特許第6268540号(P6268540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.の特許一覧

<>
  • 特許6268540-メラミンの縮合物の調製方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268540
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】メラミンの縮合物の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/70 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
   C07D251/70 D
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-501572(P2014-501572)
(86)(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公表番号】特表2014-509623(P2014-509623A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2012055386
(87)【国際公開番号】WO2012130827
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月20日
【審判番号】不服2016-17351(P2016-17351/J1)
【審判請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】11159957.7
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ストールウィンダー, クリスチャン ヨハネス コーネリス
(72)【発明者】
【氏名】クワント, ジェラルド ジャン
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 木村 敏康
【審判官】 齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−511409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D251/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミンまたはメラミン塩を含む出発物質を、
(i)少なくとも1種の有機酸もしくは無機酸、または
(ii)前記酸の少なくとも1種のアンモニア塩もしくはメラミン塩、または
(iii)(i)と(ii)との組み合わせ
の存在下において、250℃〜350℃の間の最高温度を生じるような反応条件下において加熱し、メラムと、前記有機酸もしくは無機酸および/またはその塩とを含む反応生成物混合物を結果としてもたらす工程を含む方法によって得られるメラムの精製方法であって、前記精製方法は、
a)少なくとも9のpHを有する水中塩基溶液中の前記反応生成物混合物の希釈スラリーを作製する工程と、
b)前記希釈スラリーを少なくとも1時間保持する工程と、
c)前記希釈スラリーを濃縮し、それにより濃縮スラリーおよび溶離液を得る工程と、
d)前記濃縮スラリーを水性液で希釈し、工程cを繰り返すことによって前記濃縮スラリーを洗浄する工程と
を含み、ここで、前記洗浄は、向流洗浄により行われ、下流の濃縮工程の溶離液が、上流の濃縮工程において前記濃縮スラリーを洗浄するために使用される、方法。
【請求項2】
前記濃縮スラリーの前記洗浄が、N回の洗浄工程(Nは正の整数である)で行われ、ここで、工程n=x(xは1からN−1を含むN−1までの(選択される)整数である)においては、前記混合物が、工程n=x+1で使用された水で洗浄され、工程n=Nにおいては、前記メラムが、新しい水性液で洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性液が水である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Nが、2〜10の範囲内の整数である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
精製縮合物1kg当たり50リットル未満の水性液が使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
濾過が、向流洗浄と組み合わされた全濾過により行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
塩基の量が、少なくとも、前記反応生成物混合物中の前記酸との化学量論量にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基として水酸化ナトリウムが使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記希釈スラリーを保持する前記工程b)が、20〜70℃の温度で行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記希釈スラリーを保持する前記工程b)が、最長14時間行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記希釈スラリーを保持する前記工程b)が、撹拌容器中で行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、メラミン縮合物、特にメラムの調製方法に関する。
【0002】
メラミンは、特定の反応条件下において加熱されるとメラミン縮合物を形成する。アンモニアが、その反応において放出される。同様に、メラミン塩は、加熱されると縮合物を形成する。メラミン縮合物としては、メレム、メロン、およびメラム、ならびにそれらの塩が挙げられる。一般的に、メラム(C11)は、触媒の存在下において325℃未満でメラミンおよび/またはメラミン塩を加熱すると形成され、メラミン合成の副生物である。こうした生成物は、ポリマー組成物における防炎加工剤としての使用に極めて好適である。メラミン縮合物は、他の防炎加工剤(例えば、ハロゲン化合物およびメラミンなど)と比べて高い熱安定性を有する。メラムおよびより高次のメラミン縮合物(例えば、メレム、メロンおよびメトン)は、350℃未満の温度では、大量に昇華および分解することはない。結果として、そうしたポリマー組成物は、従来の防炎加工剤を組み込んだ組成物と比較してより良好な熱安定性を示す。さらなる利点は、メラム入りポリマー組成物の射出成形の間の金型付着物の形成が抑制されるということである。
【0003】
縮合によるメラムの調製に関する具体的な方法は、例えば、V.A.Gal’perinら,Zhurnal Oraanicheskoi Khimii,Vol.7,No.11,pp.2431−2432(1971年11月)に、およびGavrilovaら,Zhurnal Oraanicheskoi Khimii,Vol.13,No.3,pp.669−670(1977年3月)に記載されている。実験室規模の実験において、290℃〜320℃の間の温度にて、ZnCl2縮合剤を用いてメラミンがメラムの塩に転化された。
【0004】
そうして得られるメラム生成物中の亜鉛および塩化物の割合は、非常に高い。亜鉛および塩化物の不純物の存在は、プラスチックにおける難燃剤としてのメラムの使用にとって重大な欠点である。両方のイオンが、洗い落すことが困難である。さらに、生成物から亜鉛および塩化物を洗い落すことは、メラムの高い加水分解度を結果としてもたらし得る。
【0005】
あるいはまた、メラミンは、実験室規模(例えば、ミリグラムまたはグラム規模)で、縮合剤としての無機酸の存在下においてもメラムなどの縮合物に転化され得る。無機酸としては、HCl、HBr、硫酸、リン酸、およびそれらの混合物が挙げられる。これらの酸のアンモニア塩またはメラミン塩もまた、使用され得る。
【0006】
メラミン縮合物を提供する方法は、国際公開第96/16948号パンフレットに開示されている。この方法は、メラミンまたはメラミン塩を含む出発物質を、
(i)少なくとも1種の有機酸、または
(ii)有機酸の少なくとも1種のアンモニア塩もしくはメラミン塩、または
(iii)(i)と(ii)との組み合わせ
の存在下において、メラミン縮合物の形成に有効な反応条件下において加熱する工程を含む。
【0007】
この方法は、商業規模の生産に好適である。
【0008】
国際公開第96/16948号パンフレットの方法はそれまでに知られていた方法に鑑みて改善を示すが、しかしながら、この方法に関する問題は、高レベルの純度を有するメラミン縮合物を得ることが、依然として困難であることである。これは、メラミン縮合物と、有機酸もしくは無機酸および/またはその塩またはその他の残留物とを含む反応生成物混合物を結果としてもたらす。
【0009】
国際公開第96/16948号パンフレットの実施例において、加熱工程後の反応混合物を水中アンモニア溶液で洗浄する方法が開示されている。縮合物を含有する最終混合物中の低レベルの有機酸が、例えば420gの反応混合物のわずか1リットルの3%アンモニア水での洗浄後に報告されている。しかしながら、これらの結果は間違っている。というのは、国際公開第96/16948号パンフレットに示されるような加熱工程後の反応混合物の洗浄だけでは、縮合物を含有する最終混合物中の所望の低レベルの有機酸がもたらされることはないからである。本発明者らにより観察されたように、そのような低レベルの不純物は、それよりもはるかに多くの量の洗浄液およびより厳格な対策を必要とするであろう。
【0010】
V.B.Lotschら,Chem.Eur.J,2007,13,4956−4968による科学論文において、メラム水和物の調製について記載されている。そのメラム水和物は、メラム−NH4Cl付加物から得られ、この付加物は、メラミンおよびNH4Cl(塩化アンモニウム)を12時間にわたり723K(382℃)で加熱することによって合成された。得られたメラム−NH4Cl付加物(550mg)は、NH3水(60mL、25%)中で撹拌された。
【0011】
上で参照した国際公開第96/16948号パンフレットにおいて、メラムが同様にメラミン(25.2g)と塩化アンモニウム(5.4g)との反応によって調製される実験について記載している。その混合物は、2時間にわたり340℃で加熱された。生成物は、1リットルの3%アンモニア溶液で洗浄された。メラムの収率は90%であり、残留塩化物含有量は5.7%であった。
【0012】
明らかに、より少ない量の洗浄液と組み合わせたそのような低濃度溶液は、メラムから残留酸成分を除去するのに効率的でない。依然として比較的大体積の水が洗浄のために使用されるにも関わらず、高い純度とはならない。濃アンモニアが有効であることが示され、科学的研究のためにそのような少量のメラムを精製するには有用であり得るが、工業規模での使用には適さない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、濃縮スラリーの洗浄方法の概略図を示す。
【0014】
したがって、本発明の目的は、メラミン縮合物を含有する高純度の最終混合物が容易に得られる、工業規模で使用され得る方法を提供することである。
【0015】
驚くべきことに、この目的は、例えば上で規定されたような工程を含む方法によって得られる、メラミン縮合物の精製方法であって、当該精製方法は、
a)少なくとも9のpHを有する水中塩基溶液中のメラミン縮合物を含む反応生成物混合物の希釈スラリーを作製する工程と、
b)希釈スラリーを少なくとも1時間保持する工程と、
c)希釈スラリーを濃縮し、それにより濃縮スラリーおよび溶離液を得る工程と、
d)濃縮スラリーを水性液で希釈し、工程cを繰り返すことによって濃縮スラリーを洗浄する工程と
を含み、ここで、洗浄は、向流洗浄により行われ、下流の濃縮工程の溶離液が、上流の濃縮工程において濃縮スラリーを洗浄するために使用される、方法により達成される。
【0016】
この精製方法の効果は、比較的低塩基濃度を有する塩基性水溶液が使用され得、かつ必要とされる水の総量が妥当な範囲内に保たれる一方で、驚くべきことに、それにもかかわらず、比較的高純度を有するメラミン縮合物が得られることである。
【0017】
本発明に従う方法は、好適には、複数の洗浄工程を含む。当該方法は、例えばN回の洗浄工程を有し、Nは正の整数である。正の整数により、ゼロより大きな全ての整数、例えば、1、2、3、4、5などが意味される。請求項1に記載のこの方法において、好ましくは、工程n=x(xは1からN−1を含むN−1までの(選択される)整数である)においては、混合物が、工程n=x+1で使用された水で洗浄され、工程n=Nにおいては、縮合物が、新しい水性液、好ましくは水で洗浄されるというような具合に、濃縮スラリーの洗浄が行われる。
【0018】
洗浄工程数Nは、少なくとも2であり、好ましくは2〜10の範囲内にある。
【0019】
本発明に従う方法における濃縮工程に関し、希釈スラリーから濃縮スラリーおよび溶離液を分離して得るために、原則的に、工業規模プロセスにおいて使用され得る任意の方法が適用され得る。そのような工程は、濾過または沈降により行われ得る。これらは、工程を加速するために、例えば遠心濾過または遠心沈降の場合のように、遠心分離と組み合わされ得る。
【0020】
洗浄は、濾過または沈降技術により達成され得る。こうした技術の例としては、デカント遠心機(decanting centrifuge)、クロスフロー濾過、遠心濾過、および静的濾過が挙げられる。これらの技術は、下流の濃縮工程の溶離液が上流の濃縮工程においてスラリーを作製するために使用される向流洗浄と組み合わされる。したがって、75〜85%の洗浄用水性液必要量(wash waterliquid requirement)の節約が達成され得る。
【0021】
好ましくは、この濃縮は、クロスフロー濾過(微細濾過);遠心沈降(デカンタ遠心機);遠心濾過(バスケット遠心機)または全濾過(Nuetscheまたはベルトフィルター)により、そのそれぞれが向流洗浄と組み合わされて行われる。
【0022】
クロスフロー濾過(例えば、微細濾過)は、高い濾過流束が達成され得、ひび割れ得るケークが何ら形成されず、これがこの濾過方法を確証し得るという利点を有する。
【0023】
遠心沈降(例えば、デカンタ遠心機)は、洗浄液が濾過ケークを透過する必要がないという利点を有する。沈降物は、新しい水性液でかなり容易に再スラリー化される。粒径、密度およびG力次第で、分離速度が高くなり得る。
【0024】
遠心濾過(例えば、バスケット遠心機)は、高い濃縮係数および低い洗浄用水性液消費量を結果としてもたらす集中的な洗浄用水性液/ケーク接触を可能にする。
【0025】
全濾過(例えば、Nuetsche、Buechnerまたはベルトフィルター)もまた、高い濃縮係数を結果としてもたらす集中的な洗浄水濾過ケーク接触を提供する。これは、低い洗浄用水性液消費量を結果としてもたらす。
【0026】
最も好ましいのは、向流洗浄と組み合わされた全濾過であり、これは最も低い洗浄用水必要量を可能にする。同様に最も好ましいのは、向流洗浄と組み合わされた沈降遠心機である。これは、非常に低い洗浄用水性液必要量および非常に安定した工程を可能にし、不均一な洗浄を結果としてもたらすケークのひび割れの危険性を低減する。
【0027】
好ましくは、希釈スラリーを保持する工程b)は、20℃〜70℃の間、より好ましくは30℃〜60℃の間の温度で行われる。工程b)は、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも4時間行われる。工程b)は、好ましくは最長15時間、より好ましくは最長10時間、さらにより好ましくは最長8時間、最も好ましくは最長6時間行われる。水中塩基溶液のpHは、好ましくは少なくとも9、より好ましくは少なくとも10、なおさらに好ましくは少なくとも12、最も好ましくは12〜14の間である。溶液のpHにより、出発溶液のpHが意味され、この溶液は、その溶液中の希釈スラリーを作製するためにそれが反応混合物と一緒にされる前の溶液である。好ましくは、塩基は、加熱工程において使用された無機酸または有機酸に照らした化学量論量(stochiometric amount)より多くの量、より好ましくはそのような化学量論量(stochiometric amount)の少なくとも1.25倍より多くの量で使用される。塩基としては、例えばアンモニア、またはアルカリ水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)を使用することが可能である。最終生成物において得られる純度に関する最良の結果は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの場合に得られる。
【0028】
好ましくは、希釈スラリー中の固形物の濃度は、希釈スラリーの総重量の5〜25重量(wt)%の間、より好ましくは10〜18wt.%の間である。
【0029】
良好な結果は、混合物と塩基溶液とのスラリーが撹拌容器中で混合され、その撹拌容器中で、上で示した温度にて、上で示した時間にわたり保持される場合に得られる。
【0030】
好ましくは、混合物の希釈スラリーを作製する工程a)およびその希釈スラリーを保持する工程b)は、縮合物が形成される加熱工程のすぐ後に行われ、好ましくは、混合物を塩基溶液と接触させる前に100℃未満の温度まで混合物が冷却される。
【0031】
希釈スラリーを特定の温度で特定の時間にわたり保持する工程b)の後、その希釈スラリーは濃縮される。そのような濃縮の結果は、大抵の場合、縮合物を含有する混合物の濃縮ケークである。そのような濃縮は、フィルター、バスケット遠心機またはデカンタ遠心機を用いることにより行われ得る。
【0032】
フィルターまたはバスケット遠心機(全濾過)が用いられる場合、濃縮スラリーは、好適には、フィルターまたはバスケット遠心機からの濃縮スラリーの除去の前に水で洗浄される。
【0033】
デカンタ遠心機(沈降)が用いられる場合、洗浄は、好適には、容器中で濃縮スラリーを水と混合して再び希釈スラリーを得、その希釈スラリーを洗浄工程後に濃縮して再び濃縮ケークを得ることにより行われる。好適には、洗浄は、水を用いて好ましくは20〜70℃の温度で行われる。
【0034】
好ましくは、濃縮スラリーの洗浄は、N回の洗浄工程により行われ、ここで、工程n=x(xは1(第1の洗浄工程)からN−1を含むN−1(最後の洗浄工程の前の洗浄工程)までの整数である)においては、濃縮スラリーが、工程x+1で使用された水で洗浄され、最終洗浄工程Nにおいては、縮合物が、新しい水で洗浄される。
【0035】
このような方法の概略図を図1に示す。
【0036】
この方式であると、正味の水需要は、全ての洗浄工程において新しい水のみが使用される場合の量のほんの一部にすぎず、したがって、極めて経済的な方法が得られる。
【0037】
新しい水としては、どんな水でも使用され得るが、好ましくは、ミネラル含有量の少ない水(例えば、飲料水、プロセス水または脱塩水など)が使用される。
【0038】
好ましくは、N=2〜10、すなわち、Nは2〜10の範囲内の整数である。より好ましくはN=3〜8、最も好ましくはN=3〜6である。この方式であると、精製縮合物1kg当たり50リットル未満という水の使用が可能である。好ましくは、30リットル未満、より好ましくは20リットル未満、最も好ましくは10リットル未満の水が、縮合物1kg当たりに使用される。
【0039】
洗浄工程後、混合物は乾燥され得る。
【0040】
本発明のメラミン縮合物は、アンモニアの放出を結果としてもたらすメラミンまたはメラミン塩を含む出発物質の自己縮合の結果である。例示的なメラミン縮合物としては、メラム、メレム、およびメロンが挙げられる。
【0041】
好ましくは、メラミン縮合物は、少なくとも90重量%のメラムを含む。
【0042】
メラミン縮合物の量は、HPLC(=高圧液体クロマトグラフィー)により好適に測定される。
【0043】
本発明に従う方法において使用され得るメラミン塩の例としては、リン酸、硫酸、硝酸、脂肪酸、およびギ酸から調製される塩が挙げられる。
【0044】
本発明の方法における加熱工程は、メラミン縮合物の形成をもたらす温度および反応条件下において行われる。例えば、加熱工程は、例えば約250℃〜約350℃の間の最高温度を生じるように行われ得る。しかしながら、好ましくは、加熱工程は、約260℃〜約300℃の間の最高温度を生じるように実施される。
【0045】
好ましくは、アンモニアは、それが放出されるにつれて反応現場から除去される。
【0046】
有機酸または無機酸は、縮合剤として使用される。無機酸としては、リン酸、硫酸および硝酸が使用され得る。好ましくは、有機酸が使用される。有機酸は、種々の有機酸から選択され得る。
【0047】
概して、有機酸は、その構造中に、例えばカルボキシル基、スルホン基、またはリン含有基(phosphoric group)を有し得る。他の酸性基が可能である。
【0048】
本発明に従う方法を用いての非常に良好な結果は、使用される有機酸がスルホン酸、より好ましくはパラ−トルエンスルホン酸である場合に得られる。というのは、高レベルの純度が得られるからである。
【0049】
概して、有機酸または有機酸の塩の量は、例えば、メラミンまたはメラミン塩の量に対して約0.05〜約5.0molの間であり得る。好ましくは、有機酸または有機酸の塩の量は、メラミンまたはメラミン塩の量に対して約0.1〜約3.0molの間である。
【0050】
加熱工程は、好ましくは、少なくともいくらかの振動(agitation)を反応混合物に与えながら実施される。
【0051】
例えば、反応混合物は、撹拌され得る。好ましくは、反応は、実質的に水平に取り付けられた撹拌反応器中で行われる。縮合の結果として、アンモニアNHが形成される。アンモニアは、不活性ガス(例えば、窒素など)を用いて反応器からパージされ得る。加熱工程の長さは、1〜6時間、好ましくは3〜5時間であり得る。
【0052】
メラミン縮合物(例えば、メラム)は、防炎性組成物を生じるために、ポリマーと混合され得る。メラミン縮合物(例えば、本発明に従う方法を用いて生成されたメラム)が、ポリマー組成物中の防炎加工剤としての使用に極めて好適であることが見出された。
【0053】
好ましくは、本発明の方法により、メラミン縮合物および有機酸を含有する最終混合物であって、その混合物中の有機酸の含有量が縮合物100重量部(pbw)において0.1pbw未満、より好ましくは縮合物100pbwにおいて0.05pbw未満である、最終混合物が得られる。
【0054】
防炎加工ポリマー組成物(例えば、少なくとも難燃性のもの)は、例えば押出機において例えば約150℃〜約450℃の間の高温で、1種以上のポリマーをメラミン縮合物(例えば、メラム)と合わせて混合することによって調製され得る。この混合物は、グラニュール(または他の所望の物理的形態、例えば、ペレット、粉末、フレークなど)に変換される。
【0055】
メラミン縮合物と成形性ポリマーとの相対量は、最終組成物に難燃性および成形性を付与するように選択される。メラミン縮合物の量は、例えば、5〜35wt.%の間、好ましくは10〜25wt.%の間であり得る。
【0056】
組成が比較的均一な、ポリマー組成物の粉末状粒子が好ましい。最終物理的形態への変換は、当業者に知られているような様々な方式で行われ得る。
【0057】
メラミン縮合物によって防炎加工され得るポリマーは、好ましくは成形性ポリマーである。好ましくは、ポリマーは、射出成形され得、かつ熱可塑性ポリマーである。しかしながら、場合によっては、熱硬化性ポリマーもまた使用され得る。様々なポリマーおよびポリマー混合物が使用され得る。例としては、以下のポリマーのうちの1つ以上が挙げられる。すなわち、
(1)モノオレフィンおよびジオレフィンのポリマー(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン、ポリ−lブテン(poly−lbutene)、ポリメチル−1−ペンテン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリエチレン(任意選択で架橋されていてよい)(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)など)またはそれらの混合物など);
(2)任意選択で他のビニルモノマーとのコポリマーであってよい、モノオレフィンおよびジオレフィンのコポリマー(例えば、エチレン−プロピレンコポリマー、線状低密度ポリエチレンおよびこれらと低密度ポリエチレンとの混合物、ならびにエチレンとプロピレンおよびジエン(例えば、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンまたはエチリデンノルボルネン(EPT))とのターポリマーなど);さらに、そのようなコポリマーと(1)で記載したポリマーとの混合物(例えば、ポリプロピレン/エチレン−プロピレンコポリマーなど);
(3)ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(aメチルスチレン)、およびスチレンまたはaメチルスチレンとジエンまたはアクリル誘導体とのコポリマー(例えば、スチレンブタジエン、スチレンアクリロニトリル、スチレンアルキルメタクリレート、スチレンブタジエンアルキルアクリレート、スチレン−無水マレイン酸、スチレン−アクリロニトリル−メチルアクリレートなど)、ならびにスチレンのブロックコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンまたはスチレンエチレン/プロピレン−スチレンなど);
(4)ポリブタジエン、ポリブタジエン−スチレンコポリマーまたはポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマー上へのスチレンまたはa−メチルスチレンのグラフトコポリマー;ポリブタジエン上へのスチレンおよびアクリロニトリル(またはメタクリロニトリル)のグラフトコポリマー(ABS);ポリブタジエン上へのスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートのグラフトコポリマー(xBS);ポリブタジエン上へのスチレンおよび無水マレイン酸のグラフトコポリマー;ポリブタジエン上へのスチレン、アクリロニトリルおよび無水マレイン酸またはマレイン酸イミドのグラフトコポリマー;ポリブタジエン上へのスチレンおよびマレイン酸イミドのグラフトコポリマー;ポリブタジエン上へのスチレンおよびアルキルアクリレート(またはアルキルメタクリレート)のグラフトコポリマー;エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー上へのスチレンおよびアクリロニトリルのグラフトコポリマー(AES)、アクリレート−ブタジエンコポリマー上へのポリアルキアクリレート(polyalkyacrylate)またはポリアルキルメタクリレートのグラフトコポリマー、ならびに(3)で記載したコポリマーとの混合物;
(5)a,S−不飽和酸およびその誘導体から誘導されたポリマー(例えば、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートおよびポリアクリルアミド)ならびにそれらと他の不飽和モノマーとのコポリマー(例えば、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル−アルキルアクリレートコポリマー、アクリロニトリル−アルコキシアルキルアクリレートコポリマーまたはアクリロニトリル−アルキルメタクリレート−ブタジエンターポリマーなど);
(6)不飽和アルコールおよびアミンまたはそれらのアシル誘導体もしくはアセタールから誘導されたポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリフタル酸アリル、ポリアリルメラミン)ならびに(1)で記載したオレフィンとのコポリマー;
(7)環状エーテルのホモポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはそれらのビスグリシジルエーテルとのコポリマー);
(8)ポリオキシメチレンおよびコモノマー(例えば、エチレンオキシドなど)を含有する上記ポリオキシメチレンなどのポリアセタール;熱可塑性ポリウレタン、アクリレートまたはNBSで修飾されたポリアセタール;
(9)ポリフェニレンオキシドおよびスルフィドならびにそれらのスチレンポリマーとの混合物またはポリアミドとの混合物;
(10)一方における末端ヒドロキシル基を有するポリエーテル、ポリエステルおよびポリブタジエンと、他方における脂肪族または芳香族ポリイソシアネートとから誘導されるポリウレタン、ならびにそれらの前駆体生成物;
(11)ジアミンおよびジカルボン酸から、ならびに/またはアミノカルボン酸もしくは対応するラクタムから誘導される、ポリアミドならびにコポリアミド(例えば、ポリアミド4、ポリアミド6/6、6/10、6/9、6/12、4/6、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ジアミンおよびアジピン酸に基づく芳香族ポリアミド);ヘキサメチレンジアミンと、イソフタル酸および/またはテレフタル酸と、任意選択で改質剤としてのエラストマーとから作製されたポリアミド(例えば、ポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド);ポリアミドと、ポリオレフィン、オレオインコポリマー(oleo in copolymer)、アイオノマーもしくは化学的に結合もしくはグラフトしたエラストマーとの、またはポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールなど)とのブロックコポリマー;さらに、EPTまたはABSで修飾されたポリアミドまたはコポリアミド、および加工の間に形成されるポリアミド(RIMポリアミド系);
(12)ポリ尿素、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、およびポリシロキサン;
(13)ジカルボン酸およびジアルコールから、ならびに/またはヒドロキシカルボン酸もしくは対応するラクトンから誘導される、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート)、ならびにヒドロキシル末端基を有するポリエーテルから誘導されるブロックポリエーテルエステル;さらに、ポリカーボネートまたはMBSで修飾されたポリエステル;
(14)ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンおよびポリエーテルケトン;ならびに
(15)熱硬化性樹脂(例えば、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアクリレートもしくはポリエーテル、またはこれらのポリマーのうちの1つ以上と架橋剤とを含む組成物など)。
【0058】
防炎加工ポリマー組成物はまた、当業者に知られているような、ポリマー組成物において使用される成分(例えば、充填剤、可塑剤、滑剤、安定剤、難燃剤、相乗剤、加工助剤、および強化用繊維(例えば、炭素繊維またはガラス繊維)など)も含有し得る。
【0059】
[実施例]
本発明を、以下の非限定的実施例により説明する。
【0060】
[比較実験A]
メラミン(252グラム)(DSM)とパラ−トルエンスルホン酸一水和物(174グラム)(Hoechst)との混合物を、オーブンに入れた2リットルフラスコ中で、撹拌しながら290℃の温度で加熱した。縮合反応からアンモニア(NH)が生じ、これを窒素により反応混合物から除去した。1モルのHSO溶液で、このアンモニアを捕捉した。290℃での2時間の反応時間後、フラスコ中の混合物を冷却し、3.66リットルの3%アンモニア溶液を用いて、反応混合物とその溶液とを混合し、その混合物と溶液とを2〜3分間撹拌することにより洗浄した。次いで、その合わせた混合物と溶液との希釈スラリーを濾過し、そうして得られた残留濾過ケークを乾燥させた。濾過および乾燥後、メラム(241グラム、収率100%)を得た。硫黄含有量は0.5wt.%であった。したがって、パラ−トルエンスルホン酸含有量は2.5wt.%であった。比較実験Aは、国際公開第96/16948号パンフレットの実施例2と同一である。
【0061】
[比較実験B]
120リットルの有効容積を有する水平に配置された二重壁の撹拌反応器を、350℃に設定した、サーモスタット制御の油加熱の反応器ジャケットにより加熱した。この反応器に、メラミン(37.2kg)およびパラ−トルエンスルホン酸(25.3kg)を充填した。この反応器を、縮合反応において形成される全てのアンモニアを除去するために、弱い窒素過圧(0.6m3/時間)下で運転した。反応器内容物の温度を300℃まで徐々に高め、その後、その内容物を冷却させた。全反応時間は260分であり、その内およそ60分を加熱に費やした。538リットルの3%℃アンモニア溶液を用いて生成物とその溶液とを混合することにより生成物を洗浄して、メラムを得た。次いで、その合わせた混合物と溶液との希釈スラリーを濾過し、そうして得られた残留濾過ケークを乾燥させた。メラムを175℃の温度で3時間乾燥させて、乾燥メラム粉末を得た。59.4kg(収率99.18)の乾燥メラム粉末が得られ、パラトルエンスルホン酸含有量は42wt.%であった。比較実験Bは、国際公開第96/16948号パンフレットの実施例3と同一である。
【0062】
[比較実験C]
比較実験Aを繰り返した。ただし、加熱工程後に、13のpHを有する水中水酸化ナトリウムの溶液3.66リットル中の反応混合物のスラリーを作製した。この希釈スラリーを、50℃の温度で6時間撹拌した。その後、その希釈スラリーを濾過し、フィルター上の濃縮スラリーのケークを、12リットルの水で洗浄した。乾燥後、0.08wt.%未満のパラ−トルエンスルホン酸を含有する、235gのメラムが得られた。
【0063】
[比較実験D]
比較実施例Cを繰り返した。ただし、希釈スラリーを濾過した後に、得られたケークをフィルターから取り除き、得られた濾過液の量と同量の新しい水で希釈して、新たな希釈スラリーを得た。濾過工程および再スラリー化工程を3回行い、各回、別個のビーカーに濾過液を回収した。
【0064】
使用した新しい水の量は、全部で10.9Lであった。乾燥後、0.05w%未満のパラトルエンスルホン酸を含有する、235gのメラムが得られた。
【0065】
[比較実験E]
比較実験Bを繰り返したが、ただし、加熱工程後に、13のpHを有する水中水酸化ナトリウムの溶液538リットル中の反応混合物のスラリーを作製した。希釈スラリーを、50°の温度で6時間撹拌した。
【0066】
乾燥前に、スラリーを濾過し、得られたケークを538Lの新しい水で希釈して、初期体積を得た。濾過液を、それぞれ別個のタンクに回収した。濾過およびケーク希釈工程を3回繰り返し、その後、ケークを乾燥させ、34.1kgの乾燥メラムを得た。使用した新鮮な水の全量は、2155Lであった。そうして得られた最終混合物中のパラトルエンスルホン酸の含有量は、0.05w%未満であった。
【0067】
[実施例1]
比較実施例Dを数回繰り返したが、ただし、それぞれの繰り返しの間、3回の、それぞれが濾過と再スラリー化とを含む洗浄工程を、この実施例1の先の繰り返しからの回収濾過液を含むビーカーを用いて行った。ここで、先の繰り返しからの工程xの濾過液を含むビーカーを、工程x−1のために使用した。最後の洗浄工程で、新しい水の一部を使用した。
【0068】
繰り返し1回当たりに使用した新しい水の量は、全部で4.1Lであった。乾燥後、0.05w%未満のパラトルエンスルホン酸を含有する、235gのメラムを得た。
【0069】
[実施例2]
比較実施例Eを数回繰り返したが、ただし、それぞれの繰り返しの間、3回の、それぞれが濾過と再スラリー化とを含む洗浄工程を、実施例2の先の繰り返しからの回収濾過液を含むタンクを用いて行った。ここで、先の繰り返しの工程xの濾過液を含むタンクを、工程x−1のために使用した。最後の洗浄工程で、新しい水の一部を使用した。
【0070】
繰り返し1回当たりに使用した新しい水の量は、全部で550Lであった。乾燥後、0.05w%未満のパラトルエンスルホン酸を含有する、34.0kgのメラムを得た。
【0071】
以下の表は、異なる洗浄条件について、同等の高レベルの純度を達成するために必要とされた洗浄液必要量の相対量についてのいくつかの典型的な値を示す。
【0072】
【表1】

【0073】
全濾過におけるメラムの高いケーク抵抗のために、単位ケーク体積当たりの洗浄液流束は、非常に低い。これは、非常に長い濾過時間および/または非実用的な大きなフィルター表面の必要を結果としてもたらす。
【0074】
さらに、特定の洗浄方法と組み合わせた希釈スラリーの特別の初期調製のおかげで、少ない洗浄用水量が達成されるということに特に言及される。デカント遠心機は、使用される洗浄液量が少なく、かつ濾過を阻止するケークがないため、またはクラック形成のため、最も好ましい。
図1