は、天然アミノ酸配列のアミノ酸配列内のある位置において置換、欠失および/または挿入を保有する。
【0092】
「相同性」は、配列を整列させ、必要であれば、ギャップを導入して、最大パーセント相同性を達成した後に同一であるアミノ酸配列変異体における残基のパーセンテージと定義される。整列のための方法およびコンピュータープログラムは当該分野でよく知られている。
【0093】
本明細書中に記載されるアミノ酸配列修飾が考えられる。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改良するのが望ましいであろう。抗体のアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化を抗体の核酸に導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはそれへの挿入、および/またはその置換を含む。欠失、挿入、および置換のいずれの組合せによって、最終構築体に到達するようにするが、但し、最終構築体は所望の特徴を保有するものとする。アミノ酸改変は、その配列が作製される時点で被験体の抗体アミノ酸配列に導入してもよい。
【0094】
突然変異誘発について好ましい位置である抗体のある残基または領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081−1085に記載されたような、「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここに、残基、または標的残基の群が同定され(例えば、arg、asp、his、lysおよびgluのような荷電残基)、中性または負に荷電したアミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、アミノ酸の抗原との相互作用に影響をおよぼす。次いで、置換に対して機能的感受性を示すこれらアミノ酸の位置は、置換の部位に、または該部位に対してさらなるまたは他の変異体を導入することによって改善される。かくして、アミノ酸配列の変動を導入するための部位は予め決定されるが、突然変異の性質は、それ自体、予め決定される必要はない。例えば、与えられた部位において突然変異の性能を分析するために、alaスキャンニングまたはランダム突然変異誘発が標的コドンまたは領域で行われ、発現された免疫グロブリンが所望の活性についてスクリーニングされる。
【0095】
アミノ酸配列の挿入には、長さが1残基から、100以上の残基を含有するポリペプチドまでの範囲のアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数アミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を持つ抗体、または細胞傷害性ポリペプチドに融合した抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清中半減期を増加させる、(例えば、ADEPTについての)酵素、またはポリペプチドに対する抗体のNまたはC末端への融合を含む。
【0096】
もう1つのタイプの変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基によって置換された抗体分子において少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換突然変異誘発のための最大の注目すべき部位は、超可変領域を含むが、FR改変も考えられる。
【0097】
本明細書中で用いるように、「保存的置換」とは、アミノ酸置換がなされたペプチドの相対的電荷またはサイズの特徴を変化させないアミノ酸置換をいう。アミノ酸の保存的置換には、以下の群:(1)M、I、L、V;(2)F、Y、W;(3)K、R、H;(4)A、G;(5)S、T;(6)Q、N;および(7)E、Dでアミノ酸の間でなされた置換を含む。
【0098】
抗体の生物学的特性における実質的修飾は、(a)例えば、シートまたはらせん立体配座としての置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルクを維持することに対するその効果が有意に異なる置換を選択すうことによって達成される。アミノ酸は、(A.L.LehningerのBiochemistry,second ed.,pp.73−75,Worth Publishers,New York(1975)にて)その側鎖の特性における類似性に従ってグループ分けすることができる:
(1) 非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3) 酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4) 塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
あるいは、天然に生じる残基は、共通の側鎖の特性:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の向きに影響する残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Pheに基づいてグループに分けることができる。
【0099】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーをもう1つのクラスで交換することを含むであろう。そのような置換された残基は、保存的置換部位へ、またはより好ましくは、残りの(非保存的)部位へ導入することもできる。
【0100】
1つのタイプの置換変異体は、親抗体の1以上の超可変領域残基を置換することを含む(例えば、ヒト化またはヒト抗体)。一般に、さらなる発展のために選択された、得られた変異体は、それらが生じた親抗体に対して改良された生物学的特性を有するであろう。そのような置換変異体を生じさせるための便宜な方法には、ファージディスプレイを用いる親和性突然変異を含む。簡単に述べると、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7の部位)を突然変異させて、各部位において全ての可能なアミノ酸置換を生じさせる。そのようにして生じさせた抗体は、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物への融合としてフィラメント状ファージ粒子から提示される。次いで、ファージ提示変異体を、本明細書中に開示されたようにその生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。修飾のための候補超可変領域部位を同定するためには、アラニンスキャニング突然変異誘発を行って、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定することができる。あるいはさらに、抗原抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体および抗原の間の接触点を同定するのが有益であろう。そのような接触残基および隣接残基は、本明細書中で工夫された技術に従った置換のための候補である。一旦そのような変異体が生じたならば、変異体のパネルを本明細書中に記載されたようにスクリーニングに付し、1以上の関連アッセイにおける優れた特性を持つ抗体をさらなる開発のために選択することができる。
【0101】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該分野で公知の種々の方法によって調製される。これらの方法には、限定されるものではないが、(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合には)天然源からの単離、またはオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、および抗体のより初期に調製された変異体、または非変異体バージョンのカセット突然変異誘発を含む。
【0102】
本発明の免疫グロブリンポリペプチドのFc領域に1以上のアミノ酸修飾を導入し、それにより、Fc領域変異体を生じさせるのが望ましいであろう。Fc領域変異体は、ヒンジシステインを含めた1以上のアミノ酸位置においてアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)を含むことができる。
【0103】
本記載および当該分野の教示に従い、いくつかの実施形態においては、本発明の方法で用いる抗体は、本明細書中に記載されたヒンジ配列突然変異に加えて、例えば、Fc領域における、野生型カウンターパート抗体と比較して1以上の改変を含んでもよい。それにもかかわらず、これらの抗体は、その野生型カウンターパートと比較して、治療的用途で必要とされる実質的に同一の特徴を保有するであろう。例えば、ある改変がFc領域でなすことができ、これは、例えば、WO99/51642に記載されたような、改変された(すなわち、改良されたまたは減少された)C1q結合および/または補体依存的細胞傷害性(CDC)をもたらすであろう。また、Fc領域変異体の他の例に関しては、Duncan&Winter Nature 322:738−40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照されたい。
【0104】
抗ABCB5抗体の適切な立体配座を維持するのに関与しないいずれのシステイン残基も、一般には、セリンで置換して、分子の酸化的安定性を改良し、異常な架橋を妨げることもできる。逆に、システイン結合を抗体に加えて、(特に、抗体がFv断片のような抗体断片である場合に)その安定性を改良することができる。
【0105】
抗体のアミノ酸変異体のもう1つのタイプは、抗体の元来のグリコシル化パターンを改変する。改変とは、抗体で見出される1以上の炭水化物部分の欠失、および/または抗体に存在しない1以上のグリコシル化部位の付加を意味する。抗体のリコシル化は、典型的には、N−結合またはO−結合いずれかである。N−結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付着をいう。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(ここに、Xはプロリンを除いたいずれかのアミノ酸)は、炭水化物部分の、アスパラギン側鎖への酵素付着のための認識配列である。かくして、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的グリコシル化部位を生じさせる。O−結合グリコシル化とは、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンを用いることもできるが、糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの付着をいう。
【0106】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、便宜には、それが(N−結合グリコシル化部位のための)前記したトリペプチド配列の1以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することによって達成される。該改変は、1以上のセリンまたはスレオニン残基の(O−結合グリコシル化部位のための)元来の抗体の配列への付加、またはそれによる置換によってなすこともできる。
【0107】
機能的同等とは、同等な活性(例えば、ABCB5への結合、またはABCB5発現細胞の殺傷の増強)をいうが、そのような活性のレベルの変動も含む。例えば、機能的同等体は、本明細書中に記載されたモノクローナル抗体クローンよりも小さな、同等な、または大きな親和性でもってABCB5に結合する変異体であり、但し、該変異体は依然として本発明で有用であるものとする(すなわち、それはABCB5に結合し、所望により、腫瘍の殺傷を増強させる)。
【0108】
そのような置換は、当業者に知られた種々の方法によってなすことができる。例えば、アミノ酸置換は、Kunkel(Kunkel,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.82:488−492,1985)の方法に従ってPCR指向性突然変異、部位特異的突然変異誘発によって、または特定のCDRをコードする遺伝子、もしくは本明細書中に記載されたCDRアミノ酸配列を含むペプチドの化学合成によってなすことができる。CDR含有ペプチドを改変するためのこれらおよび他の方法は当業者に知られており、そのような方法で、例えば、前記したSambrookまたはAusubelを編集する文献に見出すことができる。しかしながら、いくつかの実施形態においては、CDRのサイズのため、商業的に入手可能なもののようなペプチドシンセサイザーを用いて変異体ペプチドを合成するのはより便宜であろう。ABCB5結合CDRの機能的に同等な変異体の活性は、結合アッセイによってテストすることができ、いくつかの場合において、後により詳細に検討する生物学的活性アッセイによってテストすることができる。本明細書中で用いるように、用語「機能的変異体」、「機能的に同等な変異体」、および「機能的に活性な変異体」は相互交換可能に用いられる。
【0109】
本明細書中で用いるように、用語「機能的に活性な抗体断片」は、各々、好ましくは、特異的にABCB5に結合する能力を保有する本発明のABCB5結合領域を含めた抗体分子の断片を意味する。そのような断片はインビトロおよびインビボ双方にて用いることができる。特に、よく知られた機能的に活性な抗体断片には、限定されるものではないが、抗体のF(ab’)
2、Fab、FvおよびFd断片を含む。無傷抗体のFc断片を欠如するこれらの断片は、より迅速に循環から除去され、無傷抗体よりも少ない非特異的組織結合を有することができる(Walhら、J.Nucl.Med.24:316−325(1983))。もう1つの例として、単一鎖抗体は、Ladnerらに対する米国特許第4,946,778号に記載された方法に従って構築することができる。そのような単一鎖抗体は、フレキシブルなリンカー部位によって連結された軽鎖および重鎖の可変領域を含む。単離された可変重鎖単一ドメインを含む単一ドメイン抗体(「Fd」)を得るための方法も報告されている(例えば、単離された形態で結合するその標的エピトープに対して十分な親和性でもって抗体重鎖可変領域(V
H単一ドメイン抗体)を同定するためのスクリーニングの方法を開示する、Wardら、Nature 341:644−646(1989)参照)。公知の抗体の重鎖および軽鎖可変領域配列に基づいて組換えFv断片を作製する方法は、当該分野で知られており、例えば、Mooreらの米国特許第4,462,334号に記載されている。抗体断片の使用および作製を記載する他の文献には、例えば、Fab断片(Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays(Elsevier,Amsterdam,1985))、Fv断片(Hochmanら、Biochemistry 12:1130(1973);Sharonら、Biochemistry 15:1591(1976);Ehrlichら、米国特許第4,355,023号)および抗体分子の部分(Audilore−Hargreaves,米国特許第4,470,925号)を含む。かくして、当業者であれば、ABCB5に対する抗体の特異性を破壊することなく無傷抗体の種々の部分からの抗体断片を構築することができる。
【0110】
本発明の重要な態様において、機能的に活性な抗体断片は、ABCB5発現細胞の殺傷を増強する能力も保有する。この後者の場合において、抗体断片はFc領域ならびにエピトープ欠乏ドメインを含む。Fc領域によって、抗体断片はFc受容体陽性細胞に結合することができ、これは、引き続いて、抗体のFab領域によって結合されるエピトープを貪食する。
【0111】
本発明の抗ABCB5ペプチドは、さらに、ヒト化抗体またはヒト抗体を含むことができる。非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)
2または抗体の他の抗体結合サブ配列のような)その断片である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補的決定領域(CDR)からの残基が所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体においても、または輸入されたCDR、もしくはフレームワーク配列においても見出されない残基も含むこともできる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そこでは、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンの一部を含むであろう。[Jonesら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら、Nature,332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biot,2:593−596(1992)]。
【0112】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該分野でよく知られている。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「輸入」可変ドメインに由来する「輸入」残基をいう。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列に代えてげっ歯類CDRまたはCDR配列で置換することによって、Winterおよび共同研究者の方法に従って実質的に行うことができる。[Jonesら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら、Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら、Science,239:1534−1536(1988)]。従って、そのような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、ここに、実質的により程度の低い無傷ヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置き換えられている。現実的には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基および可能性のあるいくつかのFR残基がげっ歯類抗体中の類似の部位からの残基によって置き換えられたヒト抗体である。
【0113】
ヒト化抗体を作製するのに用いるべき、軽鎖および重鎖双方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低下させるのに非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」方法に従って、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列は、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯類のものに最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク領域(FR)として許容される(Simsら、J.Immunol.,151:2296(1993);Chothiaら、J.Mol.Biol.,196:901(1987))。もう1つの方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を用いる。同一のフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に用いることができる(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Prestaら、J.Immunol.,151:2623(1993))。
【0114】
さらに、抗体は、抗原に対する高い親和性、および他の好都合な生物学的特性を保持してヒト化されるのが重要である。この目的を達成するには、好ましい方法に従い、ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の三次元モデルを用いて親配列および種々の概念的ヒト化産物の分析のプロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは通常入手可能であり、当業者にとって精通しているものである。選択された候補免疫グロブリン配列の可能な三次元立体配座構造を説明し、提示するコンピュータープログラムが入手可能である。これらの提示の精査により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の有望な役割の分析、すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響する残基の分析が可能となる。このように、FR残基を、標的抗原に対する増大した親和性のような所望の抗体特徴が達成されるように、レシピエントおよび輸入配列から選択し、組合せることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合に影響するのに直接的にかつ最も実質的に関与する。
【0115】
注目する例示的なヒト化抗体は、本明細書中においては、所望により、これらCDR残基のアミノ酸修飾を含む、可変重鎖相補性決定残基DYYMY(配列番号3);TINDGGTHTY(配列番号4);および/またはDDYYYGSFHDAMDY(配列番号5)を含み、例えば、ここに、修飾は抗体の親和性を本質的に維持し、または改良する。例えば、注目する抗体変異体は、前記可変重鎖CDR配列において約1〜約7、または約5のアミノ酸置換を有することができる。そのような抗体変異体は、親和性成熟によって調製することができる。
【0116】
ヒト化抗体は、例えば、これまでの段落におけるこれら可変重鎖ドメインCDR残基に加えて、可変軽鎖ドメイン相補性決定残基RASKSVSTSGYSYMH(配列番号6);LVSNLES(配列番号7);および/またはQHIRELTR(配列番号8)を含むことができる。そのようなヒト化抗体は、所望により、前記CDR残基のアミノ酸修飾を含み、例えば、ここに、該修飾は抗体の親和性を本質的に維持し、または改良する。例えば、注目する抗体変異体は、前記可変軽鎖CDR配列において約1〜約7、または約5のアミノ酸置換を有することができる。
【0117】
本出願では、ABCB5に結合する親和性成熟抗体も考えられる。親抗体はヒト抗体またはヒト化抗体、例えば、各々、配列番号2および1の可変軽鎖および/または重鎖配列を含むものであってよい。親和性成熟化抗体は、好ましくは、ネズミmAb3C2−1D12のよりも優れた親和性でもってABCB5に結合する。
【0118】
ヒト化抗体または親和性成熟化抗体の種々の形態が考えられる。例えば、ヒト化抗体または親和性成熟化抗体は、イムノコンジュゲートを生じさせるために所望により1以上の細胞傷害性剤とコンジュゲートしたFabのような抗体断片であってよい。あるいは、ヒト化抗体または親和性成熟化抗体は、無傷IgG1抗体のような無傷抗体であってよい。
【0119】
欧州特許出願0239400は、その全内容をここに引用して援用するが、少なくともネズミ(または他の非ヒト動物)抗体のCDR部分がヒト化抗体に含まれたヒト化モノクローナル抗体の産生および使用の例示的な教示を提供する。簡単に述べれば、以下の方法は、マウスCDRの少なくとも一部分を含めたヒト化CDRモノクローナル抗体を構築するのに有用である。Ig重鎖または軽鎖の可変ドメイン、およびヒト抗体からのフレームワーク領域を含む可変ドメイン、およびネズミ抗体のCDR領域を少なくともコードするDNA配列に操作可能に連結された適当なプロモーターを含めた第一の複製可能な発現ベクターが調製される。所望により、第二の複製可能な発現ベクターが調製され、それは、各々、相補的なヒトIg軽鎖または重鎖の可変ドメインを少なくともコードするDNA配列に操作可能に連結された適当なプロモーターを含む。次いで、細胞系をベクターで形質転換する。好ましくは、細胞系は、ミエローマ、ハイブリドーマ、トリオーマまたはクワドローマ細胞系のようなリンパ系起源の不滅化哺乳動物細胞系であり、またはウイルスでの形質転換によって不滅化された正常なリンパ系細胞である。次いで、形質転換された細胞系を当業者に知られた条件下で培養して、ヒト化抗体を産生する。
【0120】
欧州特許出願0239400に記載されたように、複製可能なベクターに挿入されるべき特定の抗体ドメインを作り出すためのいくつかの技術が当該分野でよく知られている(好ましいベクターおよび組換え技術は以下でより詳細に議論する)。例えば、該ドメインをコードするDNA配列をオリゴヌクレオチド合成によって調製することができる。あるいは、粘着末端を持つ二本鎖合成または制限されたサブクローン化CDRカセットをフレームワーク領域の接合部に連結できるように、4つのフレームワーク領域が連結部において適当な制限部位と一緒に融合された、CDR領域を欠如する合成遺伝子。もう1つの方法は、オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異誘発による、可変CDR含有ドメインをコードするDNA配列の調製を含む。これらの方法の各々は当該分野でよく知られている。従って、当業者であれば、そのエピトープに対する抗体の特異性を破壊することなく、ネズミCDR領域を含有するヒト化抗体を構築することができるであろう。
【0121】
ヒト化の代替法として、ヒト抗体を生じさせることができる。「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する、および/またはヒト抗体を作製するためのいずれかの技術を用いて作製されているものである。ヒト抗体のこの定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を排除する。例えば、今や、免疫化に際して、内因性免疫グロブリンの産生がない場合においてヒト抗体の十分なレパートリーを生じさせることができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製するのが可能である。例えば、キメラおよび生殖系突然変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失の結果、内因性抗体の産生が完全に阻害されることが記載されている。そのような生殖系突然変異体マウスにおけるヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイの移動の結果、抗原チャレンジに際してヒト抗体の産生がもたらされる。例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature,362:255−258(1993);Bruggermannら、Year in Immuno.,7:33(1993);および米国特許第5,591,669号、第5,589,369号および第5,545,807号参照。
【0122】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、Nature 348:552−553(1990))を用いて、免疫化されていないドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロにてヒト抗体および抗体断片を産生することができる。この技術に従い、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdのようなフィラメント状バクテリオファージの主要なまたは重要でないコート蛋白質遺伝子のいずれかにインフレームにてクローン化し、ファージ粒子の表面で機能的抗体断片として提示させる。フィラメント状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するために、抗体の機能的特性に基づく選択の結果、それらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子が選択される。かくして、該ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは種々の様式で行うことができる;その概説については例えば、Johnson,Kevin S,and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3:564−571(1993)参照。V遺伝子セグメントのいくつかの源をファージディスプレイのために用いることができる。Clacksonら、Nature,352:624−628(1991)は、免疫化マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さなランダムなコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。免疫化されていないヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構築することができ(自己抗原を含めた)多様な抗原アレイに対する抗体を、Marksら、J.Mol.Biol.222:581−597(1991)、またはGriffithら、EMBO J.12:725−734(1993)によって記載された技術に実質的に従って単離することができる。また、米国特許第5,565,332号および第5,573,905号も参照。ヒト抗体はインビトロ活性化B細胞によって生じさせることもできる(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号参照)。
【0123】
ヒトモノクローナル抗体は、Borrebaeckらに対して発行された米国特許第5,567,610号、Ostbergに対して発行された米国特許第565,354号,Bakerらに対して発行された米国特許第5,571,893号、Kozber,J.Immunol.133:3001(1984),Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,p.51−63(Marcel Dekker,Inc,New York,1987),およびBoernerら、J.Immunol.,147:86−95(1991)に記載されたもののような、当該分野で公知の方法いずれかによって作製することもできる。
【0124】
本発明は、単一鎖可変領域断片(scFv)の使用も含む。単一鎖可変領域断片は、短い連結ペプチドを用いることによって、軽鎖および/または重鎖可変領域によって作製される。十分な柔軟性および長さを有するいずれのペプチドもscFvにおけるリンカーとして用いることができる。通常、リンカーは、免疫原性をほとんどまたは全く有しないように選択される。連結ペプチドの例は、1つの可変領域のカルボキシ末端およびもう1つの可変領域のアミノ末端をブリッジさせる多重GGGGS残基である。他のリンカー配列も用いることもできる。
【0125】
重鎖または軽鎖の全てまたはいずれかの部分を、いずれかの組合せで用いることができる。典型的には、全可変領域をscFvに含める。例えば、軽鎖可変領域を重鎖可変領域に連結することができる。あるいは、軽鎖可変領域の一部を重鎖可変領域、またはその部分に連結させることができる。また、重鎖可変領域が、注目する抗体からのものであって、軽鎖可変領域がもう1つの免疫グロブリンからのものであるscFvが考えられる。
【0126】
scFvはいずれかの順序、例えばV
H−リンカー−V
LまたはV
L−リンカー−V
Hで組立てることができる。特別な発現系におけるこれらの2つの立体配置の発現のレベルに差があってよく、その場合、これらの形態の1つは好ましいであろう。(X)−リンカー−(X)−リンカー−(X)のようなタンデムscFvを作製することもでき、ここに、Xは注目する抗体からのポリペプチド、またはこれらのポリペプチドと他のポリペプチドとの組合せである。もう1つの実施形態において、単一鎖抗体ポリペプチドはリンカーポリペプチドを有さず、またはまさに短いフレキシブルでないリンカーを有する。可能な立体配置はV
L−V
HおよびV
H−V
Lである。結合は、鎖内のV
LおよびV
Hの間の相互作用を可能とするには余りにも短く、鎖は各末端においてV
L/V
H抗原結合部位を持つホモダイマーを形成する。そのような分子は「ダイアボディ」として当該分野で呼ばれている。
【0127】
単一鎖可変領域は、組換えによりまたは合成により生じさせることができる。scFvの合成的産生のためには、自動シンセサイザーを用いることができる。scFvの組換え産生では、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する適当なプラスミドを酵母、植物、昆虫または哺乳動物細胞のような真核生物、またはE.coliのような原核生物いずれかの適当な宿主細胞に導入することができ、発現された蛋白質を、標準的な蛋白質精製技術を用いて単離することができる。
【0128】
発現の条件は、scFvポリペプチドが最適な第三次構造を取ることができるようにすべきである。用いるプラスミドおよび宿主細胞に依存して、産生の速度を変調する必要があろう。例えば、より弱いプロモーターの使用、またはより低い温度での発現が、適切に折畳まれたscFvの原核生物系における産生を最適化するのに必要であり;または、好ましくは、真核生物細胞においてscFvを発現させることができる。
【0129】
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を持つ小さな抗体断片をいい、その断片は、同一ポリペプチド鎖(V
H−V
L)における軽鎖可変ドメイン(V
L)に連結された重鎖可変ドメイン(V
H)を含む。同一鎖上の2つのドメインの間の対合を可能とするには余りにも短いリンカーを用いることによって、ドメインは、もう1つの鎖の相補的ドメインと対合し、2つの抗原結合部位を作り出すように促される。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)においてより十分に記載されている。
【0130】
本明細書中において、モノクローナル抗体は、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列に同一であるか、またはそれと相同な「キメラ」抗体を含み、他方、鎖の残りは、もう1つの種に由来する、またはもう1つの抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびに所望の生物学的活性を呈する限りはそのような抗体の断片における対応する配列と同一であるか、またはそれと相同である。
【0131】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して抗原特異性を有するモノクローナルな、好ましくは、ヒトまたはヒト化抗体である。この場合には、結合特異性の1つはABCB5についてのものであり、他のものはいずれかの他の抗原についての、好ましくは、細胞表面蛋白質または受容体もしくは受容体サブユニットについてのものである。二重特異性抗体を作製するための方法は当該分野で知られている。伝統的には、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づき、ここに、2つの重鎖は異なる特異性を有する[Milstein and Cuello,Nature,305:537−539(1983)]。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖のランダム分類のため、これらのハイブリドーマ(クワドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的混合物を生じ、その後、1つのみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって達成される。同様な手法は、1993年5月13日に公開されたWO93/08829において、およびTrauneckerら、EMBO J.,10:3655−3659(1991)に開示されている。
【0132】
2を超える価数を持つ抗体が考えられる。例えば、三特異的抗体を調製することができる。Tuttら、J.Immunol.147:60(1991)。
【0133】
さらに、ABCB5結合CDR3領域を含有するものを含めた小さなペプチドは、本発明のペプチドを産生するための組換え手段によって容易に合成、または産生することができる。そのような方法は当業者によく知られている。ペプチドは、例えば、商業的に入手可能な自動ペプチドシンセサイザーを用いて合成することができる。ペプチドは、該ペプチドを発現するDNAを発現ベクターに導入し、該発現ベクターで細胞を形質転換して、ペプチドを生じさせることによって組換え技術により産生することができる。
【0134】
抗体を含めたペプチドは、当該分野で公知の標準的な結合アッセイを用いてABCB5に結合するその能力についてテストすることができる。適当なアッセイの例としては、ABCB5を(マルチウェルプレートのウェル中のような)表面に固定化し、次いで、標識されたペプチドと接触させることができる。次いで、ABCB5に結合した(かくして、それ自体が表面に固定化されるようになる)ペプチドの量を定量して、特定のペプチドがABCB5に結合するか否かを決定することができる。あるいは、表面に結合していないペプチドの量を測定することもできる。このアッセイの変形において、ペプチドを、ABCB5発現細胞に直接的に結合するその能力についてテストすることができる。
【0135】
ペプチド結合は、競合アッセイを用いてテストすることもできる。(抗体を含めた)テストすべきペプチドが、モノクローナル抗体または断片の結合の減少によって示されるように、本明細書中に記載されたモノクローナル抗体または抗体断片と競合する場合、該ペプチドおよび該モノクローナル抗体は同一の、または少なくとも重複するエピトープに結合するようである。このアッセイ系において、抗体または抗体断片を標識し、ABCB5を固体表面に固定化する。このようにして、競合抗体を含めた競合ペプチドを同定することができる。本発明は、ABCB5への結合について抗体3C2 1D12(すなわち、3C2 1D12と同一のエピトープを認識し、それに結合する抗体)と競合するペプチドおよび、特に、抗体(およびその断片)を含む。
【0136】
本発明は、ABCB5に結合し、腫瘍殺傷を増強させる小分子も含む。そのような結合分子は、ファージディスプレイ手法のような慣用的なスクリーニング方法(例えば、Hartら、J.Biol.Chem.269:12468(1994)に記載された方法)によって同定することができる。Hartらは、新規なペプチドリガンドを同定するためのフィラメント状ファージディスプレイライブラリーを報告している。一般に、例えば、M13またはfdファージを用いるファージディスプレイライブラリーは、先の文献に記載されたもののような慣用的な手法を用いて調製される。ライブラリーは、一般に、4〜80アミノ酸残基を含有するインサートを表示する。該インサートは、所望により、ペプチドの完全に縮退したまたは偏ったアレイを表わす。適当な結合特性を有するリガンドは、標的分子に結合するリガンドをその表面に発現するファージを選択することによって得られる。次いで、これらのファージを数サイクルの再選択に付して、最も有用な結合特徴を有するペプチドリガンド発現ファージを同定する。典型的には、最良の結合特徴(例えば、最高の親和性)を呈するファージは、核酸分析によってさらに特徴付けて、発現ペプチドの最適な長さでファージ表面に発現されたペプチドの特定のアミノ酸配列を同定して、最適な結合を達成する。ファージディスプレイペプチドまたは抗体ライブラリーもまた、Brissette Rら、Curr Opin Drug Discov Devel.2006 May;9(3):363−9に記載されている。
【0137】
あるいは、結合分子は、コンビナトリアルライブラリーから同定することができる。多くのタイプのコンビナトリアルライブラリーが記載されている。例えば、(化学分子の足場骨格を有する複数の分子構築体を形成し、論理的な順序のアレイにおいて分子上の少なくとも1つの位置を修飾することによって合成分子構築体のアレイを構築するための方法を記載する)米国特許第5,712,171号;(特定の物理化学的特性を有するポリマーを作製するための方法を記載する)第5,962,412号;および(特定のアレイ化化合物を記載する)第5,962,736号。
【0138】
他の結合分子は、本明細書中に記載されたガイダンスに従って当業者によって同定することができる。ライブラリー技術を用いて、ABCB5に結合し、その機能を妨げる小ペプチドを含めた小分子を同定することができる。アンタゴニストの同定のためのライブラリーを用いる1つの利点は、小反応容量の(すなわち、合成およびスクリーニング反応における)小さなサイズの数百万の異なる推定候補の容易な操作である。ライブラリーのもう1つの利点は、非ペプチド部分の場合に特に、天然に生じる源を用いてそうでなければ達成できないであろうアンタゴニストを合成する能力である。
【0139】
小分子ライブラリーは、それからABCB5への結合が推定できる、ABCB5媒介ローダミン123流出輸送に対するその変調効果についてスクリーニングすることができる。ABCB5機能の潜在的基質または阻害剤もまた、選択199標準抗癌剤についてのFrankらのCancer Research 2005に記載されたのと同様に、National Cancer Instituteの癌細胞系のNCI−60パネル全域でのABCB5遺伝子または蛋白質発現を、これらの細胞系についての>100,000化合物の確立された薬物能力と相関させることによって同定することもできる。
【0140】
これらの化合物のすべてではないにせよ多くが、組換えまたは化学ライブラリーを用いて合成することができる。候補化合物の膨大なアレイが、合成または天然化合物のライブラリーから生じさせることができる。細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーは、入手可能であるか、または容易に作製することができる。天然および合成により作製されたライブラリー、および化合物は、慣用的な化学的、物理的、および生化学的手段を通じて容易に修飾することができる。さらに、カルシウムチャネルのアンタゴニストに結合し、それにより、アンタゴニストとして作用する化合物を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化等のような特異的またはランダムな化学的修飾に付して、同様に、または恐らくはより大きな特異性を持って機能することができる構造的アナログを生じさせることができる。
【0141】
小分子コンビナトリアルライブラリーを生じさせることもできる。小有機化合物のコンビナトリアルライブラリーは、多様性の1以上の地点において相互に異なり、多工程プロセスを用いて有機的技術によって合成される密接に関連するアナログのコレクションである。コンビナトリアルライブラリーは、膨大な数の小有機化合物を含む。コンビナトリアルライブラリーの1つのタイプは、化合物アレイを生じさせるための平行合成方法によって調製される。「化合物アレイ」は、本明細書中で用いるように、デカルト座標中の空間的アドレスによって同定可能であり、かつ各化合物が共通の分子コア、および1以上の可変構造的多様性エレメントを有するように配置された化合物のコレクションである。そのような化合物アレイにおける化合物は別々の反応容器中で並行して製造され、各化合物はその空間的アドレスによって同定され、追跡される。並行合成混合物および並行合成方法の例には、本明細書中に引用して援用する、1995年7月13日に公開されたPCT公開特許出願WO95/18972、および1998年1月27日に特許付与された米国特許第5,712,171号、およびその対応するPCT公開特許出願WO96/22529が提供される。
【0142】
標準的な結合アッセイが当該分野でよく知られており、ELISA、(前記した)競合結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、放射活性に標識されたペプチドまたは放射標識された抗体を用いる放射受容体アッセイ、イムノアッセイ等を含む多数のこれらは、本発明に適している。アッセイの性質は必須ではないが、但し、少数のペプチドの結合を検出するのに十分に感受性であるものとする。
【0143】
種々の他の試薬を結合混合物に含めることもできる。これらには、最適な結合を容易とするのに用いることができる、塩、緩衝液、中性蛋白質(例えば、アルブミン)、洗剤等のような試薬を含む。そのような試薬は、反応成分の非特異的またはバックグラウンド相互作用を低下させることもできる。アッセイの効率を改良する他の試薬を用いることもできる。これまでのアッセイ物質の混合物を、モノクローナル抗体がABCB5に通常特異的に結合する条件下でインキュベートする。そのような条件は、好ましくは、生理学的条件を模倣する。成分の添加の順序、インキュベーション温度、インキュベーションの時間、およびアッセイの他のパラメーターは容易に決定することができる。そのような実験は、アッセイパラメーターの最適化を含むのみであり、アッセイの基本的組成を含まない。インキュベーション温度は、典型的には、4℃〜40℃の間である。インキュベーション時間は、好ましくは、迅速な高スループットスクリーニングを容易とするように最小化され、典型的には、0.1〜10時間の間である。インキュベーションの後、ペプチドおよびABCB5の間の特異的結合の存在または非存在は、使用者が利用できるいずれの便宜な方法によって検出される。
【0144】
典型的には、複数のアッセイ混合物を異なる複数ペプチドまたは異なるペプチド濃度にて平行に実行して、種々の濃度に対する異なる応答を得る。これらの濃度のうち1つは陰性対照として、すなわち、ABCB5の0濃度において、またはアッセイ検出の限界未満のABCB5の濃度において働く。
【0145】
分離工程は、しばしば、未結合ペプチドまたは抗体から分離するのに用いられる。分離工程は種々の方法で達成することができる。便宜には、成分(例えば、ペプチドまたは抗体)の少なくとも1つを、ABCB5への結合を介して固体基材上に固定化する。未結合成分は、結合した画分から容易に分離することができる。固体基材は、広く種々の物質で、広く種々の形状で、例えば、ポリアクリルアミドのカラムもしくはゲル、アガロースまたはセファロース、マイクロタイタープレート、マイクロビーズ、樹脂粒子等にて作製することができる。分離工程は、好ましくは、多数の濯ぎまたは洗浄を含む。例えば、固体基材がマイクロタイタープレートである場合、ウェルを、塩、緩衝液、洗剤、非特異的蛋白質等のような特異的結合に参画しないインキュベーション混合物の成分を典型的には含む洗浄溶液で数回洗浄することができる。固体基材が磁性ビーズである場合、該ビーズを洗浄溶液で1回以上洗浄し、磁石を用いて単離することができる。
【0146】
本明細書中で記載された分子は、本明細書中においてより詳細に記載されるように、単独または本発明の検出および処理方法にて、検出または細胞傷害性剤のような他の分子とのコンジュゲートにて用いることができる。
【0147】
典型的には、成分の1つは、通常、検出可能な標識を含むか、またはそれにカップリングされるか、またはコンジュゲートされる。検出可能な標識は、その存在が直接的にまたは間接的に確認することができる部分である。一般に、標識の検出は標識によるエネルギーの放出を含む。標識は、フォトン、または特定の波長の他の原子粒子(例えば、放射能、ルミネセンス、光学的または電子密度等)を発し、および/またはそれを吸収するその能力によって直接的に検出することができる。標識は、それ自体が特定の波長の光を発し、または吸収することができるもう1つの部分(例えば、FLAGエピトープのようなエピトープタグ、ホースラディッシュペルオキシダーゼのような酵素タグ)に結合し、動員し、いくつかの場合には、それを切断するその能力によって間接的に検出することができる。間接的な検出の例は、基材を目に見える産物に切断する第一の酵素標識の使用である。標識は化学物質、ペプチドまたは核酸分子の性質のものであってよいが、そのように限定されるものではない。他の検出可能な標識はP
32もしくはH
3のような放射性同位体、蛍光色素のような発光マーカー、光学的もしくは電子密度マーカー等、またはFLAGエピトープもしくはHAエピトープのようなエピトープタグ、ビオチン、アビジン、およびホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼのような酵素タグを含む。標識は、その合成の間に、またはそれに続いてペプチドに結合することができる。当業者に知られた多くの異なる標識および標識方法がある。本発明で用いることができる標識のタイプの例には酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド金属、化学発光化合物、および生物発光化合物を含む。当業者であれば、本明細書中に記載されたペプチドについての他の適当な標識を知っているか、または常套的実験を用いてそれを確認することができるであろう。さらに、これらの標識の、本発明のペプチドへのカップリングまたはコンジュゲーションは、当業者に共通の標準的技術を用いて行うことができる。
【0148】
より大きな感度をもたらすことができるもう1つの標識技術は、本明細書中に記載された分子を低分子量のハプテンにカップリングさせることよりなる。続いて、第二の反応によって、これらのハプテンを特異的に改変することができる。例えば、特異的抗ハプテン抗体と反応することができる、アビジン、またはジニトロフェノール、ピリドキサール、またはフルオレセインと反応する、ビオチンのようなハプテンを用いるのが普通である。
【0149】
検出可能な標識への抗体またはその断片を含めたペプチドのコンジュゲーションは、とりわけ、診断アッセイにおけるそのような薬剤の使用を容易とする。検出可能な標識のもう1つのカテゴリーは、例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)のような(一般に、インビボ検出可能標識という)診断およびイメージング標識:Gd(GOTA);核医学のための201Tl、ガンマ放出放射性核種99mTc;陽電子射出断層撮影法(PET)のための陽電子放出同位体、(18)F−フルオロデオキシグルコース((18)FDG)、(18)F−フッ化物、銅−64、ガドジアミド、および203PbのようなPb(II)の放射性同位体;111Inを含む。
【0150】
本明細書中に記載されたコンジュゲーションまたは修飾は常套的化学物質を使用し、その化学物質は本発明の一部を形成せず、その化学物質は化学の分野における当業者によく知られている。保護基、ならびにモノおよびヘテロ二官能性リンカーのような公知のリンカーの使用は文献に十分に記載されており、本明細書中においては反復しない。
【0151】
本明細書中で用いるように、「コンジュゲート型」とは、いずれかの物理化学的手段によって相互に安定に結合した2つの存在を意味する。付着の性質は、それが全存在の有効性を実質的に損なわないようなものであるのは重要である。これらのパラメーターを念頭に置き、当業者に知られたいずれかの共有結合または非共有結合を使用することができる。いくつかの実施形態において、共有結合が好ましい。非共有結合コンジュゲーションには、疎水性相互作用、イオン性相互作用、ビオチン−アビジンおよびビオチン−ストレプトアビジン複合体化のような高い親和性の相互作用、および他の親和性相互作用を含む。付着のそのような手段および方法は当業者によく知られている。
【0152】
種々の方法を用いて、標識の性質、および他のアッセイ成分に依存して、標識を検出することができる。例えば、固体基材への結合、引き続いて固体基材からの分離の間に、標識を検出することができる。検出は、光学もしくは電子密度、放射性放出、非放射性エネルギー移動等を通じて直接的に検出することができ、または抗体コンジュゲート、ストレプトアビジン−ビオチンコンジュゲート等で間接的に検出することができる。標識を検出するための方法は当該分野でよく知られている。
【0153】
本発明のコンジュゲートは、化学治療剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、もしくはその断片、または小分子毒素)、または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)のような細胞傷害性剤にコンジュゲートした抗体も含む。本発明の抗体にコンジュゲートすることができる他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチンおよび5−フルオロウラシル、米国特許第5,053,394号、第5,770,710号に記載された集合的にLL−E33288複合体として知られた薬剤のファミリー、ならびにエスペラミシン(米国特許第5,877,296号)を含む。コンジュゲートで用いることができる酵素的に活性な毒素およびその断片にはジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、(Pseudomonas aeruginosaからの)エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordii蛋白質、ジアンチン蛋白質、Phytolaca americana蛋白質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、Momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、Sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンを含む。
【0154】
腫瘍の選択的破壊のために、抗体は高度に放射性の原子を含むことができる。種々の放射性同位体がラジオコンジュゲート型抗体の製造で利用できる。その例にはAt
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
213、およびLuの放射性同位体を含む。コンジュゲートを検出のために用いる場合、それはシンチグラフィー実験のための放射性元素、例えば、Tc99mまたはI
123、またはヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄のような(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られた)核磁気共鳴(NMR)イメージングのためのスピン標識を含むことができる。
【0155】
放射性標識または他の標識を公知の方法でコンジュゲートに取り込むことができる。例えば、ペプチドを生合成することができ、または、例えば、水素の代わりにフッ素−19を含む適当なアミノ酸前駆体を用いる化学的アミノ酸合成によって合成することができる。Tc99mまたはI
123、Re
186、Re
188およびIn
111のような標識をペプチド中のシステイン残基を介して結合させることができる。イットリウム−90をリシン残基を介して結合させることができる。IODOGEN方法(Frakerら(1978)Biochem.Biophys.Res.Commun.80:49−57)を用いて、ヨウ素−123を取り込むことができる。「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal,CRC Press 1989)は詳細に他の方法を記載する。
【0156】
抗体および細胞傷害性剤のコンジュゲートは、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、イミュノチオラン(IT)、(ジメチルアジピミデートHClのような)イミドエステルの二官能性誘導体、(ジスクシンイミジルスベレートのような)活性なエステル、(グルタルアルデヒドのような)アルデヒド、(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンのような)ビス−アジド化合物、(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンのような)ビス−ジアゾニウム誘導体、(トルエン2,6−ジイソシアネートのような)ジイソシアネート、および(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンのような)ビス−活性フッ素化合物のような種々の二官能性蛋白質カップリング剤を用いて作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitettaら、Science 238:1098(1987)に記載されたように調製することができる、炭素−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示的なキレート化剤である。WO94/11026参照。リンカーは細胞における細胞傷害性薬物の放出を容易とする「切断可能なリンカー」であってよい。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chariら、Cancer Research 52:127−131(1992)米国特許第5,208,020号)を用いることができる。
【0157】
本発明のモノクローナル抗体の特異性を担う配列が決定されている。従って、本発明によるペプチドは組換えDNA技術を用いて調製することができる。Thomas Jefferson大学およびScripps Protein and Nucleic Acids Core Sequencing Facility(La Jolla, California)のような、この機能を商業的に行う団体が合衆国にある。例えば、可変領域cDNAは、(アミノ酸配列に由来する)縮退重または非縮退プライマーを用いてポリメラーゼ鎖反応によって調製することができる。cDNAをサブクローンして、慣用的な配列決定反応または機器による配列決定のために十分な量の二本鎖DNAを生じさせることができる。
【0158】
抗ABCB5モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインの核酸配列の知識でもって、当業者であれば、この抗体をコードする、または上記した種々の抗体断片、ヒト化抗体、またはポリペプチドをコードする核酸を生じさせることができる。そのような核酸は、本発明のペプチドのクローニングのために、またはそのペプチドの発現のために、組換えベクターを形成する他の核酸に操作可能に連結されると考えられる。本発明は、原核生物または真核生物形質転換、トランスフェクションまたは遺伝子治療のためを問わず、コーディング配列、またはその部分を含有するいずれの組換えベクターを含む。そのようなベクターは当業者に知られた慣用的な分子生物学的技術を用いて調製することができ、それは、CDR領域(好ましくはCDR3領域)、および抗体の特異性に寄与するさらなる可変配列、またはその部分、ならびに他の非特異的ペプチド配列、輸出または分泌のためのシグナル配列を含む(Whittleら、Protein Eng.1:499,1987およびBurtonら、Science 266:1024−1027,1994)または含まない(Marascoら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)90:7889,1993およびDuanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)91:5075−5079,1994)、他の非特異的ペプチド配列および適当なプロモーターを含むであろう。そのようなベクターは、当業者に知られた慣用的な技術によって、原核生物(Huseら、Science 246:1275,1989,Wardら、Nature 341:644−646,1989;Marksら、J.Mol.Biol.222:581,1991およびBarbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:7978,991)または真核生物(Whittleら、1987およびBurtonら、1994)細胞に形質転換し、トランスフェクトし、または遺伝子治療で用いることができる(Marascoら、1993 and
Duanら、1994)。
【0159】
本明細書中で用いるように、「ベクター」は、異なる遺伝子的環境の間の輸送のための、または宿主細胞における発現のための、制限および連結によって所望の配列を挿入することができる多数の核酸のいずれであってもよい。ベクターは、典型的には、DNAより構成されるが、RNAベクターも入手可能である。ベクターは、限定されるものではないが、プラスミドおよびファゲミドを含む。クローニングベクターは、宿主細胞において複製することができ、かつベクターを決定可能な様式でそこで切断することができ、かつ新しい組換えベクターが宿主細胞において複製するその能力を保有するように所望のDNA配列を連結することができる1以上のエンドヌクレアーゼ制限部位によってさらに特徴付けられるものである。プラスミドの場合には、所望の配列の複製は、宿主細菌内でプラスミドのコピー数が増加するにつれて多数回、または有糸分裂によって宿主が再生する前に宿主当たり丁度1回起こり得る。ファージの場合には、複製は、溶解相の間に能動的に、または溶原性相の間に受動的に起こり得る。発現ベクターは、それが調節配列に操作可能に連結され、RNA転写体として発現され得るように、制限および連結によって所望のDNA配列を挿入できるものである。ベクターは、さらに、ベクターで形質転換またはトランスフェクトされている、もしくはされていない細胞の同定で用いるのに適した1以上のマーカー配列を含有することができる。マーカーは、例えば、抗生物質または他の化合物に対する抵抗性または感受性のいずれかを増加または減少させる蛋白質をコードする遺伝子、その活性が、当該分野で知られた標準的なアッセイによって検出可能な酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはアルカリ性ホスファターゼ)をコードする遺伝子、および形質転換された、またはトランスフェクトされた細胞、宿主、コロニーまたはプラークの表現型に目に見えるように影響する遺伝子を含む。好ましいベクターは、それらが操作可能に連結されるDNAセグメントに存在する構造遺伝子産物の自律複製および発現が可能なものである。
【0160】
本発明の発現ベクターは、本発明のペプチドの1つをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結された調節配列を含む。本明細書中で用いるように、用語「調節配列」は、所望のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の転写に必要な、またはそれに導く、および/または得られた転写体の所望のポリペプチドへの翻訳に必要な、またはそれに導くヌクレオチド配列を意味する。調節配列には、限定されるものではないが、オペレーター、プロモーター、およびリボソーム結合配列のような5’−配列、ポリアデニル化シグナルのような3’配列を含む。本発明のベクターは、所望により、蛋白質精製において助けとなる5’リーダーまたはシグナル配列、融合産物をコードする5’または3’配列、および形質転換体の同定または選択で助けとなる種々のマーカーを含んでもよい。適当なベクターの選択および設計は、当業者の能力および分別内のものである。ペプチドの引き続いての精製は、当該分野で公知の種々の標準的手段のいずれかによって達成することができる。
【0161】
ペプチドをスクリーニングするための、しかしながら本発明のペプチドの大量の産生のためには必ずしも好ましくはない好ましいベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端への方向に、(1)原核生物分泌シグナルドメイン、(2)本発明のポリペプチドおよび、所望により、(3)融合蛋白質ドメインを含有する融合ポリペプチドをコードし、かつそれを発現することができるヌクレオチド配列を含有する組換えDNA分子である。ベクターは、融合ポリペプチドを発現するためのDNA調節配列、好ましくは原核生物調節配列を含む。そのようなベクターは当業者によって構築することができ、Smithら(Science 228:1315−1317,1985),Clacksonら(Nature 352:624−628,1991);Kangら(in ”Methods: A Companion to Methods in Enzymology:Vol.2”,R.A.Lerner and D.R.Burton,ed.Academic Press,NY,pp 111−118,1991);Barbasら(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:7978−7982,1991),Robertsら(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:2429−2433,1992)によって記載されている。
【0162】
融合ポリペプチドは、本発明のペプチドの精製に有用であり得る。融合ドメインは、例えば、商業的に入手可能なベクターpMAL(New England BioLabs,Beverly,MA)のマルトース結合蛋白質のNi+カラムでの精製を可能とするポリHisテイルを含む。現在好ましいが、断じて必要ではない融合ドメインはフィラメント状ファージ膜アンカーである。このドメインは、モノクローナル抗体のファージディスプレイライブラリーをスクリーニングするのに特に有用であるが、抗体の大量産生のための用途は低いであろう。フィラメント状ファージ膜アンカーは、好ましくは、フィラメント状ファージ粒子のマトリックスと会合でき、それにより、融合ポリペプチドをファージ表面に一体化させて、特異的抗原またはエピトープへの固相結合を可能とし、それにより、ファゲミドベクターによってコードされる特異的抗体または断片の増大および選択を可能とすることができるcpIIIまたはcpVIIIコート蛋白質のドメインである。
【0163】
分泌シグナルは、グラム陰性細菌のペリプラズム膜のような宿主細胞の蛋白質膜を標的とする蛋白質のリーダーペプチドドメインである。E.coliのための好ましい分泌シグナルはpelB分泌シグナルである。Erwinia carotovaからの変異体を産生する2つのpelB遺伝子からの分泌シグナルドメインの予測されたアミノ酸残基配列はLeiら(Nature 381:543−546,1988)に記載されている。pelB蛋白質のリーダー配列は従前は、融合蛋白質のための分泌シグナルとして用いられてきた(Betterら、Science 240:1041−1043,1988;Sastryら、Proc.Natl.Acad.Sci(USA)86:5728−5732,1989;およびMullinaxら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:8095−8099,1990)。本発明で有用なE.coliからの他の分泌シグナルポリペプチドのためのアミノ酸残基配列は、Oliver,In Neidhard,F.C.(ed.),Escherichia coli and Salmonella Typhimurium,American Society for Microbiology,Washington,D.C.,1:56−69(1987)に見出すことができる。
【0164】
E.coliにおいて遺伝子発現の高いレベルを達成するためには、多量のmRNAを生じさせるための強いプロモーターのみならず、該mRNAが有効に翻訳されるのを確実とするためのリボソーム結合部位を用いるのが必要である。E.coliにおいて、リボソーム結合部位は開始コドン(AUG)、および該開始コドンから3〜11ヌクレオチド上流に位置する、3〜9ヌクレオチド長の配列を含む(Shineら、Nature 254:34,1975)。シャイン−ダルガルノ(SD)配列と呼ばれる配列AGGAGGUは、E.coliの16S rRNAの3’末端に相補的である。リボソームの、mRNA、および該mRNAの3’末端における配列への結合は、いくつかの因子(i)SD配列および16S rRNAの3’末端の間の相補性の程度;(ii)SD配列およびAUGの間に存在するスペーシングおよびおそらくはDNA配列によって影響され得る(Robertsら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76:760.,1979a:Robertsら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76:5596,1979b;Guarenteら、Science 209:1428,1980;およびGuarenteら、Cell 20:543,1980)。最適化は、このスペーシングが系統的に改変されたプラスミドにおける遺伝子の発現のレベルを測定することによって達成される。異なるmRNAの比較は、位置−20〜+13の統計学的に好ましい配列があることを示す(ここに、AUGのAは位置0である)(Goldら、Annu.Rev.Microbiol.35:365,1981)。リーダー配列は翻訳に劇的に影響することが示されている(Robertsら、1979a,b supra);および(iii)リボソーム結合に影響するAUGに続いてのヌクレオチド配列(Taniguchiら、J.Mol.Biol.,118:533,1978)。
【0165】
3’調節配列は、異種融合ポリペプチドとインフレームであり、かつそれに操作可能に連結した少なくとも1つの終止(停止)コドンを規定する。
【0166】
原核生物発現宿主において、利用したベクターは原核生物複製起点またはレプリコン、すなわち、それで形質転換された細菌宿主細胞のような原核生物宿主細胞において組換えDNA分子の自律複製および維持を染色体外で指令する能力を有するDNA配列を含む。そのような複製起点は当該分野でよく知られている。好ましい複製起点は、宿主生物において有効なものである。原核生物宿主細胞は、例えば、E.coliである。E.coliにおけるベクターの使用のために、好ましい複製起点はpBR322で見出されるColE1、および種々の他の共通のプラスミドである。また、好ましいのは、pACYCおよびその誘導体で見出されるp15A複製起点である。ColE1およびp15Aレプリコンは分子生物学において広範に利用されており、種々のプラスミド上で利用可能であり、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)によって記載されている。
【0167】
さらに、原核生物レプリコンを含む実施形態は、好ましくは、その発現がそれで形質転換された細菌宿主に対して薬物耐性であるような選択的利点を付与する遺伝子も含む。典型的な細菌薬物耐性遺伝子は、アンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン/カナマイシンまたはクロラムフェニコールに対する耐性を付与するものである。ベクターは、典型的には、転写可能なDNA配列の挿入のための便宜な制限部位も含有する。例示的なベクターはプラスミドpUC18およびpUC19、およびInvitrogen(San
Diego,CA)から入手可能なpcDNAIIのような誘導されたベクターである。
【0168】
本発明のペプチドは、重鎖および軽鎖双方の配列を含めた抗体である場合、これらの配列は別々のベクターにコードされていてもよく、またはより便宜には、単一のベクターによって発現され得る。重鎖および軽鎖は、翻訳の後、または分泌の後には、天然抗体分子のヘテロダイマー構造を形成することができる。そのようなヘテロダイマー抗体は、重鎖および軽鎖の間のジスルフィド結合によって安定化されていてもいなくてもよい。
【0169】
本発明の無傷抗体、または本発明のF(ab’)
2、FabもしくはFv断片抗体のようなヘテロダイマー抗体の発現のためのベクターは、翻訳可能な第一および第二のDNA配列を受け取り、それを発現するのに適合された組換えDNA分子である。すなわち、ヘテロダイマー抗体を発現するためのDNA発現ベクターは、ベクターに存在する2つの別々のカセットに2つの翻訳可能なDNA配列を独立してクローニング(挿入)して、ヘテロダイマー抗体の第一および第二のポリペプチドを発現する2つの別々のシストロンを形成するための系を提供する。2つのシストロンを発現するためのDNA発現ベクターは、ジシストロニック発現ベクターといわれる。
【0170】
好ましくは、ベクターは、インサートDNAへの方向性連結に適合したヌクレオチドの配列を介して操作可能に連結された上流および下流DNA調節配列を含む第一のカセットを含む。上流翻訳可能配列は、好ましくは、前記したような分泌シグナルをコードする。カセットは、インサート翻訳可能DNA配列が、方向性連結に適合したヌクレオチドの配列を介してカセットに方向性をもって挿入される場合に産生される第一の抗体ポリペプチドを発現するためのDNA調節配列を含む。
【0171】
ジシストロン性発現ベクターは、第二の抗体ポリペプチドを発現するための第二のカセットも含有する。第二のカセットは、好ましくは、カセットのリーディングフレームにおける少なくとも1つの停止コドンを典型的には規定するベクターの下流DNA配列への方向性連結に適合したヌクレオチドの配列を介してその3’末端に操作可能に連結された、前記したような分泌シグナルをコードする第二の翻訳可能DNA配列を含む。第二の翻訳可能DNA配列は、5’エレメントを形成するDNA調節配列に対してその5’末端に対して操作可能に連結している。第二のカセットは、翻訳可能なDNA配列(インサートDNA)の挿入に際して、インサートDNAによってコードされるポリペプチドとの分泌シグナルを含む第二の融合ポリペプチドを発現することができる。
【0172】
本発明のペプチドは、CHO細胞、ヒトハイブリドーマ、不滅化Bリンパ芽球様細胞等のような真核生物細胞によっても産生され得る。この場合、真核生物調節配列がペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結されたベクターが構築される。適当な真核生物ベクターの設計および選択は、当業者の能力および分別内のものである。ペプチドの引き続いての精製は、当該分野で公知の種々の標準的手段のいずれによっても達成することができる。
【0173】
もう1つの実施形態において、本発明は、本発明のベクターで形質転換またはトランスフェクトされ、従って、それを含めた、原核生物および真核生物双方の宿主細胞を提供する。
【0174】
グリコシル化抗ABCB5抗体の発現のための適当な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞を含む。多数のバキュロウイルス株および変異体、ならびにSpodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ミバエ)、およびBombyx moriのような宿主からの対応する許容性昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株が公に入手可能であり、例えば、Autographa californica NPVのL−1変異体、およびBombyx mori NPVのBm−5株、およびそのようなウイルスは、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために本発明に従って本明細書中においてウイルスとして用いることができる。
【0175】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、およびタバコの植物細胞培養物も宿主として利用することができる。
【0176】
脊椎動物細胞もまた宿主細胞として特に興味深いものである。有用な哺乳動物宿主細胞系の例にはSV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7,ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓細胞(懸濁培養での成長のためにサブクローンされた293または293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト子宮頚癌細胞(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳頭腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL51);TR1細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝臓腫細胞系(Hep G2)である。
【0177】
宿主細胞は、抗ABCB5抗体の産生のために前記した発現またはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適した修飾された慣用的な栄養培地中で培養される。
【0178】
本発明の抗ABCB5抗体を産生するのに用いる宿主細胞は、種々の培地中で培養することができる。HamのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM),Sigma)のような商業的に入手可能な培地は宿主細胞を培養するのに適している。さらに、Hamら、Meth.Enz.58:44(1979),Barnesら、Anal.Biochem.102:255(1980),米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;第4,560,655号;もしくは第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国再発行特許第30,985号に記載された培地のいずれも、宿主細胞のための培養基として用いることができる。これらの培地のいずれも、必要に応じて、ホルモンおよび/または(インスリン、トランスフェリンまたは表皮成長因子のような)他の成長因子、(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩のような)塩、(HEPESのような)緩衝液、(アデノシンおよびチミジンのような)ヌクレオチド、(GENTAMYCIN.TM.薬物のような)抗生物質、(マイクロモル範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物と定義される)微量元素、およびグルコースまたは同等なエネルギー源で補足することができる。いずれの他の必要な補足物も、当業者に知られているであろう適切な濃度で含めることもできる。温度、pH等のような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞と共に従前用いられており、当業者に明らかであろう。
【0179】
組換え技術を用いる場合、抗体は、ペリプラズム空間において細胞内で産生することができ、または直接的に培地に分泌することができる。抗体が細胞内で産生される場合、第一の工程として、宿主細胞または溶解された断片のいずれかの粒状破片を、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去する。細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析およびアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドが結合するマトリックスは最も頻繁にはアガロースであるが、他のマトリックスを利用できる。制御された細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンのような機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成できるよりも、より速い流速およびより短い処理時間を可能とする。いずれの予備的精製工程に続いて、混合物を、約2.5〜4.5の間のpHにて溶出緩衝液を用いる低いpH疎水性相互作用クロマトグラフィーに付すことができ、好ましくは、低い塩濃度(例えば、約0〜0.25M塩)にて行うことができる。
【0180】
核酸との関係で本明細書中で用いられるように、用語「単離された」は:(i)例えば、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)によって増幅された;(ii)クローニングによって組換えにより産生された;(iii)切断およびゲル分離により精製された;または(iv)例えば、化学合成によって合成された、を意味する。単離された核酸は、当該分野でよく知られた組換えDNA技術によって容易に操作可能なものである。かくして、5’および3’制限部位が知られている、またはそれについてポリメラーゼ鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているベクターに含有されたヌクレオチド配列は単離されていると考えられるが、その天然宿主において天然状態で存在する核酸配列はそう考えられてはいない。単離された核酸は実質的に精製されていてもよいが、その必要はない。例えば、クローニングまたは発現ベクター内で単離されている核酸は、それが存在する細胞中に僅かなパーセンテージのみの物質を含むことができる点で純粋ではない。そのような核酸は単離されているが、該用語が本明細書中で用いられているように、それは当業者に知られた標準的技術によって容易に操作できるからである。
【0181】
本明細書中で用いるように、コーディング配列および調節配列は、調節配列の影響または制御下にコーディング配列の発現または転写を置くように共有結合されている場合に、「操作可能に連結されている」といわれる。コーディング配列が機能的蛋白質に翻訳されるのが望ましい場合、5’調節配列中のプロモーターの誘導の結果、コーディング配列の転写がもたらされ、2つのDNA配列の間の結合の性質が(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさず、(2)コーディング配列の転写を指令するプロモーター領域の能力に干渉せず、または(3)蛋白質に翻訳されるべき対応するRNA転写体の能力に干渉しないならば、2つのDNA配列は操作可能に連結されているといわれる。かくして、プロモーター領域は、プロモーター領域が、得られた転写体が所望の蛋白質またはポリペプチドに翻訳されるようにそのDNA配列の転写を有効に行うことができる場合、コーディング配列に操作可能に連結されているであろう。
【0182】
遺伝子発現に必要な調節配列の正確な性質は種または細胞タイプの間で変化し得るが、一般には、必要であれば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等のような各々が転写および翻訳の開始に関連する5’非転写、および5’非翻訳配列を含むべきである。特に、そのような5’非転写調節配列は、操作可能に連結された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列は、所望により、エンハンサー配列または上流アクチベーター配列も含むことができる。
【0183】
本発明の組成物および方法は、癌および前癌病変のための他の手法と組合せた利用によって増強させることができる。いくつかの場合において、処置手法は、限定されるものではないが、化学治療剤および放射線を含めた抗癌剤のようなもう1つの治療剤の投与を含む。化学治療剤はメトトレキセート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン、タキソール、パクリタキセル、非糖含有クロロエチルニトロソ尿素、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラジリン、メグラミンGLA、バルルビシン、カルムスタインおよびポリフェルポサン、MMI270、BAY12−9566、RASファメシルトランスフェラーゼ阻害剤(RAS famesyl transferase inhibitor)、ファメシルトランスフェラーゼ阻害剤、MMP、ダカルバジン、LY294002、PX866、MTA/LY231514、LY264618/ロメテキソール、グラモレック、CI−994、TNP−470、ヒカムチン/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、ノバントロン/ミトロキンサントロン、メタレット/スラミン、バチマスタット、E7070、BCH−4556、CS−682、9−AC、AG3340、AG3433、インセル/VX−710、VX−853、ZD0101、ISI641、ODN698、TA2516/マルミスタット、BB2516/マルミスタット、CDP845、D2163、PD183805、DX8951f、レモナールDP2202、FK317、ピシバニル/OK−432、AD32/バルルビシン、メタストロン/ストロンチウム誘導体、テモダール/テモゾロマイド、エバセット/リポソーマルドキソルビシン、ユータキサン/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、キセロード/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、シクロパックス/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU−077/シスプラチン、HMR1275/フラボピリドール、CP−358(774)/EGFR、CP−609(754)/RAS癌遺伝子阻害剤、BMS−182751/経口白金、UFT(テガフール/ウラシル)、エルガミソール(Ergamisol)/レバミゾール、エニルウラシル/776C85/5FU増強剤、カンプト/レバミソール、カンプトサール/イリノテカン、ツモデックス/ラリトレキセド、ロイスタチン/クラドリビン、パキセクス(Paxex)/パクリタキセル、ドキシル/リポソーマルドキソルビシン、カエリクス(Caelyx)/リポソーマルドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファルマルビシン/エピルビシン、デポサイト(DepoCyt)、ZD1839、LU79533/ビス−ナフタルイミド、LU103793/ドラスタイン、カエチクス(Caetyx)/リポソーマルドキソルビシン、ゲムザール/ゲムシタビン、ZD0473/アノルメド、YM116、ロジン種(lodine seeds)、CDK4およびCDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシフォサミド、アイフェス/メスネックス/イフォサミド、ブモン/テニポシド、パラプラチン/カルボプラチン、プランチノール/シスプラチン、ベペシド/エトポシド、ZD9331、タキソテール/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサンアナログ、ニトロソ尿素、メルフェランおよびシクロホスファミドのようなアルキル化剤、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロロムブシル、シタラビンHCl、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、エストラムスチンホスフェートナトリウム、エトポシド(VP16−213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5−FU)、フルタミド、ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド)、イフォスファミド、インターフェロンアルファ2a、アルファ2b、酢酸ロイプロリド(LHRH−放出因子アナログ)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン)、ミトキサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、アムサクリン(m−AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(メチル−GAG;メチルグリオキサールビス−グアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2’デオキシコフォルマイシン)、セムスチン(メチル−CCNU)、テニポシド(VM−26)および硫酸ビンデシンよりなる群から選択することができるが、それに限定されるものではない。
【0184】
本発明の方法は、外科的処置および放射線のような癌を治療するための療法と共に行うことができる。本発明の方法は、RNA干渉(RNAi)として知られたプロセスを通じて癌特異的mRNAの配列特異的分解を指令する単離された短いRNAである治療剤と組合せて行うこともできる。いくつかの実施形態において、癌特異的mRNAはABCB5である。該プロセスは、哺乳動物および他の脊椎動物の胚を含めた広く種々の生物で起こることが知られている。dsRNAは長さが21〜23ヌクレオチド(nt)のRNAセグメントまで処理され、さらに、それらはより長いdsRNAの非存在下においてRNA干渉を媒介することが示されている。かくして、これらの21〜23nt断片はRNA分解の配列特異的メディエーターであって、本明細書中においては、siRNAまたはRNAiといわれる。本発明の方法は、本明細書中で検討された治療的適用に有用な哺乳動物細胞における分解のための癌特異的mRNAの標的化を可能とするための、これらの断片(または同一もしくは同様な性質の組換えにより産生され、または化学的に合成されたオリゴヌクレオチド)の使用を含む。
【0185】
RNAiを媒介するRNAの設計の方法、およびRNAの細胞および動物へのトランスフェクションの方法は当該分野でよく知られており、RNAi分子は商業的に容易に入手可能である(Verma N.K.ら、J.Clin.Pharm.Ther.,28(5):395−404(2004),Mello C.C.ら、Nature,431(7006)338−42(2004),Dykxhoorn D.M.ら、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.4(6):457−67(2003)Proligo(Hamburg,Germany),Dharmacon Research(Lafayette,CO,USA),Pierce Chemical(part of Perbio Science,Rockford,IL,USA),Glen Research(Sterling,VA,USA),ChemGenes(Ashland,MA,USA)、およびCruachem(Glasgow,UK))。RNAは、好ましくは、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホルアミダイドおよび慣用的なDNA/RNAシンセサイザーを用いて化学的に合成される。最も便宜には、siRNAは本明細書中にリストされた商業的なRNAオリゴ合成供給業者から得られる。一般に、RNAは、合成するのが余りにも困難ではなく、RNAiに適した量で容易に提供される。典型的な0.2μモルスケールのRNA合成は、約1ミリグラムのRNAを提供し、これは、24ウェル組織培養プレート様式を用いる1000のトランスフェクション実験に十分である。
【0186】
癌特異的cDNA特異的siRNAは、好ましくは、50〜100bpの開始コドンおよび終止コドン内にはない配列を選択することによって設計され、イントロン領域を回避し、AAAA、CCCCのような4以上の塩基のストレッチを回避し、GC含有量<30%または>60%を持つ領域を回避し、反復および低い複雑性の配列を回避し、それは単一ヌクレオチド多形部位を回避する。標的配列はほぼ50%のGC含有量を有することができる。siRNA標的化配列は、BLAST相同性検索を用いてさらに評価して、他の遺伝子または配列に対する標的の効果を回避することができる。陰性対照は、標的化siRNA配列を混ぜることによって設計される。対照RNAは、好ましくは、siRNAと同一の長さおよびヌクレオチド組成を有するが、少なくとも4〜5塩基はsiRNAに対してミスマッチである。本発明のRNA分子は3’ヒドロキシル基を含むことができる。RNA分子は、一本鎖または二本鎖とすることができ;そのような分子は平滑末端とすることができるか、または長さが約1〜約6ヌクレオチドの突出末端(例えば、5’、3’)(例えば、ピリミジンヌクレオチド、プリンヌクレオチド)を含むことができる。本発明のRNAの安定性をさらに高めるために、3’突出を分解に対して安定化することができる。RNAは、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドのようなプリンヌクレオチドを含めることによって安定化させることができる。あるいは、修飾されたアナログによるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、ウリジン2ヌクレオチド3’突出の2’デオキシチミジンによる置換は許容され、RNAiの効率に影響しない。2’ヒドロキシルの非存在は、組織培養基における突出のヌクレアーゼ耐性を有意に高める。
【0187】
本発明の方法に用いるRNA分子は、当業者に知られた多数の技術を用いて得ることができる。例えば、RNAは、当該分野で公知の方法を用いて化学的に合成し、または組換えにより産生することができる。そのような方法は、米国公開特許出願第2002−0086356A1号および第2003−0206884A1に記載され、ここに引用してその全体を援用する。
【0188】
本明細書中に記載された方法を用いて、癌特異的mRNA分解の配列特異的メディエーターとして、癌細胞の機能に寄与する蛋白質を阻害するのに有用であるRNA分子を同定、または得る。ABCB5の発現は、例えば、蛋白質が翻訳され、かくして、インビボにてその機能を妨げるために、ヒトにおいて阻害することができる。
【0189】
いずれのRNAも本発明の方法で用いることができ、但し、それは癌特異的遺伝子に対して十分な相同性を有して、RNAiを媒介するものとする。本発明で用いるためのRNAは、全癌特異的遺伝子またはその一部に対応することができる。用いることができるRNAの長さに上限はない。例えば、RNAは、約21塩基対(bp)の遺伝子から全長遺伝子以上の範囲とすることができる。1つの実施形態において、本発明の方法に用いるRNAは長さが約1000bpである。もう1つの実施形態において、RNAは長さが約500bpである。なおもう1つの実施形態において、RNAは長さが約22bpである。ある実施形態において、本発明のRNAの好ましい長さは21〜23ヌクレオチドである。ABCB5の配列は知られている。例えば、(7pP糖蛋白質としてのABCB5に言及する)米国特許第6846883号を参照されたい。
【0190】
本発明のABCB5結合分子は、癌を治療するのに有効な量で被験体に投与される。「癌を治療するのに有効な量」とは、望まれる生物学的効果を認識するのに必要な量または十分な量である。例えば、本発明の化合物の有効量は、(i)癌細胞を殺傷する;(ii)癌のさらなる成長を阻害する、すなわち、その発達を阻止し、または遅らせる;および/または(iii)癌細胞を抗癌剤もしくは治療剤に対して感受性とするのに必要な量であり得る。本発明のいくつかの態様によると、有効量は、本発明の化合物の単独、または癌医薬との組合せにおける量であり、組合せ、または同時投与され、もしくは単独で投与された場合に、癌の予防または治療のいずれかにおいて癌に対する治療的応答を生じる結果となる。生物学的効果は癌に由来する兆候の緩和および/または絶対的排除であってよい。もう1つの実施形態において、生物学的効果は、例えば、腫瘍の非存在、または癌細胞を含まないバイオプシーもしくは血液スミアーによって証明されるように、癌の完全な排除である。
【0191】
癌の治療における、または癌を発生する危険性の低下における本発明の化合物の有効量は、用いる具体的な化合物、化合物の送達の様式、およびそれを単独または組合せて用いるか否かに依存して変化し得る。いずれかの特定の適用のための有効量は、治療すべき癌、投与されるべき特定の化合物、被験体のサイズ、疾患または状態の重症度のような因子に依存して変化し得る。当業者であれば、過度な実験の必要なくして、本発明の特定の分子の有効量を経験的に決定することができる。本明細書中に提供される教示と組合せて、種々の活性な化合物、ならびに能力、相対的生物学的利用性、患者の体重、有害な副作用の重篤度、および好ましい投与の様式のような重点(weighning)因子の中から選択することによって、有効な予防的または治療的処置養生法を計画することができ、これは実質的な毒性を引き起こさず、依然として、特定の被験体を治療するのに完全に有効である。
【0192】
本明細書中に記載された化合物の被験体における用量は、典型的には、約0.1μg〜10,000mg、より典型的には、約1μg〜8000mg/日、最も典型的には約10μg〜100μgの範囲である。被験体の体重に換算して述べると、典型的な用量は約0.1μg〜20mg/kg/日、より典型的には約1〜10mg/kg/日、最も典型的には約1〜5mg/kg/日の範囲である。絶対的な量は、同時処置、用量の数、ならびに年齢、身体状態、サイズおよび体重を含めた個々の患者のパラメーターを含めた種々の因子に依存するであろう。これらは当業者によく知られた因子であり、常套的実験の範囲内で取り込むことができる。一般には、最大用量を用いることができ、すなわち、健全な医学的判断に従う最高の安全な用量を用いるのが好ましい。
【0193】
本発明の分子の複数用量も考えられる。いくつかの例において、本発明の分子を癌医薬と共に投与する場合、分子または癌医薬いずれかの治療用量以下、または双方の治療用量以下を、癌を有するか、または癌を発生する危険性がある被験体の治療に用いる。薬物の2つのクラスを一緒に用いる場合、癌医薬を治療用量以下で投与して、望ましい治療結果を生じさせることができる。「治療用量以下」とは、本明細書中で用いるように、他の薬剤の非存在下で投与された場合、被験体において治療的結果を生じさせるであろう用量未満である用量をいう。かくして、癌医薬の治療用量以下は、本発明の分子の投与の非存在下において被験体において所望の治療的結果を生じないものである。癌医薬の治療用量は、癌の治療のための医薬の分野においてよく知られている。これらの用量はRemington’s Pharmaceutical Sciencies,18th ed.,1990;ならびに癌の治療のためのガイドラインとして医学専門が依拠する多くの他の医学文献のような文献に広く記載されてきた。抗体の治療用量も当該分野において記載されてきた。
【0194】
種々の投与経路を利用できる。選択された特定の様式は、もちろん、選択された特定の抗ABCB5抗体、治療すべき特定の状態、および治療的効果に必要な用量に依存するであろう。本発明の方法は、一般的に言えば、医学的に許容されるいずれの投与の様式を用いて実行することができ、臨床的に許容できない有害効果を引き起こすことなく有効レベルの保護を生じさせるいずれの様式を意味する。用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、および胸骨内注射、または注入技術を含む。他の経路は、限定されるものではないが経口、鼻、皮膚、舌下および局所を含む。
【0195】
本発明の製剤は、常套的には、医薬上許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合する担体、補助剤および、所望により、他の治療的成分を含有することができる医薬上許容される溶液にて投与される。
【0196】
本発明の化合物は、医薬を投与するためのいずれかの通常の経路によって投与することができる。治療すべき癌のタイプに応じて、本発明の化合物を吸入し、摂取することができ、または全身経路によって投与することができる。全身経路には経口および非経口を含む。特に肺癌患者において、肺への直接的送達のため、吸入される医薬がいくつかの実施形態においては好ましい。計量用量インハーラーのいくつかのタイプが、正規には、吸入による投与のために用いられる。これらのタイプのデバイスには、計量用量インハーラー(MDI)、呼吸作動MDI、乾燥粉末インハーラー(DPI)、MDIと組合せたスペーサー/保持チャンバー、およびネブライザーを含む。好ましい投与の経路には、限定されるものではないが、経口、非経口、筋肉内、鼻腔内、気管内、包膜内、静脈内、吸入、眼、膣および直腸を含む。療法に用いるために、有効量の本発明の化合物を、核酸を罹患した器官または組織に送達するいずれの様式によって被験体に投与することができる。本発明の医薬組成物を「投与すること」は、当業者に知られたいずれの手段によって達成することができる。
【0197】
本発明の方法によると、ペプチドは医薬組成物に組み込んでもよい。一般に、医薬組成物は本発明のペプチドおよび医薬上許容される担体を含む。ペプチドのための医薬上許容される担体、モノクローナル抗体、および抗体断片は当業者によく知られている。本明細書中で用いるように、医薬上許容される担体は、有効成分の生物学的活性、例えば、ABCB5に結合するペプチドの能力の有効性に干渉しない非毒性物質を意味する。
【0198】
医薬上許容される担体には、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定化剤、可溶化剤、および当該分野でよく知られた他の物質を含む。ペプチド用の例示的な医薬上許容される担体は、特に、米国特許第5,211,657号に記載されている。そのような製剤は、常套的には、塩、緩衝剤、保存剤、適合する担体、および、所望により、他の治療剤を含有してもよい。医薬において用いる場合、塩は医薬上許容されるべきであるが、非医薬上許容される塩は、便宜には、その医薬上許容される塩を調製するのに用いることができ、本発明の範囲から排除されない。そのような薬理学的および医薬上許容される塩には、限定されるものではないが、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サルチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等から調製されるものを含む。医薬上許容される塩はまた、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩として調製することができる。
【0199】
本発明のペプチドは、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、吸入剤および注射、ならびに経口、非経口、または外科的投与のための通常の方法のような固体、半固体、液体または気体形態の製剤に製剤化することができる。本発明は、インプラントによるような、局所投与のために製剤化される医薬組成物も含む。
【0200】
経口投与に適した組成物は、カプセル、錠剤、ロゼンジのような、各々が所定量の活性剤を含有する、区別される単位として提供してもよい。他の組成物は、シロップ、エリキシルまたはエマルジョンのような水性液体または非水性液体中の懸濁液を含む。
【0201】
(ペプチドおよび非ペプチド変異体を含めた)本明細書中に記載された化合物を治療的に用いる場合、ある実施形態においては、望ましい投与様式は肺エアロゾルによるものであってよい。化合物を含有するエアロゾル送達系を調製するための技術は当業者によく知られている。一般に、そのような系はペプチドの生物学的特性を有意に損なわない化合物を利用すべきである(例えば、ここに引用して援用する、Sciarra and Cutie,“Aerosols,”in Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,1990,pp 1694−1712参照)。当業者であれば、過度な実験に頼ることなくエアロゾルを製造するための種々のパラメーターおよび条件を容易に決定することができる。
【0202】
本発明のペプチドは組織に直接的に投与することができる。好ましくは、組織は、癌幹細胞が見出されるものである。あるいは、組織は癌が生じるようであるものである。直接的組織投与は、直接的注射によって達成することができる。ペプチドは1回投与してもよく、またはそれは複数回で投与してもよい。複数回投与する場合、ペプチドを異なる経路を介して投与してもよい。例えば、最初の(または最初の数回の)投与は冒された組織へ直接的になしてもよく、他方、後者の投与は全身投与であってよい。
【0203】
経口投与のためには、化合物は、活性化合物を当該分野でよく知られた医薬上許容される担体と組合せることによって容易に製剤化することができる。そのような担体によって、本発明の化合物は、治療すべき被験体による経口接取のため、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として製剤化することができる。経口的使用のための医薬製剤は、所望により、得られた混合物を粉砕し、所望であれば適当な補助剤を加えた後に顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって固体賦形剤として得ることができる。適当な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含めた糖;例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物のような充填剤である。所望であれば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような崩壊剤を加えてもよい。所望により、経口製剤は、生理食塩水もしくは内部酸状態を中和するための緩衝液に製剤化してもよく、またはいずれの担体もなくして投与してもよい。
【0204】
糖衣錠コアには適当なコーティングが施される。この目的では、所望により、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適当な有機溶媒または溶媒混合液を含有し得る濃縮された糖溶液を用いてもよい。染料または顔料を、同定または活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0205】
経口的に用いることができる医薬製剤は、ゼラチンで作製された押し込み型カプセル、ならびにゼラチン、およびグリセロールまたはソルビトールのような可塑剤で作製された密封カプセルを含む。押し込み型カプセルは、ラクトースのような充填剤、澱粉のような結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような活滑剤および、所望により、安定化剤と混合された活性成分を含有することができる。ソフトカプセルにおいて、活性な化合物を脂肪油、流動パラフィン、もしくは液体ポリエチレングリコールのような適当な液体に溶解させ、または懸濁させてもよい。さらに、安定化剤を加えてもよい。経口投与用に製剤化されたマイクロスフィアを用いてもよい。そのようなマイクロスフィアは、当該分野でよく規定されてきた。経口投与用の全ての製剤はそのような製剤に適した用量とすべきである。
【0206】
口腔投与のために、組成物は慣用的な方法で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態とすることができる。
【0207】
吸入による投与のためには、本発明に従って用いる化合物は、適当なプロペラント、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適当なガスを用いて、圧縮されたパックまたはネブライザーからエアロゾルスプレイ供給の形態で便宜は送達することができる。圧縮されたエアロゾルの場合には、用量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。例えば、インハーラーまたはインスフレーターに用いられるゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物、およびラクトースまたは澱粉のような適当な粉末基剤の粉末ミックスを含有するように製剤化してもよい。エアロゾル送達系を調製するための技術は当業者によく知られている。一般に、そのような系は、活性剤の生物学的特性を有意に損なわない成分を利用すべきである(例えば、ここに引用して援用する、Sciarra and Cutie,“Aerosols,”in Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,1990,pp 1694−1712参照)。当業者であれば、過度な実験に頼ることなくエアロゾルを製造するための種々のパラメーターおよび条件を容易に決定することができる。
【0208】
化合物は、それを全身送達するのが望ましい場合、注射による、例えば、ボーラス注射または連続的注入による非経口投与用に製剤化してもよい。注射用製剤は、単位用量形態にて、例えば、アンプルまたは多用量容器にて、保存剤を加えて提供してもよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態となってもよく、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような製剤を含有してもよい。
【0209】
非経口投与用の製剤は、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンを含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性担体には水、アルコール/水性溶液、エマルジョンまたは生理食塩水および緩衝化媒体を含む懸濁液を含む。非経口ビヒクルには塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳化リンゲル、または固定油を含む。静脈内ビヒクルには流体および栄養補給剤、(リンゲルデキストロースに基づくもののような)電解質補充物等を含む。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガス等のような、保存剤および他の添加剤を存在させることもできる。より低い用量は、静脈内投与のような投与の他の形態に由来する。被験体における応答が適用した初期用量において不十分な場合には、より高い用量(または種々のより局所化された送達経路によって有効的により高い用量)を、患者の許容値が許す程度まで使用することができる。一日当たりの複数回用量は、化合物の適当な全身レベルを達成すると考えられる。
【0210】
なお他の実施形態において、好ましいビヒクルは、哺乳動物受容体への移植に適している生体適合性微粒子またはインプラントである。本発明に従って有用である例示的な生分解性インプラントは、PCT国際出願番号PCT/US/03307(1994年3月15日に出願された米国特許出願第213,668号に対する優先権を主張する「Polymeric Gene Delivery System」と題された公開番号WO95/24929)に記載されている。PCT/US/03307は、生物学的高分子を含有するための生体適合性の、好ましくは生分解性ポリマーマトリックスを記載する。ポリマーマトリックスを用いて、被験体において薬剤の持続放出を達成することができる。本発明の1つの態様に従うと、本明細書中に記載された薬剤は、PCT/US/03307に開示された生体適合性の、好ましくは生分解性ポリマーマトリックス内にカプセル化、または分散させることができる。ポリマーマトリックスは、好ましくは、マイクロスフィア(ここに、該薬剤は固体ポリマーマトリックス全体に分散している)のような微粒子、またはマイクロカプセル(ここに、該薬剤はポリマーシェルのコアに貯蔵されている)の形態である。該薬剤を含有させるためのポリマーマトリックスの他の形態にはフィルム、コーティング、ゲル、インプラントおよびステントを含む。ポリマーマトリックスデバイスのサイズおよび組成は、マトリックスデバイスが移植される組織において好都合な放出キネティクスをもたらすように選択される。用いるべき送達方法、典型的には、組織への注射、またはエアロゾルによる懸濁液の鼻および/もしくは肺領域への投与方法に従って、ポリマーマトリックスのデバイスのサイズがさらに選択される。ポリマーマトリックスの組成は、双方の好都合な分解速度を有するように、また、生体接着性である物質から形成され、デバイスが血管、肺または他の表面に投与される場合に移動の有効性を増加させるように選択することができる。マトリックスの組成は分解しないように、しかし、長時間にわたって拡散によって放出するように選択することもできる。
【0211】
非生分解性および生分解性双方のポリマーマトリックスを用いて、本発明の薬剤を被験体に送達することができる。生分解性マトリックスが好ましい。そのようなポリマーは天然または合成ポリマーであってよい。合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、一般には、数時間〜1年以上のオーダーで、放出が望まれる時間に基づいて選択される。典型的には、数時間ならびに3〜12か月の間の範囲の期間にわたる放出が最も望ましい。ポリマーは、所望により、水中にその重量の約90%まで吸収することができるヒドロゲルの形態であり、さらに、所望により、多価イオンまたは他のポリマーで架橋されている。
【0212】
一般に、本発明の薬剤は、拡散によって、またはより好ましくは、ポリマーマトリックスの分解によって、生分解性インプラントを用いて送達することができる。生分解性送達系を形成するのに用いることができる例示的な合成ポリマーにはポリアミド、ポリカルボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローススルフェートナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソブロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびポリビニルピロリドンを含む。
【0213】
非生分解性ポリマーの例にはエチレン酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、そのコポリマーおよび混合物を含む。
【0214】
生分解性ポリマーの例には乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリアンヒドリド、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、およびポリ(ラクチド−コカプロラクトン)のような合成ポリマー、アルギネート、ならびにデキストランおよびセルロースを含めた他の多糖類、コラーゲン、その化学的誘導体(化学基、例えば、アルキル、アルキレンの置換、付加、ヒドロキシル化、酸化、および当業者によって常套的になされる他の修飾)、アルブミンおよび他の親水性蛋白質、ゼインおよび他のプロラミンおよび疎水性蛋白質、そのコポリマーおよび混合物のような天然ポリマーを含む。一般に、これらの物質は酵素加水分解またはインビボでの水への暴露によって、表面またはバルク腐食によって分解する。
【0215】
特に注目する生体接着性ポリマーには、ここに引用してその教示を援用する、H.S.Sawhney,C.P.Pathak and J.A.Hubell in Macromolecules,1993,26,581−587によって記載された生分解性ヒドロゲル、ならびにポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリアンヒドリド、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソブロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)を含む。
【0216】
他の送達系には、時間放出、遅延放出または持続放出送達系を含むことができる。そのような系はペプチドの反復投与を回復することができ、被験体および医師に対する便宜を増大させる。放出送達系の多くのタイプは入手可能であり、当業者に知られている。それらにはポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸およびポリアンヒドリドを含む。薬物を含有する前記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系には、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸のようなステロール、またはモノ、ジおよびトリグリセリドのような中性脂肪を含む脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング;慣用的な結合剤および賦形剤を用いる圧縮錠剤;部分的に融合されたインプラント等である非ポリマー系も含む。具体的な例には、限定されるものではないが、(a)米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、および第5,736,152号に記載されたもののような、血小板減少剤がマトリックス内の形態で含有される腐食系、ならびに(b)米国特許第3,854,480号、第5,133,394号および第5,407,686号に記載されたようなポリマーからの制御された速度で有効成分が浸透する拡散系を含む。さらに、ポンプベースハードウエア送達系を用いることができ、そのうちいくつかは移植に適合している。
【0217】
長期持続放出インプラントの使用は、再発性癌を発生する危険性がある被験体の予防的処置に特に適しているであろう。長期放出は、本明細書中で用いるように、インプラントが少なくとも30日、好ましくは60日の間、治療レベルの有効成分を送達するように構築され、配置されることを意味する。長期持続放出インプラントは当業者によく知られており、前記したいくつかの放出系を含む。
【0218】
抗体の治療製剤は、凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で、所望の程度の純度を有する抗体を、任意の医薬上許容される担体、賦形剤または安定化剤(Remington’s
Pharmaceutical Sciences 16th edition Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって貯蔵のために調製することができる。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、使用する用量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールのような)保存剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのような蛋白質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンのようなアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含めた単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールのような糖類;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn蛋白質錯体);および/またはTWEEN
TM、PLURONICS
TMまたはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤を含む。
【0219】
以下の実施例は、本発明の実施の具体的な例を示すために提供され、本発明の範囲を限定する意図はない。当業者に明らかなように、本発明は、種々の組成物および方法においてその適用を見出す。
【実施例】
【0220】
材料および方法:
メラノーマ細胞および培養方法。軟寒天中でクローン化された単一腫瘍細胞に由来するG3361ヒト悪性メラノーマ細胞系は、Emil Frei第三世博士(Dana−Farber Cancer Institute,Boston,MA)から贈られ、A375細胞系はAmerican Type Culture Collection(ATCC)(Manassas,VA)から商業的に入手可能である。全ての細胞系を、従前に記載されているように、加湿インキュベーター中で37℃および5%CO
2にて、10%胎児ウシ血清、6ミリモル/L HEPES、2ミリモル/l L−グルタミン、および100IU/mlペニシリン/ストレプトマイシンを補足したRPMI 1640培地中で培養した。G3361/DsRed2およびG3361/EYFP細胞系は、従前に記載されているように、ネオマイシン耐性カセット(BD Biosciences,Palo Alto,CA)およびリポフェクタミン2000試薬(Invitrogen)も含有するpDsRed2−NucまたはpEYFP−Nuc哺乳動物発現ベクターを用い、サルウイルス40ラージT抗原核保持シグナル(Kalderon,D.,Roberts,B.L.,Richardson,W.D.&Smith,A.E.A short amino acid sequence able to specify nuclear location.Cell 39,499−509(1984))と組合せた、Discosoma sp.赤色蛍光蛋白質(DsRed2)またはAequorea Victoria緑色蛍光蛋白質(GFP)の増強された黄色−緑色変異体(EYFP)いずれかでのG3361メラノーマ細胞の安定なトランスフェクションによって生じさせた。クローンG3361/DsRedおよびG3361/EYFP培養物は、限界希釈法によって安定にトランスフェクトされた培養物から生じさせた。新鮮な臨床メラノーマ細胞(n=6患者)は、University of Wuerzburg
Medical SchoolまたはWistar Institute,Philadelphia,PAのIRBによって認可されたヒト対象リサーチプロトコルに従って、外科的検体由来のものであった。
【0221】
抗体。特異的なIgG1κ抗ABCB5 mAb 3C2−1D12を、本明細書中において、発現実験に用いた。FITCコンジュゲート型3C2−1D12 mAbを用いて、分類されたABCB5
+およびABCB5
−メラノーマサブセットの純度をアッセイした。未コンジュゲート型またはFITCコンジュゲート型MOPC−31Cマウスイソタイプ対照mAb、FITCコンジュゲート型ヤギ抗マウスIgG二次Ab、フィコエリスリン(PE)コンジュゲート型抗ヒトCD20、抗ヒトCD31およびイソタイプ対照mAbはPharMingen,San Diego,CAから購入した。アロフィコシアニン(ABC)コンジュゲート型およびPEコンジュゲート型二次mAbはeBioscience,San diego,CAから購入した。未コンジュゲート型抗ヒトTIE−1、抗ヒトBMPR1a、PEコンジュゲート型抗ヒトVE−カドヘリンおよび抗ヒトネスチンmAbはR&D Systems,Minneapolis,MNから購入した。以下の抗体をABCB5、TIE−1およびVE−カドヘリン免疫組織化学および免疫蛍光染色のために用いた:マウス抗ABCB5 mAb(Frank,N.Y.ら、ABCB5−mediated doxorubicin transport and chemoresistance in human malignant melanoma.Cancer Res 65,4320−33(2005);Frank,N.Y.ら、Regulation of progenitor cell fusion
by ABCB5 P−glycoprotein,a novel human ATP−binding cassette transporter.J Biol Chem 278,47156−65(2003))、HRPコンジュゲーデッドウマ抗マウスIgG二次Ab(Vector Laboratories,Burlingame,CA)、FITCコンジュゲート型ウサギ抗マウスIgG二次Ab(ZYMED Laboratories, San Franscisco,CA)、(Cell Signaling Technology,Danvers,MAによって親切にも提供された)未コンジュゲート型ウサギ抗ヒトVE−カドヘリンAb、マウス対照IgG Ab(DAKO,Carpinteria,CA)、未コンジュゲート型ウサギ抗ヒトTIE−1 mAb(Santa Cruz Biotechnologies,Santa Cruz,CA)、FITCコンジュゲート型ロバ抗マウスIgG二次Ab、テキサスレッドコンジュゲート型ロバ抗ウサギIgG二次Ab、Cy3コンジュゲート型ロバ抗ウサギIgG二次Ab、およびウサギ対照IgG Ab(全て、Jacson ImmunoResarch,West Grove,PA)。
【0222】
組織病理学および免疫組織化学。5ミクロンの厚みのメラノーマ低温切開片を−20℃アセトン中で5分間固定化した。風乾された切片を、10μg/ml ABCB5 mAbと共に4℃にて一晩インキュベートした;10μg/mlマウスIgGを陰性対照として用いた。切片をPBS×3で5分間洗浄し、ABCB5染色のために1:200ペルオキシダーゼコンジュゲート型ウマ抗マウスIgG Abと共にインキュベートした。ABCB5/VE−カドヘリンまたはABCB5/TIE−1蛍光二重標識のために、5μmメラノーマ切片を−20℃のアセトン中で5分間固定した。風乾された切片を10μg/ml ABCB5 mAbおよび2.5μg/ml VE−カドヘリンまたはTE−1 Abと共に4℃にて一晩インキュベートし;10μg/mlマウスIgGおよび2.5μg/mlウサギIgGを陰性対照として用いた。切片を、0.05%tween20を含有するPBSで3回、5分間洗浄し、テキサスレッドコンジュゲート型またはCy3コンジュゲート型ロバ抗ウサギIgG AbおよびFITCコンジュゲート型ウサギ抗マウスIgG Abの1:150希釈と共に室温で30分間インキュベートした。引き続いての洗浄の後に、切片にVECTACHIELDマウンティング培地(Vector Laboratories)を設置し、カバースリップを載せた。免疫蛍光反応性を、Cytovisionシステム(Applied Imaging,San Jose,CA)に連結されたOlympus BX51/52システム顕微鏡で観察した。
【0223】
組織マイクロアレイの設計および分析。メラノーマ細胞腫瘍進行TMAは、3つの皮膚芽胞(SPORES)(Harvard,M.D.Anderson,University of Pennsylvenia)の共同努力の産物である。このアレイは4つの主な診断腫瘍タイプ:良性母斑、原発性皮膚メラノーマ、リンパ節転移および内臓転移を表わす腫瘍組織の480×0.6mmコアを含有する。症例は、3つの参加した施設の病理学サービスから収集した。品質制御目的では、二連コアを各別々の領域で選択する。母斑および原発性メラノーマはサンプリングされた組織ブロック(2または6コア)の1つの領域または3つの領域いずれかを有し、他方、転移腫瘍は各ブロックからサンプリングされた1つの領域を有した。従って480コアは、240の区別される組織学的領域からの2つの隣接するコアを表わす。このアレイは35の母斑からの130コア、60の原発性メラノーマからの200コアおよび75の転移病変からの150コアを含む。操作的には、薄い母斑および薄いメラノーマは表層/乳頭真皮のみを含み、他方、厚い母斑および厚いメラノーマは、乳頭および深い(網状)真皮双方を含むように成長した。このアレイはMark Rubin博士の研究所(Brigham and Women’s Hospital Department of Pathology and Dana Farber Cancer Institute,Boston)で構築した。組織アレイスライドの組織学的切片を58℃にて20分間ベーキングし、次いで、以下のように処理した:キシレン×2(1時間、10分間)、2分間の100%エタノール×2、2分間の95%エタノール、および2分間のdH
2O×3。抗原検索は、圧力器中で沸騰させつつ、10ミリモルのクエン酸緩衝液、pH6.0中で10分間行い、次いで、室温まで冷却した。PBS×2で5分間洗浄した後、組織をPBS中の10%ウマ血清および1%BSAで室温にて1時間ブロックし、次いで、5μg/ml ABCB5 mAbと共に4℃にて一晩インキュベートした。次いで、組織をPBS0.05%tween20×3で5分間洗浄し、次いで、3%H
2O
2/PBSで15分間処理した。PBS中ですすいだ後、切片を1:200ビオチニル化ウマ抗マウスIgG Abと共に室温にて30分間インキュベートし、PBS−tween×3中で5分間すすぎ、アビジン−ビオチン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体(Vector Labratories)と共に室温で30分間インキュベートした。NovaRed基質(Vector Laboratories)を用いて免疫反応性を検出した。Chromavision自動細胞イメージングシステム(ACIS)を用いて、HTMA84組織マイクロアレイ上でABCB5およびmIgGIRの免疫染色強度を定量した。対照スライド強度値(バックグラウンド+固有のメラニン化)を実験スライドから差し引き、各コアについての強度値の差を取って、真実の染色とした。このグラフ(
図1参照)は、95%信頼区間でもって、各病理学診断について強度の差を示す。関連群の間のP値を、独立/標本t検定を用いて計算した。各誤差棒上方の数は、各群内の症例の数を示す。
【0224】
ABCB5発現のフローサイトメトリー分析。臨床患者由来メラノーマ細胞懸濁液中での、ABCB5と、CD20、CD31、VE−カドヘリン、BMPR1a表面マーカーまたはネスチンまたはTIE−1細胞内マーカーとの同時発現の分析は、従前に記載されているように、二色フローサイトメトリーによって行った。臨床メラノーマ細胞を抗ABCB5 mAbまたはイソタイプ対照mAbまたはAb無しと共にインキュベートし、続いてAPCコンジュゲート型ロバ抗マウスIgGで逆染色した。次いで、細胞を、2%パラホルムアルデヒドを含有するPBS中で固定し(4℃にて30分間)、引き続いて、PEコンジュゲート型抗CD20、抗CD31、抗VE−カドヘリン、抗ネスチンもしくはPEコンジュゲート型イソタイプ対照mAb、または未コンジュゲート型抗BMPR1a、抗TIE−1もしくは未コンジュゲート型イソタイプ対照mAbと共にインキュベートし、続いて、PEまたはFITCコンジュゲート型抗免疫グロブリン二次抗体で逆染色した。染色緩衝液または1%サポニン浸透化緩衝液での洗浄工程は各工程の間に行った。引き続いて、記載されるように、Becton Dickinson FACScan(Becton Dickinson,San Jose,CA)でのFl1(FITC)またはFl2(PE)およびFl4(APC)スペクトルにおける蛍光発光の獲得によって、二色フローサイトメトリーを行った。ABCB5
+およびABCB5
−細胞による前記リストされたマーカーの発現レベルの統計学的差は、ノンパラメトリックMann−Whitney検定を用いて決定した。P<0.05の両側P値は有意と考えられた。A375メラノーマ細胞を、記載されたように、抗ABCB5 mAbまたはイソタイプ対照mAb(10μg/ml)とのインキュベーションによって表面ABCB5発現について分析し、引き続いて、FITCコンジュゲート型ヤギ抗マウス免疫グロブリン二次抗体で逆染色し、および一色フローサイトメトリー(Fl1)を行った。
【0225】
細胞の単離。腫瘍細胞接種から8週間後に、犠牲にしたBalb/c NOD/SCIDまたはBalb/cヌードマウスからの腫瘍の外科的切開に際して、単一細胞懸濁液をヒトメラノーマ異種移植片から生じさせた。各腫瘍を小さな断片(約1mm
3)に切断し、引き続いて、200rpmの振盪プラットフォーム上で、0.1g/L塩化カルシウムおよび5mg/mlコラゲナーゼServa NB6(SERVA Electrophoresis GmbH,Heidelberg,Germany)を含有する10ml滅菌PBS中で、腫瘍断片を37℃で3時間インキュベートし、単一細胞懸濁液を得た。引き続いて、腫瘍細胞を過剰なコラゲナーゼの除去のためにPBSで洗浄した、ABCB5
+細胞を陽性選択によって単離し、記載されたような抗ABCB5 mAb標識および磁性ビーズ細胞ソーティングを用いてABCB5
+細胞を除去することによってABCB5
−細胞集団を生じさせた。簡単に述べると、ヒトメラノーマ異種移植片または臨床メラノーマ試料に由来するヒトG3361もしくはA375メラノーマ細胞または単一細胞懸濁液を、抗ABCB5 mAb(20μg/ml)で4℃にて30分間標識し、過剰の抗体除去のために洗浄し、引き続いて、製造業者の推奨に従って、二次抗マウスIgG mAbコーティング型磁性マイクロビーズ(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)とのインキュベーション、およびMiniMACS分離カラム(Miltenyi Biotec)中での引き続いてのデュアル通過細胞分離を行った。ABCB5
+細胞単離体およびABCB5
−ヒトG3361メラノーマ細胞の純度は、FITCコンジュゲート型抗ABCB5 mAbとのインキュベーション、続いての、抗マウスIgG mAbコーティング型マイクロビーズインキュベーションおよび磁性細胞ソーティングの後に、FACSCalibur機(Becton Dickinson,Sunnyvale,CA)でのABCB5発現(Fl1)のフローサイトメトリーによってアッセイした。未分離のABCB5
+およびABCB5
−ヒトG3361メラノーマ細胞の間のABCB5発現の統計学的差は、片側ANOVAを用いて決定し、続いて、Bonferroni補正を行った。P<0.05の両側P値は統計学的に有意と考えられた。
【0226】
動物。Balb/cヌードマウスおよびBalb/c NOD/SCIDマウスはThe Jacson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。マウスを、Children’s Hospital BostonおよびHarvard Medical Schoolの制度ガイドラインに従って維持し、認可された実験プロトコルに従って実験を行った。
【0227】
ヒトメラノーマ異種移植。未分離のABCB5
+またはABCB5
−ヒトG3361(各々、10
7、10
6、または10
5/接種物)、またはヒトA375(各々、2×10
6、2×10
5、または2×10
4/接種物)、または臨床患者由来メラノーマ細胞(各々、10
6/接種物)、またはABCB5
+由来初代G3361腫瘍異種移植片から単離されたABCB5
+もしくはABCB5
−細胞(各々、10
7/接種物)をレシピエントBalb/c NOD/SCIDマウスの横腹に片側または両側皮下注射した。腫瘍形成/成長を、過剰な腫瘍サイズがプロトコル規定安楽死をより早く要求しない限り、確立された式[TV(mm
3)=π/6×0.5×長さ×(幅)
2]に従っての腫瘍容量(TV)の決定によって、少なくとも8週間の終点まで経時変化として毎週アッセイした。腫瘍形成に関しては、剖検に際して腫瘍組織が同定されなければ、マウスは腫瘍陰性と考えられた。初代および二次的腫瘍形成の統計学的に有意な差は、Fisher’s Exact検定を用いて評価した。腫瘍容量の差は、片側ANOVAを用いて決定し、引き続いて、Bonferroni補正またはKruskal−Wallis検定、引き続いて、Dun補正を行い、両側P値<0.05は有意と考えられた。
【0228】
インビボ遺伝子系列追跡。前記した磁性ビーズ細胞ソーティングを用いて生じさせたABCB5
+/DsRed2およびABCB5
−/EYFPヒトG336I腫瘍細胞集団を、各々、1×10
6および9×10
6細胞の相対的存在比で再度構成し、続いて、異種移植に先立って、二色フローサイトメトリー(Fl1(EYFP)対Fl2(Dsred2)プロット)によって得られる細胞比率を決定した。G3361/DsRed2およびG3361/EYFP共培養物を、レシピエントBalb/c NOD/SCIDマウスの右腹に皮下注射した(10
7細胞/接種物)。異種移植から4または6週間後に、腫瘍を採取し、(接着性組織培養プレートにおける付着に際して)腫瘍由来単一細胞懸濁液の二色フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡によるDsRed2
+およびEYFP
+メラノーマ細胞の相対的インビボ存在量の決定のために、ならびに蛍光顕微鏡による5μm凍結組織切片の分析のために、単一細胞懸濁液または凍結組織切片を前記したように調製した。さらなる実験において、DsRed2
+およびEYFP
+メラノーマ細胞の相対的存在量を、前記したように、二色フローサイトメトリーによってABCB
+5またはABCB5
−異種移植片由来細胞サブセットにおいて決定し、DsRed2
+およびEYFP
+腫瘍細胞のパーセンテージを、不対スチューデントt検定を用いて統計学的に比較し、P<0.05の両側P値は統計学的に有意と考えられた。
【0229】
抗ABCB5 mAb標的化。未分離のヒトG3361メラノーマ細胞を、レシピエントBalb/bヌードマウスに皮下異種移植した(10
7/接種物)。動物に、メラノーマ異種移植の24時間前に、抗ABCB5 mAb(クローン3C2−1D12)、イソタイプ対照mAb(500μg/注射)を2週間腹腔内注射、またはAbを注射しなかった。腫瘍の成長を、前記したように腫瘍容量(TV)の決定によって経時変化として2週間毎にアッセイした。腫瘍容量の差は、ノンパラメトリック片側ANOVA(Kruskal−Wallis検定)を用いて決定し、続いて、3つの実験群の比較のためにDun補正を行い、両側P値<0.05は有意と考えられた。ヌードマウスメラノーマ異種移植片に対する確立されたヒトへのインビボ投与された抗ABCB5 mAbの結合効率の決定のために、単一細胞懸濁液および凍結された切片を、抗ABCB5 mAb、ネズミIgG1κイソタイプ対照mAbの腹腔内投与、または処理なしに続いて24時間後に、メラノーマ異種移植片から生じさせた。調製された単一細胞懸濁液を、引き続いて、FITCコンジュゲート型ヤギ抗マウスIg二次Abと共に4℃にて30分間インキュベートし、前記した一色フローサイトメトリーによって分析し、凍結された切片をHRPコンジュゲート型ウマ抗マウスIg二次Abと共にインキュベートし、上記のように分析した。
【0230】
ADCCおよびCDCの評価。ADCCまたはCDCを、従前に記載されたように、二色フローサイトメトリーによって決定した。簡単に述べれば、無血清ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)(BioWhittaker,Walkersville,MD)中のヒトG3361メラノーマ細胞懸濁液を、製造業者の推奨に従って、3,3’−ジオクタデシルオキサカルボシアニン(DiO)(Invitrogen,Carlsbad,CA)で標識した。次いで、3ml中の平坦底6ウェル培養プレート中で、DiO標識メラノーマ細胞をウェル当たり300,000細胞の密度にて平板培養し、加湿インキュベーターにて標準培地中で一晩培養した。その後、DiO標識メラノーマ標的細胞を、抗ABCB5またはイソタイプ対照mAb(各々、20μ/ml)の存在下または非存在下にて、37℃、5%CO
2にて30分間プレインキュベートし、引き続いて、ADCCの評価のために、新たに単離されたBalb/cヌードマウスエフェクター脾臓細胞(12×10
6細胞/ウェル、1:40のエフェクター細胞に対する標的細胞の比率)の有無にて、またはCDCの決定のために5%Blab/cヌードマウス血清の存在下もしくは非存在下にて、37℃、5%CO
2にてさらに24時間共培養した。引き続いて細胞およびその上清を採取し、DiO
+PI
+表現型によって認識される溶解された標的細胞と共に、10μg/mlヨウ化プロピジウム(PI)(Sigma,Milwaukee,DN)の添加に際して直ちに、FACSCalibur機(Becton Dickinson)にて二色フローサイトリーによって分析した。3つの処理群についてのADCCレベルは以下のように計算した:ADCC(%)=(DIO
+PIO
+パーセント試料陽性)−(平均Ab未処理DIO
+PI
+パーセント試料陽性)。ADCCのレベルの差はノンパラメトリック片側AVOVA(Kruskal−Wallis検定)、続いての、Dun補正を用いて決定し、両側P値<0.05は有意と考えられた。
【0231】
細胞生存率測定。細胞生存率は、カルセイン−AM染色を用いて異種移植に先立って腫瘍細胞接種物において測定した。簡単に述べれば、1×10
6未分離のABCB5
+、またはABCB5
−メラノーマ細胞を、カルセイン−AM(Molecular Probes,Eugene,OR)と共に37℃および5%CO
2で30分間インキュベートして、基質摂取および蛍光誘導体に対する酵素的活性化を可能とした。引き続いて、細胞を洗浄し、蛍光測定を、Becton Dickinson FACScanでのFl2発光スペクトルにおいてフローサイトメトリーによって獲得した。暴露されていない試料と比較して、蛍光カルセイン−AM誘導体の発生を呈する細胞を生きていると考えた。細胞生存率は、トリパンブルー染色排除方法を用いて全ての試料で決定した。
【0232】
RNA抽出およびリアルタイム定量的逆転写PCR。G3361およびA375ヒトメラノーマ細胞からのRNA抽出および標準cDNA合成反応は、従前に記載されているように、逆転写PCR(Invitrogen)のためのSuper Script一本鎖合成システムを用いて行った。従前に記載された条件下で、かつ継代数にて、National Cancer Instituteで維持されたNCI−60パネルの8つのさらなるメラノーマ細胞系(LOX IMVI、SK−MEL−5、M14、UACC−62、SK−MEL−28、UACC−257、SK−MEL−2、MALME−3M)から調製された全RNAは、NCI/NIH Developmental Therapeutics Programによって提供された。相対的ABCB5遺伝子発現についてのリアルタイム定量的逆転写PCRを、従前に記載されているように行った。ABCB5発現は、n=3の独立実験において、全ての試料における平均発現に対する試料中での発現レベルの比率によって評価した。NCI−60パネルからの8つのヒトメラノーマ細胞系についての成長のデータ(培養倍加時間)は、National Cancer Instituteによって得られたものであり、これはオンラインで見出すことができる(http://dtp.nci.nih.gov/docs/misc/common_files/cell_list.html)。G3361およびA375メラノーマ細胞系についての成長キネティクスは、式:集団倍加時間(h)=T2−T1/(log
2(細胞数
T2/細胞数
T1))(式中、T2およびT1は、対数培養成長相における2つの区別される時点(h)を表わす)に従う細胞集計によって我々の研究所で確立された。相対的ABCB5 mRNA発現および培養倍加時間(h)の直線相関を行い、ピアソン相関係数を計算し、p<0.05およびr>0.03またはr<−0.3の基準を用いて、従前に記載されているように、有意な相関を同定した。
【0233】
実施例1
我々は、まず、より進行した疾患のマーカーであるCD166との密接な関連のため、ABCB5の臨床的悪性メラノーマ進行に対する関係を調べた。これは、ABCB5免疫組織化学染色、および4つの主な診断腫瘍タイプ:良性メラノーマ細胞母斑、初代皮膚メラノーマ、リンパ節へのメラノーマ転移、および内臓へのメラノーマ転移(
図1a)を表わす、480人の患者由来メラノーマ組織コア(0.6mm)を含有する確立されたメラノーマ進行組織マイクロアレイ(TMA)の定量的イメージ分析を介して評価した。我々は、初代または転移性メラノーマが良性メラノーマ細胞母斑よりもABCB5をより有意に発現し(P<0.001)、厚い初代メラノーマが薄い初代メラノーマよりもよりABCB5を発現し(P=0.004)、およびリンパ節へ転移するメラノーマが初代病変よりもよりABCB5を発現する(P=0.001)ことを見出し、ABCB5を、ヒト悪性メラノーマにおける新形成進行の新規な分子マーカーとして同定した。ABCB5発現における見掛けの不均一性が転移で認められ、内臓転移よりもリンパ節におけるより大きな染色が伴った(P=0.025)。
【0234】
実施例2
より小さな一連の外科的に切開された臨床メラノーマ(n=6患者、表1)に新たに由来する単一細胞懸濁液のフローサイトメトリーによってアッセイすると、ABCB5は、6つの検体のうち6つにおいて終始一貫して発現されることも見出され、ABCB5+腫瘍細胞頻度は1.6〜20.4%(9.2±3.2%、平均±SEM)の範囲であった(
図1b、表1)。より原始的な分子表現型に関連する抗原に関するさらなる表現型特徴付けにより、6つの検体のうち3つにおけるCD20(全ての試料における頻度:0.3±0.2%、平均±SEM)、6つのうち6つにおけるネスチン(31.9±7.8%)、6つのうち6つにおけるTIE−1(24.9±6.9%)、6つのうち4つにおけるVE−カドヘリン(0.2±0.1%)、6つのうち6つにおけるBMPR1a(1.8±1.0%)、および6つの検体のうち5つにおける間質マーカーCD31(0.8±0.4%)の有意な発現が明らかとなった(
図1b)。幹細胞決定基CD133について従前に同定されたABCB5
−亜集団と比較したABCB5
+による優先的な発現が、ここに、ネスチン(各々、49.45±6.6%対26.6±4.9%、平均±SEM、P=0.026)、TIE−1(59.4±7.8%対23.8±7.5%、P=0.015)、VE−カドヘリン(6.4±1.2%対0.1±0.1%、P=0.029)、およびBMPR1a(37.0±4.4対2.0±0.2%、P=0.002)について各マーカーを発現する試料中で示されたが、CD20(0.2±0.2%対1.1±0.7%、NS)またはCD31(2.4±1.2%対0.5±0.3%、NS)については示されなかった(
図1c)。インサイチュ免疫組織化学により、臨床的腫瘍内の少数派亜集団を占めるABCB5
+単一細胞またはクラスターが明らかにされ、陽性に染色された細胞は、主に非メラニン化未分化領域またはTIE−1発現に相関し、未反応領域はメラニン化されたより分化した領域に対応した。
【0235】
表1は、メラノーマ部位(転移または初代再発いずれか)を持つ6人の患者の腫瘍の特徴をまとめる。腫瘍は存在するABCB5
+の%によって定量される。また、未分離のABCB5
+またはABCB5
−ヒトメラノーマ細胞の複製(n=2〜10)接種物を移植したNOD/SCIDマウスの9つの群についての結果(腫瘍を持つマウスの数)のまとめを示す。
【0236】
【表1】
実施例3
ABCB5によって規定されるメラノーマ細胞サブセットがMMICについて増大されたか否かを決定するために、我々は、NOD/SCIDマウス腫瘍異種移植実験に対してヒトにおける樹立されたクローン皮膚ヒトメラノーマ培養物(G3361:2〜10%ABCB5陽性;A375:1〜10%陽性、
図5a)、または新たに患者に由来するメラノーマ細胞(
図1b、表1)いずれかを用い、インビボにて腫瘍形成を開始するABCB5
+精製(ABCB5
+)対ABCB5
+枯渇(ABCB5
−)メラノーマ細胞の能力を比較した。NOD/SCIDマウスの群に、腫瘍成長を有効に開始することができない細胞用量(G3361:10
5細胞、A375:2×10
4細胞)からABCB5
+細胞を用いた場合に腫瘍形成を終始一貫して開始した用量(G3361:10
7細胞鎖、A375:2×10
6細胞、新鮮な患者単離体:10
6細胞)までのlog倍範囲にわたって、未分離のABCB5
+またはABCB5
−ヒトメラノーマ細胞の複製(n=2〜10)接種物を移植した。カルセイン−AM染色によって決定された細胞生存率は、全ての腫瘍細胞接種物において90%を超え、単離体の間では有意には異ならなかった(
図5b)。
【0237】
ABCB5
−G3361メラノーマ細胞を注射した22匹の集合マウスのうち、最高の細胞用量で移植された1匹のマウスのみが腫瘍を生じた(
図2a、左側パネル)。対照的に、最高の細胞用量を注射した全てのマウス(
図2a、左側パネル、図中で提供された個々の用量特異的比較についてのさらなるP値)を含めた、ABCB5
+細胞を注射した20のうち13が腫瘍を形成し(P>0.0001)、50%腫瘍形成(TF
50)に必要な接種用量の比較によって計算して、この細胞サブセットにおける2log倍のMMICについての増大を示す(
図2a、中央のパネル)。
【0238】
同様に、ABCB5
−A375メラノーマ細胞を注射した21の集合マウスのうち、8匹のマウスのみが腫瘍を発生し、他方、ABCB5
+細胞を注射した22匹のマウスのうち16匹が腫瘍を形成し(P<0.05)、ABCB5
+A375細胞の中でMMICについて>1 log倍の増大を示す(
図2b、左側および中央パネル)。ABCB5
+細胞精製の結果、G3361メラノーマ細胞を用いて代表的な試料においてアッセイした場合に、未分離培養物における5.0±0.4%〜99.8±0.8%(平均±SD、n=3、P<0.001)までのABCB5
+細胞頻度の19.8倍増大がもたらされ、ABCB5
+枯渇の結果、5.0±0.4%〜1.1±0.3%(平均±SD、n=3、P<0.001)までのABCB5
+細胞頻度の4.75倍低下がもたらされた(
図5c)。ABCB5
+細胞でのこの残存汚染(天然に生じるABCB5
+頻度の22%)は、最高用量におけるABCB5
−接種による観察された腫瘍形成を占めることができ、ABCB5
+集団の中でMMIC増大の潜在的過小評価を示唆する。顕著なことには、最高細胞用量において、腫瘍形成がABCB5
−細胞注射の結果として実際に起こった場合、腫瘍はABCB5
+異種移植片に由来するものよりも小さなことが終始一貫して判明した(G3361:各々、腫瘍容量(TV)=15±15対286±90mm
3、平均±SEM、P<0.01;A375:各々、TV=239±70対832±121mm
3、平均±SEM、P<0.05)(
図2aおよび2b)。
【0239】
メラノーマ培養異種移植片は不均一であり、非メラニン化領域およびVE−カドヘリン発現に主として相関するABCB5
+細胞およびメラニン化領域に対応するABCB5
−領域を含んだ(
図2c)。ABCB5
+由来初代腫瘍から再度精製されたABCB5
+細胞は、各々、11レシピエントのうち11対12レシピエントのうち7におけるそのABCB5
−カウンターパートよりもより有効に二次腫瘍を形成し(P=0.037)(
図2d)、初代腫瘍不均一性を再度樹立した。クローンメラノーマモデル系を用いて得られた結果と合致して、10
6の新たに患者から誘導されたABCB5
−メラノーマ細胞を注射した9匹のレシピエントマウスのうち1匹のみが腫瘍を発生し、他方、10
6のABCB5
+メラノーマ細胞の9匹のレシピエント全てが腫瘍を形成し(P<0.001)、ABCB5
−対ABCB5
+接種のレシピエントにおいてより小さな平均TVであった(各々、TV=2±2対35±11mm
3、平均±SEM、P<0.01)(
図2e、表1)。ABCB5
+メラノーマ細胞から生じた腫瘍は、解離性のある腫瘍検体の免疫組織化学およびフローサイトメトリーによって決定されるように、ABCB5発現に関して天然に生じる腫瘍不均一性を再度樹立し、ABCB5陽性は2〜8%の範囲であった(結果は示さず)。これらの知見は、MMIC頻度が、ABCB5によって規定されたメラノーマ少数派集団において顕著に増大されることを確立する。
【0240】
実施例4
共異種移植したABCB5
+およびABCB5
−亜集団の相対的腫瘍成長寄与を直接的に調べ、かつABCB5
+自己更新および分化能力をさらに調査するために、我々は、インビボ遺伝子的系列追跡を可能とするために我々の実験室で設計されたモデル系である、各々、赤色蛍光蛋白質(DsRed2)または増強された黄色−緑色蛍光蛋白質(EYFP)いずれかを発現する安定にトランスフェクトされたG3361細胞系変異体からABCB5
+またはABCB5
−メラノーマ細胞を単離した。我々は、NOD/SCIDマウスへの、各々、14.0±3.0%および86.0±3.0%相対的存在量(平均±SD、n=6)において再構成されたABCB5
+G3361/DsRed2およびABCB5
−G3361/EYFP蛍光色素トランスフェクタント共培養物の異種移植の結果、6週間の実験終点における51.3±1.4%の頻度までの、接種物と比較した実験的腫瘍におけるABCB5
+起源のDsRed2
+腫瘍細胞の時間依存的系列的に増大する相対的頻度(回帰直線の傾き6.4±1.0、P<0.0001)をもたらした(
図3a、3bおよび3cの頂部および底部パネル)。これらの知見によって、競合腫瘍発生モデルにおける、ABCB5
+対共異種移植ABCB5
−メラノーマバルク集団のより大きな腫瘍原性を確立した。重要なことには、これらの結果は、腫瘍開始細胞が、さらに、より効率は低いにもかかわらず、より分化した、それ自身の非腫瘍形成性癌についてバルク集団を駆動し、成長する腫瘍塊に寄与することをさらに示す。実験的腫瘍はDsRed2/EYFP二重陽性メラノーマ細胞(
図3c、中央パネル)も含有し、ABCB5
+由来腫瘍細胞が、生理学的ABCB5
+皮膚前駆体((Frank,N.Y.ら、egulation of progenitor cell fusion by ABCB5 P−glycoprotein,a novel human ATP−binding cassette transporter.J Biol Chem 278,47156−65(2003))と同様に、ABCB5
−サブセットとの細胞融合に関わることを示す。
【0241】
実施例5
10%ABCB5
+G3361/DsRed2および90%ABCB5
−G3361/EYFP蛍光色素トランスフェクタントとの共異種移植から得られる実験的腫瘍からABCB5
+メラノーマ細胞を精製した場合、我々は、蛍光細胞の92.9±6.4%(平均±SD、n=3)がDsRed2
+表現型(ABCB5
+起源)であることを見出し(
図3d、上方左側パネル)、この細胞サブセットの自己更新能力が示される。ABCB5
+単離体の中では、EYFP
+細胞は有意なレベルで見出されず(7.1±6.4%、平均±SD、n=3)、観察されたより低い頻度は、共移植されたABCB5
−EYFP
+集団の中で測定された残存ABCB5
+細胞汚染によって大きさが十分に占められ(90%EYFP細胞の1.1%=0.99%に対して接種における10%ABCB5
+DsRed2
+細胞)、ABCB5
+腫瘍細胞がABCB5
+接種から生じたにすぎず、ABCB5
−細胞は専らABCB5
−子孫を生起することを示す。さらに、蛍光ABCB5
−腫瘍細胞単離体は、52.5±0.8%(平均±SD、n=3)のDsRed2陽性(ABCB5
+起源)および47.5±0.8%のEYFP陽性(ABCB5
−起源)を呈し(
図3d、下方左側パネル)、ABCB5
+メラノーマ細胞が、分化し、ABCB5
−腫瘍集団を生起させる能力を保有することを示す。これらの知見は、MMICが増大化されたABCB5
+メラノーマ細胞が自己更新し、より分化したABCB5
−腫瘍子孫を生起させるという腫瘍ヒエラルキーの存在を示す。
【0242】
実施例6
未分離腫瘍バルク集団を異種移植した場合に、ABCB5規定MMIC増大化少数派集団が腫瘍原性に必要とされるか否かをメカニズム的に解明するために、我々は、この細胞サブセットの選択的殺傷が腫瘍の成長および形成を阻害できるか否かを調べた。腫瘍開始細胞の予測分子マーカーは、腫瘍成長のインビボ阻害について今日標的化されていない。我々は、ヒトにおいてABCB5に向けられたモノクローナル抗体(mAb)をヌードマウスメラノーマ異種移植片モデルに投与した。なぜならば、NOD/SCIDと反対に、ヌードマウスは抗体依存性細胞傷害性(ADCC)媒介腫瘍細胞殺傷が可能であるからである。メラノーマ細胞をレシピエントBalb/cヌードマウスに皮下異種移植し、該動物に、メラノーマ異種移植の24時間前に、抗ABCB5 mAb、または対照mAbを2週間毎に皮下注射し、経時変化としてのTV測定によって腫瘍の形成および成長を系列的に評価した。抗ABCB5 mAbの投与の結果、58日の観察期間にわたって対照mAb処理または未処理マウスで決定されたのと比較して有意に阻害された腫瘍成長がもたらされた(抗ABCB5 mAb処理(n=11マウス、観察期間の間に死滅なし)対対照mAb処理(n=10マウス、観察期間における1つの死滅を排除)または対未処理(n=18マウス、観察期間における1つの死滅を排除):各々、23±16対325±78mm
3、P<0.01、または対295±94mm
3、P<0.001、平均±SEM)(
図4a)。対照mAb処理は、処理無しと比較して腫瘍成長の有意な差を示さなかった(
図4a)。抗ABCB5 mAb処理は、メラノーマ細胞異種移植に続いて58日に評価した腫瘍形成を有意に阻害し、11の抗ABCB5 mAb処理マウスのうち3のみにおいて、対して10の対照mAb処理マウスのうち10において、および18の未処理対照動物のうち18において腫瘍が検出された(各々、P<0.01およびP<0.001)(
図4b)。
【0243】
実施例7
未処理ヌードマウスにおいて成長したヒトメラノーマ異種移植片は、NOD/SCIDレシピエントにおけるものと同様に、腫瘍不均一性を呈し、未分化の非メラニン化領域、分化したメラニン化領域に対応するABCB5領域と主として相関するABCB5
+細胞の少数派集団を含む(
図4c)。インビボ結合効率の分析により、フローサイトメトリーによって(
図4d)、また陽性に染色する細胞クラスターの検出による免疫組織化学によって、異種移植片由来細胞懸濁液において定量的に決定されるように、ABCB5
+腫瘍細胞サブセットと大きさにおいて合致して(
図4c)、対照mAbではなく、全身投与された抗ABCB5 mAbが樹立されたメラノーマ異種移植片において腫瘍細胞のサブセットに結合した(
図4d)ことが明らかにされた。
【0244】
実施例8
腫瘍の形成および成長の抗ABCB5 mAb媒介阻害のメカニズムを決定するために、免疫エフェクター応答ABCCおよび補体依存性細胞傷害性(CDC)を、従前に記載された二色フローサイトメトリーによって評価した。抗ABCB5 mAb処理、対照mAb処理または未処理メラノーマ標的培養物を緑色蛍光膜色素DiOで標識し、Balb/cヌードマウス脾臓に由来する未標識エフェクター免疫細胞または血清との共培養に続いて、赤色蛍光ヨウ化プロピジウム(それに対して溶解した細胞のみが浸透するPI)で逆染色した。イソタイプ対照mAbではなく、抗ABCB5 mAbは、DiO/PI二重陽性細胞のパーセンテージから決定されるように、ABCB5
−発現サブセットとサイズが匹敵するメラノーマ亜集団(Frank,N.Y.ら、ABCB5
−mediated doxorubicin transport and chemoresistance in human malignant melanoma.Cancer Res 65,4320−33(2005))において、ADCC媒介メラノーマ標的細胞の死滅を有意に誘導した(各々、2.1±0.4%対0.2±0.2%、P<0.05)(
図4e)。エフェクター細胞の非存在下におけるAb処理培養への血清の添加、またはこれらの実験条件下での抗ABCB5 mAb単独の添加は、対照と比較して有意な細胞死滅を誘導せず(結果は示さず)、CDCまたは直接的毒性mAb効果はこの実験系において腫瘍要害の有意な原因ではないことを示唆する。
【0245】
樹立されたヒト対ヌードマウスメラノーマ異種移植片に対するABCB5標的化の効果(3つの区別される患者から得られたn=13、および樹立されたメラノーマ培養から得られたn=10)を調査して、ADCC媒介ABCB5
+細胞排除を介するMMICについての陰性選択は腫瘍の成長を阻害するという仮説を検定した。そのような結果は、ABCB5
+メラノーマサブセットが頑強な腫瘍原性に対して臨界的である場合、動的インビボ状況において観察されるであろう。
【0246】
異種移植実験で用いたABCB5
+またはABCB5
−ヒトメラノーマ細胞の特徴付けを試みた。インビボ抗ABCB5 mAb投与は、異種移植片が樹立されると(0日)、腫瘍細胞接種から14日後に開始し、21日の処理期間にわたってイソタイプ対照mAb処理または未処理群で観察された有意な腫瘍成長を排除し(各々、P<0.001およびP<0.001)、対照mAb処理または未処理マウスいずれかにおいて決定されたのと比較して平均腫瘍容量を有意に阻害した(抗ABCB5 mAb処理(n=23マウス)対対照mAb処理(n=22マウス)、または対未処理(n=22マウス)についてのTV:各々、32.7±9.4対226.6±53.8mm
3、P<0.001、または対165.4±36.9mm
3、平均±s.e.m.、P<0.01)。ABCB5 mAbの阻害効果は、新たに患者に由来するメラノーマ異種移植片腫瘍のサブセットが独立して分析された場合にも統計学的に有意であり、イソタイプ対照mAb処理または未処理群で観察された有意な腫瘍成長の排除を伴い(各々、P<0.05およびP<0.001)、対照mAb処理または未処理いずれかにおいて決定されたのと比較して平均TVを有意に阻害した(抗ABCB5 mAb処理 (n=13マウス)対対照mAb処理(n=12マウス)または対未処理(n=12マウス):各々、29.6±9.2対289.2±91.8mm
3、P<0.05、または対222.9±57.5mm
3、平均±s.e.m.、P<0.001)。対照mAb処理は、分析した群のいずれかにおける処理無しと比較して、腫瘍成長または腫瘍容量に対して有意な効果を示さなかった。患者由来腫瘍対照群(測定された最大TV:971.5mm
3)における腫瘍負荷および疾患状態のため、適用可能な実験動物プロトコルによって必要とされる処理間隔に従って動物を犠牲とした。
【0247】
抗ABCB5 mAb処理患者由来メラノーマ異種移植片の免疫組織化学分析により、隣接切片におけるインビボ結合抗ABCB5 mAbに対応するABCB5発現(細胞の総じて<1%)の小さな病巣のみが明らかとされた。CD11bについて染色されたさらなる隣接切片は、抗ABCB5 mAb局所化の領域に対応するマクロファージ浸潤を明らかにし、これは、細胞変性および壊死の領域の境界を頻繁に形成した。対照的に、対照mAb処理異種移植片により、10〜15%ABCB5
−反応性細胞が明らかにされ、二次抗Ig mAbは隣接する切片において各領域に局所化されなかったが、血管内マウス免疫グロブリンの領域を検出し、CD11b
+マクロファージは腫瘍組織を浸潤させなかった。同様な効果が、抗ABCB5 mAb処理対イソタイプ対照mAb処理動物における増強された腫瘍壊死と共に、細胞系由来メラノーマ異種移植片で観察された(各々、30〜40%対<5%壊死細胞)。これらの知見は、ABCB5
−規定MMIC増大化少数派集団が腫瘍原性に必要であるという考えをさらに支持する。
【0248】
Balb/cヌードマウスに対するG3361メラノーマ異種移植片の特徴付けを行った。ABCB5
+領域はメラニン化されていない領域と共に分離し、他方、ABCB5
−領域は、粒状茶色−黒色メラニン化を示す領域と相関する。抗ABCB5 mAbで処理し、かつ抗ABCB5 mAb、二次抗Ig AbまたはCD11b mAbで染色された異種移植片の免疫組織化学により、前記したのと合致する結果が明らかにされた。初代患者由来異種移植片におけるように、隣接腫瘍切片の免疫組織化学分析により、全身投与された抗ABCB5 mAbはABCB5
+腫瘍領域に結合し、これはまたCD11b
+細胞浸潤と相関することが明らかにされた。インビボ投与された抗体がそれに対して局所化されず、かつCCD11b
−陽性細胞がその中に浸潤しなかったABCB5発現の稀な領域も検出された。
【0249】
実施例9
抗体3C1 1D12の配列決定:全RNAは、Fusion Antibodies
Ltdの社内RNA抽出プロトコルを用いてペレットから抽出した。cDNAは、オリゴ(dT)プライマーでの逆転写によってRNAから作製した。モノクローナル抗体DNAの重鎖(HC)可変領域(VR)および軽鎖(LC)VR領域を増幅するために可変ドメインプライマーを用いるPCR反応は、
図7に示されるバンドを与えた。HCおよびLC VR PCR産物の双方をInvitrogen配列決定ベクターpCR2.1にクローン化し、TOP10細胞に形質転換した。重鎖および軽鎖についての陽性クローンを、配列決定分析のために選択した。以下の配列が得られた。
【0250】
1.シグナル配列(下線を施す)を含めた全長HCのDNA配列
【0251】
【化1】
2.シグナル配列(下線を施す)を含めた全長LCのDNA配列
【0252】
【化2】
3.CRD(下線を施す)HC VRのDNA配列
【0253】
【化3】
【0254】
【化4】
4.CRD(下線を施す)LC VRのDNA配列
【0255】
【化5】
5.マークしたフレームワーク領域(F1、F2、F3、およびF4)およびCRD(CDR−H1、CDR−H2、およびCDR−H3を含めたHC VRのアミノ酸配列。フレームワークおよびCDR領域はKabat命名法に従って決定する。(E.A.Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,1991,NIH)。
【0256】
【化6】
6.マークされたフレームワーク領域(マークしたフレームワーク領域(F1、F2、F3、およびF4)およびCDR(CDR−L1、CDR−L2、およびCDR−L3を含めたHC VRのアミノ酸配列。フレームワークおよびCDR領域はKabat命名法に従って決定する(E.A.Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,1991,NIH)。
【0257】
【化7】
7.CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3配列:
CDR−H1: DYYMY 配列番号3
CDR−H2: TINDGGTHTY 配列番号4
CDR−H3: DDYYYGSHFDAMDY 配列番号5
8.CDR−L1、 CDR−L2およびCDR−L3配列:
CDR−L1: RASKSVSTSGYSYMH 配列番号6
CDR−L2: LVSNLES 配列番号7
CDR−L3: QHIRELTR 配列番号8
実施例10:将来の研究
我々は、a)ヒトメラノーマの2つの相補的源(樹立されたヒトメラノーマ細胞系、ならびに初代および転移性ヒト腫瘍に由来する新たに単離されたメラノーマ細胞);b)これらの細胞の実験のための2つのモデル系(免疫欠陥マウスにおける腫瘍形成性、およびそれが真性ヒト皮膚異種移植片で起こるのでより関連性のある腫瘍形成性の皮膚スクリーニング);およびc)メラノーマ幹細胞排除のための2つの別の戦略(ABCB5機能的遮断を介する化学増感、およびABCB5
+幹細胞標的に特異的に送達されたイムノトキシンまたは阻害性siRNAを介する幹細胞殺傷)を使用することによって、メラノーマの成長および進行に影響する能力を研究するであろう。
【0258】
我々は、ABCB5標的化メラノーマ幹細胞化学的耐性逆転もまた、インビボにて、キメラRag2−/−マウス/ヒト皮膚異種移植片における腫瘍開始/進行を阻害することができるか否かを調べるであろう。
【0259】
腫瘍標的化イムノトキシンは、腫瘍部位特異的抗原に向けられたmAbを、毒素、放射性核種および成長因子のような別の無差別に細胞傷害性の薬剤にコンジュゲートすることによって首尾よく構築されている。提案された研究について、我々は、1つのそのような分子、ゲロニン、29kDaリボソーム不活性化植物毒素の利用にまず焦点を当てるであろう。なぜならば、ゲロニンは、メラノーマ特異的抗原に向けられたイムノコンジュゲートに用いた場合、この提案においても使用されたA375ヒトメラノーマ異種移植片モデルにおいて腫瘍特異的細胞傷害性を発揮することが既に示されており、ゲロニンイムノコンジュゲートは臨床的開発のための優れた候補であることを示す。他の将来の研究において、我々は、抗メラノーマ効果を発揮することが知られている、例えば、イットリウムに関連する放射線核種イムノコンジュゲートを研究することも考えている。インビボにてABCB
+メラノーマ異種移植片亜集団を選択的に排除するための戦略としてABCB5標的化ゲロニンイムノトキシンを用いる場合、ABCB5標的化ゲロニンイムノトキシンは、従前に記載されたように合成され、精製された、ゲロニン/抗ABCB5 3C2−1D12 mAbまたはゲロニン/イソタイプ対照mAb化学的コンジュゲートを含むであろう。さらに、腫瘍貫入に関する無傷mAbイムノコンジュゲートの潜在的制限のため、我々はまた、スプライス重複延長PCR方法を用いて、前記したように生じた、抗ABCB5 3C2−1D12 sFv遺伝子のゲロニンDNAへの融合によって構築されるであろう組換え抗ABCB5 3C2−1D12 sFv/ゲロニン融合蛋白質を用いるであろう。組換え融合イムノトキシンを、E.coliにおいて発現させ、従前に記載されているように精製するであろう。組換え対照sFv/ゲロニン融合蛋白質を、イソタイプ対照mAb産生ネズミハイブリドーマ細胞系から同一手法で生じさせるであろう。
【0260】
我々はまた、インビボにてABCB5
+メラノーマ腫瘍幹集団を選択的に阻害する戦略として、siRNAの特異的癌遺伝子へのABCB5抗体媒介標的細胞特異的送達を開発し、それを用いるであろう。細胞への小干渉性RNA(siRNA)の送達は、最近まで、そのインビボ治療適用に対して鍵となる障害であったが、siRNA送達ビヒクルとしての抗体/プロタミン融合蛋白質に関連する新規なアプローチが、インビボでの実験動物モデルにおいてメラノーマ腫瘍への全身細胞型特異的siRNA送達における有効性を最近示しており、MYC、MDM2およびVEGFに向けられたsiRNAを、B16ネズミメラノーマ細胞で発現されたモデル受容体に抗体標的化した場合、インビボメラノーマ成長を阻害するのに有効であることが判明した。このアプローチは、通常は、精子中のDNAを核形成して、種々の特異性のsiRNAに結合し、プロタミンがそのようなマーカーに特異的に向けられた抗体Fab断片またはsFvに融合した場合、特異的細胞表面マーカーを有する細胞にそれらを送達する、プロタミンの核酸結合特性を利用する。この戦略を利用して、ABCB5発現メラノーマ幹細胞を標的化するために、我々は、スプライス重複延長PCR方法を用いて、抗ABCB5 3C2−1D12 sFv遺伝子のプロタミンDNAへの融合によって、組換え抗ABCB5 3C2−1D12 sFv/プロタミン融合蛋白質(ABCB5 sFv−P)を構築するであろう。組換え融合蛋白質ABCB5 sFv−Pは従前に記載されたように発現され、精製されるであろう。ABCB5 sFv−Pは、最初に、MYCに標的化されたsiRNAを送達するのに用いられるであろう。というのは、遺伝子標的化MYCダウンレギュレーションは、ネズミB16メラノーマにおけるのみならず、樹立されたヒトメラノーマ異種移植片を有するマウスにおいて、インビボ腫瘍成長を阻害し、p53の誘導およびBcl−2蛋白質の阻害を介する広範な腫瘍細胞アポトーシスに導くからである。我々は、既に、ABCB5+ヒトメラノーマ亜集団において終始一貫して発現されるMYCを見出している。さらに、ヒトMYCの遺伝子発現はRNAiアプローチによって有効に阻害することができ、これらの研究において確証されたMYC標的化siRNAオリゴヌクレオチドはDharmacon,Inc.(Chicago,IL)から商業的に入手可能である。提案された研究において、MYC siRNAについてのABCB5 sFv結合能力、ABCB5 sFV−P−媒介MYC siRNA標的細胞送達、および得られたMYC遺伝子の阻害、ならびに腫瘍細胞増殖のABCB5 sFv−P/MYC siRNA媒介遮断を、正確に従前に記載されたように、ヒトG3361およびA375メラノーマ培養物においてインビトロでまず調べられるであろう。
【0261】
ABCB5
+メラノーマ幹細胞標的化のためのインビボ実験プロトコルでは、正確に既に前記したように、NOD−SCIDマウス、ならびに樹立された細胞系に由来する、またはヒト患者から新たに単離されたいずれかのヒトメラノーマ異種移植片のレシピエントとしてのキメラRag2−/−/ヒト皮膚キメラマウス双方を利用するヒト対マウス腫瘍異種移植片モデルを使用するであろう。腫瘍開始に対するイムノトキシン(ABCB5 mAb/ゲロニンまたはsFv/ゲロニン)、またはABCB5 sFv−P/MYC siRNAの効果を評価することを目的とする実験の最初の組において、イムノトキシン(ABCB5 mAb/ゲロニンまたはsFv/ゲロニンまたは対照)は、尾静脈注射を介して0.25mlの滅菌PBS中で投与され、MYC siRNAに複合体化されたABCB5 sFv−Pまたは対照は尾静脈注射(1:6のABCB5 sFv−P/全siRNAのモル比率における100μlの注射容量中の80μg siRNA)を介して腫瘍移植から0、1および3日後に、以下の処理および対照群への異種移植後0日にランダム化されたヒトメラノーマ細胞異種移植片のネズミレシピエントに投与されるであろう(各メラノーマ細胞系について、およびNOD/SCIDマウスに皮下、またはヒト皮膚/Rag2−/−/マウスキメラに皮内異種移植されたn=10初代メラノーマおよびn=10転移の各々から新たに単離された各腫瘍細胞検体についてn=10複製動物);1)0日目に開始する、ABCB5 mAb/ゲロニン 500μg/マウスi.v.q.o.d.;2)0日目に開始する、イソタイプ対照mAb/ゲロニン 500μg/マウスi.v.q.o.d.;3)0日目に開始する、ABCB5 sFv/ゲロニン 500μg/マウスi.v.q.o.d.;4)0日目に開始する対照sFvゲロニン 500μg/マウスi.v.q.o.d.;5)0、1および3日目における、ABCB5 sFv−P/MYC siRNA i.v.;6)0、1および3日目における、ABCB5 sFv−P/対照siRNA i.v.;7)0、1および3日目における、ABCB5 sFv−P/i.v.。処理プロトコルを表2にまとめる:
【0262】
【表2】
樹立された腫瘍の腫瘍進行に対するイムノトキシン(ABCB5 mAb/ゲロニンまたはsFv/ゲロニン)、またはABCB5 sFv−P/MYC siRNAの効果を評価することを目的とする実験の第二の組において、ヒトメラノーマ細胞異種移植片のマウスレシピエントは、表7にまとめられた処理および対照群へ、(腫瘍が樹立された場合)異種移植後7日目にランダム化されるであろう(各メラノーマ細胞系について、およびNOD−SCIDマウスに、皮下、またはヒト皮膚/Rag2−/−/マウスキメラに皮内異種移植された、n=10初代メラノーマおよびn=10メラノーマ転移の各々から新たに単離された各腫瘍細胞検体について、n=10複製動物):
【0263】
【表3】
臨床的腫瘍形成/成長は、実験の長さ(45日)について、確立された式[TV(mm
3)=π/6×0.5×長さ×(幅)2]に従って腫瘍容量(TV)の決定によって経時変化として毎日アッセイされるであろう。適用された処理養生法の関数としての腫瘍形成の統計学的に有意な差は、Fisher’s Exact検定を用いて評価されるであろう。実験群の間の腫瘍容量の差は、ノンパラメトリックANOVAを用いて決定されるであろう。両側P値<0.05は統計学的に有意と考えられるであろう。実験の45日目に最初に犠牲とした全ての処理群の動物から切開された各移植された腫瘍異種移植片の免疫蛍光および免疫組織化学分析([例えば、10、20、30および45日における]順次の犠牲は、45日目の知見に基づいて行われ、初代腫瘍の調査に加えて、犠牲にした動物を剖験し、全ての転移を評価し、全ての組織を、適用された処理養生法によって媒介される毒性の証拠について病理学的に評価した)。ABCB5の発現、およびABCB5のCD133との共発現は、従前に記載されているように、凍結されたメラノーマ異種移植片切片の順次のHRP/AP免疫酵素二重染色によってアッセイされるであろう。腫瘍切片は明視野顕微鏡観察によって分析され、各マーカーについての細胞染色陽性の平均パーセンテージは、従前に記載されているように、各染色条件につき、3つの顕微鏡観察視野(倍率400×)における細胞数に基づいて半定量的に分類されるであろう(陽性なし:−;<10%陽性:+;10〜50%陽性:++;>50%陽性:++)。蛍光顕微鏡観察および各蛍光色素のための別々のフィルターを用い、RFP陽性細胞(ABCB5
+起源)およびGFP陽性細胞(ABCB5
−起源)を合計し(100細胞/試料)、各腫瘍内のRFP/GFP細胞比率が計算されるであろう。各処理養生法に付された複製動物に由来する平均比率は、ノンパラメトリックANOVAを用いて統計学的に比較されるであろう。ABCB5
+標的化戦略の有効性を評価するために、ネズミ皮下組織、ヒト皮膚異種移植片において、および転移の部位において成長するアポトーシスメラノーマ細胞は、光学顕微鏡観察に用いられる確立された基準に従って同定され、TUNELアッセイによって確認されるであろう。我々はまた、Bax、Bcl−2、およびBcl−XLを含めた、アポトーシス経路に関連する蛋白質発現について免疫組織化学的にスクリーニングするであろう。最後に、これらの結果は、細胞増殖関連マーカー(MIB−1、PCNAおよびサイクリンD1/D3)についてのスクリーニングと相関されるであろう。陽性細胞は断面プロフィールにわたって手動で、および定量の効率をかなり高める共同PI研究所(GFM)において利用可能なコンピューター援助イメージングプログラムの使用によって列挙されるであろう。
【0264】
本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様をかくして記載してきたが、種々の改変、修飾および改良は当業者に思いつくものであろうと認識されるべきである。そのような改変、修飾、および改良は本開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲内のものであることが意図される。従って、これまでの記載および図面は単に例である。