(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
周知のように、気管切開チューブ(「カニューレ」とも呼ばれる)は、呼吸機能の不十分な患者などに用いられ、患者に気管切開術を施し、その切開部へ気管切開チューブの先端を挿入することにより患者に装着されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような気管切開チューブを用いる場合、患者の症状が重い場合には、気管切開チューブの外側開口部に人工呼吸器を接続し、外部からの空気を、気管切開チューブを通じて肺に送り込むので、患者は喉や鼻から空気を取り込むことなく、呼吸することができるようになっている。
【0004】
一方、患者の症状が軽減されて、自発呼吸ができる場合などには、気管切開チューブから人工呼吸器をはずして、気管切開チューブの外側開口部に、逆止弁の役割を果たすスピーチバルブを取り付ける場合がある。
【0005】
スピーチバルブは、吸気の場合には、外部の空気が吸気としてスピーチバルブを通して肺に取り入れられ、呼気の場合には、スピーチバルブを空気が通らずに、気管の声帯側を通して口または鼻から呼気を吐き出すことが可能となり、その結果、患者は音声を発することができるようになっている。
【0006】
このようなスピーチバルブが装着された患者において、気管切開チューブを介して補助的に酸素を供給する必要が生じる場合があり、スピーチバルブ用酸素供給アダプタにより酸素を供給する場合、酸素供給管から供給される酸素により、吸気を適度な酸素濃度にする必要がある。
【0007】
そこで、スピーチバルブの外側開口部に装着して、吸気を適度な酸素濃度とするために補助的に酸素を供給するスピーチバルブ用酸素供給アダプタが提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、例えば、特許文献2に記載されたスピーチバルブ用酸素供給アダプタによれば、供給した酸素が吸気口以外に逃げやすいので、換気条件によっては、吸気を適度な酸素濃度とすることは容易ではない。
一方、非特許文献1に記載されたスピーチバルブによると、吸気を適度な酸素濃度とすることは可能であるが、換気条件によっては、患者が吸気する際の吸気抵抗が増大して、患者が快適に呼吸することが容易ではない。
【0011】
そこで、スピーチバルブの外側開口部に供給した酸素により、吸気する空気の酸素濃度を適切に確保することができ、しかも患者が吸気する際の吸気抵抗の増大を抑制して、快適に吸気することが可能なスピーチバルブ用酸素供給アダプタに対する強い要請がある。
【0012】
本発明は、かかる事情を考慮してなされたものであり、スピーチバルブの外側開口部に供給した酸素により、吸気する空気の酸素濃度を適切に確保することができ、しかも患者が吸気する際の吸気抵抗の増大を抑制して、快適に吸気することが可能なスピーチバルブ用酸素供給アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、スピーチバルブに取付けられて、前記スピーチバルブの吸気口に酸素を供給するスピーチバルブ用酸素供給アダプタであって、前記吸気口に酸素を供給する酸素供給管と、前記酸素供給管から吹出された酸素が、前記吸気口から外周に向かって流動するのを抑制する第1の壁部と、を備え、前記第1の壁部は、前記吸気口の周囲を囲繞するとともに、前記吸気口の前方側に向かって前記酸素供給管の吹出口と同じ高さ又は前記吹出口より高い位置まで延在し、前方側において前記吸気口の内周側に向かって伸び前記吸気口に対する開口率が45%以上とされた開口部を有する第2の壁部を有し、前記開口部
は複数の仕切壁部により複数の通気口
に分割され、前記複数の仕切壁部は前記開口部の中央で隣接する仕切壁部と曲線部を介して接続されるとともに前記開口部の外周側で前記第2の壁部と曲線部を介して接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るスピーチバルブ用酸素供給アダプタによれば、スピーチバルブの吸気口の周囲を囲繞するとともに、吸気口の前方側に向かって酸素供給管の吹出口と同じ高さ又は吹出口より高い位置まで延在する第1の壁部を備えているので、酸素供給管から吹出された酸素が、吸気口から外周に向かって流動するのが抑制される。その結果、吸気口から吸気される空気の酸素濃度が適切に確保される。
また、第1の壁部は、前方側において、吸気口の内周側に向かって伸び、吸気口に対する開口率が45%以上とされた開口部を有する第2の壁部を備えているので、吸気抵抗を低く抑えることができ、その結果、患者が適切に吸気することができる。
また、開口部が複数の仕切壁部により複数の通気口に分割され、複数の仕切壁部が開口部の中央で隣接する仕切壁部と曲線部を介して接続されるとともに開口部の外周側で第2の壁部と曲線部を介して接続されているので、風切り音が発生するのを抑制することができる。
【0015】
この明細書において、吸気口の前方とは、スピーチバルブを患者に装着した場合に、患者から離間する側をいう。また、酸素供給管の吹出口より高い位置まで延在するとは、第1の壁部が、酸素供給管の吹出口よりも吸気口から離間する位置まで延在することをいう。
また、吸気口の周囲を囲繞するとは、吸気口の周囲を全周にわたって囲むことを意味する。
【0018】
この明細書において、例えば、開口部が吸気口に対して開口率45%以上であるとは、開口部が、スピーチバルブの吸気口の面積(吸気の流路面積に加えて、例えば、逆止弁係止部やそれを保持する支持柱を含む面積)に対して45%以上の開口面積を有することを意味する。
【0019】
ここで、仕切壁部が、吸気口を横切る支持柱と互いに重なり合わない位置に配置されるとは、例えば、吸気口中央部において、仕切壁部同士や支持柱同士が交差する部分を含まないこととしてもよい。また、例えば、仕切壁部及び支持柱が、それぞれ中央部から放射状に伸びて、上下間で平行に配置されない場合には、中央部から伸びる方向が異なることを以て、互いに重なりあわないとしてもよい。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスピーチバルブ用酸素供給アダプタであって、前記吸気口に対する開口率が55%以上とされていることを特徴とする。
【0021】
この発明に係るスピーチバルブ用酸素供給アダプタによれば、吸気口に対する開口率が55%以上とされているので、吸気抵抗をさらに低く抑えることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のスピーチバルブ用酸素供給アダプタであって、前記通気口は、縁部の形状が、複数の曲線部と、前記曲線部間を接続する直線又は曲線により形成されていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係るスピーチバルブ用酸素供給アダプタによれば、通気口が、縁部の形状を複数の曲線部と曲線部間を接続する直線又は曲線により形成されているので、吸気における風切り音を低減することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜
請求項3のいずれか1項に記載のスピーチバルブ用酸素供給アダプタで
あって、C型アームにより構成され前記スピーチバルブの外周を把持可能とされた第3の壁部を備えていることを特徴とする。
【0025】
この発明に係るスピーチバルブ用酸素供給アダプタによれば、
C型アームにより構成されスピーチバルブの外周を把持可能とされた第3の壁部を備えているので、スピーチバルブの筒の外周にどの向きからでも装着することが可能とされ、スピーチバルブに容易かつ効率的に取付けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るスピーチバルブ用酸素供給アダプタによれば、酸素供給管から吹出された酸素が、吸気口から外周に向かって流動するのが抑制され、吸気口から吸気される空気の酸素濃度が適切に確保される。その結果、患者が、快適に吸気することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、
図1から
図5を参照して、本発明に係るスピーチバルブ用酸素供給アダプタ(以下、酸素供給アダプタという)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る酸素供給アダプタ30を適用した気管切開チューブセット1の概略構成を示す図であり、
図1(a)は正面図を、
図1(b)は側面図を示しており、符号1は気管切開チューブセットを、符号10は気管切開チューブを、符号20はスピーチバルブを、符号30は酸素供給アダプタを示している。
【0029】
また、
図2は、酸素供給アダプタ30の概略構成を説明する図であり、(a)はスピーチバルブ20に酸素供給アダプタ30を取付けた状態を見た斜視図を、(b)は酸素供給アダプタ30の平面図を、(c)は酸素供給アダプタ30を側面から視た斜視図を示している。
【0030】
気管切開チューブセット1は、
図1に示すように、気管切開チューブ10と、スピーチバルブ20と、酸素供給アダプタ30とを備えている。
【0031】
気管切開チューブ10は、例えば、気管に挿入される湾曲管12の一端外周部に連結壁部13が設けられたカニューレ14と、カニューレ14に揺動可能に支持された左右が折り畳み可能とされた固定板15と、カフ16と、チューブ17とを備えている。また、この実施形態では、湾曲管12には、通気用の窓18が形成されている。
【0032】
カフ16は、例えば、湾曲管12の気管挿入側端部に設けられており、気管内でバルーン状に膨張することにより、肺に取り込まれる空気が、必ず湾曲管12を通じるようにするものである。
【0033】
チューブ17は、例えば、空気等のガスを送り込んでカフ16内を膨張させ、またはカフ16内の空気等を排出して収縮させるカフ操作用チューブ及び気管内に溜まった分泌液等を外部に排出する排出用チューブなどを含んで構成されている。
【0034】
スピーチバルブ20は、筒体21と、逆止弁25とを備え、気管切開チューブ10の連結壁部13に、着脱可能に連結可能とされている。
筒体21は、筒状に形成され気管切開チューブ10側に位置される筒体小径部21aと、筒体小径部21aに一体に接続して形成された筒体大径部21bと、連結係合部22と、逆止弁係止部23とを有している。
【0035】
筒体大径部21bは、筒体小径部21aと同心の筒状に形成されており、外側前方には吸気口24が開口されている。
また、吸気口24の中央には、逆止弁25の中央部を係止する逆止弁係止部23が形成されており、逆止弁係止部23は、筒体大径部21bの内周から吸気口24の中央に向かって伸びる6つの支持柱23aにより支持されている。
【0036】
連結係合部22は、筒体小径部21aの外周に周方向に突出して形成されており、連結壁部13の内周に周方向に形成された被係合部と係合することにより、気管切開チューブ10にスピーチバルブ20を連結するようになっている。
【0037】
逆止弁25は、例えば、円形シート状に形成されたシリコーンゴム等の弾性材料により形成されている。吸気の場合には、吸気口24が開かれて吸気口24を吸気が通過し、呼気の場合には、吸気口24が閉じられ呼気が遮断される。
【0038】
酸素供給アダプタ30は、
図2、
図3に示すように、例えば、吸気口24に酸素を供給する酸素供給管31と、吸気口24の外側前方に配置され吸気口24の縁部を囲むように形成された第1の壁部32と、第1の壁部32をスピーチバルブ20に連結するためのC字型アーム(第3の壁部)38とを備え、スピーチバルブ20の吸気口24の前側に装着され、吸気口24に酸素を供給可能とされている。
【0039】
酸素供給管31は、内部に酸素供給路31aが形成されており、第1の壁部32の外周に連結されるとともに第1の壁部32の内周面には酸素供給路31aが開口し、酸素供給源(不図示)から供給される酸素を第1の壁部32の内周側に吐出することで、スピーチバルブ20の吸気口24に酸素を供給するようになっている。
【0040】
第1の壁部32は、例えば、外周側においてスピーチバルブ20の吸気口24の縁部に接続される外縁部を有し、この外縁部から膨出して吸気口24から前方に向かって立ち上がり吸気口24の内周側に延在する膨出壁部(第2の壁部)32aを有し、膨出壁部32aの前側縁部には開口部34が形成されている。
また、第1の壁部32は、吸気口24の前方側に向かって酸素供給管31の吹出口31bと同じ高さ又は吹出口より高い位置まで延在する。ここで、酸素供給管31の吹出口31bより高い位置まで延在するとは、第1の壁部32が、酸素供給管31の吹出口31bよりも吸気口24から離間する位置まで延在することをいう。
【0041】
開口部34は、この実施形態では、例えば、膨出壁部32aの上部内周から内方に向かって伸びる仕切壁部33により分割される3つの通気口35により構成されており、3つの通気口35は、それぞれ第1の壁部32の中心に対称に配置されている。
【0042】
また、開口部34は、スピーチバルブの吸気口24の面積に対して、開口面積率45%〜100%の開口面積を有している。ここで、吸気口24の面積とは、
図3(b)にクロスハッチングで示した領域をいい、吸気の流路面積に加えて、例えば、逆止弁係止部23やそれを保持する支持柱23aを含めた面積をいう。
【0043】
また、例えば、
図3(b)に示すように、支持柱23aと仕切壁部33とは、X−X矢視した場合に、互いに重ならない位置に形成されるようになっている。より具体的には、支持柱23aの両端と仕切壁部33の両端が、上下(吸気の流通)方向で重なって、支持柱23aの両端と仕切壁部33の両端が重なってその間の部分が上下方向において平行になった場合、笛のように風切り音を発生する傾向があるので、支持柱23aと仕切壁部33は少なくとも一方の端において上下方向で重ならないことが好適である。
ここで、
図3(b)は、
図3(a)に示すX−X矢視を示す図である。かかる構成により、吸気口24を通じて吸気する際の風切り音が、抑制されるようになっている。
【0044】
通気口35は、その縁部が、例えば、それぞれ略放物線状に形成された曲線部35aと、曲線部35bと、曲線部35cとを有し、これら曲線部35aと、曲線部35bと、曲線部35cの間は、それぞれ緩やかな曲線により形成されている。
なお、曲線部35aと、曲線部35bと、曲線部35cの間は、直線又は、直線と曲線の組み合わせにより接続して縁部を形成してもよいし、その他の形状によって縁部を構成してもよい。
【0045】
C型アーム38は、支持壁部39を介して第2の壁部32の外周に連結され、弾力性を有し互いに接近離間可能なふたつのアームにより構成されており、スピーチバルブ20の筒体小径部21aの外周を把持可能とされている。
【0046】
次に、
図3〜
図5を参照して、スピーチバルブ20に酸素供給アダプタ30を取付けた状態の作用について説明する。
図3は、スピーチバルブ20に酸素供給アダプタ30を取付けた状態の作用を説明する縦断面図である。
【0047】
酸素供給アダプタ30が取付けられたスピーチバルブ20は、
図3に示すように、酸素供給管31の酸素供給路31aを通じて、膨出壁部32aの内方に向かって酸素(矢印O
2)が供給される。
【0048】
吸気されていない状態のスピーチバルブ20では、逆止弁25が吸気口24を閉塞されているので、酸素供給路31aから供給された酸素は、第1の壁部32の内方の空間(開口部34より吸気口24側に形成される空間)を満たす。
また、吸気口24を閉塞された状態では、第1の壁部32の内方の空間に満たされた酸素は、いずれ開口部34を通じて第1の壁部32の外側に流出する。
【0049】
図4は、酸素供給アダプタ30を適用した気管切開チューブセット1を患者Kに取付けて使用状態の概要を説明する図であり、
図5は、使用状態の酸素供給アダプタ30を取付けたスピーチバルブ20の作用を説明する縦断面図である。
【0050】
気管切開チューブセット1は、
図4に示すように、患者の喉部に形成された孔を介して、湾曲管12が気管K1に挿入される。
そして、患者の吸気は、気管切開チューブ10を介して肺に送り込まれ、呼気は開口端から湾曲管12に入って窓18を経由して声帯K2側に抜けるようになっている。
【0051】
また、患者Kが吸気する場合は、
図5(a)に示すように、吸気による空気の流れによって、逆止弁25がスピーチバルブ20の内方側に撓んで吸気口24が開放される。その結果、酸素供給路31aから供給されて第1の壁部32内にある酸素と、外部からの空気が、矢印A方向に流れて患者Kの気管K1内に取り込まれる。
【0052】
また、患者Kが呼気する場合は、
図5(b)に示すように、呼気による空気は、逆止弁25を、吸気口24に押し付ける側に流れて、吸気口24を閉塞する。その結果、酸素供給路31aから供給される酸素は、第1の壁部32内に滞留し、第1の壁部32内が満たされると開口部34から外部に放出される。
逆止弁25が吸気口24を閉塞することで、呼気は、
図4に示すように、呼気は湾曲管12及び窓18を介して声帯に流入することとなる。
【0053】
酸素供給アダプタ30によれば、第1の壁部32に形成される開口部43の開口面積が、スピーチバルブ20の吸気口24の開口部に対して、開口面積率45%の開口面積を有しているので、酸素供給管31から供給された酸素が外部に流出するのを抑制して吸気に適切な濃度酸素を確保するとともに、吸気する際の吸気抵抗の増大が抑制されるので、効率的に吸気することができる。
その結果、患者Kは、酸素供給アダプタ30を適用したスピーチバルブ20を使用していても快適に吸気することができる。
【0054】
また、酸素供給アダプタ30によれば、開口部34が3つの通気口35により構成されているので、通気口35と仕切壁部33を安定した配置として、安定した吸気を行うことができる。
【0055】
また、酸素供給アダプタ30によれば、通気口35の縁部の形状が、3つの曲線部35aと、曲線部35bと、曲線部35cを有し、曲線部35a、曲線部35b、曲線部35c間を接続する縁部が、緩やかな曲線により形成されているので、吸気における風切り音を低減することができる。
【0056】
また、酸素供給アダプタ30によれば、C型アーム38を備えているので、スピーチバルブ20の外周を把持することで、スピーチバルブ20に容易かつ効率的に取付けることができる。
【0057】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることができる。
例えば、上記実施の形態においては、第1の壁部32に膨出壁部32aが形成されている場合について説明したが、第1の壁部32に膨出壁部32aが形成されない構成とすることもできる。
【0058】
また、上記実施の形態においては、第1の壁部32に、スピーチバルブ20の吸気口24の外側に対して、吸気口24の45%の開口面積率を有する開口部が形成されている場合について説明したが、吸気口24に対する開口部34の開口面積率は、例えば、開口面積率45%以上100%以下の範囲で任意に設定してもよい。
【0059】
また、上記実施の形態においては、三つの仕切壁部33によって、開口部が三つの通気口34に分割され、仕切壁部33が吸気口24を横切る六つ支持柱23aと重ならない位置に配置される場合について説明したが、一部又は全部が互いに重なり合う構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、酸素供給アダプタ30の開口部34が、3つ通気口35により構成されている場合について説明したが、例えば、1つ又は二つあるいは3つより多くの通気孔により開口部34を構成してもよい。
【0060】
また、上記実施の形態においては、通気口35が、複数の曲線部35a、35b、35cを有する場合について説明したが、通気口35の曲線部35a、35b、35cと対応する縁部を曲線部とするかどうかは任意に設定することができる。
【0061】
また、上記実施の形態においては、曲線部35a、35b、35cの間を接続する縁部が、それぞれ緩やかな曲線で形成される場合について説明したが、曲線部35a、35b、35c(又は角部からなる折返縁部)の間を、直線の縁部とするか、直線と曲線により形成される縁部とするかは任意に設定することができる。
【0062】
また、上記実施の形態においては、酸素供給アダプタ30が、スピーチバルブ20の外周を把持するC型アーム38を備える場合について説明したが、スピーチバルブ20に対する取付けをC型アーム38とするか他の手段とするか等は任意に設定することができる。
【0063】
また、上記実施の形態においては、気管切開チューブとして、
図1に示すような、単管式の気管切開チューブ10に適用する場合について説明したが、気管切開チューブ10の湾曲管12をアウターカニューレとし、アウターカニューレ内に細い湾曲管からなるインナーカニューレを挿通、連結した二重管方式としたものに適用してもよい。
【0064】
また、上記実施の形態においては、気管切開チューブ10の湾曲管12に通気用の窓18が形成されている場合について説明したが、窓18が形成されていない窓無しのものに適用してもよいし、カフ16を設けるかどうかについても任意に設定することができる。
【0065】
次に、
図6〜
図9を参照して、吸気の酸素濃度及び吸気抵抗を例に、本発明の効果を説明する。
図6は、本発明に係る酸素供給アダプタとスピーチバルブとを組合せた構成体を説明する図であり、(a)は本発明の実施例に係る構成体を、(b)は比較例1に係る構成体を、(c)は比較例2に係る構成体を示す図である。
【0066】
本発明の実施例に係る酸素供給アダプタ30は、
図6(a)に示すように、吸気口24の周囲を、酸素供給管の吹出口31bと同じ高さの第1の壁部32(又は第1の壁部32と膨出壁部32a)により囲んだ構成とされている。
比較例1に係る酸素供給アダプタ130は、スピーチバルブ20の吸気口24の前面を被覆壁部131により全体にわたって覆うとともに、被覆壁部131と吸気口24の周縁部の間に、約1mmの吸気用の間隙34aが形成された構成とされている。
比較例2に係る酸素供給アダプタ130Cは、スピーチバルブ20の吸気口24の前面が、全体(開口率100%)にわたって開口され、酸素供給管130Cの吹出口31bの近傍に、吸気口24の縁部を約180°にわたって壁部132が形成されるとともに、吹出口31bの正面側は約180°にわたって開放された構成とされている。
【0067】
図7は、スピーチバルブ20と酸素供給アダプタ30、130、130Cとを組合せた構成体に関して、吸気の酸素濃度を測定する酸素濃度測定装置50の概略構成を示す図である。
酸素濃度測定装置50は、人工呼吸器51と、酸素濃度センサ52と、流量計53と、マスフローコントローラ54と、バルブ55と、酸素濃度測定器57とを備えている。
【0068】
人工呼吸器51、酸素濃度センサ52、流量計53、マスフローコントローラ54は、直列に配置され、流量計53とマスフローコントローラ54の間に、実施例、比較例1、2に係る構成体からなる試験片TPが配置され、流量計53には試験片TPの気管切開チューブ側が接続され、マスフローコントローラ54には試験片TPの酸素供給管が接続されている。また、バルブ55は、試験片TPと、並列に配置されていて、呼気が開放されるように構成されている。
【0069】
そして、マスフローコントローラ54により試験片TPに酸素を供給しつつ、流量計53で確認しながら、人工呼吸器51によって試験片TPに空気を流通(呼吸に相当)させ、吸気する際の酸素濃度を酸素濃度センサ52が検出して、酸素濃度測定器57により測定した。
【0070】
また、
図8は、スピーチバルブ20と酸素供給アダプタ30、130、130Cとを組合せた構成体に関して、吸気における吸気抵抗を測定する吸気抵抗測定装置60の概略構成を示す図である。
吸気抵抗測定装置60は、吸引ポンプ61と、流量計62と、圧力センサ63と、流量調整バルブ65とを備えている。
【0071】
吸引ポンプ61、流量計62は直列に配置され、流量計62には例1、2に係る構成体からなる試験片TPの気管切開チューブ側が接続され、流量計62に流入される空気の圧力を圧力センサ63によって測定して、吸気抵抗を算出した。
【0072】
図9は、
図7、
図8に示した装置により測定した実施例及び比較例1、比較例2に係る構成体の開口面積率と吸気の酸素濃度及び吸気抵抗の関係を示す図である。なお、
図9において、横軸は開口面積率(%)を、縦軸は左側が吸気酸素濃度(%)を、右側が吸気抵抗に係る圧力損失(Pa)を示している。
また、
図9において、(◇)、(〇)は、実施例に係る酸素濃度及び吸気抵抗を、(◆)、(●)は、比較例に係る酸素濃度及び吸気抵抗を示しており、比較例1を、開口率100%は比較例2を示している。
【0073】
吸気の酸素濃度は、
図9に示すように、比較例1では33%、比較例2では30%であるのに対して、本発明に係る実施例では、開口面積率100%において37%であり、比較例1の30%に対して12%(37%/33%)向上し、比較例2の30%に対して23%(37%/30%)以上増加しており、大きな効果が得られることが確認できた。
【0074】
吸気抵抗は、
図9に示すように、比較例1では46(Pa)であるのに対して、本発明に係る実施例では、開口面積率100%において2(Pa)、開口面積率45%でも46(Pa)であり、比較例1と同レベルであることが確認できた。
【0075】
また、
図9によれば、膨出壁部(第2の壁部)32aが形成されていない場合(開口面積率100%)では、酸素濃度、吸気抵抗ともに非常に良好であることが確認できた。
また、膨出壁部32aを形成する場合は、開口面積率45%以上とすることで、比較例1より優れた効果が得られる。また、例えば、開口面積率55%とすることにより、吸気の酸素濃度については41%となり、比較例1の33%と比較して24%向上し、吸気抵抗については23(Pa)となり、比較例1の46(Pa)と比較して50%低減されることが可能となり、極めて好適であることが確認できた。
【0076】
本発明に係るスピーチバルブ用酸素供給アダプタによれば、吸気に適切な酸素濃度を確保しつつ吸気抵抗の増大を抑制して、快適に吸気することができるので、産業上利用可能である。