特許第6268380号(P6268380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268380
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】内部孔構造を有するパーツの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 5/10 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
   B22F5/10
【請求項の数】7
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-161288(P2016-161288)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-203211(P2017-203211A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】201610326005.2
(32)【優先日】2016年5月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516250731
【氏名又は名称】寧海縣大雅精密機械有限公司
【氏名又は名称原語表記】NINGHAI DAYA PRECISION MACHINERY CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】嚴 偉法
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−158703(JP,A)
【文献】 特開2005−264277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部孔の形成された構造を有するパーツの製造方法であって、
所望の孔と形状同一の孔形成用構造材を成型するステップ(1.1)と、
前記孔形成用構造材の表面に保護膜を塗布するステップ(1.2)と、
前記孔形成用構造材を、成型に使用されるパーツ形成用構造のキャビティ内で位置決めし、前記孔形成用構造材よりも融点の高いパーツ成型用の粉末充填成型するステップ(1.3)と、
前記孔形成用構造材を溶融して除去するステップ(1.4)と、
焼結成することにより内部孔構造を有するパーツを完成するステップ(1.5)と、
を含
前記ステップ(1.1)において、前記孔の形状を成型するための前記孔形成用構造材は、融点が0〜500℃の金属材料、パラフィンまたは樹脂であり、
前記孔形成用構造材を成型する方法は、溶接、鋳込み、射出、3D成型のうちの一つまたはこれらの任意の組み合わせであり、
前記ステップ(1.2)において、前記孔形成用構造材の表面に塗布する前記保護膜の材料は、PVP、PVA、滑石粉のうちの一つまたはこれらの任意の組み合わせであり、
前記ステップ(1.3)において、前記孔形成用構造材の位置決め方法では、支持構造としてパーツの成型に使われる材料と同じ材料が利用される、
内部孔構造を有するパーツの製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(1.3)における、前記パーツ成型用の粉末の充填方法は、機械プレス成型、射出成型、スラリー充填成型、冷間等方圧成型または熱間等方圧成型である、
請求項1に記載の内部孔構造を有するパーツの製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(1.3)における、前記パーツ成型用の粉末は、融点が600℃以上の金属製粉末またはセラミックス成型原料である、
請求項1に記載の内部孔構造を有するパーツの製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(1.4)において、前記孔形成用構造材を溶融して除去する方法は、常圧で加熱溶融して除去する方法または真空で加熱溶融して除去する方法である、
請求項1に記載の内部孔構造を有するパーツの製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(1.4)において、前記孔形成用構造材を溶融して除去する方法は、脱脂法による除去方法である、
請求項1に記載の内部孔構造を有するパーツの製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(1.5)において、焼結成方法は、真空における焼結成方法である、
請求項1に記載の内部孔構造を有するパーツの製造方法。
【請求項7】
前記焼結成方法は、還元性雰囲気を有する環境における真空焼結である、
請求項に記載の内部孔構造を有するパーツの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工業技術分野に関し、特に複雑な孔構造を有する製品の成型に使用可能な内部孔構造を有するパーツの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械の通水、通油、通気分野においては、孔構造を有する金属製パーツが幅広く利用されている。たとえば、浮上式ベアリングシステムでは、送気、送油および冷却用孔が利用され、金型では入れ子、ゲートブッシュ、スライドの冷却用水孔が利用され、各種機械では定方向でピンポイントに内蔵された孔構造が利用されている。通常、内部孔を設計する際には、一般的には、組み立て後に密封リングで密封固定する方法を採用されるか、または組み立て後に溶接固定する等の方法が採用される。しかしながら、これらの設計では、生産プロセスが複雑であり、通常は2D(二次元)構造の孔形態しか設計できず、使用上の信頼性および安全性が低く、メンテナンスコストが高い。このように、複雑な内部孔を有する金属製パーツの成型は、幅広い応用と市場将来性を有している。このため、複雑な内部孔を有する金属製パーツの成型方法は、業界で必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、使用上の信頼性および安全性が高く、メンテナンスコストを抑制可能な内部孔構造を有するパーツの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための本発明は、内部孔構造を有するパーツの製造方法であって、
所望の孔と形状同一の孔構造材を成型するステップ(1.1)と、
前記孔構造材の表面に保護膜を塗布するステップ(1.2)と、
前記孔構造材を、成型に使用されるパーツ構造のキャビティ内で位置決めし、前記孔構造材よりも融点の高いパーツ成型用の粉末により充填成型するステップ(1.3)と、
前記孔構造材を溶融して除去するステップ(1.4)と、
焼結成型することにより内部孔構造を有するパーツを完成するステップ(1.5)と、を含む。
【0005】
好ましくは、前記ステップ(1.1)において、前記孔の形状を成型するための孔構造材は、融点が0〜500℃の金属材料、パラフィンまたは樹脂である。
【0006】
好ましくは、前記ステップ(1.1)において、前記孔構造材を成型する方法は、溶接、鋳込み、射出、3D(三次元)成型のうちの一つまたはこれらの任意の組み合わせである。
【0007】
好ましくは、前記ステップ(1.2)において、前記孔構造材の表面に塗布する保護膜の材料は、PVP、PVA、滑石粉のうちの一つまたはこれらの任意の組み合わせである。
【0008】
好ましくは、前記ステップ(1.3)において、前記孔構造材の位置決め方法では、支持構造としてパーツの成型に使われる材料と同じ材料が利用される。
【0009】
また、好ましくは、前記ステップ(1.3)において、前記パーツ成型用の粉末の充填方法は、機械プレス成型、射出成型、スラリー充填成型、冷間等方圧成型または熱間等方圧成型である。
【0010】
好ましくは、前記ステップ(1.3)において、前記パーツ成型用の粉末は、融点が600℃以上の金属製粉末またはセラミックス成型原料である。
【0011】
好ましくは、前記ステップ(1.4)において、孔構造材を溶融して除去する方法は、常圧で加熱溶融して除去する方法または真空で加熱溶融して除去する方法である。
【0012】
好ましくは、前記ステップ(1.4)において、孔構造材を溶融して除去する方法は、脱脂法による除去方法である。
【0013】
好ましくは、前記ステップ(1.5)において、焼結成型する方法は、真空における焼結成型方法である。
【0014】
好ましくは、焼結成型方法は、還元性雰囲気を有する環境における真空焼結である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る内部孔構造を有するパーツの製造方法によれば、内部孔構造を有するパーツ(金属)を一体的に成型するため、3D構造のような複雑な形状を成型できる。また、一体的に成型するため、メンテナンスコストを削減でき、信頼性、安全性およびパーツの機械強度等が非常に高く、特に溶融しにくい金属製材料を基体とするパーツについては、効果が著しい。さらに、複雑な内部孔構造を有するセラミックス等の非金属材料の成型にも適合する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、内部孔構造を有するパーツの製造方法であって、所望の孔と形状同一の孔構造材を成型するステップ(1.1)と、孔構造材の表面に保護膜を塗布するステップ(1.2)と、孔構造材を成型に使用されるパーツ構造のキャビティ内で位置決めし、孔構造材よりも融点の高いパーツ成型用の粉末により充填成型するステップ(1.3)と、孔構造材を溶融して除去するステップ(1.4)と、焼結成型することにより内部孔構造を有するパーツを完成するステップ(1.5)と、を含む。
【0017】
ステップ(1.1)において、孔構造の形状を成型するための孔構造材は、融点が0〜500℃の金属材料、パラフィンまたは樹脂である。本実施例では金属材料を採用する。
【0018】
また、ステップ(1.1)において、孔構造材を成型する方法は、溶接、鋳込み、射出、3D(三次元)成型のうちの一つまたはこれらの任意の組み合わせである。
【0019】
ステップ(1.2)において、孔構造材の表面に塗布する保護膜の材料は、PVP(Polyvinylpyrrolidone、ポリビニルピロリドン)、PVA(polyvinyl alcohol、ポリビニルアルコール)、滑石粉のうちの一つまたはこれらの任意の組み合わせである。保護膜は、孔構造材をより抜け出しやすく、孔構造の滑らかさを保持し、二種類の材料が高温焼結時に不良反応することを防止し、孔構造材の表面硬度を増強するためのものである。
【0020】
ステップ(1.3)において、孔構造材の位置決め方法では、支持構造としてパーツの成型に使われる材料と同じの材料が利用される。
【0021】
また、ステップ(1.3)において、パーツ成型用の粉末の充填方法は、機械プレス成型(mechanical pressing)、射出成型(injection molding)、スラリー充填成型(slurry filling)、冷間等方圧成型(cold isostatic pressing)または熱間等方圧成型(hot isostatic pressing)である。
【0022】
さらに、ステップ(1.3)において、パーツ成型用の粉末は、融点が600℃以上の金属製粉末またはセラミックス成型原料である。
【0023】
ステップ(1.4)において、孔構造材を溶融して除去する方法は、常圧で加熱溶融して除去する方法または真空で加熱溶融して除去する方法である。
【0024】
また、ステップ(1.4)において、孔構造材を溶融して除去する方法は、脱脂法による除去方法である。
【0025】
ステップ(1.5)において、焼結成型する方法は、真空における焼結成型方法である。
【0026】
また、ステップ(1.5)において、焼結成型方法は、還元性雰囲気を有する環境における真空焼結である。
【0027】
本発明に係る内部孔構造を有するパーツの製造方法では、二種類の融点が異なる材料を使用する。低融点の材料は任意の形状構造を有する成型材であり、高融点の材料は粉末状のものであり、低融点の材料が高融点の材料の粉末に覆われるように位置決めして成型する。その後、低温材料を溶融して除去し、焼結により任意の形状構造を有する孔を完成する。金属パーツを通水、通気、通油の領域で利用する際、本発明は、従来の機械的に組み合わせることによって孔構造を完成する方法や、高いコストがかかる3D印刷技術により孔構造を完成する方法を代替できる。このため、幅広く応用でき、低コストで、プロセスが簡単に制御できるため、ロット生産に適合し、幅広い市場将来性を有する。