(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プライマリ圧制御手段は、前記差分が負であれば前記プライマリ圧指示値に前記差分を加算して前記プライマリ圧指示値を小さく補正する前記同圧制御時補正制御を実施する、請求項1または2記載の無段変速機の制御装置。
前記プライマリ圧制御手段は、前記同圧制御時補正制御の開始後、前記セカンダリ実圧の低下が判定されて且つ前記差分が正になったら前記同圧制御時補正制御を終了する、請求項3記載の無段変速機の制御装置。
前記同圧制御においては、前記差分が負であって且つその大きさが所定値以上になったことから前記ライン圧の実際の油圧が前記セカンダリ実圧と同圧になったことを判定し、
前記セカンダリ圧指示値を底上げさせる前記所定量は前記所定値に基づいて設定される、請求項2記載の無段変速機の制御装置。
前記各制御で用いられる前記セカンダリ実圧は、前記セカンダリ圧検出手段により検出された値をローパスフィルタで処理した値である、請求項1〜5の何れか1項に記載の無段変速機の制御装置。
入力側のプライマリプーリ及び出力側のセカンダリプーリとこれらのプーリに掛け渡されたベルトとを備えると共に、セカンダリ圧を制御するセカンダリ圧制御手段と、プライマリ圧を制御するプライマリ圧制御手段と、ライン圧を制御するライン圧制御手段と、前記ライン圧を前記セカンダリ圧と同圧にする同圧制御を実施する同圧制御手段と、を備えた無段変速機を制御する制御方法であって、
前記セカンダリ圧制御手段は、必要トルク伝達容量に基づき前記セカンダリプーリに供給するセカンダリ圧の指示値であるセカンダリ圧指示値を設定して前記セカンダリ圧指示値に基づき前記セカンダリ圧を制御し、
前記プライマリ圧制御手段は、目標変速比に基づき前記プライマリプーリに供給するプライマリ圧の指示値であるプライマリ圧指示値を設定して前記プライマリ圧指示値に基づき前記プライマリ圧を制御し、
前記ライン圧制御手段は、前記セカンダリ圧指示値又は前記プライマリ圧指示値に基づいてライン圧の指示値であるライン圧指示値を設定して前記ライン圧指示値に基づき前記ライン圧を制御するものであって、
前記セカンダリ圧が前記プライマリ圧よりも高い運転状態であることを含む所定の開始条件が成立したら所定の終了条件が成立するまで、前記同圧制御を実施し、
前記同圧制御では、
前記セカンダリ圧制御手段により、前記セカンダリ圧指示値を所定量だけ底上げさせるセカンダリ圧底上げステップと、
前記セカンダリプーリに供給された実際の油圧であるセカンダリ実圧を検知し、前記セカンダリ実圧に基づいて前記底上げステップの完了を判定したら、前記ライン圧制御手段により、前記ライン圧指示値を徐々に低下させるライン圧下げステップと、
前記セカンダリ実圧の低下から前記ライン圧の実際の油圧が前記セカンダリ実圧と同圧になったことを判定したら、前記ライン圧制御手段により、前記セカンダリ実圧が前記セカンダリ圧指示値となるように前記ライン圧を制御するライン圧制御ステップと、を順に実施し、
前記同圧制御の実施中には、前記プライマリ圧制御手段により、前記セカンダリ実圧から前記セカンダリ圧指示値を減じた差分を演算し、前記差分が負であれば前記差分に基づいて前記プライマリ圧指示値を補正する同圧制御時補正制御を実施して前記プライマリ圧を制御する、
無段変速機の制御方法。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速機(以下、CVTという)は、エンジンのトルクが入力される入力側のプライマリプーリとトルクを車輪に出力する出力側のセカンダリプーリとの間にベルトが掛け渡されて構成される。プライマリプーリ及びセカンダリプーリは、V溝を形成する固定プーリ及び可動プーリをそれぞれ備えており、各可動プーリは、ライン圧を元圧として作り出されたプライマリプーリ圧(以下、プライマリ圧とも呼ぶ)及びセカンダリプーリ圧(以下、セカンダリ圧とも呼ぶ)により固定プーリに向けて付勢される。これによりベルトがプーリに挟持され、プライマリプーリ及びセカンダリプーリ間での動力伝達が行われる。
【0003】
ところで、ライン圧はオイルポンプからの吐出圧を元圧として作り出されるため、ライン圧の高さが燃費を大きく左右することが知られている。また、ライン圧が必要以上に高圧であると、変速機の回転部分や摺動部分でのフリクションを高める要因となってしまうため、従来からライン圧を必要プーリ圧まで低下させ、オイルポンプの吐出圧を低下させるとともにフリクションを低減させることで、燃費を向上させる技術が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1に記載のライン圧制御装置では、目標ライン圧を、必要とするプライマリ圧と必要とするセカンダリ圧との大きい方の値と同じ値に設定することで、ライン圧を必要最小限の値に調圧して燃費効果を高めている。この技術ではさらに、セカンダリ圧よりもプライマリ圧が高圧となるハイ側において、変速アクチュエータの取り付け誤差などに伴うライン圧制御への影響を排除し、ライン圧が無用に補正されないようにすることで、ライン圧が過大となることによる燃費悪化やライン圧の不足による目標変速比未達の発生を抑制している。
【0005】
なお、特許文献1では、必要とするセカンダリ圧は実変速比と入力トルクとに基づいて求められ、センサで検出されたセカンダリプーリ実圧との偏差に応じたフィードバック制御が行われている。即ち、セカンダリプーリ実圧が必要とするセカンダリ圧に一致するように、フィードバック制御によってセカンダリプーリ室に繋がる油路に介装された減圧弁が制御されている。
【0006】
特許文献1に記載の、ライン圧を必要とするプライマリ圧と同じ値に制御する技術は、変速比がハイ側である場合に特に有効である。また、変速比がロー側である場合もライン圧を必要とするセカンダリ圧と同じ値に制御することで、変速比の全域においてフリクションを低減させることが可能である。即ち、プライマリ圧とセカンダリ圧のうち、高い方のプーリ圧に合わせてライン圧を制御することで、必要最小限のライン圧を確保しつつ燃費効果を高めることができる。
【0007】
ところで、通常、CVTでは、フィードバック制御を用いてプーリ圧が指示値(即ち、プーリ圧指示値)になるように制御する。このため、フィードバック制御を実行するために、プーリ圧を検出するプーリ圧センサが装備される。例えば、変速比がロー側にあってライン圧をセカンダリ圧に合わせる制御をする場合、ライン圧がセカンダリ圧指示値になるように制御することで燃費効果を高めることが有効である。しかし、ライン実圧を検知するための油圧センサを備えていない場合、ライン実圧を直接把握することはできない。なお、ここで、ライン実圧,セカンダリ実圧とは油圧センサにより検出された値を言う。
【0008】
そこで、予めライン圧指示値を制御し、ライン実圧とセカンダリ実圧とを同圧に制御する(これを、同圧制御と呼ぶ)ことで、セカンダリ実圧を検出するプーリ圧センサ(セカンダリ圧センサ)の検出値をライン実圧に相当するものとできるようにし、セカンダリ圧センサの検出値がセカンダリ圧指示値になるようにフィードバック制御によって制御することが有効になる。
【0009】
セカンダリ圧のフィードバック制御中に、ライン圧とセカンダリ圧とを同圧にする同圧制御をする場合には、ライン圧指示値を現在の値から低下させればよい。つまりライン圧でセカンダリ圧の上限値が規制されるので、ライン圧指示値を低下させライン圧を低下させることにより検出可能なセカンダリ圧がライン圧の低下と共に引き下げられる。したがって、ライン圧指示値を低下させていってセカンダリ実圧が引き下げられたことが判明したら、ライン圧とセカンダリ圧とが同圧状態になったと判定することができる。
【0010】
そして、かかる同圧状態の判定(同圧判定)がなされたら、その後はセカンダリ実圧がライン実圧に相当するとみなすことができる。そこで、同圧判定後は、セカンダリ実圧が目標セカンダリ圧に近づくようにフィードバック制御する制御量(即ち、フィードバック補正量)をライン圧指示値の制御に反映させることで、ライン圧とセカンダリ圧との同圧状態を維持しつつ、このライン圧制御によりセカンダリ圧を目標セカンダリ圧に調整することができる。
【0011】
ただし、ライン圧指示値を低下させていってセカンダリ実圧が引き下げられたことから同圧判定を行なうので、この判定にはセカンダリ圧の低下を伴うことになる。しかも、判定材料のセカンダリ実圧を検出する油圧センサは、通常、検出値に細かい(高周波の)振動成分を含んで値が安定しない。油圧センサの検出値をローパスフィルタで処理してこうした振動成分の除去を図ったとしても、セカンダリ実圧がある程度の大きさだけ低下しなければ同圧になったことを判定することはできない。
【0012】
セカンダリ実圧が低下すると、ベルトのスリップを招くおそれが発生するので、これを回避するため、上記のようにライン圧指示値を低下させる直前に、同圧判定に要するセカンダリ圧の低下を考慮して、予めセカンダリ圧が低下する分だけセカンダリ圧を上昇させる制御を行なう。つまり、同圧制御としては、まず、セカンダリ圧指示値を所定量だけ上昇させ、セカンダリ実圧が所定量だけ上昇したらライン圧指示値低下させていき、これによって、セカンダリ実圧がセカンダリ圧指示値を所定量だけ上昇させる前の状態まで低下したら同圧状態になったと判定し、その後はセカンダリ実圧をライン実圧とみなして、セカンダリ実圧がセカンダリ圧指示値に近づくようにライン圧を制御する。
【0013】
ところが、このように同圧制御を実施した場合に、ライン圧指示値を低下させてセカンダリ圧が引き下げられている間に、変速比が不安定に変動する症状が発生することが分かった。この症状の発生メカニズムを考察すると、以下のことが推測できる。
【0014】
つまり、同圧制御の際にも、プライマリプーリ側は、それぞれの回転センサにより検出されたプライマリプーリ回転数及びセカンダリプーリ回転数から得られる実変速比が目標変速比となるように、プライマリ圧をフィードバック制御される。上記のようにセカンダリ圧が引き下げられると、セカンダリプーリのプーリ径が縮小側に変化し、実変速比がハイ側に変化する。これを受けて、実変速比のハイ側への変化を抑えるようにプライマリ圧指示値を減少させる。しかし、このプライマリ圧のフィードバック制御に伴う応答遅れがあるため、実変速比のハイ側への変化を十分に抑えることができず、実変速比の変動が大きくなってしまうものと考えられる。
【0015】
本発明は、上記のような課題に鑑み創案されたもので、ライン圧を必要最小限に制御して燃費向上を図るとともに、これに伴う変速比の不安定な変動の発生を抑制することができるようにした、無段変速機の制御装置及び制御方法を提供することを目的としている。この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
また、後述の油圧制御において、ライン圧、プライマリ圧、セカンダリ圧を制御するが、各油圧の実際の値は、ライン実圧、プライマリ実圧、セカンダリ実圧と呼び、このうち、プライマリ実圧及びセカンダリ実圧についてはセンサで検出されたものとする。また、プライマリ圧、セカンダリ圧については目標値を与えるが、これらをプライマリ圧目標値、セカンダリ圧目標値と呼ぶ。さらに、プライマリ圧やセカンダリ圧が目標プライマリ圧や目標セカンダリ圧となるように指令(指示)するための各指示値を、プライマリ圧指示値、セカンダリ圧指示値と呼ぶ。また、ライン圧の指示値をライン圧指示値と呼ぶ。
【0027】
[1.全体システム構成]
図1は、本実施形態に係る制御装置が適用された車両の駆動系と制御系を示す全体システム図である。
図1に示すように、車両の駆動系は、駆動源であるエンジン(内燃機関)1と、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、ベルト式無段変速機構4と、終減速機構5と、駆動輪6,6とを備えている。なお、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とベルト式無段変速機構4と終減速機構5とをトランスミッションケース内に収納することによりベルト式無段変速機100(以下、CVT100という)が構成される。
【0028】
エンジン1には、スロットルバルブ開閉動作や燃料カット動作等により出力トルク制御を行う出力トルク制御アクチュエータ10が装備される。これによって、エンジン1は、ドライバによるアクセル操作による出力トルクの制御以外に、外部からのエンジン制御信号による出力トルクの制御も可能になっている。
【0029】
トルクコンバータ2は、トルク増大機能を有する発進要素であり、トルク増大機能を必要としないとき、エンジン出力軸11(=トルクコンバータ入力軸)とトルクコンバータ出力軸21とを直結可能なロックアップクラッチ20を有する。このトルクコンバータ2は、エンジン出力軸11にコンバータハウジング22を介して連結されたポンプインペラ23と、トルクコンバータ出力軸21に連結されたタービンライナ24と、ケースにワンウェイクラッチ25を介して設けられたステータ26とを構成要素とする。
【0030】
前後進切替機構3は、ベルト式無段変速機構4への入力回転方向を前進走行時の正転方向と後退走行時の逆転方向とで切り替える機構である。この前後進切替機構3は、遊星歯車機構30と、複数のクラッチプレートから成る前進クラッチ31と、複数のブレーキプレートから成る後退ブレーキ32とを有する。遊星歯車機構30は、例えばダブルピニオン式であり、サンギヤがトルクコンバータ出力軸21に連結され、キャリアが変速機入力軸40に連結される。前進クラッチ31は、前進走行時に締結し、遊星歯車機構30のサンギヤとキャリアとを直結する。後退ブレーキ32は、後退走行時に締結し、遊星歯車機構30のリングギヤをケースに固定する。
【0031】
ベルト式無段変速機構4は、ベルト接触径の変更により変速機入力軸40の入力回転数と変速機出力軸41の出力回転数との比である変速比(変速機入力回転数/変速機出力回転数)を無段階に変化させる無段変速機能を備える。このベルト式無段変速機構4は、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、ベルト44とを有し、作動油(ATF;(Automatic Transmission Fluid)の油圧によって制御される。
【0032】
プライマリプーリ42は、固定プーリ42a及びスライドプーリ42bにより構成され、スライドプーリ42bは、プライマリ油圧室45に導かれるプライマリ圧(プライマリプーリ圧とも呼ぶ)Ppriにより軸方向にスライド移動する。セカンダリプーリ43は、固定プーリ43a及びスライドプーリ43bにより構成され、スライドプーリ43bは、セカンダリ油圧室46に導かれるセカンダリ圧(セカンダリプーリ圧とも呼ぶ)Psecにより軸方向に移動する。
【0033】
プライマリプーリ42の固定プーリ42a及びスライドプーリ42bの各対向面であるシーブ面、及び、セカンダリプーリ43の固定プーリ43a及びスライドプーリ43bの各対向面であるシーブ面は、何れもV字形状をなし、ベルト44の両側のフランク面はこれらの各シーブ面と接触する。即ち、ベルト44は、プライマリプーリ42のV字形状をなすシーブ面とセカンダリプーリ43のV字形状をなすシーブ面とに掛け渡されている。各スライドプーリ42b,43bの移動に応じて、プライマリプーリ42及びセカンダリプーリ43へのベルト44の巻付き半径が変更されることにより、変速比が変更される。
なお、ベルト44は、多数のコマを無端のベルトにより結合したものであってもよいし、ゴムベルトやチェーンで構成してもよい。
【0034】
終減速機構5は、ベルト式無段変速機構4の変速機出力軸41からの変速機出力回転を減速すると共に差動機能を与えて左右の駆動輪6,6に伝達する機構である。この終減速機構5は、変速機出力軸41と左右のドライブ軸51,51との間に介装され、変速機出力軸41に設けられた第一ギヤ52,アイドラ軸50に設けられた第二ギヤ53,第三ギヤ54及び最終減速ギヤ55と、差動機能を持つディファレンシャルギヤ56とを有する。
【0035】
車両の制御系のうち、特にCVT100の制御系は、
図1に示すように、変速油圧コントロールユニット7と、CVT電子コントロールユニット8(制御装置、以下、CVTECU8という)とを備えている。また、このCVTECU8と情報を授受するエンジンコントロールユニット9(以下、エンジンECU9という)が装備されている。なお、各電子コントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)8,9は、入出力装置,多数の制御プログラムを内蔵した記憶装置(ROM,RAM等),中央処理装置(CPU),タイマカウンタ等を備えて構成される。
【0036】
油圧コントロールユニット7は、プライマリ油圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriと、セカンダリ油圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecとを作り出す油圧制御ユニットである。この油圧コントロールユニット7は、オイルポンプ70と、レギュレータ弁71と、ライン圧ソレノイド72と、プライマリ圧減圧弁73と、プライマリ圧ソレノイド74と、セカンダリ圧減圧弁75と、セカンダリ油圧ソレノイド76と、を備えている。
【0037】
レギュレータ弁71は、オイルポンプ70からの吐出圧を元圧として、ライン圧を調圧する弁である。このレギュレータ弁71は、ライン圧ソレノイド72によって駆動され、オイルポンプ70から圧送された油圧を、CVTコントロールユニット8からの指令に応じて所定のライン圧に調圧する。
【0038】
プライマリ圧減圧弁73及びセカンダリ圧減圧弁75は、レギュレータ弁71により作り出されたライン圧を元圧として、プライマリ油圧室45及びセカンダリ油圧室46にそれぞれ導かれるプライマリ圧Ppri及びセカンダリ圧Psecを調圧する弁である。これらの減圧弁73,75は、それぞれプライマリ圧ソレノイド74及びセカンダリ油圧ソレノイド76によって駆動され、CVTコントロールユニット8からの指令に応じてライン圧を減圧して所定のプライマリ圧Ppri及びセカンダリ圧Psecに制御する。
【0039】
CVTコントロールユニット8には、プライマリプーリ42の回転速度(単位時間回転数)Npriを検出するプライマリ回転センサ80、セカンダリプーリ43の回転速度(単位時間回転数)Nsecを検出するセカンダリ回転センサ81、セカンダリ圧Psecを検出するセカンダリ圧センサ82a、プライマリ圧Ppriを検出するプライマリ圧センサ82b、作動油の温度OTを検出する油温センサ83、シフトポジションを検知するインヒビタースイッチ84、車両のブレーキスイッチ85、車両のアクセル開度センサ86、車両のスロットル開度センサ87等の各種センサが接続され、これらのセンサ情報やスイッチ情報が入力される。また、CVTECU8には、エンジンECU9からトルク情報が入力され、CVTECU8は、エンジンECU9に対してトルクリクエストを出力する。なお、セカンダリ圧センサ82a及びプライマリ圧センサ82bの検出値は、図示しないローパスフィルタで処理して微小な(高周波の)振動成分の除去を図った上でCVTコントロールユニット8にて各制御に使用される。
【0040】
CVTECU8は、所定の制御指令(ライン圧指示値)をライン圧ソレノイド72に出力するライン圧制御、所定のセカンダリ圧目標値Psec_tgを得る制御指令(セカンダリ圧指示値Psec_co)をセカンダリ油圧ソレノイド76に出力するセカンダリ圧制御、所定のプライマリ圧目標値Ppri_tgを得る制御指令(プライマリ圧指示値Ppri_co)をプライマリ油圧ソレノイド75に出力するプライマリ圧制御、前進クラッチ31及び後退ブレーキ32の締結/解放を制御する前後進切替制御等を行なう。
【0041】
CVTECU8には、これらのセカンダリ圧Psec、プライマリ圧Ppri、ライン圧の制御を行なうセカンダリ圧制御部(セカンダリ圧制御手段)8a、プライマリ圧制御部(プライマリ圧制御手段)8b、ライン圧制御部(ライン圧制御手段)8cがそれぞれ機能要素として備えられている。また、CVTECU8には、これらのセカンダリ圧制御部8a、プライマリ圧制御部8b、ライン圧制御部8cを通じて、本装置に特徴的な同圧制御を実施する同圧制御部(同圧制御手段)8dが機能要素として備えられている。
【0042】
まず、基本的なセカンダリ圧指示値Psec_co、プライマリ圧指示値Ppri_co、ライン圧指示値PL_coの設定を説明する。
セカンダリ圧制御部8aは、エンジンECU9からの情報からベルト式無段変速機構4により伝達するトルク容量を算出しこの伝達トルク容量からセカンダリ圧目標値Psec_tgを導出してセカンダリ圧指示値Psec_coを設定する。なお、セカンダリ圧指示値Psec_coはこのセカンダリ圧目標値Psec_tgに、セカンダリ実圧Psecに基づくフィードバック補正量を加算することで設定するので、セカンダリ圧目標値Psec_tgは油圧FB(フィードバック)前のセカンダリ圧指示値であり、セカンダリ圧指示値Psec_coは油圧FB後のセカンダリ圧指示値でもある。
【0043】
プライマリ圧制御部8bは、エンジンECU9から目標変速比の情報を入手してこの目標変速比と実変速比(プライマリプーリ42の回転速度Npri及びセカンダリプーリ43の回転速度Nsecから算出)とセカンダリ圧指示値Psec_coとから、プライマリ圧目標値Ppri_tgを設定し、このプライマリ圧目標値Ppri_tgとプライマリ実圧Ppriとからプライマリ圧指示値Ppri_coを設定する。
【0044】
ライン圧制御部8cはセカンダリ圧指示値Psec_co及びプライマリ圧指示値Ppri_coに基づいてライン圧指示値PL_coを設定する。
通常のライン圧制御では、以下に示すように、セカンダリ圧指示値Psec_co及びプライマリ圧指示値Ppri_coに基づいて、セカンダリ圧指示値Psec_coに余裕圧分αを加算した値(=Psec_co+α)とプライマリ圧指示値Ppri_coに余裕圧分βを加算した値(=Ppri_co+α)とのうちの大きい方をライン圧指示値PL_coに設定する。このような余裕圧分α,βの加算操作についてはライン圧オフセットとも呼び、余裕圧分α,βオフセット量とも呼ぶ。なお、セカンダリ圧指示値Psec_coには、油圧FB前のセカンダリ圧指示値(=セカンダリ圧目標値Psec_tg)と、この油圧FB前のセカンダリ圧指示値を油圧フィードバック補正量で補正した油圧FB後のセカンダリ圧指示値Psec_coとがあり、ここでは、セカンダリ圧指示値Psec_coは、油圧FB前のセカンダリ圧指示値(=セカンダリ圧目標値Psec_tg)の方が大きい場合は油圧FB前のセカンダリ圧指示値Psec_tgを油圧FB前後のセカンダリ圧指示値Psec_tgとする。
PL_co=MAX〔(Psec_co+α),(Ppri_co+β)〕
【0045】
図3はセカンダリ圧指示値Psec_co及びプライマリ圧指示値Ppri_coに基づき設定したライン圧指示値PL_coを示すタイムチャートであり、一点鎖線はセカンダリ圧目標値(油圧FB前のセカンダリ圧指示値)Psec_tgを、破線はセカンダリ圧指示値(油圧FB後のセカンダリ圧指示値)Psec_coを、二点鎖線はプライマリ圧指示値Ppri_coを、実線はライン圧指示値PL_coを、それぞれ示す。このように、ライン圧指示値PL_coをセカンダリ圧指示値Psec_coやプライマリ圧指示値Ppri_coに対して余裕をもった値に設定することにより、セカンダリ圧Psec及びプライマリ圧指示値Ppriを、確実にセカンダリ圧指示値Psec_co及びプライマリ圧指示値Ppri_coに近づけることができる。
【0046】
[2.同圧制御]
[2−1.ライン圧制御]
ライン圧制御には、プーリ圧、即ち、プライマリ圧指示値Ppri_co及びセカンダリ圧指示値Psec_coに応じてライン圧指示値PL_coを設定してこのライン圧指示値PL_coに応じた制御指令をライン圧ソレノイド72に出力する通常のライン圧制御と、所定の開始条件が成立した場合に実施される同圧制御とがある。
【0047】
同圧制御について詳述する。
同圧制御とは、ライン圧PLを必要なプーリ圧まで低下させ、必要なプーリ圧と同圧にする制御であり、これによりオイルポンプ70の吐出圧を低下させるとともにフリクションを低減させることで燃費向上を図る。なお、必要なプーリ圧とは、セカンダリ圧Psecとプライマリ圧Ppriのうち高い方の油圧、即ち、上記の余裕圧分α,βを考慮しないセカンダリ圧指示値Psec_co及びプライマリ圧指示値Ppri_coのうち高い方の油圧値である。つまり、同圧制御では、ライン圧PLがセカンダリ圧指示値Psec_co及びプライマリ圧指示値Ppri_coのうち高い方の油圧まで低下され、減圧弁73,75による調圧が行われずに、ライン圧PLがそのままプライマリ油圧室45又はセカンダリ油圧室46へ導かれる。
【0048】
ここでは、ライン圧PLをセカンダリ圧Psecと同圧状態にする同圧制御について詳述する。この同圧制御(セカンダリ圧との同圧制御)が開始される所定の開始条件は、例えば以下の条件(A)〜(C)の全てが成立することである。
(A)CVT100の運転領域が低車速高回転領域である
(B)油温OTが所定温度OT0以上である(OT≧OT0)
(C)セカンダリ圧指示値Psec_coが所定値以上である(Psec_co≧所定値)
【0049】
上記の条件(A)は、例えばCVTECU8に予め記憶された
図4に示すようなマップを用いて判定される。プライマリ回転センサ80で検出されたプライマリ回転数Npriと、セカンダリ回転センサ81で検出されたセカンダリ回転数Nsecから算出される車速Vとを
図4のマップに適用し、斜線で表す領域Aに該当する運転状態の場合は、条件(A)が成立したと判定される。なお、
図4中には、斜線で表す運転領域A及びドットで表す運転領域Dを、最ローの変速線,最ハイの変速線と共に示しており、この最ローの変速線を含む領域Aの運転状態での変速比はロー側となるため、プライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecとの関係は、セカンダリ圧Psecの方がプライマリ圧Ppriよりも高い油圧となる(Psec>Ppri)。したがって、条件(A)は「セカンダリ圧Psecの方がプライマリ圧Ppriよりも高い状態である」と言い換えることができる。
【0050】
上記の条件(B)は、油温OTが低い場合には同圧制御を実施しないようにするための温度条件であり、油温センサ83で検出された油温OTを判定基準温度である所定温度OT0と比較して判定される。上記の条件(C)は、後述のセカンダリ圧制御におけるセカンダリ圧指示値Psec_coを判定基準圧である所定値と比較して判定される。なお、所定温度OT0及び所定値は、同圧制御を実施可能な油温及びセカンダリ圧に予め設定されている。
【0051】
次に、同圧制御の内容について、
図5のタイムチャート及び
図7(a)のフローチャートを用いて説明する。上記の開始条件が成立したと判定されると(時刻t0)、ライン圧PLを実際のセカンダリ圧(セカンダリ実圧)Psecと同圧にするための同圧生成処理が開始される。
【0052】
具体的には、時刻t0で同圧制御の開始が判定されると、
図5(a)に示すように、まず、セカンダリ圧制御部8aにより、セカンダリ圧指示値Psec_coを上昇させセカンダリ圧Psecを所定量だけ底上げさせるセカンダリ圧底上げステップを実施する〔
図7(a)のステップS10〕。つまり、セカンダリ圧目標値Psec_tgを所定量だけ増大させ、セカンダリ圧Psecがセカンダリ圧目標値Psec_tgに近づくようにセカンダリ圧指示値Psec_coを上昇させる。このセカンダリ圧の底上げにかかる所定量については後述する。このときには、ライン圧指示値PL_coは通常通りに、セカンダリ圧指示値Psec_coに余裕圧分(オフセット量)αを加算した値とされるので、セカンダリ圧Psecの上昇と共にライン圧指示値PLも同様に上昇する。
【0053】
そして、時刻t1で、セカンダリ実圧Psecに基づいて底上げ完了を判定したら〔
図7(a)のステップS20〕、つまり、セカンダリ実圧Psecが、所定量増大させたセカンダリ圧目標値Psec_tgに達したら、ライン圧制御部8cにより、ライン圧指示値PL_coを所定の傾きで徐々に低下させるライン圧下げステップを実施する〔
図7(a)のステップS30〕。ここでは、
図5(b)に示すように、オフセット量αを減少させることでライン圧指示値PL_coを低下させる。これにより、ライン圧指示値PL_coは目標セカンダリ圧Psec_tgに接近し更に目標セカンダリ圧Psec_tgよりも低圧にされる。セカンダリ実圧Psecは実際のライン圧(ライン実圧)PLよりも高圧にはならないため、ライン実圧PLがセカンダリ圧目標値Psec_tgよりも低圧にされると、セカンダリ実圧Psecはセカンダリ圧目標値Psec_tgよりも低圧になる。
【0054】
即ち、セカンダリ実圧Psecは、ライン圧PLがセカンダリ圧目標値Psec_tgよりも低くなった時刻t2からライン圧PLによって引き下げられる状態となり、これによりセカンダリ圧目標値Psec_tgとセカンダリ実圧Psecとの間にずれが生じる。ライン実圧PLは直接検出できないがセカンダリ実圧Psecはセカンダリ圧センサ82aにより検出できる。そこで、このずれの大きさ(セカンダリ実圧Psecからセカンダリ圧目標値Psec_tgを減算した差分ΔPsecの大きさ)を算出することができ、この差分ΔPsecは負の値であり、差分ΔPsecの大きさが所定値Pc以上になったときにライン実圧PLがセカンダリ実圧Psecと同圧になったと判定され(時刻t3)、同圧生成処理が終了され、これが判定される〔
図7(a)のステップS40〕。
【0055】
なお、所定値Pcは、セカンダリ圧目標値Psec_tgからセカンダリ実圧Psecが偏移したことを判定し得る値(例えば油圧振動の振幅よりも大きな値)に予め設定されており、以下、同圧判定値Pcという。また、この判定を同圧完了判定といい、同圧完了判定された時刻t3を同圧完了時点という。つまり、同圧完了時点t3で、ライン圧PLを低下させる制御が終了される。セカンダリ圧底上げステップでセカンダリ圧目標値Psec_tgを増大する際の所定量は、この所定値Pcと一致するように設定される。ただし、セカンダリ圧センサ82aの検出値をローパスフィルタで処理した値は、セカンダリ実圧Psec同圧完了時点t3よりも前の時点t2でセカンダリ圧目標値Psec_tgよりも低下する。
【0056】
同圧完了判定後(時刻t3以降)は、後述のセカンダリ圧制御における油圧フィードバック制御によって演算された油圧フィードバック補正量FB〔
図5(c)参照〕がライン圧指示値PL_coに反映され、ライン実圧PLとセカンダリ実圧Psecとの同圧状態が維持されながら、ライン実圧PL(セカンダリ圧センサ82aにより検出されるセカンダリ実圧Psec)がセカンダリ圧目標値Psec_tgに近づけられる〔
図7(a)のステップS50のライン圧の同圧制御〕。
【0057】
ライン実圧PLとセカンダリ実圧Psecとを同圧状態とする実質的な同圧制御領域は時点t4までであり、時点t4からは同圧制御を終了するためにライン圧PLのオフセット値を徐々に上昇させて、ライン圧指示値PL_coをセカンダリ圧目標値Psec_tgから離す制御を行っている。しかし、時点t4以降も時点t5までは、油圧フィードバック補正量FBがライン圧指示値PL_coに反映されるため、ライン圧指示値PL_coの上昇は抑制される。一方、セカンダリ実圧Psecもセカンダリ圧指示値Psec_coよりもライン圧指示値PL_coが小さいため、ライン実圧PLとセカンダリ実圧Psecとが同じ圧力となる同圧状態が時点t5まで維持される。時点t5以降は、油圧フィードバック補正量FBがなくなるため、ライン圧PLのオフセット値に応じてライン圧指示値PL_coとライン実圧PLが上昇し、セカンダリ実圧Psecと完全に乖離した時点t6において完全に同圧制御が終了〔
図7(a)のステップS60〕し、通常のライン圧制御に戻る。
【0058】
ライン圧PLをセカンダリ圧Psecと同圧状態にする同圧制御(セカンダリ圧との同圧制御)が終了される条件は、例えば以下の条件(D)が成立することである。
(D)運転領域がセカンダリ圧指示値Psec_co<プライマリ圧指示値Ppri_coの領域である
条件(D)は、例えば運転状態が
図4のマップのうちドットで表す領域Dに該当する場合に成立したと判定される。セカンダリ圧との同圧制御の終了条件が成立したと判定された場合は、通常のライン圧制御が実施される。
【0059】
[2−2.プライマリ圧制御]
本装置では、この同圧制御中に、特有のプライマリ圧制御を行なうようになっている。
図2に示すように、セカンダリ圧目標値Psec_tgはベルト式無段変速機構4の伝達トルク容量に基づいて設定され、セカンダリ圧指示値Psec_coはセカンダリ圧目標値Psec_tgとセカンダリ実圧Psecとに基づいて設定される。また、プライマリ圧目標値Ppri_tgは、通常、目標変速比と実変速比(プライマリプーリ42の回転速度Npri及びセカンダリプーリ43の回転速度Nsecから算出)とセカンダリ圧指示値Psec_coとから設定し、プライマリ圧指示値Ppri_coは、このプライマリ圧目標値Ppri_tgとプライマリ実圧Ppriとから設定される。
【0060】
したがって、このように、プライマリ圧Ppriは、基本的に、プライマリプーリ42の回転速度Npri及びセカンダリプーリ43の回転速度Nsecから算出される実変速比に基づくフィードバック制御で行なうが、同圧制御中には、
図7(b)に示すように、セカンダリ実圧Psecからセカンダリ指示値Psec_coを減じた差分ΔPsecを演算し〔ステップS110〕、この差分ΔPsecが負であるかを判定し〔ステップS120〕、この差分ΔPsecが負であれば差分ΔPsecに基づいてプライマリ圧目標値Ppri_tgを補正して、これによりプライマリ圧指示値Ppri_coを補正する同圧制御時補正制御を実施し〔ステップS130〕、差分ΔPsecによりフィードフォワード制御を行なう。
【0061】
この同圧制御時補正制御について、具体的には、
図2に示すように、差分ΔPsecが負であればその時点のフィードバック後のプライマリ圧指示値Ppri_coに差分ΔPsecを加算したものを新たにプライマリ圧指示値Ppri_coに設定する。加算する差分Δpsecは負なので、新たにプライマリ圧指示値Ppri_coは減少して小さな値となる。また、ここでは、差分ΔPsecをそのままプライマリ圧指示値Ppri_coに加算しているが、プライマリ圧指示値Ppri_coの補正は、差分ΔPsecをそのまま加算するものに限らない。また、差分ΔPsecが0以上になればこの制御(プライマリ圧Ppriの同圧制御時補正制御)を終了する〔ステップS140〕。
【0062】
図6はこのプライマリ圧Ppriの同圧制御時補正制御を説明するタイムチャートであり、
図6(a)に斜線を付して示すように差分ΔPsecが負になると、
図6(b)に斜線を付して示すようにこの差分ΔPsecに応じてプライマリ圧指示値Ppri_coも減少する。
図6(b)において、細い二点鎖線で示すものは、この同圧制御時補正制御を行なわない場合のライマリプーリ圧指示値Ppri_co1であり、太い二点鎖線で示すものは、この同圧制御時補正制御を行なった場合のライマリ圧指示値Ppri_co2である。
【0063】
同圧制御時補正制御を行なわない場合、プライマリ圧指示値Ppri_coの減少が遅れて、
図6(c)に示すように、目標変速比に対する実変速比の偏差が大きくなり、変速比が不安定に変動する。同圧制御時補正制御を行なった場合、プライマリ圧指示値Ppri_coの減少が適正なタイミングで行なわれ、
図6(d)に示すように、目標変速比に対する実変速比の偏差が小さくなり、変速比は安定する。
【0064】
[作用及び効果]
本発明の一実施形態にかかる無段変速機の制御装置及び制御方法は上述のように構成され、同圧制御により、ライン圧が必要なプーリ圧(セカンダリ圧)まで低下されるので、オイルポンプの吐出圧を低下させるとともにフリクションを低減させることができ、燃費を向上させることができる。
【0065】
この同圧制御の実施中には、セカンダリ実圧Psecが低下したことからライン圧PLがセカンダリ圧Ppriと同圧になったことを判定するので、この判定に伴いセカンダリ実圧Psecが低下し、これに起因して変速比の不安定な変動を招き易くなるが、セカンダリ実圧Psecがセカンダリ圧指示値Psec_coよりも低下したら、即ち、セカンダリ実圧Psecからセカンダリ圧指示値Psec_coを減じた差分ΔPsecが負になれば、この差分(低下分)ΔPsecに基づいてプライマリプーリ圧指示値Ppri_coを補正する同圧制御時補正制御を実施してプライマリ圧Ppriを制御するので、上記の変速比の不安定な変動が抑制され、実変速比を、目標の変速比に近い状態に安定させることができる。
【0066】
また、同圧制御時補正制御の開始後、セカンダリ実圧Psecの低下が判定され且つ差分ΔPsecが正になったら同圧制御時補正制御を終了するため、プライマリプーリ圧指示値Ppri_coの必要かつ十分な補正を実施することができる。
【0067】
また、同圧制御では、差分ΔPsecが負であって且つその大きさが所定値(同圧判定値Pc)以上になったことからライン実圧PLがセカンダリ実圧Psecと同圧になったことを判定し、セカンダリ圧指示値PL_coを底上げ(増加)させる際の所定量をこの所定値(同圧判定値Pc)に基づき、この所定値(同圧判定値Pc)と一致するように設定するので、セカンダリ圧指示値PL_coの過剰な底上げを回避し、適切に底上げをすることができる。ただし、底上げ(増加)させる際の所定量は同圧判定値Pcと必ずしも一致させなくても良い。
【0068】
[その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、プライマリ圧指示値Ppri_coの補正は、差分ΔPsecをそのままプライマリ圧指示値Ppri_coに加算する以外に、差分ΔPsecに一定の係数を掛けたものをプライマリ圧指示値Ppri_coに加算したりしてもよい。