(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ディスタールシャフトの外周面に開口して設けられたスリット状窓部を通じて、前記線状部材の前記当接部が該ディスタールシャフトの外周面から突出されるようになっている請求項1に記載の子カテーテル。
前記線状部材の前記当接部において、前記親カテーテルの内周面に対する係合力を増大させる外周面構造として、非円形の断面形状と表面処理との少なくとも一方が採用されている請求項1〜3の何れか1項に記載の子カテーテル。
【背景技術】
【0002】
従来から、経皮的冠動脈インターベーション(PCI)において、バルーンカテーテル等の治療用カテーテルを冠動脈内に案内するために、特開平9−99088号公報(特許文献1)に記載の如きガイディングカテーテルが用いられている。
【0003】
例えば、PCIの1つとしての経皮的冠動脈形成術(PTCA)では、先ず、ガイディングカテーテル用のガイドワイヤを手首や大腿部から動脈血管内に挿入し、次に、ガイドワイヤに沿って、ガイディングカテーテルを動脈血管内に挿入して、ガイディングカテーテルの先端開口を心臓の冠動脈入口に臨ませる。そして、ガイディングカテーテル用のガイドワイヤのみを抜去して、より細径の治療用カテーテルのガイドワイヤを、ガイディングカテーテルを通じて冠動脈内の狭窄部を通過する位置まで到達させる。次に、バルーンカテーテル等の治療用カテーテルをガイドワイヤに沿わせながら、冠動脈入口に位置されたガイディングカテーテルの先端開口から延び出させて冠動脈内に挿入して、先端部を狭窄部内に位置させた後、先端部に設けられたバルーンを膨らませたりすることによって、狭窄部を拡張する。
【0004】
ところで、治療用カテーテルの先端部を狭窄部内に挿入する際に、治療用カテーテルは反力を受けるが、この反力は、ガイディングカテーテルが上行大動脈の血管内面に当接すること等により受け止められる。狭窄部の位置が冠動脈の入口から離れていて途中が蛇行している場合や、狭窄部が硬く治療用カテーテルを押し進めることが困難な場合には、大きな反力がガイディングカテーテルに及ぼされることから、これを受け止めて、治療用カテーテルを効率的に所定の位置に案内するために、特開昭63−238876号公報(特許文献2)の如き構造も知られている。即ち、特許文献2に記載のガイディングカテーテルは、親カテーテルに子カテーテルが挿入された2重構造とされており、子カテーテルが親カテーテルの先端開口から突出させられることによって、治療用カテーテルをより狭窄部位に近い位置まで案内することが可能とされている。
【0005】
ところが、特許文献2に記載のガイディングカテーテルは、親カテーテルと子カテーテルのそれぞれにYコネクタ等の基端側デバイスが設けられていることから、デバイス数の増加を招く。更に、親カテーテルの基端側デバイスから子カテーテルの基端側デバイスが突出することとなって、ガイディングカテーテルの全体長がより長くなることから、これに挿入される治療用カテーテルとしては更に長尺のものを採用しなければならず、使用可能な治療用カテーテルを制約してしまうという問題もあった。
【0006】
そこで、特表平6−502331号公報(特許文献3)には、子カテーテルとして、治療用カテーテルが挿通されるディスタールシャフトと、ディスタールシャフトに固定されて親カテーテルの基端開口から延び出すプロキシマルシャフト(ワイヤ)を備えた、ラピッドエクスチェンジタイプのカテーテルを採用することが提案されている。
【0007】
しかしながら、ラピッドエクスチェンジタイプのカテーテルでは、子カテーテルの親カテーテルに対する接触面積ひいては接触抵抗が小さいことから、子カテーテルの軸方向での位置決めが難しい。そのために、例えば子カテーテルのルーメンを通じてバルーンカテーテル等の治療用カテーテルを突出させて血管内に送り込む際に、治療用カテーテルの送り込み反力等が子カテーテルに作用して、子カテーテルが親カテーテルに対して容易に移動してしまって位置決めが難しく、治療用カテーテルの送り込みや引き抜きの作業に悪影響がでやすいという問題があった。
【0008】
さらに、本発明者が検討したところ、特許文献3に記載された従来構造のラピッドエクスチェンジタイプの子カテーテルでは、カテーテルを通じて造影剤等を注入する際に、造影剤などの注入圧が作用すると、かかる注入圧が子カテーテルの突き出し力として作用して、子カテーテルが親カテーテルの先端側へ勢い良く突き出る可能性があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題とするところは、子カテーテルの所定の位置で移動を防止することが可能とされて、特にカテーテルを通じて造影剤等を注入する際の子カテーテルの突き出しも効果的に防止され得る、新規な構造の子カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、親カテーテルの基端側開口部から挿入されて
該親カテーテルの先端側開口部から突出さ
せて用いられる子カテーテルにおいて、基端側から先端側に向かって延びるプロキシマルシャフトの先端部分に対してディスタールシャフトが設けられたラピッドエクスチェンジタイプとされていると共に、該プロキシマルシャフトに沿って線状部材が配されており、該線状部材を基端側から操作することで先端側において該ディスタールシャフトの外周面から該線状部材が突出して前記親カテーテルの内周面に押し付けられる当接部が設けられていることを、特徴とする。
【0012】
本発明に従う構造とされた子カテーテルでは、子カテーテルと親カテーテルとを、線状部材により相互に位置決めすることができる。従って、位置決め状態下でも、子カテーテルと親カテーテルとの隙間は適切に維持され得ることとなり、例えば造影剤の注入圧等の圧力が作用した場合でも、かかる隙間を通じて当該圧力が軽減または解消され得る。その結果、子カテーテルの親カテーテルに対する位置決め効果を十分に確保しつつ、親カテーテルからの子カテーテルの飛び出し等の不具合も効果的に防止され得る。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る子カテーテルにおいて、前記ディスタールシャフトの外周面に開口して設けられたスリット状窓部を通じて、前記線状部材の前記当接部が該ディスタールシャフトの外周面から突出されるようになっているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた子カテーテルでは、ディスタールシャフトのスリット状窓部を通じて線状部材の当接部が突出して、親カテーテルの内周面に押し付けられることから、所定位置における子カテーテルと親カテーテルとの位置決めが安定して実現され得る。なお、本態様において、子カテーテルを親カテーテルへ挿入する際や、親カテーテルから抜去する際には、線状部材はスリット状窓部内に引き込まれることが好適である。これにより、外周面への突出を略完全に回避させた状態にすることができて、不必要に親カテ内面へ干渉することに起因する親カテーテルへの挿入や親カテーテルからの抜去の操作抵抗を軽減して良好な作業性を維持することができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る子カテーテルにおいて、前記プロキシマルシャフトが中空構造とされて該プロキシマルシャフトの内腔に前記線状部材が挿通配置されているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた子カテーテルでは、プロキシマルシャフトを巧く利用して、線状部材を配設することが可能となる。特に、プロキシマルシャフト内では、線状部材への外力の作用時に座屈状の変形が防止されることから、外力が先端の当接部へ効率的に伝達されて、当接部の突出変形ひいては親カテーテルへの押付けを一層効果的に実現することができる。
【0017】
本発明の第4の態様は、前記第1〜第3の何れかの態様に係る子カテーテルにおいて、前記線状部材の前記当接部において、前記親カテーテルの内周面に対する係合力を増大させる外周面構造として、非円形の断面形状と表面処理との少なくとも一方が採用されているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた子カテーテルでは、当接部の親カテーテルに対する係合作用や摩擦作用に基づく位置決め力を一層効果的に得ることが可能となる。なお、本態様における表面処理としては、例えば粗面化処理や、樹脂層,金属膜等のコーティング処理などが好適に採用される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従う構造とされた子カテーテルでは、親カテーテルへの挿入時において、安定した位置決め効果が発揮され得る。これにより、冠動脈造影において造影剤を高圧で注入する際に生じるおそれのある親カテーテルからの子カテーテルの突出、およびそれに伴う冠動脈の損傷のおそれが効果的に軽減され得る。また、治療用カテーテルの併用時においても、当該治療用カテーテルの抜挿し等に伴って子カテーテルと親カテーテルが相対移動するおそれが軽減されて、治療用カテーテルの操作性が良好に維持され得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず、
図1〜4には、本発明の1実施形態としての子カテーテル10が示されている。この子カテーテル10は、親カテーテル12(
図6参照)に挿通されて用いられ、その先端が冠動脈等の治療部位へ案内されるようになっている。なお、以下の説明において、先端側とは治療中に患者の治療部位側に位置する
図1中の左方をいい、基端側とは治療中に施術者側に位置する
図1中の右方を言う。また、軸方向とは子カテーテル10が延びる
図1中の左右方向を言う。更に、各図では、本発明の各特徴的部分を明瞭に示す目的で、各部材の相対的な寸法関係を重視しないで示す。
【0023】
より詳細には、子カテーテル10は、先端側のディスタールシャフト18と基端側のプロキシマルシャフト20を軸方向で連結したカテーテル本体22を備えている。
【0024】
ディスタールシャフト18は、
図2〜4に示されているように、筒状のシャフト本体26を有しており、シャフト本体26の中空孔によって、軸方向に貫通する治療用ルーメン28が構成されている。また、シャフト本体26の先端部分には、環状の先端チップ30が設けられており、治療用ルーメン28が先端チップ30を通じて先端側に開口されている。
【0025】
なお、ディスタールシャフト18を構成するシャフト本体26と先端チップ30の材質は、カテーテルに要求される形状保持特性と弾性とを有する材質であれば限定されない。一般に熱可塑性樹脂が採用され、例えばポリアミドやポリエステル,PTFE,PFAなどの公知材料が何れも用いられ得て、先端チップ30が、シャフト本体26よりも軟質とされる。
【0026】
また、シャフト本体26の周壁は、単層で形成しても良いが、複層として周壁内に金属や樹脂等からなる補強材をメッシュ等の態様で配しても良い。更にまた、施術中の位置確認等の目的で、シャフト本体26や先端チップ30には、硫酸バリウム等のX線不透過性の造影剤を配合しても良いし、Pt等のX線不透過材からなるマーカーを装着しても良い。更に、シャフト本体26等の外周面に対して、親水性ポリマーによる親水性コーティングを付しても良く、それによって血管壁への侵襲低減のほか、カテーテル操作性能の向上などが図られ得る。
【0027】
一方、プロキシマルシャフト20は、ディスタールシャフト18に比して十分に小径とされると共に、軸方向長さが大きくされた長尺の線状材とされている。なお、プロキシマルシャフト20の材質は限定されるものでなく、合成樹脂材で形成することも可能であるが、本実施形態では、ステンレス鋼により形成されている。
【0028】
そして、プロキシマルシャフト20の先端部分が、ディスタールシャフト18の基端部分に固着されることにより、プロキシマルシャフト20とディスタールシャフト18が長さ方向で略直列的に連結されている。これにより、子カテーテル10は、ガイドワイヤ等が挿通される治療用ルーメン28が先端部分だけに短い長さで設けられたラピッドエクスチェンジタイプのカテーテルとして構成されている。
【0029】
なお、ディスタールシャフト18とプロキシマルシャフト20との固着は、例えばディスタールシャフト18の周壁にプロキシマルシャフト20の先端部分を埋設したり、固着等することも可能であるが、本実施形態では、被覆チューブ32を用いてラッピング固着されている。即ち、プロキシマルシャフト20の先端部分がディスタールシャフト18の基端側部分の外周面に対して所定長さで重ね合わされている。また、ディスタールシャフト18の基端側には、薄肉の被覆チューブ32が外挿されている。そして、ディスタールシャフト18の外周面と被覆チューブ32との間に差し入れられたプロキシマルシャフト20の先端部分が、被覆チューブ32で締め付けられてディスタールシャフト18の外周面に固着されている。なお、被覆チューブ32として熱収縮チューブ等を用いることも可能であり、被覆チューブ32は、必要に応じて、ディスタールシャフト18やプロキシマルシャフト20に対して接着や溶着等される。
【0030】
このようにディスタールシャフト18の基端側に連結されたプロキシマルシャフト20は、中空の小径筒形状とされており、軸方向に連続して延びる内腔34を有している。
【0031】
また、プロキシマルシャフト20の先端部分には、周壁を貫通して軸方向に延びる貫通窓36が形成されており、この貫通窓36を通じて、内腔34が外部に連通されている。加えて、被覆チューブ32にも、プロキシマルシャフト20の貫通窓36を覆う位置に、かかる貫通窓36と略同様な連通窓38が形成されている。
【0032】
これにより、ディスタールシャフト18の外周面に開口して設けられて、プロキシマルシャフト20の内腔34をディスタールシャフト18の外周面に開口させるスリット状窓部が、貫通窓36と連通窓38によって構成されている。
【0033】
なお、本実施形態では、プロキシマルシャフト20の貫通窓36や被覆チューブ32の連通窓38は、周方向で所定幅をもって軸方向に延びており、プロキシマルシャフト20の内腔34が、それら貫通窓36と連通窓38を通じて、ディスタールシャフト18の外周面に常時開放されている。尤も、プロキシマルシャフト20や被覆チューブ32が弾性変形可能な材質であれば、貫通窓36や連通窓38を線状の切込みによって構成することにより、常時閉鎖状態で、且つ必要に応じて開口する構造も採用可能である。
【0034】
さらに、プロキシマルシャフト20の内腔34には、線状部材42が挿通されている。この線状部材42は、内腔34の内径よりも僅かに小さな外径寸法とされて、内腔34内で長さ方向の移動が許容された状態で組み付けられている。なお、線状部材42は、外力によって比較的容易に弾性変形可能とされており、例えば金属や合成樹脂等からなる単線や撚線などが採用され得る。
【0035】
また、線状部材42の先端は、プロキシマルシャフト20の先端に固着されている。一方、線状部材42の基端は、プロキシマルシャフト20の基端側において内腔34から所定長さで外部に延び出している。そして、かかる基端部に対して外部操作を及ぼすことができるようになっている。
【0036】
なお、本実施形態では、プロキシマルシャフト20の基端側における線状部材42の端部に対して操作用ハブ44が装着されており、操作用ハブ44を操作することにより、線状部材42を内腔34に対して押し込む又は引き抜く外部操作力を容易に及ぼし得るようになっている。
【0037】
かかる操作用ハブ44の具体的構造は限定されるものでないが、例えば
図5にも示されているように、ハウジング46内でスライド可能な操作片48に線状部材42の基端部が固着されており、施術者がハウジング46を把持しつつ、操作片48を手指で移動させることで、線状部材42に対して長さ方向の外力を及ぼし得るように構成される。
【0038】
そして、線状部材42に対して、プロキシマルシャフト20の内腔34への押込方向の外力が及ぼされると、線状部材42の先端が位置固定とされていることから、線状部材42には軸方向の外力による湾曲方向の変形が生じる。その結果、湾曲方向の変形が許容されている貫通窓36と連通窓38の形成部位において、線状部材42が湾曲して、それら貫通窓36と連通窓38を通じて、ディスタールシャフト18の外周面へ突出することとなる。
【0039】
なお、線状部材42の基端部に対して、内腔34からの引き抜き方向の外力を及ぼすと、ディスタールシャフト18の外周面に突出した線状部材42は、貫通窓36と連通窓38を通じて回収されて内腔34へ収容されることとなる。
【0040】
従って、上述の如き構造とされた本実施形態の子カテーテル10においては、そのディスタールシャフト18を親カテーテル(12)へ挿し入れた状態で、プロキシマルシャフト20の基端側から延び出した線状部材42を操作することができる。そして、かかる線状部材42の操作により、ディスタールシャフト18から径方向外方に向かって線状部材42を湾曲状態で突出させて親カテーテル(12)の内面へ押し付けることにより、ディスタールシャフト18の親カテーテル(12)に対する位置決め力などを、必要に応じて適宜に得ることが可能になる。
【0041】
以下、本実施形態の子カテーテル10を用いた施術時の操作について、より具体的な説明を記載しておく。
図6には、本実施形態のガイディングカテーテル50が示されている。このガイディングカテーテル50は、上記の如き子カテーテル10が親カテーテル12に挿通されることにより構成されている。そして、親カテーテル12に挿通された子カテーテル10に対して、ガイドワイヤ51が挿通されて子カテーテル10の先端が冠動脈へ案内され得る。
【0042】
親カテーテル12は、従来公知のものが適宜に採用可能とされることから、詳細な説明は省略するが、湾曲可能な筒状の可撓性チューブ52で構成されており、可撓性チューブ52の先端部には先端チップ53が設けられていると共に、可撓性チューブ52の基端部には、基端側デバイスとしてのYコネクタ54が設けられている。なお、Yコネクタ54の内部には逆止弁が設けられており、親カテーテル12や子カテーテル10を血管に挿入した際の血液の逆流が阻止されるようにされている。また、Yコネクタ54には、血管へ薬液や造影剤を注入等するためのサイドアーム56が、本体から分岐して適宜に設けられ得る。
【0043】
そして、
図6,7に示されているように、上記の如き構造とされた親カテーテル12の基端側開口部58から子カテーテル10を挿し入れて、子カテーテル10の先端部分を親カテーテル12の先端側開口部60から突出させる。なお、子カテーテル10は、ディスタールシャフト18の先端側部分だけが親カテーテル12から突出されており、ディスタールシャフト18の基端側部分は、親カテーテル12内に残るように位置されている。
【0044】
ここにおいて、被覆チューブ32を含むディスタールシャフト18は、親カテーテル12に挿通可能な外径と、後述するバルーンカテーテル64を挿通可能な内径(治療用ルーメン28の直径)をもって形成される。具体的には、ディスタールシャフト18の外径寸法は、好適には1.2mm〜2.5mm、より好適には1.4mm〜1.8mmの範囲内で設定される。また、ディスタールシャフト18の内径寸法は、好適には1.0mm〜2.0mm、より好適には1.2mm〜1.6mmの範囲内で設定される。
【0045】
また、ディスタールシャフト18の長さ寸法は、冠動脈入口から治療部位までの距離に相当する長さ寸法を有することが好ましい。具体的には、好適には100mm〜500mm、より好適には200mm〜300mmの範囲内で設定される。また一方、プロキシマルシャフト20の外径寸法は、好適には0.3mm〜1.0mm、より好適には0.4mm〜0.5mmの範囲内で設定される。
【0046】
更にまた、子カテーテル10におけるカテーテル本体22の長さ寸法は、親カテーテル12の長さ寸法より大きく設定される。具体的には、カテーテル本体22の長さ寸法は、好適には1200mm〜1800mm、より好適には1300mm〜1500mmの範囲内に設定される。
【0047】
而して、子カテーテル10の操作用ハブ44を操作して線状部材42に押込方向の外力を及ぼすと、
図7,8に示されているように、親カテーテル12内に配されたディスタールシャフト18の基端部分において、その外周面上に線状部材42が突出させられて湾曲状の当接部62が発現する。そして、この線状部材42の当接部62が、親カテーテル12の内面に押し付けられると共に、押付反力がディスタールシャフト18に及ぼされて、ディスタールシャフト18も親カテーテル12の内面に押し付けられる。
【0048】
これら線状部材42とディスタールシャフト18が親カテーテル12の内面に押し付けられることにより、親カテーテル12に対する子カテーテル10の位置決め力が発揮されることとなる。
【0049】
そして、このようにガイディングカテーテル50の先端を冠動脈内に配置して、子カテーテル10を親カテーテル12に対して位置決めした状態で、各種の治療等を行うことができる。例えば、親カテーテル12のサイドアーム56からオートインジェクタ等で冠動脈内に造影剤を注入して冠動脈を撮影することにより、例えば冠動脈内に生じた狭窄部の長さや場所、狭窄の程度等を確認することができる。また、ガイディングカテーテル50に治療用カテーテルとしてのバルーンカテーテル64(
図10参照)を挿通して、バルーンカテーテル64の先端部分を、例えば上記冠動脈造影で確認した狭窄部へ案内させることができる。
【0050】
以下、本実施形態のガイディングカテーテル50を用いた冠動脈造影、およびガイディングカテーテル50とバルーンカテーテル64を用いた経皮的冠動脈形成術(PTCA)による冠動脈内における狭窄部拡張の手順を説明する。
【0051】
先ず、
図9に示すように、患者の橈骨動脈66を穿刺して、穿刺個所からシース68の先端を橈骨動脈66内に挿入する。次に、ガイディングカテーテル50用のガイドワイヤ(51)をシース68を通じて橈骨動脈66内に挿入して、橈骨動脈66から上腕動脈70を経て、上行大動脈72まで挿入する。続いて、このガイディングカテーテル用50のガイドワイヤ(51)に親カテーテル12を外挿してシース68から橈骨動脈66に挿入し、ガイディングカテーテル50用のガイドワイヤ(51)に沿わせて先端側開口部60を冠動脈74の入口に位置させる。そして、ガイディングカテーテル50用のガイドワイヤ(51)のみを動脈内から抜去する。
【0052】
次に、親カテーテル12に接続されたYコネクタ54の基端側開口部58から子カテーテル10のカテーテル本体22を挿入して、ディスタールシャフト18を親カテーテル12の先端側開口部60から突出させて冠動脈74内に挿入する。かかる状態では、前述の
図6〜8のように、ディスタールシャフト18の基端部分は親カテーテル12の先端側開口部60から突出せずに可撓性チューブ52内に位置している。
【0053】
そして、操作片48をハウジング46内で押込方向へスライド変位させて、線状部材42を子カテーテル10の外周面から外周側へ突出させることにより、線状部材42の当接部62を親カテーテル12の内周面に押し付ける。これにより、親カテーテル12に対して子カテーテル10を位置決めさせる。なお、
図9では、見易さのために線状部材42を実線で示している。
【0054】
このようにガイディングカテーテル50の先端を冠動脈74内に挿入した状態で、サイドアーム56に接続された図示しないオートインジェクタにより、造影剤を冠動脈74内に注入する。そして、X線を透過させた画像をリアルタイムで確認したり、必要に応じて撮影することにより、冠動脈74内の狭窄部の狭窄の程度、長さ、場所、形態等を評価することができる。なお、冠動脈74内に注入される造影剤としては、硫酸バリウムや、ヨウ素を用いたヨード造影剤等が好適に採用される。
【0055】
かかる冠動脈造影により確認された冠動脈74内の狭窄部76(
図11参照)を、ガイディングカテーテル50およびバルーンカテーテル64を用いて経皮的冠動脈形成術(PTCA)により拡張する際には、
図10に示される如きカテーテル組立体78が採用される。本実施形態のカテーテル組立体78は、前述のガイディングカテーテル50とバルーンカテーテル64とガイドワイヤ79を含んで構成されている。
【0056】
狭窄部76を拡張する際には、
図11に示されているように、先ず、前述の如き構造とされたガイディングカテーテル50に対して、ガイドワイヤ79およびバルーンカテーテル64を挿通して、本実施形態のカテーテル組立体78を構成する。これらガイドワイヤ79およびバルーンカテーテル64としては従来公知のものが適宜に採用可能であり、バルーンカテーテル64の先端部分にはバルーン80が設けられている。このバルーン80は、例えばバルーンカテーテル64内に設けられる給排ルーメンを通じてバルーン80内に流体を供給および排出することにより、拡張および収縮が可能とされる。なお、バルーンカテーテル64としては従来公知のラピッドエクスチェンジ型のものが好適に用いられる。
【0057】
その後、バルーンカテーテル64用のガイドワイヤ79を親カテーテル12に基端側開口部58から挿入すると共に、親カテーテル12内で子カテーテル10のディスタールシャフト18に挿入して、ディスタールシャフト18の治療用ルーメン28を通じて先端チップ30から冠動脈74内に押し進めることにより、その先端が狭窄部76を通過する位置まで到達させる。
【0058】
続いて、バルーンカテーテル64を、ガイドワイヤ79に外挿した状態で親カテーテル12の基端側開口部58から挿入すると共に、ガイドワイヤ79に沿わせて親カテーテル12内で子カテーテル10のディスタールシャフト18に挿通する。そして、バルーンカテーテル64の先端に設けられたバルーン80をディスタールシャフト18で案内しつつ、先端チップ30から冠動脈74内に挿入して、狭窄部76内に押し進める。その後、バルーン80を拡張させることによって、狭窄部76を拡張して血流を回復する。
【0059】
なお、術後にカテーテル組立体78を抜去するには、先ず、バルーンカテーテル64を抜去する。その後、操作片48をハウジング46内で引抜方向へスライド変位させる。これにより、線状部材42への軸方向の圧縮力が解除されて、貫通窓36および連通窓38から突出していた線状部材42がプロキシマルシャフト20の内腔34内に位置するようにされる。これにより、親カテーテル12に対する子カテーテル10の位置決めが解除されて、子カテーテル10の抜去後、親カテーテル12およびガイドワイヤ79を抜去して、カテーテル組立体78の抜去がなされる。
【0060】
上記の如き構造とされた本実施形態の子カテーテル10によれば、親カテーテル12への挿入時において、操作用ハブ44に設けられた操作片48を操作して、線状部材42の当接部62が親カテーテル12の可撓性チューブ52内周面に押し付けられることにより、親カテーテル12に対して子カテーテル10が高精度に位置決めされる。かかる位置決めがなされることにより、例えばバルーンカテーテル64との併用時において、バルーンカテーテル64の抜挿し等に伴って、親カテーテル12と子カテーテル10が相対移動するおそれが効果的に低減されて、バルーンカテーテル64の操作性が良好に維持され得る。
【0061】
特に、従来構造の子カテーテルでは、冠動脈造影を実施する際には造影剤が親カテーテル内に高圧で注入されることから、子カテーテルの基端側にこの注入圧が及ぼされて、子カテーテルが親カテーテルの先端から勢いよく突出して冠動脈を損傷するおそれがあった。しかしながら、本実施形態の子カテーテル10には極小径の線状部材42が設けられており、この線状部材42において、親カテーテル12の内周面に押し付けられる当接部62が設けられていることから、子カテーテル10と親カテーテル12との隙間を大きく確保することができる。この隙間により、子カテーテル10の基端側に及ぼされる造影剤の注入圧を低減することができて、親カテーテル12からの子カテーテル10の突出が効果的に回避され得る。
【0062】
また、本実施形態の子カテーテル10はラピッドエクスチェンジタイプのカテーテルとされていることから、子カテーテル10用のYコネクタを余分に設ける必要がなく、デバイス数の増加が抑制され得る。更に、子カテーテル10用のYコネクタを設けないことから、ガイディングカテーテル50の実質的な全長が長くなることが抑えられて、ガイディングカテーテル50内に挿通される治療用カテーテル64の長さが必要以上に長くなることが回避される。これにより、使用される治療用カテーテルの選択が制限されず、より多種類の治療用カテーテルが選択可能とされ得る。
【0063】
さらに、本実施形態の子カテーテル10では、プロキシマルシャフト20は内部に内腔34を有する中空構造とされて、当該内腔34内に線状部材42が配置されていることから、操作片48の操作時に、貫通窓36および連通窓38の形成箇所以外での線状部材42の変形が防止され得る。このことから、位置決め時において、安定して線状部材42がディスタールシャフト18の外周面から突出することができて、位置決め効果が一層確実に発揮され得る。
【0064】
特に、本実施形態の子カテーテル10では、子カテーテル10と親カテーテル12との位置決め時において操作用ハブ44に設けられた操作片48を操作することにより、線状部材42が両窓36,38を通じてディスタールシャフト18の外周面から突出するようにされている。即ち、初期状態や治療後など、子カテーテル10と親カテーテル12とが位置決めされない場合には、線状部材42はプロキシマルシャフト20の内腔34内に配置されており、これにより、親カテーテル12への挿入時、および親カテーテル12からの抜去時において、子カテーテル10が親カテーテル12に引っ掛かるおそれを軽減することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されることなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良などを加えた態様で実施され得るものであり、また、そのような実施態様も、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
例えば、線状部材42における当接部62を、多角形断面等の非円形の断面形状にしてもよい。または、当接部62に対して、表面の粗面化や、樹脂や金属のコーティングによる表面処理が施されてもよい。これにより、親カテーテル12の内周面との係合力を増大させて位置決め力を向上させることも可能になる。
【0067】
また、ディスタールシャフト18の外周面上に突出する線状部材42を複数本設けることも可能である。
【0068】
更にまた、線状部材42の配設領域を、プロキシマルシャフト20とは別に設けることも可能である。例えば、中実断面のプロキシマルシャフトとは別に、線状部材42が挿通配置される小径チューブを、プロキシマルシャフトと並行に設けても良い。
【0069】
さらに、線状部材42の先端をディスタールシャフト18に非固着として、プロキシマルシャフト20の基端側から抜き挿し可能にしても良い。これにより、異なる種類や特性の線状部材42を、適宜に選択して採用することも可能になる。
【0070】
また、親カテーテル12や子カテーテル10のデリバリ操作などに支障がないことを条件として、ディスタールシャフト18のスリット状窓部から線状部材42を予め少しだけ湾曲突出させておいても良い。このように、初期状態で線状部材42に湾曲部を設けておくことで、外力作用で当接部62が容易に発生することとなって操作性の向上等が図られ得る。