特許第6268576号(P6268576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268576
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】蓄電素子及び蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20180122BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20180122BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   H01G11/26
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-210285(P2013-210285)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2015-76183(P2015-76183A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】森 澄男
(72)【発明者】
【氏名】加古 智典
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 明彦
(72)【発明者】
【氏名】中井 健太
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−343411(JP,A)
【文献】 特開2011−165670(JP,A)
【文献】 特開2009−289570(JP,A)
【文献】 特開2006−310222(JP,A)
【文献】 特開2011−204414(JP,A)
【文献】 特開2008−243684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/26
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを挟んで重ね合わされた正極及び負極が巻回された電極体であって、前記正極又は前記負極の何れか一方の極のみが連続して少なくとも二以上積層された同極積層部を有する電極体を備え、
前記同極積層部は、第一の折れ曲り部と、該第一の折れ曲り部に係合する第二の折れ曲り部とを有する
蓄電素子。
【請求項2】
前記第一の折れ曲がり部は、前記極の巻回方向の端部であって、前記極の内周側の端部に設けられる
請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記電極体は、
一端及び他端をそれぞれに有する一対の湾曲部であって、内周面同士を対峙させた状態で配置された一対の湾曲部と、
該一対の湾曲部の互いに対向する前記一端同士及び前記他端同士を接続して互いに対向させた一対の対向部と
を有し、
前記第一の折れ曲がり部及び前記第二の折れ曲がり部は、前記一対の湾曲部の少なくとも何れか一方の湾曲部に位置される
請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記電極体は、前記正極又は前記負極の何れか一方の極が重ねられたリード部であって、巻回中心方向の両端部のうちの少なくとも何れか一方の端部に設けられたリード部を有し、
前記同極積層部は、前記リード部に位置される
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記正極及び前記負極は、それぞれ、集電基材と、該集電基材に形成される活物質層とを有し、前記集電基材が露出した活物質層非形成部を形成し、
前記第一の折れ曲がり部及び前記第二の折れ曲がり部は、前記一対の湾曲部の少なくとも何れか一方の湾曲部における前記活物質層非成形部に位置される
請求項3に記載の蓄電素子。
【請求項6】
セパレータを挟んで重ね合わされた正極及び負極を巻回することによって、前記正極又は前記負極の何れか一方の極のみが連続して少なくとも二以上積層された同極積層部を有する電極体を形成する巻回工程と、
前記同極積層部に、第一の折れ曲り部と、該第一の折れ曲り部に係合する第二の折れ曲り部を形成する折れ曲がり部形成工程と
を備える蓄電素子の製造方法。
【請求項7】
前記折れ曲がり部形成工程の後に、さらに前記電極体と該電極体と電気的に接続される集電体とを接合する接合工程を備える請求項6に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項8】
前記巻回工程は、巻軸に対して前記セパレータを挟んで重ね合わされた前記正極及び前記負極を巻き付けることによって前記電極体を形成し、
前記折れ曲がり部形成工程の後に、さらに前記巻軸から前記電極体を引き抜く巻軸引抜工程を備える請求項6又は請求項7に記載の蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータを挟んで重ね合わされた正極及び負極が巻回された電極体を備えた蓄電素子及び蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子の一つとして、セパレータを挟んで重ね合わされた正極及び負極が巻回された電極体を備えたものがある。この種の蓄電素子において、電極体は、例えば、セパレータを挟んで重ね合わされた正極及び負極を巻軸に巻き付けて形成される。
【0003】
セパレータ、正極又は負極のうちの何れか一つが電極体の最外周側に位置し、該最外周側に位置するセパレータ、正極又は負極は、その内側に積層されているセパレータ、正極又は負極に留められる。
【0004】
セパレータ、正極又は負極のうちの何れか一つが電極体の最内周側に位置し、正極及び負極が巻軸に巻き付けられているときは、該最内周側に位置するセパレータ、正極又は負極は、その外側に積層されているセパレータ、正極又は負極と巻軸との間に挟まれて固定される(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、巻軸が電極体から引き抜かれると、最内周側のセパレータ、正極又は負極は、巻軸による支えを失う。そのため、最内周側のセパレータ、正極又は負極は、周方向に位置ずれしやすくなり、よって、電極体が巻き緩むことがある。また、蓄電素子の充放電に伴う電極体の膨張又は収縮によって、又は、蓄電素子に加わった振動によって、電極体が巻き緩むことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−069290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑み、電極体の巻き緩みを抑制できる蓄電素子及び蓄電素子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蓄電素子は、セパレータを挟んで重ね合わされた正極及び負極が巻回された電極体であって、正極又は負極の何れか一方の極のみが連続して少なくとも二以上積層された同極積層部を有する電極体を備え、同極積層部は、第一の折れ曲り部と、該第一の折れ曲り部に係合する第二の折れ曲り部とを有する。
【0009】
かかる構成によれば、正極又は負極の何れか一方の極が巻回方向(周方向)にずれようとしても、第一の折れ曲がり部が第二の折れ曲がり部に係合しており、極の巻回方向への移動が規制される。このため、電極体の巻き緩みが抑制される。
【0010】
ここで、本発明に係る蓄電素子の一態様として、第一の折れ曲がり部は、極の巻回方向の端部であって、極の内周側の端部に設けられるようにしてもよい。
【0011】
このようにすれば、正極又は負極の何れか一方の極の内周側の端部は、該極の巻き始め位置に相当し、第一の折れ曲がり部と第二の折れ曲がり部とがこの極の巻き始め位置で係合するため、極の巻き始め位置から巻回方向全周における巻き緩みが抑制される。
【0012】
本発明に係る蓄電素子の他態様として、電極体は、一端及び他端をそれぞれに有する一対の湾曲部であって、内周面同士を対峙させた状態で配置された一対の湾曲部と、該一対の湾曲部の互いに対向する一端同士及び他端同士を接続して互いに対向させた一対の対向部とを有し、第一の折れ曲がり部及び第二の折れ曲がり部は、一対の湾曲部の少なくとも何れか一方の湾曲部に位置されるようにしてもよい。
【0013】
このようにすれば、一対の湾曲部における極間距離は、一対の対向部における極間距離よりも狭く、一対の湾曲部では、極同士が密に積層されているため、第一の折れ曲がり部と第二の折れ曲がり部とを密接させることができる。そのため、第一の折れ曲がり部と第二の折れ曲がり部とがより強く係合し、巻き緩みにくい電極体となる。
【0014】
本発明に係る蓄電素子の別の態様として、電極体は、正極又は負極の何れか一方の極が重ねられたリード部であって、巻回中心方向の両端部のうちの少なくとも何れか一方の端部に設けられたリード部を有し、同極積層部は、リード部に位置されるようにしてもよい。
【0015】
このようにすれば、第一の折れ曲がり部及び第二の折れ曲がり部が巻回中心方向の両端部のうちの少なくとも何れか一方の端部に設けられることになり、容易に第一の折れ曲がり部及び第二の折れ曲がり部を形成することができる。
【0016】
本発明に係る蓄電素子の別の態様として、正極及び負極は、それぞれ、集電基材と、該集電基材に形成される活物質層とを有し、集電基材が露出した活物質層非形成部を形成し、第一の折れ曲がり部及び第二の折れ曲がり部は、一対の湾曲部の少なくとも何れか一方の湾曲部における活物質層非成形部に位置されるようにしてもよい。
【0017】
このようにすれば、活物質層が折り曲げられて、亀裂が活物質層に生じることなく、第一の折れ曲がり部及び第二の折れ曲がり部を正極及び負極に設けることができる。
【0018】
また、本発明に係る蓄電素子の製造方法は、セパレータを挟んで重ね合わされた正極及び負極を巻回することによって、正極又は負極の何れか一方の極のみが連続して少なくとも二以上積層された同極積層部を有する電極体を形成する巻回工程と、同極積層部に、第一の折れ曲り部と、該第一の折れ曲り部に係合する第二の折れ曲り部を形成する折れ曲がり部形成工程とを備える。
【0019】
かかる構成によれば、正極又は負極の何れか一方の極が巻回方向(周方向)にずれようとしても、第一の折れ曲がり部が第二の折れ曲がり部に係合しており、極の巻回方向への移動が規制される蓄電素子が製造できる。この製造方法で製造された蓄電素子は、電極体の巻き緩みが抑制される。
【0020】
ここで、本発明に係る蓄電素子の製造方法の一態様として、折れ曲がり部形成工程の後に、さらに電極体と該電極体と電気的に接続される集電体とを接合する接合工程を備えるようにしてもよい。
【0021】
このようにすれば、集電体が電極体に接合されるときには、第一の折れ曲がり部が第二の折れ曲がり部に係合しているため、極の巻回方向への移動が規制されて、巻き緩みが抑制された状態の電極体に集電体が接合されることになる。そのため、電極体と集電体との接合には、不良が生じにくい。
【0022】
本発明に係る蓄電素子の他態様として、巻回工程は、巻軸に対してセパレータを挟んで重ね合わされた正極及び負極を巻き付けることによって電極体を形成し、折れ曲がり部形成工程の後に、さらに巻軸から電極体を引き抜く巻軸引抜工程を備えるようにしてもよい。
【0023】
このようにすれば、巻軸から該巻軸に巻き付けられた正極及び負極を引き抜く前に、第一の折れ曲がり部及び第二の折れ曲がり部が形成されるため、巻軸から正極及び負極を引き抜く前から、第一の折れ曲がり部が第二の折れ曲がり部に係合している。そのため、極の巻回方向への移動が規制されるため、電極体は、巻き緩みが抑制された状態にある。よって、電極体は、巻軸から正極及び負極を引き抜く際や引き抜いた後においても、巻き緩みにくくなっている。
【発明の効果】
【0024】
以上の如く、本発明に係る蓄電素子及び蓄電素子の製造方法によれば、電極体の巻き緩みを抑制できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電池セルの全体斜視図である。
図2図2は、同電池セルの部分分解斜視図である。
図3図3(a)は、同電池セルの電極体における正極の各要素を説明するための説明図である。図3(b)は、同電極体における負極の各要素を説明するための説明図である。図3(c)は、同電極体における正極、負極及びセパレータの幅方向(巻回中心方向)の配置関係を説明するための説明図である。
図4図4は、同電極体の巻回状態を示す概念図であって、電極体における巻回中心方向の中途部の概念図である。
図5図5は、同電極体の巻回状態を示す概念図であって、電極体における巻回中心方向の両端部(リード部)の概念図である。
図6図6は、本発明の他の実施形態に係る電池セルの電極体の巻回状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態である電池セルについて、添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電池セル1は、図1に示すように、電極体2と、該電極体2を収容するケース3と、該ケース3の外部に配置された外部端子4と、電極体2と外部端子4とを電気的に接続する集電体5とを備える。
【0027】
電極体2は、図2に示すように、正極21と、負極22と、セパレータ23とを備える。電極体2は、セパレータ23を挟んで重ね合わされた正極21及び負極22が巻回されたものである。具体的には、電極体2は、セパレータ23を挟んで重ね合わされた正極21及び負極22を、巻芯(図示せず)の回りに巻き付けて形成される。巻芯は、中空状の筒形状のものや、中実状の板状のものが用いられる。
【0028】
より詳しく説明する。正極21及び負極22は、図3(c)に示すように、幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされている。これにより、図2に示すように、電極体2には、巻回中心方向(Y方向)の一端部に正極21のみが積層した正極リード部Laが形成される。また、電極体2には、巻回中心方向の他端部に負極22のみが積層した負極リード部Lbが形成される。
【0029】
正極リード部La及び負極リード部Lbは、図4に示す電極体2における巻き始め位置2aから巻き終わり位置2bまでの正極21及び負極22を巻回中心方向(Y方向)に突出させて形成されている。言い換えると、正極リード部La及び負極リード部Lbは、電極体2における最内周側から最外周側までの正極21及び負極22を巻回中心方向(Y方向)に突出させて形成されている。正極21と負極22とは、互いに反対の方向に突出する。
【0030】
電極体2は、図3(c)に示すように、正極21、負極22及びセパレータ23が、セパレータ23、負極22、セパレータ23、正極21の順に積層されたものである。電極体2は、偏平状に形成される。本実施形態に係る電池セル1は、巻回型の電池セルである。正極21及び負極22は、それぞれ、図3(a)及び図3(b)に示すように、集電基材21a,22aと、該集電基材21a,22aに形成される活物質層21b,22bとを有し、集電基材21a,22aが露出した活物質層非形成部21c,22cを形成する。
【0031】
より具体的には、正極21は、図3(a)に示すように、正極集電基材21aと、該正極集電基材21aの幅方向における一端部21cを除いた表裏両面に形成された正極活物質層21bとを備える。正極集電基材21aは、例えば、長尺な帯状の形状のアルミニウム箔から形成される。正極活物質層21bは、正極集電基材21aの一端部21cを除く表裏両面に正極活物質塗料を塗工して形成される。正極集電基材21aが露出したままの一端部21cは、正極活物質層非形成部21cとなる。なお、ここでいう幅方向は、正極21,負極22及びセパレータ23が巻回されたときの巻回中心方向(Y方向)と一致する。
【0032】
負極22は、図3(b)に示すように、負極集電基材22aと、該負極集電基材22aの幅方向における一端部22cを除いた表裏両面に形成された負極活物質層22bとを備える。負極集電基材22aは、例えば、長尺な帯状の形状の銅箔から形成される。負極活物質層22bは、負極集電基材22aの一端部22cを除いた表裏両面に負極活物質塗料を塗工して形成される。負極集電基材22aが露出したままの一端部22cは、負極活物質層非形成部22cとなる。
【0033】
セパレータ23は、図3(c)に示すように、正極21と負極22とを物理的に隔離するとともに、電解液を保持する。なお、セパレータ23は、正極21と負極22とを絶縁するために、正極活物質層21b及び負極活物質層22bよりも幅広である。但し、セパレータ23は、幅方向に突出した正極活物質層非形成部21c及び負極活物質層非形成部22cを覆わないような幅とされている。
【0034】
電極体2は、図4に示すように、一端及び他端をそれぞれに有する一対の湾曲部24a,24bであって、内周面同士を対峙させた状態で配置された一対の湾曲部24a,24bと、該一対の湾曲部24a,24bの互いに対向する一端同士及び他端同士を接続して互いに対向する一対の対向部25a,25bとを有する。
【0035】
一対の湾曲部24a,24bは、偏平状の電極体2における長手方向(Z方向)の両側に配置されている。本実施形態における一対の湾曲部24a,24bのうちの一方の湾曲部(第一の湾曲部)24aは、ケース3の蓋板31(図1及び図2参照)側に配置されている。一対の湾曲部24a,24bのうちの他方の湾曲部(第二の湾曲部)24bは、ケース3の底部32(図1及び図2参照)側に配置されている。一対の対向部25a,25bは、偏平状の電極体2における短手方向(X方向)の両側に配置されている。
【0036】
一対の湾曲部24a,24bは、円弧状に形成されている。具体的には、一対の湾曲部24a,24bでは、電極体2のセパレータ23を挟んで正極21及び負極22が交互に積層されている。そして、電極体2の最内周側に位置するセパレータ23から最外周側に位置するセパレータ23まで、断面形状が円弧状の正極21,負極22及びセパレータ23が積層されている。
【0037】
一対の湾曲部24a,24bでは、正極21,負極22及びセパレータ23とが密に積層されている。一方、一対の対向部25a,25bでは、正極21,負極22及びセパレータ23とが最内周部側にややたわむため、一対の湾曲部24a,24bと比較して疎に積層されている。なお、図4及び図5では、正極21,負極22及びセパレータ23の疎密状態を示していない。
【0038】
電極体2は、図5に示すように、正極21又は負極22の何れか一方の極のみが連続して少なくとも二以上積層された同極積層部26を有する。同極積層部26は、正極21又は負極22のうちの少なくとも電極体2の最内周側に配置される極に位置していることが好ましい。本実施形態に係る同極積層部26は、扁平状の電極体2における巻回中心方向(Y方向)の両端に形成される正極リード部La及び負極リード部Lbの両方に位置する。
【0039】
具体的には、同極積層部26は、電極体2における巻き始め位置2a(図4参照)から巻き終わり位置2b(図4参照)までの正極21を巻回中心方向(Y方向)に突出させた正極リード部Laと、電極体2における巻き始め位置2aから巻き終わり位置2bまでの負極22を巻回中心方向(Y方向)に突出させた負極リード部Lbに設けられている。
【0040】
正極リード部Laに設けられた同極積層部26は、正極活物質層非形成部21cが積層された部分に位置する。正極リード部Laにおける極間は、負極22及びセパレータ23が積層されていないため、離間している。また、負極リード部Lbに設けられた同極積層部26は、負極活物質層非形成部22cが積層された部分に位置する。負極リード部Lbにおける極間は、正極21及びセパレータ23が積層されていないため、離間している。図2に示すように、リード部La,Lbにおける一対の対向部25a,25bのそれぞれは、束ねられて、集電体5に接続される。
【0041】
なお、正極リード部Laに設けられる同極積層部26と、負極リード部Lbに設けられる同極積層部26とは、寸法がやや異なるものの、略同一の形状及び略同一の構造を有する。これに伴い、以下、負極リード部Lbに設けられる同極積層部26について説明し、正極リード部Laに設けられる同極積層部26についての説明は、行わない。
【0042】
同極積層部26は、図5に示すように、第一の折れ曲り部26bと、該第一の折れ曲り部26bに係合する第二の折れ曲り部26dとを有する。第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、一対の湾曲部24a,24bの少なくとも何れか一方の湾曲部24aにおける活物質層非成形部21cに位置される。
【0043】
第一の折れ曲がり部26bは、同極積層部26における最内周部26aに形成されている。第一の折れ曲がり部26bは、負極22の巻回方向(周方向)の端部であって、負極22の内周側の端部に設けられる。巻回方向の内周側の端部とは、負極22の巻き始め位置2aに相当する。第一の折れ曲がり部26bは、一対の湾曲部24a,24bのうちの少なくとも何れか一方の湾曲部24a(24b)に位置される。本実施形態に係る第一の折れ曲がり部26bは、第一の湾曲部24aに位置される。また、第一の折れ曲がり部26bは、巻回中心方向と直交する径方向外側に山折りされたものである。
【0044】
第二の折れ曲がり部26dは、同極積層部26における負極22の最内周部26aの外側に重ね合わされる。第二の折れ曲がり部26dは、最内周部26aの外側に重ね合わされる負極22の第二層26cに設けられる。なお、最内周部26aは、負極22の第一層である。第二の折れ曲がり部26dは、一対の湾曲部24a,24bのうちの少なくとも何れか一方の湾曲部24a(24b)に位置される。本実施形態に係る第二の折れ曲がり部26dは、第一の湾曲部24aに位置される。つまり、第二の折れ曲がり部26dは、第一の折れ曲がり部26bが位置する湾曲部と同じ第一の湾曲部24aに位置される。また、第二の折れ曲がり部26dは、第一の折れ曲がり部26bと同じ形状に折り曲げられる。つまり、第二の折れ曲がり部26dも巻回中心方向と直交する径方向外側に山折りされたものである。
【0045】
第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、第一の湾曲部24a及び第二の湾曲部24bの曲がりよりも急な曲がりを有する。より具体的には、図5に示す第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、図4に示す負極活物質層22bのある負極集電基材22aが積層された第一の湾曲部24a及び第二の湾曲部24bの曲がり具合よりも急な曲がりを有する。本実施形態に係る第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、鋭角に折れ曲げられている。
【0046】
一対の集電体5,5のそれぞれは、図2に示すように、電極体2の一方向(Z方向)に延びる端縁に沿って配置される電極体添設部50,50と、該電極体添設部50,50と直角又は略直角をなすように該電極体添設部50,50の一端に延設された固定用片部51,51とを備えている。一対の集電体5,5のそれぞれは、電極体2のリード部La,Lbに機械的且つ電気的に接続されている。
【0047】
ケース3は、一面に開口部を形成した箱状のケース本体30と、該ケース本体30の開口部を閉塞する蓋板31とを備える。本実施形態に係るケース本体30及び蓋板31の何れも金属製である。ケース3は、ケース本体30に対して蓋板31を溶接することで内部空間が気密に形成されている。
【0048】
ケース本体30は、扁平な箱形に形成され、扁平状の電極体2を収容可能に形成されている。すなわち、本実施形態に係るケース本体30は、平面視長方形状の底部32と、該底部32の長手方向の両端から起立した一対の第一の壁部33,33と、底部32の長手方向と直交する両端から起立した一対の第二の壁部34,34とを備える。蓋板31は、ケース本体30の開口部に即して長方形状に形成されている。
【0049】
一対の外部端子4,4のそれぞれは、電極体2と電気的に接続されている。そのため、本実施形態に係る電池セル1は、蓋板31の貫通孔に挿通した締結部材6,6によって、集電体5,5がケース3内に固定されるとともに内外にある電極体2と外部端子4,4とが電気的に接続されている。
【0050】
次に、本実施形態に係る電池セル1の製造方法について、説明する。電池セル1の製造方法は、セパレータ23を挟んで重ね合わされた正極21及び負極22を巻回することによって、正極21又は負極22の何れか一方の極のみが連続して少なくとも二以上積層された同極積層部26を有する電極体2を形成する巻回工程と、同極積層部26に、第一の折れ曲り部26bと、該第一の折れ曲り部26bに係合する第二の折れ曲り部26dを形成する折れ曲がり部形成工程とを備える。さらに、電池セル1の製造方法は、折れ曲がり部形成工程の後に、さらに電極体2と該電極体2と電気的に接続される集電体5とを接合する接合工程を備えることが好ましい。また、電池セル1の製造方法は、折れ曲がり部形成工程の後に、さらに巻軸から電極体2を引き抜く巻軸引抜工程を備えることが好ましい。また、電池セル1の製造方法は、さらに、電極体2をケース3に収容する電極体収容工程を備えている。
【0051】
巻回工程は、巻回装置に備えられた巻軸に対して巻芯を取り付けた後、巻芯に対してセパレータ23を挟んで重ね合わされた正極21及び負極22を巻き付けることによって電極体2を形成する。巻回工程では、セパレータ23を挟んで重ね合わされた正極21及び負極22を扁平状に巻いて電極体2を製造する。そして、正極21及び負極22は、図2及び図3(c)に示すように、巻回中心方向に位置ずれした状態で積層される。
【0052】
セパレータ23は、図4に示すように、電極体2の最外周側に位置し、該最外周側に位置するセパレータ23は、その内側に積層されているセパレータ23に留められる。
【0053】
折れ曲がり部形成工程は、巻回工程の後に行われ、第一の折れ曲り部26b及び第二の折れ曲り部26dが第一の湾曲部24a及び第二の湾曲部24bの曲がりよりも急な曲がりに曲げられる。より具体的には、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、鋭角に折り曲げられる。
【0054】
巻軸引抜工程は、折れ曲がり部形成工程の後に行われる。巻軸引抜工程では、巻軸から電極体2を該電極体2の巻回中心方向に引き抜かれることにより、電極体2は、巻回装置から取り外された状態となる。
【0055】
接合工程は、巻軸引抜工程の後に行われる。接合工程では、図2に示すように、リード部La,Lbにおける一対の対向部25a,25bのそれぞれが束ねられて、抵抗溶接や超音波溶接などで接合される。そして、一対の集電体5,5のそれぞれは、電極体2のリード部La,Lbの一対の対向部25a,25bに接続される。なお、電極体2のリード部La,Lbの一対の湾曲部24a,24bに接続されていない。より具体的には、一対の集電体5,5のそれぞれは、図1及び図2に示すように、一対の対向部25a,25bのそれぞれを電極体添設部50で挟んで電極体2のリード部La,Lbに接続される。集電体5の電極体添設部50と一対の対向部25a,25bのそれぞれとは、抵抗溶接や超音波溶接などで接合されている。
【0056】
電極体収容工程は、接合工程の後に行われる。電極体収容工程では、電極体2がケース本体30に収容され、該電極体2が収容されたケース本体30に蓋板31が溶接されて、ケース本体30の開口部を塞ぐ。
【0057】
以上より、本実施形態に係る電池セル1によれば、正極21又は負極22の何れか一方の極が巻回方向(周方向)にずれようとしても、第一の折れ曲がり部26bが第二の折れ曲がり部26dに係合しており、極の巻回方向への移動が規制される。このため、電極体2の巻き緩みが抑制される。この効果は、正極21,負極22及びセパレータ23が巻き付けられた巻軸から引き抜かれたときに限定されず、巻軸から引き抜かれた後においても継続して発揮される。
【0058】
また、正極21又は負極22の何れか一方の極の内周側の端部は、該極の巻き始め位置2aに相当し、第一の折れ曲がり部26bと第二の折れ曲がり部26dとがこの極の巻き始め位置2aで係合するため、極の巻き始め位置から巻回方向全周における巻き緩みが抑制される。なお、極の内周側の端部近傍では、隣り合った極やセパレータによって押さえられる力が弱い又は無いため、巻き緩みの起点となりやすい。このため、極の内周側の端部に第一の折れ曲がり部26bを設けることが効果的である。
【0059】
また、一対の湾曲部24a,24bにおける極間距離は、一対の対向部25a,25bにおける極間距離よりも狭く、一対の湾曲部24a,24bでは、極同士が密に積層されているため、第一の折れ曲がり部26bと第二の折れ曲がり部26dとを密接させることができる。そのため、第一の折れ曲がり部26bと第二の折れ曲がり部26dとがより強く係合し、巻き緩みにくい電極体2となる。
【0060】
また、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dが巻回中心方向の両端部のうちの少なくとも何れか一方の端部に設けられることになり、容易に第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dを形成することができる。
【0061】
特に、活物質層21b,22bが折り曲げられて、亀裂が活物質層21b,22bに生じることなく、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dを正極21及び負極22に設けることができる。具体的には、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dが活物質層21b,22bが形成されていないリード部La,Lbに位置するため、極21,22を折り曲げても、活物質層21b,22bを損傷させない。
【0062】
また、金属からなる集電基材21a,22aが露出した活物質層非形成部21c,22cに第一の折れ曲がり部26bを設ける構成により、金属の塑性変形を利用して第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dを形成することができる。このため、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dの形状を容易に維持でき、巻き緩みの効果を継続させることが容易になる。
【0063】
また、本実施形態に係る電池セル1の製造方法によれば、正極21又は負極22の何れか一方の極が巻回方向(周方向)にずれようとしても、第一の折れ曲がり部26bが第二の折れ曲がり部26dに係合しており、極の巻回方向への移動が規制される電池セル1が製造できる。この製造方法で製造された電池セル1は、電極体2の巻き緩みが抑制される。
【0064】
また、集電体5が電極体2に接合されるときには、第一の折れ曲がり部26bが第二の折れ曲がり部26dに係合しているため、極の巻回方向への移動が規制されて、巻き緩みが抑制された状態の電極体2に集電体5が接合されることになる。そのため、電極体2と集電体5との接合には、不良が生じにくい。
【0065】
また、巻軸から該巻軸に巻き付けられた正極21及び負極22を引き抜く前に、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dが形成されるため、巻軸から正極21及び負極22を引き抜く前から、第一の折れ曲がり部26bが第二の折れ曲がり部26dに係合している。そのため、極の巻回方向への移動が規制されるため、電極体2は、巻き緩みが抑制された状態にある。よって、電極体2は、巻軸から正極21及び負極22を引き抜く際や引き抜いた後においても、巻き緩みにくくなっている。
【0066】
このように、本実施形態に係る電池セル1及び電池セル1の製造方法によれば、電極体2の巻き緩みを抑制できるという優れた効果を奏し得る。
【0067】
なお、本発明に係る蓄電素子及び蓄電素子の製造方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々な変更を加え得ることは勿論である。また、下記した変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0068】
上記実施形態における電池セル1の同極積層部26は、電極体2における巻き始め位置2aから巻き終わり位置2bまで正極21及び負極22を巻回中心方向(Y方向)に突出させたリード部(正極リード部La及び負極リード部Lb)に設けられていた。つまり、同極積層部26は、最内周側から最外周側までの正極21又は負極22を巻回中心方向(Y方向)に突出させたリード部に設けられていた。しかし、これに限定されるものではない。例えば、同極積層部は、正極21又は負極22の何れか一方の極のみが連続して少なくとも二以上積層されたものであればよく、最内周側から最外周側までに積層された正極21又は負極22のうちの中間層を巻回中心方向(Y方向)に突出させたリード部に設けられていてもよい。
【0069】
上記実施形態における電池セル1の第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、電極体2の正極リード部Laと負極リード部Lbとに設けられていた。しかし、これに限定されるものではない。例えば、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、電極体2の正極リード部La及び負極リード部Lbのうちの少なくとも何れか一方のリード部La(Lb)に設けられていてもよい。
【0070】
なお、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、正極21又は負極22のうちの電極体2の最内周側に配置される一方の極(本実施形態では、負極22)のリード部(本実施形態では、負極リード部Lb)に少なくとも設けられることが好ましい。このようにすれば、一方の極の巻き緩みだけでなく、この一方の極よりも外側に配置される他方の極(本実施形態では、正極21)も、その電極体2の位置が規制されて、他方の極の巻き緩みも抑制することができる。
【0071】
また、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、電極体2のリード部La,Lbの第一の湾曲部24aに設けられていた。しかし、これに限定されるものではない。例えば、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、電極体2のリード部La,Lbの第二の湾曲部24bに設けられていてもよいし、第一の対向部25a又は第二の対向部25bに設けられていてもよい。また、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、一箇所ずつ設けられていた。しかし、これに限定されるものではない。例えば、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dのそれぞれは、電極体2のリード部La,Lbの第一の湾曲部24a及び第二の湾曲部24b、第一の対向部25a及び第二の対向部25bに複数設けられていてもよい。
【0072】
また、図6に示すように、電極体2がその内周側における正極21又は負極22のうちの何れか一方の極21を二層以上積層させて形成されたものであれば、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dを設ける位置は、電極体2のリード部La,Lbに限定されない。つまり、第一の折れ曲がり部26b及び第二の折れ曲がり部26dは、巻回中心方向(Y方向)のどの位置に設けられてもよい。
【0073】
上記実施形態における電池セル1の電極体2における正極21の第二層26cが第一層(最内周部)26aの周方向全周に及んでいた。しかし、これに限定されるものではない。例えば、第二層は、第一層(最内周部)の周方向全周に及んでおらず、その一部に外側から重ね合わされた部分であってもよい。
【0074】
上記実施形態における電池セル1の第二の折れ曲がり部26dは、電極体2の内周側から二層目の一層にのみ設けられていた。しかし、これに限定されるものではない。例えば、第二の折れ曲がり部26dは、最内周部26aの外側に重ね合わされる二以上の層に設けられていてもよい。
【0075】
上記実施形態における電池セル1の製造方法は、折れ曲がり部形成工程の後に接合工程を備えていた。しかし、これに限定されるものではない。つまり、接合工程は、折れ曲がり部形成工程の前に行われてもよい。このような場合であっても、電極体2は、電極体2の膨張又は収縮によって、又は、電極体2に加わった振動によって、巻き緩みが生じるのを抑制される。
【0076】
上記実施形態における電池セル1の製造方法は、折れ曲がり部形成工程の後に巻軸引抜工程を備えていた。しかし、これに限定されるものではない。例えば、巻軸引抜工程は、折れ曲がり部形成工程の前に行われるようにしてもよい。このような場合であっても、電極体2は、電極体2の膨張又は収縮によって、又は、電極体2に加わった振動によって、巻き緩みが生じるのを抑制される。
【0077】
上記実施形態における蓄電素子は、電池セル1であった。しかし、これに限定されるものではない。例えば、蓄電素子は、キャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…電池セル(蓄電素子)、2…電極体、2a…巻き始め位置、2b…巻き終わり位置、3…ケース、4…外部端子、5…集電体、6…締結部材、21…正極、21a…正極集電基材、21b…正極活物質層(正極活物質塗工部)、21c…正極活物質層非形成部、22…負極、22a…負極集電基材、22b…負極活物質層(負極活物質塗工部)、22c…負極活物質層非形成部、23…セパレータ、24a…第一の湾曲部、24b…第二の湾曲部、25a…第一の対向部、25b…第二の対向部、26…同極積層部、26a…最内周部、26b…第一の折れ曲がり部、26c…第二層、26d…第二の折れ曲がり部、30…ケース本体、31…蓋板、32…底部、33…第一の壁部、34…第二の壁部、50…電極体添設部、51…固定用片部、La…正極リード部(リード部)、Lb…負極リード部(リード部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6