(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
孔径が10〜1000nmのナノメートルオーダーの気孔、1μm超1000μm以下のマイクロメートルオーダーの気孔及び1mm超のミリメートルオーダーの気孔を有する多孔質セラミックスを構成素材として含有する粒状物を含み、
前記粒状物の粒子径が1mm超、1cm以下であり、
前記粒状物の保水率が20%以上であり、
前記粒状物はpF1.5の遠心処理をした際の三相分布における気相が30%以上であり、
前記粒状物はpF値2.7以下の範囲における水分量が前記粒状物の全体体積に対して5体積%以上である土壌改良材。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る土壌改良材について説明をおこなう。
(多孔質セラミックスの粒状物)
【0013】
本実施形態の土壌改良材は、多孔質セラミックスを構成素材として含有する粒状物(以下、粒状物ともいう)を含むものである。粒状物はpF値2.7以下の範囲における水分量が粒状物の全体体積に対して5体積%以上である。
【0014】
ここで、pF値2.7以下の範囲における水分量に関して説明する。土壌または土壌改良材等の土壌の成分(以下、土壌等)については、土壌等の吸水力にあたるpF値が圧力で定義される。土壌等のpF値は成分の充填等の物理的状態や水の供給状態によって変動するが、植物が有効に利用できる(植物が吸水可能な)水は、土壌等に好適に吸水が行われている状態、すなわち、土壌等のpF値が後述するような一定範囲にある際に土壌等に吸水されている水分である。ここで、土壌等に対し一定の圧力等の負荷をかけ、水分量の変化を直接的または間接的に測定すると、そのpF値以下の圧力において土壌等に吸水されていた水分の量を測定することができるので、土壌等について一定範囲のpF値において吸水されている水分量(一定範囲のpF値における有効水分率)を測定することができる。
【0015】
なお、具体的には、粒状物の各pF値の範囲における水分量(%、体積水分率、体積含水率)は、遠心法による測定、または、各種pF値測定法(テンシオメータ法等)と各種水分量の測定法(TDR法等)との併用等を用いることができる。本実施形態では、遠心分離により粒状物に各pFに相当する圧力を加え、圧力を加える前後の粒状物の質量を求めることで、圧力により粒状物から排出された水の量を求める遠心法が好ましい。さらに具体的には、「土壌標準分析・測定法」(博友社)に記載の保水性 C 遠心法 100ml円筒用水平ローターに準じて各pF値の水の量の測定をおこない求めることができる。なお、本実施形態におけるpF値2.7以下の範囲における水分量(又は、pF値2.7以下の水分量)は、以下の式にて求めることができる。
【0016】
pF値2.7以下の範囲における水分量(体積%)=(遠心処理前の試料の質量(g)−pF2.7の遠心処理をおこなった後の試料の質量(g))/100(ml)×100
【0017】
ここで、粒状物のpF値2.7以下の範囲における水分量が充分であれば、すなわち粒状物の全体体積に対して5体積%以上であれば、多孔質セラミックスの粒状物内に、植物が吸収可能な水分を有するので植物の生育に有利である。また、粒状物が植物の吸収可能な水分を多量に保持していることより水撒きの頻度も減らすことができ手入れも容易である。ここで全体体積とは、例えば粒状物が占めている空間全体の体積、すなわち、粒状物の固体成分及び粒状物相互の空隙や粒状物が有する気孔等の空間の体積、そこに含まれる液体及び気体の体積の合計を指す。なお、粒状物の「pF値2.7以下の範囲における水分量が粒状物の全体体積に対して5体積%以上」は、単に、粒状物の「pF値2.7以下の水分量が5%以上」ともいう。
【0018】
粒状物のpF値2.7以下の範囲における水分量が、粒状物の全体体積に対して5体積%未満では、粒状物に大量の水分が含まれていても、植物が吸収できる水が少ないため、植物の育成に適さないか若しくは頻繁な水撒きが必要となる。
粒状物のpF値2.7以下の範囲における水分量は、好ましくは粒状物の全体体積に対して8体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上である。上限は80体積%程度である。
【0019】
また、より好ましくは粒状物のpF値1.5超2.7以下の範囲における水分量が1.0体積%以上がよい。粒状物のpF値1.5超2.7以下の水分量を測定した際に、粒状物の全体体積に対して1体積%以上であれば、運搬時における植栽物の軽量化のため、また、植栽物からの水漏れを防ぐため培土より水分を脱水した場合においても、粒状物中には植物が吸収できる水分が残留し、植物が枯れることを抑制できる。より好ましくはこの範囲での水分量が2.0体積%以上、さらに好ましくは3.0体積%以上がよい。水分量の上限は特に限定されるものではないが、30体積%程度である。
なお、粒状物のpF値1.5超2.7以下の範囲における水分量は、以下の式にてもとめることができる。
【0020】
pF値1.5超2.7以下の範囲における水分量(体積%)=(pF1.5の遠心処理後の粒状物の試料の質量(g)−pF2.7の遠心処理後の試料の質量(g))/100(ml)×100
【0021】
本実施形態の土壌改良材の粒状物は、多孔質セラミックスを構成素材として含有する。好ましくは、実質的に多孔質セラミックスからなる粒状物である。ここで多孔質セラミックスとは、セラミックスすなわち金属やケイ素の酸化物の焼結体で、多孔質すなわち気孔(孔)を多数有するものである。具体的には、セラミックスは、粘土を主な成分とする混合物を焼成して得られたものである。セラミックスの気孔は、例えば後述する多孔質セラミックスの粒状物の製造方法における焼成の際に自然に、または発泡剤等の添加物の作用によって生ずる。
本実施形態の好ましい形態での多孔質セラミックスは、後述する製造方法で製造された結果として、粘土、有機汚泥および珪藻土が焼結された成分を有し、後述する製造方法で述べるような各種の任意成分、すなわち各種の繊維やガラス等を含有していてもよい。
【0022】
気孔の好ましい態様については後述するが、多孔質セラミックスの粒状物は多孔質であることで、気孔に水分を吸収することができ、pF値2.7以下の範囲における水分量を測定した際に、粒状物の全体体積に対して前記水分量が5体積%以上であるという本実施形態の土壌改良材の性質に寄与している。
【0023】
本実施形態において、粒状物とは、粒子径が5cm以下のものをいう。水耕栽培を除く植物の育成の観点からは、好ましくは3cm以下、より好ましくは2cm以下、さらに好ましくは1cm以下、さらにより好ましくは5mm以下が良い。下限は特に限定されないが、多孔質セラミックスに形成されている気孔の活用の観点、気相割合の観点および粉立ちなどの粒状物の取り扱い性の観点より0.02mm以上が好ましい。
【0024】
粒状物は、種々の大きさの粒状物を準備し、任意の割合で配合して用いてもよい。たとえば粒子径5mm超の粒状物、1mm超5mm以下の粒状物、1mm以下の粒状物をそれぞれ任意の割合で配合して用いてもよい。なお、粒子径は篩分けにより測定される値であり、例えば1mm超5mm以下の粒状物とは、目開き5mmの篩を通過し、目開き1mmの篩を通過できないものを意味する。
【0025】
粒子径が5mm超と大きいと、透水性を著しく向上させることが可能である。
粒子径が1mm超〜5mm以下であると、保水性を向上させ、かつ、気相も増やすことができる。
粒子径が0.02mm超〜1mm以下であると、一般的には水分等により絞め固まり、食物の育成に好ましくない状態となるが、本実施形態の粒状物ではこのような絞め固まり現象を抑制し、土壌改良したい土と混ざりやすく、また、粒状物にはマイクロメートルオーダー、さらに好ましい形態ではナノメートルオーダーの気孔をも有するため、気相を有し、植物の好ましい育成環境を提供できる。
本実施形態の土壌改良材は、上記の粒子径の相違による性能の特徴と屋内、屋外などの使用場所、農地やプランター、鉢などの容器の大きさ、植物の種類、改良が必要な土の状態などに合わせ任意の大きさのものを用いればよい。
【0026】
また、本実施形態の粒状物は、保水率(体積水分率)が15%以上であるとよい。より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上であるとよい。ここで保水率、または含水率は、本実施形態では水に浸した際の粒状物の全体体積に対する体積水分率を指す。保水率の測定は従来知られた乾熱法、加熱減量法または電気抵抗法等を用いて行うことができる。本実施形態では、例えば粒状物を水中に30分以上、好ましくは1時間以上浸漬して飽和含水状態とし、その粒状物を試料として乾熱法を用いて測定することができる。保水率が、15%以上であれば、植物が吸収可能な水を粒状物内に十分有し頻繁な水撒きを行わなくともよく、植物の育成が容易になる。上限は特に限定されないが、95%程度が上限である。粒状物の強度の観点からは85%以下が好ましい。
【0027】
また、本実施形態の粒状物の飽和透水係数が0.1cm/s以上であるとよい。より好ましくは、0.5cm/s以上、さらに好ましくは1.0cm/sがよい。粒状物の飽和透水係数が0.1cm/s以上であれば、培土の中から水を速く排出し、培土内の粒状物を構成する多孔質セラミックスに内在する気孔で通気性を維持し、培土内に酸素維持することができる。このことにより根腐れを抑制することができ、また、水を速く吸収するため、見かけ密度が小さく軽いものであっても、潅水時や大雨が降った場合であっても、土壌改良した土からパーライトのように浮き上がってきてしまうことを抑制できる。
【0028】
また、粒状物の三相分布はpF1.5の遠心処理をした際に、固相10〜45%、液相10〜50%、気相10〜75%となっていることが好ましい。ここで、三相分布は例えば容積重における比であり、実容積法で求めた値とする。
このような範囲の三相分布のバランスを有する土壌改良材を、改良する土の目的とする性能に合わせて混入することで、土の中に植物の育成に適した十分な空気、水を有するものとすることができ、本実施形態の粒状物を含む土壌改良材は、好ましい土壌改良材または培土となることができる。
また、気相が多い培土とすることにより、断熱性を発揮し、寒暖の激しい地域においても植物の根を守り、植物を守るとの観点より、粒状物の三相分布における気相は10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上がよい。
【0029】
また、本実施形態の粒状物はpH緩衝性を有しているとよい。粒状物がpH緩衝性を有し、土壌改良材、土、または土に供給された水のpHを、ほぼ常温(およそ20〜30℃、または植物の育成環境温度)においてpH6〜10に緩衝することにより、より多くの品種の植物の育成に適した生育環境を有する土とすることができる。また、粒状物がpH緩衝性を有すれば、pH4程度の酸性雨などが降った場合においても植物のダメージを抑制することができる。なお、本明細書に規定した範囲外のpHであっても、常温におけるpHに補正したときに本明細書に規定した範囲のpHであれば、それは本発明の範囲に含まれるものとする。本明細書に記載される水、土壌改良材または土等のpHは、試験紙、試験溶液又は電気的なpH測定装置(pHメーター等)その他の測定手段を適宜用いて測定することができる。
【0030】
また、本実施形態の粒状物は、粒状物中にリン、窒素、またはカリウムを含むことが好ましい。リン、窒素、およびカリウムは、植物の三大栄養素といわれる成分で、植物の育成に効果がある。本実施形態では、焼成した多孔質セラミックスに、土壌改良材としての使用中に液体肥料などの成分が含浸することで、粒状物にこれらの栄養素が担持されている。具体的には、本実施形態の粒状物は保肥性にすぐれているので、植栽にあわせて液体肥料等を適量、粒状物に付与(滴下等)することにより、リン、窒素およびカリウム等の栄養素が粒状物に栄養素が担持される。その結果、これらの栄養素を長期にわたり植物に供給することができる。なお、粒状物の固体成分が、これらの3種の成分の1以上を含み、粒状物がカルシウム、および/またはケイ素も微量に溶出することができる性質を有していても、植物の育成の観点から好ましい。
これらの成分の溶出することができる性質を有するか、およびその溶出量は、以下に説明する多孔質セラミックスの製造に用いる混合物の組成(主には、後述する有機汚泥等の含有量)、多孔質セラミックスの気孔の状態、前記した液体肥料等の付与または含浸の条件などにより調整することができる。
【0031】
粒状物が構成素材として含有する多孔質セラミックスに形成されている気孔の大きさは、例えば、孔径10〜1000nmのナノメートルオーダーの気孔であってもよいし、孔径1μm超1000μm以下のマイクロメートルオーダーの気孔であってもよいし、孔径1mm超のミリメートルオーダーの気孔(上限は粒状物の長径)であってもよいし、これらの気孔が混在していてもよい。特に孔径が大きな気孔と小さな気孔が混在しているとよい。例えばミリメートルオーダーの気孔とマイクロメートルオーダーの気孔とナノメートルオーダーの気孔が混在することにより、多孔質セラミックス内に多くの空隙を形成し、酸素をはじめとする空気の保持と雨水等に含まれる微量な栄養素を吸収保持するとの観点より好ましい。また、これらの気孔が混在することにより根圏域に生存する有用微生物の好ましい住処となり、その好気性の程度により種々の有用微生物が存在することができる。
【0032】
なお、気孔の孔径の上限はその粒状物の長辺の長さが上限となる。粒状物の粒子径が1mm未満の場合には、粒状物にはミリメートルオーダーの気孔は存在しないが、粒子径が小さく、かつ、マイクロメートルオーダーの気孔とナノメートルオーダーの気孔を有するため、表面積が大きく、多くの空隙を形成し、ミリメートルオーダーの気孔が存在するときと同様に、空気の保持と栄養素の吸収保持と有用微生物の好ましい住処することができる。
【0033】
気孔の孔径は、原料の種類や、焼成条件を組み合わせることにより調節できる。なお、気孔の孔径の測定は、ミリメートルオーダー以上の大型の気孔ならば目視とスケールでおおよその値を測定してもよい。また、大型およびマイクロメートルオーダー以下の小型の気孔は顕微鏡観察等を行った画像データから縮尺に従って画像処理を行う等で測定することができる。本実施形態では、ミリメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックスを切断し、スケールを用いて気孔の長径を測定した値としている。ナノメートルオーダーおよびマイクロメートルオーダーの気孔の孔径は、多孔質セラミックスを切断し、電子顕微鏡を用いて気孔の長径を測定した値である。
【0034】
多孔質セラミックスに形成されている気孔は、それぞれ独立したものであってもよいし、相互に連通した連通孔であってもよいが、得られる粒状物の各pF値における水分量、保水率、飽和透水係数および栄養素の供給の観点より、相互に連通したものがよい。これらの気孔が相互に連通することにより、相乗的に植物育成環境が向上する。
【0035】
(土壌改良材)
本実施形態の土壌改良材は、本実施形態の粒状物のみからなるものであってもよいし、本実施形態の目的を逸脱しない範囲で、無機質系のゼオライト、パーライト、もしくはベントナイトなど、有機質系の堆肥、腐葉土、もしくは泥炭など、または、高分子系のポリエチレンイミン系化合物などの他の土壌改良材と配合し、土壌改良材として用いてもよい。
本実施形態の土壌改良材を、水はけの悪い粘土質の土または保水性の悪い砂などに混ぜることにより、これらの土や砂の性質を改良し、植物の育成に適した培土とすることができる。
従って、屋外の広大な農地用土壌改良から屋内の観賞用土壌改良まで様々なものの土壌改良材として用いることができる。
【0036】
(培土)
本実施形態の培土は、本実施形態の土壌改良材を含むものである。培土は、赤玉土、または鹿沼土などに本実施形態の土壌改良材を配合し、赤玉土や鹿沼土の欠点を補い、また、長所をさらに向上させ、より植物の育成に適した培土とすることができる。また、植物の培土としては好ましくない水はけの悪い粘土質の土をはじめ、保水性の悪い砂など任意の土と本実施形態の土壌改良材とを配合することにより、植物の育成に適した培土としたものである。
なお、本実施形態の土壌改良材と他の土等とを配合して培土として用いる場合には、その配合物や配合比は目的とする植物の性質や室外または室内などの、用いる場所または広さ等に合わせて配合すればよく、特に限定されるものではない。
【0037】
本実施形態の培土は、本実施形態の土壌改良材のみからなるものであってもよい。さらにまた、本実施形態の土壌改良材に含まれる粒状物は、植物の育成に適した保水性、透水性、および気相も有していることより、粒状物のみでも培土を構成する材料として好適であるため、本実施形態の培土は、粒状物のみからなる土壌改良材のみからなるものであってもよい。
また、本実施形態の粒状物のみからなる土壌改良材のみからなる培土は、一般的な土に比べ土埃が発生したり、水と共に流出することが抑制されるため本実施形態の粒状物のみで用いると室内外(特に室内)の園芸用、水耕栽培用の培土として用いるのにも適している。
また、本実施形態の培土は、芝生などの目土としても好ましく用いることができる。
【0038】
<多孔質セラミックスの製造方法>
多孔質セラミックスの製造方法は、例えば、後述の原料を混合して混合物(以下、単に混合物ということがある)とし(混合工程)、この混合物を成形して成形体とし(成形工程)、この成形体を焼成して多孔質セラミックスを得る(焼成工程)方法等が挙げられる。
【0039】
混合工程は、各種の原料、好ましくは粘土を含むものを混合して混合物を得る工程である。
混合物としては、例えば、発泡剤、有機汚泥、および珪藻土からなる群から選択される少なくとも1種と、粘土とを原料として含むものが好ましく、発泡剤、有機汚泥および粘土を含むものがより好ましい。発泡剤を用いることで多孔質セラミックスの粒状物に大きなミリメートルオーダーの気孔を形成することができ、珪藻土を用いることで多孔質セラミックスの粒状物にマイクロメートルオーダーの気孔を形成することができる。また、有機汚泥を用いることで多孔質セラミックスの粒状物にマイクロメートルオーダーの気孔と、さらに小さなナノメートルオーダーの気孔を形成することができる。さらにまた、有機汚泥を用いることで、多孔質セラミックスの粒状物が窒素、リン、およびカリウムなどの植物の三大栄養素を溶出することができるようになる。また、有機汚泥を用いて得られた多孔質セラミックスの粒状物の気孔は有用微生物の育成に特に適した空間となる。
【0040】
前記混合物は、各pF値における水分量、保水率の向上との観点からは、発泡剤と有機汚泥と珪藻土と粘土とのいずれか1以上の原料を含むものが好ましい。特に、植物への栄養素、植物の育成に役立つ有用微生物の存在の観点も含めると前記混合物は発泡剤と有機汚泥と粘土とのいずれか1以上の原料を含むものが好ましい。このような混合物を焼成して得られた多孔質セラミックスは、相互の気孔が連通した孔を有するものとなる。
【0041】
発泡剤は、焼成時に発泡するものであり、例えば、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、炭酸マグネシウム、またはスラグ等の公知のセラミックス用の発泡剤を用いることができる。これら発泡剤の中でも、スラグが好ましい。スラグは、特に限定されず、例えば、金属精錬時に発生する高炉スラグ、都市ゴミの溶融時に発生する都市ゴミ溶融スラグ、下水汚泥の溶融時に発生する下水汚泥溶融スラグ、または、ダクタイル鋳鉄等の鋳鉄時に発生する鋳鉄スラグ等のガラス質スラグ等が挙げられ、中でも、組成が安定しているため安定した発泡状態が得られると共に、他のスラグに比べ1.5〜2倍程度の発泡率である鋳鉄スラグがより好ましい。
【0042】
前記混合物中のスラグの配合量は、混合物の成形性を勘案して決定することができ、例えば、前記混合物の全体質量に対して80質量%以下が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックスの嵩比重を好適な範囲にすることができる。
【0043】
有機汚泥は、主成分として有機物を含有する汚泥である。有機汚泥は、任意のものを用いることができ、下水や工場等の排水処理に由来する活性汚泥が特に好ましい。活性汚泥は、活性汚泥法を用いた排水処理設備から、凝集および脱水工程を経て排出される。このような有機汚泥を用いることで、マイクロメートルオーダーの気孔を効率的に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。ナノメートルオーダーの気孔が形成されることで、嵩比重の低い多孔質セラミックスが得られ、保水性をより高められる。さらに、廃棄物の位置付けであった排水処理由来の活性汚泥を原料として再度利用することができる。
有機汚泥の含水率は、例えば、有機汚泥の全体質量に対して水が5〜90質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましく、65〜85質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、均質な混合物が得られると共に、良好な成形性を維持しやすい。
【0044】
有機汚泥中の有機物の含有量は、特に限定されないが、例えば、有機汚泥の固形分中の有機物の含有量(有機物含有量)として70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。有機汚泥中の有機物の最大含有量は目安として100質量%である。前記有機物含有量が多いほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。なお、有機物含有量は、例えば乾燥後の汚泥をJIS M8812−1993に準じた測定法による値を用いることができる。具体的には、炭化温度700℃で灰分(質量%)を測定し、下記(1)式により求まる値である。
【0045】
有機物含有量(質量%)=100(質量%)−灰分(質量%) ・・・(1)
【0046】
有機汚泥の平均粒子径は、好ましくは1〜5μm、より好ましくは1〜3μmとされる。有機汚泥は、焼成により焼失し、その部分に気孔を形成するため、平均粒子径が小さいほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。なお、平均粒子径としては、本実施形態では例えば体積基準のメディアン径を測定して求まる値である。具体的には、粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)により測定される体積基準のメディアン径(体積50%径)等を用いることができる。
【0047】
前記混合物中の有機汚泥の含有量は、混合物の成形性等を勘案して決定することができ、例えば、前記混合物の全体質量に対して1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。前記混合物中の有機汚泥の含有量が前記範囲内であれば混合物は適度な流動性と可塑性とを備え、成形性が向上し、成形装置を閉塞することなく円滑に成形できる。
【0048】
珪藻土は、珪藻の遺骸からなる堆積物であり、マイクロメートルオーダーの気孔を有する多孔質である。珪藻土を用いることで、珪藻土に由来する微細な気孔を多孔質セラミックスに形成できる。
珪藻土としては、特に限定されず、従来、耐火断熱煉瓦、濾過材等に使用されていたものと同様のもの等を用いることができる。例えば、珪藻土に狭雑している粘土鉱物(モンモリロナイト等)、石英、および長石等を分別精製する必要はなく、これらの含有率を認識した上で、混合物への配合量を調整することができる。また、珪藻土を用いて製造され廃棄された耐火断熱煉瓦、濾過材またはコンロなどを粉砕して珪藻土として用いることもでき、廃棄物削減の観点から好ましい。
【0049】
珪藻土の含水率は特に限定されず、例えば、自然乾燥状態での含水率が珪藻土の全体質量に対して20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましく、35〜45質量%がさらに好ましい。
珪藻土の含水率が前記範囲内であれば、含水率を認識しながら、混合の際に狭雑物中の粗粒子分を除去して使用することで、成形性が良好な混合物を得られるためである。
なお、珪藻土中の含水率は、珪藻土の乾燥減量法またはカールフィッシャー法等の従来知られた方法により測定できるが、本実施形態では、乾燥減量法(乾燥減量方式)のための下記仕様の赤外線水分計を用い、試料を乾燥(200℃、12分)し、下記(2)式により求めた値を用いることができる。
【0050】
<仕様>
測定方式:乾燥減量法(加熱乾燥・質量測定方式)、
最小表示:含水率;0.1質量%、
測定範囲:含水率;0.0〜100質量%、
乾燥温度:0〜200℃、
測定精度:試料質量5g以上で、含水率±0.1質量%、
熱源:赤外線ランプ;185W
【0051】
含水率(質量%)=[(m
1−m
2)/(m
1−m
0)]×100 ・・・(2)
m
1:乾燥前の容器の質量と乾燥前の試料の質量との合計質量(g)、
m
2:乾燥後の容器の質量と乾燥後の試料の質量との合計質量(g)、
m
0:乾燥後の容器の質量(g)
【0052】
混合物中の珪藻土の含有量は、多孔質セラミックスに求める飽和含水率や強度等を勘案して決定でき、例えば、1〜55質量%が好ましく、1〜45質量%がより好ましい。珪藻土の含有量が上記55質量%以下であれば、混合物の成形性が良好であり、45質量%以下であればさらに良好である。珪藻土の含有量が上記1質量%以上であれば、所望の飽和含水率の多孔質セラミックスや、所望の強度の多孔質セラミックスを得られやすい。
【0053】
本実施形態における粘土は、一般的に窯業原料として用いられる粘土状の性状を示す鉱物材料であり、珪藻土以外のものである。
粘土は、従来、セラミックスに用いられる公知のものを用いることができ、石英、長石、またはその他の粘土系素材等の鉱物組成で構成され、構成鉱物はカオリナイトを主とし、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、ベントナイトまたはパイロフィライトを含むものが好ましい。中でも、焼結時のクラックの伸展を抑え、多孔質セラミックスの破壊を防ぐ観点から目安として粒子径が500μm以上の石英の粗粒を含むものがより好ましい。また、前記石英の粗粒の粒子径は、目安として5mm以下が好ましい。このような粘土としては、例えば、蛙目粘土等が挙げられる。粘土は、1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて配合できる。
【0054】
混合物中の粘土の含有量は、多孔質セラミックスに求める強度や成形性等を勘案して決定でき、例えば、5〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックスの強度を十分なものにできる。
【0055】
混合物は、本実施形態の効果を阻害しない範囲で、任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、マイティ2000WH(商品名、花王株式会社製)等のナフタリン系の流動化剤、メルメントF−10(商品名、昭和電工株式会社製)等のメラミン系の流動化剤、ダーレックススーパー100pH(商品名、グレースケミカルズ株式会社製)等のポリカルボン酸系の流動化剤、銀、銅もしくは亜鉛等の抗菌剤、塩化アンモニウムもしくは塩化亜鉛等の消臭剤、ゼオライトもしくはアパタイト等の吸着剤、長さが1mm〜5cmの炭素繊維、バサルト繊維もしくはロックウール等の強度向上剤、または、金属アルミニウム等が挙げられる。
混合物に任意成分を配合する場合、任意成分の配合量は、例えば、5〜10質量%の範囲で決定することが好ましい。
【0056】
また、混合物の流動性の調整等を目的として、適宜、水を配合してもよいが、有機汚泥が好適な配合比で配合されている場合には、混合工程にて水を添加しなくてもよい。
また、水分が多い場合には、例えば、ガラスや瓦などの破砕物を含んでいるとよい。特に瓦の破砕物を配合することにより、過剰な水分を吸収し、配合物の流動性を調整し、成形性を向上させることができる。また、ガラスを用いる場合には、好ましくは、溶融温度が900℃以上、2000℃以下の高融点ガラスの粒子状フィラーがより好ましい。高融点ガラスの粒子を用いることで、多孔質セラミックスに形成される気孔を維持しながら水分調整が可能である。また、高融点ガラスは強度向上剤としても用いることができる。
【0057】
高融点ガラスの材質は、特に限定されないが、無アルカリガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスまたは石英ガラスが好ましく、中でも、ホウケイ酸ガラスが好ましい。
このような材質であれば、多孔質セラミックスの強度を十分に向上できる。
【0058】
無アルカリガラスは、実質的にナトリウム、カリウムまたはリチウム等のアルカリ金属元素を含有しないガラスである。実質的に含有しないとは、ガラス組成中のアルカリ金属元素の含有量が酸化物換算で0.1質量%以下を意味する。
アルミノケイ酸ガラスは、アルミニウムと珪素とを主成分とする酸化物ガラスである。
ホウケイ酸ガラスは、ホウ素と珪素とを主成分とする酸化物ガラスである。
石英ガラスは、石英から作製されるガラスで、酸化珪素の純度が高いものをいう。
ホウケイ酸ガラスは、ホウ素と珪素とを主成分とする酸化物ガラスである。ホウケイ酸ガラスとしては、AN100(商品名、無アルカリホウケイ酸ガラス、旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0059】
高融点ガラスは、例えば、液晶テレビ等の液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のパネル、EL用カバーガラスやCCD等に代表される固体撮像素子用のカバーガラス、ハンドパスフィルター等の光学フィルター用ガラス、チップ・オン・ガラス用途のガラス基板用ガラス、または、フラスコやビーカー等の各種製品に用いられている。
高融点ガラスの粒子には、上記の製品の製造工程で排出される廃ガラスや、廃棄された液晶テレビ等から回収されるパネルを用いることができる。
【0060】
液晶テレビ等のフラットディスプレイ用のパネルは、パネルの大型化やスマートホンの普及等に伴い、フラットディスプレイの製造時に、多量の廃ガラスを発生する。フラットディスプレイ用のパネルの廃ガラスを高融点ガラスの粒子とすることで、廃棄物を削減できる。このため、環境負荷を低減する観点から、フラットディスプレイ用のパネルの廃ガラスを高融点ガラスの粒子として用いることが好ましい。加えて、フラットディスプレイ用のパネルの廃ガラスは、ガラス組成物の純度が高いため、特段の精製をすることなく、安定した品質の高融点ガラスとして利用できる。
また、瓦も廃棄物として出されたものをもちいることができる。瓦は融点が高いため、一般的なものは特別な配慮をおこなわなくとも用いることができる。また、瓦は水分の吸収量も多いため、有機汚泥中の水分が特に多い場合には、瓦を配合するとよい。
【0061】
高融点ガラスや瓦の粒子の粒子径は、0.1〜5mmが好ましい。粒子径が0.1mm未満であると、多孔質セラミックスにおける気孔の形成が不十分になるおそれがある。気孔の形成が不十分であると、各pF値における適切な水分量、保水率または透水性が損なわれたりするおそれがある。
粒子径が5mm超であると、多孔質セラミックスの成形性が低下したり、成形時に押出し口の金具が破損するおそれがある。
【0062】
混合物中の高融点ガラスや瓦の粒子の含有量は、本実施形態の目的を逸脱しない範囲で配合物の目的とする流動性にあわせて適宜選択すればよいが、高融点ガラスや瓦以外の原料の合計100質量部に対し、5〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
【0063】
混合工程に用いられる混合装置は特に限定されず、公知の混合装置を用いることができる。
混合装置としては、例えば、ミックスマラー(東新工業株式会社製)等の混練機や、ニーダー(株式会社モリヤマ製)または混合機(日陶科学株式会社製)等が挙げられる。
【0064】
成形工程は、混合工程で得られた混合物を任意の形状に成形する工程である。
成形方法は、公知の成形方法を用いることができ、混合物の性状や所望する成形体の形状を勘案して決定することができる。成形方法は、例えば、成形機を用いて、押し出し成形し、ペレットなどを含めた板状、粒状または柱状等の成形体を得る方法、混合物を任意の形状の型枠に充填して成形体を得る方法、あるいは、混合物を押し出し、延伸または圧延した後、任意の寸法に切断する方法等が挙げられる。
成形機としては、真空土練成形機、平板プレス成形機および平板押出し成形機等が挙げられ、中でも、真空土練成形機が好ましい。
【0065】
焼成工程は、成形工程で得られた成形体を乾燥し(乾燥操作)、乾燥した成形体を焼成し(焼成操作)、珪藻土または粘土等を焼結してセラミックスを得る工程である。
乾燥操作は、必要に応じ行えばよく、公知の方法を用いることができる。例えば、成形体を常温(例えば、目安として20〜30℃前後)で自然乾燥してもよいし、50〜220℃の熱風乾燥炉で任意の時間処理して乾燥してもよい。乾燥後の成形体の含水率は、特に限定されないが、例えば、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましい。
【0066】
焼成操作は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラーハースキルン等の連続式焼結炉、または、シャトルキルン等の回分式焼結炉を用い、任意の温度で焼成する方法が挙げられる。中でも、焼成操作には、生産性の観点から連続式焼結炉を用いることが好ましい。
焼成温度(最高到達温度)は、混合物の性状等に応じて決定でき、例えば、850℃〜1200℃とされる。焼成温度が上記下限値以上であれば、有機汚泥由来の臭気成分が熱分解され解消されると共に、有機汚泥中の有機物の大部分が揮発して減量する。上記上限値超であると、セラミックスの組織全体のガラス化が進み、気孔が閉塞するおそれがある。
【0067】
焼成工程の後、必要に応じて、任意の大きさに多孔質セラミックスを破砕する破砕工程も設けることができる。破砕工程では、焼成工程で得られた多孔質セラミックスをハンマーミル、二軸回転式破砕、ジェットミル、ボールミル、またはエッジランナーミル等で破砕、粉砕(破砕操作)し、多孔質セラミックスの粒状物を得ることができる。得られた粒状物は必要に応じ任意の粒子径、好ましくは上述したような、粒子径として好ましい径になるように篩分けする(篩分操作)。なお、破砕操作の条件設定にて、所望する範囲の粒子径の粒状のセラミックスが得られる場合などには、必ずしも篩分操作を行う必要はない。
【0068】
本実施形態の土壌改良材の用途としては、多孔質セラミックスを構成素材として含有する粒状物を含み、前記粒状物はpF値2.7以下の範囲における水分量が前記粒状物の全体体積に対して5体積%以上である土壌改良材を、土を植物の育成に適した土に改良するために使用する、換言すれば、土に前記土壌改良材を含有させる工程を、植物の育成に適した土の製造方法とすることができる。また、本実施形態の前記土壌改良材をそのまま培土として使用する、換言すれば、前記土壌改良材の製造方法によって植物の育成に適した培土の製造方法とすることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を示して本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は以下の記載によって限定されるものではない。
【0070】
(使用原料)
実施例に用いた原料は、次の通りである。
<有機汚泥>
有機汚泥としては、染色工場(小松精練株式会社)の活性汚泥法による排水処理設備から凝集・脱水工程を経て排出された活性汚泥を用いた。この活性汚泥の有機物含有量(対固形分)は83質量%、含水率は85質量%であった。
<粘土>
粘土としては、蛙目粘土(岐阜県)を用いた。
【0071】
<スラグ>
発泡剤として、鋳鉄スラグを用いた。この鋳鉄スラグは、SiO
2、Al
2O
3、CaO、Fe
2O
3、FeO、MgO、MnO、K
2OおよびNa
2Oを主成分とするダクタイル鋳鉄スラグである。
<珪藻土>
珪藻土には、能登地区産の耐火煉瓦の原料で、含水率が珪藻土の全体質量に対して5重量%の粉末状の珪藻土を用いた。
【0072】
<瓦>
住宅用の瓦として使用された後、廃棄されたものを粉砕した粒子径0.1mm〜1.2mmのものを用いた。
<ゼオライト>
株式会社伸興サンライズ製。商品名:ピュアライト。
<パーライト>
有限会社北松製。
<バーミキュライト>
中国産。株式会社PLANTにて販売。
【0073】
また、本実施形態の物性値は以下の方法により測定を行った。
<みかけ密度>
「土壌標準分析・測定法」(博友社)に記載の三相分布・容積重(実容積法)に準じ三相分布の測定をおこない、その測定中に測定される乾土重量(g)より求められる容積重(仮比重、g/ml)を見かけ密度とした。
【0074】
<各pF値の水分量(%)(体積水分率)>
「土壌標準分析・測定法」(博友社)に記載の保水性 C 遠心法 100ml円筒用水平ローターに準じて各pF値の水分量の測定をおこなった。ただし、「土壌標準分析・測定法」(博友社)では、加圧板法でpF値3.2までの測定が終わった試料を用いることになっているが、水中に1時間浸漬した後の飽和含水状態の粒状物を試料として用いた。なお、計算式は前記のとおりである。
<保水率>
「土壌標準分析・測定法」(博友社)に記載の水分(乾熱法)に準じて測定をおこない、体積水分率(%)を保水率(%)とした。なお、水中に1時間浸漬した後の飽和含水状態の粒状物を試料として用いた。
<飽和透水係数>
「土壌標準分析・測定法」(博友社)に記載の飽和透水係数 変水位法に準じて測定をおこなった。
【0075】
<三相分布>
「土壌標準分析・測定法」(博友社)に記載の三相分布・容積重(実容積法)に準じて測定をおこなった。なお、pF値1.5の処理がされたものを試料として用いた。
<pH>
「土壌標準分析・測定法」(博友社)に記載のpH測定法(pH(H
2O)を、ガラス電極法で測定する測定法)に準じて測定をおこなった。
<気孔同士の連通の有無の確認>
多孔質セラミックスにおける気孔同士の連通の有無の確認は、得られた多孔質セラミックスの大粒子を水に浸漬し、充分に吸水させた後に切断し、その断面を観察することで確認した。多孔質セラミックスの内部に、満遍なく水分が分布・保水されている場合、気孔同士が連通していると判断した(「○」と表示)。多孔質セラミックスの内部に水分が行き渡っていない場合には、個々の気孔または孔隙が独立しており、気孔同士が連通していないまたは連通が不充分であると判断した(「×」と表示)。なお、多孔質セラミックスの基板状のものは、基盤の状態で確認をおこなった。
【0076】
(実施例1)
表1に示す組成でスラグ、有機汚泥、粘土および珪藻土をミックスマラー(新東工業株式会社製)で混合し、可塑状態の混合物を得た(混合工程)。
次いで、得られた混合物を真空土練成形機(高浜工業株式会社製)で押し出し、圧延成形し、幅60cm、厚み2cmの帯状の一次成形体を得た。この一次成形体を任意のピッチと幅で切断して、厚み2cmの略正方形の平板状の成形体を得た(成形工程)。
【0077】
得られた成形体を熱風乾燥機で乾燥(180℃、0.5時間)し、含水率1質量%以下とした後、連続式焼結炉を用いて、焼成温度1050℃、焼成温度での滞留時間7分間の焼成条件にて焼成した(焼成工程)。連続式焼結炉としては、ローラーハースキルン(焼結炉の有効長:全長15m、焼結炉を各1.5mのゾーン1〜10に分割)を用いた。得られた多孔質セラミックスの板状物は、ミリメートルオーダーの気孔とマイクロメートルオーダーの気孔とナノメートルオーダーの気孔が混在しまたこれらが連通しているものであった、各種物性値は表1に記載した。
焼成後、得られた多孔質セラミックスの板状物をハンマーミルで粉砕した。次に篩を用い、0.02mm超1mm以下(以下、小粒子という)、1mm超5mm以下(以下、中粒子という)、5mm超50mm以下(以下、大粒子という)に分け多孔質セラミックスの粒状物からなる土壌改良材を得た。そして、小粒子、中粒子および大粒子の夫々のみかけ密度等を測定し、表1に記載した。
【0078】
また、陶器製容器の中に、この多孔質セラミックスの粒状物のみからなる土壌改良材のみを培土とし(中粒子と小粒子を質量比1:1に配合)鑑賞用植物であるパキラ、ムラサキオモト、オリズルラン、ドラセナコンパクター、およびホヤを植え、室内で育てた。2カ月経過後もそれぞれの植物は元気に生育しており、培土による埃も立たず良好であった。
また、水やりも1カ月に一度程度でよく、メンテナンスも簡単であった。従って、本実施形態の土壌改良材は、そのまま培土としてももちいることができる。
【0079】
また、この多孔質セラミックスの粒状物(中粒子)のみからなる土壌改良材を芝生の目土とし、芝生上に7月に敷き詰めた。約3カ月経過後の9月末の時点でも、目土として一般に流通している洗い砂を敷き詰めた箇所と同じく、芝生は青々としており、目土としても有効であった。従って、本実施形態の土壌改良材は、そのまま培土としてももちいることができる。
【0080】
また、本実施形態の土壌改良材の土壌の改良性を確認するため粘土質土壌(多孔セラミックスの製造に用いた粘土)に対し、本実施形態の土壌改良材の中粒子の配合量が10質量%、30質量%となるように配合した。その結果、飽和透水係数が、粘土質土壌のみでは、1.3×10
−3cm/sであったものが、本実施形態の土壌改良材を10質量%配合したものは、1.1×10
−2cm/s、30質量%配合したものは4.8×10
−2cm/sと10倍以上に大きく向上し水はけのよい培土が得られた。従って、土壌改良材としても優れた性能を有している。
【0081】
また、本実施形態の土壌改良材の土壌の改良性を確認するため赤玉土(有限会社廣田商店製)に本実施形態の土壌改良材の中粒子の配合量が30質量%となるように配合した。その結果、保水率が、赤玉土のみでは、36.1%であったものが、本実施形態の土壌改良材を配合した物は、43.9%と保水率が7%以上向上した。従って、本実施形態の土壌改良材は、保水性を向上させる土壌改良材としても有効である。
【0082】
また、本実施形態の土壌改良材の大粒子を水耕栽培用の培土として用い、パキラを栽培したところ、パキラは元気に成長し、植物の根が大粒子と大粒子との隙間や、大粒子の気孔内に入り込んでいた。従って、本実施形態の土壌改良材は水耕栽培用の培土としても好ましく用いることができることが確認できた。
【0083】
(実施例2)
多孔質セラミックスを得るための混合物の組成を表1に記載のものとし、成形工程では真空土練成形機で混合物を直径1.5cmの円柱状に押し出したものを長さ3cmに切断し円柱状の成形体を得、また、焼成工程では成形体の含水率を低下させるための乾燥操作を省略した以外は実施例1と同様にし、多孔質セラミックスの粒状物からなる土壌改良材を得た。そして、小粒子、中粒子および大粒子の夫々のみかけ密度等を測定し、表1に記載した。なお、表1の「飽和透水係数」の欄において「瞬時」とは、透水速度が速く、目盛管内の水面が上部線から下部線まで降下するのに要する時間が測定できなかったことを指す。
【0084】
(実施例3)
多孔質セラミックスを得るための混合物の組成を表1に記載のものとし、成形工程では真空土練成形機で混合物を直径1.5cmの円柱状に押し出したものを長さ3cmに切断し円柱状の成形体を得、また、焼成工程では成形体の含水率を低下させるための乾燥操作を省略した以外は実施例1と同様にし、多孔質セラミックスの粒状物からなる土壌改良材を得た。そして、小粒子、中粒子および大粒子の夫々のみかけ密度等を測定し、表1に記載した。
【0085】
なお、参考例として、ゼオライト、パーライトおよびパーミキュライトの三相分布を測定した。結果は、ゼオライトでは固相:液相:気相=29.7:24.3:46.0、パーライトでは、固相:液相:気相=6.0:29.2:64.8、パーミキュライトでは、固相:液相:気相=10.8:45.8:43.4であった。
【0086】
【表1】