特許第6268564号(P6268564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268564
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】オキサジン化合物、組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 14/073 20060101AFI20180122BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20180122BHJP
   C08L 61/34 20060101ALI20180122BHJP
   C07D 265/16 20060101ALI20180122BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180122BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20180122BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180122BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20180122BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   C08G14/073
   C08J5/24CFB
   C08L61/34
   C07D265/16
   B32B27/00 A
   H01L23/30 R
   H05K1/03 610T
   H05K3/46 T
   H05K3/46 B
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-539686(P2017-539686)
(86)(22)【出願日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】JP2016084727
(87)【国際公開番号】WO2017098925
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2017年7月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-239362(P2015-239362)
(32)【優先日】2015年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-156537(P2016-156537)
(32)【優先日】2016年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】下野 智弘
(72)【発明者】
【氏名】有田 和郎
(72)【発明者】
【氏名】大津 理人
(72)【発明者】
【氏名】山口 純司
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−262227(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/037500(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102250117(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/00− 16/06
C08F 12/00− 34/04
C08L 1/00−101/14
C07D265/00−265/16
H01L 23/29
H01L 23/31
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1−1)で表されることを特徴とするオキサジン化合物。
【化1】

・・・(1−1)
(式(1−1)中、Arは置換または無置換の芳香族基を表し、環Aは置換または無置換の芳香環を表し、Rはそれぞれ独立して下記一般式(2)で示される官能基であって、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、置換または無置換の芳香族基を表す。)
【化2】

・・・(2)
(式(2)中、X、X、Yはそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、当該2価の連結基としては酸素原子、2価の炭化水素基、又は2価の炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換された2価の基、カルボニル基(−CO−基)、エステル基(−COO−基)、アミド基(−CONH−基)、イミノ基(−C=N−基)、アゾ基(−N=N−基)、スルフィド基(−S−基)、スルホン基(−SO−基)、及びこれらを組み合わせてなる2価の連結基であって、
は、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかで置換された炭化水素基を表し、aは、前記オキサジン化合物(1−1)との結合点であることを表す。)
【請求項2】
環Aが置換または無置換のベンゼン環、置換または無置換のナフタレン環である、請求項1に記載のオキサジン化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオキサジン化合物を含有することを特徴とする、組成物。
【請求項4】
更に、反応性化合物を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
更に、フィラーを含有する、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
更に、繊維質基質を含有する、請求項3〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項8】
基材と請求項7に記載の硬化物層とを有することを特徴とする積層体。
【請求項9】
請求項3〜6のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする、耐熱材料用組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の硬化物を含有することを特徴とする耐熱部材。
【請求項11】
請求項3〜6のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする、電子材料用組成物。
【請求項12】
請求項7に記載の硬化物を含有することを特徴とする電子部材。
【請求項13】
請求項3〜6のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする、半導体封止材。
【請求項14】
請求項6に記載の、繊維質基質を含有する組成物を含有することを特徴とするプリプレグ。
【請求項15】
請求項14に記載のプリプレグに更に銅箔層を有することを特徴とする回路基板。
【請求項16】
ビルドアップフィルムである、請求項8に記載の積層体。
【請求項17】
請求項16に記載のビルドアップフィルムを有することを特徴とするビルドアップ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、誘電特性、低吸湿性に優れたオキサジン化合物と、該オキサジン化合物を含有する組成物、硬化物、積層体に関する。また、該オキサジン化合物を含有する耐熱材料及び耐熱部材、電子材料及び電子部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体封止材料や多層プリント基板用絶縁層などに用いられる電子部品用樹脂材料には、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂など様々な樹脂が用いられているが、近年、各種用途、とりわけ最先端の電子材料用途においては、耐熱性、誘電特性といった性能の一層の向上、及びこれらを兼備するとともに、低吸湿性をも発現する材料、組成物が求められている。
【0003】
その中でも、フェノール化合物とアミン化合物、ホルムアルデヒドとを組み合わせることで簡便に調製可能なベンゾオキサジンは、加熱により単独でも開環重合し、その架橋構造中に形成される強固な水素結合構造により、高耐熱性、低線膨張性を発現することから、近年、上記電材用途への検討に加え、SiCパワー半導体に代表される次世代デバイス向け樹脂材料としても注目されている。
従来のベンゾオキサジンとしては、ビスフェノールFやビスフェノールAなどの二官能フェノール類とアニリンとからなるベンゾオキサジンが、特許文献1、特許文献2にて開示されている。しかし、これらの使用に際してはオキサジンの開環時にアニリン由来の成分が分解ガスとして発生するために、長期熱耐久性の指標となる耐熱分解性において、近年要求されているレベルには達していないことから、更なる改良、性能の向上が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−12258号公報
【特許文献2】特開2000−169456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐熱分解性に優れ、なおかつ誘電特性及び低吸湿性に優れた新規オキサジン化合物を提供することにある。また、該新規オキサジン化合物を含有する組成物、硬化物、該硬化物を含有する積層体を提供することにある。また、該新規オキサジン化合物を含有する耐熱材料および電子材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、芳香環構造と、複数の特定された炭素−炭素間三重結合構造を有する基を有することを特徴とするオキサジン化合物が、上記課題を解決することを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、一般式(1)の構造を有し、さらに一般式(2)で表される官能基Rをそれぞれ独立して少なくとも2個以上有することを特徴とする、オキサジン化合物を提供することで、上記課題を解決する。
【0008】
【化1】

・・・(1)
【0009】
(式(1)中、Arは置換または無置換の芳香族基を表し、環Aは置換または無置換の芳香環を表し、
更に式(1)の化合物は炭素数1〜3のアルキル基、置換または無置換の芳香族基を有していてもよい。)
【0010】
【化2】
・・・(2)
(式(2)中、X、X、Yはそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、Rは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかで置換された炭化水素基を表し、aは、前記オキサジン化合物(1)との結合点であることを表す。)
【0011】
また本発明は、本発明のオキサジン化合物を含有する組成物、該組成物を含有する硬化物、該硬化物層を有する積層体を提供する。また、本発明は、本発明のオキサジン化合物を含有する組成物を含有することを特徴とする耐熱材料用組成物、および電子材料用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオキサジン化合物は、その硬化物が耐熱分解性、誘電特性及び低吸湿性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<オキサジン化合物>
本発明のオキサジン化合物は、一般式(1)の構造を有し、さらに一般式(2)で表される官能基Rをそれぞれ独立して少なくとも2個以上有することを特徴とする。
【0014】
【化3】

・・・(1)
【0015】
(式(1)中、Arは置換または無置換の芳香族基を表し、環Aは置換または無置換の芳香環を表し、
更に式(1)の化合物は炭素数1〜3のアルキル基、置換または無置換の芳香族基を有していてもよい。)
【0016】
【化4】
・・・(2)
【0017】
(式(2)中、X、X、Yはそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、Rは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかで置換された炭化水素基を表し、aは、前記オキサジン化合物(1)との結合点であることを表す。)
【0018】
式(1)において、官能基Rの結合部位には特に限定が無く、オキサジン環部分に2つ以上結合していてもよいし、環Aに2つ以上結合していてもよいし、オキサジン環および環Aのそれぞれに結合していてもかまわない。また、式(1)中の芳香族基Arに結合していても構わない。
【0019】
好ましい構造としては、式(1)中の芳香族基Arと環Aのそれぞれに官能基Rが結合している構造が、耐熱性を向上させることから好ましい。具体的には、下記式(1−1)で表される構造である。
【0020】
【化5】

・・・(1−1)
【0021】
(式(1−1)中、Rはそれぞれ独立して前記一般式(2)または(3)で示される官能基であって、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、置換または無置換の芳香族基を表す。)
【0022】
式(1)で表されるオキサジン化合物において、炭素原子が有する水素原子は置換されていても構わない。置換される場合、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、置換または無置換の芳香族基である。水素原子が置換される部位は特に限定はない。
【0023】
<官能基R
本発明において、官能基Rは炭素−炭素間三重結合構造を有する基であり、具体的には前記式(2)で表される基である。本発明のオキサジン化合物は、オキサジン環の開環重合に由来する硬化反応と、炭素−炭素間三重結合の重合反応に由来する硬化反応の2つの硬化が進行するため、硬化した際に密な架橋構造を形成することから、耐熱性、特に耐熱分解温度が向上する。特に、本発明のオキサジン化合物は、官能基Rを2つ以上有することを特徴としており、これは多官能化することで硬化物がより密な三次元架橋を形成し、より一層耐熱性が向上するためである。
【0024】
官能基Rは前記式(2)で表される基であり、式(1)中において2つ以上存在するが、官能基Rの構造はそれぞれ異なっていても同一であっても構わない。
【0025】
【化6】
・・・(2)
【0026】
(式(2)中、X、X、Yはそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、Rは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかで置換された炭化水素基を表し、aは、前記オキサジン化合物(1)との結合点であることを表す。)
【0027】
前記式(2)におけるX、X、Yそれぞれにおける2価の連結基としては、酸素原子、2価の炭化水素基、又は2価の炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換された2価の基、カルボニル基(−CO−基)、エステル基(−COO−基)、アミド基(−CONH−基)、イミノ基(−C=N−基)、アゾ基(−N=N−基)、スルフィド基(−S−基)、スルホン基(−SO−基)、及びこれらを組み合わせてなる2価の連結基等が挙げられる。
【0028】
2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基(アルキレン基及びアリーレン基を有する2価の基)などを挙げることができる。
【0029】
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられる。
アルケニレン基としては、ビニレン基、1−メチルビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基等が挙げられる。
アルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基等が挙げられる。
シクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。
アリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
アラルキレン基としては、アルキレン基とアリーレン基を有する炭素数7〜20のアラルキレン基等が挙げられる。
【0030】
炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換された2価の基を示す場合、水酸基含有アルキレン基、アルコキシ基含有アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、水酸基含有アルケニレン基、アルコキシ基含有アルケニレン基、ハロゲン化アルケニレン基、水酸基含有アルキニレン基、アルコキシ基含有アルキニレン基、ハロゲン化アルキニレン基、水酸基含有シクロアルキレン基、アルコキシ基含有シクロアルキレン基、ハロゲン化シクロアルキレン基、水酸基含有アリーレン基、アルコキシ基含有アリーレン基、ハロゲン化アリーレン基、水酸基含有アラルキレン基、アルコキシ基含有アラルキレン基、ハロゲン化アラルキレン基が挙げられる。
【0031】
水酸基含有アルキレン基としては、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシプロピレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有アルキレン基としては、メトキシエチレン基、メトキシプロピレン基、アリルオキシメチレン基、アリルオキシプロピレン基、プロパルギルオキシメチレン基、プロパルギルオキシプロピレン基などが挙げられる。ハロゲン化アルキレン基としては、クロロメチレン基、クロロエチレン基、クロロプロピレン基、ブロモメチレン基、ブロモエチレン基、ブロモプロピレン基、フルオロメチレン基、フルオロエチレン基、フルオロプロピレン基等が挙げられる。
【0032】
水酸基含有アルケニレン基としては、ヒドロキシブテニレン基、ヒドロキシペンテニレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有アルケニレン基としては、メトキシブテニレン基、エトキシヘキセニレン基等が挙げられる。ハロゲン化アルケニレン基としては、クロロプロペニレン基、ブロモペンテニレン基等が挙げられる。
【0033】
水酸基含有アルキニレン基としては、ヒドロキシペンチニレン基、ヒドロキシヘキシニレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有アルキニレン基としては、エトキシヘキシニレン基、メトキシへプチニレン基等が挙げられる。ハロゲン化アルキニレン基としては、クロロヘキシニレン基、フルオロオクチニレン基等が挙げられる。
【0034】
水酸基含有シクロアルキレン基としては、ヒドロキシシクロヘキサニレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有シクロアルキレン基としては、メトキシシクロペンタニレン基等が挙げられる。ハロゲン化シクロアルキレン基としては、ジクロロシクロペンタニレン基等が挙げられる。
【0035】
水酸基含有アリーレン基としては、ヒドロキシフェニレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有アリーレン基としては、メトキシフェニレン基、エトキシフェニレン基、アリルオキシフェニレン基、プロパルギルオキシフェニレン基等が挙げられる。ハロゲン化アリーレン基としては、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロナフチル基、ブロモナフチル基、フルオロナフチル基等が挙げられる。
【0036】
上記のほか、X、X、Yそれぞれにおける2価の連結基は不飽和炭化水素基含有アリーレン基であってもよい。不飽和炭化水素基含有アリーレン基としては、ビニルフェニレン、アリルフェニレン、エチニルフェニレン、プロパルギルフェニレン等が挙げられる。
【0037】
前記式(2)において、Yについては、単結合、酸素原子、アルキレン基、アラルキレン基の群より選択されるいずれかの連結基であることが好ましい。
【0038】
、X、Yそれぞれにおける2価の連結基としては、好ましくは単結合または2価の炭化水素基または酸素原子であって、2価の炭化水素基としてはアルキレン基、アリーレン基が好ましい。特に好ましい組み合わせとしては、Xが単結合またはフェニレン基、Xがメチレン基(−CH−)、Yが酸素原子の場合である。
【0039】
前記式(2)としては、好ましくは以下の構造が挙げられる。
【0040】
【化7】

・・・(2−1)
【0041】
【化8】
・・・(2−2)
【0042】
【化9】
・・・(2−3)
【0043】
(式(2−3)中、Rは、水素原子、炭化水素基、又は炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかで置換された炭化水素基を表す。
【0044】
特に好ましくは、式(2)がプロパルギルエーテル基を有する(2−2)、(2−3)の場合であり、Rが水素原子の場合である。特に、プロパルギルエーテル基が芳香環と結合している場合、プロパルギルエーテル基が反応して二重結合含有環状構造を形成すると予想される。この二重結合含有環状構造同士がさらに反応することにより、密な架橋構造を形成するため、耐熱性が向上すると予想される。
【0045】
<Ar、環A>
前記式(1)の化合物においてArは、置換または無置換の芳香族基を表し、具体的にはフェニレン基、ナフチレン基、アントラセン骨格やフェナントレン骨格を含むアリーレン基等が挙げられる。
【0046】
環Aは置換または無置換の芳香環を表す。芳香環としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。
【0047】
本発明のオキサジン化合物として、好ましい構造は以下の式(1−a)〜(1−c)で表される化合物である。
【0048】
【化10】
【0049】
更に具体的には、以下の式(1−d)〜(1−g)で表される化合物である。
【0050】
【化11】
【0051】
その中でも、特に好ましい構造は、式(1−d)、(1−g)で表される化合物である。
【0052】
<オキサジン化合物の製造方法>
本発明のオキサジン化合物は、分子骨格に反応性官能基を導入したフェノール化合物、同じく反応性官能基を導入した芳香族アミノ化合物をホルムアルデヒドとを反応させることで得ることができる。反応性官能基としては、エチニル基、プロパルギルオキシ基などが挙げられる。反応性官能基を導入したフェノール化合物としては、2-プロパルギルオキシフェノール、3-プロパルギルオキシフェノール、4-プロパルギルオキシフェノール、4’−プロパルギルオキシ−4−ビフェノール、4’−プロパルギルオキシ−3−ビフェノール、4’−プロパルギルオキシ−2−ビフェノール、2-プロパルギルオキシ−1−ナフトール、3-プロパルギルオキシ−1−ナフトール、4-プロパルギルオキシ−1−ナフトール、5-プロパルギルオキシ−1−ナフトール、6-プロパルギルオキシ−1−ナフトール、7-プロパルギルオキシ−1−ナフトール、8-プロパルギルオキシ−1−ナフトール、1-プロパルギルオキシ−2−ナフトール、3-プロパルギルオキシ−2−ナフトール、6-プロパルギルオキシ−2−ナフトール、7-プロパルギルオキシ−2−ナフトールなどが挙げられる。反応性官能基を導入した芳香族アミノ化合物としては、2-プロパルギルオキシアニリン、3-プロパルギルオキシアニリン、4-プロパルギルオキシアニリン、4’−プロパルギルオキシビフェニル−4−アミン、4’−プロパルギルオキシビフェニル−3−アミン、4’−プロパルギルオキシビフェニル−2−アミン、2-プロパルギルオキシ−1−アミノナフタレン、3-プロパルギルオキシ−1−アミノナフタレン、4-プロパルギルオキシ−1−アミノナフタレン、5-プロパルギルオキシ−1−アミノナフタレン、6-プロパルギルオキシ−1−アミノナフタレン、7-プロパルギルオキシ−1−アミノナフタレン、8-プロパルギルオキシ−1−アミノナフタレン、1-プロパルギルオキシ−2−アミノナフタレン、3-プロパルギルオキシ−2−アミノナフタレン、6-プロパルギルオキシ−2−アミノナフタレン、7-プロパルギルオキシ−2−アミノナフタレンなどが挙げられる。反応は、例えば反応性官能基を導入したフェノール化合物、反応性官能基を導入した芳香族アミノ化合物を、ホルムアルデヒドと50〜100℃の温度条件下で反応を行い、反応終了後に水層と有機層とを分離した後、有機層から有機溶媒を減圧乾燥させるなどしてオキサジン化合物を得ることが出来る。
また、ホルムアルデヒドは、溶液の状態であるホルマリン、或いは固形の状態であるパラホルムアルデヒドのどちらの形態で用いても良い。
【0053】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、本発明のオキサジン化合物を含有する。
本発明の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、耐熱分解性に優れ、なおかつ誘電特性及び低吸湿性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。
【0054】
<反応性化合物>
本発明の樹脂組成物は、本発明のオキサジン化合物以外の配合物を有していてもよい。
例えば、本発明のオキサジン化合物以外の反応性化合物を有していてもよい。ここで言う反応性化合物とは、反応性基を有する化合物であり、モノマーであってもオリゴマーであってもポリマーであってもかまわない。
【0055】
反応性基としては、本発明のオキサジン化合物と反応しない官能基でも、反応する官能基でもよいが、耐熱性をより向上させるためには、本発明のオキサジン化合物と反応する官能基であることが好ましい。
本発明のオキサジン化合物と反応する官能基としては、例えばエポキシ基、シアナト基、マレイミド基、フェノール性水酸基が挙げられる。
【0056】
エポキシ基を有する化合物としては、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂が挙げられる。
シアナト基を有する化合物としては、シアネートエステル樹脂が挙げられる。
マレイミド基を有する化合物としては、マレイミド樹脂、ビスマレイミド化合物が挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノール樹脂、フェノール化合物が挙げられる。
【0057】
上記の反応性化合物は、反応性基を一種類だけ有していても、複数種有していてもよく、官能基数も1つであっても複数であってもかまわない。
【0058】
好ましい反応性化合物としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド化合物、フェノール化合物、本発明により得られるオキサジン化合物以外のオキサジン化合物などが挙げられる。
【0059】
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を有していれば特に限定は無く、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールスルフィド型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ターフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0060】
フェノキシ樹脂は、ジフェノールと、エピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンに基づく高分子量熱可塑性ポリエーテル樹脂のことであり、重量平均分子量が、20,000〜100,000であることが好ましい。フェノキシ樹脂の構造としては、例えばビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。
【0061】
シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0062】
これらのシアネートエステル樹脂の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂が好ましい。
【0063】
マレイミド化合物としては、例えば、下記構造式(i)〜(iii)の何れかで表される各種の化合物等が挙げられる。
【0064】
【化12】
(式中Rはm価の有機基であり、α及びβはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基の何れかであり、sは1以上の整数である。)
【0065】
【化13】
【0066】
(式中Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、sは1〜3の整数、tは繰り返し単位の平均で0〜10である。)
【0067】
【化14】
(式中Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、sは1〜3の整数、tは繰り返し単位の平均で0〜10である。)これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0068】
フェノール性水酸基含有化合物としては、フェノール性水酸基を有していれば特に限定は無く、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールスルフィド、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ヒドロキシポリフェニレンエーテル化合物、ヒドロキシナフチレンエーテル化合物、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ターフェニルジオール、ポリヒドロキシナフタレン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェニロールメタン、テトラフェニロールメタン、テトラフェニロールエタン、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応物、フェノールアラルキル化合物、ヒドロキシビフェニルアラルキル化合物、ナフトールノボラック化合物、ナフトールアラルキル化合物、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール化合物、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物、ヒドロキシアントラセン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0069】
本発明により得られるオキサジン化合物以外のオキサジン化合物としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールFとホルマリンとアニリンの反応生成物(F−a型ベンゾオキサジン樹脂)や4,4’−ジアミノジフェニルメタンとホルマリンとフェノールの反応生成物(P−d型ベンゾオキサジン樹脂)、ビスフェノールAとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルエーテルとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジアミノジフェニルエーテルとホルマリンとフェノールの反応生成物、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂とホルマリンとアニリンの反応生成物、フェノールフタレインとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルスルフィドとホルマリンとアニリンの反応生成物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0070】
<フィラー>
本発明の組成物は、オキサジン化合物の他に、更にフィラーを含有してもよい。フィラーとしては、無機フィラーと有機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば無機微粒子が挙げられる。
【0071】
無機微粒子としては、例えば、耐熱性に優れるものとしては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)等;熱伝導に優れるものとしては、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素等;導電性に優れるものとしては、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)を用いた金属フィラー及び/又は金属被覆フィラー、;バリア性に優れるものとしては、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム;屈折率が高いものとしては、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等;光触媒性を示すものとしては、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、テリウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等;耐摩耗性に優れるものとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等の金属、及びそれらの複合物及び酸化物等;導電性に優れるものとしては、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等;絶縁性に優れるものとしては、シリカ等;紫外線遮蔽に優れるものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛等である。
これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。また、上記無機微粒子は、例に挙げた特性以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
【0072】
例えば無機微粒子としてシリカを用いる場合、特に限定はなく粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ−ク等を挙げることができる。
また、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。
【0073】
表面修飾をしたシリカ微粒子を用いてもよく、例えば、前記シリカ微粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したものや、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾したものがあげられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK−SD等が挙げられる。
【0074】
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状のものを用いることができる。また一次粒子径は、5〜200nmの範囲が好ましい。5nm未満であると、分散体中の無機微粒子の分散が不十分となり、200nmを超える径では、硬化物の十分な強度が保持できないおそれがある。
【0075】
酸化チタン微粒子としては、体質顔料のみならず紫外光応答型光触媒が使用でき、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどが使用できる。更に、酸化チタンの結晶構造中に異種元素をドーピングさせて可視光に応答させるように設計された粒子についても用いることができる。酸化チタンにドーピングさせる元素としては、窒素、硫黄、炭素、フッ素、リン等のアニオン元素や、クロム、鉄、コバルト、マンガン等のカチオン元素が好適に用いられる。また、形態としては、粉末、有機溶媒中もしくは水中に分散させたゾルもしくはスラリーを用いることができる。市販の粉末状の酸化チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジルP−25、テイカ(株)製ATM−100等を挙げることができる。また、市販のスラリー状の酸化チタン微粒子としては、例えば、テイカ(株)TKD−701等が挙げられる。
【0076】
<繊維質基質>
本発明の組成物は、オキサジン化合物の他に、更に繊維質基質を含有してもよい。本発明の繊維質基質は、特に限定はないが、繊維強化樹脂に用いられるものが好ましく、無機繊維や有機繊維が挙げられる。
【0077】
無機繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。上記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維を挙げることができる。
【0078】
有機繊維としては、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維や、セルロース、パルプ、綿、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維等を挙げる事ができる。
【0079】
中でも、カーボン繊維とガラス繊維は、産業上利用範囲が広いため、好ましい。これらのうち、一種類のみ用いてもよく、複数種を同時に用いてもよい。
【0080】
本発明の繊維質基質は、繊維の集合体であってもよく、繊維が連続していても、不連続状でもかまわず、織布状であっても、不織布状であってもかまわない。また、繊維を一方方向に整列した繊維束でもよく、繊維束を並べたシート状であってもよい。また、繊維の集合体に厚みを持たせた立体形状であってもかまわない。
【0081】
<分散媒>
本発明の組成物は、組成物の固形分量や粘度を調整する目的として、分散媒を使用してもよい。分散媒としては、本発明の効果を損ねることのない液状媒体であればよく、各種有機溶剤、液状有機ポリマー等が挙げられる。
【0082】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類が挙げられ、これらを単独又は併用して使用可能であるが、中でもメチルエチルケトンが塗工時の揮発性や溶媒回収の面から好ましい。
【0083】
前記液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、カルボキシル基含有ポリマー変性物(フローレンG−900、NC−500:共栄社)、アクリルポリマー(フローレンWK−20:共栄社)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD ED−251:楠本化成)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK2000;ビックケミー)などが挙げられる。
【0084】
<樹脂>
また、本発明の組成物は、オキサジン化合物以外の樹脂を有していてもよい。樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば公知慣用の樹脂を配合すればよく、例えば
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0085】
熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、本発明により得られるオキサジン化合物以外のベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0086】
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0087】
<硬化剤>
本発明の組成物は、配合物に応じて硬化剤を用いてもよい、例えば、エポキシ基を有する化合物を配合している場合には、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミノトリアジンノボラック樹脂、活性エステル樹脂、カルボキシル基やチオールなどのエポキシ基と反応する官能基を有する樹脂などの各種の硬化剤を併用してもかまわない。
【0088】
アミン系硬化剤としてはジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体、グアナミン誘導体等が挙げられる。
【0089】
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0090】
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0091】
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0092】
また、本発明の組成物にエポキシ基を有する化合物が含まれる場合、硬化促進剤を単独で、あるいは前記の硬化剤と併用することもできる。硬化促進剤としてエポキシ樹脂の硬化反応を促す種々の化合物が使用でき、例えば、リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。この中でも、イミダゾール化合物、リン系化合物、第3級アミン化合物の使用が好ましく、特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0093】
<その他の配合物>
本発明の組成物は、その他の配合物を有していてもかまわない。例えば、触媒、重合開始剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤等が挙げられる。
【0094】
<硬化物>
本発明の組成物を硬化して得られる硬化物は、耐熱分解性、誘電特性及び低吸湿性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。硬化物の成形方法は特に限定は無く、組成物単独で成形してもよいし、基材と積層することで積層体としてもかまわない。
【0095】
積層体の基材としては、金属やガラス等の無機材料や、プラスチックや木材といった有機材料等、用途によって適時使用すればよく、積層体の形状としても、平板、シート状、あるいは三次元構造を有していても立体状であってもかまわない。全面にまたは一部に曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。また、本発明の硬化物を基材とし、更に本発明の硬化物を積層してもかまわない。
回路基板や半導体パッケージ基板といった用途の場合、金属箔を積層することが好ましく、金属箔としては銅箔、アルミ箔、金箔、銀箔などが挙げられ、加工性が良好なことから銅箔を用いることが好ましい。
【0096】
本発明の積層体において、硬化物層は、基材に対し直接塗工や成形により形成してもよく、すでに成形したものを積層させてもかまわない。直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。
成形された組成物を積層する場合、未硬化または半硬化された組成物層を積層してから硬化させてもよいし、組成物を完全硬化した硬化物層を基材に対し積層してもよい。
また、本発明の硬化物に対して、基材となりうる前駆体を塗工して硬化させることで積層させてもよく、基材となりうる前駆体または本発明の組成物が未硬化あるいは半硬化の状態で接着させた後に硬化させてもよい。基材となりうる前駆体としては特に限定はなく、各種硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0097】
<繊維強化樹脂>
本発明の組成物が繊維質基質を有し、該繊維質基質が強化繊維の場合、繊維質基質を含有する組成物は繊維強化樹脂として用いることができる。
組成物に対し繊維質基質を含有させる方法は、本発明の効果を損なわない範囲であればとくに限定はなく、繊維質基質と組成物とを、混練、塗布、含浸、注入、圧着、等の方法で複合化する方法が挙げられ、繊維の形態及び繊維強化樹脂の用途によって適時選択することができる。
【0098】
本発明の繊維強化樹脂を成形する方法については、特に限定されない。板状の製品を製造するのであれば、押し出し成形法が一般的であるが、平面プレスによっても可能である。この他、押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等を用いることが可能である。またフィルム状の製品を製造するのであれば、溶融押出法の他、溶液キャスト法を用いることができ、溶融成形方法を用いる場合、インフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形等が挙げられる。また、活性エネルギー線で硬化する樹脂の場合、活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて硬化物を製造する事ができる。特に、熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂の主成分とする場合には、成形材料をプリプレグ化してプレスやオートクレーブにより加圧加熱する成形法が挙げられ、この他にもRTM(Resin Transfer Molding)成形、VaRTM(Vaccum assist Resin Transfer Molding)成形、積層成形、ハンドレイアップ成形等が挙げられる。
【0099】
<プリプレグ>
本発明の繊維強化樹脂は、未硬化あるいは半硬化のプリプレグと呼ばれる状態を形成することができる。プリプレグの状態で製品を流通させた後、最終硬化をおこなって硬化物を形成してもよい。積層体を形成する場合は、プリプレグを形成した後、その他の層を積層してから最終硬化を行うことで、各層が密着した積層体を形成できるため、好ましい。
この時用いる組成物と繊維質基質の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。
【0100】
<耐熱材料および電子材料>
本発明のオキサジン化合物は、その硬化物が耐熱分解性、誘電特性及び低吸湿性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0101】
以下、代表的な製品について例を挙げて説明する。
【0102】
1.半導体封止材料
本発明の組成物から半導体封止材料を得る方法としては、前記組成物、及び硬化促進剤、及び無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30〜95質量%の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
【0103】
2.半導体装置
本発明の硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る半導体パッケージ成形としては、上記半導体封止材料を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜250℃で2〜10時間の間、加熱する方法が挙げられる。
【0104】
3.プリント回路基板
本発明の組成物からプリント回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜300℃で10分〜3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
【0105】
4.ビルドアップ基板
本発明の組成物からビルドアップ基板を得る方法は、例えば以下の工程が挙げられる。まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程(工程1)。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程(工程2)。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程(工程3)。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0106】
5.ビルドアップフィルム
本発明の組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、基材である支持フィルム(Y)の表面に、上記組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて組成物の層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0107】
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0108】
形成される層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本発明における上記組成物の層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0109】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0110】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する硬化性樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0111】
上記のようにして得られたビルドアップフィルムを用いて多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70〜140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0112】
6.導電ペースト
本発明の組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
【実施例】
【0113】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
尚、Hおよび13C−NMR、MSスペクトル、IRは以下の条件にて測定した。
【0114】
H−NMR:JEOL RESONANCE製「JNM−ECA600」により測定した。
磁場強度:600MHz
積算回数:16回
溶媒:DMSO−d6
試料濃度:30質量%
【0115】
13C−NMR:JEOL RESONANCE製「JNM−ECA600」により測定した。
磁場強度:150MHz
積算回数:4000回
溶媒:DMSO−d6
試料濃度:30質量%
【0116】
FD−MS:日本電子株式会社製「JMS−T100GC AccuTOF」を用いて 測定した。
測定範囲:m/z=50.00〜2000.00
変化率:25.6mA/min
最終電流値:40mA
カソード電圧:−10kV
【0117】
〔実施例1〕オキサジン化合物(A−1)の合成
滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、4-プロパルギルオキシアニリン147.2g(1.0モル)、4-プロパルギルオキシフェノール148.2g(1.0モル)を仕込み、トルエン 750gに溶解させた後、94%パラホルムアルデヒド63.9g(2.0モル)を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で7時間反応させた。反応後、分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、オキサジン化合物(A−1)239gを得た。
H−NMRは7.04ppm(2H)、6.87ppm(2H)、6.75ppm(2H)、6.62ppm(1H)、5.22ppm(2H)、4.59ppm(4H)、4.51ppm(2H)、2.49ppm(2H)のピークを示し、13C−NMRは152.8ppm、151.5ppm、149.0ppm、143.1ppm、121.3ppm、120.5ppm、117.5ppm、115.7ppm、115.0ppm、112.9ppm、80.4ppm、78.8ppm、78.8ppm、75.4ppm、75.4ppm、56.5ppm、56.2ppm、51.1ppmのピークを示し、マススペクトルはM=319のピークを示したことから、下記式で表されるオキサジン化合物(A−1)が得られていることを確認した。
【0118】
【化15】
・・・(A−1)
【0119】
〔合成例1〕モノプロパルギルエーテル含有混合物(C−1)の合成
滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、4,4´−ビフェノール 400.0g(2.1モル)と脱水THF 5000mLを仕込み攪拌溶解した。反応溶液を10℃以下に保ちながら水素化ナトリウム(60%, 流動パラフィンに分散) 85.9g(2.1モル)を1時間かけて分割添加した。1時間かけて室温に戻した後、昇温し還流状態にした。還流下でプロパルギルブロミド(80%トルエン溶液) 319.4g(2.1モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、還流下で24時間反応させた。
室温まで放冷後、臭化ナトリウムを濾別し、THF及びトルエンを減圧除去した。残渣に酢酸エチル 3600gを加え溶解させた後、10%水酸化ナトリウム水溶液1200gを用い3回アルカリ洗浄した。続いてイオン交換水 1800g用い2回水洗した。硫酸ナトリウムを加え乾燥後、濾別し酢酸エチルを減圧除去した。60℃で12時間真空乾燥し乳白色固体(C−1)を76.0g得た。H−NMRは9.44ppm(1H)、7.51ppm−7.40ppm(4H)、7.01ppm(2H)、6.81ppm(2H)、4.80ppm(2H)、3.55ppm(1H)のピークを示し、13C−NMRは156.6ppm、156.0ppm、133.5ppm、130.6ppm、127.3ppm、126.9ppm、115.6ppm、115.5ppm、115.2ppm、79.3ppm、78.1ppm、55.4ppmのピークを示し、目的物であるモノプロパルギルエーテルを含有する混合物(C−1)であることを確認した。
<混合物(C−1)の組成>
モノプロパルギルエーテル 52.1%
ジプロパルギルエーテル 44.9%
HPLC面積% 検出波長254nm
【0120】
〔合成例2〕モノプロパルギルエーテル含有混合物(C−2)の合成
滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、4,4´−ビフェノール 400.0g(2.1モル)と脱水THF 3000mLを仕込み攪拌溶解した。反応溶液を10℃以下に保ちながら水素化ナトリウム(60%, 流動パラフィンに分散) 43.0g(1.1モル)を1時間かけて分割添加した。1時間かけて室温に戻した後、昇温し還流状態にした。還流下でプロパルギルブロミド(80%トルエン溶液) 159.7g(1.1モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、還流下で24時間反応させた。
室温まで放冷後、臭化ナトリウムを濾別し、THF及びトルエンを減圧除去した。残渣に酢酸エチル 2000gを加え溶解させた後、10%水酸化ナトリウム水溶液1200gを用い3回アルカリ洗浄した。続いてイオン交換水 1800g用い2回水洗した。硫酸ナトリウムを加え乾燥後、濾別し酢酸エチルを減圧除去した。60℃で12時間真空乾燥し乳白色固体(C−2)を98.7g得た。H−NMRは9.44ppm(1H)、7.51ppm−7.40ppm(4H)、7.01ppm(2H)、6.81ppm(2H)、4.80ppm(2H)、3.55ppm(1H)のピークを示し、13C−NMRは156.6ppm、156.0ppm、133.5ppm、130.6ppm、127.3ppm、126.9ppm、115.6ppm、115.5ppm、115.2ppm、79.3ppm、78.1ppm、55.4ppmのピークを示し、目的物であるモノプロパルギルエーテルを含有する混合物(C−2)であることを確認した。
<混合物(C−2)の組成>
モノプロパルギルエーテル 81.7%
ジプロパルギルエーテル 18.3%
HPLC面積% 検出波長254nm
【0121】
〔実施例2〕オキサジン化合物(A−2)の合成(反応物A−2−1)
滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、4-プロパルギルオキシアニリン29.4g(0.2モル)、モノプロパルギルエーテル含有混合物(C−1)76.0gを仕込み、トルエン150gに溶解させた後、94%パラホルムアルデヒド12.8g(0.4モル)を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で7時間反応させた。反応後、分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、オキサジン化合物(A−2)を含有する反応物84.9gを得た。
【0122】
【化16】
・・・(A−2)
【0123】
H−NMRは7.35ppm−7.30ppm(3H)、7.09ppm−7.01ppm(3H)、6.88ppm−6.75ppm(5H)、5.38ppm(2H)、4.67ppm−4.62ppm(6H)、2.49ppm(2H)のピークを示し、13C−NMRは171.2ppm、156.3ppm、153.2ppm、151.8ppm、142.3ppm、133.1ppm、132.1ppm、127.2ppm、125.6ppm、125.0ppm、121.6ppm、119.4ppm、116.6ppm、115.6ppm、115.3ppm、80.3ppm、79.9ppm、79.6ppm、78.2ppm、78.0ppm、55.7ppm、49.7ppmのピークを示し、マススペクトルはM=395のピークを示したことから、オキサジン化合物A−2の純度54%である反応物(A−2−1)が得られていることを確認した。
【0124】
〔実施例3〕オキサジン化合物(A−2)の合成(反応物A−2−2)
実施例2において、混合物(C−1)を(C−2)に代える以外は、同様の操作を行い、オキサジン化合物A−2の純度が91%である反応物(A−2−2)108.3gを得た。
【0125】
〔比較合成例1〕オキサジン化合物(B−1)の合成
滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、アニリン93.1g(1.0モル)、フェノール94.1g(1.0モル)を仕込み、トルエン 750gに溶解させた後、94%パラホルムアルデヒド63.9g(2.0モル)を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で7時間反応させた。反応後、分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、オキサジン化合物(B−1)189gを得た。
1H−NMRは7.24ppm−7.05ppm(7H)、6.87ppm−6.70ppm(2H)、5.43ppm(2H)、4.64ppm(2H)のピークを示し、13C−NMRは154.0ppm、147.8ppm、129.1ppm、127.7ppm、127.2ppm、121.3ppm、120.5ppm、120.5ppm、117.4ppm、116.2ppm、78.4ppm、48.9ppmのピークを示し、マススペクトルはM+=211のピークを示したことから、下記式で表されるオキサジン化合物(B−1)が得られていることを確認した。
【0126】
【化17】

・・・(B−1)
【0127】
〔比較合成例2〕1,4−ハイドロキノンジプロパルギルエーテル(B−2)の合成
滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、1,4−ハイドロキノン 40.0g(0.4モル)とアセトン 1Lを仕込み攪拌溶解した。炭酸カリウム 110.5g(0.8モル)を添加後、昇温し還流状態にした。還流下で30分経過後、プロパルギルブロミド(80%トルエン溶液) 118.8g(0.8モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、還流下で24時間反応させた。
室温まで放冷後、炭酸カリウムを濾別し、アセトンを減圧除去した。残渣にクロロホルム 200mLを加え溶解させた後、イオン交換水 200mLを用い2回水洗した。硫酸マグネシウムを加え乾燥後、濾別しクロロホルムを減圧除去した。さらに80℃で12時間真空乾燥し薄茶色結晶を64g得た。H−NMRは6.93ppm−6.86ppm(4H)、4.70ppm(4H)、3.51ppm(2H)のピークを示し、13C−NMRは151.7ppm、115.8ppm、79.4ppm、78.0ppm、55.8ppmのピークを示し、下記式で表される目的物である1,4−ハイドロキノンジプロパルギルエーテルであることを確認した。
【0128】
【化18】
・・・(B−2)
【0129】
〔実施例4〜6、及び比較例1〜3〕組成物及び成形物の作成
実施例1〜3及び比較合成例1で得られたオキサジン化合物(A−1、A−2−1、A−2−2、B−1)、比較合成例2で得られた1,4−ハイドロキノンジプロパルギルエーテル(B−2)、比較用ジヒドロオキサジン化合物(四国化成製「P−d型ベンゾオキサジン」(4,4’−ジアミノジフェニルメタンとホルマリンとフェノールの反応生成物))、フェノール樹脂(DIC株式会社製「TD−2131」フェノールノボラック樹脂)を、表1に示す割合で配合し、組成物を調製した。
この組成物を以下の条件に付すことで硬化物を作製した。
【0130】
<硬化物>
硬化条件:170℃で2時間の後、200℃で2時間、更に250℃で2時間加熱硬化
成型後板厚:2.4mm
【0131】
上記の硬化物について、下記の方法で種々の物性評価を行った。結果を表1に示す。
<ガラス転移温度>
厚さ2.4mmの硬化物を幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、これを試験片1とした。この試験片1を粘弾性測定装置(DMA:日立ハイテクサイエンス社製固体粘弾性測定装置「DMS7100」、変形モード:両持ち曲げ、測定モード:正弦波振動、周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
【0132】
<耐熱分解性>
厚さ2.4mmの硬化物を細かく裁断し、熱重量分析装置(SIIナノテクノロジー社製「TG/DTA6200」)を用いて、昇温速度を5℃/分として窒素雰囲気下で測定を行い、5%重量減少する温度(Td5)を求めた。
【0133】
【表1】
【0134】
比較例2における組成物は、上記硬化条件では硬化せず、物性評価可能な試験片を得ることが不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のオキサジン化合物は、その硬化物が耐熱分解性、誘電特性及び低吸湿性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。