(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6268319
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】繊維積層体及び繊維積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/26 20060101AFI20180115BHJP
A41D 31/00 20060101ALI20180115BHJP
A41D 31/02 20060101ALI20180115BHJP
A47G 9/02 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
B32B5/26
A41D31/00 502K
A41D31/02 A
A41D31/00 501A
A47G9/02 C
A47G9/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-105434(P2017-105434)
(22)【出願日】2017年5月29日
【審査請求日】2017年6月26日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社繊研新聞社発行 繊研新聞 2017年4月27日付 第11面
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第1回 JFW−IFF MAGIC Japan 2017年4月26〜28日開催
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515106583
【氏名又は名称】株式会社コゼットクリエーション
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】孔 令璽
【審査官】
中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−049240(JP,A)
【文献】
実開平02−101727(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0071367(US,A1)
【文献】
特開昭58−216011(JP,A)
【文献】
特開2001−334596(JP,A)
【文献】
特開平04−263891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
A41D 1/02− 1/04
3/00− 3/08
29/00− 31/02
A47C 27/00− 27/22
31/00− 31/12
A47G 9/00− 11/00
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する表生地と、0.2mm〜1.5mmの厚さを有する羽毛繊維層と、伸縮性を有する裏生地とが順に積層されており、前記羽毛繊維層が表生地及び裏生地に接着剤によって接着され一体化してなる衣料品用積層生地。
【請求項2】
請求項1に記載の衣料品用積層生地を少なくともその一部に用いてなることを特徴とする衣料品。
【請求項3】
伸縮性を有する表生地と、0.2mm〜1.5mmの厚さを有する羽毛繊維層と、伸縮性を有する裏生地とからなる衣料品用積層生地の製造方法であって、
(1)基台上に羽毛を積層する側を上面にした表生地を載せ、
(2)前記表生地に接着剤を塗布し、
(3)前記接着剤が塗布された表生地に、羽毛を積層し、
(4)その後、羽毛を積層する側を下面にした裏生地を載せ積層体を製造し、
(5)前記積層体をプレスし、乾燥して接着一体化する、
ことを含む、衣料品用積層生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で嵩張らず、保温性の高い繊維積層体及び該繊維積層体の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アヒルやガチョウなどの鳥のダウン(羽毛)やフェザー(羽根)(以下、「羽毛」とする。)は、軽量で保温性が高く、吸湿発散性に優れることから、羽毛布団やダウンジャケットなどに広く使われている。
一般に、羽毛を使った衣料品や寝装品などの羽毛製品は、表生地と裏生地の間に羽毛を充填しているが、羽毛の性質上、一部に偏ってしまって均等に分散配置されないため、製品全体に十分な効果が得られず、意匠的にも好ましくない。
そのため、所定の間隔で表生地と裏生地を縫付けるキルティング加工を施し、羽毛が大きく移動し偏るのを防止し、製品全体に均等に羽毛が配置されるように工夫がされている。
しかし、羽毛は軽量で一つ一つが非常に細かいことから、表生地や裏生地の繊維の隙間や、キルティング加工時に表生地と裏生地を縫い合わせた針穴から吹き出してしまうという問題がある。羽毛の吹き出しは、アレルギー性の皮膚炎、気管支喘息や鼻炎の原因にもなっている。
そこで、この問題を解決するために、高密度の生地をローラーで挟んで高圧力と熱を加えて、糸と糸の隙間を潰して狭めて羽毛が吹き出すのを防止したり、糸と糸の隙間を樹脂などで埋めてコーティングするダウンプルーフ加工を施した生地を使って、羽毛の吹き出しを防止している。
【0003】
しかし、このような加工を施した生地は通気性が悪いうえ、吸湿性や発散性が悪く、コーティング剤の影響で、硬くて重く、さらには、これらの加工が施された生地でも、表生地と裏生地の縫い合わせ部分の針穴からの羽毛の吹き出しは防止しきれない。そのため、これまで羽毛の吹き出しを防止するために様々な技術が考案されてきた。
その一つとして、羽毛をダウンパックと呼ばれる袋状の中生地内に収納し、そのダウンパックを表生地と裏生地を縫い付けてできた空間に介在させることで、重くならずに羽毛の吹き出しを防止する方法が広く普及している。
また、例えば、特開2002−173815号公報には、「中生地を複数枚重ねて2本の縫い目で複数箇所縫い合わせて両端を開口した充填部を形成し、表生地を重ね合わせて該2本の縫い目の中央を縫い、次いで中生地の充填部に羽毛を詰め込み、裏地を重ねて生地の周辺部を縫い合わせたことを特徴とする羽毛の吹き出しを防止したダウンウェアー」が開示されている(特許文献1)。
【0004】
これは、中生地の縫い目と、表生地の縫い目の位置をずらすことで、縫い目からの羽根の吹き出しを防止する方法であるが、上記特許文献1の技術をもってしても、その明細書内に、「中生地1,2の素材は、合成繊維、天然繊維またはこれらの混紡、交織等のいずれの素材を使用しても良いが、好ましくはダウンプルーフ加工が施された生地を用いるのがよい。」とあるように、要するにダウンプルーフ加工を施した生地以外では、羽毛の吹き出しを完全に防止することができない。
ダウンプルーフ加工を施された生地を用いた場合は、上記と同様に、吸湿性や通気性が悪く、全体に重量増になることは避けられない。
【0005】
そのため、このようなダウンパックの問題点を改良する技術も開示されている。
特許3274869号公報には、「羽毛と熱可塑性の接着剤とからなる羽毛集合体を、該接着剤によって圧縮状態で羽毛同士接着してなり、嵩を回復させて使用することを特徴とする羽毛シート、及びこの羽毛シートを接着剤の溶融温度以上の温度に加熱して、嵩を回復させて使用することを特徴とする羽毛シートの使用方法」が開示されている(特許文献2)。
ここで羽根シートとは、ダウンパックと同様に衣服等の表地と裏地の間に介挿して用いられるものであり、該羽毛シートは、嵩高な羽毛集合体を一時的に圧縮して、羽毛同士が十分に接着された状態で固定し、縫製品の製造時や保管、輸送時においては、圧縮した状態を維持させ、縫製品を製造した後に、嵩回復させて、本来の嵩高に戻して使用、着用できるものである。
上記発明においては、熱可塑性の接着剤を使用しているので、縫製品を製造した後に、接着剤の溶融温度以上の温度に加熱すると接着剤が再溶融し、接着力が低下して羽根同士の接着がとれて、羽根が元の空気を多量に含んだ嵩高な状態に戻り、その後、溶融温度以下の温度になるとその状態で再度接着されることから、嵩高に戻った状態で羽根が接着され固定されるので、羽毛同士が接着され吹き出しを防止でき、軽量であり、また製造時には羽毛の飛散等を防止できるというものである。
【0006】
しかし、上記特許文献2の技術によると、製品を製造後に、製品を接着剤の溶融温度以上の温度に加熱しなければならない。これは、製品を製造する工程においては、縫製作業の工程とは異なるため、さらに別工程となり仕上げまでに手間がかかり、時間的にもコスト的にも無駄が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−173815号公報
【特許文献2】特許第3274869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような羽毛布団やダウンジャケットなどの羽毛製品は、羽毛の風合いを生かすため嵩高であることが特徴であり、この嵩高こそが、羽毛の柔らかさや軽さ、保温性、保湿性の象徴とも言える。
しかし、この羽毛製品の特徴である嵩高のせいで、着用時に嵩張り着ぶくれし、動きにくく、また冬期以外の保管時や、外出先で脱いだ後など場所をとるため、取り扱いしにくいという問題があった。
また、上記のように、ダウンパックが介挿されている場合、ダウンパックの生地や中生地が、ダウンプルーフ加工がされていたり、不織布やナイロンなど羽毛の吹き出しを防止する素材が使用されているため、通気性がよくなく蒸れやすく、さらには重いという問題もあった。
近年は、この問題を解決するために、羽毛の量を減らしたり、ダウンプルーフ加工する生地自体を超軽量化したり、キルティング加工を、縫製ではなく圧着加工にして縫い目を減らし保温性を高めたり等、様々な方法で、軽くて嵩張らず、かつ保温性、保湿性の高い羽毛製品が開発されているが、羽毛の吹き出しを完全に防止するのはむずかしく、様々な加工でコストがかかってしまって高価な製品になっている。
【0009】
そこで、本願発明者は、鋭意研究の結果、上記様々な羽毛製品の問題点を解決しつつ、羽毛の暖かさを備え軽量で嵩張らず、通気性や保温性が高く、かつ羽毛の吹き出しや偏りのない新しい羽毛を用いた繊維積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を下記の手段により解決した。
〈1〉表生地、羽毛繊維層、裏生地が順に積層され、前記羽毛繊維層が表生地及び裏生地に接着剤によって接着され一体化してなることを特徴とする繊維積層体。
〈2〉前記繊維積層体における羽毛繊維層が、層の厚さが0.2mm〜1.5mmであることを特徴とする前記〈1〉に記載の繊維積層体。
〈3〉前記〈1〉又は〈2〉に記載の繊維積層体を少なくともその一部に用いてなることを特徴とする衣料品。
〈4〉前記〈1〉又は〈2〉に記載の繊維積層体を少なくともその一部に用いてなることを特徴とする寝装品。
〈5〉表生地と羽毛繊維層及び裏生地からなる繊維積層体の製造方法であって、
(1)基台上に羽毛を積層する側を上面にした表生地を載せ、
(2)前記表生地に接着剤を塗布し、
(3)前記接着剤が塗布された表生地に、羽毛を積層し、
(4)その後、羽毛を積層する側を下面にした裏生地を載せ積層体を製造し、
(5)前記積層体をプレスし、乾燥して接着一体化する、
ことを含む、繊維積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下記の効果が発揮される。
本発明にかかる繊維積層体は、表生地、羽毛繊維層、裏生地が順に積層され、前記羽毛繊維層が表生地及び裏生地に接着剤によって接着され一体化してなるので、羽毛が固着されていて縫い目からの吹き出しや偏りがなく、軽量であり、かつ、羽毛繊維層により羽毛の保温性が発揮され暖かく、またダウンパックやダウンプルーフ加工を必要としないので、通気性もよく快適性に優れている。
そして、前記繊維積層体は、積層される羽毛繊維層の厚さを0.2mm〜1.5mm程度で構成し表生地及び裏生地と接着されるため、あたかも一枚の生地のように扱え、製品化においては、そのまま裁断、縫製でき、表生地は衣料品や寝装品の表生地となるので、製造作業がしやすく、別途特殊な加工や羽毛の詰め込み作業等の必要がなく、さらに裁断時や縫製時に羽毛が飛び散ることもなく、作業環境を良好に維持することができる。
さらに、羽毛繊維層の厚さが0.2mm〜1.5mmという薄さで構成されるので、該羽毛繊維層を積層した繊維積層体で製造された衣料品や寝装品は、嵩張ることがなく、動きやすく、コンパクトに畳めることができ、保管もしやすい。
そして、表生地や裏生地の素材が限定されないので、伸縮性のある生地や、防水性のある生地、吸水性の高い生地等あらゆる生地を採用でき、その生地の特徴を生かしつつ、軽くて嵩張らずに暖かい衣料品や寝装品を提供できる。
【0012】
さらに、本発明にかかる表生地と羽毛繊維層及び裏生地からなる繊維積層体の製造は、
(1)基台上に羽毛を積層する側を上面にした表生地を載せ、(2)前記表生地に接着剤を塗布し、(3)前記接着剤が塗布された表生地に、羽毛を積層し、(4)その後、羽毛を積層する側を下面にした裏生地を載せ積層体を製造し、(5)前記積層体をプレスし、乾燥して接着一体化するものであり、製造時に羽毛が飛び散ることもなく、またダウンプルーフ加工やキルティング加工など特殊な縫製や加工を必要とせず製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】本発明にかかる繊維積層体の説明用拡大顕微鏡写真による図
【
図4】本発明にかかる繊維積層体の製造方法の概要説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる繊維積層体及び該繊維積層体の製造方法を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明にかかる繊維積層体の説明用断面図であり、
図2は本発明にかかる繊維積層体の説明用斜視図である。
図において、1は繊維積層体、2は表生地、3は羽毛繊維層、4は裏生地、5、5a、5bは接着剤である。
図1及び
図2に示す繊維積層体の実施例の形態において、繊維積層体1は、表生地2、羽毛繊維層3及び裏生地4が順に積層されて構成され、前記羽毛繊維層3は表生地2及び裏生地4に接着剤5a、5bによって接着され一体化して構成される。
本実施例において、表生地2及び裏生地4は、綿、ウール、麻等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル系繊維等の合成繊維、天然あるいは合成の皮革等、任意の素材の生地を使用できる。また、表生地2と裏生地4を同じ素材としても、異なる素材としてもよく、製造するものによって適宜素材を選ぶことができる。
素材が限定されないのは、表生地2と裏生地4の間に介挿される羽毛繊維層3の羽毛30が、接着剤5a、5bによって表生地2及び裏生地4と接着されているとともに、羽毛繊維層3を構成する多数の羽毛30も、接着剤5a、5bによって相互に接着されることになるため、羽毛30が単独で表生地2や裏生地4から吹き出ることがないからである。
したがって、本発明にかかる繊維積層体1の表生地2及び裏生地4は、特に高密度の素材に限定されず、密度に関係なく、またダウンプルーフ加工の有無にも関係なく、任意の素材を使用することができるものとなっている。
なお、衣料品や寝装品を製造する場合には、繊維積層体1の表生地2が製品の表生地として使用でき、例えば、衣料品の製造の場合、表生地2や裏生地4に伸縮性のある素材を選択すると、脱いだり着たりしやすく好適であり、寝装品を製造する場合、表生地2や裏生地にシルクや綿布を使うと、軽やかで肌ざわりがよく好適である。
このように、本発明にかかる繊維積層体1は、表生地2、羽毛繊維層3及び裏生地4を接着剤で接着して一体化し、あたかも一枚の生地のように取り扱えるため、表生地2や羽毛繊維層3及び裏生地4は、それぞれ互いの動きに追従し伸縮性を阻害することがなく、異なった素材も用途に合わせて任意に選ぶことができる。
【0016】
また、本発明にかかる羽毛繊維層3は、羽毛30の集合体で構成される。ここで「羽毛」とは、アヒルやガチョウなどの鳥のダウン(羽毛)やフェザー(羽根)のいずれをも含む総称である。したがって、羽毛繊維層3は、ダウンだけで構成しても、フェザーだけで構成してもよく、ダウンとフェザーを混合してもよい。
なお、軽量で暖かく風合いが柔らかいことから天然の羽毛が好ましいが、本発明の構成は、人工羽毛、人工羽毛綿と呼ばれる合成繊維の疑似羽毛を用いてもよい。
【0017】
本発明にかかる繊維積層体1において、羽毛繊維層3を表生地2及び裏生地4に接着するために使用される接着剤5a、5bは、表生地2及び裏生地4と、羽毛繊維層3を接着可能なものであれば、特に限定されない。したがって、表生地2及び裏生地4の素材に応じて、ホットメルト系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリル化ウレタン樹脂系接着剤、スチレンブタジエンゴム系接着剤等、素材間の接着性能や、製造工程における加熱工程の有無等を考慮して選択することができる。
なお、表生地2と裏生地4が薄い素材の場合など、素材を貫通しないよう接着剤5a、5bを少量にしたい時には、熱で溶けて高速で接着できるホットメルト系接着剤などが好適である。
【0018】
そして、本発明にかかる繊維積層体1を構成する羽毛繊維層3は、該層の厚さαをおよそ0.2mm〜1.5mmとなるように構成することが好ましい。これは、薄すぎると、羽毛の量が少なすぎて保温性を確保できず、また1.5mm以上になると、繊維積層体1の厚さが厚くなり、嵩張る上に、軽量感がなくなり、裁断、縫製等の製造作業がしにくくなるためである。
したがって、さらに好ましくは、表生地2及び裏生地4の素材にもよるが、羽毛繊維層3の厚さαが0.4〜0.8mm程度になるよう羽毛の量を調整すると、軽量で嵩張らず、より一枚の生地のように扱え、通常の一枚生地のごとく裁断、縫製等の製造作業ができるので好適である。
【0019】
図3は本発明にかかる繊維積層体の説明用拡大顕微鏡写真による図である。
図に示す繊維積層体1は、表生地2、羽毛繊維層3、裏生地4が上から順に積層され、前記羽毛繊維層3が表生地2及び裏生地4に接着剤によって接着され一体化して構成されている。そして、羽毛繊維層3は、大量の羽毛を挟み込んで構成され、かつ上下の表生地2及び裏生地4の厚さに比して薄く構成されている。図の羽毛繊維層3はおよそ0.5mmであり、繊維積層体1全体の厚さは、およそ2.5mmである。
【0020】
なお、本発明にかかる繊維積層体1は、上記のようにあたかも一枚の生地のごとく取り扱うことができるので、ジャケットやズボン、スカート、シャツ、防寒用インナーや帽子など、任意の衣料品を製造するための生地として用いることができ、繊維積層体1の表生地2は、そのまま各製品の表生地として使用できる。
また、各種衣料品の一部に本発明にかかる繊維積層体1を用いることもできる。例えば、ジャケットの前身頃と後身頃だけ該繊維積層体1を用いて、袖部を既存の薄手の生地を用いるなど組み合わせて、デザイン性の高い製品とすることもできる。
同様に、本発明にかかる繊維積層体1は、寝装品についても用いることができる。寝装品についても、繊維積層体1の表生地2は、そのまま各製品の表生地として使用できる。
そして、寝装品も、製品全体を繊維積層体1で構成してもよく、製品の一部に本発明の繊維積層体1を用いる構成とすることもできる。
衣料品、寝装品いずれに用いる場合においても、少なくとも表生地2の素材を、製造する製品に応じて選択して繊維積層体1を構成すれば、軽量で暖かいうえに、好適な素材で製造された衣料品、寝装品を製造することができる。
【0021】
次に、本発明にかかる繊維積層体の製造方法を
図4に基づいて説明する。
本発明にかかる繊維積層体1の製造方法の一例としては、
(1)基台上に羽毛を積層する側を上面にして表生地を載せる第1工程、
(2)前記表生地に接着剤を塗布する第2工程、
(3)前記接着剤が塗布された表生地に、羽毛を積層する第3工程、
(4)その後、羽毛を積層する側を下面にした裏生地を載せ積層体を製造する第4工程、
(5)前記積層体をプレスし、乾燥して接着一体化する第5工程
からなる。
【0022】
図4においては、羽毛を積層する側が上面になるようにロール状の表生地2がセットされ(第1工程)、接着剤供給手段により接着剤5が塗布される(第2工程)。
接着剤供給手段による接着剤5の塗布は、
図2のようにドット状であっても、ライン状であってもよく、羽毛30が表生地2の全面に付着するように塗布される。
また、接着剤5は、前述のように表生地2及び裏生地4の素材によって適宜好適なものが用いられる。表生地2及び裏生地4が薄い生地の場合は、表面側を綺麗に仕上げるために、少量の熱可塑性の接着剤5が好適である。
【0023】
そして、第2工程で、接着剤供給手段により接着剤5が塗布された表生地2に、羽毛供給手段から供給された羽毛30が積層される(第3工程)。
羽毛供給手段は、表生地2の上面にムラなく積層できる方法が選択される。例えば、塗布された接着剤5の上に羽毛を自然落下させる方法や、電極を配置して静電植毛と同様の方法により羽毛を吸着させてもよい。
第3工程の後、羽毛を積層する面を下面にした裏生地4を、表生地2と前記羽毛30を挟み込むように合わせて積層体を製造する(第4工程)。
その際、裏生地4の羽毛を積層する面に予め接着剤5を塗布しておいてもよく、裏生地4の素材によっては、接着剤5を塗布せずに表生地2に位置合わせする。
これは、接着剤5の種類によって、表生地2及び裏生地4のいずれにも接着剤5を塗布した方が強力に接着できるタイプ、粘性が低く浸透しやすいため、表生地2に塗布した接着剤5が裏生地4まで浸透し接着できるタイプ、硬化が遅いタイプ、早いタイプなど性能が様々なので、それら特性に合わせて表生地2のみ接着剤5を塗布したり、表生地2と裏生地4の両面に接着剤5を塗布したり、適時選択して行えばよい。
【0024】
そして、第4工程でできた積層体を、圧縮手段でプレスし、その後、乾燥手段により乾燥し、ロール状に巻き上げて仕上げる(第5工程)。圧縮手段によるプレスは、羽毛繊維層3が所定の厚さαになるように調整される。
なお、図においては、プレス機と乾燥機による作業を別にして図示しているが、熱可塑性の接着剤5を使った場合には、ホットプレス機で圧縮(圧着)と加熱及び乾燥を同時に行えば、作業効率を高めることができる。
【0025】
なお、本発明の繊維積層体の製造は、上記の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明にかかる繊維積層体は、表生地、羽毛繊維層、裏生地が順に積層され、前記羽毛繊維層が表生地及び裏生地に接着剤によって接着され一体化してなるので、従来の羽毛布団やダウンジャケットなどの羽毛製品はもちろん、シャツやズボン、スカート、インナーや帽子、手袋、ブーツのアッパー部やバッグ、布団、毛布、シーツ、こたつ掛けなど、保温性が求められる布製品一般に使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 繊維積層体
2 表生地
3 羽毛繊維層
4 裏生地
5、5a、5b 接着剤
30 羽毛
α 羽毛繊維層の厚さ
【要約】
【課題】 軽量で嵩張らず、保温性の高い繊維積層体及び該繊維積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】
表生地、羽毛繊維層、裏生地が順に積層され、前記羽毛繊維層が表生地及び裏生地に接着剤によって接着され一体化してなることを特徴とする繊維積層体であって、前記羽毛繊維層が、層の厚さが0.2mm〜1.5mmに構成してなる繊維積層体。
【選択図】
図1