特許第6268595号(P6268595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268595
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】クリーム状洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20180122BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20180122BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180122BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20180122BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180122BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20180122BHJP
   C11D 1/18 20060101ALI20180122BHJP
   C11D 1/10 20060101ALI20180122BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20180122BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20180122BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20180122BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20180122BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   A61K8/46
   A61K8/44
   A61K8/34
   A61K8/36
   A61K8/37
   A61Q19/10
   C11D1/18
   C11D1/10
   C11D1/88
   C11D3/20
   C11D1/04
   C11D1/72
   C11D1/68
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-66003(P2014-66003)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-189674(P2015-189674A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】脇田 和晃
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 宗明
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−544246(JP,A)
【文献】 特開2012−193140(JP,A)
【文献】 特開2012−180292(JP,A)
【文献】 特開2000−087081(JP,A)
【文献】 特開2003−73221(JP,A)
【文献】 特開2015−107927(JP,A)
【文献】 特開2015−107929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、B、C、DおよびEを混合して成り、アシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤の含有量が3〜15質量%、両性界面活性剤の含有量が1〜10質量%、成分Cの含有量が25〜55質量%、成分Dの含有量が2〜10質量%、成分Eの含有量が4〜14質量%であり、成分Fとして、エチレンオキシドの平均付加モル数が85〜150モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテルを、前記成分A、B、C、DおよびEの合計質量を100質量%としたときに0.5〜6質量%含有することを特徴とする、クリーム状洗浄剤組成物。

成分A; 前記アシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤の20〜40質量%水溶液
成分B; 前記両性界面活性剤の20〜40質量%の水溶液
成分C; グリセリン、ソルビトール、およびポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性多価アルコール
成分D; ラウリン酸またはミリスチン酸
成分E; モノステアリン酸グリセリルまたはモノステアリン酸ソルビタンである非イオン性界面活性剤
【請求項2】
前記成分Aの前記アシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤がアシルメチルタウリン塩である、請求項1記載のクリーム状洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関し、詳しくは性状がクリーム状である身体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーム状洗浄剤は、一般にチューブ等に充填されており、少量で十分な起泡力と洗浄性を有し、かつ取り扱い性や携帯性に優れていることから、洗顔料として広く使用されている。従来のクリーム状洗浄剤組成物としては、高級脂肪酸塩を主成分とするものが多い。これは、起泡力に優れ、すすぎが簡単であることによる。
【0003】
ところが、該高級脂肪酸塩を主洗浄成分とする洗浄剤は、洗浄後の肌につっぱり感を感じるという欠点がある。そこで、かかる欠点を克服し、洗いあがりのうるおい感を付与すべく、アシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤(以下、アミノ酸系活性剤を略す)を主洗浄成分とする洗浄剤が開発又は提案されている。
【0004】
しかしながら、一般的にアミノ酸系活性剤は20〜40質量%の水溶液として流通しているものが主流であるため、それを主洗浄成分とした場合クリーム状の剤型にすることが非常に困難であった。
【0005】
そこで、特許文献1では、スプレードライにより粉体化されたアミノ酸系活性剤(アシルメチルタウリン塩)を用いて、洗浄剤組成物の活性剤有効分を高めることでクリーム状にすることに成功している。しかしながら、特許文献1の洗浄剤組成物は、洗浄成分が実質的にアミノ酸系活性剤のみであるため、泡の弾力性において不十分である問題があった。
【0006】
特許文献2では、アミノ酸系活性剤水溶液を用いてクリーム状の製剤を製造するために、カチオン性ポリマーや脂肪酸アルキロールアミドなどの増粘剤を高配合することで課題を達成している。しかし、特許文献2の洗浄剤は増粘剤による粘着性が生じるため、例えば手にとって泡立てようとすると、手にべったりと付着してしまうため伸ばしにくく、泡立てにくいという問題があった。
【0007】
また生産性の観点から鑑みると、特許文献1の組成物は、高濃度のグリセリン水溶液に対して多量の粉体化アシルメチルタウリン塩を溶解する際、溶解に長い時間を要し、生産性が低下する問題があった。また、特許文献2の組成物では、高配合したカチオン性ポリマーや脂肪酸アルキロールアミドなどの増粘剤によって、組成物の曳糸性・粘着性が高くなり、製造設備への付着ロスが大きく、生産性(歩留り)が悪いという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−209220号公報
【特許文献2】特開2000−219614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような背景から、アミノ酸系活性剤を主洗浄成分とする使用感のよいクリーム状洗浄剤組成物を、アミノ酸系活性剤の水溶液から高い生産性で製造することは極めて困難であり、その課題解決が求められていた。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、アミノ酸系活性剤を主洗浄成分とし、起泡性や泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感において優れ、粉体化されたアミノ酸系活性剤を使わずにアミノ酸系活性剤水溶液から製造できるクリーム状洗浄剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、以下のものである。
(1) 下記成分A、B、C、DおよびEを混合して成り、アシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤の含有量が3〜15質量%、両性界面活性剤の含有量が1〜10質量%、成分Cの含有量が25〜55質量%、成分Dの含有量が2〜10質量%、成分Eの含有量が4〜14質量%であり、成分Fとして、エチレンオキシドの平均付加モル数が85〜150モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテルを、前記成分A、B、C、DおよびEの合計質量を100質量%としたときに0.5〜6質量%含有することを特徴とするクリーム状洗浄剤組成物。

成分A; アシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤の20〜40質量%水溶液
成分B; 両性界面活性剤の20〜40質量%の水溶液
成分C; グリセリン、ソルビトール、およびポリエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性多価アルコール
成分D; ラウリン酸またはミリスチン酸
成分E; モノステアリン酸グリセリル又はモノステアリン酸ソルビタンである非イオン性界面活性剤
【0012】
) 成分Aのアシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤がアシルメチルタウリン塩である、前記の(1)のクリーム状洗浄剤組成物。
【0013】
本発明によれば、アミノ酸系活性剤を主洗浄成分とし、起泡性や泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感において優れ、粉体化されたアミノ酸系活性剤を使わずにアミノ酸系活性剤水溶液から製造できるクリーム状洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、下記成分A、B、C、DおよびFを含有する。
成分A; アシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤の20〜40質量%水溶液
成分B; 両性界面活性剤の20〜40質量%の水溶液
成分C; グリセリン又はソルビトール又はポリエチレングリコールから選ばれる水溶性多価アルコール
成分D; ラウリン酸またはミリスチン酸
成分E; モノステアリン酸グリセリル又はモノステアリン酸ソルビタンから選ばれる非イオン性界面活性剤
成分F: エチレンオキシドの平均付加モル数が85〜150モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテル
【0016】
<成分A>
本発明で用いる成分Aであるアシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤(アミノ酸系界面活性剤)とは、「1級〜3級のアミノ基とカルボン酸又はスルホン酸とを同一分子内に含有する化合物」と、脂肪酸とのアシル化物であり、主にアシル化剤として脂肪酸クロライドを用いたショッテン・バウマン反応等によって製造される。「1級〜3級のアミノ基とカルボン酸又はスルホン酸とを同一分子内に含有する化合物」としては、抽出法や発酵法で得られる天然の酸性又は中性アミノ酸や、合成法や酵素法で得られる合成の酸性又は中性アミノ酸が挙げられる。アミノ酸の具体例としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、タウリン、メチルタウリン、ザルコシン(N−メチルグリシン)、β-アラニン等が挙げられ、それぞれL体、D体、ラセミ体が存在しうるが、これらのいずれをも使用することができる。
【0017】
上記アミノ酸とアシル化物であるアミノ酸系陰イオン性界面活性剤の種類としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アシルメチルタウリン塩、アシルタウリン塩、アシルメチル−β−アラニン又はその塩、アシル−β−アラニン又はその塩、アシルグルタミン酸又はその塩、アシルグリシン又はその塩、アシルアスパラギン酸又はその塩、アシルザルコシン又はその塩などが挙げられる。これらの中で、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸又はその塩、アシルグリシン塩が好ましく、最も好ましくはアシルメチルタウリン塩である。
【0018】
前記塩としては、特に限定されるものではなく、アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩などが挙げられる。前記アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、前記アルカノールアミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などが挙げられる。起泡性、泡の弾力性を高め、クリーム状の組成物を得るためには、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が最も好ましい。
【0019】
成分Aのアシル基の炭素数は特に制限されるものではないが、通常10〜16であり、好ましくは10〜14、より好ましくは12である。炭素数が10未満の場合はクリーム状の組成物を得ることができず、泡の弾力性も不十分である。炭素数が16を超える場合は、起泡性が悪化する傾向がある。
【0020】
成分Aの含有量としては、アミノ酸系活性剤単独として3〜15質量%であり、好ましくは4〜12質量%、より好ましくは5〜9質量%である。アミノ酸系活性剤の含有量が15質量%を超える場合はクリーム状の組成物が得られず、起泡性、泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感においても不十分である。アミノ酸系活性剤の含有量が3質量%未満の場合は、起泡性、泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感において不十分である。
【0021】
本発明の特徴の一つに、実質的に粉体化されたアミノ酸系活性剤を使わずに、成分Aを水溶液として供する点が挙げられる。その水溶液濃度は20〜40質量%であり、好ましくは22〜38質量%でありより好ましくは24〜36質量%である。成分Aの水溶液濃度が20質量%未満の場合、組成物における水分の含量が多くなりすぎるためクリーム状の組成物が得られない。一方、水溶液濃度が40質量%を超える場合は、水溶液自体が増粘・ゲル化し、生産性が著しく低下する。
【0022】
<成分B>
本発明で用いる成分Bの両性界面活性剤としては、例えばラウリルジメチルアミノベタイン等の酢酸ベタイン型界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型界面活性剤、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−
ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン型界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型界面活性剤、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型界面活性剤などが挙げられる。これらのうち、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−
ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン型界面活性剤が好ましい。
【0023】
成分Bの含有量としては、両性界面活性剤単独として1〜10質量%であり、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは3〜7質量%である。両性界面活性剤の含有量が10質量%を超える場合は、起泡性、泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感において不十分である。一方、両性界面活性剤の含有量が1質量%未満の場合は、クリーム状の組成物が得られず、起泡性、泡の弾力性においても不十分である。
【0024】
本発明の特徴の一つに成分Bを水溶液として供する点が挙げられる。その水溶液濃度は20〜40質量%であり、好ましくは22〜38質量%でありより好ましくは24〜36質量%である。成分Bの水溶液濃度が20質量%未満の場合、組成物における水分の含量が多くなりすぎるためクリーム状の組成物が得られない。一方、水溶液濃度が40質量%を超える場合は、水溶液自体が増粘・ゲル化し、生産性が著しく低下する。
【0025】
<成分C>
本発明で用いる成分Cとしては、グリセリン又はソルビトール又はポリエチレングリコールから選ばれる水溶性多価アルコールである。このうちポリエチレングリコールの分子量は、特に制限されるものではないが、クリーム状の組成物を得るためには、分子量が300〜1000であることが好ましい。ただし、泡の弾力性を高めるために、分子量20000程度の比較的分子量の大きいポリエチレングリコールを低分子量体と組み合わせて配合することはできる。また、成分Cのうち、グリセリンが最も好ましい。
【0026】
成分Cの含有量としては、25〜55質量%であり、好ましくは30〜50質量%、より好ましくは35〜45質量%である。成分Cの含有量が55質量%を超える場合はクリーム状の組成物が得られず、起泡性、泡の弾力性においても不十分である。一方、含有量が25質量%未満の場合は、冷却後に固化してしまい、チューブから出すことができず、起泡性、洗い上がりのうるおい感においても不十分である。
【0027】
<成分D>
本発明で用いる成分Dは、ラウリン酸またはミリスチン酸から選ばれる脂肪酸である。炭素数が14を超える脂肪酸、つまりミリスチン酸より分子量が大きい脂肪酸では、冷却後に固化してチューブから出すことができず、起泡性においても不十分である。一方、脂肪酸の炭素数が12未満、つまりラウリン酸より分子量が小さい脂肪酸では、泡の弾力性や洗い上がりのうるおい感において不十分である。
【0028】
成分Dの含有量としては、2〜10質量%であり、好ましくは3〜8質量%、より好ましくは4〜6質量%である。成分Dの含有量が10質量%を超える場合は、冷却後に固化してチューブから出すことができず、洗い上がりのうるおい感においても不十分である。一方、D成分の含有量が2質量%未満の場合は、起泡性ならびに泡の弾力性において不十分である。
【0029】
本発明で用いる成分Eは、モノステアリン酸グリセリル又はモノステアリン酸ソルビタンから選ばれる非イオン性界面活性剤である。成分Eの脂肪酸鎖長が18未満の場合又はオレイン酸やイソステアリン酸のように不飽和結合や分岐鎖を持つ場合は、クリーム状の組成物を得ることができず、脂肪酸鎖長が18を超える場合は、組成物が固くなりすぎてチューブから出すことができない。
【0030】
<成分E>
成分Eの含有量としては、4〜14質量%であり、好ましくは5〜12質量%、より好ましくは6〜10質量%である。成分Eの含有量が14質量%を超える場合は、組成物が冷却後に固くなりすぎてチューブから出すことができず、起泡性においても不十分である。一方、含有量が4質量%未満の場合、クリーム状の組成物を得ることができず、泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感においても不十分である。
【0031】
<成分F>
本発明で用いる成分Fは、エチレンオキシドの平均付加モル数が85〜150モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテルであり、好ましいエチレンオキシドの平均付加モル数は90〜140モルであり、より好ましくは95〜130モルである。平均付加モル数が150モルを超える場合、工業的な生産が困難であり、平均付加モル数が85モル未満の場合、泡の弾力性を得ることができない。
【0032】
本発明の成分Fを加えることで、泡の弾力性を大幅に向上することが可能になる。成分A〜Eの合計質量を100質量%としたとき、成分Fの含有量としては、0.5〜6質量%であり、好ましくは1〜5質量%、より好ましくは2〜4質量%である。含有量が6質量%を超える場合は、クリーム状の組成物が得られにくい傾向がある。
【0033】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物のpHは、限定されるものではないが、25℃、5質量%水溶液で6〜9が適切であり、より好ましくは7〜8.5、さらに好ましくは7.5〜8.5である。pHが6未満の場合、起泡性、ならびに泡の弾力性が不十分になる場合があり、pHが9を超えると泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感において不十分になる場合がある。
【0034】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、成分Aおよび成分Bを水溶液として配合する。水溶液に用いる水分量は前記の、成分Aおよび成分Bの溶液濃度で決定されるが、水溶液配合として添加する他の成分に随伴する水分と別添加する水分とを合計して、クリーム状洗浄剤組成物中の水分量として、好ましくは15〜45質量%、より好ましくは、20〜43質量%である。水分量が少な過ぎるとクリームが硬くなりすぎてチューブから出せなくなる場合があり、多過ぎるとクリーム状にならない場合がある。
【0035】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物においては、成分A、B、C、D、Eの合計含有量を100質量%とする。この際、任意成分の含有量は外配で10質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、0質量%であってよい。
【0036】
尚、本発明のクリーム状洗浄剤組成物は以下の方法で製造することで、製造時間をより短縮でき、歩留りをより高めることができる。すなわち、生産性をより高めることができる。その方法とはすわなち、以下のものである。
(a) 成分Aおよび成分Bを成分Cと混合し、65〜95℃で均一に溶解するまで混合する工程;
(b) 工程(a)で得られた混合物にたいして、成分Dおよび成分Eを加え、65〜95℃で均一に溶解するまで攪拌する工程;および
(c) 50℃以下まで攪拌しながら冷却する工程
【0037】
工程(a)では、成分Aおよび成分Bをそれぞれ20〜40質量%水溶液で供して成分Cと混合し、65〜95℃で均一に溶解するまで混合する。
工程(b)では、工程(a)で得られた混合物にたいして、成分Dおよび成分Eを加え、65〜95℃で均一に溶解するまで攪拌する。成分Dおよび成分Dは固体であるため、溶融して投入することも可能であるが、通常はビーズ状又はフレーク状のものを投入する。投入時の温度を65〜95℃とすることで、製造中の増粘を抑制することができる。工程(b)で均一に溶解したことを確認した後、工程(c)に移る。
【0038】
工程(c)では、50℃以下まで攪拌しながら冷却する。一般的な石鹸系クリーム洗顔料の処方では、冷却時に著しく増粘した後に減粘するが、本発明のクリーム状組成物においては著しい増粘がおきないため、トルクの大きな攪拌機でも簡単に製造することができる。
【0039】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、目的に応じて成分Fとしてエチレンオキシドの平均付加モル数が85〜150モルのポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有することができる。成分Fは固体の性状を有し、そのまま投入することもできるが、融点が高く、組成物に溶解しづらい。そこで、成分Fは40〜60質量%水溶液として供することが好ましい。また、成分Fを水溶液として供することで、工程(a)〜工程(c)のいずれのタイミングでも投入することができる。
【0040】
さらに、本発明の洗浄剤組成物には発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を添加することができ、その他任意成分としては、例えば、植物油脂、動物油脂などの油脂類;
スクワラン、流動パラフィン、水添ポリイソブテンなどの炭化水素油; セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール類、環状シリコーン、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン等のシリコーン類; パルミチン酸2−エチルヘキシル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸イソプロプル等のエステル油; 塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ココイルアルギニンエチルPCAなどのカチオン性界面活性剤; ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、α‐オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸石鹸等の成分A以外の陰イオン性界面活性剤; ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等の成分Eおよび成分F以外の非イオン性界面活性剤; 1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール等の成分C以外の水溶性多価アルコール; ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、カチオン化セルロース等のカチオン性高分子; クエン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩などのpH調整剤、トコフェロールなどの抗酸化剤、多糖類、アミノ酸、ペプチド、防腐剤、香料、着色剤などを適宜配合することができる。
【0041】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、洗顔料、ボディシャンプー、洗髪料、クレンジング料等の身体洗浄剤に好ましく使用することができ、特に洗顔料として特に有用である。
【実施例】
【0042】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。
<製造例1>
表1中、実施例2の処方において、1kgスケールで製造を行った。28質量%ココイルメチルタウリンNA水溶液(成分A)、30質量%ココアンホ酢酸NA水溶液(成分B)、グリセリン(成分C)、およびクエン酸NA(その他成分)を2Lビーカーに仕込み、スリーワンモーターに装着したプロペラ攪拌羽で攪拌した。これを攪拌しながら、ウォーターバスで80±5℃まで昇温し、同温度で均一になるまで混合した(工程(a))。その後、ミリスチン酸(成分D)、モノステアリン酸グリセリル(成分E)を投入し、80±5℃で均一に溶解するまで1時間攪拌した(工程(b))。溶解確認後、50質量%ラウレス−100水溶液を投入し、50℃以下になるまで攪拌した(工程(c))。
【0043】
製造例1では、成分Dおよび成分Eの溶解に要した時間は30分程度であり、全製造工程を通じて、製剤の急激なゲル化を抑制することができた。また、製剤の粘着性が低く付着ロスが少なかったため、99.2%の良好な歩留まりで組成物を回収することができた。
【0044】
(実施例1〜15、比較例1〜16)
<サンプルの調製>
表1、表2に実施例1〜15の処方を、表3、表4に比較例1〜16の処方を示す。サンプルの調製スケールはすべて100gスケールとし、製造例1の方法に従って調製した。
【0045】
なお、表において、成分A〜成分Eの合計質量が100質量%となるように計算した。また、成分A、Bについては、カッコの外に水溶液としての質量を記載し、カッコ内に界面活性剤(固形分)としての質量を記載した。
水溶液として配合した成分については、添加したイオン交換水および溶媒成分としての水分量を合計し、洗浄剤組成物中の「合計含有水分量」として表中に記載した。
【0046】
(比較例17)
下記の粉体化されたココイルメチルタウリンNAを用いた処方において、1kgスケールで製造を行った。グリセリン、クエン酸NA、水を2Lビーカーに仕込み、スリーワンモーターに装着したプロペラ攪拌羽で攪拌した。80±5℃にて均一に溶解したことを確認後、ココイルメチルタウリンNA粉体化物、ミリスチン酸、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)を添加して80℃にて均一に溶解した。その後、50℃以下になるまで攪拌しながら冷却した。
【0047】
(処方)
ココイルメチルタウリンNA粉体化物 20.0質量%
グリセリン 58.0質量%
ミリスチン酸 5.00質量%
クエン酸NA 2.80質量%
ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)0.50質量%
水 13.7質量%
【0048】
製造例2では、クリーム状組成物を調製することができたが、ココイルメチルタウリンNA粉体化物を溶解する際に3時間以上要した。また、得られたクリーム状洗浄剤組成物は、泡の弾力性において不十分であった。
【0049】
<クリーム状洗顔料組成物の評価>
(性状)
調製24時間後のサンプルの性状を目視で観察した。この際、固化していなかった場合は「×(液化)」と判定した。固化したサンプルはチューブ容器(チューブ径:30mm、吐出口径:5mm)に充填し、ペースト状でチューブ容器からスムーズに取り出せたものは「○」、チューブ容器から出ない、もしくは著しく取り出しにくいものは「×(固化)」と判定した。
【0050】
(起泡性)
専門パネラー20名による使用感テストを行った。調製したクリーム状洗浄料2gを手に取って泡立ててもらい、起泡性について、パネラー各人が下記絶対評価にて4段階に評価し評点とつけた。そして、評点の合計からAA〜Dの5段階評価を行い、AA、A及びBを合格とした。
【0051】
<絶対評価基準>
(評点) : (評価)
3 : 泡立ちが非常に良い
2 : 泡立ちが良い
1 : 泡立ちがやや悪い
0 : ほとんど泡立たない
<評点の合計による4段階評価>
AA : 評点の合計が50〜60点
A : 評点の合計が40〜49点
B : 評点の合計が30〜39点
C : 評点の合計が20〜29点
D : 評点の合計が20点未満
【0052】
(泡の弾力性)
専門パネラー20名による使用感テストを行った。調製したクリーム状洗浄料2gを手に取って泡立ててもらい、泡の弾力性について、パネラー各人が下記絶対評価にて4段階に評価し評点をつけた。そして、評点の合計からAA〜Dの5段階評価を行い、AA、A及びBを合格とした。
<絶対評価基準>
(評点) : (評価)
3 : 非常に泡の弾力性がある
2 : 泡の弾力性がある
1 : 泡の弾力性がやや乏しい
0 : 泡にほとんど弾力性がない
<評点の合計による4段階評価>
AA : 評点の合計が50〜60点
A : 評点の合計が40〜49点
B : 評点の合計が30〜39点
C : 評点の合計が20〜29点
D : 評点の合計が20点未満
【0053】
(洗い上がりのうるおい感)
専門パネラー20名による使用感テストを行った。調製したクリーム状洗浄料2gを手に取って泡立てて洗顔してもらい、洗い上がりのうるおい感について、パネラー各人が下記絶対評価にて4段階に評価し評点とつけた。そして、評点の合計からAA〜Dの5段階評価を行い、AA、A及びBを合格とした。
<絶対評価基準>
(評点) : (評価)
3 : 洗い上がりのうるおい感が非常に良い
2 : 洗い上がりのうるおい感が良い
1 : 洗い上がりのうるおい感があまり感じられない
0 : 洗い上がりのうるおい感がほとんど感じられない
<評点の合計による4段階評価>
AA : 評点の合計が50〜60点
A : 評点の合計が40〜49点
B : 評点の合計が30〜39点
C : 評点の合計が20〜29点
D : 評点の合計が20点未満
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
※1 タ゛イヤホ゜ン K-SF(日油)
※2 アミソフト CS-22(味の素)
※3 アミライト GCS-12K(味の素)
※4 アノン GLM-R-LV(日油)
※5 アノン BDF-R(登録商標)(日油)
※6 ソフタソ゛リン LSB−R (川研ファインケミカル)
※7 RG・コ・P(日油)
※8 ソルヒ゛ットD-70(東和化成工業)
※9 PEG#600(日油)
※10 NAA-122(日油)
※11 NAA-142(日油)
※12 モノク゛リMB(日油)
※13 ノニオンSP-60RPヘ゜レット(日油)
※14 ノニオンK-2100W(日油)
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
※15 ハ゜ーソフトEF(日油)
※16 ノンサールLK-5(日油)の35wt%水溶液を調製
※17 ナイミーン F-202(日油)
※18 1,3-フ゛チレンク゛リコール(タ゛イセル化学工業)
※19 NAA-180(日油)
※20 ノニオン S-1(日油)
【0060】
実施例1〜16および製造例1の結果より、本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、洗浄剤として好適なクリーム状の洗浄剤が得られ、起泡性や泡の弾力性、そして洗い上がりのうるおい感において優れていた。また、粉体化されたアミノ酸系活性剤を使わずに、20〜40質量%のアミノ酸系活性剤水溶液からクリーム状洗浄剤を高い生産性で製造することができた。
【0061】
一方、比較例1〜17では十分な効果が得られていない。
比較例1では、両性活性剤の含有量が10質量%を超えるため起泡性、泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感が不十分であり、比較例2では、両性界面活性剤の含有量が1質量%未満であるため、クリーム状の洗浄剤が得られず、起泡性、泡の弾力性も不十分である。
比較例3では、成分C の含有量が55質量%を超えるため、クリーム状の洗浄剤が得られず、起泡性、泡の弾力性においても不十分であり、比較例4では、成分C
の含有量が25質量%未満であるため、洗浄剤が固化するばかりでなく、起泡性、洗浄後のうるおい感においても不十分である。
比較例5では、成分Dの含有量が10質量%を超えているため、洗浄剤が固化するばかりでなく、起泡性、泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感において不十分であり、比較例6では、成分Dの含有量が2質量%未満であるため起泡性、泡の弾力性において不十分であった。
比較例7では、成分Eの含有量が14質量%を超えているため、クリーム状の洗浄剤が得られず、起泡性も不十分であった。比較例8では、成分Eの含有量が4質量%未満であるため、クリーム状の洗浄剤が得られず、泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感においても不十分であった。
【0062】
比較例9、10では、成分A以外の陰イオン性界面活性剤を使用しているため、十分な効果がえられていない。比較例11〜14ではそれぞれ、成分B以外の界面活性剤、成分C以外の多価アルコール、成分D以外の脂肪酸、成分E以外の非イオン性界面活性剤を使用しているため十分な効果が得られていない。
比較例15では、陰イオン性界面活性剤の含有量が15質量%を超えるため、クリーム状の洗浄剤が得られず、泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感において不十分である。比較例16では陰イオン性界面活性剤の含有量が3質量%未満であるため、起泡性、泡の弾力性、洗い上がりのうるおい感において不十分である。
比較例17では、成分Bおよび成分Eを含有しないため、泡の弾力性において不十分であった。