特許第6268436号(P6268436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268436
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ボトム衣類
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/04 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
   A41B9/04 E
   A41B9/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-94824(P2014-94824)
(22)【出願日】2014年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-212434(P2015-212434A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100103056
【弁理士】
【氏名又は名称】境 正寿
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】石浦 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】杉原 喜久美
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/168636(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3056159(JP,U)
【文献】 特開平9−3705(JP,A)
【文献】 実開昭64−14108(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3003961(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/02、9/04
A41C 1/00 − 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃、後身頃、マチ部および前記後身頃と前記マチ部との間に設けられた介在布部材を含むボトム衣類であって、
前記介在布部材は、後裾周り形成部と脇裾周り形成部とを含み、
前記後裾周り形成部の後中心側部分は前記マチ部と連結し、前記後裾周り形成部の脇側部分は、前記マチ部との連結部分から左右方向に延びており、
前記後裾周り形成部の後側の外周部と前記脇裾周り形成部の後側の外周部とは、前記後身頃の縁部と連結しており、
パターンの図において、前記後裾周り形成部の後側の外周部と前記脇裾周り形成部の後側の外周部とで形成される縁部の形状が、当該部分が連結される前記後身頃の縁部の形状よりも、カーブが緩くなっており、
着用者が脚を挿通するための裾周り部分は、前記前身頃の後側幅方向両側外周部、前記マチ部の幅方向両側外周部、前記後裾周り形成部の脇側部分の前側の外周部および前記脇裾周り形成部の前側の外周部がこの順に隣り合うように、前記前身頃、前記マチ部、前記後裾周り形成部および前記脇裾周り形成部を連結して形成されていることを特徴とする、ボトム衣類。
【請求項2】
前記後裾周り形成部と前記脇裾周り形成部との連結部分は、着用時における太股の付け根の幅方向の中央を通り上下方向に延在する仮想線上または前記仮想線よりも外側に位置していることを特徴とする、請求項1記載のボトム衣類。
【請求項3】
前記後裾周り形成部と前記脇裾周り形成部とが対向する縁部同士は、重なり部分を有するように連結されていることを特徴とする、請求項1または2記載のボトム衣類。
【請求項4】
前記重なり部分には、補強処理が施されていることを特徴とする、請求項3記載のボトム衣類。
【請求項5】
前記前身頃、前記後身頃および前記後裾周り形成部から選ばれる少なくとも1つは、左側部分を構成する生地と右側部分を構成する生地とを、前中心部分または後中心部分で連結して形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のボトム衣類。
【請求項6】
前記介在布部材の伸縮性は、前記前身頃および前記後身頃の伸縮性に対し、少なくとも裾周り方向に低伸縮であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のボトム衣類。
【請求項7】
衣類がショーツであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のボトム衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトム衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショーツ等のボトム衣類には、裾のずり上がり、食い込みおよびめくれ等の、裾部分の着くずれが生じやすいという問題があった。ショーツ等の裾がずり上がったり、食い込んだりすると、着用者に不快感を与え、また、ヒップラインのシルエットが悪くなる。ショーツの裾のずれ上がりを防止するための技術として、縫製し接合されるパターン間において、片方のパターンの辺長を短くすることで立体的造形機能を付与する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−52123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記技術によっても、ずれ上がりや食い込みの防止は十分とは言えず、裾部分の着くずれを防止するには不十分であった。そして、ずれ上がりや食い込みは気になるものではあるが、身体の動きにともなってこれらが生じることは仕方がないことであるとの認識が持たれていた。
【0005】
そこで、本発明は、着用感に優れるとともに裾部分の着くずれを効果的に防止することができるボトム衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のボトム衣類は、
前身頃、後身頃、マチ部および前記後身頃と前記マチ部との間に設けられた介在布部材を含むボトム衣類であって、
前記介在布部材は、後裾周り形成部と脇裾周り形成部とを含み、
前記後裾周り形成部の後中心側部分は前記マチ部と連結し、前記後裾周り形成部の脇側部分は、前記マチ部との連結部分から左右方向に延びており、
前記後裾周り形成部の後側の外周部と前記脇裾周り形成部の後側の外周部とは、前記後身頃の縁部と連結しており、
パターンの図において、前記後裾周り形成部の後側の外周部と前記脇裾周り形成部の後側の外周部とで形成される縁部の形状が、当該部分が連結される前記後身頃の縁部の形状よりも、カーブが緩くなっており、
着用者が脚を挿通するための裾周り部分は、前記前身頃の後側幅方向両側外周部、前記マチ部の幅方向両側外周部、前記後裾周り形成部の脇側部分の前側の外周部および前記脇裾周り形成部の前側の外周部がこの順に隣り合うように、前記前身頃、前記マチ部、前記後裾周り形成部および前記脇裾周り形成部を連結して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着用感に優れるとともに裾部分の着くずれを効果的に防止することができるボトム衣類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のボトム衣類の一例である、第1の実施形態に係るショーツのパターンを示す図である。
図2図2(A)は、前記第1の実施形態に係るショーツの斜視図、図2(B)は、前記第1の実施形態に係るショーツを背面下方から見た斜視図、図2(C)は、前記第1の実施形態に係るショーツを側面方向から見た斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るショーツの変形例を、背面下方から見た斜視図である。
図4図4は、本発明のボトム衣類の一例である、第2の実施形態に係るショーツのパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のボトム衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1に、本発明のボトム衣類の第1の実施形態に係るショーツ100のパターンの図を示す。本実施形態のショーツ100は、前身頃101、後身頃102、マチ部103および介在布部材104を含むショーツである。介在布部材104は、後身頃102とマチ部103との間に設けられ、後裾周り形成部104Aと脇裾周り形成部104Bとを含む。後裾周り形成部104Aの後中心側部分はマチ部103と連結し、後裾周り形成部104Aの脇側部分は、マチ部103との連結部分から左右方向に延びている。そして、後裾周り形成部104Aの後側の外周部(e)と脇裾周り形成部104Bの後側の外周部(f)とは、後身頃102の縁部(g)と連結している。ここで、「前」「後」とは、前身頃側を前、後身頃側を後とした場合の前後方向をいう。また、「左」「右」とは、前側から見た左右でも、後側から見た左右でもよい。
【0011】
そして、パターンの図において、後裾周り形成部104Aの後側の外周部(e)と脇裾周り形成部104Bの後側の外周部(f)とで形成される縁部の形状は、当該部分が連結される後身頃102の縁部(g)の形状よりも、カーブが緩くなっている。このように、カーブ形状が異なる縁部同士を連結することによって、肌側と反対側へ立体的な膨らみを持たせている。
【0012】
また、前身頃101の後側幅方向両側外周部(a)、マチ部103の幅方向両側外周部(b)、後裾周り形成部104Aの脇側部分の前側の外周部(c)および脇裾周り形成部104Bの前側の外周部(d)がこの順に隣り合うように、前身頃101、マチ部103、後裾周り形成部104Aおよび脇裾周り形成部104Bを連結することにより、着用者が着用時に足を挿通するための裾周り部分が形成されている。
【0013】
図1に示すパターンを互いに連結すると、図2に示す本実施形態に係るショーツ100が形成される。図2(A)は斜視図、図2(B)は背面下方から見た斜視図、図2(C)は側面方向から見た斜視図である。図2(B)において、マチ部103から斜め上方に延びる二点鎖線Pは、通常のショーツにおける裾周りのライン(裾口)を示している。このように、後身頃102の縁部分よりも後裾周り形成部104Aおよび脇裾周り形成部104Bの後ろ側のカーブを緩くすることにより、背面側の裾部分を立体的に形成して臀溝下部へのフィット性を高めるとともに、後裾周り形成部104Aの脇側部分をマチ部103との連結部分から左右方向に延ばして形成して(図1および図2(B)の(c)の部分)、臀溝周辺の裾口を形成することによって、通常のショーツよりも低い位置から臀溝を覆うことによって、裾口部分のずれ上がりを抑制している
【0014】
図2(B)に示すように、後裾周り形成部104Aと脇裾周り形成部104Bとの連結部分は、着用時における太股の付け根の幅方向の中央を通り上下方向に延在する仮想線L上または仮想線Lよりも外側に位置していることが好ましい。臀部下部においては、例えば、足を上げ下ろしするといった動作にともなう皮膚の伸びが、太股の内側と外側とで異なる。皮膚の伸びが異なる部分でパーツを分けることにより、身体へのフィット性をより高くすることができる。
【0015】
さらに、後裾周り形成部104Aと脇裾周り形成部104Bとが対向する縁部同士は、重なり部分Sを有するように連結されていることが好ましい。図3に、本実施形態の変形例として、重なり部分Sを有するショーツ100Aを示す。図3は、ショーツ100Aを背面下方から見た斜視図である。この重なり部分Sは、着用時に臀溝を直交する方向に押圧することで裾のずり上がりを防止するが、前述のように裾周りでカーブ形状が異なる縁部同士を連結して肌側と反対側へ立体的な膨らみを持たせることで、重なり部分Sにおいて押圧し過ぎず、裾周り全体でバランス良く締め付けて裾のずり上がりを防止することができる。また、重なり部分Sだけで臀部下部を押す場合に着用者が感じやすかった当たり(違和感)を軽減することができ、着用感に優れた衣類とすることができる。
【0016】
重なり部分Sには、さらに補強処理が施されていることが、臀部下部の押圧によるフィット性の向上の点から好ましい。補強処理としては、例えば、千鳥縫い等の手法を用いた縫着処理、補強テープの取り付け処理、接着処理、または、これらを組み合わせた補強処理を用いることができる。一例としては、後裾周り形成部104Aと脇裾周り形成部104Bとを重ねた部分に、重なり部分Sと同幅のバイアステープを上から置き、各部材を合わせて縫着することで補強処理を施すことができる。
【0017】
本実施形態において、前身頃101および後身頃102の各部材に使用できる生地は、特に制限されないが、例えば、織物、編み物、不織布があげられる。さらに好ましくは、ポリウレタン等の弾性糸を含有する伸縮性を有する生地があげられる。
【0018】
介在布部材104の伸縮性は、前身頃101および後身頃102の伸縮性に対し、少なくとも裾周り方向に低伸縮であることが好ましい。これにより、臀部下部をより効果的に押圧することができ、フィット性を向上させることができる。
【0019】
介在布部材104に使用する素材は、伸縮性を有する素材であれば特に制限されないが、前身頃101および後身頃102よりも低伸縮であることが好ましく、例えば、ストレッチテープ、パワーネット、ストレッチレース、ツーウェイトリコット、ベア天竺等が挙げられる。また、フリーカット素材、その他の生地端始末不要なヘム素材、抜蝕加工を施した生地、丸編地等を用いても良い。
【0020】
なお、本発明においては、介在布部材104の後側の外周部(e)および(f)は、当該部分が連結される後身頃102の縁部(g)の形状よりも、カーブが緩くなっていればよいため、直線状に形成することもできる。このように、本発明では、後裾周り形成部104Aの外縁および脇裾周り形成部104Bの外縁を曲線状にしなくてもよいため、例えば、所定の幅を有するレーステープ、ストレッチレース等をそのまま使用できるなど、後裾周り形成部104Aおよび脇裾周り形成部104Bに使用できる素材のバリエーションが広がる。後裾周り形成部104Aおよび脇裾周り形成部104Bをレース素材で形成すると、ショーツ100のデザインを、より繊細で美しくすることができる。図1のパターン図では、裾周りを形成する外縁部(a)〜(d)を直線および曲線で示しているが、本発明はこれに限られず、例えば、レース素材の模様のパターン等により外縁部が凹凸形状を有していてもよい。
【0021】
本実施形態において、前身頃101、後身頃102および後裾周り形成部104Aの各部材は、左右一体で形成されているが、本発明はこれに限られず、これらのいずれかの部材またはこれらの部材全てが、左右が別部材で構成されていてもよい。すなわち、左側部分を構成する生地と右側部分を構成する生地とを、前中心部分または後中心部分で連結して前記各部材を形成することができる。左右の部材の連結は、縫着、接着等の方法を用いることができる。ただし、左右一体で形成することにより、左右の部材を接ぎ合わせる場合と比較して、身体へのフィット性が高くなり、肌触りもなめらかになるため、一体で形成することが好ましい。
【0022】
また、本実施形態において、後裾周り形成部104Aおよび脇裾周り形成部104Bは、別部材で構成されている。しかし、本発明はこれに限られず、例えば、後裾周り形成部104Aおよび脇裾周り形成部104Bを一体とした1部材の介在布部材104を用いてもよい。
【0023】
(第2の実施形態)
図4に、本発明のボトム衣類の第2の実施形態に係るショーツ200のパターンの図を示す。本実施形態のショーツ200は、第1の実施形態と同様のショートタイプのショーツであり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。本実施形態のショーツ200において、脇裾周り形成部204Bは、ショーツ100の脇裾周り形成部104B(図中破線で表示)とカーブの形状が異なっており、後身頃102縁部の形状との曲率差がより大きくなっている。
【0024】
このように、パターンの図において、後裾周り形成部204Aの後側の外周部と脇裾周り形成部204Bの後側の外周部とで形成される縁部の形状のカーブは、ショーツ100に比べてより緩くなっているので、ショーツ200では、パターンの連結により形成される肌側と反対側への立体的な膨らみを、より大きくすることができる。
【0025】
このように形成することにより、重なり部分Sでの押圧を大きくした場合であっても、裾周り全体でバランス良く締め付けて裾のずり上がりを防止するとともに、着用時の違和感を軽減することができ、着用感に優れた衣類とすることができる。
【0026】
以上、実施の形態の具体例として、ショーツをあげて本発明を説明したが、本発明のボトム衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、ガードル、ボディースーツ等のファンデーション衣類や、水着、レオタード、スポーツ衣類、アウターなど、その他各種の衣類に適用できる。また、本発明は、デイリー用のショーツのみではなく、例えば、生理用ショーツ、軽失禁防止用ショーツにも適用できる。
【符号の説明】
【0027】
100、100A、200 ショーツ
101 前身頃
102 後身頃
103 マチ部
104、204 介在布部材
104A、204A 後裾周り形成部
104B、204B 脇裾周り形成部
(a) 前身頃の後側幅方向両側外周部
(b) マチ部の幅方向両側外周部
(c) 後裾周り形成部の脇側部分の前側の外周部
(d) 脇裾周り形成部の前側の外周部
(e) 後裾周り形成部の後側の外周部
(f) 脇裾周り形成部の後側の外周部
(g) 後身頃の縁部

S 重なり部分
図1
図2
図3
図4