特許第6268470号(P6268470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6268470オレフィンメタセシス触媒、及びそれを用いたオレフィンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268470
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】オレフィンメタセシス触媒、及びそれを用いたオレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20180122BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20180122BHJP
   C07C 13/28 20060101ALI20180122BHJP
   C07C 13/20 20060101ALI20180122BHJP
   C07C 13/263 20060101ALI20180122BHJP
   C07C 2/34 20060101ALI20180122BHJP
   C07C 4/08 20060101ALI20180122BHJP
   C07C 69/74 20060101ALI20180122BHJP
   C07C 67/475 20060101ALI20180122BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180122BHJP
【FI】
   B01J31/22 Z
   C07C11/02
   C07C13/28
   C07C13/20
   C07C13/263
   C07C2/34
   C07C4/08
   C07C69/74 A
   C07C67/475
   !C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-15373(P2014-15373)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-139762(P2015-139762A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】大洞 康嗣
(72)【発明者】
【氏名】千綿 仁大郎
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 一郎
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241173(JP,A)
【文献】 特表2013−515770(JP,A)
【文献】 特開2002−224574(JP,A)
【文献】 K.Asakura, et al.,Spectroscopic evidence for a surface Nb carbene in a new SiO2-attached Nb catalyst active for propene metathesis,Journal of Molecular Catalysis,1989年,Volume 55,Pages 159-169
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C07C 2/34
C07C 4/08
C07C 11/02
C07C 13/20
C07C 13/263
C07C 13/28
C07C 67/475
C07C 69/74
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
価数が4価以下の低原子価ニオブを含み、かつ、ニオブカルベン錯体であるオレフィンメタセシス触媒。
【請求項2】
アルコキシ基を配位子として有するニオブカルベン錯体である請求項1記載のオレフィンメタセシス触媒。
【請求項3】
価数が4価以下の低原子価ニオブを含み、かつ、ニオブカルベン錯体であるオレフィンメタセシス触媒の調製方法であって、
下記式(1)
NbX1m (1)
(式中、X1はアルコキシ基又はハロゲン原子を示す。mは3又は5を示す。m個のX1は同一でもよく異なっていてもよい)
で表されるニオブ化合物と、亜鉛と、カルベン形成性化合物とを反応させることを特徴とするオレフィンメタセシス触媒の調製方法
【請求項4】
カルベン形成性化合物が、下記式(3)
bCHCl2 (3)
(式中、Rbは置換基を有していてもよい芳香族環式基を示す)
で表される化合物である請求項3記載のオレフィンメタセシス触媒の調製方法
【請求項5】
同種又は異種のオレフィン同士の反応により異なる構造のオレフィンを生成させるメタセシス反応、又は分子内に少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する鎖状オレフィンから環状オレフィンを生成させる分子内メタセシス反応に用いる請求項1又は2に記載のオレフィンメタセシス触媒。
【請求項6】
同種又は異種のオレフィン同士の反応により異なる構造のオレフィンを生成させるメタセシス反応、又は分子内に少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する鎖状オレフィンから環状オレフィンを生成させる分子内メタセシス反応によりオレフィンを製造する方法であって、請求項1、2、及び5の何れかの項に記載のオレフィンメタセシス触媒を用いることを特徴とするオレフィンの製造方法。
【請求項7】
反応溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いる請求項6記載のオレフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低原子価ニオブを含む新規なオレフィンメタセシス触媒、及び該触媒を用いたオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンの製造方法としてオレフィンメタセシス反応を利用する方法が知られている。この方法によれば、同種又は異種のオレフィン同士を反応させることにより、異なる構造を有するオレフィンを製造することができる。また、分子内に2つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィンを分子内で閉環させることにより、環状オレフィンを製造することができる。
【0003】
オレフィンメタセシス触媒としては、ルテニウムのカルベン錯体を基本とし、ベンジリデンカルベン配位子と2つのトリシクロヘキシルホスフィン配位子を持つ第1世代グラブス(Grubbs)触媒、前記第1世代グラブス触媒の2つのトリシクロヘキシルホスフィン配位子のうち一方をN−ヘテロサイクリックカルベンに置き換えた構造を有する第2世代グラブス触媒、前記第2世代グラブス触媒のベンジリデンカルベン配位子をo−イソプロピルオキシベンジリデンカルベン配位子とし、トリシクロヘキシルホスフィン配位子の代わりに前記イソプロピルオキシ基の酸素原子がルテニウムに配位するようにした第2世代ホベイダ・グラブス(Hoveyda−Grubbs)触媒等が提案されている。そして、近年、さらに新しいグラブス触媒が開発されている(非特許文献1〜4)。
【0004】
しかしながら、グラブス触媒は、中心金属が高価なルテニウムであり、配位子が複雑な構造を有しているため、合成に手間や費用がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wakamatsu, H.; Blechert, S. Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 794
【非特許文献2】Wakamatsu, H.; Blechert, S. Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 2403
【非特許文献3】Love, J. A.; Morgan, J. P.; Trnka, T. M.; Grubbs, R. H. Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 4035
【非特許文献4】Grela, K.; Harutyunyan, S.; Michrowska, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 4038
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、入手しやすい原料から簡易に調製できる新規なオレフィンメタセシス触媒と、該触媒を用いたオレフィンの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、優れた活性を有する新規なオレフィンメタセシス触媒と、該触媒を用いたオレフィンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、低原子価ニオブを含む化合物がオレフィンメタセシス触媒として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、低原子価ニオブを含むオレフィンメタセシス触媒を提供する。
【0009】
前記触媒は、アルコキシ基を配位子として有するニオブカルベン錯体であってもよい。
【0010】
また、前記触媒は、下記式(1)
NbX1m (1)
(式中、X1はアルコキシ基又はハロゲン原子を示す。mは3又は5を示す。m個のX1は同一でもよく異なっていてもよい)
で表されるニオブ化合物と、亜鉛と、カルベン形成性化合物とから調製されるものであってもよい。
【0011】
前記カルベン形成性化合物は、下記式(3)
bCHCl2 (3)
(式中、Rbは置換基を有していてもよい芳香族環式基を示す)
で表される化合物であってもよい。
【0012】
また、前記触媒は、同種又は異種のオレフィン同士の反応により異なる構造のオレフィンを生成させるメタセシス反応、又は分子内に少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する鎖状オレフィンから環状オレフィンを生成させる分子内メタセシス反応に用いる触媒であってもよい。
【0013】
また、本発明は、同種又は異種のオレフィン同士の反応により異なる構造のオレフィンを生成させるメタセシス反応、又は分子内に少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する鎖状オレフィンから環状オレフィンを生成させる分子内メタセシス反応によりオレフィンを製造する方法であって、前記記載のオレフィンメタセシス触媒を用いることを特徴とするオレフィンの製造方法を提供する。
【0014】
このオレフィンの製造方法において、反応溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ニオブ原子を含む新規なオレフィンメタセシス触媒が提供される。このオレフィンメタセシス触媒は、入手容易な原料から簡易な調製法により製造できる。また、この触媒はオレフィンメタセシス反応に対し優れた活性を有する。そのため、本発明の触媒を用いることにより、オレフィンから目的とするオレフィンを工業的に効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[オレフィンメタセシス触媒]
本発明のオレフィンメタセシス触媒は、低原子価ニオブを含む化合物である。低原子価ニオブとは、価数が4価以下(例えば、4価又は3価)のニオブを意味する。
【0017】
本発明のオレフィンメタセシス触媒には、ニオブカルベン錯体が含まれる。ニオブカルベン錯体としては、例えば、アルコキシ基を配位子として有するニオブカルベン錯体が挙げられる。前記アルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシ基の中でも、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
【0018】
前記カルベンとしては、置換基としてみた場合、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ベンジリデン基、アルコキシカルボニルメチレン基(メトキシカルボニルメチレン基、エトキシカルボニルメチレン基等のC1-6アルコキシ−カルボニルメチレン基など)などが挙げられる。
【0019】
本発明のオレフィンメタセシス触媒は、例えば、前記式(1)で表されるニオブ化合物と、亜鉛(Zn)と、カルベン形成性化合物とから調製することができる。
【0020】
前記式(1)中、X1はアルコキシ基又はハロゲン原子を示す。mは3又は5を示す。m個のX1は同一でもよく異なっていてもよい。式(1)で表される化合物は、エーテル(1,2−ジメトキシエタン等)などを配位子として有していてもよい。
【0021】
1におけるアルコキシ基としては、前記と同様の基が挙げられる。中でも、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0022】
式(1)で表されるニオブ化合物の代表的な例として、例えば、ニオブ(V)ペンタメトキシド、ニオブ(V)ペンタエトキシド(=ペンタエトキシニオブ)、ニオブ(V)ペンタブトキシド等のニオブ(V)ペンタC1-4アルコキシド;五塩化ニオブ、五臭化ニオブ等の五ハロゲン化ニオブ;ニオブ(III)トリメトキシド、ニオブ(III)トリエトキシド、ニオブ(III)トリブトキシド等のニオブ(III)トリC1-4アルコキシド;三塩化ニオブ、三臭化ニオブ等の三ハロゲン化ニオブ;NbCl3(DME)などが挙げられる。なお、DMEは1,2−ジメトキシエタンである。
【0023】
前記カルベン形成性化合物としては、カルベン錯体を形成可能な化合物であればよく、金属とカルベン錯体を形成可能な公知の化合物を用いることができる。例えば、カルベン形成性化合物として、前記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
式(3)中、Rbは置換基を有していてもよい芳香族環式基を示す。前記芳香族環式基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。芳香族環式基が有していてもよい置換基として、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等のC1-4アルキル基;トリフルオロメチル基等のC1-4ハロゲン化アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基等のC1-4アルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のC1-4アルコキシ−カルボニル基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のC1-10アシル基;ヒドロキシル基;カルボキシ基;シアノ基;ニトロ基などが挙げられる。
【0025】
式(3)で表される化合物の代表的な例として、例えば、α,α−ジクロロトルエン(=ベンザルクロリド)、p−メチル−α,α−ジクロロトルエン、p−フルオロ−α,α−ジクロロトルエンなどが挙げられる。
【0026】
カルベン形成性化合物として、式(3)で表される化合物のほか、ジクロロメタン、ジクロロ酢酸エステル(ジクロロ酢酸メチル、ジクロロ酢酸エチル等)などを用いることもできる。
【0027】
本発明のオレフィンメタセシス触媒の調製の際、前記式(1)で表されるニオブ化合物と、亜鉛(Zn)と、カルベン形成性化合物に加えて、下記式(2)で表される化合物を用いてもよい。式(2)で表される化合物を用いることにより、オレフィンメタセシス触媒をより円滑に速やかに形成することができる。式(2)で表される化合物は、本発明のオレフィンメタセシス触媒を用いる反応において、反応活性剤としての機能を有する。
a3SiX2 (2)
(式中、Raは炭化水素基、X2はハロゲン原子を示す。3個のRaは同一でもよく異なっていてもよい)
【0028】
aにおける炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基(C1-10アルキル基等);フェニル基、ナフチル基等のアリール基(C6-14アリール基等);ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基(C7-15アラルキル基等)などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基、特に、メチル基、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。X2におけるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0029】
式(2)で表される化合物の代表的な例として、例えば、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、t−ブチルジメチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、t−ブチルジフェニルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリエチルシリルブロミド、t−ブチルジメチルシリルブロミド、トリイソプロピルシリルブロミド、t−ブチルジフェニルシリルブロミドなどが挙げられる。
【0030】
式(1)で表されるニオブ化合物と亜鉛(Zn)とカルベン形成性化合物と、必要に応じて用いられる式(2)で表される化合物の反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグライム(=ジエチレングリコールジメチルエーテル)、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒が好ましい。これらの中でも、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグライム(=ジエチレングリコールジメチルエーテル)等のエーテルが特に好ましい。
【0031】
式(2)で表される化合物の使用量は、式(1)で表されるニオブ化合物1モルに対して、例えば0〜20モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは2〜10モルである。
【0032】
亜鉛(Zn)の使用量は、式(1)で表されるニオブ化合物1モルに対して、例えば1〜100モル、好ましくは5〜30モルである。
【0033】
カルベン形成性化合物[例えば、式(3)で表される化合物]の使用量は、式(1)で表されるニオブ化合物1モルに対して、例えば1〜20モル、好ましくは2〜10モルである。
【0034】
触媒調製時の温度は、例えば、0〜150℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは30〜80℃である。
【0035】
本発明のオレフィンメタセシス触媒は、in situで調製可能である。
【0036】
[オレフィンの製造方法]
本発明のオレフィンメタセシス触媒は、種々のオレフィンメタセシス、例えば、ホモメタセシス、交差メタセシス(クロスメタセシス)、閉環メタセシス、開環メタセシスに使用できる。
【0037】
前記ホモメタセシスでは、同種のオレフィン同士の反応により異なる構造のオレフィンが生成する。例えば、式:A−CH=CH2 (式中、Aは有機基を示す)で表される化合物から、式:A−CH=CH−A (式中、Aは前記に同じ)で表される化合物が得られる。なお、原料オレフィンの末端は、前記ビニル基のほか、クロチル基、1−ブテニル基等、Aの隣接位に炭素−炭素二重結合を有する基(炭素数2〜4程度のアルケニル基)であってもよい。
【0038】
前記交差メタセシスでは、異種のオレフィン同士の反応により異なる構造のオレフィンが生成する。例えば、式:A−CH=CH2 (式中、Aは有機基を示す)と、式:B−CH=CH2 (式中、Bは有機基を示す)で表される化合物から、式:A−CH=CH−B (式中、A、Bは前記に同じ)で表される化合物が得られる。なお、2つの原料オレフィンの末端は、前記ビニル基のほか、クロチル基、1−ブテニル基等、A、Bの隣接位に炭素−炭素二重結合を有する基(炭素数2〜4程度のアルケニル基)であってもよい。
【0039】
前記各式において、A、Bにおける有機基としては、炭化水素基、複素環式基、これらが2以上結合した基、1若しくは2以上の前記炭化水素基及び/又は前記複素環式基と、1若しくは2以上の連結基とで構成される基、又はこれらの基に置換基が結合した基などが挙げられる。
【0040】
前記炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1〜30(好ましくは、炭素数1〜20)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の炭素数3〜12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等の炭素数3〜12のシクロアルケニル基;ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素数4〜15の橋架け環式基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18のアリール基などが挙げられる。
【0041】
前記複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環および非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環として、例えばヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環などの3員環、オキセタン環などの4員環、フラン、テトラヒドロフラン、オオキサゾール、γ―ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]−ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えばピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。
【0042】
前記連結基としては、例えば、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カルボニル基(−CO−)、アミノ結合(−NRz−)、これらが2個以上結合した基などが挙げられる。前記Rzは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアシル基等の置換基を示す。
【0043】
前記1若しくは2以上の前記炭化水素基及び/又は前記複素環式基と、1若しくは2以上の連結基とで構成される基としては、例えば、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-6アルコキシ基など)、アルコキシアルキル基(メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル基等のC1-6アルコキシ−C1-6アルキル基など)、アリールオキシ基(フェノキシ、ナフトキシ、トリルオキシ基等のC6-14アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基等のC7-15アラルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基など)、アルキルチオアルキル基(メチルチオメチル、エチルチオメチル、メチルチオエチル基等のC1-6アルキルチオ−C1-6アルキル基など)、アリールチオ基(フェニルチオ、ナフチルチオ基等のC6-14アリールオキシ基など)、アラルキルチオ基(ベンジルチオ基等のC7-15アラルキルチオ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ、ジエチルアミノ基等のジ−C1-6アルキルアミノ基など)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ基等のC1-12アシルアミノ基など)、アルコキシカルボニルアミノ基(メトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ基等のC1-6アルコキシ−カルボニルアミノ基など)、アリールオキシカルボニルアミノ基(フェノキシカルボニルアミノ基等のC6-14アリールオキシ−カルボニルアミノ基など)、アラルキルオキシカルボニルアミノ基(ベンジルオキシカルボニルアミノ基等のC7-15アラルキルオキシ−カルボニルアミノ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基等のC7-15アラルキルオキシ−カルボニル基など)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基等のC1-14アシル基)、アシルオキシ基(アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ基等のC1-14アシル基)などが挙げられる。
【0044】
前記「又はこれらの基に置換基が結合した基」における置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素原子等)、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ジアルキルアミノ基(ジC1-6アルキルアミノ基等)、アシルアミノ基(C1-6アシルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0045】
前記閉環メタセシスでは、分子内に少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する鎖状オレフィンから環状オレフィンが生成する。例えば、下記式(4)
【化1】
(式中、Rx、Ryは、同一又は異なって、水素原子;炭化水素基、複素環式基、これらが2以上結合した基;1若しくは2以上の前記炭化水素基及び/又は前記複素環式基と、1若しくは2以上の連結基とで構成される基;又はこれらの基に置換基が結合した基;ハロゲン原子;カルボキシル基;ヒドロキシル基;メルカプト基;ジアルキルアミノ基;アシルアミノ基;シアノ基;又はニトロ基を示す。nは1〜20を示す。nが2以上の場合、n個のRx、Ryは、それぞれ、同一でもよく異なっていてもよい)
で表される化合物から、下記式(5)
【化2】
(式中、Rx、Ry、nは前記に同じ)
で表される化合物が得られる。
【0046】
x、Ryにおける炭化水素基、複素環式基、これらが2以上結合した基;1若しくは2以上の前記炭化水素基及び/又は前記複素環式基と、1若しくは2以上の連結基とで構成される基;又はこれらの基に置換基が結合した基としては、前記A、Bにおいてそれぞれ例示した基と同様のものが挙げられる。Rx、Ryにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。Rx、Ryにおけるジアルキルアミノ基としては、ジC1-6アルキルアミノ基等などが挙げられ、アシルアミノ基としては、C1-10アシルアミノ基等が挙げられる。
【0047】
本発明のオレフィンメタセシス触媒を用いてオレフィンを製造する際の反応温度としては、例えば0〜150℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは30〜80℃である。
【0048】
反応溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグライム(=ジエチレングリコールジメチルエーテル)、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などが好ましい。これらの中でも、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグライム(=ジエチレングリコールジメチルエーテル)等のエーテルが特に好ましい。
【0049】
前記本発明のオレフィンメタセシス触媒の使用量は、原料として用いるオレフィン(基質)1モルに対して、例えば0.005〜2モル、好ましくは0.01〜1.5モルである。前記ホモメタセシス、交差メタセシスの場合は、オレフィンメタセシス触媒が少量でも反応が円滑に進行するため、前記オレフィンメタセシス触媒の使用量は、原料として用いるオレフィン(基質)1モルに対して、より好ましくは0.01〜0.5モルである。一方、前記閉環メタセシスの場合は、前記オレフィンメタセシス触媒の使用量は、原料として用いるオレフィン(基質)1モルに対して、より好ましくは0.5〜1.5モルである。
【0050】
反応は、窒素、アルゴン等の不活性気体の雰囲気下で行うのが好ましい。
【0051】
反応終了後、反応生成物を、液性調整、濾過、抽出、濃縮、蒸留、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の精製手段に付すことにより、目的とするオレフィンを単離することができる。
【0052】
こうして得られるオレフィンは、精密化学品や機能性ポリマー等の種々の化学品の原料等として利用できる。
【0053】
本発明のオレフィンメタセシス触媒は、以下のような機構で形成されると考えられる。すなわち、まず、式(1)で表されるニオブ化合物が亜鉛(Zn)と反応して、低原子価ニオブ[例えば、Nb(EtO)3]が生成する。なお、式(2)で表される化合物を用いる場合には、式(1)で表されるニオブ化合物[例えば、Nb(EtO)5](Etはエチル基)が式(2)で表される化合物(例えば、トリメチルシリルクロリド)と反応して、式(1)中のX1の少なくとも1つ(例えば、エトキシ基等のアルコキシ基)がX2(ハロゲン原子)に変換され、続いて亜鉛(Zn)の作用により、低原子価ニオブ[例えば、Nb(EtO)3]が生成する。そして、この低原子価ニオブが、亜鉛(Zn)及びカルベン形成性化合物(例えば、α,α−ジクロロトルエン)と反応して、Nbカルベン錯体[例えば、PhC=Nb(EtO)3](Phはフェニル基)が形成される。
【0054】
本発明のオレフィンメタセシス触媒を用いたオレフィンメタセシスの反応機構は以下のように考えられる。下記式において、「=[Nb]」はNbカルベン錯体を意味する。R1、R2は有機基を示す。
【0055】
【化3】
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0057】
実施例1
シュレンク管に亜鉛[亜鉛粉末(粒径:75〜150μm)、193mg、3mmol]、撹拌子を加え、内部をアルゴン置換した後、溶媒であるテトラヒドロフラン(超脱水、安定剤不含、2mL)、ペンタエトキシニオブ[Nb(OEt)5](0.0502mL、0.2mmol)、トリメチルシリルクロリド(0.127mL、1mmol)を順次加え、スターラーにより室温で10分間撹拌した。このとき、溶液の色が無色透明から黒色に変化した。次いで、ベンザルクロリド(=α,α−ジクロロトルエン)(0.129mL、1mmol)を加え、再度室温で10分間撹拌し、その後、基質である1−ヘキセン(0.250mL、2mmol)を加えた。シュレンク管を60℃のオイルバスに投入し、スターラーで撹拌し、反応を開始させた。2時間後、シュレンク管を引き上げ、空冷により反応を停止させた。収率はガスクロマトグラフィーでの内部標準法(内部標準物質:トリデカン)により求めた。
その結果、5−デセン[n−Bu−CH=CH−n−Bu(n−Bu:n−ブチル基)]が収率56%(1−ヘキセン基準)で得られた。1−ヘキセンの転化率は63%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率39%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0058】
実施例2
亜鉛を6mmol、テトラヒドロフランを3mL、ペンタエトキシニオブを0.3mmol、トリメチルシリルクロリドを3mmol、ベンザルクロリドを1.5mmol、1−ヘキセンを3mmol用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、5−デセン[n−Bu−CH=CH−n−Bu(n−Bu:n−ブチル基)]が収率45%(1−ヘキセン基準)で得られた。1−ヘキセンの転化率は68%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率49%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0059】
実施例3
ベンザルクロリドの代わりに、4−フルオロベンザルクロリドを1mmol用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、5−デセン[n−Bu−CH=CH−n−Bu(n−Bu:n−ブチル基)]が収率20%(1−ヘキセン基準)で得られた。1−ヘキセンの転化率は56%であった。また、4,4′−ジフルオロスチルベン[4−F−Ph−CH=CH−4−F−Ph(4−F−Ph:4−フルオロフェニル基)]が収率39%(4−フルオロベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0060】
実施例4
テトラヒドロフランの代わりに、1,4−ジオキサンを2mL用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、5−デセン[n−Bu−CH=CH−n−Bu(n−Bu:n−ブチル基)]が収率36%(1−ヘキセン基準)で得られた。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率42%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0061】
実施例5
テトラヒドロフランの代わりに、ジグライムを2mL用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、5−デセン[n−Bu−CH=CH−n−Bu(n−Bu:n−ブチル基)]が収率27%(1−ヘキセン基準)で得られた。1−ヘキセンの転化率は26%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率26%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0062】
実施例6
反応温度を40℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、5−デセン[n−Bu−CH=CH−n−Bu(n−Bu:n−ブチル基)]が収率27%(1−ヘキセン基準)で得られた。1−ヘキセンの転化率は48%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率39%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0063】
実施例7
ペンタエトキシニオブの代わりに、五塩化ニオブ(NbCl5)を0.2mmol用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、5−デセン[n−Bu−CH=CH−n−Bu(n−Bu:n−ブチル基)]が収率47%(1−ヘキセン基準)で得られた。1−ヘキセンの転化率は66%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率54%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0064】
実施例8
ペンタエトキシニオブの代わりに、三塩化ニオブ(1,2−ジメトキシエタン)[NbCl3(DME)]を0.2mmol用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、5−デセン[n−Bu−CH=CH−n−Bu(n−Bu:n−ブチル基)]が収率55%(1−ヘキセン基準)で得られた。1−ヘキセンの転化率は71%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率49%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0065】
実施例9
1−ヘキセンの代わりに、基質として1−オクテンを2mmol用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、7−テトラデセン[n−Hex−CH=CH−n−Hex(n−Hex:n−ヘキシル基)]が収率33%(1−オクテン基準)で得られた。1−オクテンの転化率は63%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率46%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0066】
実施例10
1−ヘキセンの代わりに、基質として1−デセンを2mmol用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、9−オクタデセン[n−Oct−CH=CH−n−Oct(n−Oct:n−オクチル基)]が収率29%(1−デセン基準)で得られた。1−デセンの転化率は61%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率45%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0067】
実施例11
1−ヘキセンの代わりに、基質として4−メチルスチレンを2mmol用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、4,4′−ジメチルスチルベン[4−Me−Ph−CH=CH−4−Me−Ph(4−Me−Ph:4−メチルフェニル基)]が収率10%(4−メチルスチレン基準)で得られた。4−メチルスチレンの転化率は69%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率27%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0068】
実施例12
1−ヘキセンの代わりに、基質として4−ビニル−1−シクロヘキセンを2mmol用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、1,2−ビス(3−シクロヘキセニル)エテンが収率13%(4−ビニル−1−シクロヘキセン基準)で得られた。4−ビニル−1−シクロヘキセンの転化率は37%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率40%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0069】
実施例13
シュレンク管に亜鉛[亜鉛粉末(粒径:75〜150μm)、193mg、3mmol]、撹拌子を加え、内部をアルゴン置換した後、溶媒であるテトラヒドロフラン(超脱水、安定剤不含、2mL)、ペンタエトキシニオブ[Nb(OEt)5](0.0502mL、0.2mmol)、トリメチルシリルクロリド(0.127mL、1mmol)を順次加え、スターラーにより室温で10分間撹拌した。このとき、溶液の色が無色透明から黒色に変化した。次いで、ベンザルクロリド(=α,α−ジクロロトルエン)(0.129mL、1mmol)を加え、再度室温で10分間撹拌し、その後、基質である1,7−オクタジエン(0.2mmol)を加えた。シュレンク管を60℃のオイルバスに投入し、スターラーで撹拌し、反応を開始させた。2時間後、シュレンク管を引き上げ、空冷により反応を停止させた。収率はガスクロマトグラフィーでの内部標準法(内部標準物質:トリデカン)により求めた。
その結果、シクロヘキセンが収率11%(1,7−オクタジエン基準)で得られた。1,7−オクタジエンの転化率は92%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率41%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0070】
実施例14
1,7−オクタジエンの代わりに、基質として1,9−デカジエンを0.2mmol用いた以外は、実施例13と同様の操作を行った。
その結果、シクロオクテンが収率9%(1,9−デカジエン基準)で得られた。1,9−デカジエンの転化率は92%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率44%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0071】
実施例15
1,7−オクタジエンの代わりに、基質としてジアリルマロン酸ジエチル(0.048mL、0.2mmol)を用いた以外は、実施例13と同様の操作を行った。
その結果、3−シクロペンテン−1,1−ジカルボン酸ジエチルが収率26%(ジアリルマロン酸ジエチル基準)で得られた。ジアリルマロン酸ジエチルの転化率は79%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率43%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0072】
実施例16
テトラヒドロフランの使用量を3mLとした以外は、実施例15と同様の操作を行った。
その結果、3−シクロペンテン−1,1−ジカルボン酸ジエチルが収率38%(ジアリルマロン酸ジエチル基準)で得られた。ジアリルマロン酸ジエチルの転化率は86%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率48%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0073】
実施例17
シュレンク管に亜鉛[亜鉛粉末(粒径:75〜150μm)、96mg、1.5mmol]、撹拌子を加え、内部をアルゴン置換した後、溶媒であるテトラヒドロフラン(超脱水、安定剤不含、2mL)、ペンタエトキシニオブ[Nb(OEt)5](0.0251mL、0.1mmol)、トリメチルシリルクロリド(0.064mL、0.5mmol)を順次加え、スターラーにより室温で10分間撹拌した。このとき、溶液の色が無色透明から黒色に変化した。次いで、ベンザルクロリド(=α,α−ジクロロトルエン)(0.065mL、0.5mmol)を加え、再度室温で10分間撹拌し、その後、基質であるジアリルマロン酸ジエチル(0.240mL、1mmol)を加えた。シュレンク管を60℃のオイルバスに投入し、スターラーで撹拌し、反応を開始させた。2時間後、シュレンク管を引き上げ、空冷により反応を停止させた。収率はガスクロマトグラフィーでの内部標準法(内部標準物質:トリデカン)により求めた。
その結果、3−シクロペンテン−1,1−ジカルボン酸ジエチルが収率12%(ジアリルマロン酸ジエチル基準)で得られた。ジアリルマロン酸ジエチルの転化率は53%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率41%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0074】
実施例18
テトラヒドロフランの使用量を3mLとした以外は、実施例17と同様の操作を行った。
その結果、3−シクロペンテン−1,1−ジカルボン酸ジエチルが収率13%(ジアリルマロン酸ジエチル基準)で得られた。ジアリルマロン酸ジエチルの転化率は54%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率38%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。
【0075】
実施例19
トリメチルシリルクロリドを用いなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、5−デセン[n−Bu−CH=CH−n−Bu(n−Bu:n−ブチル基)]が収率11%(1−ヘキセン基準)で得られた。1−ヘキセンの転化率は38%であった。また、スチルベン[Ph−CH=CH−Ph(Ph:フェニル基)]が収率56%(ベンザルクロリド基準)で生成していた。