(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(C)金属含有洗浄剤、無灰洗浄剤、抗摩耗剤、無灰分散剤、油溶性モリブデン化合物、抗酸化剤およびケイ素消泡剤を含む群から選択される1つ以上の添加物をさらに含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の添加物パッケージ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
適切な場合には、本発明の各々および全ての態様に関する本発明の特色を、下記のようにより詳細に記載する。
希釈油(A)
本発明の第1の態様の希釈油、および本発明の第2の態様のベースストック(「ベース油」と称されることもある)は、天然(野菜、動物または鉱物)および合成の潤滑油、ならびにこれらの混合物から選択し得る。
ベースストック群は、米国石油協会(API)の出版物"Engine Oil Licensing and Certification System", Industry Services Department, Fourteenth Edition, December 1996, Addendum 1, December 1998において定義されている。
【0009】
本発明におけるベースストックおよびベース油についての定義は、米国石油協会(API)の出版物"Engine Oil Licensing and Certification System", Industry Services Department, Fourteenth Edition, December 1996, Addendum 1, December 1998において見出されるものと同じである。前記出版物は、ベースストックを下記のように分類している。
a)グループIのベースストックは、90パーセント未満の飽和炭化水素および/または0.03パーセント超の硫黄を含有し、表E−1に特定した試験法を使用して、80以上および120未満の粘度指数を有する。
b)グループIIのベースストックは、90パーセント以上の飽和炭化水素および0.03パーセント以下の硫黄を含有し、表E−1に特定した試験法を使用して、80以上および120未満の粘度指数を有する。
c)グループIIIのベースストックは、90パーセント以上の飽和炭化水素および0.03パーセント以下の硫黄を含有し、表E−1に特定した試験法を使用して、120以上の粘度指数を有する。
d)グループIVのベースストックは、ポリαオレフィン(PAO)である。
e)グループVのベースストックは、グループI、II、III、またはIVに含まれない全ての他のベースストックを含む。
【0010】
【表1】
さらに、添加物パッケージ中に含まれる添加物は、キャリア油を含んでもよく、このキャリア油は、各々、添加物パッケージまたは潤滑剤の組成の算定において、本発明の第1の態様の希釈油、または本発明の第2の態様のベース油の部分とは見なされない。
本発明の添加物パッケージを含有する潤滑油組成物のための希釈油またはベースストックとして使用し得る潤滑粘度の油の例を、下記のように詳述する。
【0011】
天然油には、動物および植物性油(例えば、ヒマシ油およびラード油)、液体石油、ならびにパラフィン系、ナフテン系および混合パラフィン系−ナフテン系タイプの水素化精製され溶媒処理された鉱物潤滑油が含まれる。石炭またはシェールに由来する潤滑粘度の油もまた、有用なベース油である。
合成潤滑油には、炭化水素油、例えば、重合および共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェノール(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェノール);ならびにアルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化硫化ジフェニル、ならびにその誘導体、類似体および相同体が含まれる。
合成潤滑油の別の適切なクラスは、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸(sebasic acid)、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルを含む。これらのエステルの具体例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、ならびに1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸とを反応させることによって形成される複合エステルが含まれる。
合成油として有用なエステルにはまた、C
5−C
12モノカルボン酸およびポリオール、およびポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールおよびトリペンタエリトリトールから作製されるものが含まれる。
【0012】
非精製油、精製油および再精製油を、本発明の組成物において使用することができる。非精製油は、それ以上精製処理することなく天然または合成源から直接得たものである。例えば、レトルト採収操作から直接得るシェール油、蒸留から直接得る石油、またはエステル化工程から直接得て、さらに処理せずに使用するエステル油は、非精製油である。精製油は、1つまたは複数の特性を改善するために1つまたは複数の精製ステップにおいてさらに処理されてきたことを除いて、非精製油と同様である。蒸留、溶媒抽出、酸または塩基抽出、濾過および浸出などの多くのこのような精製技術は、当業者には公知である。再精製油は、既に使用されてきた精製油に適用される精製油を得るために使用されるものと同様の工程によって得られる。このような再精製油はまた、再生油または再加工油として公知であり、使用済み添加物および油分解生成物を除去するための技術によってさらに加工されることが多い。
【0013】
ベース油の他の例は、ガス液化(「GTL」)ベース油であり、すなわち、ベース油は、フィッシャートロプシュ触媒を使用してH
2およびCOを含有する合成ガスから作製したフィッシャートロプシュ合成された炭化水素に由来する油でよい。これらの炭化水素は典型的には、ベース油として有用であるためにさらなる加工を必要とする。例えば、これらは、当技術分野において公知の方法によって、水素化異性化;水素化分解および水素化異性化;脱ろう;または水素化異性化および脱ろうし得る。
好ましくは、潤滑粘度の油の揮発性は、Noack試験(ASTM D5880)によって測定して、20%以下、好ましくは16%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下である。
【0014】
本発明の第2の態様の潤滑油組成物は、85質量%以下のグループIVのベースストックを含むベースストックを有し、ベースストックは、70質量%以下のグループIVのベースストック、またはそれどころか50質量%以下のグループIVのベースストックを含み得る。本発明の第2の態様による潤滑油組成物のベースストックは、0質量%のグループIVのベースストックを含み得る。代わりに、本発明の第2の態様のベースストックは、少なくとも5質量%、少なくとも10質量%または少なくとも20質量%のグループIVのベースストックを含み得る。本発明の第2の態様による潤滑油組成物のベースストックは、0〜85質量%、または5〜85質量%、代わりに10〜85質量%のグループIVのベースストックを含む。
本明細書において使用される「油溶性」もしくは「分散性」という用語、または同族の用語は、化合物または添加物が、全ての比率で油に可溶性、溶解可能、混和性、または懸濁させることができることを必ずしも示さない。しかし、化合物または添加物が、油が用いられる環境においてこれらの意図する作用を発揮するのに十分な程度まで油中で、例えば、可溶性または安定して分散性であることを意味する。さらに、他の添加物をさらに組み込むことによってまた、必要に応じて、より高いレベルの特定の添加物の組込みを可能にし得る。
【0015】
ポリマー摩擦調整剤(B1)
全てのポリマーと同様に、本発明のポリマー摩擦調整剤は、様々なサイズの分子の混合物を含む。適切に、分子の大部分は、1,000〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する。
官能化ポリオレフィンは好ましくは、2〜6個の炭素原子を有するモノオレフィンのポリマー(エチレン、プロピレン、ブタンおよびイソブテンなど)に由来する。本発明の官能化ポリオレフィンは、15〜500個、好ましくは50〜200個の炭素原子の鎖を適切に含有する。好ましくは、第1のポリマーサブユニットのポリマーは、ポリイソブテンまたはその誘導体である。
官能化ポリオレフィンは、ポリオレフィンと不飽和二酸または無水物との反応からの、二酸または無水物官能基を含み得る。官能化ポリオレフィンは、例えば、無水マレイン酸との反応によって適切に官能化される。
好ましい一実施形態において、官能化ポリオレフィンは、無水マレイン酸と反応し、ポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA)を形成させるポリイソブチレンポリマーである。適切に、PIBSAは、300〜5000Da、好ましくは500〜1500Da、特に800〜1200Daの範囲の分子量を有する。PIBSAは、末端不飽和基を有するポリイソブチレンと無水マレイン酸との付加反応から作製した市販の化合物である。
代わりに、官能化ポリオレフィンは、過酸、例えば、過安息香酸または過酢酸とのエポキシ化反応によって官能化し得る。
【0016】
ポリエーテルは、例えば、ポリグリセロールまたはポリアルキレングリコールを含み得る。好ましい一実施形態において、ポリエーテルは、水溶性アルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)である。適切に、PEGは、300〜5000Da、より好ましくは400〜1000Da、特に400〜800Daの範囲の分子量を有する。好ましい一実施形態において、ポリエーテルは、PEG
400、PEG
600またはPEG
1000である。代わりに、混合ポリ(エチレン−プロピレン)グリコールまたは混合ポリ(エチレン−ブチレン)グリコールを使用し得る。代わりに、ポリエーテルは、酸性基、例えば、カルボン酸基、スルホニル基(例えば、スルホニルスチレン酸基)、アミン基(例えば、テトラエチレンペンタミンもしくはポリエチレンイミン)、またはヒドロキシル基を含有するジオールまたはジアミンに由来し得る。
【0017】
ポリエーテルは、300〜5,000Da、より好ましくは400〜1,000Daまたは400〜800Daの分子量を適切に有する。
本発明の官能化ポリオレフィンおよびポリエーテルは、ブロックコポリマー単位を形成し得る。
官能化ポリオレフィンおよびポリエーテルは、互いに直接連結してもよく、かつ/またはこれらは、主鎖部分によって一緒に連結し得る。
本発明のポリマー摩擦調整剤のポリオール反応物は、官能化ポリオレフィンおよびポリエーテル反応物を一緒に連結することができる主鎖部分を適切に提供する。ポリオールは、ジオール、トリオール、テトロール、および/または関連する二量体もしくは三量体、またはこのような化合物の鎖延長ポリマーでよい。適切なポリオールには、グリセロール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトールおよびソルビトールが含まれる。好ましい一実施形態において、ポリマー摩擦調整剤は、グリセロール主鎖部分を含む。
【0018】
本発明のポリマー摩擦調整剤は、モノカルボン酸鎖終結基を含む。任意のカルボン酸は、適切な鎖終結基である。適切な例には、C
2-36カルボン酸、好ましくはC
6-30カルボン酸、より好ましくは、C
12-22カルボン酸が含まれる。カルボン酸は、直鎖状飽和酸、分岐状飽和酸、直鎖状不飽和酸および分岐状不飽和酸でよい。好ましい実施形態において、カルボン酸鎖終結基は、ラウリン酸、エルカ酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸およびリノール酸を含む群から選択される。一実施形態において、カルボン酸鎖終結基は、脂肪カルボン酸である。
ポリマー摩擦調整剤(B1)は適切に、1,000〜30,000Da、好ましくは1,500〜25,000Da、より好ましくは2,000〜20,000Daの平均分子量を有する。
ポリマー摩擦調整剤(B1)は適切に、20未満、好ましくは15未満、より好ましくは10未満の酸価を有する。ポリマー摩擦調整剤(B1)は、1超、好ましくは3超、より好ましくは5超の酸価を適切に有する。好ましい一実施形態において、ポリマー摩擦調整剤(B1)は、6〜9の範囲の酸価を有する。
適切に、ポリマー摩擦調整剤(B1)は、国際特許出願第WO2011/107739号に記載されている通りであり、その中の摩擦調整剤を作製する方法の記載および例は、それへの参照により本明細書中に組み込まれている。
【0019】
ポリマー摩擦調整剤(B1)の一例は、マレイン化ポリイソブチレン、PEG、グリセロールおよびタル油脂肪酸の反応生成物であり、マレイン化ポリイソブチレンのポリイソブチレンは、概ね950原子質量単位の平均分子量、および98mg KOH/gのおおよそのけん化価を有し、PEGは、190mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。適切な添加物は、機械式撹拌機、アイソマントルヒーター(isomantle heater)およびオーバーヘッドコンデンサーを備えたガラス製丸底フラスコに、110gのマレイン化ポリイソブチレン、72gのPEG、5gのグリセロールおよび25gのタル油脂肪酸を充填することによって作製し得る。反応は、10mg KOH/gの最終酸価まで水を除去して、200〜220℃にて0.1gのエステル化触媒であるチタン酸テトラブチル(terabutyl titanate)の存在下で起こる。
本発明のポリマー摩擦調整剤は、添加物パッケージの質量に対して、活性物質ベースで、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも1質量%の量で、添加物パッケージ中に適切に存在する。本発明のポリマー摩擦調整剤は、添加物パッケージの質量に対して、活性物質ベースで、10質量%未満、好ましくは6質量%未満の量で、添加物パッケージ中に適切に存在する。
本発明のポリマー摩擦調整剤は、潤滑油組成物の質量に対して、活性物質ベースで、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.3質量%のポリマー摩擦調整剤を、添加物パッケージから作製される潤滑油組成物に与えるのに十分な量で、添加物パッケージ中に適切に存在する。本発明のポリマー摩擦調整剤は、潤滑油組成物の質量に対して、活性物質ベースで、5質量%未満、好ましくは1質量%未満のポリマー摩擦調整剤を、添加物パッケージから作製される潤滑油組成物に与えるのに十分な量で、添加物パッケージ中に適切に存在する。
【0020】
無灰有機摩擦調整剤(B2)
本発明の無灰(金属非含有)の有機摩擦調整剤は、任意の従来の無灰有機潤滑油摩擦調整剤でよい。適切な無灰有機摩擦調整剤の例には、モノマー親油性炭化水素鎖に共有結合している極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシルまたはアミン)を含むモノマー摩擦調整剤が含まれる。モノマー親油性炭化水素鎖は、12〜36個の炭素原子を適切に含む。適切に、モノマー親油性炭化水素鎖は、優勢に直鎖状、例えば、少なくとも90%直鎖状である。モノマー親油性炭化水素鎖は、動物または植物性脂肪に適切に由来する。無灰有機摩擦調整剤(B2)は、無灰有機摩擦調整剤の混合物を含み得る。
【0021】
適切な無灰窒素非含有の有機摩擦調整剤は、カルボン酸および無水物とアルカノールとの反応によって形成されるエステルを含む。アルカノールを有するカルボン酸および無水物のエステルは、US4,702,850に記載されている。好ましい無灰有機窒素非含有の摩擦調整剤は、エステルまたはエステルベースである。特に好ましい無灰有機窒素非含有の摩擦調整剤は、グリセロールモノオレエート(GMO)である。
無灰アミンまたはアミンベースの摩擦調整剤をまた使用してもよく、油溶性アルコキシル化モノ−およびジ−アミンを含む。1つの一般のクラスのこのような無灰窒素含有の摩擦調整剤は、エトキシ化アルキルアミン(エトキシ化獣脂アミンなど)を含む。このような摩擦調整剤はまた、ホウ素化合物との付加体または反応生成物の形態(三酸化二ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸、またはモノ−、ジ−もしくはトリ−アルキルボレートなど)でよい。
【0022】
別の無灰アミン摩擦調整剤は、(i)式R
1R
2R
3Nの第三級アミン(式中、R
1、R
2およびR
3は、脂肪族ヒドロカルビル、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つは、ヒドロキシル基を有する)と、(ii)10〜30個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪酸との反応生成物として形成されるエステルである。好ましくは、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つは、アルキル基である。好ましくは、第三級アミンは、2〜4個の炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有する。エステルは、どれだけ多くのヒドロキシル基が脂肪酸のアシル基によるエステル化のために利用可能であるかによって、モノ−、ジ−もしくはトリ−エステルまたはこれらの混合物でよい。好ましい一実施形態は、(i)式R
1R
2R
3Nの第三級ヒドロキシアミン(式中、R
1、R
2およびR
3は、C
2−C
4ヒドロキシアルキル基でよい)と、(ii)10〜30個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪酸との反応生成物として形成されるエステルの混合物を含み、このように形成されたエステルの混合物は、少なくとも30〜60重量%、好ましくは45〜55重量%のジエステル、例えば、50重量%のジエステル、10〜40重量%、好ましくは20〜30重量%のモノエステル、例えば、25重量%のモノエステル、および10〜40重量%、好ましくは20〜70重量%のトリエステル、例えば、25重量%のトリエステルを含む。適切に、エステルは、トリエタノールアミンのモノ−、ジ−またはトリ−カルボン酸エステルおよびこれらの混合物である。
【0023】
他の従来の有機摩擦調整剤の例は、M. Belzerによって"Journal of Tribology" (1992), Vol. 114, pp. 675-682に、またM. BelzerおよびS. Jahanmirによって"Lubrication Science" (1988), Vol. 1, pp. 3-26に記載されている。
【0024】
本発明の無灰有機摩擦調整剤は、添加物パッケージの質量に対して、活性物質ベースで、少なくとも0.5質量%、好ましくは少なくとも1.0質量%、より好ましくは少なくとも1.5質量%の量で、添加物パッケージ中に適切に存在する。本発明の無灰有機摩擦調整剤は、添加物パッケージの質量に対して、活性物質ベースで、10質量%未満、好ましくは6質量%未満の量で、添加物パッケージ中に適切に存在する。
本発明の無灰有機摩擦調整剤は、潤滑油組成物の質量に対して、活性物質ベースで、少なくとも0.05質量%、例えば、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.2質量%の無灰有機摩擦調整剤を、添加物パッケージから作製される潤滑油組成物に与えるのに十分な量で、添加物パッケージ中に適切に存在する。本発明の無灰有機摩擦調整剤は、潤滑油組成物の質量に対して、活性物質ベースで、5質量%未満、好ましくは1質量%未満の無灰有機摩擦調整剤を、添加物パッケージから作製される潤滑油組成物に与えるのに十分な量で、添加物パッケージ中に適切に存在する。
【0025】
他の添加物
下記のものなどの他の添加物はまた、本発明の添加物パッケージ中、または本発明の添加物パッケージを含む潤滑油組成物中に任意選択で存在し得る。
本発明による添加物パッケージは、金属含有洗浄剤、無灰洗浄剤、抗摩耗剤、無灰分散剤、油溶性モリブデン化合物、抗酸化剤(anitoxidants)およびケイ素消泡剤を含む群から選択される1つ以上の添加物をさらに含み得る。
金属洗浄剤は、沈着物を減少させ、または除去するための洗浄剤として、および酸中和剤またはさび防止剤としての両方で機能し、それによって摩耗および腐食を減少させ、機関寿命を延ばす。洗浄剤は一般に、長い疎水性尾部を有する極性頭部を含み、極性頭部は、酸性有機化合物の金属塩を含む。塩は、実質的に化学量論量の金属を含有してもよく、この場合、塩は通常正塩または中性塩と記載され、典型的には0〜80の全アルカリ価またはTBN(ASTM D2896によって測定することができるように)を有する。過剰な金属化合物(例えば、酸化物または水酸化物)と酸性ガス(例えば、二酸化炭素)とを反応させることによって、多量の金属塩基を組込み得る。得られた過塩基性洗浄剤は、金属塩基(例えば、カーボネート)ミセルの外層として中和された洗浄剤を含む。このような過塩基性洗浄剤は、150以上のTBNを有してもよく、典型的には250〜450以上のTBNを有する。式Iの化合物の存在下で、過塩基性洗浄剤の量は減少させることができ、または減少したレベルの過塩基性を有する洗浄剤(例えば、100〜200のTBNを有する洗浄剤)、または中性洗浄剤を用いることができ、その性能を低下させることなしに、潤滑油組成物のSASH含量の対応する減少をもたらす。
使用し得る洗浄剤には、金属、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムの、油溶性中性および過塩基性のスルホン酸塩、フェネート、硫化フェネート、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩、およびナフテン酸塩および他の油溶性のカルボン酸塩が含まれる。最も一般に使用される金属は、カルシウムおよびマグネシウム(両方とも、潤滑剤中に使用される洗浄剤中に存在し得る)、ならびにカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物である。洗浄剤の組合せは、過塩基性または中性または両方であろうと、使用し得る。
【0026】
本発明の一実施形態において、添加物パッケージは、20〜450TBNのTBNを有する中性または過塩基性のスルホン酸カルシウム、ならびに50〜450のTBNを有する中性および過塩基性のカルシウムフェネートおよび硫化フェネート、ならびにこれらの混合物から選択される金属洗浄剤を含む。
【0027】
スルホネートは、アルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化によって(石油の分画から得られるものなど)、または芳香族炭化水素のアルキル化によって典型的には得られる、スルホン酸から調製し得る。例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニルまたはこれらのハロゲン誘導体(クロロベンゼン、クロロトルエンおよびクロロナフタレンなど)をアルキル化させることによって得られるものが含まれた。アルキル化は、約3〜70個超の炭素原子を有するアルキル化剤を有する触媒の存在下で行い得る。アルカリールスルホネートは、アルキル置換芳香族部分毎に約9〜約80個以上の炭素原子、好ましくは約16〜約60個の炭素原子を通常含有する。
油溶性のスルホネートまたはアルカリールスルホン酸は、金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カルボン酸塩、硫化物、ヒドロ硫化物、硝酸塩、ホウ酸塩およびエーテルで中和し得る。最終生成物の所望のTBNを考慮して金属化合物の量は選択されるが、典型的には、化学量論的に必要とされるものの約100〜220質量%(好ましくは少なくとも125質量%)の範囲である。
フェノールおよび硫化フェノールの金属塩は、適正な金属化合物(酸化物または水酸化物など)との反応によって調製され、中性または過塩基性の生成物は、当技術分野で周知の方法によって得てもよい。硫化フェノールは、フェノールと、硫黄または硫黄含有化合物(硫化水素、一ハロゲン化硫黄または二ハロゲン化硫黄など)とを反応させることによって調製してもよく、2つ以上のフェノールが硫黄含有架橋によって架橋されている、一般に化合物の混合物である生成物を形成させる。
本発明の別の実施形態において、添加物パッケージは、50〜450のTBN、好ましくは50〜250のTBNを有する中性または過塩基性のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属サリチル酸塩、またはこれらの混合物である金属洗浄剤を含む。非常に好ましいサリチル酸塩洗浄剤は、アルカリ土類金属サリチル酸塩、特に、マグネシウムおよびカルシウム、特に、サリチル酸カルシウムを含む。本発明の一実施形態において、アルカリ金属またはアルカリ土類金属サリチル酸塩洗浄剤は、潤滑油組成物中の唯一の金属含有洗浄剤である。
【0028】
抗摩耗剤は、摩擦および過度の摩耗を減少させ、例えば、関連する表面上にポリスルフィド膜を沈着させることができる、硫黄またはリンまたは両方を含有する化合物に通常基づいている。注目すべきなのは、ジチオリン酸ジヒドロカルビル金属塩であり、金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、または好ましくは、亜鉛でよい。
ジチオリン酸ジヒドロカルビル金属塩は、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)(通常1種または複数のアルコールまたはフェノールとP
2S
5との反応による)を最初に形成させ、次いで形成されたDDPAを金属化合物で中和することによって、公知の技術によって調製し得る。例えば、ジチオリン酸は、第一級および第二級アルコールの混合物を反応させることによって作製し得る。代わりに、複数のジチオリン酸を調製することができ、ヒドロカルビル基は、一方で性質が全体的に第二級であり、ヒドロカルビル基は、他方では性質が全体的に第一級である。金属塩を作製するために、任意の塩基性または中性の金属化合物を使用することができるが、酸化物、水酸化物および炭酸塩が、最も一般に用いられる。市販の添加物は、中和反応において過剰な塩基性金属化合物を使用することによって、過剰な金属を含有することが多い。
好ましいジチオリン酸ジヒドロカルビル亜鉛(ZDDP)は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、下記の式によって表してもよく、
【0029】
【化1】
式中、RおよびR’は、1〜18個、好ましくは2〜12個の炭素原子を含有する、同一または異なるヒドロカルビル基でよく、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式基などの基を含む。RおよびR’基として特に好ましいものは、2〜8個の炭素原子のアルキル基である。したがって、基は、例えば、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルでよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸における炭素原子(すなわち、RおよびR’)の総数は一般に、約5以上である。したがって、ジチオリン酸ジヒドロカルビル亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。
【0030】
ZDDPを、潤滑油組成物の総質量に対して、1200ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは、900ppm以下のリンを、添加物パッケージを含む潤滑油組成物に与えるのに十分な量で添加物パッケージに適切に加える。好ましい一実施形態において、ZDDPを、潤滑油組成物の総質量に対して、800ppm以下、好ましくは600ppm以下のリンを、添加物パッケージを含む潤滑油組成物に与えるのに十分な量で添加物パッケージに加える。ZDDPを、潤滑油組成物の総質量に対して、少なくとも100ppm、好ましくは少なくとも350ppm、より好ましくは、少なくとも500ppmのリンを、添加物パッケージを含む潤滑油組成物に与えるのに十分な量で添加物パッケージに適切に加える。
他の無灰抗摩耗剤の例には、1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、硫化脂肪酸エステル、およびジチオカルバメート誘導体が含まれる。
【0031】
無灰分散剤は、分散される粒子と会合することができる官能基を有する油溶性ポリマー炭化水素主鎖を含む。典型的には、分散剤は、しばしば架橋基によってポリマー主鎖に付着している、アミン、アルコール、アミド、またはエステル極性部分を含む。無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノおよびジカルボン酸またはこれらの無水物の、油溶性塩、エステル、アミノ−エステル、アミド、イミド、およびオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体;これに直接付着しているポリアミンを有する長鎖脂肪族炭化水素;ならびに長鎖置換フェノールとホルムアルデヒドおよびポリアルキレンポリアミンとを縮合することによって形成されるマンニッヒ縮合生成物から選択し得る。
油溶性モリブデン化合物は、任意の適切な油溶性オルガノ−モリブデン化合物を含む。適切な油溶性オルガノ−モリブデン化合物の例として、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、スルフィドなど、およびこれらの混合物について言及することができる。特に好ましいのは、モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテートおよびアルキルチオキサンテートである。
【0032】
適切なモリブデン化合物は、単核、複核、三核または四核を含む。複核および三核モリブデン化合物が好ましく、特に好ましいのは、三核モリブデン化合物である。適切なモリブデン化合物は、好ましくはオルガノ−モリブデン化合物である。より好ましくは、任意のモリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィネート、モリブデンキサンテート、モリブデンチオキサンテート、硫化モリブデンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、任意のモリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート化合物として存在する。
さらに、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物でよい。これらの化合物は、ASTM試験D−664またはD−2896滴定手順によって測定して、塩基性窒素化合物と反応し、典型的には六価である。含まれるのは、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、および他のアルカリ金属モリブデン酸塩および他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸ナトリウム水素、MoOCl
4、MoO
2Br
2、Mo
2O
3Cl
6、三酸化モリブデンまたは同様の酸性モリブデン化合物である。代わりに、本発明の組成物に、例えば、米国特許第4,263,152号;同第4,285,822号;同第4,283,295号;同第4,272,387号;同第4,265,773号;同第4,261,843号;同第4,259,195号および同第4,259,194号;ならびにWO94/06897に記載されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄複合体によってモリブデンを提供することができる。
【0033】
本発明の組成物において有用なモリブデン化合物の中には、式Mo(ROCS
2)
4およびMo(RSCS
2)
4のオルガノ−モリブデン化合物があり、式中、Rは、一般に1〜30個の炭素原子、好ましくは2〜12個の炭素原子の、アルキル、アリール、アラルキルおよびアルコキシアルキル、最も好ましくは2〜12個の炭素原子のアルキルからなる群から選択されるオルガノ基である。特に好ましいのは、モリブデンのジアルキルジチオカルバメートである。
本発明の潤滑組成物において有用な好ましいオルガノ−モリブデン化合物の1つのクラスは、三核モリブデン化合物、特に、式Mo
3S
kL
nQ
zのもの、およびこれらの混合物であり、式中、Lは、独立に、化合物を油中で可溶性または分散性にするのに十分な数の炭素原子を有するオルガノ基を有する選択されたリガンドであり、nは、1〜4であり、kは、4から7で変化し、Qは、中性電子供与性化合物(水、アミン、アルコール、ホスフィン、およびエーテルなど)の群から選択され、zは、0〜5の範囲であり、非化学量論値を含む。全てのリガンドのオルガノ基において、少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子などの少なくとも21個の総炭素原子が、存在すべきである。
【0034】
本発明の添加物パッケージが、モリブデン添加物を含む場合、添加物パッケージは、潤滑油組成物の総質量中、モリブデンの原子に対して、少なくとも10ppm、好ましくは少なくとも20ppm、より好ましくは少なくとも40ppmのモリブデンを、添加物パッケージを含有する潤滑油組成物に与える量でモリブデン化合物を含有し得る。本発明による添加物パッケージを含む潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総質量中、モリブデンの原子に対して、1000ppm以下、好ましくは700ppm以下、より好ましくは500ppm以下のモリブデンを組成物に与える量でモリブデン化合物を含有し得る。
粘度調節剤(VM)は、潤滑油に高温および低温の操作性を与えるように機能する。使用されるVMは、この唯一の機能を有してもよく、または多機能性でよい。
【0035】
分散剤としてもまた機能する多機能性粘度調節剤がまた公知である。適切な粘度調節剤は、ポリイソブチレン、エチレンおよびプロピレンのコポリマー、ならびに高級α−オレフィン、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸およびビニル化合物のコポリマー、スチレンおよびアクリル酸エステルのインターポリマー、ならびにスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分水素化コポリマー、ならびにブタジエンおよびイソプレンおよびイソプレン/ジビニルベンゼンの部分水素化ホモポリマーである。
【0036】
抗酸化剤は、酸化防止剤と称されることもある。抗酸化剤は、酸化に対する組成物の耐性を増加させ、過酸化物と合わせおよび過酸化物を修飾してそれらを無害にすることによって、過酸化物を分解することによって、または酸化触媒を不活性にすることによって作用し得る。酸化的劣化は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のニス様沈着物によって、および粘度の増加によって証明することができる。
適切な抗酸化剤の例は、銅含有抗酸化剤、硫黄含有抗酸化剤、芳香族アミン含有抗酸化剤、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、ジチオホスフェート誘導体、および金属チオカルバメートから選択される。好ましい抗酸化剤は、芳香族アミン含有抗酸化剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤およびこれらの混合物である。好ましい一実施形態において、抗酸化剤は、本発明による添加物パッケージ中で存在する。
【0037】
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、およびアニオン性アルキルスルホン酸からなる群から選択されるさび防止剤を、使用し得る。
銅および鉛を含有する腐食防止剤を使用し得るが、典型的には本発明の配合物には必要ない。典型的にはこのような化合物は、5〜50個の炭素原子を含有するチアジアゾールポリスルフィド、これらの誘導体およびそのポリマーである。米国特許第2,719,125号;同第2,719,126号;および同第3,087,932号に記載されているものなどの1,3,4チアジアゾールの誘導体が典型的である。他の同様の材料は、米国特許第3,821,236号;同第3,904,537号;同第4,097,387号;同第4,107,059号;同第4,136,043号;同第4,188,299号;および同第4,193,882号に記載されている。他の添加物は、英国特許明細第1,560,830号に記載されているものなどの、チアジアゾールのチオおよびポリチオスルフェンアミドである。ベンゾトリアゾール誘導体はまた、このクラスの添加物の範囲に入る。これらの化合物が添加物パッケージ中に含まれるとき、これらは好ましくは、添加物パッケージを含む潤滑油に0.2重量%以下の活性成分を与える量で存在する。
【0038】
少量の解乳化構成成分を使用し得る。好ましい解乳化構成成分は、EP330,522に記載されている。これは、アルキレンオキシドと、付加体(ビス−エポキシドと多価アルコールとを反応させることによって得られる)とを反応させることによって得られる。解乳化剤は、添加物パッケージを含む潤滑油組成物中で0.1質量%の活性成分を超えないレベルで使用すべきである。完全配合潤滑剤における0.001〜0.05質量%の活性成分の処理率は好都合である。
潤滑性油流動改善剤として他に公知である流動点降下剤は、流体が流れ、または注ぐことができる最低温度を低下させる。このような添加物は周知である。流体の低温流動性を改善させるこれらの添加物の典型的なものは、C
8−C
18ジアルキルフマレート/酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキルメタクリレートなどである。
泡制御剤は、ポリシロキサンタイプの消泡剤、例えば、シリコーン油またはポリジメチルシロキサンを含めた多くの化合物によって提供されることができる。
個々の添加物を、任意の好都合な方法で希釈油に組み込んでもよい。
好ましくは、粘度調節剤および流動点降下剤を除いて全ての添加物を、添加物パッケージ中にブレンドし、この添加物パッケージを、ベースストック中に引き続いてブレンドし、完成した潤滑剤を作製する。添加物パッケージ濃縮物は典型的には、適当な量の添加物(複数可)を含有するように配合され、濃縮物が所定の量のベース油と合わさるときに、完全配合潤滑剤において所望の濃度を実現する。
濃縮物は、US4,938,880に記載されている方法によって作製し得る。この特許は、少なくとも約100℃の温度で事前ブレンドした無灰分散剤および金属洗浄剤のプレミックスの作製について記載している。その後、プレミックスを少なくとも85℃に冷却し、さらなる構成成分を加える。
【0039】
本発明の第2の態様の最終クランクケース潤滑油配合物は、2〜20質量%、好ましくは4〜18質量%、最も好ましくは5〜17質量%の本発明の第1の態様の添加物パッケージを用いてもよく、残りは、ベースストックならびに任意選択の粘度調節剤および流動点降下剤である。
典型的には、本発明の第1の態様による添加物パッケージは、組成物の総質量に対して、ASTM法D4927によって測定して、4質量%まで、より好ましくは3質量%まで、最も好ましくは2質量%までの硫黄を適切に含有する。本発明の一実施形態において、添加物パッケージは、ASTM法D4927によって測定して、1.5〜1.6質量%の硫黄を含まない。
典型的には、本発明の第2の態様による潤滑油組成物は、組成物の総質量に対して、ASTM法D4927によって測定して、0.4質量%まで、より好ましくは0.3質量%まで、最も好ましくは0.2質量%までの硫黄を適切に含有する。本発明の一実施形態において、本発明の第2の態様による潤滑油組成物は、ASTM法D4927によって測定して、0.2〜0.25質量%の硫黄を含まない。
【0040】
本発明の第1の態様による添加物パッケージは、12質量%まで(12質量%を含む)、好ましくは10質量%まで、さらにより好ましくは9質量%までの硫酸化灰分を適切に含有する。
本発明の第2の態様による潤滑油組成物は、1.2質量%まで(1.2質量%を含む)、好ましくは1.1質量%まで、さらにより好ましくは1.0質量%までの硫酸化灰分を適切に含有する。
典型的には、本発明の第1の態様による添加物パッケージは、組成物の総質量に対して、ASTM法D5291によって測定して、2.0質量%まで、より好ましくは1.5質量%まで、最も好ましくは1.0質量%までの窒素を適切に含有する。本発明の一実施形態において、添加物パッケージは、ASTM法D5291によって測定して、0.60〜0.74質量%の窒素を含まない。
典型的には、本発明の第2の態様による潤滑油組成物は、組成物の総質量に対して、ASTM法D5291によって測定して、0.30質量%まで、より好ましくは0.20質量%まで、最も好ましくは0.15質量%までの窒素を適切に含有する。本発明の一実施形態において、本発明の第2の態様による潤滑油組成物は、ASTM法D5291によって測定して、0.08〜0.11質量%の窒素を含まない。
典型的には、本発明の第1の態様による添加物パッケージは、ASTM D2896によって測定して、25〜100、好ましくは45〜80の全アルカリ価(TBN)を有する。本発明の一実施形態において、添加物パッケージは、ASTM D2896によって測定して、62〜63.5の全アルカリ価(TBN)を有さない。典型的には、本発明の第2の態様による潤滑油組成物は、ASTM D2896によって測定して、4〜15、好ましくは5〜12の全アルカリ価(TBN)を有する。
【0041】
好ましくは、本発明の第2の態様による潤滑油組成物は、粘性の記述子であるSAE20WX、SAE15WX、SAEl0WX、SAE5WXまたはSAE0WXによって同定されるマルチグレードであり、Xは、20、30、40および50のいずれかの1つを表す。異なる粘性グレードの特徴は、SAEJ300分類に見出すことができる。本発明の各態様の一実施形態において、他の実施形態と独立に、潤滑油組成物は、SAE10WX、SAE5WXまたはSAE0WXの形態、好ましくはSAE5WXまたはSAE0WXの形態であり、Xは、20、30、40および50のいずれかの1つを表す。好ましくは、Xは、20または30である。
【実施例】
【0042】
本発明を、これに関する請求項の範囲を制限することを意図しない下記の実施例においてこれから説明する。
添加物パッケージの安定性
7つの添加物パッケージ試料を、表1によって調製した。添加物パッケージ試料1〜7の各々は、ベース添加物パッケージを含んだが、これは無灰分散剤、ZDDP、抗酸化剤、ジチオカルバミン酸モリブデン(molydenum)、スルホン酸カルシウム洗浄剤、ポリイソブテニルコハク酸無水物、ケイ素消泡剤(11.6質量%のグループIの希釈油を含む)を含有した。添加物パッケージ1〜7は各々、95グラムのベース添加物パッケージ、次いで表1に示したような様々な量の摩擦調整剤を含む。摩擦調整剤は、構成成分(B1)として、上記の「ポリマー摩擦調整剤(B1)」の項に示した工程によって作製されたポリマー摩擦調整剤、ならびに構成成分(B2)の代表例として、グリセロールモノオレエート(GMO)および/またはエトキシ化獣脂アミン(ETA)を含んだ。ベース添加物パッケージおよび添加物パッケージ1〜7を、下記の保存安定性試験に供したが、結果を表2に示す。
【0043】
保存安定性試験法
試験する100mlの試料を、遠心分離管中に注ぎ、管をオーブン中で60℃にてほぼ垂直で支える。全ての試料の状態を、最初、および週に1回の間隔で10週間観察および記録した。沈降物のための自然光および高輝度灯源の両方の下で、遠心分離管を観察した。遠心分離管の外側を、必要な場合、溶媒で浄化し、はっきりした視界を確実にした。沈降物は、管の最下部で集めた硬い固体粒子である。硬い沈降物の真上の界面の識別可能な上面を有するいくらかの軽い沈降物またはエマルジョンが存在することがある。これは「濁り層」(カフ(cuff))と称される。沈降物の容量%、および軽い沈降物またはエマルジョンの容量%を、存在する場合は記録した。試料の週に1回の検査の間に、試料が0.05質量%超の沈降物容量を示した場合、試料はその時点で不合格であると見なし、沈降物容量の量および週数を最終結果として記録した。10週の終わりまでに沈降物がなかった場合、結果を0/10として記録した。
表2における結果から、従来の無灰有機摩擦調整剤のみを含む添加物パッケージ4〜7は、安定性試験において不合格であることがわかる。4グラムのGMOほど低い処理率においてさえ、この従来の無灰有機摩擦調整剤は、安定性試験において不合格である。しかし、従来の無灰摩擦調整剤の部分がポリマー摩擦調整剤で置き換えられたとき、添加物パッケージの安定性は、有意に改善した。例2および3を参照されたい。
このように、従来の無灰有機摩擦調整剤および本発明のポリマー摩擦調整剤の組合せによって、そうでなければ単に従来の無灰有機摩擦調整剤で可能となるであろうものよりも高い処理率の摩擦調整剤を使用することを可能とする。
【0044】
抗摩耗性能
2種の油組成物を調製したが、各々は、摩擦調整剤および油のみを含有した。高振動数往復動リグ(例、PCS Instruments)を使用して、光学的プロフィロメトリーによってHFRRディスク摩耗傷跡容量(μm
3)を測定することによって、上記の油組成物の各々の抗摩耗特性、および摩擦調整剤を有さない対照油の抗摩耗特性を評価した。実験方法は、下記の条件下で行った。
【0045】
【表2】
結果を表3に示す。より小さな摩耗傷跡容量は、より少ない摩耗と同一視することができる。示されるように、唯一の無灰摩擦調整剤としてポリマー摩擦調整剤を含有する油9は、対照試料に対して摩耗性能の改善がもたらされた。油10は、GMOおよびポリマー摩擦調整剤の組合せによって、対照と比較して摩耗性能の改善の増加が示されたことを示す。
したがって、本発明によるポリマー摩擦調整剤および無灰有機摩擦調整剤の組合せを使用して、摩耗性能を改善させることおよび添加物パッケージの安定性を改善させることの間のバランスを実現できることがわかる。無灰有機摩擦調整剤との組合せにおけるポリマー摩擦調整剤の使用は、改善された添加物パッケージの安定性を同時に与える一方で、改善された摩耗性能を実現する。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕(A)潤滑粘度の希釈油;ならびに
(B)下記の添加物:
(B1)ポリマー摩擦調整剤(ポリマー摩擦調整剤は、
(a)官能化ポリオレフィン、
(b)ポリエーテル、
(c)ポリオール、および
(d)モノカルボン酸鎖終結基
の反応生成物である)、
(B2)モノマー親油性炭化水素鎖に共有結合している極性末端基を含む1種または複数のモノマー無灰摩擦調整剤を含む無灰有機摩擦調整剤
を含み、またはこれらを混合することによって作製され、
ASTM D2896によって測定して、62〜63.5の全アルカリ価(TBN)を有さない、内燃機関クランクケース潤滑油組成物のための添加物パッケージ。
〔2〕官能化ポリオレフィンが、官能化ポリイソブテンである、前記〔1〕に記載の添加物パッケージ。
〔3〕官能化ポリオレフィンが、二酸または無水物官能基で官能化される、前記〔1〕または〔2〕に記載の添加物パッケージ。
〔4〕第2のポリエーテルが、水溶性アルキレングリコールのポリマーである、前記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージ。
〔5〕第2のポリエーテルが、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール、またはポリ(エチレン−ブチレン)グリコールのポリマーである、前記〔4〕に記載の添加物パッケージ。
〔6〕第2のポリマーサブユニットが、PEG400、PEG600、PEG1000またはこれらの混合物から選択されるポリエチレングリコール(PEG)である、前記〔5〕に記載の添加物パッケージ。
〔7〕官能化ポリオレフィンが、無水マレイン酸との反応によって官能化される、前記〔3〕に記載の添加物パッケージ。
〔8〕ポリオールが、グリセロールである、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージ。
〔9〕無灰摩擦調整剤(B2)の極性基が、カルボキシル、ヒドロキシルおよびアミン基から選択される、前記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージ。
〔10〕1種または複数の無灰摩擦調整剤(B2)のモノマー親油性炭化水素鎖が、12〜36個の炭素原子を含む、前記〔1〕から〔9〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージ。
〔11〕(C)金属含有洗浄剤、無灰洗浄剤、抗摩耗剤、無灰分散剤、油溶性モリブデン化合物、抗酸化剤およびケイ素消泡剤を含む群から選択される1つ以上の添加物をさらに含む、前記〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージ。
〔12〕添加物パッケージの質量に対して、活性物質ベースで、0.1〜10質量%のポリマー摩擦調整剤を含む、前記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージ。
〔13〕添加物パッケージの質量に対して、活性物質ベースで、全部で0.5〜10質量%の1種または複数の無灰有機摩擦調整剤を含む、前記〔1〕から〔12〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージ。
〔14〕添加物パッケージが、ASTM法D5291によって測定して、0.60〜0.74質量%の窒素を含まない、前記〔1〕から〔13〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージ。
〔15〕潤滑油組成物の質量に対して、80〜95質量%のベースストックおよび5〜20質量%の前記〔1〕から〔14〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージを含む潤滑油組成物であって、ベースストックの85質量%以下が、グループIVのベースストックによって提供される、潤滑油組成物。
〔16〕潤滑油組成物の質量に対して、1200ppm以下のリン、1.0質量%以下の硫酸化灰分および0.4質量%以下の硫黄を含む、前記〔15〕に記載の潤滑油組成物。
〔17〕使用されると内燃機関を潤滑させるときに改善された抗摩耗性能を実現する、内燃機関クランクケース潤滑油組成物を形成するための、前記〔1〕から〔14〕のいずれか1項に記載の添加物パッケージの使用であって、潤滑油組成物が、80〜95質量%のベースストックおよび5〜20質量%の前記添加物パッケージを含む使用。