(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268387
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】電気機器収納用箱の吊り上げ構造
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
H05K5/03 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-158441(P2013-158441)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-29026(P2015-29026A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一正
【審査官】
岩間 直純
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−224049(JP,A)
【文献】
実開昭54−137132(JP,U)
【文献】
特開2000−037006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体本体の天井板の上部に、該天井板を被覆する天井遮光板を備えた電気機器収納用箱の吊り上げ構造であって、
筐体本体の対向する側面上部に、各々、筐体本体の側面の板厚よりも肉厚に形成された板状の筐体吊り上げ用金具を取り付け、
該筐体吊り上げ用金具は、板状の本体部と、該板状の本体部の端部から上方に突出して形成された吊り孔部を備えるとともに、前記板状の本体部の両端部を、各々、筐体の内周方向に向けて折り曲げた折り曲げ辺を備え、
該板状の本体部を該天井板と天井遮光板との間に形成される空間に配置し、天井遮光板と前記筐体吊り上げ用金具を固定し、該吊り孔部を、天井遮光板に形成したスリットから外部に貫通させて配置し、
天井遮光板に荷重が掛かった際に、前記折り曲げ辺で天井遮光板の下面を支える構造としたことを特徴とする電気機器収納用箱の吊り上げ構造。
【請求項2】
前記筐体吊り上げ用金具の前記板状の本体部は、前記天井遮光板の天面板の端部を折り曲げて形成した側面板に当接するように固定したことを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用箱の吊り上げ構造。
【請求項3】
前記吊り孔部は、筐体本体の前後に渡って形成した前記板状の本体部の両端部から上方に突出して形成し、前記板状の本体の下側面を延長して、前記筐体本体の側面への取り付け部を形成したことを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用箱の吊り上げ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器収納用箱の吊り上げ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重量が大きい電気機器収納用箱の移動手段として、筐体の天井板を除去した上で、吊り下げ用に形成されている孔にボルトを取り付けて、ボルトにワイヤを通して、ワイヤをクレーンに掛けて、クレーンで吊り下げて移動する技術が開示されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、移動の度に天井板を外してボルトを取り付け、移動後には、再度ボルトを取り外して天井板を取り付ける作業が煩雑であるという問題があった。
【0004】
これに対し、屋外設置を想定して筐体本体全体を遮光板で被覆した電気機器収納用箱において、筐体本体の天井の4隅にボルトを取り付けるとともに、筐体本体の天井の上部に配置される遮光板に前記のボルトの頭部を貫通させる孔部を形成した構造が開示されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、特許文献2の構造では、筐体本体の天井の上部と遮光板との間に形成される空間には、4隅にボルトが配置されているのみであり、孔部を形成したことにより、遮光板の強度が弱くなってしまう問題点や、例えば豪雪地帯で使用される場合、筐体本体の天井の上部に配置される遮光板が積雪の重みで変形するのを防止するために、遮光板を支えて遮光板の変形を防止するための補強加工が別途必要になるという問題があった。なお、特許文献3の構造では板材吊り上げ金具を筐体本体の側部に取り付けたものもあるが、遮光板の考慮はされていない構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−66565号公報
【特許文献2】特開平10−224049号公報
【特許文献3】特開2000−332441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は前記の問題を解決し、筐体本体の天井の上部に、更に、天井遮光板を備えた電気機器収納用箱において、筐体吊り上げ用のボルトの取り付けを別途行うことなく電気機器収納用箱の移動が可能で、かつ、天井遮光板への補強加工という手段によらず、天井遮光板が変形することを防止できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の電気機器収納用箱の吊り上げ構造は、筐体本体の天井板の上部に、該天井板を被覆する天井遮光板を備えた電気機器収納用箱の吊り上げ構造であって、筐体本体の対向する側面上部に、各々、筐体本体の側面
の板厚よりも肉厚に形成された板状の筐体吊り上げ用金具を取り付け、該筐体吊り上げ用金具は、板状の本体部と、該板状の本体部の端部から上方に突出して形成された吊り孔部を備え
るとともに、前記板状の本体部の両端部を、各々、筐体の内周方向に向けて折り曲げた折り曲げ辺を備え、該板状の本体部を該天井板と天井遮光板との間に形成される空間に配置し、天井遮光板と前記筐体吊り上げ用金具を固定し、該吊り孔部を、天井遮光板に形成したスリットから外部に貫通させて配置し
、天井遮光板に荷重が掛かった際に、前記折り曲げ辺で天井遮光板の下面を支える構造としたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の電気機器収納用箱の吊り上げ構造において、前記筐体吊り上げ用金具の前記板状の本体部は、前記天井遮光板の天面板の端部を折り曲げて形成した側面板に当接するように固定したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の電気機器収納用箱の吊り上げ構造において、前記吊り孔部を、筐体本体の前後に渡って形成した前記板状の本体部の両端部から上方に突出し、前記板状の本体の下側面を延長して、前記筐体本体の側面への取り付け部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電気機器収納用箱の吊り上げ構造は、筐体本体の天井板の上部に、該天井板を被覆する天井遮光板を備えた電気機器収納用箱の吊り上げ構造において、筐体本体の対向する側面上部に、各々、板状の筐体吊り上げ用金具を取り付け、該筐体吊り上げ用金具は、板状の本体部と、該板状の本体部の端部から上方に突出して形成された吊り孔部を備え、該板状の本体部を該天井板と天井遮光板との間に形成される空間に配置し、天井遮光板のと前記筐体吊り上げ用金具を固定しているため、天井遮光板への補強加工という手段によらず、天井遮光板が変形することを防止できる。また、吊り孔部を、天井遮光板に形成したスリットから外部に貫通させて配置しているため、筐体吊り上げ用のボルトの取り付けを別途行うことなく、また天井遮光板を取り外しすることなく、簡単に、電気機器収納用箱の移動を行うことができる。
【0013】
また本発明に係る電気機器収納用箱の吊り上げ構造は、前記筐体吊り上げ用金具は、前記板状の本体部の両端部を、各々、筐体の内周方向に向けて垂直に折り曲げた折り曲げ辺を備え、天井遮光板に荷重が掛かった際に、該折り曲げ辺で天井遮光板の下面を支える構成とすることにより、更に、天井遮光板の補強効果を増強することができる。
【0014】
請求項2記載の発明のように、前記筐体吊り上げ用金具の前記板状の本体部は、前記天井遮光板の天面板の端部を折り曲げて形成した側面板に当接するように固定したため、更に、天井遮光板の補強効果を増強することができる。
【0015】
請求項3記載の発明のように、前記吊り孔部は、筐体本体の前後に渡って形成した前記板状の本体部の両端部から上方に突出して形成し、前記板状の本体の下側面を延長して、前記筐体本体の側面への取り付け部を形成したことにより、天井遮光板に荷重が掛かった際に、折り曲げ辺と共に取り付け部による天井遮光板の補強の他、筐体本体の補強も兼ねることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
【0018】
本実施形態の電気機器収納用箱の吊り上げ構造は、
図1に示すように、筐体本体1の天井板2の上部に、該天井板2を被覆する天井遮光板3を備えた電気機器収納用箱4の吊り上げ構造に関するものである。なお、筐体本体1は、前後方向に扉部1a、扉部1aの左右側面に側板1bを形成した構成を有するものである。
【0019】
電気機器収納用箱4は、通信機器などを搭載するものであり、
図1に示すように、太陽光の光を遮蔽する遮光板5で、筐体本体1の天井板2および側板1bを被覆している。遮光板5は、筐体本体1との間に、空隙をもって配置され、この空隙に空気が流れて、電気機器収納用箱内部の温度上昇を防ぐ機能も奏している。
【0020】
図1に示すように、天井遮光板3は、天面板6、天面板6の4方端部を折り曲げて形成した側面板7からなり、天面板6には、後述する筐体吊り上げ用金具10の吊り孔部8を貫通突出するためのスリット9が4箇所形成されている。
【0021】
図1に示すように、筐体吊り上げ用金具10は、板状の本体部11と、該板状の本体部11の両端部から上方に突出して形成された吊り孔部8を前後2カ所に備えている。このような筐体吊り上げ用金具10を、筐体本体1の対向する左右側面上部に、筐体本体1の前後方向に渡るように配置している。例えば、筐体本体1の天井板2の4隅に各々単独の吊り上げ用のボルトを取り付けた場合、ボルトの面の位置合わせに手間が掛かるのに対し、前記構成の本発明では、4か所の吊り孔部8の位置も孔の向きも固定されているため、位置合わせが不要となる。また、筐体吊り上げ用金具10は
図3に示すように、筐体本体1の側板1bよりも肉厚に形成されており、吊り上げ時の荷重を支える他、天井遮光板3と共に筐体本体1の側面の補強も兼ねることが可能である。
【0022】
図1及び
図3に示すように、筐体吊り上げ用金具10は天井遮光板3を固定する固定孔14が形成されている。筐体吊り上げ用金具10は天井遮光板3の側面板7に固定するため天井遮光板3の補強構造となる。さらに、天井遮光板3の筐体本体1へ固定孔形成が不要となり、筐体本体1の必要以上の加工を無くして防水性を向上させることができる。なお、筐体吊り上げ用金具10と天井遮光板3はねじ固定するものであるが、溶接にて固定するものであっても良いものである。また、本実施形態の筐体吊り上げ用金具10は、板状の本体部11と側面板7と当接するように固定しているため、天井遮光板3により強固に補強することが可能となる。
【0023】
図2に示すように、吊り孔部8を、天井遮光板3に形成したスリット9から外部に貫通させて配置しているため、筐体本体1の吊り上げを行う際に天井遮光板3を外すことなく、電気機器収納用箱の移動を行うことが可能となるので作業を簡略化することが可能である。
【0024】
図3に示すように、筐体吊り上げ用金具10は、板状の本体部11の両端部を、各々、筐体の内周方向に向けて垂直に折り曲げた折り曲げ辺12を備えている。吊り孔部8にワイヤ等を通して電気機器収納用箱の吊り上げを行う際には、吊り孔部8大きな負荷がかかるため、この負荷に耐え得る補強構造とするため、折り曲げ辺12は、吊り孔部8が形成された辺の上端部に渡るように形成しておくことが望ましい。
【0025】
図4に示すように、板状の本体部11および折り曲げ辺12を、天井板2と天井遮光板3の天面板6との間に形成される空間に配置して、天面板6の下面を支えているため、天井遮光板3への補強加工という手段によらず、積雪等の荷重によって天井遮光板3が変形することを防止できる。なお、本実施形態においては、折り曲げ辺12を板状の本体部11の両端部に形成したが、筐体本体1の奥行き方向が深い場合などには、板状の本体部11の中央付近などにも折り曲げ辺12を形成して天井遮光板3の下面の補強を行うものであっても良い。通常、折り曲げ辺12の下端部は筐体本体1の天面板6に当接せず、地震等の荷重が掛かったときに、天面板6と当接し筐体本体1の変形を防止することが可能である。勿論、荷重が掛かる前に当接しても良い。同様に、天井遮光板3の下面と折り曲げ辺12の上端部も浮いた状態となっており、積雪等の荷重が掛かったときに当接するように形成しており、少なくとも天井遮光板3に荷重が掛かった場合に折り曲げ辺12で支える構造としておくものである。また、本実施形態のように、対向する側面に、各々、筐体吊り上げ用金具10を形成することが望ましいが、筐体本体1の側面の前後端部に1つの吊り孔部を形成した板材の筐体吊り上げ用金具を形成するものであっても良い、このような実施形態においても、吊り孔部を天井遮光板3のスリット9より突出するように形成し、また折り曲げ辺12を形成しておくことが望ましい。
【0026】
その他、筐体吊り上げ用金具10には、
図3に示すように、板状の本体部11の下側面を延長して、筐体本体1への取り付け部13が形成され、取り付け部13は折り曲げ辺12よりも下方位置にて固定されている。また、
図4に示すように、筐体本体1の対向する側面上部に取り付けられている。当該構造とすることにより、折り曲げ辺12と取り付け部13を筐体本体1に当接させて、筐体吊り上げ用金具10にかかる回転方向への力を規制することができ、更に折り曲げ辺12と取り付け部13の2箇所で天井遮光板3にかかる荷重に対しての強度を高めるとともに、筐体本体1の側板1bの補強となるため、全体の強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 筐体本体
1a 扉部
1b 側板
2 天井板
3 天井遮光板
4 電気機器収納用箱
5 遮光板
6 天面板
7 側面板
8 吊り孔部
9 スリット
10 筐体吊り上げ用金具
11 板状の本体部
12 折り曲げ辺
13 取り付け部
14 固定孔