特許第6268310号(P6268310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6268310絶縁性熱硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268310
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】絶縁性熱硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20180115BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20180115BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C08L63/00 Z
   C08G59/24
   H05K1/03 610L
【請求項の数】9
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-570509(P2016-570509)
(86)(22)【出願日】2015年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2015084727
(87)【国際公開番号】WO2016117237
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2016年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-9670(P2015-9670)
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 智崇
(72)【発明者】
【氏名】中条 貴幸
【審査官】 海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−175459(JP,A)
【文献】 特開2000−030533(JP,A)
【文献】 特開平02−281068(JP,A)
【文献】 特開2004−149758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤および硬化促進剤のいずれか一方または双方と、
(C)非金属フィラーと、
さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂と、を含有し、穴埋め用途に用いられることを特徴とする絶縁性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
溶剤を含まない請求項1記載の絶縁性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
半固形エポキシ樹脂および固形エポキシ樹脂を含まない請求項1または2記載の絶縁性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤が、フェノール樹脂、活性エステル樹脂およびシアネートエステル樹脂のうちのいずれか少なくとも1種を含む請求項1〜3のうちいずれか一項記載の絶縁性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)非金属フィラーが、炭酸カルシウムおよびシリカのうちのいずれか一方または双方を含む請求項1〜のうちいずれか一項記載の絶縁性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
フィルム上に、請求項1〜のうちいずれか一項記載の絶縁性熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項7】
前記樹脂層の残溶剤量が、溶剤を含む樹脂層全量基準で、1質量%未満である請求項記載のドライフィルム。
【請求項8】
請求項1〜のうちいずれか一項記載の絶縁性熱硬化性樹脂組成物、または、請求項または記載のドライフィルムの前記樹脂層を、硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【請求項9】
請求項記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「組成物」とも称する)、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関し、詳しくは、プリント配線板の製造用として従来よりもより優れた性能を備える熱硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層プリント配線板の製造方法として、内層回路板の導体層上に樹脂絶縁層と導体層を交互に積み上げていくビルドアップ方式の製造技術が注目されている。例えば、回路形成された内層回路板にエポキシ樹脂組成物を塗布し、加熱硬化した後、粗化剤により表面に凸凹状の粗化面を形成し、導体層をめっきにより形成する多層プリント配線板の製造法が提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。また、回路形成された内層回路板にエポキシ樹脂組成物の接着シートをラミネートし、加熱硬化した後、粗化剤により表面に凸凹状の粗化面を形成し、導体層をめっきにより形成する多層プリント配線板の製造法が提案されている(特許文献3参照)。
【0003】
ここで、従来のビルドアップ法による多層プリント配線板の層構造の形成方法の一例を、図1を参照しながら説明する。まず、絶縁基板101の両面にあらかじめ内層導体パターン103と樹脂絶縁層104が形成された積層基板Xの両面に外層導体パターン108を形成し、その上に、エポキシ樹脂組成物等の絶縁性の樹脂組成物を塗布等により設け、加熱硬化させ、樹脂絶縁層109を形成する。次いで、スルーホール孔121等を適宜設けた後、樹脂絶縁層109の表面に無電解めっき等により導体層を形成し、次いで常法に従って、導体層に所定の回路パターンを形成し、最外層導体パターン110を形成することができる。図中、符号103aはコネクション部、120はスルーホール、122はコネクション部をそれぞれ示す。
【0004】
多層プリント配線板における、層間に設けられる樹脂絶縁層(以下、「層間絶縁層」とも称する)の形成方法の一つとして、上記特許文献3に記載のように、エポキシ樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物をフィルム上に塗布乾燥して得られた樹脂層を有するドライフィルムをラミネート後に熱硬化することによって形成する方法が用いられている。このような多層プリント配線板の製造に適用される樹脂組成物としては、例えば、特許文献4に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂を含む複数のエポキシ樹脂を併用したものが開示されている。
【0005】
一方で、多層プリント配線板においては、スルーホールやバイアホール等の凹部や貫通孔に充填するための永久穴埋め用組成物の開発が望まれている。一般に、プリント配線板の永久穴埋め用組成物としては、熱硬化型のエポキシ樹脂組成物が広く用いられており、このような樹脂組成物を用いたプリント配線板の永久穴埋め加工は、通常、エポキシ樹脂組成物をプリント配線板の穴部に充填する工程と、充填された組成物を加熱して研磨可能な状態に予備硬化する工程と、予備硬化した樹脂組成物の穴部表面からはみ出している部分を研磨・除去する工程と、予備硬化した樹脂組成物をさらに加熱して本硬化する工程と、により行われる。プリント配線板の穴埋め用エポキシ樹脂組成物としては、実質的に溶媒を含まないものが用いられ、例えば、特許文献5,6に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−304931号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平7−304933号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2010−1403号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2014−28880号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平10−075027号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開平11−222549号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、種々の用途で、エポキシ樹脂組成物が用いられている。しかし、従来使用されているエポキシ樹脂を含有する組成物では、ドライフィルムの形態としたとき、ドライフィルムの柔軟性が低下するという問題があった。また、従来使用している液状エポキシ樹脂を含有する組成物から得られる硬化物は、ガラス転移温度が比較的低かったり、ボイドが発生しやすいという問題もあった。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記課題を解決して、従来よりもより優れた性能を備える熱硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、エポキシ樹脂として、従来使用されていなかったビスフェノールE型エポキシ樹脂を用いることで、上記課題を解決し得ることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂と、(B)硬化剤および硬化促進剤のいずれか一方または双方と、(C)フィラーと、を含有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の組成物は、プリント配線板の製造に好適に用いられ、特に、プリント配線板の層間絶縁材、ソルダーレジスト、カバーレイ、または、穴埋め用途のいずれかに好適に用いられる。本発明の組成物は、用途に応じ、溶剤を含まないものとすることができ、また、半固形エポキシ樹脂および固形エポキシ樹脂を含まないものとすることもできる。また、本発明の組成物は、用途に応じ、前記硬化剤として、フェノール樹脂、活性エステル樹脂およびシアネートエステル樹脂のうちのいずれか少なくとも1種を含むものとすることができ、さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂を含むものとすることもできる。また、本発明の組成物においては、前記(C)フィラーが、炭酸カルシウムおよびシリカのうちのいずれか一方または双方を含むことが好ましい。
【0012】
本発明のドライフィルムは、フィルム上に、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。本発明のドライフィルムにおいては、前記樹脂層の残溶剤量が、溶剤を含む樹脂層全量基準で、1質量%未満であることが好ましい。
【0013】
本発明の硬化物は、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物、または、上記本発明のドライフィルムの樹脂層を、硬化させて得られることを特徴とするものである。
【0014】
本発明のプリント配線板は、上記本発明の硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ドライフィルムの柔軟性が良好で、従来使用している液状エポキシ樹脂含有組成物から得られる硬化物よりも硬化物のガラス転移温度が高く、ボイドが発生しにくい熱硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来のビルドアップ法により作製した多層プリント配線板の概略構成を示す部分断面図である。
図2】エポキシ樹脂の液状判定に用いた2本の試験管を示す概略側面図である。
図3】本発明のプリント配線板の製造工程の一部の一例を示す概略断面図である。
図4図3に示す本発明のプリント配線板の製造工程の後の工程の一例を示す概略断面図である。
図5】本発明のプリント配線板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂と、(B)硬化剤および硬化促進剤のいずれか一方または双方と、(C)フィラーと、を含有する点に特徴を有するものである。エポキシ樹脂として、従来使用されていなかったビスフェノールE型エポキシ樹脂を用いるものとしたことで、従来汎用の各種エポキシ樹脂を用いた場合と比較して、より優れた性能を備える熱硬化性樹脂組成物とすることが可能となった。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板の製造用に有用であり、特には、プリント配線板の層間絶縁材、ソルダーレジスト、および、穴埋め用途において好適に用いられる。
本発明の組成物は、保存安定性に優れるので、全ての成分を混合した1液型とすることができる。もちろん、本発明の組成物は、上記(A)成分と上記(B)とを分けた2液型としてもよい。
【0019】
[(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂]
ビスフェノールE型エポキシ樹脂は、下記の構造式で示される骨格を有し、室温において液状であって、類似の構造を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂と比較して、低い粘度および高い耐熱性を備えるという特長を有する。すなわち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、耐熱性の点ではE型と同等である反面、粘度が高く、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、粘度は比較的低いが、耐熱性が低い難点を有するのに対し、ビスフェノールE型エポキシ樹脂は、A型とF型の長所を兼ね備えているといえる。ビスフェノールE型エポキシ樹脂としては、例えば、(株)プリンテック製のEPOX−MK R710,R1710などを使用することができる。
【0020】
例えば、層間絶縁材およびソルダーレジストに用いられる樹脂組成物を、特に、ドライフィルムとして使用する場合、フィルムの柔軟性を維持するために、樹脂成分として液状エポキシ樹脂を使用する必要がある。さらに、樹脂組成物の硬化特性の向上を図るために、液状エポキシ樹脂の使用量を必要最小限に抑えて半固形および固形エポキシ樹脂を使用する手法が考えられるが、従来のビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した場合は、フィルムの柔軟性が不十分となり、樹脂の粉落ちや割れの発生の問題が生ずる。一方、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用した場合は、耐熱性が不十分であった。そのため、フィルムの柔軟性が不十分な場合、柔軟性を上げるために、従来はフィルムの残留溶剤量を増やす手法が用いられていたが、残留溶剤量が多いと、熱硬化時にボイド(膨らみや破泡)が発生しやすくなる問題があった。
【0021】
これに対し、エポキシ樹脂として(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂を用いた本発明の組成物では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した場合よりも粘度が低く、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用した場合よりも耐熱性が高くなる。また、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用した場合と同等のフィルムの柔軟性を得ることができる。これにより、残留溶剤量を低減することができるので、ボイド発生の問題を解消することができる。また、ドライフィルムの残留溶剤量を低減してボイドの問題を解消したことで、通常、無溶剤の液状樹脂組成物の形態で使用される穴埋め用途にもドライフィルムを使用することができるので、プリント配線板の製造において、層間絶縁材、ソルダーレジストおよび穴埋め用途のすべてを1種のドライフィルムで行うことも可能となる。すなわち、従来は穴埋め後にソルダーレジスト層を形成していたが、これらを同時に一工程で行うことが可能となり、ボイドを抑制した高品質の基板を、工程の簡略化やコスト削減を図りつつ得ることが可能となった。
【0022】
一方、例えば、スルーホール等の穴埋め用途に用いられる樹脂組成物は、通常、液状樹脂組成物(穴埋めインキ)として使用されるため、無溶剤でペースト状にするために、液状のエポキシ樹脂が広く用いられている。しかし、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は粘度が高く十分な印刷性が得られず、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は耐熱性が低くクラックが入りやすく、アミノフェノール型エポキシ樹脂は吸水率が高いことに加え、硬化が速いためボイドが残りやすく、硬いために研磨性が悪く、フェノールノボラック型エポキシ樹脂は吸水率が高いことに加え、粘度が高く十分な印刷性が得られず、単官能エポキシ樹脂は耐熱性が低くクラックが入りやすく、いずれも十分なものではなかった。
【0023】
これに対し、エポキシ樹脂として(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂を用いた本発明の組成物では、低粘度と高耐熱性とを両立できることに加え、印刷時に泡が抜けやすくボイドの発生が抑えられ、フィラーの高充填が可能になることからさらなる低CTE化を図ることができ、さらに、F型と同等の柔軟性を有するために、研磨性にも優れるものとなる。
さらに、本発明の組成物においては、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂との組合せにより意外にも保存安定性が良好になることが分かった。また、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂と、アミノフェノール型エポキシ樹脂との組合せにより、Tgが向上し、耐熱性に優れるものとなる。(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂に加えて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いる場合、これらの配合比は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂/ビスフェノールF型エポキシ樹脂(質量比)=0.1〜10.0とすることができる。
そして、本発明の穴埋め用途の組成物においては、ボイドの発生を抑制する観点から溶剤を含まないことが好ましい。さらに、穴部への充填性の観点から、半固形または固形のエポキシ樹脂を含まないことが好ましい。
【0024】
[(B)硬化剤および硬化促進剤]
本発明の組成物は、(B)硬化剤および硬化促進剤のいずれか一方または双方を含有する。
【0025】
(硬化剤)
硬化剤としては、フェノール樹脂、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂等が挙げられる。硬化剤は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール/ナフトール樹脂、α−ナフトール骨格含有フェノール樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂等の従来公知のものを、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記ポリカルボン酸およびその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物およびその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物等の他、カルボン酸末端イミド樹脂等のカルボン酸末端を有する樹脂が挙げられる。
【0028】
上記シアネートエステル樹脂は、一分子中に2個以上のシアネートエステル基(−OCN)を有する化合物である。シアネートエステル樹脂は、従来公知のものをいずれも使用することができる。シアネートエステル樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、アルキルフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂が挙げられる。また、一部がトリアジン化したプレポリマーであってもよい。
【0029】
上記活性エステル樹脂は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する樹脂である。活性エステル樹脂は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0030】
また、硬化剤として、脂環式オレフィン重合体を用いてもよい。脂環式オレフィン重合体の製造方法の具体例としては、(1)カルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基(以下、「カルボキシル基等」と称する)を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体と共に重合する方法、(2)カルボキシル基等を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体と共に重合して得られる(共)重合体の芳香環部分を水素化する方法、(3)カルボキシル基等を有しない脂環式オレフィンと、カルボキシル基等を有する単量体とを共重合する方法、(4)カルボキシル基等を有しない芳香族オレフィンと、カルボキシル基等を有する単量体とを共重合して得られる共重合体の芳香環部分を水素化する方法、(5)カルボキシル基等を有しない脂環式オレフィン重合体にカルボキシル基等を有する化合物を変性反応により導入する方法、もしくは、(6)前記(1)〜(5)のようにして得られるカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン重合体のカルボン酸エステル基を、例えば加水分解等によりカルボキシル基に変換する方法等が挙げられる。
【0031】
硬化剤の中でも、フェノールノボラック樹脂、活性エステル樹脂、フェノールノボラック型多官能シアネート樹脂が好ましい。
【0032】
上記硬化剤は、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂のエポキシ基と、そのエポキシ基と反応する硬化剤中の官能基との比率が、硬化剤の官能基/エポキシ基(当量比)=0.2〜2.0となるような割合で配合することが好ましい。硬化剤の官能基/エポキシ基(当量比)を上記範囲内とすることで、デスミア工程におけるフィルム表面の粗化を防止することができる。より好ましくは硬化剤の官能基/エポキシ基(当量比)=0.2〜1.5であり、さらに好ましくは硬化剤の官能基/エポキシ基(当量比)=0.3〜1.0である。
【0033】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。このような硬化促進剤の具体例としては、イミダゾールおよびその誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩および/またはエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物、金属触媒等の従来公知の硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤の中でも、BHAST耐性が得られることから、ホスホニウム塩類が好ましい。
【0034】
また、本発明の組成物を穴埋め用の液状樹脂組成物として用いる場合には、特に、イミダゾール誘導体が好ましい。イミダゾール誘導体の具体例としては、例えば2−メチルイミダゾール、4−メチル−2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールなどが挙げられる。市販されているものの具体例としては、商品名2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ等のイミダゾール類や、商品名2MZ−A、2E4MZ−A等のイミダゾールのAZINE化合物、商品名2MZ−OK、2PZ−OK等のイミダゾールのイソシアヌル酸塩、商品名2PHZ、2P4MHZ等のイミダゾールヒドロキシメチル体(前記商品名はいずれも四国化成工業(株)製)などが挙げられる。
上記イミダゾール以外にも、ジシアンジアミドとその誘導体、メラミンとその誘導体、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラメチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノールアミン、ジアミノジフェニルメタン、有機酸ヒドラジッド等のアミン類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(商品名DBU、サンアプロ(株)製)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名ATU、味の素(株)製)、または、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物などを、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。しかし、芳香族アミン類を用いた場合には加熱硬化後の樹脂組成物の収縮が大きく、硬化後にスルーホール壁との間に隙間が生じたり、穴埋め部の硬化物にボイドが生じ易いので好ましくない。これらの硬化触媒の中でも、ジシアンジアミド、メラミンや、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のグアナミンおよびその誘導体、およびこれらの有機酸塩やエポキシアダクトなどは、銅との密着性や防錆性を有することが知られており、エポキシ樹脂の硬化触媒として働くばかりでなく、プリント配線板の銅の変色防止に寄与することができる。
硬化促進剤は、1種を単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
本発明において、硬化促進剤の配合量は、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂100質量部に対し、好ましくは0.01〜20質量部の範囲で用いることができる。また、金属触媒の場合、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂100質量部に対し、金属換算で10〜550ppmが好ましく、25〜200ppmが好ましい。
【0036】
[(C)フィラー]
本発明の組成物は、(C)フィラーを含有する。フィラーを配合することにより、絶縁層の周囲にある銅等の導体層とCTEを近づけることにより、硬化特性を向上することができる。フィラーとしては、従来公知のいかなる無機充填剤および有機充填剤も使用することができ、特定のものに限定されないが、塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性の向上に寄与できる無機フィラーが好ましい。無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、タルク、ノイブルグ珪土、有機ベントナイト、リン酸ジルコニウム等の非金属フィラーや、銅、錫、亜鉛、ニッケル、銀、パラジウム、アルミニウム、鉄、コバルト、金、白金、シリコン等の金属フィラーを挙げることができ、1種を単独で、または2種以上を適宜組合わせて用いることができる。
【0037】
本発明においては、上記のうちでも、(C)フィラーとして、炭酸カルシウムおよびシリカのうちのいずれか一方または双方を用いることが好ましい。炭酸カルシウムを配合することで、柔軟で研磨性に優れたドライフィルムとすることができ、シリカを配合することで、CTEをより低減して、TCT耐性を向上することができる。シリカとしては、非晶質、結晶のいずれであってもよく、これらの混合物でもよい。特に、非晶質(溶融)シリカが好ましい。また、炭酸カルシウムとしては、天然の重質炭酸カルシウムや、合成の沈降炭酸カルシウムのいずれであってもよい。特に、本発明の組成物を穴埋め用として用いる場合には、(C)フィラーとして、研磨性に優れる炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0038】
フィラーの形状としては、球状、針状、板状、鱗片状、中空状、不定形状、六角状、キュービック状、薄片状等が挙げられるが、無機フィラーの高充填の観点からは、球状が好ましい。また、フィラーの平均粒径は、25μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。下限値としては、例えば、1nm以上である。一方、25μm以下であると、本発明の組成物を穴埋め材として用いた際に、プリント配線板の穴部への充填性が良くなり、また、穴埋めした部分に導体層を形成したときに平滑性が良くなるという効果がある。なお、平均粒径は、レーザ回折式粒子径分布測定装置により求めることができる。
【0039】
本発明の組成物における(C)フィラーの配合量は、溶剤を除いた組成物全量基準で、1〜90質量%であることが好ましく、10〜90質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。フィラーの配合量が1質量%以上であると、熱膨張を抑え、耐熱性を向上させることができ、研磨性や密着性を発揮できる。一方、90質量%以下であると、硬化物の硬度が向上し、クラックの発生を抑制できるとともに、液状ペースト化が容易に生じやすく、印刷性、穴埋め充填性等が得られる。
【0040】
本発明の組成物は、上記(A),(B)および(C)成分を含有することを必須とするが、さらに、用途に応じて、他の成分を含んでいてもよい。
【0041】
(他のエポキシ樹脂)
本発明の組成物においては、エポキシ樹脂として(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂を含むことが必須であるが、本発明の所期の効果を損なわない範囲で、他のエポキシ化合物を1種または2種以上で含んでもよい。
【0042】
上記エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物であり、従来公知のものをいずれも使用でき、分子中にエポキシ基を2個有する2官能性エポキシ化合物、分子中にエポキシ基を多数有する多官能エポキシ化合物等が挙げられる。なお、水素添加された2官能エポキシ化合物であってもよい。
【0043】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノクレゾール型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂等が用いられる。エポキシ化合物は、固形エポキシ樹脂、半固形エポキシ樹脂および液状エポキシ樹脂のいずれであってもよい。
【0044】
ここで、本明細書において、固形エポキシ樹脂とは40℃で固体状であるエポキシ樹脂をいい、半固形エポキシ樹脂とは20℃で固体状であって40℃で液状であるエポキシ樹脂をいい、液状エポキシ樹脂とは20℃で液状のエポキシ樹脂をいう。
【0045】
上記液状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行うことができる。
(1)装置
恒温水槽:
攪拌機、ヒーター、温度計、自動温度調節器(±0.1℃で温度制御が可能なもの)を備えたもので深さ150mm以上のものを用いる。
なお、後述する実施例で用いたエポキシ樹脂の判定では、いずれもヤマト科学社製の低温恒温水槽(型式BU300)と投入式恒温装置サーモメイト(型式BF500)の組み合わせを用い、水道水約22リットルを低温恒温水槽(型式BU300)に入れ、これに組み付けられたサーモメイト(型式BF500)の電源を入れて設定温度(20℃または40℃)に設定し、水温を設定温度±0.1℃にサーモメイト(型式BF500)で微調整したが、同様の調整が可能な装置であればいずれも使用できる。
【0046】
試験管:
試験管としては、図2に示すように、内径30mm、高さ120mmの平底円筒型透明ガラス製のもので、管底から55mmおよび85mmの高さのところにそれぞれ標線31、32が付され、試験管の口をゴム栓33aで密閉した液状判定用試験管30aと、同じサイズで同様に標線が付され、中央に温度計を挿入・支持するための孔があけられたゴム栓33bで試験管の口を密閉し、ゴム栓33bに温度計34を挿入した温度測定用試験管30bを用いる。以下、管底から55mmの高さの標線を「A線」、管底から85mmの高さの標線を「B線」という。
温度計34としては、JIS B7410(1982)「石油類試験用ガラス製温度計」に規定する凝固点測定用のもの(SOP−58目盛範囲20〜50℃)を用いるが、0〜50℃の温度範囲が測定できるものであればよい。
【0047】
(2)試験の実施手順
温度20±5℃の大気圧下で24時間以上放置した試料を、図2(a)に示す液状判定用試験管30aと図2(b)に示す温度測定用試験管30bにそれぞれA線まで入れる。2本の試験管30a、30bを低温恒温水槽にB線が水面下になるように直立させて静置する。温度計は、その下端がA線よりも30mm下となるようにする。
試料温度が設定温度±0.1℃に達してから10分間そのままの状態を保持する。10分後、液状判断用試験管30aを低温恒温水槽から取り出し、直ちに水平な試験台の上に水平に倒し、試験管内の液面の先端がA線からB線まで移動した時間をストップウォッチで測定し、記録する。試料は、設定温度において、測定された時聞が90秒以内のものを液状、90秒を超えるものを固体状と判定する。
【0048】
固形エポキシ樹脂としては、DIC社製HP−4700(ナフタレン型エポキシ樹脂)、DIC社製EXA4700(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、日本化薬社製NC−7000(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬社製EPPN−502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)等のフェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);DIC社製エピクロンHP−7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬社製NC−3000H(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬社製NC−3000L等のビフェニル/フェノールノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製エピクロンN660、エピクロンN690、日本化薬社製EOCN−104S等のノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製YX−4000等のビフェニル型エポキシ樹脂;新日鉄住金化学社製TX0712等のリン含有エポキシ樹脂;日産化学工業社製TEPIC等のトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0049】
半固形エポキシ樹脂としては、DIC社製エピクロン860、エピクロン900−IM、エピクロンEXA―4816、エピクロンEXA−4822、旭チバ社製アラルダイトAER280、東都化成社製エポトートYD−134、ジャパンエポキシレジン社製jER834、jER872、住友化学工業社製ELA−134等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;DIC社製エピクロンHP−4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC社製エピクロンN−740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0051】
本発明の組成においては、液状である(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂とともに、半固形エポキシ樹脂と、固形エポキシ樹脂とを、併用してもよい。この場合、(A)成分の配合量は、固形分換算で、組成物全量基準で、1〜45質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
半固形または固形のエポキシ樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。半固形および固形のエポキシ樹脂の配合量は、溶剤を除いた固形分換算で、組成物全量基準で5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、10〜35質量%がさらに好ましい。
【0053】
また、耐熱性、柔軟性および吸水率を維持できる範囲で、液状エポキシ樹脂として、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂とともに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの他の液状成分を使用してもよい。この場合、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂の配合量は、液状エポキシ樹脂の全量基準で、1〜90質量%であることが好ましく、1〜70質量%であることがより好ましく、1〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0054】
また、本発明の組成物を、例えば、穴埋め用の液状樹脂組成物として用いる場合には、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂とともに、多官能エポキシ樹脂を併用することが好ましい。(A)成分とともに多官能エポキシ樹脂を併用することで、耐熱性をより向上できる効果がある。この場合、(A)成分の配合量は、ビスフェノールE型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂全量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15〜80質量%であることがより好ましく、15〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0055】
さらに、本発明の組成物を、例えば、穴埋め用の液状樹脂組成物として用いる場合には、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂とともに、固形状のエポキシ樹脂を溶剤に溶かして用いてもよい。この場合、溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤等を用いることができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等を挙げることができる。これら溶剤は、単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。なお、溶剤の配合量は、本発明の所期の効果が得られる範囲で、作業性等に基づいて適宜決定すればよい。
【0056】
(着色剤)
本発明の組成物には、必要に応じて、着色剤を含有させることができる。着色剤を含有することによって、特に、本発明の組成物をソルダーレジスト層等の表層の形成に用いた場合に、回路等の隠ぺい性を高めることができる。着色剤としては、赤、青、緑、黄、白、黒などの慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。具体的には、カラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。但し、環境負荷低減並びに人体への影響の観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0057】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などが挙げられる。青色着色剤としては金属置換もしくは無置換のフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物がある。緑色着色剤としては、同様に金属置換もしくは無置換のフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系がある。黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられる。白色着色剤としては、ルチル型、アナターゼ型等の酸化チタン等が挙げられる。黒色着色剤としては、チタンブラック系、カーボンブラック系、黒鉛系、酸化鉄系、アンスラキノン系、酸化コバルト系、酸化銅系、マンガン系、酸化アンチモン系、酸化ニッケル系、ペリレン系、アニリン系の顔料、硫化モリブデン、硫化ビスマス等が挙げられる。その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色などの着色剤を加えてもよい。着色剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
着色剤の配合量は、特に限定されないが、溶剤を除く組成物全量基準で、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜7質量%であることがより好ましい。
【0059】
(熱可塑性樹脂(高分子樹脂))
本発明の組成物には、得られる硬化膜の機械的強度を向上させるために、さらに熱可塑性樹脂を含有することができる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂や、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の縮合物であるフェノキシ樹脂或いはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。フェノキシ樹脂の水酸基をアシル化したものが、電気特性に優れるので好ましい。
【0060】
ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化することで得られる。上記アルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられ、ブチルアルデヒドが好ましい。
【0061】
フェノキシ樹脂の具体例としては東都化成社製FX280、FX293、三菱化学社製YX8100、YX6954、YL7213、YL7218等が挙げられる。また、ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては積水化学工業社製エスレックKSシリーズ、ポリアミド樹脂としては日立化成工業社製KS5000シリーズ、日本化薬社製BPシリーズ、さらに、ポリアミドイミド樹脂としては日立化成工業社製KS9000シリーズ等が挙げられる。
【0062】
熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、フルオレン骨格を有する場合、高いガラス転移点を有し、耐熱性に優れるため、半固形または固形エポキシ樹脂による低い熱膨張率を維持すると共にそのガラス転移点を維持し、得られる硬化皮膜は低い熱膨張率と高いガラス転移点をバランス良く併せ有するものとなる。また、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は水酸基を有するため、基材および導体に対して良好な密着性を示すと共に、得られる硬化皮膜は粗化剤により侵され難いが、水溶液の形態の粗化液は硬化皮膜とフィラーの界面に浸透し易いので、粗化処理により硬化皮膜表面のフィラーが抜け落ち易くなり、良好な粗化面を形成し易くなる。
【0063】
熱可塑性樹脂としては、ブロック共重合体を用いてもよい。ブロック共重合体とは、性質の異なる二種類以上のポリマーが、共有結合で繋がり長い連鎖になった分子構造の共重合体のことである。
【0064】
ブロック共重合体としてはA−B−A型またはA−B−A’型ブロック共重合体が好ましい。A−B−A型およびA−B−A’型ブロック共重合体のうち、中央のBがソフトブロックでありガラス転移温度(Tg)が低く、好ましくは0℃未満であり、その両外側AまたはA’がハードブロックでありガラス転移温度(Tg)が高く、好ましくは0℃以上のポリマー単位により構成されているものが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定(DSC)により測定される。また、A−B−A型およびA−B−A’型ブロック共重合体のうち、AまたはA’がTgが50℃以上のポリマー単位からなり、Bがガラス転移温度(Tg)が−20℃以下であるポリマー単位からなるブロック共重合体がさらに好ましい。さらに、A−B−A型およびA−B−A’型ブロック共重合体のうち、AまたはA’が上記ビスフェノールE型エポキシ樹脂との相溶性が高いものが好ましく、Bが上記ビスフェノールE型エポキシ樹脂との相溶性が低いものが好ましい。このように、両端のブロックがマトリックスに相溶であり、中央のブロックがマトリックスに不相溶であるブロック共重合体とすることで、マトリックス中において特異的な構造を示しやすくなると考えられる。
【0065】
熱可塑性樹脂の中でも、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、フルオレン骨格を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ブロック共重合体が好ましく、特に、フェノキシ樹脂が好ましい。
【0066】
熱可塑性樹脂の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。熱可塑性樹脂の配合量が上記範囲内の場合、均一な粗化面状態を容易に得られる。
【0067】
(マレイミド化合物)
本発明の組成物には、さらに、マレイミド化合物を含有させることができる。マレイミド化合物を配合することにより、Tgをより向上することができる。
【0068】
マレイミド化合物は、マレイミド骨格を有する化合物であり、従来公知のものをいずれも使用できる。マレイミド化合物は、2以上のマレイミド骨格を有することが好ましく、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、1,2−ビス(マレイミド)エタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、2,2’−ビス−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、およびこれらのオリゴマー、ならびにマレイミド骨格を有するジアミン縮合物のうちの少なくともいずれか1種であることがより好ましい。上記オリゴマーは、上述のマレイミド化合物の内のモノマーであるマレイミド化合物を縮合させることにより得られたオリゴマーである。マレイミド化合物は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
マレイミド化合物の中でも、フェニルメタンマレイミドの縮合物およびビスマレイミドオリゴマーのうちの少なくとも何れか1種であることがさらに好ましい。上記ビスマレイミドオリゴマーは、フェニルメタンビスマレイミドと、4,4−ジアミノジフェニルメタンとの縮合により得られたオリゴマーであることが好ましい。フェニルメタンマレイミドの縮合物の市販品としては、大和化成社製BMI−2300等が挙げられる。また、ビスマレイミドオリゴマーの市販品としては、大和化成社製DAIMAID−100H等が挙げられる。
【0070】
また、マレイミド化合物は、下記一般式(I)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【0071】
上記一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または有機基を示し、nは0〜1の整数を表す。上記一般式(I)中、R〜Rは水素原子であることが好ましい。
【0072】
上記マレイミド化合物は、上記一般式(I)で表されるマレイミド化合物の混合物であることが好ましい。また、混合物の溶解性が高まり、樹脂層の硬化物のCTEがより低くなることから、混合物の上記一般式(I)中のnの平均値が0.1〜1であることがより好ましい。nの平均値が大きいほど、混合物の溶解性は高くなる。nの平均値が0.1〜1であるマレイミド化合物の混合物の場合、ドライフィルムの樹脂層を低温で熱硬化させても、Tgが高い硬化物の形成が可能であり、耐熱性の低い薄い基材を用いることも可能となる。
【0073】
マレイミド化合物の配合量は、溶剤およびフィラーを除いた組成物全量基準で、2〜50質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。2質量%以上の場合、硬化物のCTEが低くなり、また、硬化物のTgがより高くなる。また、50質量%以下の場合、破断強度が高くなる。
【0074】
(その他の成分)
本発明の組成物を、例えば、層間絶縁材およびソルダーレジスト用のドライフィルムとして使用する場合、さらに必要に応じて、アスベスト、オルベン、ベントン、微紛シリカ等の従来公知の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤、チタネート系、アルミニウム系の従来公知の添加剤類を用いることができる。
【0075】
(溶剤)
本発明の組成物を、例えば、層間絶縁材およびソルダーレジスト用のドライフィルムとして使用する場合、組成物の調製、基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整、ドライフィルムの樹脂層の形成等のために、溶剤を使用することができる。溶剤の種類としては、特に限定されず、従来公知の溶剤を用いることができる。また、溶剤の配合量も限定されない。
【0076】
特に、本発明の組成物を用いてドライフィルムを形成する際には、溶剤として、沸点が100℃以上であって、かつ、沸点が5℃以上の2種の溶剤を用いることが好ましく、これにより、柔軟性に優れたドライフィルムを得ることが可能となる。沸点の差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である。なお、本明細書において、溶剤の沸点に幅がある場合は、蒸留の初留点〜終点を沸点とする。
【0077】
沸点が100℃未満の溶剤としては、ジエチルエーテル、二硫化炭素、アセトン、クロロホルム、メタノール、n−ヘキサン、酢酸エチル、1,1,1−トリクロロエタン、四塩化炭素、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、トリクロロエチレン、酢酸イソプロピル等が挙げられる。
【0078】
沸点が100℃以上の溶剤としては、イソブチルアルコール、トルエン、メチルイソブチルケトン、n−ブタノール、酢酸ブチル、2−メトキシプロパノール等のメトキシプロパノール、酢酸イソブチル、テトラクロロエチレン、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルブチルケトン、イソペンチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テレビン油、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0079】
また、沸点が100℃以上の溶剤としては、キシレン、石油系ナフサ、丸善石油化学社製スワゾール1000(炭素数8〜10:高沸点芳香族炭化水素)、スワゾール1500(高沸点芳香族炭化水素)、スタンダード石油大阪発売所社製ソルベッソ100(炭素数9〜10:高沸点芳香族炭化水素)、ソルベッソ150(炭素数10〜11:高沸点芳香族炭化水素)、三共化学社製ソルベント#100、ソルベント#150、シェルケミカルズジャパン社製シェルゾールA100、シェルゾールA150、出光興産社製イプゾール100番(炭素数9の芳香族炭化水素が主成分)、イプゾール150番(炭素数10の芳香族炭化水素が主成分)等も挙げられる。高沸点芳香族炭化水素は、芳香族成分を99容量%以上含有することが好ましい。また、高沸点芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンのそれぞれが0.01容量%未満であることが好ましい。
【0080】
本発明の組成物を用いてドライフィルムを形成する場合、組成物には、沸点が100℃以上の溶剤を3種以上配合してもよく、この場合、3種以上の溶剤のうちのいずれか2種の溶剤の沸点が異なるものであればよい。また、沸点が100℃以上の溶剤の中でも、沸点が100〜230℃の溶剤が好ましく、100〜220℃の溶剤がより好ましい。沸点が230℃以下であると、熱硬化またはアニール処理後に、溶剤がドライフィルムの樹脂層に残存しにくい。かかる溶剤としては、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、メトキシプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、石油系ナフサ、または、炭素数が8以上の芳香族炭化水素であることがさらに好ましい。中でも、トルエンとシクロヘキサンの組み合わせ、トルエンとメチルイソブチルケトンの組み合わせ、および、シクロヘキサノンとメチルイソブチルケトンの組み合わせがより好ましい。
【0081】
乾燥前の溶剤の配合量は、溶剤を除いたドライフィルムの樹脂層100質量部に対して、10〜150質量部であることが好ましく、25〜100質量部であることがより好ましい。溶剤の配合量が10質量部以上の場合、溶解性が向上して、残留溶剤の量の調整が容易になり、一方、150質量部以下の場合、樹脂層の厚みのコントロールが容易になる。
【0082】
なお、本発明の組成物は、液状樹脂組成物として層間絶縁材、カバーレイまたはソルダーレジストなどのプリント配線板の硬化被膜の形成に適用することもできる。
【0083】
(その他の成分)
本発明の組成物を、例えば、穴埋め用の液状樹脂組成物として使用する場合、さらに必要に応じて、保管時の保存安定性を付与するために、ホウ酸エステル化合物、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の熱重合禁止剤、クレー、カオリン、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤もしくはチキソトロピー剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を添加することができる。特に、有機ベントナイトを用いた場合、穴部表面からはみ出した部分が研磨・除去し易い突出した状態に形成され易く、研磨性に優れたものとなるので好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、加熱により優れた硬化物特性を得ることができるものである。従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、光重合性モノマーなどのそれ自体が光照射により重合する成分を含む必要がない。
【0084】
[組成物の形態]
本発明の組成物の形態は、適度に粘度調整された液状樹脂組成物として提供されてもよいし、上述したように、支持ベースフィルム上に組成物を塗布し、溶剤を乾燥させたドライフィルムとしてもよい。また、本発明の組成物を、ガラスクロス、ガラスおよびアラミド不織布等のシート状繊維質基材に塗工および/または含浸させて半硬化させた、プリプレグシートとしてもよい。支持ベースフィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、さらには離型紙や銅箔、アルミニウム箔の如き金属箔などが挙げられる。なお、支持ベースフィルムには、マッド処理やコロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0085】
本発明の組成物を用いた液状樹脂組成物、ドライフィルム、またはプリプレグは、回路が形成された内層回路基板に直接コーティングし、乾燥、硬化を行なうか、または、ドライフィルムを加熱ラミネートして一体成形し、その後、オーブン中もしくは熱板プレスにより硬化させてもよい。プリプレグの場合には、内層回路基板に重ね、離型フィルムを介して金属板で挟み、加圧・加熱してプレスする方法を用いることもできる。
【0086】
上記工程のうち、ラミネートもしくは熱板プレスする方法は、内層回路による微細凹凸が加熱溶融する際に解消され、そのまま硬化するので、最終的にはフラットな表面状態の多層板が得られるので好ましい。また、内層回路が形成された基材と本発明の組成物のフィルムまたはプリプレグをラミネートもしくは熱板プレスする際に、銅箔もしくは回路形成された基材を同時に積層することもできる。
【0087】
このようにして得られた基板に、COレーザーやUV−YAGレーザー等の半導体レーザーまたはドリルにて穴をあける。穴は、基板の表と裏を導通させることを目的とする貫通穴(スルーホール)でも、内層の回路と層間絶縁層表面の回路を導通させることを目的とする部分穴(コンフォーマルビア)のどちらでもよい。
【0088】
穴明け後、穴の内壁や底部に存在する残渣(スミヤ)を除去することと、導体層(その後に形成する金属めっき層)とのアンカー効果を発現させるために、表面に微細凹凸状の粗化面を形成することを目的として、市販のデスミヤ液(粗化剤)または過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤を含有する粗化液で同時に行う。
【0089】
次に、デスミヤ液で残渣を除去した穴や、微細凹凸状粗化面を生じた皮膜表面を形成後に、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等により回路を形成する。いずれの方法においても、無電解めっきまたは電解めっき後、あるいは両方のめっきを施した後に、金属のストレス除去、強度向上の目的で、約80〜200℃で10〜60分程度のアニールと呼ばれる熱処理を施してもよい。
【0090】
ここで用いる金属めっきとしては、銅、スズ、はんだ、ニッケル等、特に制限はなく、複数組み合わせて使用することもできる。また、ここで用いるめっきの代りに金属のスパッタ等で代用することも可能である。
【0091】
本発明の組成物は、プリント配線板の製造に好適に用いることができ、特に、層間絶縁層やソルダーレジスト等のプリント配線板の絶縁層の形成、および、スルーホールやバイアホール等の穴埋め用途に好適に用いることができる。
【0092】
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、本発明の組成物を塗布し、乾燥して、乾燥塗膜としての樹脂層を形成することにより、製造することができる。樹脂層上には、必要に応じて、保護フィルムをラミネートすることができる。
【0093】
キャリアフィルムの材質としては、好適にはポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。キャリアフィルムの厚みは、好適には8〜75μmである。また、保護フィルムの材質としては、キャリアフィルムに用いるものと同様のものを用いることができ、好適にはPETまたはポリプロピレン(PP)である。保護フィルムの厚みは、好適には5〜50μmである。なお、本発明においては、上記保護フィルム上に本発明の組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面にキャリアフィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明においてドライフィルムを製造する際に本発明の組成物を塗布するフィルムとしては、キャリアフィルムおよび保護フィルムのいずれを用いてもよい。
【0094】
ここで、組成物の塗布方法としては、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法を用いることができる。また、揮発乾燥方法としては、熱風循環式乾燥炉、IR(赤外線)炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等、蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いることができる。
【0095】
本発明のドライフィルムにおいては、上記のようにして形成された樹脂層の残溶剤量が、溶剤を含む樹脂層全量基準で、1質量%未満であることが好ましく、0.01〜0.8質量%であることがより好ましい。樹脂層における残溶剤量を上記範囲とすることで、ドライフィルムの割れや粉落ちを抑制しつつ、剥離性を向上し、気泡の残留を少なくして、クラックの発生をより効果的に抑制することができるものとなる。
【0096】
[穴埋め用組成物]
本発明の組成物を穴埋め用の液状樹脂組成物として用いる場合には、従来より採用されている方法、例えば、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、ダイコーティング法等を利用して、プリント配線板のバイアホールやスルーホール等の穴部に容易に充填することができる。次いで、例えば、約90〜180℃で約30〜90分程度加熱して、組成物を硬化させる。次いで、硬化された組成物のうち、基板表面からはみ出している不要部分は、物理研磨により容易に除去でき、平坦面とすることができる。なお、物理研磨は、従来より行われてきた、公知の手法にて行うことができる。
【0097】
[硬化物およびプリント配線板]
本発明の硬化物は、本発明の組成物またはドライフィルムの樹脂層を硬化させて得られるものであり、本発明のプリント配線板は、かかる本発明の硬化物を具備するものである。その製造方法について以下に説明するが、これに限定されるものではない。
【0098】
[プリント配線板の製造]
本発明の組成物を用いたプリント配線板の製造は、例えば、図3〜5に示すように行うことができる。図3に示す例では、まず、銅箔2をラミネートした基板1に貫通孔をあけ、その壁面および銅箔表面に無電解めっきを施してスルーホール3を形成した後(図3(a))、基板1の表面およびスルーホール3内壁にめっき膜4aを形成する(図3(b))。次に、スルーホール3内に本発明の組成物を用いた液状樹脂組成物5を充填し(図3(c))、加熱硬化させた後、スルーホール3からはみ出した不要部分を研磨して平坦化する(図3(d))。次に、基板1の表面にめっき膜4bを形成した後(図3(e))、エッチングレジスト6を形成し(図3(f))、レジスト非形成部分をエッチングしてエッチングレジスト6を剥離することにより、導体回路層7aを形成する(図3(g))。
【0099】
次に、導体回路層7a上に、本発明の組成物を用いたドライフィルムにより層間絶縁層8aを形成し、開口9aを設ける(図4(a))。次に、全面にめっき膜4cを形成し(図4(b))、めっき膜4c上にめっきレジスト層10を形成した後、さらに電解めっきを行い、導体回路部分を厚付けして、電解めっき膜4dを形成する(図4(c))。次に、めっきレジスト層10を剥離した後、その下の無電解めっき膜4cをエッチングで溶解除去し、独立した導体回路(バイアホール11aを含む)を形成する(図4(d))。
【0100】
図5に示す他の例では、図3(d)に示すコア基板作製工程まで終えた後、コア基板1の両面の導体層に対しエッチングを施して、基板1の両面に第1の導体回路層7bを形成するとともに、スルーホール3に接続する導体回路層7bの一部にランド12を形成する(図5(a))。次に、基板1の上下両面の上に層間絶縁層8bを形成し(図5(b))、ランド12の真上に位置する層間絶縁層8bにバイアホール11bを形成する(図5(c))。次に、バイアホール11b内と層間絶縁層8b上にめっき層を形成し、これらの上にエッチングレジストを形成した後、エッチングを施して、層間絶縁層8b上に第2の導体回路層7cを形成する(図5(c))。第1,第2の各導体回路層7b,7cはバイアホール11bを介して、基板両面の導体回路層7bはスルーホール3を介して、それぞれ互いに導通する。次に、各層間絶縁層8bと第2の導体回路層7cの上に、本発明の組成物を用いてソルダーレジスト層13を形成し、上方のソルダーレジスト層13には、はんだバンプ14を形成する(図5(c))。また、下方の開口9bから露出する導体回路層7cの表面にめっきを施して、接続端子としての多層の配線基板を得ることができる。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0102】
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
下記表1〜5に示す処方にて各成分を配合、撹拌し、3本ロールミルにて混練分散して、実施例1〜3、参考例1〜5および比較例1〜7の液状樹脂組成物用の組成物については粘度250〜600dPa・s(回転粘度計5rpm、25℃)に、実施例4〜8、参考例6〜14および比較例8〜12のドライフィルム用の組成物については粘度0.5〜20dPa・sになるよう調整した。
【0103】
<ドライフィルムの作製>
上記で得た実施例4〜8、参考例6〜14および比較例8〜12の組成物を、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が下記表6〜8,10に記載の膜厚となるように、キャリアフィルム(PETフィルム;東レ(株)製ルミラー38R75、厚さ38μm)上に塗布した。その後、乾燥後における有機溶剤の残含有量が下記表6〜8,10に示す量となるように、熱風循環式乾燥炉にて70〜120℃(平均100℃)で5〜10分間乾燥し、キャリアフィルム上に樹脂層を有する乾燥塗膜を得た。次いで、ロールラミネーターにて、保護フィルムを、温度70℃にて樹脂層上に張り合わせを行い、両面をフィルムでサンドイッチされた、実施例および比較例のドライフィルムを得た。
【0104】
<ドライフィルム中の有機溶剤の残含有量(%)の測定>
各実施例および比較例のドライフィルムからキャリアフィルムおよび保護フィルムを剥離した後、約1.2gの樹脂層を採取し、密栓付の容器に入れて採取した樹脂層の質量(W)を正確に秤量した。この容器に、ピペットで内部標準物質として3−エトキシプロピオン酸エチルを1滴添加し、その質量(We)を正確に秤量した。その後、アセトン5mlをホールピペットにより添加して密栓し、容器を十分に振って、採取した樹脂層を溶解させた。次いで、この液を目開き0.5μmのフィルターでろ過し、ろ液の組成をガスクロマトグラフィー(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製TRACEGCULTRA)により分析し、別途作成した検量線より、内部標準物質1gに対する有機溶剤の質量(Ws)を求めた。これらから、下式に従って有機溶剤の残含有量を計算した。
有機溶剤の残含有量(質量%)=(We×Ws/W)×100
【0105】
なお、ガスクロマトグラフィーにおける測定条件は、下記のとおりである。カラム:Agilent Technologies社製キャピラリーカラムDB−1MS(30m×0.25mm)、検出器:MS(ITQ900)、キャリアガス:ヘリウム、インジェクター温度:300℃、ディテクター温度:230℃、カラム温度条件:初期温度50℃、試料注入後50℃で2分間ホールドし、10℃/分で300℃まで昇温、300℃到達後10分間ホールド。
【0106】
<ドライフィルムの柔軟性(曲げテスト)>
JIS K5600−5−1(ISO1519)に準拠し、BYK−Gardner社製円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて、各実施例および比較例のドライフィルムの割れおよびキャリアフィルムからの剥がれが起こり始めるマンドレルの最小直径から、ドライフィルムの柔軟性を評価した。評価基準は以下のとおりである。ドライフィルムの柔軟性が良好な場合、樹脂層の柔軟性が高く、割れと粉落ちを抑制できる。
◎:φ2mm以下の直径で、樹脂層の割れ、粉落ち、キャリアフィルムの剥がれの発生がなかった。
○:φ2mm超5mm未満の範囲で、樹脂層の割れ、粉落ち、キャリアフィルムの剥がれの発生がなかった。
△:φ2mm超5mm未満の範囲で、樹脂層の割れ、粉落ち、およびキャリアフィルムの剥がれが発生した。
×:φ5mm以上の直径で、樹脂層の割れ、粉落ち、およびキャリアフィルムの剥がれが発生した。
【0107】
<ガラス転移温度(Tg)および熱膨張係数(CTE(α1))>
(液状組成物の評価サンプルの作製)
各実施例および比較例の液状樹脂組成物をGTS−MP箔(古河サーキットフォイル(株)製)の光沢面側(銅箔)上にアプリケーターにより塗布し、熱風循環式乾燥炉にて150℃で60分間、硬化させた。
【0108】
(ドライフィルムの評価サンプルの作製)
各実施例および比較例のドライフィルムを、保護フィルムを剥離し、GTS−MP箔(古河サーキットフォイル(株)製)の光沢面側(銅箔)上に、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(名機社製)を用い、ラミネートした。ラミネート条件は、5kgf/cm、80℃、1分、1Torrの条件にて加熱ラミネートし、次いで、熱板プレス機で10kgf/cm、80℃、1分の条件にてレベリングさせた。次いで、熱風循環式乾燥炉にて180℃で60分間、樹脂層を硬化させた。また、実施例6、参考例12に記載のマレイミド化合物を含む組成物に関しては、220℃にて60分間、樹脂層を硬化させた。
【0109】
(ガラス転移温度(Tg)および熱膨張係数(CTE(α1))の測定)
その後、上記方法にて作製した硬化物を銅箔より剥離した後、測定サイズ(3mm×10mmのサイズ)にサンプルを切り出し、セイコーインスツル社製TMA6100に供した。TMA測定は、試験加重5g、サンプルを10℃/分の昇温速度で室温より昇温、連続して2回測定した。2回目における熱膨張係数の異なる2接線の交点をガラス転移温度(Tg)とし、Tg未満の領域における熱膨張係数(CTE(α1))として評価した。Tgが高いほど、耐熱性が高いと言える。
[ガラス転移温度(Tg)の評価基準]
◎◎:Tgが190℃以上。
◎:Tgが160℃以上190℃未満。
○:Tgが150℃以上160℃未満。
×:Tgが150℃未満。
[熱膨張係数(CTE(α1))の評価基準]
◎:20ppm未満。
○:20ppm以上〜35ppm未満。
【0110】
<スルーホールへの充填性>
(液状組成物の評価サンプルの作製)
各実施例および比較例の液状樹脂組成物を、パネルめっきにより導体層が形成されたスルーホールを有する厚さ1.6mm/スルーホール径0.25mm/ピッチ1mmのガラスエポキシ基板に、スクリーン印刷法により、下記印刷条件でスルーホール内に充填した。充填後、熱風循環式乾燥炉に入れ、150℃で60分硬化を行い、評価基板を得た。この評価基板のスルーホール内に充填された硬化物の充填度合いにより、充填性を評価した。
【0111】
<印刷条件>
スキージ:スキージ厚20mm、硬度70°、斜め研磨:23°、
版:PET100メッシュバイアス版、
印圧:50kg、スキージスピード30mm/Sec、
スキージ角度:80°。
【0112】
(ドライフィルムの評価サンプルの作製)
各実施例および比較例のドライフィルムを、保護フィルムを剥離し、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(名機社製)を用い、上記「液状組成物の評価サンプルの作製」と同じガラスエポキシ基板に、上記<ガラス転移温度(Tg)および熱膨張係数(CTE(α1))>に記載の方法と同様の方法にて基板の両面からドライフィルムをラミネートし、樹脂組成物をスルーホール内に充填した。次いで、熱風循環式乾燥炉にて、樹脂層を硬化させた。
【0113】
(充填性の評価)
その後、基板中のスルーホール中心を通る断面を精密切断機で裁断、研磨し断面状態の光学顕微鏡で観察を行った。評価基準は、下記に従い評価を行った。観察スルーホール数は200穴とした。
◎:全てのスルーホール内が樹脂で完全に埋め込まれている。
○:樹脂で完全に埋め込まれていないスルーホールが1〜2穴発生。
△:樹脂で完全に埋め込まれていないスルーホールが3〜50穴発生。
×:樹脂で完全に埋め込まれていないスルーホールが51穴以上発生。
【0114】
<ボイドの発生>
上記<スルーホールへの充填性>にて評価したサンプルを用いて、スルーホール中のボイドの発生を確認した。評価基準は、下記に従い評価を行った。観察スルーホール数は200穴とした。
◎:ボイドの発生無し。
○:ボイドが1〜2穴発生。
△:ボイドが3〜50穴発生。
×:ボイドが51穴以上発生。
【0115】
<吸水率の測定>
(液状組成物の評価サンプルの作製)
各実施例および比較例の液状樹脂組成物について、上記<ガラス転移温度(Tg)および熱膨張係数(CTE(α1))>に記載の方法と同様の方法にて、塗布、硬化を行った。
【0116】
(ドライフィルムの評価サンプルの作製)
各実施例および比較例のドライフィルムについて、上記<ガラス転移温度(Tg)および熱膨張係数(CTE(α1))>に記載の方法と同様の方法にて、樹脂層を硬化した。
【0117】
(吸水率の測定)
その後、硬化物を銅箔より剥離した後、測定サイズ(50mm×50mmのサイズ)にサンプルを切り出した後、100℃にて2時間乾燥を行い、水分を完全に除去し、精密天秤にて質量(W1)の測定を行った。その後、サンプルを23℃±2℃に管理された蒸留水に浸漬し、24時間後の質量(W2)の測定を行った。吸水率は(W2−W1)/W1×100(%)により求めた。
◎◎:0.3%未満。
◎:0.3%以上0.7%未満。
○:0.7%以上1.0%未満。
△:1.0%以上1.4%未満。
×:1.4%以上。
【0118】
<冷熱サイクル(クラックの抑制)>
(液状組成物の評価サンプルの作製)
各実施例および比較例の液状樹脂組成物を、上記<スルーホールへの充填性>に記載の方法と同様の方法にて、スルーホール内に充填した。その後、熱風循環式乾燥炉にて、150℃で60分間加熱し、樹脂層を硬化させ、基板表面からはみ出している樹脂の部分をバフ研磨により除去した。次いで、市販の湿式過マンガン酸デスミア(ATOTECH社製)、無電解銅めっき(スルカップPEA、上村工業社製)、電解銅めっき処理の順に処理を行い、蓋めっき仕様の評価基板を得た。
【0119】
(ドライフィルムの評価サンプルの作製)
各実施例および比較例のドライフィルムについて、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(名機社製)を用いて、上記<スルーホールへの充填性>に記載の方法と同様の方法にて、基板の両面からドライフィルムをラミネートし、樹脂組成物をスルーホール内に充填した。その後、キャリアフィルムを剥がし、熱風循環式乾燥炉にて180℃で30分間加熱し、樹脂層を硬化させた。また、実施例6、参考例12に記載のマレイミド化合物を含む組成物に関しては、220℃にて60分間、樹脂層を硬化させた。その後、COレーザー加工機(日立ビアメカニクス社製)を用いてトップ径65μm、ボトム径50μmになるようにビア形成を行った。
【0120】
次いで、市販の湿式過マンガン酸デスミア(ATOTECH社製)、無電解銅めっき(スルカップPEA、上村工業社製)、電解銅めっき処理の順に処理を行い、樹脂層上に銅厚み25μm、ビア部分をフィルドするように銅めっき処理を施した。次いで、熱風循環式乾燥炉にて190℃で60分間硬化を行い、完全硬化させた銅めっき処理を施した試験基板を得た。
【0121】
(冷熱サイクルの実施)
上記の方法で得られた各実施例および比較例の試験用基板について、−65℃で30分、150℃で30分を1サイクルとして、2000および2500サイクルの熱履歴を加えた。
【0122】
(スルーホール中のクラックの確認)
上記<スルーホールへの充填性>に記載と同様の方法にて、スルーホール中心の断面状態を光学顕微鏡で観察を行った。評価基準は、下記に従い評価を行った。観察スルーホール数は200穴とした。
◎:2000サイクルおよび2500サイクルともクラック発生なし。
〇:2000サイクルでのクラックの発生なし。2500サイクルで1〜5ヶ所のクラックが発生。
×:2000サイクルでクラックが発生。
【0123】
(ビアのクラックの確認)
ビア底や壁面の状態を光学顕微鏡により観察するために、ビア中心部分を精密切断機で裁断、研磨し、断面状態の観察を行った。評価基準は、下記に従い評価を行った。観察ビア数は100穴とした。
◎:2000サイクルおよび2500サイクルともクラック発生なし。
〇:2000サイクルでのクラックの発生なし。2500サイクルで1〜5ヶ所のクラックが発生。
×:2000サイクルでクラックが発生。
【0124】
<研磨性>
(液状組成物の評価サンプルの作製)
各実施例および比較例の液状樹脂組成物を、上記<スルーホールへの充填性>に記載と同様の方法にて、スルーホール内に充填した。充填後、熱風循環式乾燥炉に入れ、150℃で60分硬化を行い、評価基板を得た。
【0125】
(ドライフィルムの評価サンプルの作製)
各実施例および比較例のドライフィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(名機社製)を用いて、上記<スルーホールへの充填性>に記載の方法と同様の方法にて、基板の片面のみからドライフィルムをラミネートし、その後、樹脂層を硬化させた。
【0126】
(研磨性の評価)
上記の方法で得られた各実施例および非較例の試験用基板の基板表面からはみ出している樹脂の部分をバフ研磨により物理研磨を行い、吐出部の樹脂が除去されるまでのパス回数を比較した。
◎:2パス以下で研磨可能。
〇:2〜3パスで研磨可能。
×:4パス以上。
【0127】
<保存安定性の評価>
(液状組成物の保存安定性の評価)
各実施例1〜3、参考例1〜5および比較例1〜7の液状樹脂組成物について、初期と25℃7日間保管後の粘度の測定を行い、下記の計算式により、増粘率を求めた。
増粘率(%)=(25℃7日間保管後の粘度−初期粘度)/初期粘度×100
◎:10%未満
○:10%以上30%未満
△:30%以上50%未満
×:50%以上
【0128】
(ドライフィルムの保存安定性の評価)
各実施例4〜8、参考例6〜14および比較例8〜12のドライフィルムについて、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製「レオストレスRS6000」を使用し、初期と25℃3日間保管後の溶融粘度を測定した。測定は、30mm×30mmの大きさに用意した各実施例および比較例のドライフィルムからキャリアフィルムおよび保護フィルムを剥離した後、直径20mmのパラレルプレート上にのせ、開始温度40℃から150℃まで、昇温温度3℃/分、振動1Hz、歪2degの条件で溶融粘度を測定し、最低溶融粘度を求め、下記の計算式により増粘率を求めた。
増粘率(%)=(25℃3日間保管後の最低溶融粘度−初期の最低溶融粘度)/初期の最低溶融粘度×100
◎:30%未満
○:30%以上50%未満
【0129】
【表1】
*1)EPOX−MK R710:(株)プリンテック製(ビスフェノールE型エポキシ樹脂,エポキシ当量160〜180g/eq、液状)
*2)JER828:三菱化学(株)製(ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量184〜194g/eq、液状)
*3)JER807:三菱化学(株)製(ビスフェノールF型エポキシ樹脂,エポキシ当量160〜175g/eq、液状)
*4)DEN431:ダウ・ケミカル社製(フェノールノボラック型エポキシ樹脂(多官能エポキシ樹脂))
*5)JER630:三菱化学(株)製(パラアミノフェノール型液状エポキシ樹脂(多官能エポキシ樹脂),エポキシ当量90〜105g/eq、液状)
*6)ED−509S:(株)ADEKA製(単官能エポキシ樹脂,エポキシ当量206g/eq)
*7)HP−4032:DIC(株)製(ナフタレン型エポキシ樹脂,エポキシ当量135〜165g/eq;半固体)
*8)HP−7200L:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製,エポキシ当量250〜280g/eq;軟化点57〜68℃)
*9)HF−1M:明和化成社製(フェノールノボラック樹脂)
*10)SN−485:新日鉄住金化学(株)製(フェノールノボラック樹脂)
*11)LA−7054:DIC社製(フェノールノボラック樹脂)
*12)PT−30:ロンザジャパン社製(フェノールノボラック型多官能シアネート樹脂)
*13)HPC−8000:活性エステル樹脂(DIC社製)
*14)BMI−2300:大和化成工業(株)製
*15)ソフトン1800:備北粉化工業社製、炭酸カルシウムCaCO(平均粒径1.25μm)
*16)(株)アドマテックス製、シリカSiO(D50=0.5μm)
*17)2MZ−AP:四国化成工業(株)製
*18)2E4MZ
*19)DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
*20)FX−293:新日鉄住金化学(株)製(フェノキシ樹脂)
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】
【表6】
【0135】
【表7】
【0136】
【表8】
【0137】
【表9】
【0138】
【表10】
【0139】
上記表中に示すように、エポキシ樹脂としてビスフェノールE型エポキシ樹脂を用いた各実施例の組成物は、高Tgおよび低CTEを備え、低吸水率であってスルーホールへの充填性、TCT耐性、研磨性に優れ、ボイドの発生についても抑制できるものであることが確かめられた。
【0140】
また、液状樹脂組成物について、フィラーとして炭酸カルシウムとシリカとを併用した参考例2においては、炭酸カルシウムのみを用いた参考例1と比較して、CTEがより低下してTCT耐性が向上していることがわかる。(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂を少量加えた実施例1〜3では、保存安定性が向上しており、さらにアミノフェノール型エポキシ樹脂を加えた実施例3、参考例3〜5では、(A)成分を単独使用した参考例1と比較して、Tgが向上し耐熱性がより向上していることがわかる。
【0141】
さらにまた、ドライフィルムについて、エポキシ樹脂として、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂と半固形エポキシ樹脂とを併用した参考例6と比較して、(A)成分とともに固形エポキシ樹脂を併用した参考例7では、Tgがより高くなってTCT耐性が向上しており、さらに、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂とともに半固形エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを併用した参考例8では、柔軟性についても優れていることがわかる。参考例8の配合から、液状エポキシ樹脂を(A)成分のE型のものとA型およびF型のものとの組合せに変えた実施例4〜8では、A型を含むことでCTEが低下し、また保存安定性にも優れており、さらにシリカの量を増量した参考例9では、CTEがより低下している。また、参考例8の配合から、シリカを炭酸カルシウムに変えた参考例10では、研磨性がより向上している。さらに、参考例8の配合に着色剤を加えた参考例11でも、参考例8と同等の性能が得られており、ビスマレイミド樹脂を加えた参考例12では、Tgがさらに向上している。さらにまた、参考例8の配合から、硬化剤および硬化促進剤を水酸基を有しないものに変えた参考例13,14では、吸水率が向上している。
【0142】
これに対し、液状樹脂組成物について、エポキシ樹脂として、A型のもののみを用いた比較例1では、粘度が上昇して充填性が低下し、ボイドの発生防止の点でも劣っており、F型のもののみを用いた比較例2では、Tgが低下してTCT耐性が悪化しており、A型とF型とを併用した比較例3では、充填性が低下し、ボイドの発生防止の点でも不十分であるとともに、Tgが低下してTCT耐性が悪化している。また、エポキシ樹脂として、アミノフェノール型のもののみを用いた比較例4では、吸水率が悪化してボイドが発生し、研磨性も悪化しており、F型とアミノフェノール型とを併用した比較例5では、吸水率が悪化してボイドが発生しており、フェノールノボラック型とアミノフェノール型とを併用した比較例6では、吸水率が悪化してボイドが発生し、研磨性も悪化している。さらに、エポキシ樹脂として、A型と単官能エポキシ樹脂とを併用した比較例7では、Tgが低下してTCT耐性が悪化している。
【0143】
また、ドライフィルムについて、エポキシ樹脂として、A型のもののみを用いた比較例8では、柔軟性が低下しており、F型のもののみを用いた比較例9では、Tgが低下してTCT耐性が悪化しており、A型とF型とを併用した比較例10では、Tgが低下してTCT耐性が悪化している。さらに、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂を配合していない比較例11,12のうち、残留溶剤量が少ない比較例11では、柔軟性および充填性が低下しており、残留溶剤量が多い比較例12では、ボイドが発生している。
【符号の説明】
【0144】
1 基板
2 銅箔
3 スルーホール
4 めっき膜
5 樹脂組成物
6 エッチングレジスト
7 導体回路層
8 層間樹脂絶縁層
9 開口
10 めっきレジスト層
11 バイアホール
12 ランド
13 ソルダーレジスト層
14 はんだバンプ
30a 液状判定用試験管
30b 温度測定用試験管
31 標線(A線)
32 標線(B線)
33a、33b ゴム栓
34 温度計
X 積層基板
101 絶縁基板
103 内層導体パターン
103a コネクション部
104、109 樹脂絶縁層
108 外層導体パターン
110 最外層導体パターン
120 スルーホール
121 スルーホール孔
122 コネクション部
図1
図2
図3
図4
図5