(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弁室を形成するハウジング内の底部には排水管に連通する開口部と、外気を吸引する吸気口とを有し、前記吸気口の周囲に環状の弁座を形成し、該弁座に対して円板状の弁体が開閉可能に支持され、常には弁体が弁座上に位置して閉弁し、弁室内の減圧時には弁体が弁座から離間して開弁するように構成された通気弁を備え、
前記弁座の中心部には円筒状の軸支筒が支持され、該軸支筒内には、前記弁体の中心部に設けられた支軸が上下動可能に支持されており、前記軸支筒内の貫通孔は下部ほど拡径するテーパ孔となっている通気弁装置。
【背景技術】
【0002】
建築物に設けられた排水管には、化粧室、台所、風呂等の排水設備が接続されている。これらの排水設備には、臭気が排水管内を上昇するのを防止するために、それぞれ排水トラップが設けられている。しかし、排水管内を排水が満液状態で急激に流れる等すると、その上流側で排水管内が負圧となり、排水トラップの封水が吸引されて流れ出し、臭気が排水管内から部屋に流れ込むおそれがある。このため、排水管に連通する通気管を排水管から分岐することにより設け、その通気管の開口部に通気弁が設けられ、排水管内の負圧状態を解消するようになっている。
【0003】
この種の通気弁が例えば特許文献1に開示されている。すなわち、この通気弁は、弁室、その弁室の底面に形成され排水管に連通される開口部、外気を吸引する吸気口及び弁座を有する弁本体と、弁体と、弁座に密接するパッキンと備えている。そして、常には弁体がパッキンを介して弁座に密着し、排水管内が負圧状態に到ったとき、弁体が弁座から離間して空気を吸入するように構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を
図1〜
図4に従って詳細に説明する。
図1及び
図4(a)に示すように、一対の通気弁10が収容されるハウジング11の底壁部11aは有底矩形枠状に形成され、その中央部には図示しない排水管の分岐管12に接続される円筒部13が突設され、該円筒部13には排水管に連通される開口部14が設けられている。また、ハウジング11を構成する上壁部11bは有蓋矩形箱状に形成され、前記底壁部11aに嵌合されて、内部に密閉室としての弁室15が形成されるようになっている。
【0011】
図2及び
図4(b)に示すように、前記底壁部11aにおける開口部14の両側方には、平面円形状をなす一対の吸気口16が設けられ、外気を吸引できるようになっている。この吸気口16の周囲には、円環状の弁座17が突設されている。該弁座17の中心部には、円筒状の軸支筒18が径方向に延びる3枚の支持板19で支持されている。
【0012】
図3に示すように、前記弁座17の軸支筒18内には、円板状をなす弁体20の中心部に設けられた支軸21が上下動可能に支持されている。そして、弁体20がパッキン22及びパッキン押え23を介在した状態で、弁座17に対して密着又は離間されるようになっている。前記パッキン22は弁体20と同じ直径を有し、パッキン押え23によって弁体20の下面に保持されるようになっている。前記軸支筒18内の貫通孔は下部ほど拡径するテーパ孔24となり、弁体20の支軸21がテーパ孔24に挿入されたとき傾斜可能に構成され、弁体20の全周が弁座17に対して密着できるようになっている。また、軸支筒18内がテーパ孔24となっていることにより、弁体20の支軸21とテーパ孔24は入り口部分で線接触する。そのため、支軸21はテーパ孔24内に引っ掛かり難く、通気弁10の開閉がスムーズに行われる。
【0013】
図1に示すように、弁体20の上面には、中心から周縁へ放射状に延びる複数(第1実施形態では9本)のガイド溝25が周方向に等間隔で形成されている。そして、常には弁体20がパッキン22を介して弁座17上に位置して閉弁し、弁室15内の減圧時には弁体20が弁座17から離間して開弁するように開閉可能に構成されている。弁体20の閉弁状態では、パッキン22が弁体20と弁座17との間に介在されて、弁体20と弁座17との間のシール性を高め、弁室15内の臭気が外部へ漏れ出さないようになっている。
【0014】
前記弁座17の外周面には、上下方向に平行に延びる複数の第1案内溝26が一定間隔をおいて形成されている。この第1案内溝26は、結露水を弁座17と弁体20との間から下方へ、つまり弁室15内の弁座17と弁体20との間以外の領域へ導くようになっている。
【0015】
前記弁座17の上部外周面には上部ほど縮径するように傾斜する傾斜面27が設けられ、該傾斜面27には前記第1案内溝26から上方へ延びるよう形成された第2案内溝28が設けられている。そして、弁座17と弁体20との間に生ずる結露水は、弁座17の傾斜面27に設けられた第2案内溝28に引き込まれ、さらに弁座17の外周面に設けられた第1案内溝26へと引き込まれるようになっている。
【0016】
通気弁装置は、前記弁座17、第1案内溝26、第2案内溝28、弁体20、ハウジング11、弁室15等により構成されている。
以上のように構成された第1実施形態の通気弁装置について作用を説明する。
【0017】
さて、
図4(a)に示すように、排水設備が使用され、排水管内を排水が通常の状態で流れる場合には、弁室15内は外気と同じ圧力(常圧)に保たれることから、弁体20は弁座17上に支持され、通気弁10は閉弁状態となる。従って、各排水設備における排水トラップの封水が流れ出すことはなく、臭気が外部へ漏れるおそれはない。
【0018】
このとき、弁座17の軸支筒18内は下部ほど拡径するテーパ孔24となっていることから、弁体20の支軸21が360度いずれの方向へも傾くことができ、弁体20の全周が弁座17に密着する。さらに、弁体20の下面にはパッキン22が装着されているため、弁体20と弁座17との密着性が高められる。このため、排水管内の臭気が外部へ漏れ出すことが抑えられる。
【0019】
図4(b)に示すように、排水設備の使用により排水管内を排水が満液状態で急激に流れる場合には、排水管の上流側で負圧が生じ、弁室15内が減圧状態となることから、弁体20の支軸21が軸支筒18内を上昇して弁体20が浮き上がり、弁座17から離間して、通気弁10は開弁状態となる。このため、吸気口16から空気が吸い込まれ、その空気は
図4(b)の矢印に示すように、通気弁10を通って開口部14から分岐管12を経て排水管へと流れる。このため、排水管内の減圧状態が解消され、各排水トラップの封水に影響はなく、臭気の漏出が抑えられる。
【0020】
そして、排水管内が常圧に戻ると、弁室15内も常圧になって、弁体20は自重で下降して弁座17上に到り、通気弁10が閉弁され、外部への臭気の漏出が抑えられる。
前記通気弁10の閉弁状態において、冬季等の外気温が低い場合には、通気弁10の弁座17と弁体20との間に存在する空気が冷却されて露点以下に達すると結露が生じる。この結露によって生じた水は、弁座17上部の傾斜面27に設けられている第2案内溝28内に毛細管現象により引き込まれ、さらに弁座17の外周面の第1案内溝26内へ毛細管現象により引き込まれる。このため、結露水が弁座17と弁体20との間に溜まることが抑制される。その結果、弁座17と弁体20との間で結露水が凍結して弁体20が弁座17に固着する事態が回避される。従って、通気弁10の開弁動作は支障なく行われる。
【0021】
以上の第1実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
(1)この第1実施形態における通気弁装置においては、弁座17の外周面に第1案内溝26が設けられている。このため、弁座17と弁体20との間に結露水が生じたときには、その結露水を弁座17の第1案内溝26に導くことができる。従って、弁体20は弁座17に固着するおそれがなく、開弁機能は維持される。
【0022】
よって、第1実施形態の通気弁装置によれば、弁座17に対する弁体20の固着を抑制し、開弁機能を支障なく発揮することができるという効果を奏する。
(2)前記第1案内溝26は複数(多数)設けられていることから、弁座17と弁体20との間の全周に亘って結露水の凍結を有効に抑制することができる。
【0023】
(3)前記複数の第1案内溝26は等間隔で設けられている。このため、弁座17と弁体20との間の全周に亘って結露水を均等に第1案内溝26に導くことができる。
(4)前記弁座17は円筒状に形成され、弁体20が円板状に形成され、弁座17の上部外周面には上部ほど縮径するように傾斜する傾斜面27が設けられるとともに、弁座17の外周面に第1案内溝26が形成され、傾斜面27には第1案内溝26に連なる第2案内溝28が設けられている。従って、弁座17と弁体20との間に生じた結露水を、第2案内溝28を介して第1案内溝26に円滑に導くことができる。
【0024】
(5)前記弁体20の上面には、中心から周縁へ延びるガイド溝25が設けられている。このため、弁体20の上面に溜まる結露水を、ガイド溝25を介して弁体20の周縁から下方へ導くことができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を
図5〜
図7に従って説明する。なお、この第2実施形態では、主に前記第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0026】
図5及び
図6に示すように、弁座17の外周面と傾斜面27との境界部には、前記第1案内溝26及び第2案内溝28と連通する第3案内溝29が全周に亘って形成されている。そして、弁座17の傾斜面27上に存在する結露水が、この第3案内溝29に導かれるように構成されている。また、傾斜面27の第2案内溝28に入り込んだ結露水も第3案内溝29に入ることができるようになっている。なお、弁体20上面のガイド溝25の底面は外周側ほど低くなる斜面となり、弁体20上面の結露水を速やかに外周側へ導くようになっている。
【0027】
図5及び
図7に示すように、前記第3案内溝29は第1案内溝26及び第2案内溝28と同じ形状に形成され、第3案内溝29の幅及び深さは、第1案内溝26及び第2案内溝28の幅及び深さと同じに設定されている。
【0028】
さて、冬季において、通気弁10を閉じた状態では、弁座17と弁体20との間の近傍位置に存在する空気が露点以下に冷却されて水分が生じる。その水分は、弁座17の傾斜面27に設けられた第2案内溝28から弁座17の外周面の第1案内溝26又は弁座17の傾斜面27と外周面の境界部に位置する第3案内溝29へと引き込まれる。或いは、弁座17の傾斜面27上に存在する水分は、第3案内溝29又は第2案内溝28に引き込まれる。
【0029】
このように、第2実施形態の通気弁装置では、第1実施形態の第1案内溝26及び第2案内溝28に加えて第3案内溝29を設けたことから、傾斜面27上の結露水を第3案内溝29に導くことができるとともに、第2案内溝28に導かれた水を第3案内溝29にも誘導することができ、結露水を分散させて下方へ導くことができる。そのため、結露水を効率良く下方へ誘導することができ、弁座17と弁体20との間に結露水が残って、その結露水が凍結して弁体20が弁座17に固着する事態を回避することができる。従って、通気弁10の開弁動作に支障を来たすおそれがない。
【0030】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を
図8に従って説明する。なお、この第3実施形態では、主に前記第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0031】
図8に示すように、第1実施形態における弁座17の傾斜面27に設けられた第2案内溝28に代えて、V字状をなす第4案内溝30が設けられ、その第4案内溝30の下端部が前記第1案内溝26に連なるように構成されている。そのため、第3案内溝30と第1案内溝26でY字状をなす溝が形成されている。この第4案内溝30は前記第1案内溝26と同じ断面形状に形成され、第4案内溝30の幅及び深さは、第1案内溝26の幅及び深さと同じに設定されている。なお、第1案内溝26の数は、第1実施形態の第1案内溝26の数よりも少なく設定されている。
【0032】
さて、冬季において、通気弁10を閉じた状態では、弁座17と弁体20との間又はその近傍位置に存在する空気が露点以下に冷却されて水分が生じる。その水分は、弁座17の傾斜面27に設けられた第4案内溝30から弁座17の外周面の第1案内溝26へと導かれる。或いは、弁座17の傾斜面27上に存在する水分は、第4案内溝30に引き込まれる。
【0033】
このように、第3実施形態の通気弁装置では、第1実施形態の第2案内溝28に代えて、傾斜面27上を斜めにV字状をなすように延びる第4案内溝30を設けたことから、傾斜面27上の結露水を第3案内溝30に導きやすくすることができ、第4案内溝30に集められた水を第1案内溝26に誘導することができる。このため、結露水を効率的に下方へ導くことができ、結露水の凍結によって弁体20が弁座17に固着する事態を回避することができる。従って、通気弁10の開弁動作を良好に行うことができる。
【0034】
なお、前記実施形態を、次のように変更して具体化することも可能である。
・第1実施形態の第1案内溝26、第2案内溝28、第2実施形態の第3案内溝29及び第3実施形態の第4案内溝30溝を、開口部側が拡幅するように構成したり、溝の底面を断面円弧状に構成したり、溝の側面を段差状に構成したりしてもよい。
【0035】
・第1実施形態の第1案内溝26、第2案内溝28、第2実施形態の第3案内溝29及び第3実施形態の第4案内溝30の少なくとも1つを異なる形状に設定してもよい。
・第3実施形態の第4案内溝30について、そのV字の角度を適宜変更したり、またその形状をU字状に形成したり、X字状に形成したりしてもよい。なお、X字状に形成する場合には、第4案内溝30の2つの下端部は、それぞれ隣接する第1案内溝26に連なるように構成する。
【0036】
・前記弁座17を四角筒状等の角筒状等に形成してもよい。そのような形状の弁座17の外周面に第1案内溝26を形成する。
・前記弁座17の傾斜面27を省略してもよい。
【0037】
・第3実施形態において、第2実施形態の第2案内溝29を設けるように構成してもよい。この場合、結露水の排出を一層効率的に行うことができる。