特許第6268552号(P6268552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268552
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】フレキソ印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/04 20060101AFI20180122BHJP
   B41M 1/18 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   B41M1/04
   B41M1/18
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-30576(P2016-30576)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-148941(P2017-148941A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2016年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】高位 博明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄一
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−044213(JP,A)
【文献】 特開2015−066870(JP,A)
【文献】 特開2012−051335(JP,A)
【文献】 特開2007−069407(JP,A)
【文献】 特開2001−219532(JP,A)
【文献】 米国特許第07222568(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、黄色、紅色、および藍色のフレキソ印刷用インキを用いたフレキソ印刷物であって、印刷物の観察者から見て、インキ層の部分の最上層が黄色インキであり、黄色フレキソ印刷用インキが、黄色顔料、界面活性剤、および樹脂を含んでなり、前記黄色顔料の50%累積平均径が、400nm以下であることを特徴とする表刷り、または裏刷りフレキソ印刷物。
【請求項2】
フレキソ印刷用インキが、すべて水性である請求項1記載のフレキソ印刷物。
【請求項3】
黄色フレキソ印刷用インキ中の黄色顔料が、黄色フレキソ印刷用インキ全体の、10〜30重量%である請求項1または2記載のフレキソ印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性フレキソ印刷において、黄、紅、藍のプロセス色からなる表刷り及び裏刷りフレキソ印刷にて高彩度の色再現性に優れたフレキソ印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パッケージ印刷分野においてグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、シルクスクリーン印刷等 各種の印刷方式が現在まで手法として用いられてきた。その中で、グラビア印刷、フレキソ印刷は従来から紙、厚紙、不織布、段ボール、メタルフォイル、プラスチックフィルム等のあらゆるパッケージ印刷において利用されている。
近年、環境配慮の観点から植物油を使用したオフセットインキ、ノントルエン型グラビアインキ等様々な環境調和型印刷インキが開発される中、特にグラビア印刷と比較して、低膜厚、高濃度で印刷できるため溶剤排出量の少ないフレキソ印刷方式がパッケージング印刷分野の中で注目されており、その中でも水を主溶媒としたインキを使用する水性フレキソ印刷は最も溶剤排出量の少ない印刷方式の一つである。
水性フレキソ印刷における種々の基材に対するプロセス印刷には表刷り印刷と裏刷り印刷がある。印刷物の観察者から見てインキ層を最上層とする表刷り印刷は紙、厚紙、不織布、段ボールの他、各プラスチックフィルムの印刷に用いられている一方、裏刷り印刷は印刷物の観察者から見て透明なプラスチックフィルムを通してインキ層を見る方式でどちらの方式も食品包材分野、サニタリー分野等広く水性フレキソ印刷が市場展開されている。
現在、広く用いられる黄、紅、藍、墨のプロセス色印刷の主たるインキの刷り順は表刷り印刷であればCMYKで代表されるプロセス4色の中の黄、紅、藍インキの刷り順を黄、紅、藍の順で印刷し、裏刷り印刷であれば藍、紅、黄の順で印刷するのが一般的であり、
表刷り印刷、裏刷り印刷共に印刷物の観察者から見てインキ層の中の黄インキが最下層に
なる刷り順を採用している。
これは現在、汎用で使われているプロセス色用のフレキソ黄インキは一般的に不透明であることが多く、表刷りについてはプロセス色の中で黄を最初に印刷し、裏刷りについてはプロセス色の中で黄を最後に印刷する方法が最も鮮明な色相を得ることができるためであるが、例えば、表刷り印刷において紅、藍色と比較して彩度の高い黄インキを観察者から見て最下層にしているため、透明性の高い黄インキを最上層にしているオフセット方式の印刷物と比較すると黄と紅の重ね部分や黄と藍の重ね部分の演色性が劣る場合があった。
裏刷り印刷においては油性フレキソインキにおいては透明黄顔料が使用される場合もあり、観察者から見て黄インキを最上層にする印刷方式を選択する場合もあったが水性フレキソ印刷においては、透明黄顔料を水溶媒に安定して分散させることが出来ず採用に至っていない。
特に水性フレキソインキの黄インキにおいて水性インキの経時安定性や分散性の問題から不透明な黄インキが汎用的に使用されてきたため、仮に表刷りで黄を最後に印刷する方法を選択すると黄と紅の重ね部分や黄と藍の重ね部分において黄インキの色相や透明度の問題から鮮明な色相が失われる。
【0003】
フレキソ印刷での演色性を向上させる手段として、パッケージング印刷や商業印刷等において標準プロセスカラーにてPantone Hexachrome(登録商標)を加えた6色印刷(特許文献1)、5色のプロセス色を用いてフレキソ印刷における4色プロセスの色域を拡張する方法(特許文献2)が提案されているが、いずれも黄インキの粒径と透明度による2次色の色域拡大とフレキソ印刷における表刷り、裏刷り印刷工程での刷り順に言及されたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5734800号公報
【特許文献2】特表2015−530938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の技術における問題点を解決する為になされたものであり、その課題とするところは、水性フレキソプロセス色印刷において、表刷り及び裏刷りフレキソ印刷において透明黄インキを印刷物の観察者から見て印刷物積層体の中でインキ層部の最上部にすることで黄単色濃度と2次色の鮮明性の向上させる高演色のフレキソ印刷物とフレキソプロセス印刷方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、透明度が高く、且つ高濃度の水性フレキソ黄インキを用いることでフレキソ印刷において印刷物の観察者から見て黄インキを最上部である時に黄が含まれる2次色部の鮮明性を向上させた水性フレキソ表刷り印刷物及び裏刷り印刷物を得ることである。
【0007】
すなわち本発明は基材上に、黄色、紅色、および藍色のフレキソ印刷用インキを用いたフレキソ印刷物であって、印刷物の観察者から見て、インキ層の部分の最上層が黄色インキであり、黄色フレキソ印刷用インキが、黄色顔料、界面活性剤、および樹脂を含んでなり、前記黄色顔料の50%累積平均径が、400nm以下であることを特徴とする表刷り、または裏刷りフレキソ印刷物に関するものである。
【0008】
また、本発明は、フレキソ印刷用インキが、すべて水性である上記フレキソ印刷物に関するものである。
【0010】
また、本発明は、黄色フレキソ印刷用インキ中の黄色顔料が、黄色フレキソ印刷用インキ全体の、10〜30重量%である上記フレキソ印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提供する水性黄色フレキソ印刷用インキを用いることにより、従来の表刷りフレキソ印刷物および裏刷りフレキソ印刷物において黄単色色相及び2次色の部分において鮮明性の高いフレキソ印刷物を得ることが出来る。
【0012】
本発明に使用される黄色フレキソ印刷インキの黄顔料としては従来からフレキソ印刷で使用されている各種の黄色無機及び有機顔料を使用できる。例えば、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー63、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー106、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー121、ピグメントイエロー126、ピグメントイエロー127、ピグメントイエロー136、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー176、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー188等が使用でき、好ましくはピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー176を黄インキ中に10−30質量%使うことが好ましい。
【0013】
本発明に使用される黄色フレキソ印刷インキにおいて前記黄顔料の他に耐ブロッキング性、乾燥性、ラミネート強度向上等を目的として充填剤として種々の体質顔料を併用することができる。体質顔料としては通常の印刷インキに使用されるものが挙げられ、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、沈降性硫酸バリウム等の硫酸塩、カオリンクレー、シリカ、タルク、マイカ等の珪酸塩等が挙げられ、これらは単独または2種以上を併用して使用することが出来る。
【0014】
本発明には黄顔料の水溶媒中での分散性を向上させ高い透明度の黄色フレキソ印刷インキを得るために種々の界面活性剤を使用できる。界面活性剤としては具体的には、2,4,7,9‐テトラメチル−5−デシン‐4,7−ジオールに代表されるアセチレンジオール誘導体、前記アセチレンジオール誘導体のエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンポリオキシプロプレンブロック重合物に代表されるポリプロピレングリコ―ルにエチレンオキシドを付加したノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0015】
本発明に使用される水性フレキソインキに含有される樹脂としては各種の水溶性溶液樹脂または水溶性エマルジョン樹脂が使用できる。水溶性溶液樹脂としては、スチレン−アクリル系共重合体をアルカリで中和した水溶性溶液樹脂、アクリル系共重合体エマルジョン、水性ポリウレタン樹脂、水性ウレタン−アクリルウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等を使用できる。
これらの水溶性溶液樹脂または水溶性エマルジョン樹脂は黄顔料を分散させるために水溶媒と共に単体で使用しても良く、前記界面活性剤として併用して使用しても良い。
水性フレキソインキ用液状樹脂の粘度としては50mPa・s−20000mPa・sが好ましく、より好ましくは100mPa・s−10000mPa・sの範囲がインキ製造の際の顔料分散ベースの粘度や最終調整される粘度を考えると好ましい。
【0016】
水溶性液状樹脂を使用する場合の溶媒としては水の他、水混和溶剤を添加混合することができる。水混和性溶剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類及びそのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類などが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングルコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プレプレングリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等が使用できる。
【0017】
本発明には、耐摩擦性及び滑り性付与のために水溶媒中に分散するパラフィン系またはポリエチレン系またはテフロン(登録商標)系ワックス類、印刷時の発泡性を抑制するためのシリコン系、非シリコン系の消泡剤、インキ皮膜硬化を促進する硬化剤を適宜使用することができる。
【0018】
本発明に使用される黄色フレキソ印刷インキは、顔料、添加剤、バインダー樹脂、水または溶剤等をボールミル、アトライター、サンドミル等を用いて顔料粒子を分散し用意される。顔料の平均粒子径は粒度分布測定機等を用いて測定され、その粒度分布は50%累積平均径において好ましくは400nm以下の時に、より好ましくは300nm以下の時に黄インキが含まれる2次色の色相の鮮明性を向上させる。50%累積平均径が400nmより大きいと黄インキの透明性が著しく低下することで黄インキが含まれる2次色色相の鮮明性の低下を生じる。50%累積平均径は粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めた時、その累積カーブが50%となる点の粒径と定義される。粉体の集団の体積分布は、動的光散乱法にて求められる。
【0019】
本発明に使用される紅色フレキソ印刷用インキ、藍色フレキソ印刷用インキは、公知のインキが使用できる。黄色フレキソ印刷用インキが水性である場合は、紅色インキ、藍色インキも水性であることが好ましい。
【0020】
本発明に使用される基材としてはコート紙、上質紙、コートボール紙、ライナー紙、段ボールに代表される紙基材、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等プラスチック繊維から形成される不織布、ポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、延伸ナイロンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、乳白ポリエチレンフィルムに代表されるプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムにおいてインキと基材の密着や画像形成に難点がある場合は適宜コロナ処理をかけることが出来る。
【0021】
色再現領域の再現方法としては、XYZ表色計(CIE1931表色系)、X10Y10Z10表色系(CIE1964表色系)、L*a*b表色系(CIE1976)、ハンターLab表色系、マンセル表色系、L*u*v表色系(CIE1976)等が挙げられる。
【0022】
L*a*b表色系では色相に関係なく比較できる明るさの度合いとして「明度」をL*で表現し、L*が大きくなるほど色が明るく、小さくなるほど暗くなることを示している。a*とb*は色の方向を示し+a*は赤、−a*は緑、+b*は黄、−b*は青の方向を示している。各方向とも絶対値が大きくなるほど色鮮やかになり、0に近づくに従ってくすんだ色になることを示しえいる。鮮明さの度合いを数値化する方法として「彩度(C)」が定義されており、各々以下の式にて求めることができる。
【0023】
【数1】
Cに関しては絶対値が大きくなるほど鮮明さが向上され、値が小さくなるに従って鮮明さが失われたくすんだ色となる。
【0024】
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることが出来、適宜の印刷機を使用することができる。
フレキソ版はUV光において樹脂を硬化するフォトポリマー基材や画像が彫刻されたゴム版等が適宜のフレキソ版を使用できる。
アニロックスロールについてはクロムメッキアニロックスロール、セラミックアニロックスロール等が汎用で使用されるが、フレキソ印刷機に使用できるものであればこれに限定されるものではない。
【0025】
本発明のプロセス色印刷において必要に応じて墨インキ、特色インキを任意の順序で追加することができ、更に必要に応じて白インキを使用することができる。裏刷り印刷の場合は透明プラスチックフィルムに色インキを塗工した後に白インキを塗工することができ、表刷り印刷においては色インキを塗工する前に白インキを下地として塗工することができる。
【0026】
本発明のフレキソ印刷物のプロセス色の刷り順は水性フレキソ黄インキの50%累積平均径が400nm以下である透明な黄インキである印刷物について観察者から見て、例えば、黄、紅、および藍色の順を選択する。
具体的には、表刷りにおいては例えば藍、紅、黄色の順に印刷することで印刷物の観察者から見て黄色がインキ層の中で最上層になる。藍と黄の重ね部分と紅と黄の重ね部分において下層である藍色、紅色の色相を透明性の高い黄を通して観察されることで藍と黄の重ね部分においては藍色のb値が黄インキに隠蔽されないため、その結果としてC値が高くなり、紅と黄の重ね部分においては紅インキのa値が黄インキに隠蔽されないため、その結果としてC値が高くなる。C値が高いことは鮮明性が高くすなわち印刷物が高演色であることを示す。基材の裏面に印刷される裏刷り印刷においても同様で、印刷物の観察者から見て黄色がインキ層の最上層になることで透明な黄を含有するフレキソ印刷物の藍と黄の重ね部分と紅と黄の重ね部分について表刷り印刷の場合と同様にC値が高くなり、高演色の印刷物を得ることが出来る。
【0027】
以下の具体例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、以下の記述の部は重量部、%は重量%を示す。
【0028】
樹脂製造例1(水溶性溶液樹脂A)
攪拌装置、温度計、2つの滴下漏斗及び還流冷却器を備えた反応容器にメチルイソブチルケトン94.0部を仕込み、攪拌しながら、窒素還流下で温度が100℃になるまで昇温した。次いで、2つの滴下漏斗において、スチレン50部、α−メチルスチレン5部、メタクリル酸30部ラウリルメタクリレート15部を3時間かけて滴下した。もう一方からはジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート5部をメチルイソブチルケトン10部に溶解させ、4時間かけてそれを滴下した。滴下完了後、更に10時間反応させて反応を完了した。冷却後、得られた顔料分散樹脂溶液に更に25%アンモニア水19.5部を加えて中和した。更にイオン交換水を加えて、加熱しながら溶剤置換を行い、最後にイオン交換水をさらに加えて、重量平均分子量が10500、固形分30%、粘度6000mPa・sの水溶性液状樹脂Aを得た。
【0029】
樹脂製造例2(水溶性エマルジョン樹脂B)
攪拌装置、温度計、2つの滴下漏斗及び還流冷却器を備えた反応容器にイオン交換水92部と製造例1で調整した水溶性樹脂A114部を仕込み、攪拌しながら窒素還流下で温度が80℃になるまで昇温した。次いで、2つの滴下漏斗において、一方からスチレン25部、n−ブチルアクリレート75部を2時間かけて滴下した。もう一方からは、過硫酸アンモニウム20%水溶液5部を2時間かけて滴下した。滴下完了後、更に4時間反応させせた。更にイオン交換水を加えて固形分45% 重量平均分子量42万、粘度1000mPa・sのコアシェル型エマルジョン樹脂である水溶性エマルジョン樹脂Bを得た。
【0030】
黄インキ実施例及び比較例
表1に示す配合処方でピグメントイエロー13(LIONOL YELLOW FG1314C トーヨーカラー社製)またはピグメントイエロー14(パーマネントイエローGSO クラリアント製 ピグメントイエローTT1407G トーヨーカラー製)
10−30部に対して水溶性溶液樹脂A、水溶性エマルジョン樹脂B、水、ポリエチレンワックス[ケミパールW500 三井化学製]を加えてサンドミルにて分散し黄インキを得た。
サンドミルでの分散時間は、黄インキ実施例1−4では60分であるのに対して、比較例1では20分である。
【0031】
紅、藍インキ製造例
表1に示す配合処方でピグメントレッド146(LIONOL RED FG5620 トーヨーカラー社製) またはピグメントブルー15(LIONOL BLUE FG7330 トーヨーカラー社製)20部に対して水溶性樹脂A、ノニオン系界面活性剤[サーフィノール420 日信化学工業製]、水、ポリエチレンワックス[ケミパールW500 三井化学製]を加えてサンドミルにて60分 分散し紅インキ及び藍インキを得た。
【0032】
【表1】
【0033】
黄インキの50%累積平均径の測定結果を表2に示す。
黄インキ実施例1−4、比較例1の50%累積平均径について動的光散乱法を測定原理とした粒子径分布測定装置(UPA−EX150 日機装(株)製)を用いて測定した。50%累積平均径は粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めた時、その累積カーブが50%となる点の粒径と定義される。
実施例1−3の黄インキは50%累積平均径が300nm以下、実施例4の黄インキは340nmに対して比較例1の黄インキは495nmであった。
【0034】
【表2】
【0035】
黄インキの透明度を表3 黄インキの濃度、色相、及び黄インキを含む2次色の色相評価結果を表4、表5に示す。
上記で調整したインキ組成物について、フレキシプルーフ100(アニロックスロール 400lpi 6cc/cm2)を用いて 処理OPP基材(2軸延伸ポリプロピレンフィルム フタムラ化学製FOR フィルム厚20μm)に塗工した。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
黄インキの透明度は上記塗工条件にてフィルム上に印刷された黄インキ印刷物について、黒色紙 5枚を重ねたものを下に敷くブラックバッキング方式にてインキ塗工面から分光測色計(X−rite eXact エックスライト社製)にて、彩度を表すL値を測定し黄インキの透明度を判定する基準とした。

黄インキの透明度基準 5:透明性が高い L値:40未満
4:透明性がやや高い L値:40以上50未満
3:透明性が中程度 L値:50以上60未満
2:透明性がやや低い L値:60以上70未満
1:透明性が低い L値:70以上
【0040】
表刷り色相についてはインキを塗工した側、すなわちインキ塗工面から分光測色計(X−rite eXact エックスライト社製)にて色相、濃度を測定し、裏刷り色相についてはインキを塗工した裏側、すなわちフィルム側から分光測色計にて、色相、濃度を測定した。表4中 基材(フィルム)/紅/黄は印刷物の表刷り印刷においては観察者から見て黄色が最上層であり、裏刷り印刷においては観察者から見て紅インキが最上層となることを示す。
濃度については黄、紅、藍の単色ベタ濃度、色相については単色ベタ濃度、黄が含まれる2次色すなわち黄と紅の重ね刷り構成及び 黄と藍の重ね刷り構成の色相(L* a* b* C値) を測定した。
【0041】
黄実施例が含まれる2次色についてはインキ層の中で黄インキが観察者から見て最上層になる場合について表刷り印刷物においては黄インキ実施例1−4を含む印刷物は紅と黄の重ね部分、藍と黄の重ね部分についていずれも黄インキ比較例1を含む印刷物と比較してC値すなわち鮮明性が高い印刷物が得られた。裏刷り印刷物については黄インキ実施例1を含む印刷物は黄インキ比較例1を含む印刷物と比較して藍と黄の重ね部についてC値が高く、黄インキ実施例2−4は黄インキ比較例1を含む印刷物として紅と黄の重ね部及び藍と黄の重ね部についてC値が高く鮮明性の高い印刷物を得ることが出来た。