【実施例】
【0021】
PTTペレット(SORONA J2240 Semi−Dull;Du Pont製品)、PBTペレット(TORAYCOM 1401X06 東レ製品)及び銀含有可溶性ガラス(PG721ST 興亜硝子製品)を混合撹拌して均一にする。または、PTT粉末(SORONA J2240 Semi−Dull;Du Pont製品)、PBT粉末(TORAYCOM 1401X06 東レ製品)及び銀含有可溶性ガラス(PG721ST 興亜硝子製品)を撹拌して均一に分散する。
均一に混合された樹脂を紡糸機のホッパーに投入して、270℃で溶融し250℃で混練して押し出して、紡糸口より紡糸して3段の加熱延伸により4〜5倍の延伸を行って約76μmのフィラメントを製造した。このフィラメントの表面は、粒子状銀ガラスがある部分は凸状に点在し、その表面は薄い樹脂皮膜が形成されている状態である。
このフィラメントを直径5cmの円柱状に集束して長さ6cmに切断した。
フィラメント集束の一端を12重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に120℃で浸漬して、経時的にその浸漬したフィラメント集束である浸漬部を、徐々に引き上げて最高120分間を浸漬した。上記フィラメント集束のテーパー状先細部の先端が加水分解により5〜10μmの太さになるように浸漬時間の調整を行った。
上記フィラメント集束の浸漬部の上方のフィラメントは、上記水酸化ナトリウム水溶液を毛細管現象により吸い上げて、上記フィラメント表面の銀含有可溶性ガラスの凸部を被覆する樹脂を溶解除去して凸部が散在する胴体部を形成した。この胴体部はフィラメントを集束する強弱を調整することによりその幅を任意に変えることができる。次いで水洗乾燥して抗菌性化粧用ブラシ毛材を得た。
【0022】
約76μmのフィラメントをアルカリ処理によりテーパー状先細部を形成する際に、銀含有可溶性ガラスが不均一に配合されていると、テーパー状先細部がその不均一配合された部分から切断されることがあるので、PTT粉末、PBT粉末及び銀含有可溶性ガラス粉末を均一に混合撹拌して、紡糸機のホッパーに投入することが肝要である。3成分を混合撹拌するか、2つの成分を先に混合し、後に残りの成分を添加混合するかは任意である。
【0023】
(実施例1〜9)
上記した溶融紡糸による製造方法で以下実施例1〜9に示す銀含有可溶性ガラスの3種類の含有率の異なる抗菌性化粧用ブラシ毛材を製造した。
表1に具体的に示す。銀含有可溶性ガラス0.1重量%を配合した実施例1〜3、銀含有可溶性ガラス0.5重量%を配合した実施例4〜6、銀含有可溶性ガラス0.8重量%を配合した実施例7〜9である。上記した製造方法で3種類の銀含有可溶性ガラスを配合したフィラメントを前記の条件で4〜5倍に延伸して太さ約76μmのフィラメントを製造した。これらのフィラメントに上記したアルカリ処理を施して、テーパー状先細部を形成した。
【表1】
【0024】
(比較例1〜4)
比較例1は、100重量%PTTフィラメントに上記アルカリ処理を施した。比較例2は、99重量%PTTに1重量%銀含有可溶性ガラスを配合した。比較例3は、100重量%PBTフィラメントに上記アルカリ処理を施した。比較例4は、99重量%PBTに1重量%銀含有可溶性ガラスを配合した。
これらのフィラメントに、上記アルカリ処理を施し、胴体部及びテーパー状先細部を形成したものである。
なお、比較例のPTT及びPBTは実施例で使用した樹脂、そして比較例の銀含有可溶性ガラスも実施例で使用したものを用いている。
【表2】
【0025】
次に、リス毛の表面、上記抗菌性化粧用ブラシ毛材であるフィラメント(実施例5)の表面及び比較例2のフィラメントの表面を、レ−ザー顕微鏡(VK−8710 VK Analyzer(キーエンス製))で撮影した1000倍の写真を
図1〜
図5に示す。
図1は、レ−ザー顕微鏡で撮影したリス毛先端部の1000倍の表面写真である。先端部の先端の太さは7μmであり、その表面に凹凸部が多数形成されていることが分かる。
図2は、レ−ザー顕微鏡で撮影したリス毛胴体部の1000倍の表面写真である。胴体部の太さは25μmであり、その表面にリング状の凹凸部が多数形成されていることが分かる。
【0026】
図3は、レ−ザー顕微鏡で撮影した実施例5のフィラメントの先端部の1000倍の表面写真である。先端部の先端の太さは5μmであり、その表面に凹凸部が無数形成されていることが分かる。
図4は、レ−ザー顕微鏡で撮影した実施例5のフィラメントの胴体部の1000倍の表面写真である。胴体部の太さは45μmであり、その表面に凹凸部が多数形成されていることが分かる。
図5は、レ−ザー顕微鏡で撮影した比較例2のフィラメントの先端部の1000倍の表面写真である。先端部の先端の太さは53μmであり、先端部が途中で破断していることが分かる。
図6は、レ−ザー顕微鏡で撮影した比較例2のフィラメントの胴体部の1000倍の表面写真である。胴体部の太さは45μmであり、その表面に凹凸部が多数形成されていることが分かる。
【0027】
そして、実施例1〜9の抗菌性化粧用ブラシ毛材のテーパー状先細部の表面を、レ−ザー顕微鏡(VK−8710 VK−Analyzer(キーエンス製))によって、その表面の凹凸部の高さ及びその分布、そして、上記テーパー状先細部の先端の太さを測定した。その高さ、分布及び太さを表3に示す。
【表3】
【0028】
比較例1〜4の毛材のテーパー状先細部の表面を、レ−ザー顕微鏡(VK−8710 VK−Analyzer(キーエンス製))によって、その表面の凹凸部の高さ及びその分布、そして、上記テーパー状先細部の先端の太さを測定した。その高さ、分布及び太さを表4に示す。
表4から、比較例2及び4では、上記先端が40μmの太さのものが30%発生している。この先端の太さは通常の10倍以上の太さであり異常なものである。フィラメントの太さは約76μmであり、アルカリ処理で形成される上記先端が40μmの太さであることは異常なことであり、化粧用ブラシにその太さのものが含まれたとすると、その毛が肌を刺激する重大な欠点となる。
この異常な太さは、銀含有可溶性ガラスを1.0重量%含有させると、アルカリ処理によりテーパー状先細部の領域で発生する。従って、銀含有可溶性ガラスをPTT及びPBTに1.0重量%含有させることは困難なことが分かった。
【表4】
【0029】
表3及び表4の静菌活性値は、JIS L 1902−1998(ISO20743)の基準に基づいた黄色ブドウ球菌の抗菌性試験の値である。
表3の試験結果は、黄色ブドウ球菌の測定の静菌活性値が3.8〜5.6の範囲の値を示しており、優れた抗菌性が得られていることが分かる。上記基準では静菌活性値が2.2以上の値であれば、抗菌防臭基準を超えていると定められており、上記静菌活性値が3.8〜5.6の範囲の値は、それを遥かに凌ぐものである。
【0030】
化粧用ブラシにおいては、そのブラシが肌に触れることで皮膚常在菌や水棲菌がブラシに付着して、これらの細菌が増殖することにより不快な臭いを発生して、使用者にとって緊急に解決して欲しい問題となっている。細菌が99%殺菌されると臭いは感知されなくなる。この細菌の99%殺菌は、静菌活性値が2.2の値を示すことを意味している。ところで、実施例1〜9の抗菌性化粧用ブラシ毛材は、静菌活性値が3.8〜5.6の範囲の値を示しており、静菌活性値2.2より短時間に細菌を殺菌し、臭いの発生を早急に防止できることが分かる。実施例1〜9の抗菌性化粧用ブラシ毛材は、その先端部の表面全面に銀含有可溶性ガラスの凹凸部が25〜39個/μm
2の分布密度で存在するので、皮膚常在菌や水棲菌に対して抗菌性及び防臭性が優れている。
【0031】
表4の比較例1及び3の静菌活性値は、PTT及びPBTに銀含有可溶性ガラスが含有されていないために、0.1、0.2の値を示している。一方、上記銀含有可溶性ガラスを1.0重量%含有させた比較例2及び4は、静菌活性値が5.6の高い値を示し抗菌効果に優れるものの、上記したように、アルカリ処理で形成される上記先端に40μmの異常な太さのものが発生し、化粧用ブラシにその太さのものが含まれたとすると、その毛が肌を刺激する重大な欠点となる。
【0032】
(使用テスト結果)
銀含有可溶性ガラスを配合した実施例と比較例の毛材を用いて、パウダーブラシについて、5名の使用テストの結果を1〜5の5段階で評価した。パウダーブラシの評価結果を表5(実施例)及び表6(比較例)に示す。
5段階の評価は、「5」が大変優れる、「4」が優れる、「3」が普通、「2」が劣る、そして、「1」が大変劣るとして評価した。
【表5】
【表6】
【0033】
次に、PBT配合量が29.9〜29.2重量%の実施例1、4及び7、それが19.9〜19.2重量%の実施例2、5及び8、それが9.9〜9.2重量%の実施例3、6及び9の物性値である、伸張弾性率(%)とヤング率(N/mm
2)を計測してその結果を表7〜9に示す。
【表7】
【表8】
【表9】
【0034】
表10は、比較例1〜4の伸張弾性率(%)とヤング率(N/mm
2)を計測した結果を示すものである。
【表10】
【0035】
PBT配合量が29.9〜29.2重量%の実施例1、4及び7の伸張弾性率(%)は78〜82(%)で、ヤング率(N/mm
2)は3334〜3434であり、PBT配合量が19.9〜19.2重量%の実施例2、5及び8の伸張弾性率(%)は83〜87(%)で、ヤング率(N/mm
2)は3233〜3333であり、PBT配合量が9.9〜9.2重量%の実施例3、6及び9の伸張弾性率(%)は88〜92で、ヤング率(N/mm
2)は3128〜3232である。
以上の結果から、伸張弾性率はPBTの配合割合が減少するに従って増加していることが分かり、ヤング率はPBTの配合割合が減少するに従って減少していることが分かる。また、比較例1(PTT100重量%)の伸張弾性率は94で、ヤング率は3067であり、比較例3(PBT100重量%)の伸張弾性率は40で、ヤング率は4047であるが、PBTを29.2重量%配合することで、比較例1の伸張弾性率94を78にまで減少させることができ、また、比較例1のヤング率3067を3434にまで増加させることができる。
【0036】
以上述べたPBT配合量の割合と伸張弾性率とヤング率の関係は、リキッドブラシ、リップブラシ、ネイルケアブラシ、ファンデーションブラシ、パウダーブラシ、シャドーブラシ、チークブラシ、ハイライトブラシまたはコンシーラーブラシ等のブラシに応じた物性を任意に選択することが可能であることを示している。
そして、実施例1〜9のブラシ毛材は、一方端又は両方端の先端方向にテーパー状先細部が形成されると共に、テーパー状先細部の表面全面に1〜2μmの凹凸部が設けられており、含み性、転着性が比較例1(PTT100重量%)より優れていることが分かる。