特許第6268617号(P6268617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6268617カスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムとそのための自己試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6268617
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】カスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムとそのための自己試験方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20180122BHJP
【FI】
   H02M7/49
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-131128(P2016-131128)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-99252(P2017-99252A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】201510795383.0
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516060783
【氏名又は名称】▲陽▼光▲電▼源股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Sungrow Power Supply Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100120411
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 公利
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼宝其
(72)【発明者】
【氏名】肖永利
(72)【発明者】
【氏名】薛▲麗▼英
(72)【発明者】
【氏名】曾志槐
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−529440(JP,A)
【文献】 特開2010−178495(JP,A)
【文献】 特開2011−114920(JP,A)
【文献】 特開2012−253862(JP,A)
【文献】 特開2015−169479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カスケード型マルチレベルコンバータと、自己試験装置とを備えるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムであって、前記カスケード型マルチレベルコンバータは、カスケード接続される少なくとも2つの変換回路を備え、前記自己試験装置は、少なくとも1つの電流検出回路、電圧取得モジュール、および計算モジュールを備え、
前記少なくとも2つの変換回路はそれぞれ、第1の出力端子および第2の出力端子を有し、順番に前記第1の出力端子および前記第2の出力端子と電気的に接続され、前記少なくとも2つの変換回路のそれぞれは、1対1方式で外部の直流電源が設けられ、かつ前記外部の直流電源に電気的に接続され、前記直流電源は、前記直流電源に対応する前記変換回路に直流を供給するように構成され、
前記少なくとも1つの電流検出回路の第1の端子は、前記少なくとも2つの変換回路のうちの最初の変換回路の前記第1の出力端子および/または前記少なくとも2つの変換回路のうちの最後の変換回路の前記第2の出力端子に電気的に接続され、前記少なくとも1つの電流検出回路の第2の端子は、接地され、前記少なくとも1つの電流検出回路は、前記カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、第1の検出電流を検出し、前記カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、第2の検出電流を検出するように構成され、
前記電圧取得モジュールは、前記カスケード型マルチレベルコンバータが前記第1の導電状態にある場合、前記少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧を取得し、前記カスケード型マルチレベルコンバータが前記第2の導電状態にある場合、前記少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧を取得するように構成され、
前記計算モジュールは、前記第1の検出電流、前記第2の検出電流、前記少なくとも2つの変換回路の前記第1のバス電圧、および前記少なくとも2つの変換回路の前記第2のバス電圧に基づいて、前記カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を計算するように構成されている、
カスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム。
【請求項2】
前記計算モジュールによって計算された前記カスケード型マルチレベルコンバータの前記絶縁抵抗値を基準絶縁抵抗値と比較して、前記カスケード型マルチレベルコンバータの前記絶縁抵抗値が前記基準絶縁抵抗値に達するかどうかを判定するように構成されている比較モジュール
をさらに備える、請求項1に記載のカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの変換回路のそれぞれは、第1のコンデンサ、第1のスイッチトランジスタ、第2のスイッチトランジスタ、第3のスイッチトランジスタ、および第4のスイッチトランジスタを備え、
前記第1のスイッチトランジスタの第1の端子は、前記第2のスイッチトランジスタの第1の端子、前記第1のコンデンサの第1の端子、および前記変換回路に対応する前記直流電源の正の電極に電気的に接続され、前記第1のスイッチトランジスタの第2の端子は、前記第3のスイッチトランジスタの第1の端子に電気的に接続され、前記変換回路の前記第1の出力端子として働き、前記第2のスイッチトランジスタの第2の端子は、前記第4のスイッチトランジスタの第1の端子に電気的に接続され、前記変換回路の前記第2の出力端子として働き、前記第3のスイッチトランジスタの第2の端子は、前記第4のスイッチトランジスタの第2の端子、前記第1のコンデンサの第2の端子、および前記変換回路に対応する前記直流電源の負の電極に電気的に接続され、
前記自己試験装置は、前記第1のスイッチトランジスタ、前記第2のスイッチトランジスタ、前記第3のスイッチトランジスタ、および前記第4のスイッチトランジスタがオンに切り替えられる、またはオフに切り替えられるよう制御するように構成されている制御モジュールをさらに備え、
前記カスケード型マルチレベルコンバータは、前記第1のスイッチトランジスタおよび前記第2のスイッチトランジスタがオンに切り替えられ、前記第3のスイッチトランジスタおよび前記第4のスイッチトランジスタがオフに切り替えられる場合、前記第1の導電状態にあり、
前記カスケード型マルチレベルコンバータは、前記第3のスイッチトランジスタおよび前記第4のスイッチトランジスタがオンに切り替えられ、前記第1のスイッチトランジスタおよび前記第2のスイッチトランジスタがオフに切り替えられる場合、前記第2の導電状態にある、
請求項1に記載のカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム。
【請求項4】
前記カスケード型マルチレベルコンバータは、フィルタリング回路およびスイッチグループモジュールをさらに備え、
前記フィルタリング回路の第1の端子は、前記少なくとも2つの変換回路のうちの前記最初の変換回路の前記第1の出力端子に電気的に接続され、前記フィルタリング回路の第2の端子は、前記少なくとも2つの変換回路のうちの前記最後の変換回路の前記第2の出力端子に電気的に接続され、前記フィルタリング回路の第3の端子および第4の端子は、前記スイッチグループモジュールに電気的に接続される、
請求項1に記載のカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム。
【請求項5】
前記スイッチグループモジュールは、第1のスイッチ、第2のスイッチ、第3のスイッチ、および第4のスイッチを備え、
前記第1のスイッチの第2の端子は、前記第2のスイッチの第1の端子に電気的に接続され、前記第1のスイッチの第1の端子は、前記フィルタリング回路の前記第3の端子に電気的に接続され、
前記第3のスイッチの第2の端子は、前記第4のスイッチの第1の端子に電気的に接続され、前記第3のスイッチの第1の端子は、前記フィルタリング回路の前記第4の端子に電気的に接続される、
請求項4に記載のカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム。
【請求項6】
前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、および前記第4のスイッチのそれぞれは、継電器である、請求項5に記載のカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム。
【請求項7】
前記電流検出回路は、直列に接続された第1の抵抗器、第5のスイッチ、および電流取得ユニットを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム。
【請求項8】
前記電流検出回路の前記第1の端子は、前記少なくとも2つの変換回路のうちの前記最初の変換回路の前記第1の出力端子に電気的に接続され、または前記電流検出回路の前記第1の端子は、前記少なくとも2つの変換回路のうちの前記最後の変換回路の前記第2の出力端子に電気的に接続され、または前記電流検出回路の前記第1の端子は、前記カスケード型マルチレベルコンバータがフィルタリング回路を含む場合、前記フィルタリング回路の第3の端子もしくは第4の端子に電気的に接続され、
前記電流検出回路の前記第2の端子は、接地ワイヤに電気的に接続される、
請求項7に記載のカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムのための自己試験方法であって、
電流検出回路によって、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、第1の検出電流を検出し、前記カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、第2の検出電流を検出するステップ、
電圧取得モジュールによって、前記カスケード型マルチレベルコンバータが前記第1の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧を取得し、前記カスケード型マルチレベルコンバータが前記第2の導電状態にある場合、前記少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧を取得するステップ、ならびに
計算モジュールによって、前記第1の検出電流、前記第2の検出電流、前記少なくとも2つの変換回路の前記第1のバス電圧、および前記少なくとも2つの変換回路の前記第2のバス電圧に基づいて、前記カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を計算するステップ
を含む、自己試験方法。
【請求項10】
比較モジュールによって、前記計算モジュールによって計算された前記カスケード型マルチレベルコンバータの前記絶縁抵抗値を基準絶縁抵抗値と比較して、前記カスケード型マルチレベルコンバータの前記絶縁抵抗値が前記基準絶縁抵抗値に達するかどうかを判定するステップ
をさらに含む、請求項9に記載の自己試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カスケード型マルチレベルコンバータの技術分野に関し、詳細には、カスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム、およびカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムのための自己試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カスケード型マルチレベルコンバータ(CMC)は、電気エネルギー変換、高電圧周波数変換駆動、高電圧直流送電、無効電力補償、および他の用途において幅広く使用される。通常、カスケード型マルチレベルコンバータは、単相スイッチブリッジ、または直列に接続されるハーフブリッジインバータ回路を含む。カスケード型マルチレベルコンバータの使用中、統合絶縁抵抗が小さいことに起因する極端に大きい漏洩電流によって生じる安全性リスクを回避するために、カスケード型マルチレベルコンバータの統合絶縁抵抗は、十分に大きくすべきである。
【0003】
実際には、漏洩保護および絶縁抵抗検出は、専用の回路によってカスケード型マルチレベルコンバータにおいて行われる必要がある。この必要性は、光起電発電システムに関して、特に際立っている。たとえば、安全規則においては、カスケード型マルチレベルコンバータは、その絶縁抵抗が特定のレベルに達するまで、開始すべきではないということが要求される。現在のところ、従来の絶縁抵抗検出の解決策は、単一の変換回路または単一のインバータの絶縁抵抗値の計算に対してしか適応できず、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を測定し、計算するためには用いることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術における上記の問題点に対処するために、本開示の目的は、カスケード型マルチレベルコンバータの統合絶縁抵抗値を測定し、計算するためのカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システム、およびカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムのための自己試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、技術的な解決策が、本開示により以下のように提供される。
【0006】
カスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムは、カスケード型マルチレベルコンバータと、自己試験装置とを含み、ここで、カスケード型マルチレベルコンバータは、カスケード接続される少なくとも2つの変換回路を含み、自己試験装置は、少なくとも1つの電流検出回路、電圧取得モジュール、および計算モジュールを含み、
少なくとも2つの変換回路はそれぞれ、第1の出力端子および第2の出力端子を有し、順番に第1の出力端子および第2の出力端子と電気的に接続され、少なくとも2つの変換回路のそれぞれは、1対1方式で外部の直流電源が設けられ、かつこの外部の直流電源に電気的に接続され、直流電源は、直流電源に対応する変換回路に直流を供給するように構成され、
少なくとも1つの電流検出回路の第1の端子は、少なくとも2つの変換回路のうちの最初の変換回路の第1の出力端子および/または少なくとも2つの変換回路のうちの最後の変換回路の第2の出力端子に電気的に接続され、少なくとも1つの電流検出回路の第2の端子は、接地され、少なくとも1つの電流検出回路は、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、第1の検出電流を検出し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、第2の検出電流を検出するように構成され、
電圧取得モジュールは、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧を取得し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧を取得するように構成され、
計算モジュールは、第1の検出電流、第2の検出電流、少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧、および少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧に基づいて、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を計算するように構成されている。
【0007】
さらには、カスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムは、次をさらに含むことができる:
計算モジュールによって計算されたカスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を基準絶縁抵抗値と比較して、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値が基準絶縁抵抗値に達するかどうかを判定するように構成されている比較モジュール。
【0008】
さらには、少なくとも2つの変換回路のそれぞれは、第1のコンデンサ、第1のスイッチトランジスタ、第2のスイッチトランジスタ、第3のスイッチトランジスタ、および第4のスイッチトランジスタを含むことができ、
第1のスイッチトランジスタの第1の端子は、第2のスイッチトランジスタの第1の端子、第1のコンデンサの第1の端子、および変換回路に対応する直流電源の正の電極に電気的に接続可能であり、第1のスイッチトランジスタの第2の端子は、第3のスイッチトランジスタの第1の端子に電気的に接続可能であり、第2のスイッチトランジスタの第2の端子は、第4のスイッチトランジスタの第1の端子に電気的に接続可能であり、第3のスイッチトランジスタの第2の端子は、第4のスイッチトランジスタの第2の端子、第1のコンデンサの第2の端子、および変換回路に対応する直流電源の負の電極に電気的に接続可能であり、
自己試験装置は、第1のスイッチトランジスタ、第2のスイッチトランジスタ、第3のスイッチトランジスタ、および第4のスイッチトランジスタがオンに切り替えられる、またはオフに切り替えられるよう制御するように構成されている制御モジュールをさらに含むことができ、
カスケード型マルチレベルコンバータは、第1のスイッチトランジスタおよび第2のスイッチトランジスタがオンに切り替えられ、第3のスイッチトランジスタおよび第4のスイッチトランジスタがオフに切り替えられる場合、第1の導電状態にあることができ、
カスケード型マルチレベルコンバータは、第3のスイッチトランジスタおよび第4のスイッチトランジスタがオンに切り替えられ、第1のスイッチトランジスタおよび第2のスイッチトランジスタがオフに切り替えられる場合、第2の導電状態にあることができる。
【0009】
さらには、カスケード型マルチレベルコンバータは、フィルタリング回路、およびスイッチグループモジュールをさらに含むことができ、
フィルタリング回路の第1の端子は、少なくとも2つの変換回路のうちの最初の変換回路の第1の出力端子に電気的に接続可能であり、フィルタリング回路の第2の端子は、少なくとも2つの変換回路のうちの最後の変換回路の第2の出力端子に電気的に接続可能であり、フィルタリング回路の第3の端子および第4の端子は、スイッチグループモジュールに電気的に接続可能である。
【0010】
さらには、スイッチグループモジュールは、第1のスイッチ、第2のスイッチ、第3のスイッチ、および第4のスイッチを含むことができ、
第1のスイッチの第2の端子は、第2のスイッチの第1の端子に電気的に接続可能であり、第1のスイッチの第1の端子は、フィルタリング回路の第3の端子に電気的に接続可能であり、
第3のスイッチの第2の端子は、第4のスイッチの第1の端子に電気的に接続可能であり、第3のスイッチの第1の端子は、フィルタリング回路の第4の端子に電気的に接続可能である。
【0011】
さらには、第1のスイッチ、第2のスイッチ、第3のスイッチ、および第4のスイッチのそれぞれは、継電器とすることができる。
【0012】
さらには、電流検出回路は、直列に接続された第1の抵抗器、第5のスイッチ、および電流取得ユニットを含むことができる。
【0013】
さらには、電流検出回路の第1の端子は、少なくとも2つの変換回路のうちの最初の変換回路の第1の出力端子に電気的に接続可能であり、または電流検出回路の第1の端子は、少なくとも2つの変換回路のうちの最後の変換回路の第2の出力端子に電気的に接続可能であり、または電流検出回路の第1の端子は、カスケード型マルチレベルコンバータがフィルタリング回路を含む場合、フィルタリング回路の第3の端子もしくは第4の端子に電気的に接続可能であり、
電流検出回路の第2の端子は、接地ワイヤに電気的に接続可能である。
【0014】
電流検出回路の第1の抵抗器、第5のスイッチ、および電流取得ユニットの位置は、任意に交換可能である。
【0015】
カスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムのための自己試験方法は、本開示によりさらに提供される。自己試験方法は、次を含む:
電流検出回路によって、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、第1の検出電流を検出し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、第2の検出電流を検出するステップ、
電圧取得モジュールによって、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧を取得し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧を取得するステップ、ならびに
計算モジュールによって、第1の検出電流、第2の検出電流、少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧、および少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧に基づいて、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を計算するステップ。
【0016】
さらには、自己試験方法は、次をさらに含むことができる:
比較モジュールによって、計算モジュールによって計算されたカスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を基準絶縁抵抗値と比較して、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値が基準絶縁抵抗値に達するかどうかを判定するステップ。
【0017】
本開示によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムおよび自己試験方法においては、自己試験装置は、カスケード型マルチレベルコンバータについて設置される。自己試験装置は、電流検出回路、電圧取得モジュール、および計算モジュールを含む。電流検出回路は、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、第1の検出電流を検出し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、第2の検出電流を検出するように構成されている。電圧取得モジュールは、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧を取得し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧を取得するように構成されている。計算モジュールは、上記のパラメータに基づいて、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を計算するように構成されている。本開示を用いれば、カスケード型マルチレベルコンバータの統合絶縁抵抗値が計算および測定できず、カスケード型マルチレベルコンバータの中の信号変換回路の絶縁抵抗値しか計算できないという従来技術における問題が解決され、それによって、統合絶縁抵抗が小さいことに起因する極端に大きい漏洩電流によって生じる安全性リスクが回避される。
【0018】
本開示の例示的な実施形態の技術的な解決策をより明瞭に説明するために、本開示の実施形態のための図面が、以下のように簡単に紹介される。説明される図面は、単に本開示による実施形態の一部についての図面にすぎないことは明白である。他の図面は、当業者によって、何ら創造的な作業なしに本開示の中の図面に基づいて得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の第1の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムの第1の概略構造図である。
図2】本開示の第1の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムの第2の概略構造図である。
図3】本開示の第2の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムの概略回路図である。
図4】本開示の第2の実施形態による電圧分割回路の概略回路図である。
図5】本開示の第3の実施形態による第1の導電状態におけるカスケード型マルチレベルコンバータの等価回路図である。
図6】本開示の第3の実施形態による第2の導電状態におけるカスケード型マルチレベルコンバータの等価回路図である。
図7】本開示の第3の実施形態による電流検出回路の第1の接続方式の概略回路図である。
図8】本開示の第3の実施形態による電流検出回路の第2の接続方式の概略回路図である。
図9】本開示の第4の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムのための自己試験方法の概略流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の目的、技術的な解決策、および利点をより明瞭にするために、技術的な解決策は、本開示の実施形態についての添付の図面と併せて実施形態とともに以下のように完全に説明される。説明される実施形態が、単に本開示の実施形態の一部にすぎないことは明白である。何ら創造的な作業なしに本開示の実施形態に基づいて当業者によって得られるすべての他の実施形態は、本開示の範囲内に入る。
【0021】
第1の実施形態
図1は、本開示の第1の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムの第1の概略構造図である。図1に示されているように、本開示の第1の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムは、カスケード型マルチレベルコンバータ100と、自己試験装置200とを含む。カスケード型マルチレベルコンバータ100は、カスケード接続される少なくとも2つの変換回路130を含む。自己試験装置200は、少なくとも1つの電流検出回路120、電圧取得モジュール210、および計算モジュール220を含む。
【0022】
内蔵型出力フィルタリング回路が、少なくとも2つの変換回路130に対して設置されても、または設置されなくてもよい。内蔵型出力フィルタリング回路が変換回路130のそれぞれに対して設置される場合においては、外部のフィルタリング回路は、設置されなくてよい。そうでない場合は、外部のフィルタリング回路を設置することが好ましい。さらには、変換回路130はそれぞれ、第1の出力端子および第2の出力端子を有し、順番に第1の出力端子および第2の出力端子と電気的に接続される。少なくとも2つの変換回路130のそれぞれは、1対1方式で外部の直流電源300が設けられ、かつこの外部の直流電源300に電気的に接続され、直流電源300は、直流電源300に対応する変換回路130に直流を供給するように構成されている。本開示全体を通じて使用される用語「直流電源」が、DC(直流)電流源および/またはDC(直流)電圧源を示すことに留意されたい。図1を参照すると、直流電源300の正の電極および負の電極が、それぞれ変換回路130の第1の入力端子および第2の入力端子に電気的に接続されている。
【0023】
電流検出回路120の第1の端子が、少なくとも2つの変換回路130のうちの最初の変換回路の第1の出力端子に電気的に接続され、または少なくとも2つの変換回路130のうちの最後の変換回路の第2の出力端子に電気的に接続される。電流検出回路120の第2の端子は、接地される。電流検出回路120は、カスケード型マルチレベルコンバータ100が第1の導電状態にある場合、第1の検出電流を検出し、カスケード型マルチレベルコンバータ100が第2の導電状態にある場合、第2の検出電流を検出するように構成されている。図1に示されている実施形態においては、電流検出回路120は、少なくとも2つの変換回路130のうちの最後の変換回路の第2の出力端子に電気的に接続されている。
【0024】
電圧取得モジュール210は、カスケード型マルチレベルコンバータ100が第1の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路130の第1のバス電圧を取得し、カスケード型マルチレベルコンバータ100が第2の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路130の第2のバス電圧を取得するように構成されている。
【0025】
第1のバス電圧はそれぞれ、各変換回路の第1の入力端子と第2の入力端子との電位差、すなわち、カスケード型マルチレベルコンバータ100が第1の導電状態にある場合の直流電源300の正の電極と負の電極との電位差を示し、第2のバス電圧はそれぞれ、カスケード型マルチレベルコンバータ100が第2の導電状態にある場合のそのような電位差を示す。
【0026】
計算モジュール220は、第1の検出電流、第2の検出電流、少なくとも2つの変換回路130の第1のバス電圧、および少なくとも2つの変換回路130の第2のバス電圧に基づいて、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を計算するように構成されている。
【0027】
本開示の第1の実施形態においては、自己試験装置は、カスケード型マルチレベルコンバータについて設置される。自己試験装置は、電流検出回路、電圧取得モジュール、および計算モジュールを含む。電流検出回路は、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、第1の検出電流を検出し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、第2の検出電流を検出するように構成されている。電圧取得モジュールは、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧を取得し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧を取得するように構成されている。計算モジュールは、上記のパラメータに基づいて、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を計算するように構成されている。本開示を用いれば、カスケード型マルチレベルコンバータの統合絶縁抵抗値が計算および測定できず、カスケード型マルチレベルコンバータの中の信号変換回路の絶縁抵抗値しか計算できないという従来技術における問題が解決され、それによって、統合絶縁抵抗が小さいことに起因する極端に大きい漏洩電流によって生じる安全性リスクが回避される。
【0028】
さらには、図2は、本開示の第1の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムの第2の概略構造図である。図2に示されているように、自己試験装置200は、図1に示された構造を基に、比較モジュール230をさらに含む。比較モジュール230は、計算モジュール220によって計算されたカスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を基準絶縁抵抗値と比較して、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値が基準絶縁抵抗値に達するかどうかを判定するように構成されている。
【0029】
第2の実施形態
図3は、本開示の第2の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムの概略回路図である。図3に示されているように、システムの中の少なくとも2つの変換回路130のそれぞれは、第1のコンデンサ1121、第1のスイッチトランジスタ1122、第2のスイッチトランジスタ1123、第3のスイッチトランジスタ1124、および第4のスイッチトランジスタ1125を含む。
【0030】
第1のスイッチトランジスタ1122の第1の端子は、第2のスイッチトランジスタ1123の第1の端子、第1のコンデンサ1121の第1の端子、および変換回路130に対応する直流電源300の正の電極に電気的に接続される。第1のスイッチトランジスタ1122の第2の端子が、第3のスイッチトランジスタ1124の第1の端子に電気的に接続され、変換回路130の第1の出力端子として働く。第2のスイッチトランジスタ1123の第2の端子が、第4のスイッチトランジスタ1125の第1の端子に電気的に接続され、変換回路130の第2の出力端子として働く。第3のスイッチトランジスタ1124の第2の端子が、第4のスイッチトランジスタ1125の第2の端子、第1のコンデンサ1121の第2の端子、および変換回路130に対応する直流電源300の負の電極に電気的に接続される。
【0031】
上記の変換回路130は、直流電源300によって供給された直流を交流に変換するように構成されている。
【0032】
さらには、自己試験装置200は、制御モジュール240をさらに含む。制御モジュール240は、変換回路130のそれぞれに電気的に接続され、変換回路130のそれぞれの中の第1のスイッチトランジスタ1122、第2のスイッチトランジスタ1123、第3のスイッチトランジスタ1124、および第4のスイッチトランジスタ1125がオンに切り替えられる、またはオフに切り替えられるよう制御するように構成されている。カスケード型マルチレベルコンバータ100は、第1のスイッチトランジスタ1122および第2のスイッチトランジスタ1123がオンに切り替えられ、第3のスイッチトランジスタ1124および第4のスイッチトランジスタ1125がオフに切り替えられる場合、第1の導電状態にある。カスケード型マルチレベルコンバータ100は、第3のスイッチトランジスタ1124および第4のスイッチトランジスタ1125がオンに切り替えられ、第1のスイッチトランジスタ1122および第2のスイッチトランジスタ1123がオフに切り替えられる場合、第2の導電状態にある。
【0033】
本開示の第2の実施形態においては、第1のスイッチトランジスタ1122、第2のスイッチトランジスタ1123、第3のスイッチトランジスタ1124、および第4のスイッチトランジスタ1125は、同じ構造を有し得ることに留意すべきである。たとえば、スイッチトランジスタのそれぞれは、互いと接続された電界効果トランジスタおよびダイオードを含むことができ、ここで、電界効果トランジスタのドレイン電極がダイオードの負の電極に接続され、電界効果トランジスタのソース電極がダイオードの正の電極に接続されている。スイッチトランジスタはまた、他のスイッチ構造であってもよい。
【0034】
さらには、図3に示されているように、光電池(photovoltaic cell)など、直流電源300が、正の電極および負の電極を直接、接地させていない電源である場合には(コンバータ回路の形態によって決まる)、接地と電源の正の電極との間に等価抵抗器R1が存在し、接地と電源の負の電極との間に等価抵抗器R2が存在する。
【0035】
さらには、図3に示されているように、カスケード型マルチレベルコンバータ100は、フィルタリング回路140およびスイッチグループモジュール110をさらに含む。フィルタリング回路140は、変換回路130に対して設置される内蔵型フィルタリング回路がない場合には、特にカスケード型マルチレベルコンバータについて追加されることが好ましい。
【0036】
フィルタリング回路140の第1の端子が、少なくとも2つの変換回路130のうちの最初の変換回路の第1の出力端子に電気的に接続される。フィルタリング回路140の第2の端子が、少なくとも2つの変換回路130のうちの最後の変換回路の第2の出力端子に電気的に接続される。フィルタリング回路140の第3の端子および第4の端子が、スイッチグループモジュール110に電気的に接続される。フィルタリング回路140は、Lフィルタ、LCフィルタ、もしくはLCLフィルタ、または他のフィルタとすることができる。フィルタリング回路140は、カスケード型マルチレベルコンバータ100から出力された交流をフィルタリングして、リップル成分をフィルタ除去するように構成されている。
【0037】
図3に示されている実施形態においては、スイッチグループモジュール110は、第1のスイッチ111、第2のスイッチ112、第3のスイッチ113、および第4のスイッチ114を含む。
【0038】
図3に示されているように、第1のスイッチ111の第2の端子が、第2のスイッチ112の第1の端子に電気的に接続され、第1のスイッチ111の第1の端子が、フィルタリング回路140の第3の端子に電気的に接続される。第3のスイッチ113の第2の端子が、第4のスイッチ114の第1の端子に電気的に接続され、第3のスイッチ113の第1の端子が、フィルタリング回路140の第4の端子に電気的に接続される。
【0039】
スイッチグループモジュール110は、カスケード型マルチレベルコンバータ100が動作状態にあるときしか、スイッチとして機能しないことに留意すべきである。自己試験システムによって行われる自己試験中、スイッチグループモジュール110の中のスイッチのそれぞれは、常に、オフに切り替えられる。好ましくは、本開示の第2の実施形態においては、第1のスイッチ111、第2のスイッチ112、第3のスイッチ113、および第4のスイッチ114のそれぞれは、継電器である。
【0040】
さらには、本開示の第2の実施形態においては、電流検出回路120は、第1の抵抗器121、第5のスイッチ122、および電流取得ユニット123を含む。電流取得ユニット123は、電流を検出するように構成されている。フィルタリング回路140がカスケード型マルチレベルコンバータの中に個別に設置されない場合においては、電流検出回路120の第1の端子が、少なくとも2つの変換回路130のうちの最初の変換回路の第1の出力端子に電気的に接続されても、または少なくとも2つの変換回路130のうちの最後の変換回路の第2の出力端子に電気的に接続されてもよい。あるいは、フィルタリング回路140が、カスケード型マルチレベルコンバータの中に個別に設置される場合においては、電流検出回路120の第1の端子は、フィルタリング回路140の第3の端子または第4の端子に電気的に接続されてよい。電流検出回路120の第2の端子は、接地ワイヤに電気的に接続される。さらには、電流検出回路120の中の第1の抵抗器121、第5のスイッチ122、および電流取得ユニット123の位置は、任意に交換可能である。
【0041】
図3に示されている実施形態においては、電流検出回路120の中の第1の抵抗器121の第1の端子が、フィルタリング回路140の第4の端子に電気的に接続され、第1の抵抗器121の第2の端子が、第5のスイッチ122の第1の端子に電気的に接続される。第5のスイッチ122の第2の端子が、電流取得ユニット123の第1の端子に電気的に接続される。電流取得ユニット123の第2の端子が、接地ワイヤに電気的に接続される。電流取得ユニット123は、カスケード型マルチレベルコンバータ100が第1の導電状態にある場合の電流、およびカスケード型マルチレベルコンバータ100が第2の導電状態にある場合の電流を検出することができる。
【0042】
上記の電流取得ユニット123は、Hall電流変換器、変流器、または電圧分割回路を使用することによって、電流の大きさを検出することができる。図4は、本開示の第2の実施形態による電圧分割回路の概略回路図である。図4を参照すると、電圧分割回路は、直列に接続されているスイッチKd、およびサンプリング抵抗器Rdを含む。サンプリング抵抗器Rdは、直列に接続されている抵抗器Rd1および抵抗器Rd2を含んでよい。回路の中の直列に接続されたスイッチKd、抵抗器Rd1、および抵抗器Rd2の位置は、交換可能である。サンプリングされた電流Idの大きさが、抵抗器Rd1にわたる電圧vdisoを検出することによって計算され得る。この場合には、Rd=Rd1+Rd2、したがって、Id=vdiso/Rd1である。サンプリングされた電圧が適切な範囲にある場合には、抵抗器Rd2は、削除可能であり、その場合、Rd=Rd1であることに留意すべきである。
【0043】
第3の実施形態
上記の実施形態を参照すると、本開示による技術的な解決策においては、制御モジュールは、それぞれの変換回路130の中のそれぞれのスイッチトランジスタがオンに切り替えられる、またはオフに切り替えられるよう制御して、カスケード型マルチレベルコンバータの第1の導電状態および第2の導電状態を確定することができる。自己試験システムによって行われる自己試験中、スイッチグループモジュール110の中のスイッチのそれぞれが、常に、オフに切り替えられることに留意すべきである。
【0044】
図5は、本開示の第3の実施形態による第1の導電状態におけるカスケード型マルチレベルコンバータの等価回路図を示している。図3を一緒に参照すると、第1の導電状態においては、カスケード型マルチレベルコンバータの中の検出電流が、変換回路130のうちの最初の変換回路の第2の出力端子から、変換回路130のうちの第2の変換回路の第1の出力端子に流れ込み、変換回路130中を順次に流れ、最後に、変換回路130のうちの最後の変換回路の第2の出力端子から(フィルタリング回路140が設置されている場合においては、検出電流はまた、フィルタリング回路140中も流れる)、電流検出回路120に流れ込み、次いで、電流検出回路120の中の電流取得ユニット123中を流れる。この時点で、第1の検出電流I1が、電流取得ユニット123によって検出される。
【0045】
図3における変換回路のうちの任意の変換回路が、例として後述される。他の変換回路が、同じ方式の動作であることを当業者は理解することができる。検出電流が変換回路130の第1の出力端子によって受け取られた後、検出電流は、まず、第1のスイッチトランジスタ1122の第2の端子を通って流れる。この場合においては、第1のスイッチトランジスタ1122と第2のスイッチトランジスタ1123との両方が、オンに切り替えられるので、第1のスイッチトランジスタ1122と第2のスイッチトランジスタ1123とをそれぞれ含む両方の経路は、導電性である。したがって、検出電流は、第1のスイッチトランジスタ1122の第1の端子から出力された後、2つの分岐に分割され、一方の分岐は、直流電源300と等価抵抗器R1およびR2とから成る等価回路に流れ込み、他方の分岐は、変換回路130のうちの最後の変換回路の第2の出力端子から(フィルタリング回路140が設置される場合においては、検出電流はまた、フィルタリング回路140中も流れる)、電流検出回路120に流れ込むまでは、第2のスイッチトランジスタ1123を通って変換回路130のうちの次の変換回路に流れ込む。この時点で、第1の検出電流I1は、電流検出回路120の中の電流取得ユニット123によって検出され得る。
【0046】
それぞれの直流電源300の正の電極と負の電極との間の電圧もまた、第1の導電状態において電圧取得モジュールによって測定可能であることに留意すべきであり、それは、図3におけるVdc1からVdcnそれぞれに対応する第1のバス電圧U1と称される。
【0047】
図6は、本開示の第3の実施形態による第2の導電状態におけるカスケード型マルチレベルコンバータの等価回路図を示している。図3を一緒に参照すると、第2の導電状態においては、カスケード型マルチレベルコンバータの中の検出電流が、変換回路130のうちの最初の変換回路の第2の出力端子から、変換回路130のうちの第2の変換回路の第1の出力端子に流れ込み、変換回路130中を順次に流れ、最後に、変換回路130のうちの最後の変換回路の第2の出力端子から(フィルタリング回路140が設置されている場合においては、検出電流はまた、フィルタリング回路140中も流れる)、電流検出回路120に流れ込み、次いで、電流検出回路120の中の電流取得ユニット123中を流れる。この時点で、第2の検出電流I2が、電流取得ユニット123によって検出される。
【0048】
図3における変換回路のうちの任意の変換回路が、例として後述される。他の変換回路が、同じ方式の動作であることを当業者は理解することができる。検出電流が変換回路130の第1の出力端子によって受け取られた後、検出電流は、まず、第4のスイッチトランジスタ1125の第1の端子を通って流れる。この場合においては、第3のスイッチトランジスタ1124と第4のスイッチトランジスタ1125との両方が、オンに切り替えられるので、第3のスイッチトランジスタ1124と第4のスイッチトランジスタ1125とをそれぞれ含む両方の経路は、導電性である。したがって、検出電流は、第4のスイッチトランジスタ1125の第2の端子から出力された後、2つの分岐に分割され、一方の分岐は、直流電源300と等価抵抗器R1およびR2とから成る等価回路に流れ込み、他方の分岐は、変換回路130のうちの最後の変換回路の第2の出力端子から(フィルタリング回路140が設置される場合においては、検出電流はまた、フィルタリング回路140中も流れる)、電流検出回路120に流れ込むまでは、第3のスイッチトランジスタ1124を通って変換回路130のうちの次の変換回路に流れ込む。この時点で、第2の検出電流I2は、電流検出回路120の中の電流取得ユニット123によって検出される。
【0049】
それぞれの直流電源300の正の電極と負の電極との間の電圧もまた、第2の導電状態において電圧取得モジュールによって測定可能であることに留意すべきであり、それは、図3におけるVdc1からVdcnそれぞれに対応する第2のバス電圧U2と称される。
【0050】
第1のバス電圧U1、第2のバス電圧U2、第1の検出電流I1、および第2の検出電流I2は、検出後に計算モジュール220に入力される。計算モジュール220では、すべての等価抵抗器R1が同じ抵抗値を有し、すべての等価抵抗器R2が同じ抵抗値を有すると仮定することによって、第1の導電状態におけるカスケード型マルチレベルコンバータの等価回路についての計算方程式、および第2の導電状態におけるカスケード型マルチレベルコンバータの等価回路についての計算方程式は、次のように表される:
【0051】
【数1】
【0052】
ただし、nは、変換回路の数を表し、Rは、第1の抵抗器121の抵抗値を表す。
【0053】
等価抵抗器R1およびR2は、次のように簡略化された形で得ることができる:
【0054】
【数2】
【0055】
ただし、RxおよびRyは、計算のための中間変数であり、以下の方程式に従って得ることができる:
【0056】
【数3】
【0057】
次いで、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値R'は、次のように得ることができる:
【0058】
【数4】
【0059】
絶縁抵抗値R'を計算した後、計算モジュール220は、絶縁抵抗値R'を比較モジュール230に送る。比較モジュール230は、絶縁抵抗値R'を基準絶縁抵抗値R0と比較する。
【0060】
本開示の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムは、グリッド接続された単相システム、または3相システムに適用可能である。カスケード型マルチレベルコンバータが直接、接地されない場合においては、電力検出回路は、ループ回路を形成するためにグリッドシステムのゼロワイヤを必要とする。カスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムが、グリッド接続された単相システムに適用される例が、後述される。
【0061】
図7は、本開示の第3の実施形態による電流検出回路の第1の接続方式の概略回路図であり、図8は、本開示の第3の実施形態による電流検出回路の第2の接続方式の概略回路図である。カスケード型マルチレベルコンバータの出力端子、すなわち、スイッチグループモジュールの2つの出力端子は、ゼロワイヤNおよびファイヤーワイヤLそれぞれに接続される。通常、ゼロワイヤNは、近くに、または遠くに接地され、一方、ファイヤーワイヤLは、接地されない。
【0062】
図7に示されているように、1つの電流検出回路120しか含まれていない場合においては、電流検出回路120は、第1のスイッチ111の第2の端子に接続されても、または図7に示されているように、第3のスイッチ113の第2の端子に接続されてもよい。電流検出の際には、電流検出回路120がゼロワイヤNに接続されているのか、それともファイヤーワイヤLに接続されているのかを判定することが要求される。電流検出回路120がファイヤーワイヤLに接続されていると判定された場合、電力周波数の成分を検出電流からフィルタ除去することが必要である。電流検出回路120がゼロワイヤNに接続されていると判定された場合、絶縁抵抗値は、そのようなフィルタリングをせずに、検出電流に基づいて、直接、計算され得る。
【0063】
さらには、図8は、別の接続方式の電流検出回路を示している。この方式においては、2つの電流検出回路120が設置され、第1のスイッチ111の第1の端子および第3のスイッチ113の第1の端子それぞれに接続される。したがって、2つの電流検出回路120のうちの一方が、ゼロワイヤNに接続され、2つの電流検出回路120のうちの他方の電流検出回路が、ファイヤーワイヤLに接続されることは確実である。電流検出の際には、電力周波数の成分が検出電流の中に存在するか否かのみが判定される。電力周波数の成分が、2つの電流検出回路120のうちの一方によって検出された検出電流の中に存在する場合、2つの電流検出回路120のうちの他方の電流検出回路が開始され、絶縁抵抗値は、2つの電流検出回路120のうちの他方の電流検出回路によって検出された検出電流に基づいて計算される。
【0064】
上記の技術的な解決策のそれぞれは、接地ワイヤ接続の問題点による電流検出回路によって検出された電流検出値が無効であるという問題を解決することができる、またはカスケード型マルチレベルコンバータが、直接、接地されていない場合、絶縁抵抗値を検出することができる可能性がある。さらには、3相システムの場合、各相は、電流検出回路に接続可能であり、または電流検出回路を共有し、時分割多重化方式で検出され得る。カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値は、検出電流が検出された後、上記の技術的な解決策により、計算され得る。
【0065】
第4の実施形態
図9は、本開示の第4の実施形態によるカスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムのための自己試験方法の概略流れ図である。自己試験方法は、上記の第1、第2、または第3の実施形態による自己試験システムに基づいて、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を取得するために採用される。図9に示されているように、カスケード型マルチレベルコンバータ自己試験システムのための自己試験方法は、ステップS101からステップS103を含む。
【0066】
ステップS101においては、電流検出回路は、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、第1の検出電流I1を検出し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、第2の検出電流I2を検出する。
【0067】
ステップS102においては、電圧取得モジュールは、カスケード型マルチレベルコンバータが第1の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧U1を取得し、カスケード型マルチレベルコンバータが第2の導電状態にある場合、少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧U2を取得する。
【0068】
ステップS103においては、計算モジュールは、第1の検出電流I1、第2の検出電流I2、少なくとも2つの変換回路の第1のバス電圧U1、および少なくとも2つの変換回路の第2のバス電圧U2に基づいて、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値R'を計算する。
【0069】
さらには、自己試験方法は、ステップS104をさらに含むことができる。
【0070】
ステップS104においては、比較モジュールが、計算モジュールによって計算されたカスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値を基準絶縁抵抗値と比較して、カスケード型マルチレベルコンバータの絶縁抵抗値が基準絶縁抵抗値に達するかどうかを判定する。
【0071】
上記は、単に、本開示の好ましい実施形態および技術的な原理にすぎない。本開示は、本明細書に説明された特定の実施形態に限定されない。当業者によって作成され得る様々な変更形態、調整形態、および置換形態は、本開示の保護範囲内に入る。そのため、本開示は、上記実施形態を通して詳細に説明されているが、本開示は、上記の実施形態に限定されない。他の等価な実施形態を、本開示の概念を逸脱することなく、本開示の中に含めることができ、本開示の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
【符号の説明】
【0072】
100 カスケード型マルチレベルコンバータ
110 スイッチグループモジュール
111 第1のスイッチ
112 第2のスイッチ
113 第3のスイッチ
114 第4のスイッチ
120 電流検出回路
121 第1の抵抗器
122 第5のスイッチ
123 電流取得ユニット
130 変換回路
140 フィルタリング回路
200 自己試験装置
210 電圧取得モジュール
220 計算モジュール
230 比較モジュール
240 制御モジュール
300 直流電源
1121 第1のコンデンサ
1122 第1のスイッチトランジスタ
1123 第2のスイッチトランジスタ
1124 第3のスイッチトランジスタ
1125 第4のスイッチトランジスタ
Id 電流
I1 第1の検出電流
I2 第2の検出電流
Kd スイッチ
N ゼロワイヤ
L ファイヤーワイヤ
R1 等価抵抗器
R2 等価抵抗器
Rd サンプリング抵抗器
Rd1 抵抗器
Rd2 抵抗器
R' 絶縁抵抗値
R0 基準絶縁抵抗値
U1 第1のバス電圧
U2 第2のバス電圧
vdiso 電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9