【実施例】
【0017】
本実施例の農作物拾い上げ機を
図1,2に示す。図中、Aは畑、Pは農作物、1は走行機体、11は前輪、12は駆動輪、13はエンジン、14は駆動チェーン、15は操作部、2は拾い上げコンベヤ,3は拾い上げ補助装置、4は拾い上げコンベヤ2で拾い上げられた農作物Pを持ち上げる持ち上げコンベヤ、5は持ち上げコンベヤ4で持ち上げられた農作物Pの選別や不要物の排除を作業できるように循環させる無端コンベヤ、6は農作物Pの回収容器、61は回収容器6の置き台である。
【0018】
拾い上げコンベヤ2は、前方のリターン軸21の一部が土中に埋入できる高さに設置され、後側は上向きに傾斜している。搬送速度は8cm/秒である。
【0019】
拾い上げ補助装置3の弾性体31は厚さ1mm、ゴム硬度45のネオプレンゴム製で、
図3に示すように、中間で丸く折り返して先端部に膨らみを有する形状にしている。回転体32は、複数の取付片33を放射状に備えて所定の外径を有している。その各取付片33に弾性体31の両端部を重ねた状態で4枚取り付け、これを拾い上げコンベヤ2の前端よりやや前寄りの上方位置に横向きに軸支している。
【0020】
拾い上げ補助装置3の高さ位置は、
図4に示すように、農作物Pの大きさに応じて上下に調整できるようになっている。拾い上げコンベヤ2と拾い上げ補助装置3と持ち上げコンベヤ4は、駆動チェーン14でエンジン13の駆動力が伝達されるようになっている。
【0021】
弾性体31の折り返し端部から回転体32の中心までの長さLを、次式のいずれも満たす長さにする(
図3〜6参照)。*は乗算を示す。
式A・・・2/√3*(D−Φ)≦L≦2*(D−Φ)
式B・・・r+(D−Φ)+Φ/4<L
式C・・・L<r+2πr/4+D−Φ+Φ/4
Dは回転体32の中心から拾い上げコンベヤ2の前方のリターン軸21の中心までの鉛直方向の高さ、Φは農作物Pの設定高さ、rは回転体32の半径である。
【0022】
式Aは、
図5に示すように、弾性体31が前方水平の位置から下回りして30〜60°の角度に達した際、その先端部が畑Aの表土上の農作物Pに当たるための必要な長さを定義している。2(D−Φ)は30°の角度の際の長さ、2/√3(D−Φ)は60°の角度の際の長さである。45°の角度の場合は、2/√2(D−Φ)となる。式Bは、
図6(イ)に示すように、弾性体31が前方水平の位置から下回りして180°の角度に達した際、畑Aの表土上の農作物Pに被さって摩擦で農作物Pを表土から拾い上げコンベヤ2へ移行させるための長さの下限を定義している。式Cは、
図6(ロ)に示すように、弾性体31が前方水平の位置から下回りして270°の角度に達した際、弾性体31が回転体32に巻き取られ、拾い上げコンベヤ2による搬送を妨げないように農作物Pから離れるための長さの上限を定義している。2πr/4は、回転体32の外周の1/4分の長さである。式B,Cにおいて、Φ/4は設定高さ以下の農作物Pにも当たるようにするためのマージンである。
【0023】
ここで、Dを17cm、Φを6cm(馬鈴薯の最大高さを想定)、rを3cmとすると、式AではLが12.7〜22cm、式BではLが15.5cm以上、式CではLが20.2cm以下となり、式A〜Cのいずれも満たすLの範囲は15.5〜20.2cmとなる。本実施例ではLを17.6cmとした。この場合、前方水平の位置から下回りして畑Aの表土上の農作物Pに当たり始める角度は約38°40’となる。
【0024】
また、回転体32の角速度ωを、次式を満たす速度にする。
ω(D−Φ)>3V
同じようにDを17cm、Φを6cmとし、走行機体1の走行速度Vを5cm/秒とすると、ωは1.36rad/秒以上となる。本実施例ではωを1.57rad/秒とした。この場合、回転体32の中心から
図4に示すΔ点までの距離を11cmとした場合、その位置の周速度は17.27cm/秒となる。この周速度の場合、角速度ωを求める式はω(D−Φ)=3.45Vである。
【0025】
農作物Pが玉ねぎの場合は、その設定高さを10〜12cmとするのが一般的である。この場合、馬鈴薯より4〜6cm高いから、拾い上げ補助装置3の高さ位置を4〜6cm上方に調整するだけで良く、弾性体31は同じものが使用できて汎用性に優れる。
【0026】
本実施例では、置き台61に回収容器6を置いてエンジン13を始動し、拾い上げコンベヤ2と拾い上げ補助装置3と持ち上げコンベヤ4と無端コンベヤ5を作動させ、後方の作業者(図示は省略)が操作部15を操作して畑Aを跨ぐように農作物拾い上げ機を走行させる。
【0027】
図1,2に示すように、拾い上げコンベヤ2の前端部の一部が土中に埋入し、畑Aの表土上の農作物Pが走行機体1の前進によって拾い上げコンベヤ2に載せられる。このとき、弾性体31が前方水平の位置から下回りして約38°40’の角度で畑Aの表土上の農作物Pに当たり始め、
図7(a)に示すように、90°の角度に達した際、弾性体31が農作物Pに被さる。さらに、
図7(b)に示すように、180°の角度に達した際、農作物Pに被さっている弾性体31が摩擦で推進力を与え、それによって農作物Pは乗り移りの抵抗(拾い上げコンベヤ2の傾斜や盛り上がった畑Aの表土等)に対抗して畑Aの表土上から拾い上げコンベヤ2へ円滑に移行する。そして、
図7(c)に示すように、270°の角度に達した際、弾性体31が回転体32に巻き取られ、拾い上げコンベヤ2による搬送を妨げないように農作物Pから離れる。
【0028】
したがって、従来技術の板状の弾性体で強制的に掻き込む方法と比較して農作物Pの表皮が傷つきにくい。特に、弾性体31は折り返しによって質量が増加するが、農作物Pに接触するのは片面のみであるから、変形しやすい柔軟性を保持しながら、推進力に必要な遠心力や慣性力、押圧力を発揮する。また、弾性体31は折り返しによって先端部が湾曲して膨らみを有する形状となっているから、どの部分に農作物Pが接触しても傷つきにくい。さらに、拾い上げ補助装置3は弾性体31が1軸の回転体32に取り付けられた簡易な構造であるから、従来技術の2軸と比較して部品数が減少して低コストで製作できる。
【0029】
拾い上げコンベヤ2に載せられた農作物Pは持ち上げコンベヤ4に移載され、持ち上げコンベヤ4で持ち上げられて無端コンベヤ5に投入される。無端コンベヤ5では、側方の別の作業者(図示は省略)によって農作物Pに付着又は同時に拾い上げられた土塊・石等の不要物が排除されるとともに、形状・大きさ・状態等が不適格な農作物Pが選別され、通過した農作物Pが回収容器6に収容される。
【0030】
図8に示すのは、実施例の拾い上げ補助装置3の他の例である。この例では、回転体32の外周にアーム34を放射状に取り付け、そのアーム34の端部に弾性体31を取り付けている。アーム34の長さは8cm、弾性体31の長さは6cm、回転体32の角速度ωは1.57rad/秒としている。このような構造の拾い上げ補助装置3も、実施例と同じように、農作物Pを表皮の傷つきや皮剥けを防止しながら、乗り移りに必要な推進力を与えることができるようになっている。その他、符号、構成は実施例と同じである。
【0031】
図9に示すのは、実施例の拾い上げ補助装置3の他の例であって、弾性体31の中間から取付片33までの間の折返し片同士を固着している。この例では、膨らみを有しない部分の剛性が若干高められており、農作物Pを表皮の傷つきや皮剥けを防止しながら、実施例と比較してより強い推進力を与えることができるようになっている。その他、符号、構成、作用効果は実施例と同じである。