(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記装置では、工具の突出長さの調整に圧電素子を用いているため、種々の問題がある。例えば、加工中に用いられる潤滑油や熱によって、圧電素子が損傷するおそれがある。また、工具ホルダーは高速で回転するため、圧電素子に対して安定した制御信号を送ることが難しいという問題もある。その結果、高精度の加工を期待できない可能性がある。したがって、熱変形が生じたときに、これを補正する手段が要望されていた。なお、このような問題は、圧電素子を用いて工具の突出長さを調整するタイプの中ぐり加工装置だけでなく、工具を突出させた工具ホルダーにより中ぐり加工を行う際に、熱変形により工具ホルダーが原点位置から外れる可能性のある中ぐり加工装置全般に生ずる問題である。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、熱変形などで、工具ホルダーが原点位置から外れたとき、これを簡易に検知し補正することができる中ぐり加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る中ぐり加工装置は、中空の主軸と、所定の軸線回りに前記主軸を回転自在に支持するテーブルと、棒状に形成され前記軸線に沿って延びる軸部を有し、前記主軸とともに同軸で回転する工具ホルダーと、前記工具ホルダーの軸部の先端部に設けられ、径方向に突出する工具と、前記軸線方向において前記主軸と工具ホルダーとの間に設けられ、当該工具ホルダーの軸部を前記軸線から傾斜させる傾動ユニットと、前記主軸内で前記軸線方向に往復動可能なドローバーと、前記主軸を前記軸線回りに回転させる第1の駆動部と、前記ドローバーを前記軸線方向に往復動させる第2の駆動部と、前記軸部の傾斜を検知する検出ユニットと、を備え、前記検出ユニットは、前記軸部の外周面に対して径方向から近接離間可能に支持される検知部と、前記検知部を前記軸部に対して近接離間させる第3の駆動部と、前記第1の駆動部にて前記軸部を所定角度回転させたときの、前記軸部の外周面に対する前記検知部の位置情報に基づき、前記軸部の前記軸線からの傾斜を算出する演算部と、前記第3の駆動部を制御するとともに、前記演算部により算出された前記軸部の傾斜に基づき、これを補正するように、前記第2の駆動部を制御する駆動制御部と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、工具ホルダーの軸部を所定角度回転させたときの、軸部の外周面に対する検知部の位置情報に基づき、軸部の軸線に対する傾斜を検出するようにしている。そのため、例えば、ドローバーなどが熱により、変形し、これによって軸部が軸線から傾斜したとしても、この傾斜を簡単に検出することができる。また、軸部の外周面に対する検知部の位置情報を検出しているため、軸線に対する傾斜量を簡単に算出することができる。そのため、算出された傾斜量に基づいてドローバーを駆動すれば、軸部の傾斜を容易に補正することができる。
【0008】
上記中ぐり加工装置においては、種々の方法で軸部の傾斜を検知することができるが、例えば、以下のようにすることができる。すなわち、前記傾動ユニットが前記工具ホルダーの軸部を一方向でのみ傾斜可能とし、前記傾斜ユニットの検知部を、前記軸部が原点位置から傾斜する側に取り付け、前記駆動制御部が、前記軸部の外周面上の第1の点に対する前記検知部の位置情報を取得した後、前記軸部を180度回転させ、その後、前記第1の点とは軸部の中心を挟んで反対側に位置する第2の点に対する前記検知部の位置情報を取得するように、前記第1及び第3の駆動部を制御し、前記演算部が、前記第1の点に対する前記検知部の位置情報、及び前記第2の点に対する前記検知部の位置情報の差分に基づいて、前記軸部の傾斜を算出するように構成することができる。
【0009】
これにより、2つの位置情報が一致していなければ、軸部が傾斜していると判断することができる。そして、2つの位置情報の差分から軸部がどの程度傾斜しているかが分かるため、補正を簡単に行うことができる。
【0010】
上記中ぐり加工装置において、前記検知部が、前記第3の駆動部により、前記軸部に当接することで、前記位置情報を取得するように構成することができる。すなわち、検知部が軸部の外周面に当接した位置を位置情報として利用することができる。なお、検知部を非接触式のセンサとすることもできる。この場合、検知部を軸部に対して近接させた後、検知部と軸部との距離を測定し、これを位置情報とすることができる。
【0011】
上記中ぐり加工装置においては、前記第3の駆動部は、第4の駆動部及び第5の駆動部を備えるようにすることができる。そして、前記検知ユニットが、第1ベース部と、前記1ベース部上に移動可能に支持されるとともに、前記当接部を移動可能に支持する第2ベース部と、を備えるようにし、前記第4の駆動部は、前記第1ベース部上で、前記第2ベース部を前記軸部に対して近接離間させ、前記第5の駆動部は、前記第2ベース部上で、前記当接部を前記軸部に対して近接離間させるように構成することができる。
【0012】
このようにすると、検知部を2段階で、軸部に対して近接離間させることができる。例えば、第4の駆動部により、検知部を軸部に対して近接させた後、第5の駆動部により、検知部を軸部に対してさらに近接させることができる。あるいは、第5の駆動部により検知部を軸部に対して当接させてもよい。これにより、例えば、上記のように、軸部を回転させて、当接部を軸部の2箇所で近接させる場合に有利である。すなわち、第4及び第5の駆動部で当接部を軸部に近接させた後、軸部を回転させるためには、検知部を一旦軸部から離間させる必要があるが、このとき、初期位置まで検知部を後退させるのではなく、第5駆動部のみを駆動させれば、検知部は初期位置と軸部との間にまでしか戻らないため、検知部を移動させる時間を短縮させることができる。その結果、軸部の傾斜の検出処理を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る中ぐり加工装置によれば、熱変形などで、工具ホルダーが原点位置から外れたとき、これを簡易に検知し補正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る中ぐり加工装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態の中ぐり加工装置の側面図、
図2はこの中ぐり加工装置により加工が可能な穴の形状を示す斜視図である。なお、以下では、説明の便宜のため、
図1を基準として、この図の左側を「前」または「先」、右側を「後」、上下の方向を「上下」として、他の図面の説明も行うこととする。また「後」側の面を背面ということもある。但し、本発明で用いられる部材の方向はこれに限定されない。
【0016】
本実施形態では、一例として、エンジンのピストンを加工対象であるワークWとし、このピストンのピン穴を加工する中ぐり加工装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る中ぐり加工装置は、棒状に延びる工具ホルダー1と、この工具ホルダー1を軸線回りに回転させる主軸2とを備えており、これらがテーブル3上に配置されている。この工具ホルダー1の軸線Xは、ワークWのピン穴に予め設けられた下穴の中心軸Y(
図2参照)とほぼ一致している。そして、工具ホルダー1の先端には、軸線方向に突出する工具11が着脱自在に取り付けられており、この工具11の径方向変位を制御プログラムによってコントロールすることで、下穴の内壁面を所望の形状に加工する。本実施形態では、
図2に示すように、下穴100の内壁面を加工し、断面が非円形のトランペット型のピン穴200を加工する。
【0017】
主軸2は、テーブル上に配置されたハウジング21内に回転自在に収容されている。そして、ハウジング21の後端部には主軸モータ(第1の駆動部)22が配置されており、この主軸モータ22によって、主軸2が軸線回りに回転駆動される。そして、主軸2の前端部には、後述する傾動ユニット4を介して上述した工具ホルダー1が取り付けられている。一方、主軸2の後端部には、工具ホルダー1を径方向に操作するための駆動ユニット8(第2の駆動部)が配置されており、ハウジング21とともに、テーブル3上に配置されている。また、テーブル3は、基台6上にレール61を介して配置されており、基台6に対して前後方向に移動可能となっている。そして、基台6の後端部には、テーブル3を前後方向に移動させるためのスライドモータ62が配置されている。これにより、テーブル3上の工具ホルダー1をワークWに対して、近接離間させることができる。また、ハウジング21の先端には、工具ホルダー1の位置ずれを検出する検出ユニット30が設けられている。
【0018】
次に、主軸2よりも前方側の構成について、
図3から
図5も参照しつつ説明する。
図3は主軸の前端近傍の断面図、
図4は傾動ユニットの分解斜視図、
図5は
図3の正面図である。
【0019】
図3及び
図4に示すように、工具ホルダー1は、傾動ユニット4を介して主軸2の前端部に取り付けられている。工具ホルダー1は、工具11が取付けられる軸部12と、この軸部12を支持する支持部13とで構成されている。軸部12は円筒状に形成され、その先端部の外周面には、径方向外方に突出する工具11が取付けられている。支持部13は、正面視矩形状に形成され、中央から軸部12が突出しており、また、四隅にはボルト14が挿通される貫通孔が形成されている。
【0020】
主軸2は、中空に形成されており、その内部には、軸線方向に往復動可能なドローバー7が挿通されている。ドローバー7の先端は、主軸2の先端面よりも、軸方向にやや入り込んだ位置に配置されるとともに、傾動ユニット4に接続されている。一方、ドローバー7の後端部は、後述するように駆動ユニット8に接続されており、駆動ユニット8により、ドローバー7は前後方向に移動可能となっている。
【0021】
続いて、主軸2と工具ホルダー1との間に配置される傾動ユニット4について説明する。
図3及び
図4に示すように、傾動ユニット4は、主として、主軸2側から工具ホルダー1に向かって、取付基部41、連結部材42、工具取付板43、及び傾動板44がこの順に並ぶように組立てられたものである。以下、順に説明する。取付基部41は、円板上に形成されており、中心に形成された矩形状の中心穴411からドローバー7の先端部が露出している。そして、取付基部41は、周縁に沿う6箇所において、ボルト412により主軸2の先端面に固定されている。また、取付基部41の先端面には、後述する連結部材42、工具取付板43などが収容される収容凹部413が形成されている。
【0022】
収容凹部413は、後端側から前端側へ向かってならぶ、第1凹部414及び第2凹部415が連通することで形成されている。第1凹部414は、中心穴411の上端の辺、及び下端の辺から前方へ向かって上方、及び下方へそれぞれ傾斜する傾斜面を有する側面視台形状に形成されており、後述する連結部材42の一部が収容される。第2凹部415は第1凹部414の前方に連続して形成され、正面視が概ね矩形状に形成されており、後述する工具取付板43の一部が収容される。また、第2凹部415は、第1凹部414を囲むように形成されており、第1凹部414の内壁面と連続するように、径方向に延びる段差面416を有している。
【0023】
また、取付基部41の上端部には、上述した第2凹部415の上縁に沿って延びる突出部417が形成されている。突出部417は、下面部が、第2凹部415の上縁から連続して延びるように形成され、上面部は、取付基部41の円形の外周面に沿って延びるように形成されている。
【0024】
次に、連結部材42について説明する。連結部材42は、ドローバー7に連結される直方体状の基部421を備え、この基部421の上部及び下部には、上方及び下方に傾斜するように延びる第1延在部422、及び第2延在部423がそれぞれ一体的に連結されており、連結部材42は、全体として側面視Y字状に形成されている。基部421には貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通されたボルト424がドローバー7の先端部に固定される。これにより、ドローバー7と連結部材42とは一体的に固定され、連結部材42は、ドローバー7とともに前後進するようになっている。
【0025】
連結部材42の第1延在部422の上端面(固定部)は、軸方向に延びるように平坦な矩形状に形成されており、この上端面に後述する弾性板45が配置される。一方、第2延在部423の下端部には、直方体状に形成されたストッパ部425が形成されている。そして、このように形成された連結部材42は、取付基部41の収容凹部413にわずかな隙間を介して嵌まっている。すなわち、第1延在部422の背面は、取付基部41における第1凹部414の上方の傾斜面と対向している。一方、第2延在部423の背面は、取付基部41における第1凹部414の下方の傾斜面と対向している。また、第2延在部423のストッパ部425の背面(第1の当接面)は、第2凹部415の段差面(第2の当接面)416と隙間を介して対向している。
【0026】
次に、工具ホルダー1、傾動板44、及び工具取付板43の連結構造について説明する。まず、傾動板44について説明する。傾動板44は、取付基部41とほぼ同じ外径を有する円板状に形成されており、先端側は平坦面となっている。そして、中央には長方形状の中央穴441が貫通している。この中央穴441には、先端側から工具ホルダー1の支持部13が挿通される。また、中央穴441の周縁には、4つの貫通孔442が形成されている。そして、傾動板44の背面には、中央穴441の上面に沿って段部443が形成されており、傾動板44において、この段部443より上方の部分は、他の部分よりも厚みが薄く形成されている。すなわち、傾動板44において、中央穴441よりも上方には弓形の薄板部444が形成されている。この薄板部444の周縁には、後方へ突出する突縁部445が形成されており、この突縁部445は、取付基部41の突出部417に沿うように配置される。また、段部443には、2個の固定穴が形成されている。
【0027】
一方、傾動板44において、中央穴441の下方には、中央穴441の下辺に沿って傾動板44の周縁まで直線状に延びる溝446が形成されており、この溝446が形成されている部分は他の部分と比べて肉厚の薄い薄肉部(変形部)447を形成している。
【0028】
次に、工具取付板43について説明する。工具取付板43は、正面視矩形状に形成され、先端面には、傾動板44の中央穴441にはまる矩形状に凸面部431が形成されている。そして、この凸面部431の4隅には貫通孔432が形成されており、この貫通孔432と、工具ホルダー1の支持部13の貫通孔とが一致し、ボルト14によって固定されるようになっている。すなわち、傾動板44の中央穴441には、先端側から工具ホルダー1の支持部13が挿通され、後端側からは工具取付板の凸面部431が挿通され、中央穴441の中でボルト14によって固定される。また、工具取付板43の先端面において、凸面部431の周囲には、4つの貫通孔433が形成されており、この貫通孔433は、傾動板44の貫通孔442と一致し、ボルト434によって固定されるようになっている。これにより、傾動板44と工具取付板43とが固定される。
【0029】
また、
図3に示すように、工具取付板43の中央には、貫通孔435が形成されており、工具取付板43の背面には、この貫通孔435から上下方向にそれぞれ延びる傾斜面436が形成されている。これら傾斜面436は、連結部材42の第1延在部422及び第2延在部423の先端側の傾斜面と対向するように延びている。また、貫通孔435には、背面側から、連結部材42とドローバー7とを固定するボルト424の頭部が収容される。
【0030】
次に、傾動板44と連結部材42との連結構造について説明する。連結部材42における第1延在部422の上面と、傾動板44の段部443とは、板バネで構成される複数の弾性板45によって連結されている。複数の弾性板45は積層され、先端側の端部が傾動板44の段部443上に配置されている。そして、その上には、直方体状の第1固定ピース46が配置され、ボルト461によって固定されている。すなわち、ボルト461が第1固定ピース46、弾性板45を貫通し、傾動板44の段部443にねじ留めされている。一方、弾性板45の後端側は、第1延在部422の上面に配置されており、その上には、直方体状の第2固定ピース47が配置され、ボルト471によって固定されている。すなわち、ボルト471が第2固定ピース47、弾性板45を貫通し、第1延在部422の上面にねじ留めされている。これら第1及び第2固定ピース46,47は、取付基部41における第2凹部415の上端付近、つまり突出部417の下方に配置される。
【0031】
また、
図3に示すように、傾動板44の下端部と、取付基部41の下端部とは、ボルト48により固定されている。より詳細には、傾動板44の薄肉部447よりも下方には、貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通されたボルト48が取付基部41の下端部、つまり、収容凹部413よりも下方にねじ留めされている。
【0032】
以上のように構成された傾動ユニット4では、工具ホルダー1、傾動板44、工具取付板43は、ボルト14,434により一体的に固定されている。そして、傾動板44と連結部材42とは弾性板45を介して固定されている。傾動板44の下端部は、取付基部41に固定されているが、傾動板44の下端部には、薄肉部447が形成されているため、傾動板44が後方に引っ張られると、傾動板44は、薄肉部447が弾性変形をして撓むことで後方に傾斜するようになっている。また、傾動板44と連結部材42とを連結する弾性板45は、水平方向に延びているため、傾斜方向は一義的に決定され上下方向にのみたわむように弾性変形する。したがって、傾動板44は、連結部材42に対して、傾斜するようになっている。以上の構成により、ドローバー7により連結部材42が後方へ引っ張られると、これに連結された傾動板44が薄肉部447で撓み、薄肉部447よりも上方の部分が後方へ傾斜する。これに伴い、工具ホルダー1が上方へ揺動する。このとき、傾動板44の上部は、引っ張りにより後方へ傾斜するため、この傾斜を吸収するように、弾性板45が上方へ撓む。したがって、ドローバー7による直線運動によっても、傾動板44はスムーズに傾斜する。
【0033】
なお、傾動ユニット4を構成する傾動板44は金属で形成され、薄肉部447の厚みが小さいことにより、微少な力加減に応じて弾性変形可能となっている。上記のように、ドローバー7を後側へ引っ張ると、傾動板44は、薄肉部の変形により後方へ傾斜するが、ドローバー7を引っ張る力を取り除くと、弾性力により、傾動板44は元の形状に戻る。したがって、傾動板44の傾斜は、これを構成する金属の弾性変形域で行われる。
【0034】
また、主軸2には、取付基部41、傾動板44が連結され、傾動板44には、工具ホルダー1、連結部材42が連結されているため、主軸2が回転すると、傾動ユニット4は、工具ホルダー1とともに回転する。
【0035】
続いて、上述した傾動ユニット4におけるエアリング機構について説明する。
図3に示すように、傾動板44の上部は傾斜するため、これと対向する取付基部41との間には隙間が形成されている。しかしながら、この隙間に異物が混入すると、これが妨げになって傾動板44が傾斜しなくなるおそれがある。そこで、傾動板44と取付基部41の隙間に異物が混入しないように、傾動ユニット4の周囲には、エアリング機構5が設けられている。
図3及び
図5に示すように、ハウジング21の先端部には、板状のリング部材51がボルト52により固定されている。このリング部材51は、傾動板44とほぼ同じ位置に配置されており、外周面にハウジング21側に延びる環状の突出部53が形成され、ハウジング21の先端面と当接している。これにより、リング部材51とハウジング21の先端面との間には、外周が突出部53により閉じられた環状のエアリング空間54が形成されている。
【0036】
リング部材51の下部においては、突出部53に貫通孔が形成されており、この貫通孔が排気ポート55として、エアリング空間54と外部とを連通している。一方、リング部材51の上部と対応するハウジング21の先端面には、給気ポート56が形成されている。ハウジング21の内部には、エアの供給管57が配置されており、この供給管57から供給されるエアは、給気ポート56を介して、エアリング空間54に供給される。このエアは、傾動板44の周囲を囲むエアの壁となって、傾動板44と取付基部41との間の隙間を覆う。これによって、この隙間への異物の侵入を防止している。なお、エアリング空間54のエアは給気ポート56から供給され、排気ポート55より排出される。
【0037】
次に、ドローバー7を駆動する駆動ユニット8について、
図6を参照しつつ説明する。
図6は、
図1のA−A断面図である。
図1及び
図6に示すように、本実施形態の駆動ユニット8は、公知のリニアアクチュエータで構成されている。具体的には、テーブル3上で水平方向に延びるように配置された本体ケース82を備えており、この本体ケース82の内部には、前後方向に延びる板状のスライダ85と、このスライダ85の前端部及び後端部を支持する支持部材87が配置されている。これにより、スライダ85は、本体ケース82内を軸線X方向に沿って前後に往復動できるようになっている。スライダ85の左右両面には、複数の磁石86がそれぞれ取付けられており、スライダ85の左右両側には、磁石86と対向するように、一対のコイルケース83がそれぞれ配置されている。そして、各コイルケース83の内部には、複数のコイル84が配置されている。
【0038】
スライダ85の前端部にはベアリング90が固定されており、このベアリング90には、ドローバー7の後端部が回転可能に固定されている。これにより、スライダ85の往復動を、ベアリング90を介してドローバー7に伝達することができる。
【0039】
このような駆動ユニット8によれば、コイル84に通電することにより、通電時のコイル84と磁石86との相互作用により本体ケース82に対してスライダ85が軸線X方向に相対移動する。そして、スライダ85の往復動が、ベアリング90を介して、ドローバー7に伝達される。スライダ85の移動量は図示しない制御装置によりコイル84への通電量を制御することによって、適宜調整することができる。また、コイル84の通電方向(電流の方向)を変換することにより、スライダ85の移動方向を変換することができる。なお、制御装置は、駆動ユニット8のほか、主軸の回転駆動、スライドモータなど、本実施形態に係る中ぐり加工装置の制御全般を行う。特に、制御装置において、主軸の回転駆動、駆動ユニットの駆動、後述するエアシリンダの駆動の制御を行うのが、本発明の駆動制御部に相当する。
【0040】
次に、検出ユニット30について、
図7から
図9も参照しつつ説明する。
図7は検出ユニットの拡大正面図、
図8は
図7の平面図、
図9は
図7の側面図である。
【0041】
図5及び
図7〜
図9に示すように、この検出ユニット30は、矩形状のブラケット31を介してハウジング21の先端面に固定されている。このブラケット31は、ハウジング21の先端面の左側において、工具ホルダー1の軸部12に向かって斜め下方を向くように配置されている。そして、このブラケット31の下端部に、検出ユニット30の第1ベース部32が配置されている。第1ベース部32は、矩形の板状に形成されており、その上面に第1エアシリンダ(第4の駆動部)33が配置されている。第1エアシリンダ33の側部には、ガイドレール34が配置されており、このガイドレール34に沿って直線的に、第2ベース部35が移動可能に配置されている。第2ベース部35は、第1エアシリンダ33により、工具ホルダー1の軸部12に向かって、移動される。そして、第2ベース部35上には、棒状の延びる検知部36と、これを工具ホルダー1の軸部12に向かって近接離間させる第2エアシリンダ(第5の駆動部)37が配置されている。また、検知部36には、軸部12と当接するとこれを検知し、制御装置に送信する接触式のセンサが内蔵されている。検知部36は、原点で停止した軸部12の傾斜方向に沿う位置に向けられている。
【0042】
この検出ユニット30に設けられている第1及び第2エアシリンダ33,37は、上述した制御装置において駆動制御される。このとき、第1エアシリンダ33の駆動によって、第2ベース部35が軸部12に対して移動し、検知部36が軸部12に近接する
図7及び
図8の(I)の位置まで移動可能となっている。そして、この(I)の位置から第2エアシリンダ37を駆動すると、検知部36は軸部12に当接する(II)の位置まで移動する。
【0043】
続いて、上記のように構成された中ぐり加工装置の動作について説明する。まず、
図1に示すように、加工対象となるワークWを、ワーク保持ユニット50に固定する。続いて、ワークWの下穴10の中心軸Yと工具ホルダー1の軸線Xを一致させた後、スライドモータ62を駆動して、工具ホルダー1をワークWに近接させる。これに続いて、主軸モータを駆動し、工具ホルダー1を軸回りに回転させながら、工具ホルダー1を下穴100に挿入する。そして、制御装置で予め設定された制御プログラムによりリニアアクチュエータの駆動を制御して工具ホルダー1を軸線Xから傾かせる。こうして、工具11が1回転するまでの間に、径方向位置を変化させつつ、工具11を軸線方向に移動させることによって、
図2に示すように、断面が非円形の穴を形成することができる。なお、工具11が径方向に移動する、加工時に必要な距離は、例えば、0.1〜0.2mmとすることができる。
【0044】
ところで、中ぐり加工中に生じる熱は工具11から工具ホルダー1を通じてドローバー7に伝播したり、あるいは主軸モータ22の熱がドローバー7に伝播することがある。そして、このような熱を受けることで、ドローバー7には熱変形が生じるおそれがあり、これにより、工具11の原位置を狂わせ、加工精度の低下の原因となる可能性がある。
【0045】
そこで、上述した検出ユニット30を用いると、工具ホルダー1の軸部12が、軸線Xからどの程度傾斜しているからを検出することができる。以下、その動作について説明する。検知部36は加工時において加工の邪魔にならない位置に退避している。その状態からまず、第1エアシリンダ33を駆動し、第2ベース部35を軸部12に向け近接させる。これにより、第2ベース部35上にある検知部36の先端は、
図7及び
図8の(I)の位置まで移動する。これに続いて、第2エアシリンダ37を駆動すると、検知部36は、軸部12に当接する(II)の位置へ移動する。このとき、検知部36は、軸部12の外周面における工具11が取り付けられている付近、特に、工具11の基端部付近に当接することが好ましい。こうして、検知部36が、原点にある軸部12の外周面の一点(第1の点)に当接すると、制御装置は、このときの検知部36の位置を第1の当接位置(位置情報)として記憶する。
【0046】
次に、第2エアシリンダ37を駆動し、検知部36を軸部12から離間させ、(I)の位置まで後退させる。続いて、主軸モータ22を駆動し、主軸2を180度回転させる。これにより、軸部12も軸線X周りに180度回転する。このとき、検知部36が後退する(I)の位置は、検知部36が、軸部12及び工具11の回転と干渉しない位置である。これに続いて、第2エアシリンダ37を駆動し、検知部36を再び軸部12の外周面における一点(第2の点)へ当接させ、制御装置は、このときの検知部36の位置を第2の当接位置(位置情報)として記憶する。
【0047】
その後、第2エアシリンダ37及び第1エアシリンダ33をこの順で駆動し、当接部36を初期位置まで後退させる。制御装置では、記憶した第1及び第2の位置から軸部の傾斜を算出する。すなわち、第1及び第2の当接位置が一致していれば、軸部12は断面円形であるので、軸線Xからの傾斜はない。一方、第1及び第2の当接位置に差が生じていれば、その差に基づき、軸部12の軸線Xからの傾斜量を算出することができる。この計算は、制御装置の演算部で行われる。そして、軸部12の傾斜量が分かれば、これに基づいて、制御装置は駆動ユニット8を駆動し、ドローバー7を前後進させることで、軸部12の傾斜を調整し、軸部12の軸線Xが、ワークの軸線Yと一致するようにする。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、傾動ユニット4の傾動板44に薄肉部447を形成することで傾斜するようにしているが、傾動板44が傾斜するのであれば、薄肉部以外の変形可能な構成でもよい。また、傾動板44も板状以外でもよい。
【0049】
傾動板44と連結部材42とは、板バネからなる弾性板45で連結しているが、軸方向に変形せず径方向に撓む弾性部材であれば、特には限定されず、これ以外の弾性部材を用いてもよい。また、傾動板44と連結部材42と間の変形が許容されるのであれば、弾性部材を用いず、両者を一体的に固定することもできる。
【0050】
上記実施形態で示した各部材の形態は、一例であり、上述したような中ぐり加工装置としての動作を行うことができるのであれば、その形態は特には限定されない。例えば、連結部材は、側面視Y字型であるが、これも一例であり、ドローバーからの引っ張り力を傾動板に作用させ、傾動板を傾斜させることができるのであれば、その形態は特には限定されない。
【0051】
上記実施形態では、ドローバー7を往復動させるために、リニアアクチュエータ8を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、軸方向モータと回転/直線運動変換機構(ボールネジ及びナット)の組み合わせなど、種々の手段を用いることができる。
【0052】
上記実施形態では、検出ユニットを2つのエアシリンダ33,37を駆動しているが、これに限定されるものではない。例えば、当接部36を1つのエアシリンダを用いることもできる。この場合、一つのエアシリンダが本発明の第3駆動部を構成する。また、当接部を軸部に対して近接離間できるのであれば、エアシリンダ以外の駆動手段、例えば、油圧装置、ボールねじ機構、モータなど、種々の手段を用いることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、軸部12の外周面の2箇所に、検知部36を当接させることで、軸部12の傾斜を検出しているが、これ以外に、例えば、検知部36を軸部12の外周面に当接させたまま軸部12を回転させて、傾斜を算出することもでき、種々の方法で、傾斜を算出することができる。
【0054】
上記実施形態では、検知部36に、接触式のセンサが内蔵されているが、検知部36には非接触式のセンサを用いてもよい。この場合、検知部36を軸部12に対して接触させる必要はなく、例えば、レーザなどにより、検知部36と軸部12の外周面との間の距離が測定できればよい。そして、その距離を位置情報として、軸部の傾斜を算出することができる。
【0055】
また、位置情報を取得するには、種々の方法がある。例えば、接触式の検知部を用いる場合には、検知部36と軸部12とが接触した検知部36の絶対座標を求めてもよいし、エアシリンダ33,37のピストンが伸びた距離とすることもできる。要するに、検知部36と軸部12とが接触したときの軸部12に対する検知部36の相対的または絶対的な位置を取得できればよい。非接触式の検知部である場合も同様であり、検知部36と軸部12との相対的または絶対的な距離が測定できればよい。
【0056】
また、本発明に係る中ぐり加工装置は、上述したピストンのピン穴の加工のみならず、通常の円形のほか、非円形の内壁面を形成すべき中ぐり加工全般に用いることができる。