特許第6268272号(P6268272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268272
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】太陽電池パネルの敷設構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/18 20180101AFI20180115BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20180115BHJP
【FI】
   E04D13/18ETD
   H02S20/23 B
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-251450(P2016-251450)
(22)【出願日】2016年12月26日
(62)【分割の表示】特願2012-284984(P2012-284984)の分割
【原出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2017-75527(P2017-75527A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−167455(JP,A)
【文献】 特開平6−181333(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0263181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/10、13/18
H02S 20/23、20/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールの周縁に側壁を有する枠体を設けて裏面側が開放する太陽電池パネルを、折板屋根に取り付けられた持出金具上に取り付けて折板屋根との間に流れ方向に連通する連通空間が形成されるように傾斜状に敷設することで段状とした敷設構造であって、
前記連通空間と前記太陽電池モジュールの裏面側空間とは連続しており、
前記太陽電池パネルの枠体のうち、流れ方向の上側枠及び下側枠には、開口部が備えられ、
流れ方向に隣り合う太陽電池パネルは、一定の間隔で敷設されて開放部を形成すると共に、この開放部の水下側に敷設状態で太陽電池パネルの表面から突出する起立部が設けられていることを特徴とする太陽電池パネルの敷設構造。
【請求項2】
開口部は、側壁の下方部分に形成した部分的或いは一定幅の空部、もしくは側壁に形成した複数の孔であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池パネルの敷設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの裏面側の空間から、効率的に熱量を排出して太陽電池の発電効率の低下を防ぐことができる太陽電池パネルの敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の緩和を目的として、その原因である温室効果ガスのうち、二酸化炭素(CO2)の排出が少ない社会(低炭素社会)を構築するため、従来の石油や石炭等の資源に依存するエネルギーに代え、太陽光を用いた再生可能エネルギーを普及するという社会的気運の高まりがある。また、政府や自治体が、積極的に太陽電池モジュールを導入する需要に対して補助を行ったり、余剰の電力を電力会社が買い取る機構もまた構築されている。
【0003】
太陽光を効率的に利用する太陽電池モジュールにおいて、太陽電池の発電効率は、裏面が高温になると発電効率が低下することが知られている。
そのため、特許文献1に示されるように太陽電池モジュール1の周縁部に位置させたフレーム材2の全てに複数の「孔」を開設して連通部3を形成し、太陽電池モジュール1の裏面側の空間を各連通部3に連通させることにより、温度上昇を抑制するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−101120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の構造では、軒先側の「孔」から、又は側方側の「孔」から、もしくはルーフィング7と横桟4の間から流入した空気は、棟方向に向かって流れるものの、排出は複数敷設した太陽電池の最上部すなわち棟側でしか行えないため、十分な排気が行えるものではなかった。
また、排気は、空気の流入量に影響を受けるため、風速が弱かったり、流入量が小さい(少ない)場合等には、排出量も少なくなり、十分な排気が行えず、多くの熱量は空間内に滞留するものであった。
さらに、軒棟方向及び左右方向の全てのフレーム材2に「孔」を形成しているため、十分な強度が得られない虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、太陽電池モジュールの裏面側の空間から、効率的に熱量を排出して太陽電池の発電効率の低下を防ぐことができる太陽電池パネルの敷設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、太陽電池モジュールの周縁に側壁を有する枠体を設けて裏面側が開放する太陽電池パネルを、折板屋根に取り付けられた持出金具上に取り付けて折板屋根との間に流れ方向に連通する連通空間が形成されるように傾斜状に敷設することで段状とした敷設構造であって、前記連通空間と前記太陽電池モジュールの裏面側空間とは連続しており、前記太陽電池パネルの枠体のうち、流れ方向の上側枠及び下側枠には、開口部が備えられ、流れ方向に隣り合う太陽電池パネルは、一定の間隔で敷設されて開放部を形成すると共に、この開放部の水下側に敷設状態で太陽電池パネルの表面から突出する起立部が設けられていることを特徴とする太陽電池パネルの敷設構造に関するものである。
【0008】
また、本発明は、前記太陽電池パネルの敷設構造において、開口部は、側壁の下方部分に形成した部分的或いは一定幅の空部、もしくは側壁に形成した複数の孔であることを特徴とする太陽電池パネルの敷設構造をも提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の太陽電池パネルの構築構造は、太陽電池モジュールの裏面側の空気(熱量)を上側枠に設けた開口部から排出することができ、しかも起立部にて太陽電池パネルの表面を流れる空気の流れに乱流を形成することにより、裏面側の空気を吸い出す作用を果たすために、太陽電池の温度上昇を抑制し、発電効率の低下を防ぐことができる。
また、太陽電池パネルを傾斜状に敷設することで段状としているので、太陽光を効率良く受けることができる角度に太陽電池パネルを設置することができ、しかも太陽電池モジュールの裏面空間の上端の傾斜勾配も強くなるため、より容易に空気(熱量)を排出することができる。
【0010】
また、開口部は、側壁の下方部分に形成した部分的或いは一定幅の空部、もしくは側壁に形成した複数の孔である場合には、開口部を極めて容易に形成することができる。特に前者の態様では、空部を太陽電池モジュールのケーブルを通す空間として利用することができ、雨水や積雪等を堰き止めることなく、太陽電池モジュールの裏面側へ導くこともできる。また、後者の態様では、上側枠の水上側に沿わせる固定部材等の係止縦片と固定するための締着ボルトの取付箇所としても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)本発明の太陽電池パネルの敷設構造の参考例1を示す斜視図、(b)それに用いた持出金具の拡大斜視図である。
図2】(a)参考例1の太陽電池パネルの敷設構造の平面図、(b)その正断面図、(c)その側断面図、(d)A−A線における拡大断面図である。
図3】参考例2の太陽電池パネルの敷設状態のみを示す斜視図である。
図4】本発明の一実施例(第1実施例)の太陽電池パネルの敷設構造を示す斜視図である。
図5】(a)第1実施例の太陽電池パネルの敷設構造の要部を拡大して示す側断面図、(b)その正断面図、(c)参考例3の太陽電池パネルの敷設構造の要部を拡大して示す側断面図である。
図6】第1実施例及び参考例3に用いる太陽電池パネルを水上側から見た斜視図である。
図7】(a)他の一実施例(第2実施例)の太陽電池パネルの敷設構造を示す斜視図、(b)それに用いた取付部材を拡大して示す斜視図である。
図8】(a)第2実施例の太陽電池パネルの敷設構造の要部を拡大して示す側断面図、(b)その正断面図、(c)それに用いた支持部材の断面図である。
図9】(a)〜(c)本発明における太陽電池パネルの配設例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、太陽電池モジュールの周縁に側壁を有する枠体を設けて裏面側が開放する太陽電池パネルを折板屋根に取り付けられた持出金具上に取り付けて折板屋根との間に流れ方向に連通する連通空間が形成されるように傾斜状に敷設することで段状とした敷設構造であって、前記連通空間と前記太陽電池モジュールの裏面側空間とは連続しており、前記太陽電池パネルの枠体のうち、流れ方向の上側枠及び下側枠には、開口部が備えられ、流れ方向に隣り合う太陽電池パネルは、一定の間隔で敷設して開放部を形成すると共に、この開放部の水下側に起立部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明に用いる太陽電池モジュールは、結晶系等の太陽電池セルをガラス等に積層させてモジュール化したものであっても、アモルファス等の薄膜のものであってもよく、薄膜等にあっては、基材となる金属板等に一体化してシート状(板状)或いはボード状にしたものであってもよい。
前記太陽電池セルとしては、一般的には片面受光型を用いるが、発電量を増大させるために両面受光型を用いてもよく、この場合、太陽電池モジュールの下方に反射部を介在させればよい。
また、前記枠体は、前記太陽電池モジュールの四つの辺に配する上側枠、下側枠、左右の側方枠からなり、各枠体は、太陽電池モジュールの周縁を保持する保持部と、下方へ垂下する側壁とを備える。
そして、前記太陽電池モジュールの周縁に前記枠体を設けて裏面側が開放する太陽電池パネルとした。
【0014】
本発明における前記「開口部」は、側壁の下方部分に形成した部分的或いは一定幅の空部でも、側壁に形成した複数の孔でもよく、太陽電池パネルの裏面側の空気を排出できるものであれば特に限定するものではない。前者の態様(空部)でも後者の態様(孔)においても、形成方法やその形状を限定するものではなく、下端から切断、くり貫き、穿設等の加工を施してもよいし、枠体の高さを予め短く(側枠に比して)成型してもよいし、また側壁に予め空部や孔が形成されるように成形してもよい。
【0015】
前者の態様では、この開口部(空部)が、配設状態において、下地との間に形成されるため、この空部を太陽電池モジュールのケーブルを通す空間として積極的に利用することができる。また、この態様の開口部(空部)は、雨水や積雪等を堰き止めることなく、水下側へ流すことができ、そのため、太陽電池モジュールの裏面側へも導くことができる。
一般的に隣接する太陽電池モジュールを連結するために、ケーブルを通すために枠体の一部を切り欠く等の加工を施すが、この態様では、そのような加工を必要としない。
【0016】
後者の態様では、この開口部(孔)を、配設状態において上側枠の水上側に沿わせる固定部材や取付部材等の係止縦片と固定するための締着ボルトの取付箇所としても用いることができる。
一般的に太陽電池モジュールの水上側端縁の固定は、上側枠の上端を、固定部材等に設けた保持片(部)にて押さえ保持していた。しかし、この構成では、当該押さえ部分が突出するため、ゴミ等が堆積し易いという問題があった。
この態様では、上側枠の側壁に開口部(孔)を設け、この開口部(孔)に締着ボルトを取り付けることができるため、突出する部位がなく意匠性に優れ、ゴミ等を堆積させることもない。
【0017】
前述のように本発明の目的は、太陽電池モジュールの裏面側の空間から、効率的に熱量を排出して太陽電池の発電効率の低下を防ぐことであるが、この裏面側の空間とは、太陽電池パネルと下地間に形成されるものであればよく、波状或い立ち上げ部等を有する外装構造等の下地の形状によって高さ幅が部分的に大きく形成されるものであってもよいし、略平坦状の下地に対して直接的に太陽電池パネルを敷設して太陽電池モジュールと周縁の枠体で囲まれる略均等な薄い空間であってもよいし、持出金具や取付部材、横桟、縦桟等の支持部材などを取り付けた下地と太陽電池パネル間に形成されるものでもよい。
どのような裏面側空間であっても、該空間中にて温められた空気(熱量)は、より高い位置に移動しようとするため、前述のように流れ方向の上側枠に開口部を設けることにより、空間中にて温められた空気(熱量)を外部へ放出することができる。なお、この空間への外部からの空気の流入は、前述の略平坦状の下地に対して直接的に太陽電池パネルを敷設する態様を除いて、周囲のどの方向からも行われる。略平坦状の下地に太陽電池パネルを直接的に敷設する態様では、下側枠にも開口部を設けて空気を流入させることが望ましい。
また、このような裏面側空間は、軒棟方向或いは桁行き方向、或いはその両方に連続するものであっても、独立したものであってもよい。
【0018】
前述の「流れ方向に隣接する太陽電池パネルは、一定の間隔で敷設して開放部を形成する」構成とは、流れ方向に隣接する太陽電池パネルを一定間隔で離間させて配設して開放部を形成することを意味している。
後述する図示実施例に示すように、太陽電池パネルの端部を位置規制すると共に開放部の間隔を保持することができる取付部材を予め下地に固定し、この取付部材に太陽電池パネルを配設することで、一定間隔の開放部を形成するようにしてもよい。
また、「開放部の風上側に敷設状態で太陽電池パネルの表面から突出する起立部を設けた」とは、一般的に屋根勾配、屋根面の流れ方向である棟側から軒側へと全く逆に、軒側から棟側へ吹き上げる吹き上げ風の風上側、即ち開放部における水下側に起立部を設けることを指している。
【0019】
前記開放部に設けられる起立部は、全ての開放部に設けるものであっても、部分的に設けるものであってもよい。また、起立部は、太陽電池の辺に対して全長に亘って設けるものでも部分的に設けるものであってもよい。更に、起立部は、太陽電池表面に対して略鉛直状であっても、内側、外側への傾斜状であってもよい。また、起立部は、略平坦状の起立片状でも、弧状(曲面状)又は段状の起立片状でもよい。
また、起立部は、枠体自体に一体に成型されてもよいし、外設部材として取り付けるものでも、取付部材等に予め一体化されたものであっても、別体からなる起立部をビス、ボルト・ナット等の締着や嵌合、係合、接着或いはこれらを併用して間接的に下地に取り付けるものでもよく、さらには別体からなる起立部を取付部材等と共締めしてもよい。
【0020】
そして、この起立部を太陽電池パネルの隣接間隔(開放部)に設けることにより、起立部に当たった風が上方に乱流を起こし、起立部の上端を減圧状態とするため、太陽電池パネルの裏面空間の空気が前記開口部から表面側へ吸い出す作用が果たされ、裏面空間の空気の流れを著しく速め、太陽電池セル自体が発生する温度を抑えることで発電効率の低下を防ぐことができる。
【0021】
本発明の太陽電池パネルの敷設構造は、前記構成の太陽電池パネルを以下に示す下地上に敷設してもよいし、各種の壁に取り付けるようにしてもよい。
本発明に用いる下地は、既存の瓦、スレート、金属等の公知の屋根でも、新たに敷設される瓦、スレート、金属等からなる屋根でも、太陽電池の裏面側に屋根としての雨仕舞性能を有するものが望ましく、その仕様を問うものではなく、例えば塩ビ等の防水シートからなる防水層でもよい。また、金属等によって構成される既存もしくは新設の屋根は、横葺き状、縦葺き(瓦棒葺き、平滑状等)、折板等の如何なるものであってもよい。
これらの下地を構成する部材に直接太陽電池パネルを取り付けてもよいし、各種の取付金具や取付架材、持出金具、横桟、縦桟等の取付具を介して太陽電池パネルを取り付けるようにしてもよい。即ち本発明における下地としては、上述の下地、又はそれに取り付ける取付材をも含むものである。
【実施例】
【0022】
図1及び図2に示す参考例1の太陽電池パネル1の構築構造は、下地として、流れ方向に沿うハゼ組み式の折板屋根30のハゼ部35,35'に取り付けられた持出金具4に、太陽電池モジュール10の周縁に側壁を有する枠体11〜14を設けた太陽電池パネル1を敷設したものであって、前記太陽電池パネル1の枠体11〜14のうち、流れ方向の上側枠11,下側枠14は、開口部110,140を備え、流れ方向に隣接する太陽電池パネル1,1は、一定の間隔で敷設して開放部15を形成すると共に、この開放部15の風上側に起立部2を設けた構造である。
【0023】
この参考例1における下地を構成する前記折板屋根30は、山部と谷部とを構成する外装材3Aと、躯体(H鋼)3B上に固定されて前記外装材3Aを保持する保持部材(タイトフレーム)3Cとからなる。この外装材3Aは、略平坦状の平板部31の左右に傾斜状に立ち上がる立ち上がり部32,32を有し、各立ち上がり部32の上端に外側へ延在する載置部33が形成され、この載置部33の外側を略鉛直状に起立させて起立部34とし、隣接する外装材3A,3Aの当該部分を重合させてカシメてハゼ部としたものであり、外側に位置する重合部35と内側に位置する被重合部35'とした構成である。
この折板屋根30のハゼ部35,35'には、図1(b)に示す左右分割型の本体4Aと略ハット型の連結枠体4Bと上向きの縦ボルト4Cとからなる持出金具4が所定間隔にて一体化されて取り付けられ、取り付けられた持出金具4の受けフランジ41に、取付部材1が一体的に固定されている。この本体4Aは、上端に略平坦状の受けフランジ41が設けられ、その下方に通孔を有する縦片部分を介して外方へ膨出状の包持部42が設けられ、さらにその他方に着座部43が設けられている。そして、この本体4Aと連結枠体4Bと縦ボルト4Cとは、係合状に組み合わされ、その着座部43を折板屋根30の載置部33上に受支させると共に、その包持部42がハゼ部35,35'を覆うように配置した状態で前記縦片部分に設けた通孔に連結具44を締着することにより一体化されている。
【0024】
前記下地(持出金具4)上に敷設する太陽電池パネル1は、太陽電池セル10をガラス等に積層させてモジュール化し、周縁に枠体(フレーム)11〜14を配して敷設したものであり、この枠体11〜14は、それぞれ上端に略コ字状の保持部分を有し、該保持部分から下方へ沿在する縦部分(側壁)を有する。
この枠体11〜14のうち、流れ方向の上側枠11,下側枠14は、前述のように開口部110,140を有するが、この参考例1では側壁の高さを予め短く成型して開口部110,140とした。
また、左右の側方枠12,13は、側壁に開口部を設けず、その下端からそれぞれ内側へ略水平状に延在し、更にその先端を折り上げた浅受皿状の着底部121,131を形成した。この着底部121,131は、太陽電池パネル1の敷設状態において、複数の前記持出金具4の受フランジ41上に受支される。また、この着底部121,131の浅受皿状の内側には、図示しない太陽電池モジュール10のケーブルが垂れ落ちないように収容可能である。
【0025】
前記開放部15は、流れ方向に隣接する太陽電池パネル1,1の配設間隔であり、この開放部15の風上側である水下側には、前述のように起立部2が設けられている。
この参考例1では、開放部15の水下側に配設した太陽電池パネル1の上側枠11に起立片(部)2の下端を嵌合して一体的に固定している。
また、起立片(部)2は、下端を略鉛直状に、その上方を水上側へ傾斜状に形成している。
そして、上側枠11には、水上側へ略L字状に突出して上方が開放する取付溝111が設けられ、起立片(部)2の下端には、略楔状の係止端を設けたので、上方から弾性的に嵌合させて固定することができる。
【0026】
なお、前述のように太陽電池パネル1は、側方枠12,13に設けた着底部121,131を持出金具4の受フランジ41上に受支させた状態で敷設するが、その固定は、側方枠12,13を押さえる押さえ材5Aにて上方から押さえ保持した。
前記押さえ材5Aは、断面が逆ハット状のピース金具であって、左右の横片が側方枠13,12の上端を押さえる保持部であり、中央の横片に形成した孔から前記持出金具4の縦ボルト4Cの先端を突出させてナット4Dを締め付けて固定する。なお、押さえ材5Aの中央の横片と持出金具4の受フランジ41間には、断面が逆U字状の台状部材5Bや略筒状の台状部材5Cが介在されて一体的に固定されている。
【0027】
このように、本発明の太陽電池パネル1の敷設構造は、起立部2を太陽電池パネル1,1の隣接間隔(開放部15)に設けることにより、起立部2に当たった風が上方に乱流を起こし、起立部2の上端を減圧状態とするため、太陽電池パネル1の裏面空間16の空気が前記開口部110から表面側へ吸い出す作用が果たされ、裏面空間16の空気の流れを著しく速め、太陽電池セル10自体が発生する温度を抑えることで発電効率の低下を防ぐことができる。なお、裏面空間16は、太陽電池モジュール10の裏面側に位置する空間全てを指すものであって、モジュール10自体の裏面側ばかりでなく、枠体11〜14の裏面をも含むものである。
【0028】
また、この参考例1では、太陽電池パネル1の対向する上側枠11に開口部110を設けたので、風の流れを図2(d)の拡大断面図に矢印にて示すように、上側枠11に設けた開口部110を空気の排出用として用いることができ、開口部を形成しない左右の側方枠12,13を、太陽電池モジュール10を支持する強度を担う枠体として用いることができる。
【0029】
さらに、この参考例1では、開口部110,140が、配設状態において、下地30との間に形成されるため、この空部を太陽電池モジュール10のケーブルを通す空間として利用することができる。また、この態様の開口部110,140は、雨水や積雪等を堰き止めることなく、水下側へ流すことができ、太陽電池モジュール10の裏面空間16へも導くことができる。
【0030】
図3に示す参考例2は、より簡易な形状の押さえ部材5Dを用いて側方枠12',13'の上端を押さえ保持したものである。また、起立片(部)2'は、略鉛直状に形成されている。それ以外の構成、例えば太陽電池モジュール10や下側枠14等については前記参考例1と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この参考例2における側方枠12',13'は、着底部121',131'の形状が浅受皿状でなく略L字状であって、押さえ部材5Dが下地への固定部を保持部とを備え、台状部材(5B,5C)を必要としない略Z字状のピース金具である。
そして、この参考例2でも前記参考例1と同様の効果が果たされる。
【0031】
図4及び図5に示す第1実施例の太陽電池パネル1"の構築構造は、水上側から見た斜視図である図6に示す太陽電池パネル1"を用いたものであって、前記参考例1,2の太陽電池パネル1,1'の長辺が折板屋根30の流れ方向に沿うように配設したのに対し、この第1実施例では太陽電池パネル1"の短辺が折板屋根30の流れ方向に沿うように配設する点で異なる。
また、前記参考例1,2の開口部110,140が側壁の下半部分を空部としたのに対し、この第1実施例では上側枠11"に形成した開口部110"が複数の(楕円)孔である点でも異なる。
さらに、前記参考例1,2では太陽電池パネル1,1'を略平坦状に敷設したのに対し、この第1実施例では太陽電池パネル1"を傾斜状に敷設することで段状とした点でも相違する。
【0032】
この第1実施例の太陽電池パネル1"は、流れ方向に対向する上側枠11",14"が長辺であり、左右の側方枠12",13"が短辺であり、このうち上側枠11"のみに複数の孔である開口部110"が形成されている。
この複数の孔からなる開口部110"は、上側枠11"の水上側に沿わせる取付部材6Aの係止縦片63と固定するための締着ボルト1cの取付箇所としても用いた。また、一つ一つの楕円孔は締着ボルト1cの頭部より大きかったため、上側枠11"の内側に座金材1bを配し、外側から配したナット1dを締め付けて太陽電池パネル1"を開口部110"に固定した。
【0033】
この第1実施例では、前述のように太陽電池パネル1"を傾斜状に敷設することで段状とした構成であるが、具体的には、折板屋根30に取り付けた持出金具4上に固定した取付部材6Aに、流れ方向に隣接する太陽電池パネル1",1"の端部を固定することにより太陽電池パネル1",1"を傾斜状に敷設する。
この取付部材6Aは、図6に示すように一枚の金属板材を断面略ハット状に成形した成形体であって、略一定高さに形成した胴部61と、その水上側に側壁から下方へ延在する突出部62と、前記胴部61の上面を略垂直状に切り起こして形成した係止縦片63と、さらにその上端を傾斜した取付傾斜片64とからなる。
そして、この取付部材6Aは、前記胴部61の略中央に形成した孔から前記持出金具4の縦ボルト4Cの先端を突出させてナット4Dを締め付けて固定した。
なお、前記取付部材6Aの取付傾斜片64の外側には、起立片(部)2"を沿わせ、ビス2bを打ち付けて起立片(部)2"を固定した。
【0034】
そして、前記取付部材6Aの胴部61の水下側に、下段側の太陽電池パネル1"の水上端部を配置すると共に、前記突出部62上に上段側の太陽電池パネル1"の水下端部を配置した状態で固定するので、太陽電池パネル1"は傾斜状に敷設される。太陽電池パネル1"の固定については、略Z字状の押さえ材5Eを太陽電池パネル1"の下側枠14"の上端に沿わせ、ボルト5f及びナット5gで胴部61に一体的に固定した。
なお、図5(a)に示すようにこの取付部材6Aの係止縦片63に対し、下段側の太陽電池パネル1"の水上端を突き当てた状態で前述の開口部110"に締着ボルト1cを容易に固定することができ、また前記胴部61の水上端には隅部状の切欠空部610が形成されているので、該切欠空部610に上段側の太陽電池パネル1"の水下端を安定に配設することができる。即ちこの取付部材6Aは、太陽電池パネル1",1"間を一定間隔(開放部15)に保持して容易に配設することができる位置規制作用及び間隔保持作用をも有している。
【0035】
この第1実施例でも前記参考例1と同様の効果が果たされ、特に上側枠11"の側壁に設けた開口部110"が複数の孔で形成されているため、この開口部110"に締着ボルト1cを取り付けることができ、突出する部位がなく意匠性に優れ、ゴミ等を堆積させることもない。
【0036】
また、この第1実施例では、太陽電池パネル1"を傾斜状に敷設することで段状としたので、太陽光を効率良く受けることができる角度に太陽電池パネル1"を設置することができ、しかも太陽電池モジュール10の裏面空間16の上端の傾斜勾配も強くなるため、より容易に空気(熱量)を排出することができる。
【0037】
図5(c)に示す参考例3は、胴部61の水上端には隅部状の切欠空部610が形成されない取付部材6A'を用い、高さ幅が高い押さえ材5Eを用い、太陽電池パネル1"を下地に略平行状に敷設した点が相違する以外は、前記第1実施例と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。なお、斜視図及び側断面図は、前記第1実施例と殆ど同様であるから省略する。
この参考例3は、太陽電池パネル1"を下地に対して略平行状に敷設すればよく、下地の傾斜角度、即ち屋根勾配が比較的大きい場合に好適である。
【0038】
図7及び図8に示す第2実施例の太陽電池パネル1"の構築構造は、折板屋根30に取り付けられた持出金具4,4に架け渡すように(流れ方向に沿うように)縦桟状の支持部材7Aが固定され、該支持部材7A上を長さ方向に位置調整可能な取付部材6Bが固定され、流れ方向に隣接する取付部材6B,6B間に太陽電池パネル1"を配設する。
【0039】
前記支持部材7Aは、図8(c)に示すように上面(支持面)71及び右側面72に長さ方向に沿う溝状部711,721を設けた略四角柱状であって、上面(支持面)71に設けた溝状部711は取付部材6Bの取付に際し、溝状部711内を移動させるボルト7b(ナット7c)にて容易に取付位置を調整することができ、成形誤差や取付誤差にも柔軟に対応することができる。また、押さえ材5Hの取付に際し、溝状部711内を移動させるボルト7g(ナット7h)にて容易に取付位置を調整することができ、成形誤差や取付誤差にも柔軟に対応することができる。さらに、右側面に設けた溝状部721は前記持出金具4への取付に際し、同様に溝状部721内を移動させるボルト7dにて容易に調整でき、成形誤差や取付誤差にも柔軟に対応できる。
【0040】
この支持部材7Aは、前述のように持出金具4に取り付けられるが、L型材7Fを介して固定され、L型材7Fの横片に形成した孔から前記持出金具4の縦ボルト4Cの先端を突出させてナット4Dを締め付けて固定し、L型材7Fの縦片に形成した孔からこの支持部材7Aの溝状部721からボルト7dの先端を突出させてナット7eを締め付けて固定し、持出金具4、L型材7F、及び支持部材7Aは一体に固定される。
【0041】
前記取付部材6Bは、図7(b)に示すように一枚の金属板材を断面略L字状に成形した成形体であって、略鉛直状の縦面部分65の下端に、右方側へ折曲して略水平状に延在させた固定片66が形成され、前記縦面部分65の前端側に、左方側へそれぞれ略直角状に折曲した支持横片67、係止縦片68、及び取付傾斜片69が形成されている。そのうち最も下方に位置する支持横片67は略水平状に延在する横片であり、その上方に位置する係止縦片68は略鉛直状に延在する縦片であり、更にその上方に位置する取付傾斜片69は鉛直面から僅かに傾斜状に配設される傾斜片である。
前記胴部61の略中央に形成した孔から前記持出金具4の縦ボルト4Cの先端を突出させてナット4Dを締め付けて固定する。
そして、この取付部材6Bは、前記固定片66の略中央に形成した孔から前記持出金具4の縦ボルト4Cの先端を突出させてナット4Dを締め付けて固定した。
【0042】
そして、折板屋根30に持出金具4を取り付ける点については、前記第1実施例及び参考例1〜3と同様であるが、前述のように持出金具4上に前記支持部材7Aを固定し、この支持部材7Aに対して固定した取付部材6Bに、流れ方向に隣接する太陽電池パネル1",1"の端部を固定することにより太陽電池パネル1",1"を傾斜状に敷設する。
この第2実施例では、前記取付部材6Bの縦面部分65の水下側に形成された支持横片67に、下段側の太陽電池パネル1"の水上端部を配置(載置)すると共に、前記縦面部分65の水上端に上段側の太陽電池パネル1"の水下端部を突き合わせるように配置した状態で固定するので、太陽電池パネル1"は傾斜状に敷設される。太陽電池パネル1"の固定については、略Z字状の押さえ材5Hを太陽電池パネル1"の下側枠14"の上端に沿わせ、ボルト7g及びナット7hで固定片66に一体的に固定した。
なお、この取付部材6Bの支持横片67に対し、下段側の太陽電池パネル1"の水上端を載置する際には、水上端(縦縁)を係止縦片68に突き当てるように配設した状態で開口部(孔)110"に締着ボルト1cを前記第1実施例と同様に座金材1b及びナット4dを用いて固定する。また、前記縦面部分65の水上端に、上段側の太陽電池パネル1"の水下端を突き当てるように安定に配設することができる。即ちこの取付部材6Bは、前記第1実施例における取付部材6Aと同様に、太陽電池パネル1",1"間を一定間隔(開放部15)に保持して容易に配設できる位置規制作用及び間隔保持作用を果たす。
【0043】
この第2実施例でも前記第1実施例と同様の効果が果たされ、開口部110"を複数の孔で形成したため、突出する部位がなく意匠性に優れ、ゴミ等を堆積させることもなく、太陽電池パネル1"を傾斜状に敷設することで段状としたため、太陽光を効率良く受けることができる角度に太陽電池パネル1"を設置でき、しかも太陽電池モジュール10の裏面空間16の空気(熱量)をより容易に排出することができる。
【0044】
図9(a)〜(c)は、本発明における太陽電池パネル1の典型的な配列例を示すものであって、図面の右側が水上側、左側が水下側であり、左から右に向かって専ら風が吹くものと想定した場合を示し、空気の流れを太白矢印にて示している。
図9(a)は各太陽電池パネル1は略平行状に配設された例であり、前記参考例1がその一例に相当するが、起立部2にて太陽電池パネル1の表面を流れる空気の流れに乱流を形成することにより、裏面側の空気16は、起立部2に近接する開放部15から排出される。
図9(b)は各太陽電池パネル1は流れ方向の上側を高くする傾斜状に配設された例であり、前記第1実施例がその一例に相当するが、裏面側の空間16では、太陽電池パネル1の裏面を傾斜状に流れ、開放部15から排出される。
図9(c)は前記図9(a)と同様に各太陽電池パネル1が略平行状であるが、起立部2を備える太陽電池パネル1の水下側に、起立部2を備えない太陽電池パネル1を近接状に配設した例であり、恰も太陽電池パネル1の長さが2倍になったかのように空気の流れは流れ、前記図9(a)と同様に裏面側の空気16は、起立部2に近接する開放部15から排出される。このように起立部2は、全ての開放部16に設けるものであっても、部分的に設けるものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 太陽電池パネル
10 太陽電池モジュール
11〜14 枠体
11 上側枠
110 開口部
12,13 側方枠
14 下側枠
140 開口部
15 開放部
16 裏面空間
2,2' 起立片(部)
30 折板屋根
3A 外装材
4 持出金具
4C 縦ボルト
5A,5D 押さえ材
6A,6B 取付部材
63,68 係止縦片
7A 支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9