特許第6268538号(P6268538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268538
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20180122BHJP
   H01R 13/502 20060101ALI20180122BHJP
   H01R 13/58 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   H01R13/533 D
   H01R13/502 Z
   H01R13/58
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-207124(P2014-207124)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-76427(P2016-76427A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椋野 潤一
(72)【発明者】
【氏名】逢澤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】北岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】湯川 秀蔵
【審査官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−86349(JP,A)
【文献】 特開2011−9108(JP,A)
【文献】 特開2014−38793(JP,A)
【文献】 特開2014−107152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/502
H01R 13/533
H01R 13/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を絶縁被覆で覆った被覆電線と、
相手端子と嵌合接続される端子金具と、
同端子金具と前記被覆電線の端末との間に介在された柔軟導体と、
前記端子金具を前記柔軟導体とともに収容した合成樹脂製のハウジングとが具備され、
前記被覆電線の前記芯線には同芯線と一体をなす芯線固定部が設けられ、同芯線固定部がモールド成形により前記ハウジングに埋設されており、
前記ハウジングは、前記芯線固定部が埋設され、前記端子金具の嵌合方向である前方向とは反対方向である後方に開口する後ハウジングと、前記後ハウジングに前方から嵌合する中央ハウジングと、前記端子金具を収容し、かつ前記中央ハウジングの前方から組み付けられる前ハウジングとを備えているコネクタ。
【請求項2】
前記芯線固定部が前記芯線に固着された金属部材である請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記芯線が複数の素線により構成され、前記芯線固定部が、抵抗溶接や超音波溶着により前記素線間を結合することで形成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングには前記被覆電線の端末部が挿通される電線挿通孔が設けられるとともに、前記被覆電線の前記端末部の長さ方向の途中位置において前記絶縁被覆が除去されることで露出した前記芯線に前記芯線固定部が設けられ、同芯線固定部が前記電線挿通孔の内面に埋設されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記柔軟導体は、前記被覆電線の端末から露出状態で引き出された前記芯線が余長が生じるように屈曲形成されたものである請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記被覆電線は、前記端子金具の嵌合方向と交差する方向に引き出されている請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線からの振動を遮断する機能を備えたコネクタとして、特開2014−11134号公報(下記特許文献1)に記載されたものが知られている。このコネクタの基本構造は、相手端子と嵌合接続される端子金具がハウジングの前端側に設けられたキャビティに収容されて、同端子金具の後端に編組線からなる伸縮性導体が接続される一方、ハウジングの底壁を貫通して被覆電線が内部に導入されてその端末が伸縮性導体と接続されるようになっている。
ここで、被覆電線における芯線の端末と、伸縮性導体の後端とは抵抗溶接により溶着されて平板状の溶着部が形成され、同溶着部がボルト締めされてハウジングに固定されている。この構造であると、被覆電線(芯線)から端子金具に伝わろうとする振動が、溶着部がハウジングに固定された部分で遮断され、端子金具同士の接点不良を招く等を防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−11134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記の振動遮断対策では、溶着部を形成するに当たり、芯線の端末と伸縮性導体の後端とをそれぞれ扁平な板状に成形して両者を溶着し、さらにねじ孔を切る必要があり、また溶着部をハウジングに固定するについては、別途備えたボルトで締め付ける必要があって、総じて製造に手間が掛かり、コスト高に繋がる嫌いがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、低コストで対応できる振動遮断構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される技術は、芯線を絶縁被覆で覆った被覆電線と、相手端子と嵌合接続される端子金具と、同端子金具と前記被覆電線の端末との間に介在された柔軟導体と、前記端子金具を前記柔軟導体とともに収容した合成樹脂製のハウジングとが具備され、前記被覆電線の前記芯線には同芯線と一体をなす芯線固定部が設けられ、同芯線固定部がモールド成形により前記ハウジングに埋設されているところに特徴を有する。
【0006】
被覆電線の芯線から端子金具に伝わろうとする振動が、芯線と一体をなす芯線固定部がハウジングに固定された部分で遮断され、端子金具同士の接点不良を招く等が未然に防止できる。上記の振動遮断に機能する部分は、芯線に設けた芯線固定部をハウジングに対しモールド成形で埋設することにより形成されており、製造工程が簡易化されてコスト低減に寄与することができる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記芯線固定部が前記芯線に固着された金属部材である。
(2)前記芯線が複数の素線により構成され、前記芯線固定部が、抵抗溶接や超音波溶着により前記素線間を結合することで形成されている。
芯線固定部を形成するに当たり金属部材を使用しないから、部品点数の削減に寄与し得る。
【0008】
(3)前記ハウジングには前記被覆電線の端末部が挿通される電線挿通孔が設けられるとともに、前記被覆電線の前記端末部の長さ方向の途中位置において前記絶縁被覆が除去されることで露出した前記芯線に前記芯線固定部が設けられ、同芯線固定部が前記電線挿通孔の内面に埋設されている。
被覆電線の端末部において露出した芯線に設けられた芯線固定部が、電線挿通孔の内面に埋設されることでハウジングに固定される。
【0009】
(4)前記柔軟導体は、前記被覆電線の端末から露出状態で引き出された前記芯線が余長が生じるように屈曲形成されたものである。
柔軟導体は、ハウジング同士の組立公差を吸収する等に機能するが、同柔軟導体が被覆電線の端末から引き出された芯線を利用して形成されているから、構造がシンプルに纏められる。
(5)前記被覆電線は、前記端子金具の嵌合方向と交差する方向に引き出されている。
コネクタがL型に形成され、嵌合方向の省スペース化に寄与し得る。
【発明の効果】
【0010】
本明細書によって開示される技術によれば、低コストで対応できる振動遮断構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係るコネクタの縦断面図
図2】実施形態2に係る芯線固定部の埋設部分を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
実施形態1を図1に基づいて説明する。本実施形態のコネクタCは、機器(例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載されたインバータやモータ等)のケースに取り付けられて使用されるものである。
コネクタCは大まかには、被覆電線10の端末に個別に設けられた複数個の端子金具20と、同端子金具20を収容する合成樹脂製のハウジング30と、ハウジング30を覆って装着されるシールドシェル60とを備えて構成されている。
【0013】
端子金具20は雌端子であって、ケース内に設けられた相手コネクタに装着された図示しない相手端子(雄端子)と嵌合接続されるように機能する。端子金具20は、内部に弾性接触片を備えた角筒状の端子本体21と、その後縁から延出形成された取付板22とを備えている。
【0014】
被覆電線10は、複数本の金属素線11A(図2参照)を寄り合わせた撚り線からなる芯線11の外周が、絶縁被覆12で覆われた構造である。被覆電線10の端末において絶縁被覆12が所定長さ切除(皮剥ぎ)されることにより、長尺の露出された芯線11(以下、ロングストリップ14)が引き出され、同ロングストリップ14が略L字形に屈曲されることにより柔軟導体15が形成されている。ロングストリップ14の先端部は扁平に拡げられ、この扁平部16が上記した端子金具20の後端の取付板22に抵抗溶接により固着されている。
【0015】
ハウジング30は上記のように合成樹脂製であって、後ハウジング31R、中央ハウジング31C及び前ハウジング31Fの3ピースにより構成されている。
後ハウジング31Rは、前後面が開口した角筒形をなし、その内部が仕切壁32により正面視で左右方向に端子金具20と同数の収容室33に仕切られている。各収容室33の底壁34のやや後端寄りの位置には、電線挿通筒35が下向きに突出形成されている。この電線挿通筒35には、詳しくは後記するように、被覆電線10における絶縁被覆12が残っている端末部の所定長さ部分(挿通部17)が挿通されている。
【0016】
後ハウジング31Rの各収容室33には、柔軟導体15における屈曲部15Aが形成された後側部分が収容されている。後ハウジング31Rの後面開口36の全面に亘り、外周に第1シールリング37が嵌着された後蓋体38が嵌められている。
後ハウジング31Rの前端側の外周には第2シールリング39が嵌着され、シール押さえ40で外れ止めされている。
【0017】
中央ハウジング31Cは短寸で厚肉の角筒部41を備え、同様に内部が同数の収容室43に仕切られている。角筒部41の後端面の外周縁からは、上記した後ハウジング31Rの前端部の外周に緊密に嵌合する薄肉の取付筒部44が突出形成されている。
角筒部41の前端側では外周が縮径され、その縮径部41Aの前端面の外周縁から薄肉の支持筒部45が突出形成されている。縮径部41Aの外周には第3シールリング46が嵌着されるとともに、支持筒部45には断面チャンネル形をなすフロントホルダ50が嵌着され、第3シールリング46の外れ止め等に機能するようになっている。
【0018】
前ハウジング31Fは、フロントホルダ50の内周に所定のクリアランス51を持って嵌合可能な略角筒形に形成され、その内部には、各端子金具20が緊密に挿入されて収容されるキャビティ55が形成されている。キャビティ55の前壁56には、相手端子(雄端子)のタブが挿入される端子挿入口57が形成されている。
前ハウジング31Fの上面には、端子金具20における端子本体21の後縁に係止して抜け止めするリテーナ58が、端子金具20の挿入方向と直交する方向の進退可能に装着されている。
【0019】
前ハウジング31Fの後端縁には、フロントホルダ50の内周壁52の内径寸法よりも大きい外径寸法を持ったフランジ59が張り出し形成されている。前ハウジング31Fは、上記したフランジ59が、中央ハウジング31Cの角筒部41の前面と、同中央ハウジング31Cに装着されたフロントホルダ50の内周壁52の後端面との間で挟持されることで抜け止めされ、かつ上記したクリアランス51により径方向に遊動可能であり、すなわちフローティング状態に支持されるようになっている。
【0020】
さて本実施形態では、被覆電線10における挿通部17の長さ方向の途中位置において、絶縁被覆12が所定長さ切除されることで芯線11が露出され、その露出した芯線11の外周に、比較的短寸の金属スリーブ25(「芯線固定部」の一例)が固着され、その金属スリーブ25が、後ハウジング31Rに設けられた電線挿通筒35の内周面35Aに埋設された構造となっている。
【0021】
続いて、上記した金属スリーブ25の埋設工程を含め、本実施形態のコネクタCの組立手順の一例を改めて説明する。
被覆電線10は、その端末の絶縁被覆12が所定長さに亘って切除されることにより、長尺の露出された芯線11すなわちロングストリップ14が引き出された形態とされる。また、被覆電線10の外周には、金属スリーブ25が摺動自由に嵌装される。そのため金属スリーブ25の元形は、被覆電線10の外径よりも少し大きい内径寸法を持った円環形に形成されている。
【0022】
被覆電線10における絶縁被覆12が残っている端末部すなわち挿通部17では、その長さ方向の途中位置おいて、絶縁被覆12が上記の金属スリーブ25よりも少し長い領域において切除され(切除部18)、芯線11が露出された状態とされる。そののち、逃がされていた金属スリーブ25が切除部18まで摺動され、露出した芯線11の外周に嵌められたのち、工具等でかしめられて芯線11に対して固着される。かしめ形態は、扁平に圧潰したり、六角かしめ等が挙げられる。
一方、被覆電線10の端末において引き出されたロングストリップ14の先端部が扁平に拡げられ、この扁平部16が、端子金具20の後端の取付板22に抵抗溶接により固着される。
【0023】
このように、ロングストリップ14の先端部に端子金具20が個別に接続された複数本の被覆電線10が、ロングストリップ14の途中位置を直角曲げすることで柔軟導体15が形成された形態により、図示しない金型内にセットされ、モールド成形により後ハウジング31Rが形成される。後ハウジング31Rが形成されたときには、各被覆電線10の柔軟導体15の後部側が収容室33に収められるとともに、端子金具20が後ハウジング31Rの前方に突出した状態となる。
【0024】
一方、被覆電線10は、挿通部17が電線挿通筒35を通って下方に引き出される。ここで、挿通部17において露出した芯線11に直に固着された金属スリーブ25が、電線挿通筒35の内周面35Aに埋設された状態となる。
なお、引き出された複数本の被覆電線10は、ハーネスとして一纏めにされる。
【0025】
上記のようにモールド成形により形成された後ハウジング31Rの前端側では、第2シールリング39が嵌着されたのちシール押さえ40で外れ止めされる。続いて、第3シールリング46が嵌着された中央ハウジング31Cが、端子金具20を収容室43に通して後ハウジング31Rの前面側に当てられ、後端の取付筒部44が後ハウジング31Rの前端部の外周に嵌ってロックされることで連結される。
【0026】
それとともに、リテーナ58が後退位置に保持された形態の前ハウジング31Fが準備され、後ハウジング31Rの後面開口36を通して柔軟導体15を押さえつつ、前ハウジング31Fを中央ハウジング31Cの前面に向けて移動させることで、各端子金具20が対応するキャビティ55内に後方から挿入される。端子金具20が前壁56に当たるまで挿入されたところでリテーナ58が前進位置に押し込まれ、各端子金具20がキャビティ55内に抜け止めされて収容される。
【0027】
次に、フロントホルダ50が、内周壁52の内部に前ハウジング31Fをクリアランス51を持って通し、かつ外周壁53の内面を中央ハウジング31Cの支持筒部45の外面に沿わせつつ前方から嵌められ、図示しないロック部材を介して取り付けられる。フロントホルダ50が定位置に取り付けられると、外周壁53が第3シールリング46の外れ止めとして機能する。
また、内周壁52の後端が、前ハウジング31Fの後端のフランジ59を、中央ハウジング31Cの角筒部41の前面との間で緩く挟むことにより、前ハウジング31Fがフロントホルダ50内において径方向に遊動可能に支持され、すなわちフローティング状態に支持される。
さらに、フロントホルダ50は、リテーナ58が前進位置から戻ることを規制することにも機能する。
【0028】
その後、後側ハウジング30の後面開口36に、第1シールリング37が嵌着された後蓋体38が水密に嵌められて取り付けられる。
最後に、シールドシェル60が、ハウジング30の上面、左右側面及び背面を覆うように被せられ、後ハウジング31Rの上面にねじ61で止められることにより固定される。以上により、コネクタCの組み立てが完了する。
【0029】
上記のように組み立てられたコネクタCの使用形態を説明する。コネクタCにおけるハウジング30の前端部が、図示はしないが、ケースの取付部に形成された取付孔に嵌合され、ケース内で待ち受けている相手コネクタのハウジングと嵌合される。このとき、ハウジング30(前ハウジング31F)と相手のハウジングとが芯ずれしていた場合、フローティング機構により前ハウジング31Fが遊動しつつ芯出しされて、相手のハウジングに嵌合されるのであるが、被覆電線10に設けられた柔軟導体15が変形しつつ前ハウジング31Fの遊動が許容され、前ハウジング31Fと相手のハウジングとが正確にかつスムーズに嵌合される。それに伴い、ハウジング30に収容された各端子金具20が、相手のハウジングに装着された対応する相手端子と正規に嵌合接続される。コネクタCは、シールドシェル60の上面の前端部が、ケースの取付部にねじ止めされて固定される。これにより、ケース内の機器に対する導電路が形成される。
【0030】
使用状態において、ハウジング30の外部に引き出されたハーネスが振動を受けると、被覆電線10の特に芯線11を介して振動が端子金具20に伝わろうとするのであるが、被覆電線10の挿通部17において芯線11に一体に固着された金属スリーブ25が、ハウジング30に形成された電線挿通筒35の内周面35Aに食い込んで固定されているから、芯線11を伝わった振動が、金属スリーブ25がハウジング30に対して固定された部分で遮断されて、端子金具20に振動が伝わることが規制され、相手端子との間で接点不良を招く等が未然に防止できる。
特に、上記した振動を遮断する部分は、芯線11に固着した金属スリーブ25を後ハウジング31Rの電線挿通筒35に対しモールド成形で埋設することにより形成されており、製造工程が簡易化されてコスト低減が図られる。
【0031】
使用時において被覆電線10の芯線11に発熱が生じた場合も、挿通部17において芯線11に直に固着された金属スリーブ25が、ハウジング30の電線挿通筒35の内周面35Aに埋設された構造であることから、ハウジング30を介して効率良く放熱が行われ、被覆電線10の芯線11さらには端子金具20が温度上昇することを抑制できる。
【0032】
<実施形態2>
図2は実施形態2を示す。この実施形態2では、芯線固定部並びにその埋設構造に変更が加えられている。すなわち、被覆電線10における挿通部17の長さ方向の途中位置において、絶縁被覆12が所定長さ切除されることで芯線11が露出され、その露出された部分において、抵抗溶接や超音波溶着により同芯線11を構成する金属素線11A同士を結合することによって、芯線固定部70が形成されている。
そして、被覆電線10の挿通部17が電線挿通筒35に挿通された形態で、後ハウジング31Rがモールド成形により形成される。ここで、芯線固定部70は撚り線を抵抗溶接や超音波溶着で溶着することにより形成されているから、その外周面には凹凸があり、芯線固定部70の外周面が電線挿通筒35の内周面35Aに食い込み、すなわち埋設された状態となる。その他の構造については、実施形態1と同様である。
【0033】
実施形態2では端的には、被覆電線10の挿通部17において芯線11(金属素線11A)を固めて一体化した芯線固定部70が、ハウジング30に形成された電線挿通筒35の内周面35Aに食い込んで固定されているから、実施形態1と同様に、被覆電線10の特に芯線11を介して振動が端子金具20に伝わろうとした場合に、同振動が芯線固定部70がハウジング30に対して固定された部分で遮断されて、端子金具20に振動が伝わることが規制され、相手端子との間で接点不良を招く等が未然に防止できる。
また、使用時において被覆電線10の芯線11に発熱が生じた場合も、ハウジング30を介して効率良く放熱が行われ、被覆電線10の芯線11さらには端子金具20が温度上昇することを抑制できる。
実施形態1と比べると、芯線固定部70を形成するに当たって金属スリーブ25(金属部材)を使用しないから、部品点数の削減に寄与し得る。
【0034】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も含まれる。
(1)実施形態1に示した芯線固定部を構成する金属部材の他の例として、Cリングのようなオープン形式の金属スリーブであってもよい。このような金属スリーブでは、被覆電線の挿通部において絶縁被覆を切除して芯線を露出させたのちに、同金属スリーブを嵌めてかしめればよいから、金属スリーブの固着作業が簡単になる。
(2)上記実施形態に例示したコネクタの組立手順はあくまでも一例であって、適宜に変更し得るものである。また、ハウジングの形状についても、ピース数も含めて適宜に変更可能である。
【0035】
(3)本開示技術は、柔軟導体として編組線を用いたものにも同様に適用できる。実施形態1に照らすと、端子金具の後端にL字形に屈曲された編組線の一端を接続する一方、同編組線の他端と、被覆電線の端末から突出された芯線の端末との間に、細長い金属板からなる芯線固定部を渡して抵抗溶接等で接続した形態とし、被覆電線をハウジングの外部に引き出す構造が採られるが、振動遮断構造としては、金属板における芯線と接続された側の端部を、モールド成形によりハウジングに埋設した構造とすればよい。
(4)上記の柔軟導体として編組線を用いた場合における金属部材(芯線固定部)の他の例としては、編組線の端部に抵抗溶接で接続される接続板の後端に、被覆電線における芯線の端末にかしめられるバレルを設けた構造のものであってもよい。この芯線固定部では、芯線にかしめられたバレルをモールド成形によりハウジングに埋設した構造とすればよい。
【0036】
(5)実施形態2に照らすと、被覆電線の端末から突出された露出した芯線について、少なくとも基端側で抵抗溶接や超音波溶着により素線間を結合して芯線固定部を形成する一方、芯線の突出端を、端子金具の後端に接続されたL字形の編組線の端部に接続し、振動遮断構造としては、露出した芯線の基端部に設けた芯線固定部を、モールド成形によりハウジングに埋設した構造とすればよい。
【0037】
(6)上記実施形態では、ハウジングの後面から電線を直角方向に引き出す形式のコネクタを例示したが、電線をハウジングの後方に真直に引き出す形式のコネクタにも、同様に適用することが可能である。
(7)上記実施形態ではインバータやモータのケースに取り付けられるシールドコネクタを例示したのであるが、インバータやモータ以外の他の機器のケースに取り付けられるシールドコネクタに適用することも可能である。さらに、シールドを採らない形式の機器取付用のコネクタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
C…コネクタ
10…被覆電線
11…芯線
11A…金属素線(素線)
12…絶縁被覆
14…ロングストリップ
15…柔軟導体
17…挿通部(被覆電線の端末部)
18…切除部
20…端子金具
25…金属スリーブ(金属部材;芯線固定部)
30…ハウジング
31R…後ハウジング
35…電線挿通筒(電線挿通孔)
35A…(電線挿通筒35の)内周面
70…芯線固定部
図1
図2