(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6268507
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】やに入りはんだ用フラックス、フラックスコートはんだ用フラックス、やに入りはんだ、及びフラックスコートはんだ
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20180122BHJP
B23K 35/14 20060101ALI20180122BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20180122BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20180122BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/14 B
!B23K35/26 310A
!C22C13/00
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-112459(P2017-112459)
(22)【出願日】2017年6月7日
【審査請求日】2017年6月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 基泰
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】久木 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 浩由
【審査官】
川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−188761(JP,A)
【文献】
特開2015−131336(JP,A)
【文献】
特開平09−253884(JP,A)
【文献】
特開2008−030103(JP,A)
【文献】
特開2015−039718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 13/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン系樹脂、及び
活性剤を含有し、
さらに、重量平均分子量が8000〜100000である、アクリルポリマー及びビニルエーテルポリマーから選択される少なくとも1種以上を、フラックス全体の質量に対して0.1〜3質量%含有する、
ことを特徴とするやに入りはんだ用フラックス。
【請求項2】
ロジン系樹脂、及び
活性剤を含有し、
さらに、重量平均分子量が8000〜100000である、アクリルポリマー及びビニルエーテルポリマーから選択される少なくとも1種以上を、フラックス全体の質量に対して0.1〜3質量%含有する、
ことを特徴とするフラックスコートはんだ用フラックス。
【請求項3】
前記活性剤をフラックス全体の質量に対して0.1〜30質量%含有し、
前記活性剤として、フラックス全体の質量に対して、有機酸系活性剤0〜20質量%、アミン系活性剤0〜10質量%、又はアミンハロゲン化水素酸塩系活性剤及び有機ハロゲン化合物系活性剤を合計で0〜20質量%、から選択される1種以上を含有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
フラックス全体の質量に対して、0〜13質量%の溶剤、0〜10質量%のリン酸エステル、0〜5質量%のシリコーン、及び0〜5質量%の界面活性剤を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフラックス。
【請求項5】
請求項1に記載のフラックスを含有することを特徴とするやに入りはんだ。
【請求項6】
請求項2に記載のフラックスが被覆されてなることを特徴とするフラックスコートはんだ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のフラックスのやに入りはんだ用フラックス又はフラックスコートはんだ用フラックスとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、やに入りはんだ用フラックス、フラックスコートはんだ用フラックス、やに入りはんだ、及びフラックスコートはんだに関する。
【背景技術】
【0002】
やに入りはんだは、中空部を有するはんだ合金の中空部に固形又は高粘度液体のフラックスを充填した材料である。フラックスコートはんだは、はんだ合金の外表面をフラックスで被覆した材料である。やに入りはんだ又はフラックスコートはんだにおけるフラックスは、はんだ付け時に、はんだとはんだ付け対象の金属表面とに存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする。フラックスを使用することで、はんだとはんだ付け対象の金属表面との間に金属間化合物が形成され、強固な接合が得られる。
【0003】
やに入りはんだ又はフラックスコートはんだを用いて部材の接合を行う際、フラックスの飛散や、それに伴うはんだの飛散が発生することがある。フラックス及びはんだの飛散は、接合部材の電極間のショート、及び基板の汚染につながるため、フラックス及びはんだの飛散を防止することが求められる。
【0004】
また、フラックスを含むやに入りはんだ又はフラックスコートはんだについては、加工性の点から、フラックスは常温(25℃)で固形又は高粘度液体の状態であることが求められる。フラックスが低粘度液体の状態であると、やに入りはんだ又はフラックスコートはんだの加工(任意の寸法及び形状への加工)が困難になってしまう。
【0005】
従来のやに入りはんだ用フラックスとしては、例えば、はんだ付け時の加熱によって溶融フラックス内に多数の極微小気泡を発生させて複数の微小ガス抜きを行う集中的ガス放出防止剤を含有するフラックスが提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載のフラックスにおいては、集中的ガス放出防止剤として酸変性ロジンや活性剤の一種である有機酸類を用いており、これにより微小なガス成分を速やかに排出してフラックスの飛散につながる体積の大きなガス成分が発生することを防止している。しかし、特許文献1に記載のフラックスにおいては、フラックスの主成分であるロジン系樹脂及び活性剤が特定の成分に限定されるため、はんだ合金の種類や接合の条件に合わせて、ロジン系樹脂、活性剤などのフラックスの成分を最適化することが制限されてしまう。
【0006】
また、フラックスの飛散を防止するものとしては、例えば、ロジン系樹脂、活性剤、溶剤、及び溶解度パラメータ(SP値)が9.5以下でありかつ重量平均分子量が10万以上のものである消泡剤を含有するフラックスと、はんだ粉末とを含有するはんだ組成物が提示されている(特許文献2)。しかし、特許文献2は、特定の重量平均分子量を有する消泡剤を使用することにより、フラックスとはんだ粉末とが混合されてなるはんだ組成物(ソルダペースト)におけるフラックスの飛散を防止するものであり、フラックスとはんだとが混合されずに別個に存在するやに入りはんだ又はフラックスコートはんだにおけるフラックスの飛散を防止するものではない。また、特許文献2におけるフラックスは溶剤を含有していて低粘度液体の状態であるため、このようなフラックスを含むやに入りはんだ又はフラックスコートはんだの加工は困難である。
【0007】
さらに、多価アルコールと炭素6員環構造を有する環状酸無水物を開環ハーフエステル化反応させることにより得られる樹脂、及び特定のケイ素化合物を含有するはんだ付け用フラックス組成物において、レベリング剤、消泡剤、溶剤を配合することが提示されている(特許文献3)。しかし、特許文献3は、フラックスとはんだ粉末とが混合されてなるはんだペーストに関する技術であり、フラックスとはんだとが混合されずに別個に存在するやに入りはんだ又はフラックスコートはんだに関するものではなく、また、レベリング剤、消泡剤を使用することによりフラックスの飛散を防止することは開示していない。また、特許文献3におけるフラックスは溶剤を含有していて低粘度液体の状態であるため、このようなフラックスを含むやに入りはんだ又はフラックスコートはんだの加工は困難である。
【0008】
以上のように、はんだ使用時のフラックス及びはんだの飛散が抑制され、加工性に優れたやに入りはんだ又はフラックスコートはんだ、及びこれらに含まれるフラックスが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−16737号公報
【特許文献2】特開2015−131336号公報
【特許文献3】特開2008−100262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、はんだ使用時のフラックス及びはんだの飛散が抑制されたやに入りはんだ又はフラックスコートはんだ、及びこれらに含まれるフラックスを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、はんだ使用時のフラックス及びはんだの飛散の抑制に加え、加工性に優れたやに入りはんだ又はフラックスコートはんだ、及びこれらに含まれるフラックスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定のポリマー成分を含有するフラックスを用いることで上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の具体的態様は以下のとおりである。
【0013】
[1]
ロジン系樹脂、
活性剤、及び
フラックス全体の質量に対して0.1〜3質量%のポリマー成分
を含有し、
前記ポリマー成分の重量平均分子量が8000〜100000であり、前記ポリマー成分が、アクリルポリマー及びビニルエーテルポリマーから選択される少なくとも1種以上を含有する、
ことを特徴とするやに入りはんだ用フラックス。
【0014】
[2]
ロジン系樹脂、
活性剤、及び
フラックス全体の質量に対して0.1〜3質量%のポリマー成分
を含有し、
前記ポリマー成分の重量平均分子量が8000〜100000であり、前記ポリマー成分が、アクリルポリマー及びビニルエーテルポリマーから選択される少なくとも1種以上を含有する、
ことを特徴とするフラックスコートはんだ用フラックス。
【0015】
[3]
前記活性剤をフラックス全体の質量に対して0.1〜30質量%含有し、
前記活性剤として、フラックス全体の質量に対して、有機酸系活性剤0〜20質量%、アミン系活性剤0〜10質量%、又はアミンハロゲン化水素酸塩系活性剤及び有機ハロゲン化合物系活性剤を合計で0〜20質量%、から選択される1種以上を含有する、
ことを特徴とする[1]又は[2]に記載のフラックス。
【0016】
[4]
フラックス全体の質量に対して、0〜13質量%の溶剤、0〜10質量%のリン酸エステル、0〜5質量%のシリコーン、及び0〜5質量%の界面活性剤を更に含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のフラックス。
【0017】
[5]
[1]、[3]、及び[4]のいずれかに記載のフラックスを含有することを特徴とするやに入りはんだ。
【0018】
[6]
[2]〜[4]のいずれかに記載のフラックスが被覆されてなることを特徴とするフラックスコートはんだ。
【0019】
[7]
[1]〜[4]のいずれかに記載のフラックスのやに入りはんだ用フラックス又はフラックスコートはんだ用フラックスとしての使用。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフラックスを含むやに入りはんだ又はフラックスコートはんだは、使用時のフラックス及びはんだの飛散を抑制することができる。
また、本発明のフラックスは、やに入りはんだ又はフラックスコートはんだの加工性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のフラックス、並びに当該フラックスを含むやに入りはんだ及びフラックスコートはんだについて、説明する。
【0023】
本発明のフラックスは、ポリマー成分、ロジン系樹脂、及び活性剤を含む。
【0024】
本発明において、ポリマー成分の重量平均分子量は、8000〜100000であり、10000〜55000がより好ましい。ポリマー成分の重量平均分子量が上記範囲内であれば、良好な飛散防止効果が発揮される。本発明におけるポリマー成分の重量平均分子量は、GPC法で測定したポリスチレン換算の値を用いることができる。
【0025】
上記ポリマー成分は、好ましくは8.45〜11.5、より好ましくは8.95〜9.8の範囲のSP値(溶解パラメータ)を有することができる。SP値(溶解パラメータ)は、フェドアーズ法に基づき分子構造から算出することができる。
【0026】
本発明のポリマー成分は、アクリルポリマー及びビニルエーテルポリマーから選択される少なくとも1種以上を含む。ポリマー成分は、アクリルポリマー単独、ビニルエーテルポリマー単独、又はアクリルポリマーとビニルエーテルポリマーとの両方を含むことができる。
【0027】
フラックス全体の質量に対するポリマー成分の含有量は、0.1〜3質量%であり、0.2〜1.5質量%が好ましく、0.4〜1.0質量%がより好ましい。ポリマー成分の含有量が上記範囲内であれば、良好な飛散防止効果が発揮される。
【0028】
ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、二種以上を使用することができる。また、ロジン系樹脂に加えて、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、及び変性キシレン樹脂から選択される少なくとも一種以上の樹脂をさらに含むことができる。変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等を使用することができる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等を使用することができる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等を使用することができる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等を使用することができる。フラックス全体の質量に対する上記の樹脂の合計の含有量は、70〜99.9質量%が好ましく、80〜98質量%がより好ましい。上記の樹脂の合計の質量に対するロジン系樹脂の含有割合は2/3以上が好ましい。
【0029】
本発明のフラックスは、はんだ付け性を向上させる為に、活性剤をさらに含むことができる。活性剤としては、有機酸系活性剤、アミン系活性剤、アミンハロゲン化水素酸塩系活性剤、有機ハロゲン化合物系活性剤等を使用することができる。
【0030】
有機酸系活性剤としては、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、トリマー酸、水添トリマー酸等を使用することができる。
【0031】
アミン系活性剤としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノアルコール、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、アミノ酸、グアニジン、ヒドラジド等を使用することができる。脂肪族アミンの例としては、ジメチルアミン、エチルアミン、1−アミノプロパン、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、アリルアミン、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、イソブチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。芳香族アミンの例としては、アニリン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、N−イソプロピルアニリン、p−イソプロピルアニリン等が挙げられる。アミノアルコールの例としては、2−アミノエタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等が挙げられる。イミダゾールの例としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2'―メチルイミダゾリル−(1')]―エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'―ウンデシルイミダゾリル−(1')]―エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'―エチル−4'―メチルイミダゾリル−(1')]―エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'―メチルイミダゾリル−(1')]―エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ―イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。ベンゾトリアゾールの例としては、2−(2'―ヒドロキシ−5'―メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'―ヒドロキシ−3'―tert−ブチル−5'―メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'―ヒドロキシ−3',5'―ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'―ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’―メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6'−tert−ブチル−4'−メチル−2,2'−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’―[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1,2,3−ベンゾトリアゾールナトリウム塩水溶液、1−(1',2'―ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール等が挙げられる。アミノ酸の例としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン塩酸塩、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン一塩酸塩、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、δ-アミノ吉草酸、ε-アミノヘキサン酸、ε-カプロラクタム、7−アミノヘプタン酸等が挙げられる。グアニジンの例としては、カルボジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。ヒドラジドの例としては、ジシアンジアミド、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン等が挙げられる。
【0032】
アミンハロゲン化水素酸塩系活性剤としては、アミン系活性剤として上記に示したアミン化合物のハロゲン化水素酸塩(HF、HCl、HBr又はHIの塩)を使用することができる。アミンハロゲン化水素酸塩の例としては、ステアリルアミン塩酸塩、ジエチルアニリン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、2−エチルヘキシルアミン臭化水素酸塩、ピリジン臭化水素酸塩、イソプロピルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、モノエチルアミン臭化水素酸塩、1,3−ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、ジメチルアミン臭化水素酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、ロジンアミン臭化水素酸塩、2−エチルヘキシルアミン塩酸塩、イソプロピルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、2−ピペコリン臭化水素酸塩、1,3−ジフェニルグアニジン塩酸塩、ジメチルベンジルアミン塩酸塩、ヒドラジンヒドラート臭化水素酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、トリノニルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアニリン臭化水素酸塩、2−ジエチルアミノエタノール臭化水素酸塩、2−ジエチルアミノエタノール塩酸塩、塩化アンモニウム、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン臭化水素酸塩、モノエチルアミン塩酸塩、モノエチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン臭化水素酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、ヒドラジン一塩酸塩、ヒドラジン二塩酸塩、ヒドラジン一臭化水素酸塩、ヒドラジン二臭化水素酸塩、ピリジン塩酸塩、アニリン臭化水素酸塩、ブチルアミン塩酸塩、へキシルアミン塩酸塩、n−オクチルアミン塩酸塩、ドデシルアミン塩酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、エチレンジアミン二臭化水素酸塩、ロジンアミン臭化水素酸塩、2−フェニルイミダゾール臭化水素酸塩、4−ベンジルピリジン臭化水素酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、N−メチルモルホリン塩酸塩、ベタイン塩酸塩、2−ピペコリンヨウ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンヨウ化水素酸塩、1,3−ジフェニルグアニジンフッ化水素酸塩、ジエチルアミンフッ化水素酸塩、2−エチルヘキシルアミンフッ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンフッ化水素酸塩、エチルアミンフッ化水素酸塩、ロジンアミンフッ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンテトラフルオロホウ酸塩、ジシクロヘキシルアミンテトラフルオロホウ酸塩等が挙げられる。
有機ハロゲン化合物系活性剤としては、トランスー2,3−ジブロモ−2−ブテンー1,4−ジオール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジクロロ−1−プロパノール、1,1,2,2−テトラブロモエタン、2,2,2−トリブロモエタノール、ペンタブロモエタン、四臭化炭素、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、meso−2,3−ジブロモこはく酸、クロロアルカン、塩素化脂肪酸エステル、臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、エチレンビスペンタブロモベンゼン、2−クロロメチルオキシラン、ヘット酸、ヘット酸無水物、臭化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0033】
フラックス全体の質量に対する各活性剤の含有量として、有機酸系活性剤は0〜20質量%、アミン系活性剤は0〜10質量%、アミンハロゲン化水素酸塩系活性剤と有機ハロゲン化合物系活性剤は合計で0〜20質量%がそれぞれ好ましい。フラックス全体の質量に対する活性剤の含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。活性剤の含有量が30質量%以下であれば、はんだ付け後のフラックス残渣の腐食、絶縁抵抗の低下等の問題が生じない。
【0034】
本発明のフラックスは、溶剤、リン酸エステル、シリコーン、及び界面活性剤から選択される少なくとも一種以上をさらに含むことができる。
【0035】
溶剤としては、各種グリコールエーテル系溶剤等、例えばフェニルグリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール等を使用することができる。フラックス全体の質量に対する溶剤の含有量は、0〜13質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましい。溶剤の含有量が13質量%以下であれば、良好な飛散防止効果が発揮される。
【0036】
リン酸エステルとしては、メチルアシッドホスフェイト、エチルアシッドホスフェイト、イソプロピルアシッドホスフェイト、モノブチルアシッドホスフェイト、ブチルアシッドホスフェイト、ジブチルアシッドホスフェイト、ブトキシエチルアシッドホスフェイト、2−エチルへキシルアシッドホスフェイト、ビス(2−エチルへキシル)ホスフェイト、モノイソデシルアシッドホスフェイト、イソデシルアシッドホスフェイト、ラウリルアシッドホスフェイト、イソトリデシルアシッドホスフェイト、ステアリルアシッドホスフェイト、オレイルアシッドホスフェイト、牛脂ホスフェイト、ヤシ油ホスフェイト、イソステアリルアシッドホスフェイト、アルキルアシッドホスフェイト、テトラコシルアシッドホスフェイト、エチレングリコールアシッドホスフェイト、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェイト、ジブチルピロホスフェイトアシッドホスフェイト、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、アルキル(アルキル)ホスホネート等を使用することができる。フラックス全体の質量に対するリン酸エステルの含有量は、0〜10質量%が好ましく、0〜2質量%がより好ましい。リン酸エステルの含有量が10質量%以下であれば、良好な飛散防止効果が発揮される。
【0037】
シリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、環状シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等を使用することができる。フラックス全体の質量に対するシリコーンの含有量は、0〜10質量%が好ましく、0〜2質量%がより好ましい。シリコーンの含有量が10質量%以下であれば、良好な飛散防止効果が発揮される。
【0038】
界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシプロピレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を使用することができる。フラックス全体の質量に対する界面活性剤の含有量は、0〜5質量%が好ましい。界面活性剤の含有量が5質量%以下であれば、はんだ付け性を損なわずに、洗浄性の向上効果が発揮される。
【0039】
やに入りはんだ又はフラックスコートはんだの加工性の観点から、フラックスは、25℃において固形又は高粘度液体(粘度が3500Pa・s以上)であることが好ましく、25℃において固形であることがより好ましい。フラックスが25℃において低粘度液体(粘度が3500Pa・s未満)であると、やに入りはんだ又はフラックスコートはんだの加工性が低下するため好ましくない。
【0040】
本発明においては、ロジン系樹脂、活性剤、及びフラックス全体の質量に対して0.1〜3質量%の重量平均分子量が8000〜100000であるポリマー成分を当業界で一般的な方法により加熱混合してフラックスを調製する。そして、当業界で一般的な製造方法によりフラックスが充填されたやに入りはんだを製造することができる。または、はんだ合金の外表面をフラックスで被覆することによりフラックスコートはんだを製造することができる。
【0041】
本発明におけるはんだ合金の組成としては、公知のやに入りはんだ合金の組成を使用することができる。具体的には、Sn−Ag合金、Sn−Cu合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−In合金、Sn−Pb合金,Sn−Bi合金,Sn−Ag−Cu−Bi合金や前記合金組成にAg、Cu、In、Ni、Co、Sb、Ge、P、Fe、Zn、Ga等を更に添加した合金が挙げられる。
【0042】
本発明のやに入りはんだにおいて、はんだ合金とフラックスとの質量比(はんだ:フラックス)は、99.8:0.2〜93.5:6.5が好ましく、98.5:1.5〜95.5:4.5がより好ましい。
【0043】
本発明のフラックスコートはんだにおいて、はんだ合金とフラックスとの質量比(はんだ:フラックス)は、99.7:0.3〜85:15が好ましく、99.4:0.6〜97:3がより好ましい。
【0044】
このようにして調製されたやに入りはんだ又はフラックスコートはんだを用いて、電子機器などの部材を接合することができる。
【0045】
以下、本発明について実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例に記載の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
以下の実施例1〜32及び比較例1〜21においてフラックスに配合するポリマー並びにポリマー成分の重量平均分子量及びSP値の一覧を、以下の表1及び2に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
(評価)
実施例1〜32及び比較例1〜21それぞれのやに入りはんだについて、以下のとおり、(1)フラックス及びはんだの飛散の評価、及び(2)はんだの加工性の評価を行った。
【0050】
(1)フラックス及びはんだの飛散の評価
図1に示すように、飛散滴捕集紙の半径100mmの円の中心に、はんだゴテを設置した。飛散滴捕集紙の最も内側の円の部分には半径5mmの穴が開いており、はんだゴテのコテ先で溶融させたはんだが穴の部分から下へ落ちるようになっている。はんだゴテのコテ先(設定温度:380℃)に向かって、やに入りはんだ(直径0.8mm)を送り(送り速度:20mm/s)、やに入りはんだを10mm送り1秒間休止することを1サイクルとし、合計50サイクル行った。そして、50サイクル後の飛散滴捕集紙上に飛散したフラックス及びはんだボールの個数をカウントした。
そして、飛散滴捕集紙上に飛散したフラックス及びはんだボールの個数が、5個以内を良好(○○)、10個以内を可(○)、10個を超えたものを不可(×)とした。
【0051】
(2)はんだの加工性の評価
やに入りはんだ用フラックスの25℃における状態を観察し、固形及び液体のいずれであるかを判定した。フラックスが液体である場合、フラックスをレオメータ(Thermo Scientific HAAKE MARS III(商標))のプレート間に挟んだ後、6Hzでプレートを回転させることによりフラックスの粘度を測定した。
そして、はんだの加工性を、下記に示す基準で評価した。
良好(○○) :フラックスを25℃で保管した際にフラックスが固形である。
可(○) :フラックスを25℃で保管した際に液体であるが、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s以上である。
不可(×) :フラックスを25℃で保管した際に液体であり、レオメータで測定した粘度が3500Pa・s未満である。
【0052】
(実施例1〜9、比較例1〜3)
以下の表3に示す組成で実施例1〜9及び比較例1〜3のやに入りはんだ用フラックスを調合した。実施例1〜9及び比較例1〜3それぞれのやに入りはんだ用フラックスとはんだ合金とを用いて、やに入りはんだ(直径0.8mm)を製造した。はんだ合金の組成はSn−3Ag−0.5Cu(各数値は質量%)を用いた。やに入りはんだにおけるはんだ合金とフラックスとの質量比は97:3になるように製造した。なお、以下の表3〜9中の各成分の数値は、フラックス全体の質量に対する各成分の質量%を表し、特に「ポリマー」の欄の数値は、フラックス全体の質量に対する、各ポリマー製品における固形分の質量%を表す。また、以下の表3〜9において、ロジンとして混合ロジン(ロジンエステル75wt%、水添ロジン25wt%)を用いた。
【0053】
そして、実施例1〜9及び比較例1〜3それぞれのやに入りはんだについて、以下のとおり、(1)フラックス及びはんだの飛散の評価、及び(2)はんだの加工性の評価を行った。評価結果を以下の表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
上記表3の結果より、重量平均分子量が8000〜100000であるアクリルポリマー(10)及び/又はビニルエーテルポリマー(1)をフラックス全体の質量に対して0.1〜3質量%用いた実施例1〜9においては、フラックス及びはんだの飛散、及びはんだの加工性のいずれの評価においても可又は良好であった。実施例1〜9のやに入りはんだは、はんだゴテによる加熱の際に基板上でフラックス及びはんだが飛散しにくいため、実装時に周辺にある電子部品にフラックス及びはんだを付着させにくいことがわかった。また、実施例1〜9のやに入りはんだ用フラックスは、25℃において固形であるため、やに入りはんだの加工性が良好であった。
【0056】
一方、重量平均分子量が8000〜100000であるアクリルポリマー及びビニルエーテルポリマーを含まない比較例1、重量平均分子量が8000〜100000であるアクリルポリマーのフラックス全体の質量に対する割合が0.1質量%未満である比較例2、及び重量平均分子量が8000〜100000であるアクリルポリマーのフラックス全体の質量に対する割合が3質量%を超えている比較例3は、はんだの加工性は良好ではあるものの、フラックス及びはんだの飛散が多かった。
【0057】
(実施例10〜20、比較例4〜9)
上記の表3に示す組成の代わりに、以下の表4及び5に示す組成を用いた以外は実施例1〜9及び比較例1〜3と同様にして、実施例10〜20及び比較例4〜9のやに入りはんだ用フラックスを調合した。
【0058】
そして、実施例10〜20及び比較例4〜9それぞれのやに入りはんだについて、上記のとおり、(1)フラックス及びはんだの飛散の評価、及び(2)はんだの加工性の評価を行った。評価結果を以下の表4及び5に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
上記表4及び5の結果より、重量平均分子量が8000〜100000であるアクリルポリマー(4)〜(9)又は(11)〜(15)をフラックス全体の質量に対して0.5質量%用いた実施例10〜20においては、フラックス及びはんだの飛散、及びはんだの加工性のいずれの評価においても可又は良好であった。実施例10〜20のやに入りはんだは、はんだゴテによる加熱の際に基板上でフラックス及びはんだが飛散しにくいため、実装時に周辺にある電子部品にフラックス及びはんだを付着させにくいことがわかった。また、実施例10〜20のやに入りはんだ用フラックスは、25℃において固形であるため、やに入りはんだへの加工性が良好であった。
【0062】
一方、重量平均分子量が8000未満のアクリルポリマー(1)〜(3)を用いた比較例4〜6、重量平均分子量が100000を超えるアクリルポリマー(16)又は(17)を用いた比較例7及び8、並びに重量平均分子量が100000を超えるビニルエーテルポリマー(2)を用いた比較例9は、はんだの加工性は良好ではあるものの、フラックス及びはんだの飛散が多かった。
【0063】
(実施例21〜32、比較例10〜21)
上記の表3に示す組成の代わりに、以下の表6〜9に示す組成を用いた以外は実施例1〜9及び比較例1〜3と同様にして、実施例21〜32及び比較例10〜21のやに入りはんだ用フラックスを調合した。
【0064】
そして、実施例21〜32及び比較例10〜21それぞれのやに入りはんだについて、上記のとおり、(1)フラックス及びはんだの飛散の評価、及び(2)はんだの加工性の評価を行った。評価結果を以下の表6〜9に示す。
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
【表8】
【0068】
【表9】
【0069】
上記表6〜9の結果より、重量平均分子量が8000〜100000である、アクリルポリマーとビニルエーテルポリマーとの混合物をフラックス全体の質量に対して0.5質量%用いた実施例21〜23及び25〜27、重量平均分子量が8000〜100000である、アクリルポリマーとビニルエーテルポリマーとオレフィンポリマーとの混合物をフラックス全体の質量に対して0.5質量%用いた実施例24、並びに重量平均分子量が8000〜100000であるアクリルポリマーをフラックス全体の質量に対して0.5質量%用い、シリコーン、リン酸エステル、溶剤、又は界面活性剤を更に加えた実施例28〜32においては、フラックス及びはんだの飛散、及びはんだの加工性のいずれの評価においても可又は良好であった。実施例21〜32のやに入りはんだは、はんだゴテによる加熱の際に基板上でフラックス及びはんだが飛散しにくいため、実装時に周辺にある電子部品にフラックス及びはんだを付着させにくいことがわかった。また、実施例21〜32のやに入りはんだ用フラックスは、25℃において高粘度液体又は固形であるため、やに入りはんだの加工性が可又は良好であった。
【0070】
一方、重量平均分子量が8000〜100000であるアクリルポリマー及びビニルエーテルポリマーを用いずにそれ以外のポリマーを用いた比較例10〜19、並びに重量平均分子量が100000を超えるアクリルポリマーを用いた比較例20及び21は、はんだの加工性は良好ではあるものの、フラックス及びはんだの飛散が多かった。
【要約】
【課題】本発明は、はんだ使用時のフラックス及びはんだの飛散が抑制されたやに入りはんだ又はフラックスコートはんだ、及びこれらに含まれるフラックスを提供することを目的とする。
【解決手段】ロジン系樹脂、
活性剤、及び
フラックス全体の質量に対して0.1〜3質量%のポリマー成分
を含有し、
前記ポリマー成分の重量平均分子量が8000〜100000であり、前記ポリマー成分が、アクリルポリマー及びビニルエーテルポリマーから選択される少なくとも1種以上を含有する、
ことを特徴とするやに入りはんだ用フラックス。
【選択図】なし