特許第6268328号(P6268328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6268328ナノメートル二酸化チタンを調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268328
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ナノメートル二酸化チタンを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/053 20060101AFI20180115BHJP
   C22B 34/12 20060101ALI20180115BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20180115BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20180115BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20180115BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C01G23/053
   C22B34/12
   C22B3/10
   C22B3/44 101Z
   C22B1/02
   C22B3/26
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-508730(P2017-508730)
(86)(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公表番号】特表2017-515786(P2017-515786A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】CN2015077495
(87)【国際公開番号】WO2015165369
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】201410180173.6
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516325213
【氏名又は名称】ジボ シェンタイ コンポジット マテリアル テクノロジー カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZIBO SHENGTAI COMPOSITE MATERIAL TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】ルゥー チィンチャン
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06375923(US,B1)
【文献】 特開昭58−015031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G23/00−23/08
C22B1/00−61/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノメートル二酸化チタンを調製するための方法であって、以下の工程:
(1)塩酸を用いてイルメナイト粉末を溶出して、粗鉱溶液を得ること;
(2)前記粗鉱溶液中の鉄元素を除去して、チタンイオンを含有する最終溶液を得ること;
(3)前記最終溶液を加水分解のために加熱して、二酸化チタンを含有する加水分解生成物を得ること;及び
(4)得られた加水分解生成物を仮焼して、ナノメートル二酸化チタンを得ること、
を含むことを特徴とする、ナノメートル二酸化チタンを調製するための方法であって、
工程(1)において、鉱石溶出のための温度が60〜100℃であり;かつ工程(2)が:
(2a)塩化第一鉄の結晶化:工程(1)で得られた粗鉱溶液を冷却して結晶塩化第一鉄四水和物を得ること、及び濾過により結晶塩化第一鉄四水和物を分離して第1溶液を得ること;
(2b)酸化:前記第1溶液に酸化剤を添加して、前記第1溶液中に残留する塩化第一鉄を塩化第二鉄に酸化して第2溶液を得るようにすること;
(2c)抽出:前記第2溶液に対し溶媒抽出を実施して、第二鉄イオンを含有する脱離液と、及びチタンイオンを含有するラフィネートとを得ること;及び
(2d)ケイ素の除去:前記ラフィネートからケイ素を除去して最終溶液を得ること
を含み、
工程(2c)が、アミン抽出剤を含有する有機油相を用いて、3〜5段階の連続抽出を実施し、工程(4)で得られたナノメートル二酸化チタンがルチル型二酸化チタンである、又は
工程(2c)が下記の工程(2c)及び(2c)を含み、かつ、工程(2d)において工程(2c)で得られたチタンイオンを含有するラフィネート中の、ケイ素が除去され、工程(4)で得られたナノメートル二酸化チタンがアナターゼ型二酸化チタン粉末である、ナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
(2c)第1の溶媒抽出:アミン含有抽出剤を用いた有機油相を用いて前記第2溶液に3〜5段階の連続抽出を行って、第二鉄イオンを含有する脱離液と、及びチタンイオンを含有するラフィネートとを得ること;及び
(2c)第2の溶媒抽出:有機リン抽出剤を含有する油相を用いて、工程(2c)において得られたチタンイオンを含有するラフィネートに第2の抽出を行って、油相中にチタンイオンを含有するラフィネートと、及び水相中に塩酸を含有する脱離液とを得るようにすることであって、これにおいて抽出プロセスが3〜5段階の連続抽出であるこ
【請求項2】
工程(1)において、塩酸の質量濃度が30%〜38%であり、かつイルメナイト粉末対塩酸の質量比が1:3〜5の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【請求項3】
工程(2a)において、工程(1)で得られた粗鉱溶液が0〜4℃に冷却されることを特徴とする、請求項1に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【請求項4】
工程(2b)において選択された酸化剤が、塩素酸ナトリウム、過酸化水素、及び塩素ガスのいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【請求項5】
前記有機リン抽出剤が、有機リン化合物又はその混合物を含み、それが一般式RPO[式中、R、R、及びR、は、直鎖又は分枝鎖アルキルであり、かつR、R、及びRの炭素原子の総数は12より多い]を有することを特徴とする、請求項1に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【請求項6】
前記アミン抽出剤が、一般式RN[式中、R、R、及びR、は、8〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキルである]をもつ第三級アミンを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【請求項7】
工程(2d)が:工程(2c)から得られたラフィネートにゲル化剤を添加して、ラフィネート中でケイ素を沈殿させること、そして次に沈殿を濾去して、最終溶液を得ることを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【請求項8】
工程(3)が:
(3a)工程(2d)において得られた最終溶液を加水分解のために加熱することであって、これにおいて、加水分解温度が80〜110℃であること、及び
(3b)工程(3a)において得られた加水分解生成物の酸洗浄及び脱イオン水洗浄を実施して、二酸化チタン粉末を得るようにすること
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【請求項9】
工程(4)が:
(4a)工程(3)で得られた二酸化チタン粉末を、200〜300℃の乾燥温度下で乾燥すること;及び
(4b)工程(4a)で得られた生成物を、800〜900℃の仮焼温度下で仮焼すること
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【請求項10】
工程(4)が:工程(3)で得られた二酸化チタン粉末を800〜900℃の仮焼温度下で仮焼することを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【請求項11】
前記方法が:
(5)工程(4)で得られた生成物を粉砕して、分散されたナノメートル二酸化チタン粉末を得ることをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノメートル二酸化チタンを調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機機能性材料の調製技術の分野、特にナノメートル二酸化チタンを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンは、安定した物理的性質及び化学的性質、優れた光学的性質及び電気的性質、並びに良好な色素的性質を有し、また様々な用途において広く使用され得る。二酸化チタンは、塗装、プラスチック、ゴム、化学繊維、製紙、インク、化粧品、玩具、キャパシタ、表示管、国防先端技術、食品、医薬品、化学試薬、溶接電極、エナメル、セラミクス、ガラス、耐火材料、冶金、人工宝石、美術顔料、皮革、印刷及び染色用ペースト、石鹸、触媒などの分野においてその用途を見出してきた。
【0003】
現在、二酸化チタンを調製するための方法は、主として塩素化プロセス及び硫酸プロセスを含む。
【0004】
塩素化プロセスは、先端技術の利点、短いプロセスフロー、容易に実現する自動化、及び良好な製品品質、を有する。しかしながら、塩素化プロセスは、原料品質に高い要求を課し、かつ原料として希少資源であるルチル鉱石の使用を要する。更に、塩素化プロセスにより二酸化チタンを製造する場合には、四塩化チタン、塩素ガス、及び酸素ガスに対し抵抗性である材料及び装置が適用されるべきであることから、塩素化プロセスには技術的困難がある。しかしながら、かかる材料及び装置は、投資コストが高くかつメンテナンスが困難である。
【0005】
硫酸プロセスは、安価な原料、成熟プロセス、及び簡単な装置という利点を有する。しかしながら、プロセスフローは長く、エネルギー消費は高く、排出される廃棄物の量は多く、また製品の品質が低い。
【0006】
現在国内には、年間30,000〜150,000トンの二酸化チタン生産能力を有する47のプラントがあり、それらの総生産能力は年間3,500,000トンである。これらのプラントでは、ごく一部が二酸化チタンの製造に塩素化プロセスを用いているにすぎず、他のプラントは全て、二酸化チタンを製造するのに硫酸プロセスを適用している。それにもかかわらず、これらのプラントはその過剰な生産能力が原因で、なお損益なしか又は赤字の状態にある。
【0007】
したがって、いかにして高品質のナノメートル二酸化チタンを低コスト下に得るかが、当該技術分野において解決されるべき技術的問題となりつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ナノメートル二酸化チタンを調製するための方法であって、これにより高品質のナノメートル二酸化チタンが低コスト下に入手可能である、該方法を提供する。高純度のルチル型二酸化チタン又はアナターゼ型二酸化チタンを調製するための方法は、以下の工程:原料としてイルメナイトを用いること、イルメナイトを塩酸で溶出すること、次いで塩化第一鉄を結晶化すること、酸化を行うこと、溶媒抽出により鉄を除去すること、次にゲル化によりケイ素を除去すること、そして熱加水分解を行うこと、を含み、10〜40nmの粒径をもつ高純度のルチル型二酸化チタン又はアナターゼ型二酸化チタンが得られるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、ナノメートル二酸化チタンを調製するための方法であって、以下の工程:
(1)塩酸を用いてイルメナイト粉末を溶出して、粗鉱溶液を得ること;
(2)粗鉱溶液中の鉄元素を除去して、チタンイオンを含有する最終溶液を得ること;
(3)最終溶液を加水分解のために加熱して、二酸化チタンを含有する加水分解生成物を得ること;及び
(4)得られた加水分解生成物を仮焼して、ナノメートル二酸化チタンを得ること、
を含む、該方法を提供する。
【0010】
工程(1)が、鉱石を溶出するための工程であることは、容易に理解される。本発明では、塩酸を用いて鉱石を溶出することにより四塩化チタンが取得され得、それはさらに熱加水分解に供せられて二酸化チタンが得られる。加水分解により得られた二酸化チタンは、非常にひび割れし易くかつ仮焼後に分散して、ナノメートル二酸化チタン粉末を生じる。本発明により提供された方法は、設備に高い要求性を課さず、かつ高純度及び高品質のナノメートル二酸化チタン粉末を製造し得る。
【0011】
本発明では、工程(1)において、酸に対する鉱石の比(即ち、塩酸の重量に対するイルメナイト粉末の重量の比)の具体値は、特に制限されない。充分量の塩酸を用いることで、鉱石溶出率及び鉱石溶出度の双方が増大され得;同時に、鉱石溶出中のチタンの加水分解が防止され得て、チタンの溶解速度が確保されるようにした。本発明の具体的な一実施形態として、塩酸の量は、イルメナイト中の酸可溶性物質の量、及びそれにより消費される塩化水素の量、並びに鉱石溶出の最後におけるチタン溶液中の所望の塩酸濃度に従って計算され得る。一般に、鉱石溶出の最後に約9mol/Lの塩酸があることが所望される。即ち、塩酸の質量濃度は30%〜38%である。
【0012】
イルメナイト粉末中の鉄濃度が高すぎる場合、鉱石溶出の間に高い酸性度が塩化第二鉄の沈殿を引き起こすこととなり、それ故溶解速度は低減され、かつ沈殿した塩化第二鉄は濾過により除去されることとなる。それ故、以下の因子:イルメナイトの組成、酸の濃度、及び浸出温度、が一緒に考慮されねばならない。一般に、鉱石対酸の比は、1:3〜4の範囲内であり、鉱石溶出のための温度は、60℃と100℃の間であり、かつ鉱石溶出のための時間は、4時間と6時間の間である。
【0013】
イルメナイト粉末の粒径が小さい程、鉱石溶出中の溶出速度は大きい。好ましくは、イルメナイト粉末の粒径は、300μmであり得、その場合、鉱石溶出率は90%以上に達し得る。
【0014】
低濃度の塩酸が使用される場合、所望の溶出率は鉱石溶出を反復して行うことにより得られ得る。
【0015】
コストを節約するため、本発明の塩酸は回収され得る。回収された塩酸は、塩化水素による富化後に、次のナノメートル二酸化チタン調製プロセスにおいて再使用され得る。
【0016】
本発明では、粗鉱溶液中の鉄元素を除去するための具体的な方法は、粗鉱溶液中の鉄元素が、除去可能でありかつ最終的に得られたナノメートル二酸化チタン粉末中に残留しない限り、特に制限されない。鉱石溶出は、工程(1)において塩酸を用いて60と100℃の間で実施されることから、粗鉱溶液中に第一鉄イオンが存在する。コストを節約するため、鉄元素は冷却法により除去され得る。特に、工程(2)は:
(2a)塩化第一鉄の結晶化:工程(1)で得られた粗鉱溶液を冷却して結晶塩化第一鉄四水和物を得ること、及び濾過により結晶塩化第一鉄四水和物を分離して第1溶液を得ること;
(2b)酸化:第1溶液中に残留する塩化第一鉄を塩化第二鉄に酸化して第2溶液を得ること;
(2c)抽出:第2溶液に対し溶媒抽出を実施して、第二鉄イオンを含有する脱離液と、及びチタンイオンを含有するラフィネートとを得ること;及び
(2d)ケイ素の除去:ラフィネートからケイ素を除去して最終溶液を得ること
を含み得る。
【0017】
イルメナイトは通常、第一鉄イオン及び第二鉄イオンを含有し、それ故粗鉱溶液中には第一鉄イオン及び第二鉄イオンの双方がある。工程(2c)における溶媒抽出の負荷を低減する目的で、殆どの第一鉄は工程(2a)における結晶化により除去されている。塩化第一鉄四水和物結晶は、粗鉱溶液が0〜4℃に冷却された場合に沈殿され得る。本発明では、説明のため、工程(2a)後に得られた溶液は、第1溶液と称される。第1溶液中の結晶塩化第一鉄四水和物は、濾過により分離され得る。工程(2a)では、塩化水素を適切に注入して塩酸の濃度を増大することにより、第一鉄が最大範囲まで結晶化されることとなり、得られた結晶塩化第一鉄四水和物は、高温下の加水分解により、塩酸及び酸化鉄を産生し得る。得られた塩酸は、塩化水素を投入することにより富化され得て、次のナノメートル二酸化チタン粉末の調製プロセスにおいて再使用されるようにし、加水分解により得られた酸化鉄は、製鋼所の製鋼のための原料として使用され得る。したがって、本発明において提供されたナノメートル二酸化チタン調製のための方法は、生産コストをさらに低減し得ることが見て取れる。
【0018】
好ましくは工程(2a)においては、工程(1)で得られた粗鉱溶液は、0〜4℃に冷却される。
【0019】
塩化第一鉄の結晶化後、第1溶液はなお少量の第一鉄イオンを含有しており、これは第二鉄イオンに酸化され得、そして次に抽出法により第1溶液から除去されて、第2溶液を生じるようにする。工程(2b)では、酸化剤は、塩素ガス、過酸化水素、及び塩素酸ナトリウムのいずれか1つから選択され得る。完全な抽出を行うためには、第二鉄イオンの完全な酸化が非常に重要であり、このことはオンライン検出及びコントロールにより実現され得る。
【0020】
工程(4)で得られたナノメートル二酸化チタン粉末のタイプは、工程(2c)において抽出剤のタイプ及び抽出の時間を選択することによりコントロールされ得る。チタン元素及び第二鉄元素は、抽出により分離され得る。
【0021】
第二鉄イオンを含有する脱離液、及びチタンイオンを含有するラフィネートは、抽出剤を用いて第2溶液の抽出を行うことにより取得され得る。
【0022】
工程(2c)における抽出プロセスは、溶媒抽出であり、それ故、抽出剤の選択及び組成物は、その抽出能力、選択性、及び層分離速度の効果が大きいが故に重要である。さらに、抽出温度は抽出油相の粘度変化を引き起こすものであり、このことは、抽出剤の抽出能力、選択性、及び層分離速度に著しく影響を及ぼすであろう。一般に、抽出温度は30℃とされる。抽出工程の油−水比は、1〜2の間で選択可能であろう。
【0023】
最終的に得られたナノメートル二酸化チタン粉末のタイプは、抽出剤の成分に依存する。例えば、抽出剤がアミン抽出剤を含有する有機油相である場合、ルチル型二酸化チタンが、3〜3段階の連続抽出後に取得可能であろう。
【0024】
ルチル型二酸化チタンは、工程(3)の加水分解の工程後に既に得られている。工程(4)における仮焼は、分子間の水及び残留塩素を除去し得て、水及び塩素のないナノメートル二酸化チタン粉末が得られるようにする。かかる実施形態においては、得られたルチル型二酸化チタンは99.5%までの純度、及び10〜40nmの粒径を有する。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態として、アミン抽出剤は、一般式RN[式中、R、R、及びR、は、8〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキルである]をもつ第三級アミンである。
【0026】
アミン抽出剤に加えて、アミン抽出剤を含有する有機油相はさらに希釈剤を含み得る。希釈剤は、ケロシン又はアルコール溶媒から選択され得る。さらに、アルコール溶媒はオクタノール又はデカノールであり得る。各成分の割合は適用範囲が広く、かつ決定的なものではない。
【0027】
チタンイオン及び少量の鉄イオンに加えて、チタンイオンを含有するラフィネート相はまた、ケイ素及びリンなどの、加水分解生成物の純度に影響を及ぼす他の成分も含有する。
【0028】
好ましくは、工程(2)はさらに:(2d)ケイ素の除去:ラフィネート中のケイ素を除去して最終溶液を得るようにすること、を含みうる。ケイ素は、ゲル化プロセスにより共に凝集され得、次いで濾過されて、最終溶液を生じる。
【0029】
工程(2c)を調整することにより、アナターゼ型の二酸化チタン粉末が工程(4)において得られ得る。具体的には、工程(2c)は:
(2c)第1の溶媒抽出:アミン含有抽出剤を用いた有機油相により3〜5段階の連続抽出を行って、第二鉄イオンを含有する脱離液と、及びチタンイオンを含有するラフィネートとを得ること;及び
(2c)第2の溶媒抽出:有機リン抽出剤を含有する油相を用いて、第1の溶媒抽出から得られたチタンイオンを含有するラフィネートの第2の抽出を行って、油相中にチタンイオンを含有するラフィネートと、水相中に塩酸を含有する脱離液とを得るようにすることであって、これにおいて抽出プロセスが3〜5段階の連続抽出であること、
を含み得る。
【0030】
かかる実施形態においては、工程(2c)は、ルチル型二酸化チタン粉末を調製する工程(2c)と同じであり、これは再度詳細には記載しない。工程(2d)では、工程(2c)で得られた、チタンイオンを含有するラフィネート中のケイ素が除去される。
【0031】
工程(2c)では、有機リン抽出剤は、有機リン化合物又はその混合物であって、それは一般式RPO[式中、R、R、及びR、は、直鎖又は分枝鎖アルキルであり、かつR、R、及びRの炭素原子の総数は12より多い]を有する。工程(2c)において、有機リン抽出剤を含有する油相が、さらに希釈剤を含むことは容易に理解され、これはケロシン又はアルコール溶媒から選択され得る。さらに、アルコール溶媒は、オクタノール又はデカノールであり得る。各成分の割合は適用範囲が広く、かつ決定的なものではない。
【0032】
工程(2c)で得られた、塩酸を含有する水相は、ナノメートル二酸化チタン粉末を調製するべく、富化後に次の鉱石溶出工程において使用され得、これにより生産コストが低減される。
【0033】
工程(2c)で得られた、チタンイオンを含有するラフィネートは、アナターゼ型二酸化チタンを取得するべく加水分解され得る。仮焼後、得られたアナターゼ型の二酸化チタン粉末は、99.8〜99.9%の純度及び10〜40nmの粒径を有し得る。
【0034】
加水分解のための最終溶液を加熱する工程(3)においては、最終溶液の酸性度を調整し、次いで加水分解を行うことが望ましい。
【0035】
具体的には、工程(3)は:
(3a)工程(2d)において得られた最終溶液を加水分解のために加熱することであって、これにおいて、加水分解温度が80〜110℃であり得ること、及び
(3b)工程(3a)において得られた加水分解生成物の酸洗浄及び脱イオン水洗浄を実施して、二酸化チタン粉末を得るようにすること
を含みうる。
【0036】
工程(3a)の加水分解が完了すれば、加水分解生成物、二酸化チタン及び低濃度の塩酸が、濾過により得られ得る。この工程において得られた低濃度の塩酸は、富化後に、ナノメートル二酸化チタン粉末を調製するための次の鉱石溶出工程においてさらに使用され得る。
【0037】
工程(3a)後、濾過により得られた加水分解生成物は、一定量の加水分解母液を含有しており、このことは加水分解生成物中に不純物を残す。加水分解生成物中の不純物を除去するため、それは工程(3b)において洗浄される。本発明においては、洗浄液の量を最大限減らすべく、希塩酸及び脱イオン水が連続的に洗浄に使用される。
【0038】
工程(3)の開始前に、最終溶液は、二酸化チタンの結晶品質に影響を及ぼすこととなる、最終溶液中に存在する他の懸濁物質による結晶化中心の形成を防止するべく、精密濾過されるべきである。
【0039】
製品品質の要求に合致するため、加水分解条件は適宜にコントロールされるべきである。例えば、最終溶液は、時には濃縮される必要がある。
【0040】
加水分解の方法は、蒸発による加水分解、温度をコントロールした加熱による加水分解、その他から選択され得る。
【0041】
加水分解条件は、加水分解生成物の品質に著しく影響を及ぼし、これにおいて、加水分解生成物の品質に影響を及ぼす加水分解条件は、主として酸性度、最終溶液中のチタンイオンの濃度、加水分解温度、昇温速度、加水分解の温度保持時間、種結晶の量及び質を含む。本発明では、上記の加水分解条件は、製品品質の様々な要求に従って選択的にコントロールされ得る。
【0042】
本方法では、工程(3)は、自己発生性種晶を用いた強制加熱による加水分解法において行われ、最終的に得られるナノメートル二酸化チタン粉末の品質は、他の条件を調整することによりコントロールされる。一般に加水分解は、最終溶液の臨界加水分解温度が加水分解生成物の品質にとり非常に重要であることから、還流下に行われる。
【0043】
乾燥ナノメートル二酸化チタン粉末を得る目的で、工程(4)は、好ましくは:
(4a)工程(3)で得られた二酸化チタン粉末を、200〜300℃の乾燥温度下で乾燥すること;及び
(4b)工程(4a)で得られた生成物を、700〜800℃の仮焼温度下で仮焼すること
を含み得る。
【0044】
上記の加水分解生成物は、既にルチル型ナノメートル二酸化チタン又はアナターゼ型ナノメートル二酸化チタンであり、これらはなお乾燥及び仮焼の工程を受ける必要がある。
【0045】
200〜300℃下で乾燥することにより、加水分解された二酸化チタン粉末の分子間水が除去されて、水のない二酸化チタンを得ることが可能である。乾燥二酸化チタン粉末の粒径は、仮焼により増加することとなるが、かかる増加は一定の温度範囲においては顕著ではない。仮焼温度が高すぎれば、粒子は焼結されるであろう。したがって、仮焼温度は厳密にコントロールされねばならない。好ましくは、工程(4b)において、仮焼温度は800〜900℃であり、これは、ナノメートル二酸化チタン粒子の過剰な成長又は焼結を防止するばかりでなく、ナノメートル二酸化チタン粉末中の塩素濃度を低下させるものでもある。
【0046】
当然、工程(4)はまた、工程(3)で得られた生成物を800〜900℃の仮焼温度下で直接仮焼することも含み得る。
【0047】
良好な分散性をもつナノメートル二酸化チタン粉末を得るためには、好ましくは、方法はまた:(5)工程(4)で得られた生成物を粉砕して、分散されたナノメートル二酸化チタン粉末を得ること、も含み得る。
【0048】
工程(4)で得られた生成物を破砕することは容易であり、良好な分散性をもつ二酸化チタン粉末が得られる。
【0049】
本発明は、以下の利点を有する:
1.原料が容易に入手でき、低品質のイルメナイトであってもよく、それは製鋼に使用されるものであって、チタンの存在が高炉の壁付着を引き起こすものであることから適切には機能しないが、本発明においては使用可能であり、かつその価格は通常のイルメナイトの価格の半分にすぎないこと;
2.製造中に低い反応温度(100℃以下)が適用されることから、エネルギー消費が小さいこと;
3.ルチル型二酸化チタン及びアナターゼ型二酸化チタンの双方が製造可能であり、かつルチル型製品は、直接加水分解により仮焼なしに取得可能であること;
4.製品が99.5〜99.9%の高純度であること;
5.粒径が小さく、粒径の分布が狭く、かつ分散性が良好であること;
6.反応条件が穏やかであり、かつプロセスがコントロールされ易いこと;
7.装置が単純であり、かつ投資コストが低いこと;
8.鉱石溶出のフィルター残渣が建築材料に使用され、塩酸は分離された塩化第二鉄の加水分解により回収され、得られた酸化鉄はグループ会社で製鋼の原料として使用され、他の材料はリサイクル可能であり、かつ何ら排出物がないこと;
9.本発明の一つの明白な利点が、塩化水素の使用であって、このことが、鉱石溶解における溶出率を98%まで上昇させると同時に、回収された低濃度の塩酸を富化して、そのフル活用を実現させること;及び
10.本発明の別の明白な特徴は、二酸化チタンにより良好な純度を持たせる溶媒抽出を適用することである。本発明は、試験生産を完了しており、実現可能と証明され、したがって明らかな利点をもつ。
【0050】
本発明のさらなる理解を提供しかつ本明細書の一部を構成する添付の図面は、以下の具体的な実施形態と一緒に本発明を例示することを意図したものであり、本発明を制限することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の実施例1において提供された方法により調製された、ルチル型ナノメートル二酸化チタン粉末のXRDパターンを示す図である。
図2】本発明の実施例1において提供された方法により調製された、ルチル型ナノメートル二酸化チタン粉末のスキャニンググラフを示す図である。
図3】本発明の実施例2において提供された方法により調製された、アナターゼ型ナノメートル二酸化チタン粉末のXRDパターンを示す図である。
図4】本発明の実施例2において提供された方法により調製された、アナターゼ型ナノメートル二酸化チタン粉末のスキャニンググラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の具体的な実施形態は、添付の図面を参照して以下に詳細に記載されるであろう。本明細書に記載された具体的な実施形態が、本発明の説明又は記載のために過ぎず、本発明を制限することを意図したものではないことが理解されるべきである。
【0053】
実施例1
(1)粒径200メッシュのイルメナイト粉末200kgを、1000Lのガラス内張反応器中に入れ、これに31%塩酸800kgを添加し、次いで反応器を閉じた。反応器を、蒸気ジャケットを用いて100℃に加熱し、溶出のため4時間にわたり攪拌し、次にジャケット冷却水により30℃に冷却した。密閉型の漏れないプレート及びフレームフィルタによる濾過の後、澄んで透明な粗鉱溶液が得られた。検出及びマテリアルバランス計算により、チタンイオンの濃度は、65.33g/Lであり、鉄イオンの総濃度は55.88g/Lであり、これにおいて、第一鉄イオンの濃度は41.39g/Lであり、チタン及び鉄の溶出率は、それぞれ94.21%及び95.23%であった。
(2)粗鉱溶液中の鉄元素を除去して、チタンイオンを含有する最終溶液を得、具体的には以下を含む:
(2a)上記の粗鉱溶液を結晶化のため0℃に冷却し、次いで塩化第一鉄四水和物を濾過して第1溶液を得たこと;
(2b)第1溶液を、計算量の塩素ガスを用いて酸化し、かつ攪拌下に60℃に加熱して、二価鉄を完全に酸化しかつ残留塩素を除去するようにし、次にそれを還元して残留塩素を除去し、室温に冷却し、それにより第2の溶液を得たことであり、これにおいて鉄イオンは第二鉄イオンであった;
(2c)第2溶液を3段階の連続抽出に供し、アミン抽出剤を含有する有機油相を用いて脱離して、第二鉄イオンを含有する脱離液と、及びチタンイオンを含有するラフィネートとを得たこと;及び
(2d)アニオン性高分子凝集剤を、攪拌下にラフィネートに添加し、そしてラフィネートをろ過して最終溶液を得たことであり、これにおいて、チタンイオンの濃度は62.05g/Lであり、第二鉄イオンの濃度は0.40g/Lであり、かつ酸濃度は6.66mol/Lであった。
(3)最終溶液を加水分解のために加熱して、二酸化チタンを含有する加水分解生成物を得るようにし、具体的には以下を含む:
(3a)還流中の加水分解を、加水分解温度85℃の強制加熱下で3時間の加水分解時間にわたり行い、次に温度を下げ、そして加水分解率はサンプリングにより97%と測定されたこと;及び
(3b)加水分解生成物をろ過し、そして希塩酸で洗浄し、次いで希塩酸で洗浄された加水分解生成物を再度脱イオン水で洗浄したこと。
(4)工程(3b)で洗浄ずみの加水分解生成物を、900℃で2時間仮焼した。
(5)工程(4)の仮焼生成物を粉砕した。
【0054】
これにおいて用いたアミン抽出剤を含有する有機油相の成分は:第三級アミン/オクタノール/ケロシン=45wt%:5wt%:50wt%であった。
【0055】
実施例2
ナノメートル二酸化チタン粉末を、工程(2c)が以下を含むことを除いて、実施例1と同じ工程に従って調製した:
(2c)第2溶液に、アミン抽出剤を含有する有機油を用いた3段階の連続抽出を行って、第二鉄イオンを含有する脱離液と、及びチタンイオンを含有するラフィネートとを得たこと;及び
(2c)第2の溶媒抽出:工程(2c)で得られたチタンイオンを含有するラフィネートに、有機リン抽出剤を含有する油相を用いた第2の抽出を行って、油相中にチタンイオンを含有するラフィネートと、水相中に塩酸を含有する脱離液とを生じるようにしたことであり、これにおいて抽出プロセスが3段階の連続抽出であること;及び
(2c)抽出された油相を洗浄して、さらに不純物を除去し、そして次に5段階の離脱に供し、続いて精密濾過して不純物を除去して、チタンイオンを含有する最終溶液を得るようにしたこと。検出時に、最終溶液中のチタンイオンの濃度は33.02g/Lであり、第二鉄イオンは検出されず、酸濃度は6.62mol/Lであった。
【0056】
工程(3)においては、加水分解温度は90℃であり、加水分解時間は3時間であった。次に温度を低下させ、加水分解率はサンプリングにより98%と測定された。
【0057】
工程(2c)においては、アミン抽出剤を含有する有機油相の成分は:第三級アミン/オクタノール/ケロシン=45wt%:5wt%:50wt%であった。工程(2c)では、有機リン抽出剤を含有する油相の成分は:有機リン抽出剤/オクタノール/ケロシン=20wt%:15wt%:65wt%であった。
【0058】
上記実施例において結晶化された塩化第一鉄結晶を、第1の抽出の脱離溶液(第二鉄得イオンを含有する溶液)と混合して、20.3g/Lの第二鉄、42.15g/Lの全鉄分、及び0.5g/Lのチタンを含有する溶液を生じ、次いでこの溶液を、蒸留水を用いて加水分解して固体酸化第二鉄を生じ、ガス相を冷却し及び収集して、16%の塩酸を得た。
【0059】
(テスト実施例1)
実施例1では、XRDにより測定された二酸化チタンの純度は99.52%であり、組成分析は表1、実施例1に示される。実施例1のナノメートル二酸化チタン粉末は、図1及び2に見られる通りルチル型であり、かつ走査型電子顕微鏡写真で観察される約10nmの粒径を有する。
【0060】
(テスト実施例2)
実施例2では、XRDにより測定された二酸化チタンの純度は99.91%であり、組成分析は表1、実施例2に示される。実施例2のナノメートル二酸化チタン粉末は、図3及び4に見られる通りアナターゼ型であり、かつ走査型電子顕微鏡写真で観察される約10nmの粒径を有する。
【0061】
【表1】
【0062】
上記に記載された実施形態が本発明の原理を例示するための代表的な実施形態にすぎず、本発明の範囲を制限するものではないことが理解されるべきである。当業者により本発明の範囲及び精神から離れることなく本発明に加えられる種々の変更及び修飾は、全て本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4