特許第6268294号(P6268294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268294
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】乗り物用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20180115BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B60N2/68
   B60N2/42
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-537617(P2016-537617)
(86)(22)【出願日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】JP2014069800
(87)【国際公開番号】WO2016016924
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2017年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】516365471
【氏名又は名称】アディエント ルクセンブルク ホールディング エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】濱野 芳久
(72)【発明者】
【氏名】又野 邦彦
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−279986(JP,A)
【文献】 特開2012−254686(JP,A)
【文献】 特開2012−166613(JP,A)
【文献】 特開2011−235789(JP,A)
【文献】 特表2013−500904(JP,A)
【文献】 特開2011−42302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イプよりなる第1フレーム部材及び第2フレーム部材が枠組みされたシートフレームと、前記シートフレームに懸架された緩衝体と、前記該緩衝体を覆う表皮と、を備えた乗り物用シートの製造方法であって、
前記第1フレーム部材は、垂直に設けられた第1側部及び上側に水平に設けられた上部が第1角部においてL字状に曲成され、かつ、前記第1角部に前記乗り物の車体に係止されるロック部材設けられており、
前記第1フレーム部材を、一般鋼のパイプを前記第1角部においてL字状に曲成して形成し、
形成した前記第1フレーム部材を前記第2フレーム部材と枠組みする前に、前記第1角部に高周波焼き入れ、液体浸炭、及びガス浸炭のいずれかの熱処理を施す、
ことを特徴とする乗り物用シートの製造方法
【請求項2】
前記第2フレーム部材は、前記第1側部に対面して垂直に設けられた第2側部、及び前記上部に対面して下側に水平に設けられた下部が第2角部においてL字状に曲成され、かつ、前記第2角部に前記車体に支持されるブラケット設けられており、
前記第2フレーム部材を、一般鋼のパイプを前記第2角部においてL字状に曲成して形成し、
形成した前記第2フレーム部材を前記第1フレーム部材と枠組みする前に、前記第2角部に高周波焼き入れ、液体浸炭、及びガス浸炭のいずれかの熱処理を施す、
ことを特徴とする請求項1記載の乗り物用シートの製造方法
【請求項3】
シートベルトリトラクタを支持するリトラクタベースが、前記上部及び前記下部の間、並びに前記第1及び第2側部の間に配置された緩衝体に設けられ、シートベルトを案内するベルトガイドが、前記上部に設けられており、
前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材とを枠組みする前に、前記上部に高周波焼き入れ、液体浸炭、及びガス浸炭のいずれかの熱処理を施す、
ことを特徴とする請求項2記載の乗り物用シートの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗り物用シートとしては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この乗り物用シートでは、フレームが加工性、溶接性、及び市場性に優れた一般鋼で枠組みされている。そして、その枠組み状態で、応力の集中する強度の必要な部分、或いはその枠組み全体に高周波焼き入れ、液体浸炭、ガス浸炭などの熱処理を施すことで、高張力鋼と同等の強度が得られるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−235789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術の乗り物用シートにあっては、鋼板から複雑な形状にプレス成形する必要があり、製造コストの増加を招く。一般鋼のパイプを閉ループ状に曲成してシートフレームを形成することは可能であるが、閉ループ状のシートフレームでは、高周波焼き入れ、液体浸炭、ガス浸炭などの熱処理を施すのは困難である。また、予め熱処理を施した鋼材を用いて閉ループ状に加工する場合、熱処理済みの鋼材の曲成は困難であり、破損しやすい、という課題を有する。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、安価で、且つ強度の向上が可能なシートフレームを有する乗り物用シートの製造方法を提供するものである。
【0006】
本発明のアスペクトは、パイプよりなる第1フレーム部材及び第2フレーム部材が枠組みされたシートフレームと、前記シートフレームに懸架された緩衝体と、前記該緩衝体を覆う表皮と、を備えた乗り物用シートの製造方法であって、前記第1フレーム部材は、垂直に設けられた第1側部及び上側に水平に設けられた上部が第1角部においてL字状に曲成され、かつ、前記第1角部に前記乗り物の車体に係止されるロック部材設けられており、前記第1フレーム部材を、一般鋼のパイプを前記第1角部においてL字状に曲成して形成し、形成した前記第1フレーム部材を前記第2フレーム部材と枠組みする前に、前記第1角部に高周波焼き入れ、液体浸炭、及びガス浸炭のいずれかの熱処理を施す、ことを特徴とする乗り物用シートの製造方法であることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、車体に係止される部位による高荷重が加わる可能性のある部位が略直角状に曲成したフレーム部材の角部に設けられている。フレーム部材は、一般鋼のパイプで枠組みされている。したがって、安価であるにもかかわらず、強度の向上も可能となる。また、フレーム部材はL字状に曲成されているので、応力の集中する強度の必要な部分に高周波焼き入れ、液体浸炭、ガス浸炭などの熱処理を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係り、乗り物用シートのシートフレームの斜視図である。
図2図2は、図1に示したシートフレームの右外側下端部の拡大側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
安価で、且つ熱処理が可能なシートフレームを有する乗り物用シートの製造方法を提供する、という目的を、以下の構成により実現した。すなわち、パイプよりなる第1フレーム部材及び第2フレーム部材が枠組みされたシートフレームと、前記シートフレームに懸架された緩衝体と、前記該緩衝体を覆う表皮と、を備えた乗り物用シートの製造方法であって、前記第1フレーム部材は、垂直に設けられた第1側部及び上側に水平に設けられた上部が第1角部においてL字状に曲成され、かつ、前記第1角部に前記乗り物の車体に係止されるロック部材設けられており、前記第1フレーム部材を、一般鋼のパイプを前記第1角部においてL字状に曲成して形成し、形成した前記第1フレーム部材を前記第2フレーム部材と枠組みする前に、前記第1角部に高周波焼き入れ、液体浸炭、及びガス浸炭のいずれかの熱処理を施すことで、実現した。
【実施例】
【0010】
以下、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る自動車用シート1を説明する。自動車用シート1は、シートバック2、シートバック3、及びシートクッション(図示省略)などを備える。シートバック2と、シートバック3とは、例えば左右幅が4対6とシートバック2の方がシートバック3より短い形状である。シートバック2は、シートフレーム(4、5、6)、ワイヤ12、12、12、ワイヤ13、ワイヤ14、ワイヤ15、表皮(図示省略)、及びパッド(図示省略)などを含む。シートフレーム(4、5、6)は、フレーム部材4、フレーム部材5及びフレーム部材6が外側に配置される。フレーム部材4、5、6は、一般鋼のパイプである。ワイヤ12、13は、フレーム部材4に懸架され、緩衝体としての機能を有する。ワイヤ14、15は、ワイヤ12、13とともに緩衝体としての機能を有する。なお、ワイヤ12、13、14、15は、緩衝体としての機能を有するパイプ、あるいは薄板などであってもよい。表皮は、ワイヤ12〜15を覆う。ウレタン製のパッドは、ワイヤ12〜15と表皮との間に設けられる。
【0011】
フレーム部材4には、加工性、溶接性、市場性に優れた一般鋼のパイプが用いられる。フレーム部材4において、上部に水平方向に配される上部4aと、側部に垂直方向に配される側部4bとが角部4cで略直角に曲成されている。このフレーム部材4の上部4aの角部4cの反対側の端部4dと、垂直に配されたフレーム部材5の上端部5aとが溶接部SWで支持される。このフレーム部材4の側部4bにおける角部4cの反対側の下端4eと、水平に配されたフレーム部材6のフレーム部材4側の端部6aとがブラケット7を介して溶接部SWで支持される。フレーム部材5側のフレーム部材6の端部6bとフレーム部材5の下端部5bとが溶接部SWで支持される。ブラケット7は、正面から見て、概略三角形状であり、その上端部7aは、フレーム部材4の側部4bの角部4cの反対側の端部4eに沿うと共に溶接部SWで支持される。下端部7bは、第3フレーム部材6に沿うと共に溶接部SWで支持される。なお、フレーム部材5、6も、一般鋼のパイプを用いることが望ましい。
【0012】
フレーム部材4の側部4bの角部4c側には、ブラケット8を介して、車体に支持されたストライカ(図示省略)に係脱自在なロック部材18が設けられている。
【0013】
フレーム部材4の上部4aには、周知のヘッドレストのスティを上下動自在且つ適宜の位置で停止可能に保持するホルダー(図示省略)を支持するホルダーブラケット11、11が溶接部SWで支持される。上記ヘッドレストは、自動車の急制動などの時に図示しない乗員の頭部を後側から支持するために、乗員の頭部の位置に合わせて上下位置を選択することが可能である。
【0014】
フレーム部材6には、図示しないチャイルドシートを取り付けるアイソフィックス16、16が支持される。ブラケット7の側部には、車体に支持されるヒンジ部材19が設けられる。ヒンジ部材19は、シートバック2の回転中心となる。
【0015】
シートバック3は、シートフレーム(20、21)、ワイヤ27、27、ワイヤ13、13、ワイヤ14、ワイヤ15、ワイヤ28、表皮(図示省略)、パッド(図示省略)、リトラクタベース25、及びベルトガイド26などを含む。シートフレーム(20、21)は、フレーム部材20及びフレーム部材21が外側に配置される。フレーム部材20、21は、一般鋼のパイプである。ワイヤ27、28、13は、フレーム部材20及びフレーム部材21に懸架され、緩衝体としての機能を有する。ワイヤ14、15は、ワイヤ27、28、13と同じく緩衝体としての機能を有する。なお、ワイヤ13〜15、27、28は、緩衝体としての機能を有するパイプ、あるいは薄板などであってもよい。表皮は、ワイヤ13〜15、27、28を覆う。ウレタン製のパッドは、ワイヤ13〜15、27、28と、表皮との間に設けられる。リトラクタベース25は、ワイヤ13間、並びにワイヤ27、28間に固持され、且つワイヤ27に溶接部SWで支持される。ベルトガイド26は、フレーム部材21の上部21aに溶接部SWで支持される。リトラクタベース25の前面には、周知のシートベルトを巻き込む方向に常時付勢されたシートベルトリトラクタ(図示省略)が支持される。
【0016】
フレーム部材20、21には、加工性、溶接性、市場性に優れた一般鋼のパイプが用いられる。フレーム部材20において、垂直方向に配される側部20aと、下部に水平方向に配される下部20bとが角部20cで略直角に曲成されている。フレーム部材21において、上部に水平方向に配される上部21aと、側部に垂直方向に配される側部21bとが角部21cで略直角に曲成されている。フレーム部材20の側部20aの上端部20dと、フレーム部材21の上部21aの端部21dとが溶接部SWで支持される。フレーム部材20の下部20bの端部20eと、フレーム部材21の側部21bの下端部21eとがブラケット22を介して溶接部SWで支持される。ブラケット22は、正面から見て、概略三角形状をなし、その上端部22aは、フレーム部材21の下端部21eに沿うと共に溶接部SWで支持される。下端部22bは、フレーム部材20の端部20eに沿うと共に溶接部SWで支持される。
【0017】
フレーム部材21の側部21bの角部21c側には、ブラケット23を介して、車体に支持されたストライカ(図示省略)に係脱自在なロック部材29が支持されている。
【0018】
フレーム部材21の上部21aには、左右中央側着座者用及び左側着座者用の周知のヘッドレストのスティを上下動自在且つ適宜の位置で停止可能に保持するホルダー(図示省略)を支持するホルダーブラケット11、11、11、11が溶接部SWで支持される。上記ヘッドレストは、自動車の急制動などの時に図示しない乗員の頭部を後側から支持するために、乗員の頭部の位置に合わせて上下位置を選択することが可能である。
【0019】
フレーム部材20には、アイソフィックス16、16が支持される。ブラケット22の側部には、ヒンジ部材30が設けられる。ヒンジ部材30には、シートバック3の回転中心となるピン45が設けられ、ピン45は図示しない車体側に設けられた受け部で枢支される。
【0020】
シートバック2のフレーム部材5の下端部5bに設けたブラケット10と、シートバック3のフレーム部材20の角部20cに設けたブラケット24とは、ロッド9により上下回転自在に軸支される。ロッド9は、ボルト42により車体に固定されるセンターヒンジブラケット40を支持する。
【0021】
フレーム部材4の角部4cに配されたワイヤ支持ブラケット17、及びフレーム部材21の角部21cに配されたワイヤ支持ブラケット31は、車体に支持されたストライカへのロック部材18、29の係脱用のワイヤを支持する部材である。
【0022】
自動車の運行時には、フレーム部材21の角部21cに設けられたブラケット23がロック部材29により車体に係止される。また、フレーム部材20の角部20cに設けられたブラケット24は、ロッド9及びセンターヒンジブラケット40を介して車体に支持されている。また、フレーム部材20の端部20eとフレーム部材21の下端部21eとに支持されたブラケット22は、ヒンジ部材30に設けられたピン45により車体に支持されている。例えば、自動車の急制動や衝突などの際には、乗員には慣性力により前方へ押し出す力が働く。前方に向かう乗員の荷重は、リトラクタベース25に支持されたシートベルトリトラクタからベルトガイド26を通して装着したシートベルトに加わる。その結果、リトラクタベース25を支持するワイヤ13、27、28、及びベルトガイド26を介して、車体に係止あるいは支持されたブラケット22、23、24に大きな荷重が加わる。
【0023】
同様に、フレーム部材4の角部4cにはブラケット8が設けられ、自動車の運行時には、ブラケット8はロック部材18により車体にロックされている。例えば、自動車の急発進の際などには、乗員に後方への力が働く。そのため、車体に係止されたブラケット8に荷重が加わる。
【0024】
実施の形態では、大きな荷重が加わる可能性があるブラケット8、23、24をそれぞれ、フレーム部材4の角部4c、フレーム部材20の角部20c、及びフレーム部材20の角部20cに配置している。一般に、L字状に曲成したパイプの角部は、直線状のパイプの部分に比べて強度が増大する。したがって、大きな荷重が加わる可能性のある角部4c、20c、21cの強度を増大させることができる。
【0025】
更に、実施の形態では、フレーム部材4、20、21はそれぞれ、一般鋼のパイプである。即ち、まっすぐなパイプをベンダなどでL字状に曲成することにより、容易に形成することができる。L字状に曲成された角部4c、20c、21cは、また、L字状に形成した各フレームを枠組みする前に、応力が集中するため強度が必要な部分に、高周波焼き入れ、液体浸炭、ガス浸炭などの熱処理を容易に施すことができる。例えば、応力が集中しやすい角部4c、21c、20cなどに熱処理を施し、高張力鋼と同等の強度を得ることが望ましい。また、フレーム部材21の上部21aのベルトガイド26が取り付けられた部位にも荷重が加わる。したがって、フレーム部材21の上部21aのベルトガイド26が取り付けられる部位に熱処理を施してもよい。
【0026】
更に、シートフレーム(4、5、6)、(20、21)に用いるフレーム部材4、5、6、20、21は、一般鋼のパイプである。したがって、枠組み加工の際の成形を容易に実施することができる。このように、本発明の実施の形態によれば、所望の形状を容易に安価に形成することができ、且つ応力が集中する部位に必要な強度を得ることができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 自動車用シート
(4、5、6)、(20、21) シートフレーム
20 フレーム部材(第2フレーム部材)
21 フレーム部材(第1フレーム部材)
21a 上部
21b 側部(第1側部)
21c 角部(第1角部)
24 ブラケット
25 リトラクタベース
26 ベルトガイド
29 ロック部材
図1
図2